学会抄録drmtl.org/data/106010043.pdf · 2011-03-23 · のマーカー 遺伝子を追跡 ......

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学会抄録 静岡地方会第52回例会(平成7年2月18日,浜松市) 皮膚バリア破壊による接触過敏反応の増強 西島貴 史,戸倉新樹,瀧川雅浩(浜松医大),芋川玄爾(花王 基礎研) ハプテンによるマウス接触過敏反応において,惹起 の24時間前に耳翼をアセトン処理あるいはテープスト リッピング法で皮膚のバリアを破壊することにより耳 翼腫脹反応が増強した.また右耳で感作し左耳で惹起 する系において,感作前のアセトン処理によるバリア 破壊により耳翼腫脹反応が増強した. ツツガムシ病の2例-PCR法によるRickettsia tsutsugamushi感染の証明例‐ 橋爪秀夫(国立東 静) 63歳女の典型例,および54歳男の非典型例の2例を 経験した.患者末梢血よりDNAを抽出し,杉田らの方 法を応用して, R. tsutsugamushiのHSP 60遺伝子を PCR法によって増幅した.非典型例に典型例と同一サ イズのバンドを認め,早期診断および速やかな治療の 導入を行い得た. angiolymphoid hyperplasia with eosinophilia様 の組織像を呈した外傷後皮膚潰瘍の1例 青木 社, 八木宏明,戸倉新樹(浜松医大) 56歳男.金属パイプ加工中に生じた左環指裂傷部に 拡大する浸潤局面を形成,中央に潰瘍を伴った.組織: 好酸球とリンパ球の桐密な浸潤と新生血管を認めた. また,連続切片で金属と思われる異物の混入を認め金 属パッチテスト,リンパ球刺激試験の結果から,金属 アレルギーの関与が示唆された.ステロイド内服, rIFN-y外用が有効であった. 陰部に限局して皮疹の認められた類天癒癒の1例 浦野聖子(遠州総合),須山敬二(浜松市) 78歳女.7ヵ月間,外陰部に紅斑が続く. H-E標本 では表皮,真皮間に裂隙形成が,直接I.Fでは基底膜部 にIgG, C3の沈着が認められた. splitskin を用いた間 接I.Fでは,無希釈血清で表皮側に抗体の沈着が認め られたが, intact skinでは陰性. cyclosporin 250mg/ dayとP.D.S 75mg/dayの併用が効果あり. 呼吸器・筋症状が先行した皮膚筋炎の1例 小楠浩 二,藤田 弘,今泉俊資(静岡県立総合) 43 61歳女.5ヵ月前より問質性肺炎.さらに筋肉痛, 脱力あり,その後四肢に落屑吐紅斑出現。CPK高値, 抗核抗体陽性,抗jo-1抗体陰性.悪性腫瘍合併認めず. 呼吸器症状は改善.最近5年間の報告例では,皮膚症 状で初発する例が大半を占め,筋・呼吸器症状が先行 する例に比し,予後が不良であることが多いことが示 された. local paratrophy のl例 坂本泰子,田中正人(藤 枝志太総合),鈴木健司(沼津市立),勝又 肇(静岡 市) 41歳女.10代の頃,右下腿に色素斑が出現.以後, 右顔面,左上肢,右下肢に萎縮が生じ,顔面の変形が 目立ってきた。MRIでは顔面の脂肪層の減少が認めら れた.病変部の皮膚生検像では,表皮から真皮,脂肪 層に萎縮がみられたが,膠原束の硬化,硝子化は認め られなかった.病因としては神経原性の萎縮か強皮症 の1亜型かが考えられた. カポジ肉腫を生じたAIDS患者の1例 荒浪暁彦, 桜井みち代(島田市民),戸倉新樹(浜松医大) 45歳男.躯幹,四肢,口腔内に自覚症状を認めない 暗紫色斑が多発.両側鼠径部,肢窟リンパ節腫大あり. カンジダ症,粟粒結核を合併し,抗HIV抗体陽性,p21 抗原陽性であった.また皮疹は肉芽腫様の組織像を呈 した.以上より自験例をカポジ肉腫を生じたAIDSと 診断した. CD30陽性細胞が認められた菌状息肉症の1例 山葉月,堀口大輔(静岡市立),神尾昌則(同血液内科), 伊藤忠弘(同病理),吉国好道(静岡市) 51歳男.初診平6年12月.現病歴:30年前より体幹, 四肢に紅潮,乾燥,20年前より類円形の浸潤性~落屑 性紅斑が出現,10年前より四肢に数週間で自然消失す る丘疹~小結節が多発してきた.組織:紅潮部,浸潤 性紅斑,大多数の丘疹では,異型小型リンパ球の真皮 および表皮内浸潤が認められたが,一部の丘疹で,大 型異型細胞の集族性増殖がみられた.大型細胞は, CD4, CD30, IL-2R, HLA-DR陽性を示した. eccrine spiradenoma の1例 大島昭博,松本博子, 井出瑛子,杉浦 円(清水市立)

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学会抄録

静岡地方会第52回例会(平成7年2月18日,浜松市)

 皮膚バリア破壊による接触過敏反応の増強 西島貴

史,戸倉新樹,瀧川雅浩(浜松医大),芋川玄爾(花王

基礎研)

 ハプテンによるマウス接触過敏反応において,惹起

の24時間前に耳翼をアセトン処理あるいはテープスト

リッピング法で皮膚のバリアを破壊することにより耳

翼腫脹反応が増強した.また右耳で感作し左耳で惹起

する系において,感作前のアセトン処理によるバリア

破壊により耳翼腫脹反応が増強した.

 ツツガムシ病の2例-PCR法によるRickettsia

tsutsugamushi感染の証明例‐ 橋爪秀夫(国立東

静)

 63歳女の典型例,および54歳男の非典型例の2例を

経験した.患者末梢血よりDNAを抽出し,杉田らの方

法を応用して, R. tsutsugamushiのHSP 60遺伝子を

PCR法によって増幅した.非典型例に典型例と同一サ

イズのバンドを認め,早期診断および速やかな治療の

導入を行い得た.

 angiolymphoid hyperplasia with eosinophilia様

の組織像を呈した外傷後皮膚潰瘍の1例 青木 社,

八木宏明,戸倉新樹(浜松医大)

 56歳男.金属パイプ加工中に生じた左環指裂傷部に

拡大する浸潤局面を形成,中央に潰瘍を伴った.組織:

好酸球とリンパ球の桐密な浸潤と新生血管を認めた.

また,連続切片で金属と思われる異物の混入を認め金

属パッチテスト,リンパ球刺激試験の結果から,金属

アレルギーの関与が示唆された.ステロイド内服,

rIFN-y外用が有効であった.

 陰部に限局して皮疹の認められた類天癒癒の1例

浦野聖子(遠州総合),須山敬二(浜松市)

 78歳女.7ヵ月間,外陰部に紅斑が続く. H-E標本

では表皮,真皮間に裂隙形成が,直接I.Fでは基底膜部

にIgG, C3の沈着が認められた. splitskin を用いた間

接I.Fでは,無希釈血清で表皮側に抗体の沈着が認め

られたが, intact skinでは陰性. cyclosporin 250mg/

dayとP.D.S 75mg/dayの併用が効果あり.

 呼吸器・筋症状が先行した皮膚筋炎の1例 小楠浩

二,藤田 弘,今泉俊資(静岡県立総合)

43

 61歳女.5ヵ月前より問質性肺炎.さらに筋肉痛,

脱力あり,その後四肢に落屑吐紅斑出現。CPK高値,

抗核抗体陽性,抗jo-1抗体陰性.悪性腫瘍合併認めず.

呼吸器症状は改善.最近5年間の報告例では,皮膚症

状で初発する例が大半を占め,筋・呼吸器症状が先行

する例に比し,予後が不良であることが多いことが示

された.

 local paratrophy のl例 坂本泰子,田中正人(藤

枝志太総合),鈴木健司(沼津市立),勝又 肇(静岡

市)

 41歳女.10代の頃,右下腿に色素斑が出現.以後,

右顔面,左上肢,右下肢に萎縮が生じ,顔面の変形が

目立ってきた。MRIでは顔面の脂肪層の減少が認めら

れた.病変部の皮膚生検像では,表皮から真皮,脂肪

層に萎縮がみられたが,膠原束の硬化,硝子化は認め

られなかった.病因としては神経原性の萎縮か強皮症

の1亜型かが考えられた.

 カポジ肉腫を生じたAIDS患者の1例 荒浪暁彦,

桜井みち代(島田市民),戸倉新樹(浜松医大)

 45歳男.躯幹,四肢,口腔内に自覚症状を認めない

暗紫色斑が多発.両側鼠径部,肢窟リンパ節腫大あり.

カンジダ症,粟粒結核を合併し,抗HIV抗体陽性,p21

抗原陽性であった.また皮疹は肉芽腫様の組織像を呈

した.以上より自験例をカポジ肉腫を生じたAIDSと

診断した.

 CD30陽性細胞が認められた菌状息肉症の1例 影

山葉月,堀口大輔(静岡市立),神尾昌則(同血液内科),

伊藤忠弘(同病理),吉国好道(静岡市)

 51歳男.初診平6年12月.現病歴:30年前より体幹,

四肢に紅潮,乾燥,20年前より類円形の浸潤性~落屑

性紅斑が出現,10年前より四肢に数週間で自然消失す

る丘疹~小結節が多発してきた.組織:紅潮部,浸潤

性紅斑,大多数の丘疹では,異型小型リンパ球の真皮

および表皮内浸潤が認められたが,一部の丘疹で,大

型異型細胞の集族性増殖がみられた.大型細胞は,

CD4, CD30, IL-2R, HLA-DR陽性を示した.

 eccrine spiradenoma の1例 大島昭博,松本博子,

井出瑛子,杉浦 円(清水市立)

44 学 会 抄 録

 48歳男.初診3週間前より左側腹部に皮下結節を自

覚.大豆大,弾性硬,表面青褐色.圧痛(十).組織:

真皮中層以下に被膜に包まれた腫瘍塊.濃染する小型

核を持つ細胞と淡染する大型核を持つ細胞の2種類が

索状,偽管状に配列.腫瘍辺縁で比較的大型の管腔構

造を形成.免疫組織化学的,電顕的に腫瘍細胞の起源

につき検討した.

 爪下外骨腫の4例 伏見 操,小粥雅明(富士宮市

立),井上邦雄(浜松労災形成外科)

 18歳女.右第1趾.17歳女,左第1趾.64歳女,右環

指.10歳女児,右栂指.爪甲下に弾性硬~骨陸硬の腫

瘤あり,X線撮影で骨吐陰影を認めたため爪下外骨腫

と診断した.治療は爪床をできるかぎり温存し,爪甲

や手足の変形を最小限に留めるような術式,早期の切

除が必要であると考えた.

 陰茎縫線嚢腫の1例 加藤美穂,槙坪康子(西尾市

民)

 20歳男.初診平5年10月4日.2年前より陰茎中央

背側に,米粒大の腫瘤に気付いていた.初診時3mm大,

半透明の腫瘤を認める.自覚症状なし.局麻下にて全

摘出術施行.組織:HE染色にて内面を数層の移行上

皮に覆れた嚢腫.一部に断頭分泌を認めた. PAS染色

にて上皮細胞,内容物に強陽性を呈し,ジアスターゼ

によっても消化されなかった.

 陰嚢に多発したいわゆるsolitary genital

leiomyoma 栗山和子,天草康弘,田中 信(静岡赤

十字)

 91歳男.初診平6年10月24日.1年前より,陰嚢の

左右両側に1つずつ10×10mm, 7×7mmの圧痛の著

明な淡紅色,弾性硬の腫瘤が出現した.組織:被膜の

ない交錯する平滑筋線維東よりなる腫瘍塊が真皮上層

~下層にみられ肉様膜との連続性を認めた.異型性は

ない.陰嚢の本腫瘍の多発例は,本邦初である.

 基底細胞母斑症候群の1家系 山田信幸,市川 寛,

脇田久史,戸倉新樹,古川福実(浜松医大),内藤泰宏

(同生化学第2)

 母子にみられた基底細胞母斑症候群(NBCC)を報

告した. PCR法でNBCC geneの近傍に存在するD9

S53というマーカー遺伝子のサブタイプを追跡した.

同一家系内では, NBCC geneの近傍に存在する数種

のマーカー遺伝子を追跡する事により,遺伝子診断や

出生前診断ができる可能性が示唆された.

 斑状強皮症型基底細胞上皮腫 大草康弘,田中 信

(静岡赤十字),宮川昌久,福積 聡(同形成外科)

 62歳女.平6年11月8日初診.3ヵ月前左頬部の癩

痕様皮疹に気づく.左下眼瞼下方に11×6mm,楕円形

の境界比較的明瞭な多少浸潤のある軽度陥凹した局面

を認めた.全摘後再発なし.組織:表皮と連続して基

底細胞様細胞より成る細胞巣が索状,不整形塊状に真

皮全巣に浸潤性に増殖.電顕的に浸潤部腫瘍細胞に基

底板(-).

 下口唇に生じた粘表皮癌の1例 伊東郁子,市川

寛,八木宏明,脇田久史,古川福実(浜松医大),古川

富紀子(清水厚生)

 32歳男.初診の3年前より下口唇に自覚症状を欠く

皮下結節が出現,徐々に増大.全切除後の組織所見で

は,粘膜上皮下に上皮様細胞,粘液細胞および中間型

細胞なる腫瘍の澗密な増殖を認めた.粘液細胞はCEA

陽性,中間型細胞の一部はS-100蛋白陽性であり,口唇

小唾液腺由来の粘表皮癌と診断.

 耳介に生じたボーエン病の1例 佐地良文(浜岡総

合),犬塚加代子,戸倉新樹(浜松医大)

 80歳女.7年前,左耳介に角化性紅斑局面が出現し,

ボーエン病の診断で,摘出・植皮術を受けた.6ヵ月

前から同じ部位に痴皮の付着した紅斑局面が生じた.

ボーエン病の再発と考えられた.組織学的にボーエン

病と一致し, HPV染色は陰性であった.枇素の摂取歴

はなし.日本では頭頚部,特に耳介に生じたボーエン

病は比較的少ない.

 大腿部adipofascial hpによる外陰部再建 福積

聡,宮川昌久(静岡日赤形成),人草康弘,田中 信(同

皮膚科)

 84歳女,排尿時疼痛,外陰部廳爛を主訴として来院.

生検にてBo wen病と診断.尿道粘膜の一部および皮

下脂肪を含めて切除した.大腿内部より大伏在静脈を

中心とするgreat saphenous VAF日aPにて再建した.

皮静脈の伴行血管を栄養動脈とする皮弁で,血行の安

定した,挙上の容易な皮弁である.

 伊藤母斑(?)の1例 曹 慶洙(社会保険桜ヶ丘)

 48歳男.5~6年前より上背部に色素斑出現.上背

部から両肩,一部胸部に境界比較的明瞭な灰青色から

褐色色素斑局面存在.組織:真皮上層~中層に褐色色

素有する紡錘形細胞散在.フォンタナ・マッソン,S-100

染色陽性.伊藤母斑,後天性真皮メラノサイトーシス

を鑑別.なお木症例は第24回山梨地方会にて発表済み.

 halo現象を伴ったSpitz nevusの1例 塚本克彦,

福田 覚(蒲原総合),八坂なみ,古江増隆(山梨医大)

 halo現象を伴ったSpitz nevus の1例を経験しだの

静岡地方会第53回例会

で,その現象に関わる免疫細胞について検討した.

 上腕に生じた悪性黒色腫の1例 松本博子,大島昭

博,井出瑛子,杉浦 丹(清水市立)

 50歳女.幼少時より左上腕外側に小豆大のホクロが

あり2年前より増大.27×22mmの境界明瞭な濃淡あ

る褐色斑.組織では大型で胞体の明るいpagetoid cell

が表皮基底層を中心に胞巣形成.基底膜は保たれ真皮

45

への浸潤はない. nevus cell(-).腫瘍細胞はPAS

ト), S-100(十), HMB-45(十). SSMレベル1.辺

縁より1.5cm離し筋膜直上で切除後6ヵ月現在,再発

転移なし.

 特別講演:真皮メラノサイトと遅発陛真皮メラノサ

イトーシス 小野友道(熊本大)

静岡地方会第53回例会(平成7年7月1日,静岡市)

 1ヵ月児のアトピー性皮膚炎 宇佐神治子(浜松市)

 目的:生後1ヵ月児のアトピー性皮膚炎(AD)の有

病率を調べる.方法:袋井市民病院における乳児健診

で1ヵ月見563名を調べた.結果:検診より2ヵ月以上

続いたことを確認したADは2.3%であった.このAD

が後に発病するADに比べ特に重症,あるいは長期化

することはなかった.1ヵ月児の約20%に座唐様皮疹

または乳児脂漏性皮膚炎が認められた.

 下肢に多発した環状扁平苔癖の1例 久松 晃,田

中 信(静岡赤十字)

 63歳女.初診平6年9月21日.半年前より両下肢に

自覚症状のない小指頭太までの中心治癒傾向のある円

形紅色局面が出現し増加した.以前より咳瞰があり胸

部X・PでBHLを認め血中SCCが高値であった.皮

膚サルコイドを疑って生検したが,環状の皮疹辺縁部

では扁平苔癖の像を示した.現在ステロイド外用にて

治療中である.

 金属アレルギーと皮膚疾患に当院最近3年間の臨床

統計~ 藤田 弘,小楠浩二,今泉俊資(静岡県立総

合)

 通常の治療に抵抗性で金属アレルギー疑診n8例に

金属系列の貼布試験を行い,陽性のものは該当する金

属を含む調理具や歯科金属の交換や金属キレート剤投

与を試み,前後の症状比較を行った.陽性金属はHg,

Ni, Crが多く,歯科金属に含まれるものは交換が比較

的有効であった.難治性疾患の中には金属アレルギー

の関わるものもあると考えられた.

 M. luteusが検出された尋常性乾癖 黒川滋子,冨

田浩一(榛原総合),戸倉新樹,古川福実(浜松医大),

牛嶋 彊(滋賀医大微生物)

 治療抵抗性の尋常性乾癖患者よりMicrococcus

luteusが分離された. M. luteusは一般に病原性は低い

とされているが,末梢血単核球のIFN-y産生増強作用

が認められた.このIFN-yによりケラチノサイトにク

ラスII抗原が発現され,T細胞活性を中心とした強い

皮膚炎症反応が引き起こされた可能性がある.

 色素性乾皮症F群の1例 青木 礼,戸倉新樹,鈴

木和恵,鈴木陽子,古川福実(浜松医大),松村康洋(京

大)

 14歳女児.11年前より,日光曝露後,露光部に紅斑

な水庖を形成し,2日から1週間の経過で色素斑や癩

痕を残さずに治癒するといった症状を繰り返してい

た. UVBによるMEDは48nJ/m2と低下していた.患

者線維芽細胞より, UDS 40.7%,色素性乾皮症F群と

診断された.現在のところ,皮膚悪性腫瘍や神経症状

は,認められていない.

 最近経験したサルコイドーシス(疑診例を含む)小

楠浩二,藤ffl 弘,今泉俊資(静岡県立総合)

 最近2年間に経験したサルコイドーシスの10例.男

女比3:7, 50代から70代に好発していた.部位別で

は,半数以上が顔面,発疹の型では,結節型,局面型

が多かった. ACE高値, BHL,ブドウ膜炎はそれぞれ

7例において認められた.文献検索により得た,最近

3年間に報告された50例においても,ほぼ同様の傾向

がみられた.

 糖尿病性浮腫性硬化症の1例 栗山和子,田中 信

(静岡赤十字),天草康弘(袋井市)

 48歳男.初診平7年2月9日.5年前より糖尿病に

て治療中である.2ヵ月前より,項部の違和感があり,

同部の皮膚硬化を指摘され当科受診した.現症:項部

から背部にかけ境界不明瞭な板状硬の局面を認める.

組織:真皮の肥厚と膠原線維の膨化・離開・ムチンの

沈着を認める. PGE誘導体製剤内服にて軽快してい

る.

 冠動脈痩を合併した弾力線維性仮性黄色腫の1例

西井正美(市立伊勢総合),中井久太夫(同内科),清

46 学 会 抄 録

水正之(三重大)

 pseudoxanthoma elasticumの典型的な皮疹及び眼

所見を有し,しかも肺動脈冠動脈痩を伴った46歳女例

を報告した.また本例に併発する心血管病変の発現率

ならびに罹患部位の文献的考察を行ったところ,本邦

症例と外国症例間に著しい差を認め,外国例に比し本

邦症例数の少ない原因につき,若干の考察を加えた.

 レボフロキサシンによると思われる横紋筋融解症を

伴った薬疹の2例 内藤静夫(国立熱海)

 症例1, 55歳男.症例2, 65歳女.いずれもクラビッ

ト⑧内服後に発疹と筋肉痛を発症し, CPK, ALD, LDH

など筋原性酵素の上昇と血中ミオグロビンの増加が認

められた.両例ともプレドニソロン内服にて臨床症状,

検査所見とも正常に復した.クラビット⑧による

DLSTは,症例1で254%,症例2で137%で,内服試

験は施行しなかった.

 抗腫瘍剤の動脈内注入により生じた皮膚軟部組織壊

死 深水秀一,山中克二,井上邦雄,後藤まゆき(県

西部医療センター)

 再発直腸癌に対する Co照射, ADM, MMCの内腸

骨動脈内注入後,殿部の軟部組織壊死をきたし,壊死

性筋膜炎,細菌性ショック, Dieを続発して死亡した

症例を報告した.早期の壊死組織除去,大量の抗生剤

投与の必要性,動脈硬化の強い血管と動注後の組織壊

死との関連について考察した.

 経肝動脈腫瘍塞栓術後に生じた皮下硬結の1例 田

中正人,坂本泰子(藤枝市立),小松原祐子(同消化器

科),板垣 康(同放射線科),古川福実(浜松医大)

 60歳男.肝細胞癌に対し経肝動脈腫瘍塞栓術施行直

後に腹部に有痛性の紅斑と皮下硬結を生じた.組織で

は表皮から脂肪織の壊死性変化が主体であり,脂肪染

色にて血管腔への脂質の充填を認めた.カテーテル抜

去の際にカテ先に残っていたリピオドールが下横隔動

脈を介して表在血管へ塞栓を生じたものと考えられ

た.

 紅斑性類天癒癒の1例 田中 信(静岡赤十字),天

草康弘(袋井市)

 78歳男.ほぼ全身に激しい痛岸を伴った円形~環状

の浮腫性紅斑が多発していた.慶爛,痴皮と僅かな小

水庖が紅斑上にみられたが水庖はみられず,庖疹状皮

膚炎又は庖疹状天庖癒を疑った.表皮下水庖を認め,

DIFで基底膜にlgGの沈着を認めた.

 食道癌を合併した水痘性類天癒療 浦野聖子(遠州

総合),杉山雅也,田中 彰(同内科)

 86歳男.全身に浮腫性紅斑と水庖を生じる.組織学

的には表皮下水庖で,直接I・FではBMZにIgG, Cb

の沈着(十).血中抗BMZ抗体は320倍.粘膜病変ト).

治療に抵抗性を示す.類天庖痕発症から2年後に食道

癌の合併が認められたが無治療で観察.発症3年後に

4回目の再燃で治療中に麻蝉性イレウス,肺炎を生じ,

死亡.

 papular angiokeratoma の1例 井出瑛子,大島昭

博,松本博子,杉浦 丹(清水市立)

 13歳,女児.約3年前からある左膝下の皮疹が拡大,

一部黒色を呈した為,近医受診.悪性黒色腫疑いで当

科紹介となる.皮疹は10×12mmの扁平隆起局面で,

一部黒色血痴が附着し,点状紅色丘疹を混じる.組織

学的に真皮乳頭層に多数拡張した管腔を認め,中に赤

血球が充満.特染にて管腔壁に沿ってUEA-1陽性,第

VIII因子関連抗原弱陽性.全摘後,再発なし.

 blue rubber bleb nevus syndromeの1例 鈴木和

恵,堀口大輔(静岡市立),影山葉月(浜松医大)

 69歳女.約10年前より右手首,背部,口唇などに軟

らかい皮下腫瘤が多発.組織学的にはcavernous

hemangiomaであった.

 disseminated superficial actinic porokeratosisの

1例 佐地良文(町立浜岡総合),戸倉新樹(浜松医大)

 67歳男.約1年前から,体幹と四肢の露光部を中心

に,自覚症状のない黒褐色の角化性皮疹が多発した.

組織:cornoid lamellaを示した.臨床と組織像から

DSAPと診断した.建設作業員のため日光にあたるこ

とが多く,光線の影響を強く受けていると考えられる.

PSAPの分類及び特徴について言及した.

 proliferating trichilemmal cystの1症例 寺内

雅美,高浜宏光,玉森嗣育(三島市),鈴木健司(沼津

市立)

 57歳女.2年前より前頭部に丘疹出現,徐々に拡大

してきた.現症:前頭部ほぼ正中に直径約1cm,淡紅

色を呈する類円形で弾性硬,軽度隆起する境界明瞭な

皮下腫瘤.組織:proliferating trichilemmal cystの

典型.

 オスラー病に対する鼻腔植皮術の経験 山中克二

(浜松医療センター),船井恒嘉(同耳鼻科),深水秀一

(同形成外科)

 67歳,鼻出血,顔面,舌,□唇,胃粘膜の血管腫様

小丘疹,遺伝的発生よりオスラー病と診断.止血剤,

電気凝固,タンポン圧迫を試みたが,完全に止血でき

なかったため,難治性鼻出血に対して,鼻粘膜切除,

静岡地方会第54回例会

遊離植皮を行った.術後出血もなく,植皮は生着し,

鼻出血は軽微となった.

 ステロイド局注が著効したlymphocytoma cutls の

1例 三田 均,関塚敏之(聖隷浜松)

 60歳男.ひげ剃りの小外傷炎.上口唇に赤紫色腫瘤

出現.生検では真皮や毛嚢周囲に高度のリンパ球浸潤

と胚中心の形成がみられた.浸潤細胞はB cellマー

カー(CD-45)で強陽性,T cellマーカー(CD-45R)

ではほとんど染色されなかった.ステロイド局注を

行ったところ,3週後には消退しその後再発はみられ

ていない.

 右下腹部に生じた異所性乳房外パジェツト病の1例

松本博子,大島昭博,井出瑛子,杉浦 丹(清水市立)

 63歳女.3年来右下腹部に紅斑あり漸次拡大.爪甲

大の黒色斑を混じる小児手拳大の濃淡ある角化性紅色

局面.組織にて表皮内,毛嚢上皮にPAS, CEA陽性,

S 100陰性のPaget cell(十).下床にアポクリン腺あ

るも副乳腺なし.異所性乳房外パジェツト病の本邦報

告26例の発生部位及びoriginをまとめ通常部位のも

47

のと比較した.

 足底疵贅に対する鋭匙・電気焼灼による治療 佐山

重敏,田漫 洋,木崎二郎(天理よろづ)

 疵贅の治療は現在液体窒素による冷凍療法が主流で

あるが,冷凍療法だけでは治療に難渋する症例も多い.

特に足底に生じた虎贅は治療に抵抗することが多く,

鋭匙による掻戻や電気焼灼といった外科的治療によっ

て初めて治療に反応する例がある.外科的治療を柔軟

に使えば,疵贅に対する治療効果が一層上がるものと

考える.

 ダイレーザーを用いた表在性色素異常症の治療 石

井筒澄(榛原郡)

 フラユシュランプダイレーザー(510nm, 375ns)に

より老人性色素斑55例,扁平母斑15例,雀卵斑3例を

治療.老人性色素斑では著効29%,有効39%,やや有

効12%,無効20%と著効と有効をあわせた有効率は

68%であった.炎症後色素沈着を生じやすい方,色調

がうすい病変では濃くなる傾向かあった.

静岡地方会第54回例会(平成7年9月30日,三島市)

 静岡県における医薬品の関連した光線過敏症につい

ての実態調査 藤田 弘,小楠浩二,今泉俊資(静岡

県立総合),戸倉新樹,瀧川雅浩(浜松医大),木下次

郎,日野田一樹,増潭俊幸,清水忠順,岩本義久,柳

原保武(静岡県立大薬学)

 静岡県内の皮膚科医在局34病院にアンケート調査を

行った.近年医薬品の関連した光線過敏症の症例は増

加しており,春から夏にかけて多いという回答が過半

数.原因としては近年ニューキノロン系抗菌剤が多数

を占めている傾向あり.76歳男のメキタジン内服10日

目発症症例と86歳男のスパルフロキサシン内服3日目

発症症例を供覧した.

 炎症性皮膚疾患患者の末梢血リンパ球におけるFas

抗原の発現について 伏見 操,古川福実,戸倉新樹,

瀧川雅浩(浜松医大)

 アトピー性皮膚炎・中毒疹などの炎症性疾患患者(18

人)のリンパ球上のFas抗原の発見について検討し

た.各疾患で有意な差はみられなかったが,疾患の活

動期・非活動期でFas抗原に変動を認めた.治療前後

で増加する症例や,ステロイド内服例では減少を認め

た.今後さらに多くの症例での検討が必要であると思

われた.

 難治性皮膚疾患の漢方治療剤 荒浪暁彦,桜井みち

代(島田市民)

 抗アレルギー剤内服,ステロイド外用, PUVA療法

などが無効であった慢性諦疹の患者2例に対し,腹証

を手掛かりとしてそれぞれ温清飲と防風通聖散を投与

し著明な改善を認めた.

 凍結療法,軟属腫摘除術におけるリドカイン軟膏の

使用経験 五十嵐晴巳(静岡厚生),大島昭博(東海記

念)

 軟属腫摘除術,液体窒素による凍結療法施行前に

5%リドカイン軟膏(5%キシロカイン軟膏⑧)にて30

分間DDTを行った.56例中41例73.2%に有効であっ

た.特に軟属腫摘除においては90%以上に有効で,良

好な鎮痛効果が得られた.

 インターフェロンおよびPPDによる難治性疵贅の

治療経験 山田信幸,橋爪秀夫(沼津市立),伊藤泰介,

脇田久史,戸倉新樹(浜松医大)

 19歳女.液体窒素凝固療法,グルタールアルデヒド

外用,ブレオマイシン軟膏の外用,ヨクイニン内服な

ど種々の治療に抵抗した右第1指爪郭部から爪床部の

48 学 会 抄 録

尋常性疵贅に対して,PPD液,及びインターフェロンy

の局所注射により,略治した.種々の治療に抵抗する尋

常性疵贅に対し,この方法は有効な治療のひとつと考

えられる.

 当科における訪問診療の現状 久松 晃,田中 信

(静岡赤十字),永野純子,脇田朱己,田形尚子(同医

療社会事業部)

 最近4年間の当科の訪問診療の患者数は11大(落葉

状天庖瘤・水庖性類天庖疸・体部白癖・帯状庖疹・乾

癖など)で,同時期の当院全体の訪問診療645大の1.7%

を占める.そのうち日常比較的少ない疾患である水庖

症の患者では,訪問診療の際にIIFのための採血を施

行して来たため,早期診断・早期治療が可能となり有

意義であった.

 DAV療法による視神経障害をきたした悪性黒色腫

の1例 福積 聡,陳 建穎(静岡日赤形成),田中

9 柚

久松 晃(同皮膚科),小田 仁,川島晋一(同眼

 65歳男.2年10ヵ月前に,脊部悪性黒色腫にて,拡

大切除,鼠径部廓清,DAV1クールを施行した.2年後,

ブドウ膜炎治療中に骨盤内再発が見つかり, DAVl

クールを施行した.化療後,視力障害が進行した.画

像診断上,腫瘍は確認できず, VCRによる視神経障害

を疑った.その後も視力は改善せず.

 男性SLE患者に生じたMRSAによる多発性皮下

膿瘍の1例 小楠浩二,藤田 弘,今泉俊資(静岡県

立総合),五十嵐晴巳(静岡厚生)

 36歳男. SLEの診断にて, PSL5~lOOmgの投与行

われるが,発熱持続し,頚部リンパ節腫脹,四肢に多

発する皮下膿瘍出現.静脈血, IVHカテーテル,膿瘍

穿刺液よりMRSA検出. MRSAによる菌血症,多発

性皮下膿瘍と診断. FOM, FMOX, AMK, MINOの

投与,切開排膿にて軽快.

 副腎皮質ステロイド外用により拡大した硬性下瘤

山中克二(浜松医療センター),深水秀一(同形成外科)

 30歳男.7月17日,陰茎基部の自覚症状のない,円

形の潰瘍で初診.組織学的にリンパ球,形質細胞の浸

潤, RPR 32倍, TPMA 320倍で梅毒と診断.患部に

ステロイド軟膏を使用していたため,ステロイド軟膏

外用による,硬性下瘤の拡大と考えられた.

 再発陛多形漆出性紅斑の1例 伊藤泰介,白浜茂穂,

戸倉新樹,古川福実(浜松医大)

 32歳男.高校生の頃より単純庖疹ウイルスによると

思われる多形紅斑をくり返していたが,8年間程経過

後,突如口腔内に症状伴わない四肢のみの多形紅斑を

くり返すようになった.皮膚からのPCR法によるウ

イルスDNAは陰性.治療としてPSL 10~30mg長期

内服していたが,平成7年よりDDS内服開始.

 結節性筋膜炎の2例 大橋一樹,勝俣道夫(伊豆逓

信)

 症例1, 80歳女.右前腕屈側に小指爪中大の皮子腫

瘤が急速に出現.症例2, 52歳女.5日前より右前腕

屈側に圧痛ある直径1Cmの皮下腫瘤出現.組織は清水

らの分類で症例1はmyxoid type に,症例2はcellu-

lar type とfibrous typeの中間型に合致.免疫組織化

学的検討でCD34 (-), factorXⅢa(十)であり,皮

膚線維腫と同様の所見を得た.

 抗カルジオリピン抗体症候群の1例 橋爪秀夫,山

田信幸(沼津市立),鈴木健司(浜松医大)

 48歳女.下腿に巨大な多発性皮膚潰瘍が出現.当科

入院時胸部レントゲン写真にて心肥大,精査にて弁膜

症を認めた.入院3日目に右半身麻輝が出現,精査に

て左中大脳動脈の完全閉塞による脳梗塞と判明.また,

肺血流シンチグラムにて多発性欠損像を認め,無症候

性多発性肺梗塞の存在も確認された.

 クラゲ刺傷の8例 谷口章雄,久松 晃,田中 信

(静岡赤十字)

 皮疹は浮腫性紅斑,漿液性丘疹が線状に配列.2例

は受傷翌日受診,6例は自然経過で軽快した症状が再

燃し受診.抗アレルギー薬内服とステロイド軟膏外用

による治療薬の再燃はなかった.真夏日が続いて海風

が強い時や潮の流れが止まった時はクラゲに注意.受

傷時は熱い砂をかけ,海水で洗い,アルコールをかけ

ること.

 扁桃炎が誘因となったitching purpura の1例 佐

地良文(町立浜岡総合),梅原潤一(同耳鼻科),戸倉

新樹(浜松医大)

 39歳男.扁箇炎に引き続いて,四肢と躯幹に強いそ

う庫を伴う点状紫斑と局面が出現した.組織像では,

真皮乳頭層と表皮のリンパ球浸潤と赤血球の漏出を認

めた.咽頭からβ一溶連菌と黄色ブドウ球菌が検出さ

れ,同様の臨床像を3回繰り返したことから,扁桃炎

が誘因となって発症したitching purpura と考えた.

 第XⅢ因子製剤の投与が奏効したアナフィラクトイ

ド紫斑の1例 加藤美穂,槙坪康子(西尾市民),前田

拓司(同消化器内科),加藤浩一(同血液内科)

 30歳男.感冒様症状の出現後,両下腿に点状~小豆

大の出血斑認めた.凝固系第13因子低下. DDS内服,

静岡地方会第54回例会

ステロイドパルス療法にても紫斑の消失をみず,第13

因子製剤の使用により消退した.1ヵ月後,両下腿の

紫斑再発,第XⅢ因子を測定したところ,再度低下を認

めた.

 ケブネル現象を生じたアナフィラクトイド紫斑病の

1例 鈴木和恵,堀口大輔(静岡市立),砂川佳昭(同

小児科)

 症例1,5歳男児.症例2,6歳男児.特に誘因な

く,下肢の多発性関節痛が出現.発症より数日後,軽

度の外力をうけた部位に皮下出血斑様の皮疹が出現し

た.皮膚生検を施行したところ, leukocyte clastic

vasculitisの所見を得,ケブネル現象と考えられた.

 骨髄性プロトポルフィリン症の1例 花岡弘太郎,

影山葉月,戸倉新樹(浜松医大)

 21歳女.11歳より露光部にぴりぴり感を伴う腫脹出

現.血中プロトポルフィリン高値.

 皮膚科で発見しえた乳癌の2例 栗山和子,久松

晃,田中 信(静岡赤十字)

 皮膚症状を初発とした乳癌の転移性皮膚癌を経験し

た.症例1, 65歳女.左乳房外側上1/4に鎧状癌を認め

た.癌細胞が真皮内に島状に浸潤し,わずかにリンパ

管内塞栓像もみられた.症例2, 69歳女,右乳房外側

下方に乳頭大の結節と板状硬の硬結を認めた.癌細胞

は真皮内に索状及び島状に浸潤していた.原発巣の乳

癌は充実腺管癌であった.

 特異な臨床像をとったprimary mucinous car-

cinoma of the skin の1例 深水秀一(浜松医療セン

ター形成外科),山中克二(同皮膚科),石田岳志(袋

井市民)

 75歳男.右下腹部に4年前より黒色腫瘤.その後右

鼠径部腫瘤.組織:粘液中に浮遊する腫瘍細胞塊.

PAS陽性,ジアスターゼ抵抗性,アルシャンブルーPH

7.5陽性, pH 1以下陰性の粘液.細胞はS-100陽性,

CEA陽性でPMCSと診断.腫瘍切除,リンパ節廓清を

施行.他のムチン産生腫瘍の皮膚転移を否定すること

を強調した.

 左膝蓋部に生じた単発吐グロムス腫瘍の1例 山秋

孝子(修善寺クリニック),勝俣道夫(伊豆逓信)

 58歳女の左膝蓋部の有痛性紅色小結節.免疫組織学

的検索で腫瘍細胞は, vimentin.α-SMA陽性, desmin

陰性, FVniRA血管腔と一部腫瘍細胞に陽性, S-100

protein腫瘍周囲の神経線維に陽性,FXⅢa, CEA,

keratin陰性であった.電顕的に腫瘍細胞は正常平滑

筋と類似していた.

49

 異物肉芽腫の1例 西井正美(市立伊勢総合),清水

正之(三重大)

 74歳男.約50年前に戦地にて左大腿部を負傷.初診

の約10年前より,同部に自覚症状のない黒紫色,波動

を触れる腫瘤が出現した.摘出術にて内部より,弾丸

を脂肪織が包む形での嚢腫状皮膚塊が認められた.ま

たこの弾丸の主成分である金属につき,その血中値を

検査したが,血清銅,血中鉛のいずれも正常域であっ

た.

 頚部に限局して生じたKi-1リンパ腫の1例 秦

まき,影山葉月,八木宏明,戸倉新樹(浜松医大),荒

浪暁彦,桜井みち代(島田市民)

 82歳男.前頚部に2.8×4.5cmの発赤を伴う弾性硬

の腫瘤を自覚.HE染色では真皮上層~皮下筋層にか

けて小~中型,異型性のあるリンパ球様細胞の浸潤が

認められ,それらの90%以上がCD30陽性.また遺伝子

の再構成が認められた.以上より,頚部に限局して生

じたKi-1リンパ腫と診断し,電子線総量30Gyにて治

療したところ,奏効した.

 皮膚髄膜腫の1例 宮川昌久,福積 聡(静岡赤十

字形成外科),大草康弘,田中 信(同皮膚科),田中

一郎(弘前大形成外科)

 髄膜腫が皮膚や皮下組織に発生することはきわめて

稀である.われわれは皮膚髄膜腫の1例を経験した.

症例は36歳女.平3年12月25日当科を受診.交通事故

後の5mm大左内眼角部皮下腫瘤に,切除術を施行し,

画像および病理組織学的所見から皮膚髄膜腫と診断し

た.

 特発l生陰嚢石灰沈着症の1例 安西秀美,大島昭博,

松本博子,井出瑛子,杉浦 丹(清水市立)

 57歳男.約20年前より陰嚢に自覚症状を欠く黄色調

で小指頭大から栂指頭大までの硬い結節が増加・増大.

生検にてヘマトキシリンに濃染する大小の塊状物質を

真皮全層性に認めた.上皮性壁は認められなかった.

以上より特発性陰嚢石灰沈着症と診断した.特発性陰

嚢石灰沈着症の成因につき若干の考察を加え報告し

た.

 mucous cyst of the vulva の1例 松本博子,安西

秀美,井出瑛子,杉浦 丹(清水市立)

 27歳女.4年来腔入口部肛門側(陰唇小帯)やや内

方に小腫瘤あり.栂指頭大の表面平滑弾性軟の有茎性

腫瘤で局筋下に切除.半割にて黄褐色の泥状物排出.

嚢腫壁は多数の杯細胞を混ずる1~数層の円柱細胞

で, Al-B, PAS, d-PAS染色とも陽性. mucous cyst

50 学 会 抄 録

of the vulva としての本邦報告例はなく,由来につい

て考察した.

 chondrodermatitis nodularis chronica helicisの

1例 松下佳代,脇田久史,八木宏明,戸倉新樹(浜

松医大)

 70歳男.右耳輪に生じた5×4mmの小結節は圧痛を

伴い軟骨様硬.組織:結節中央の過角化,不全角と変

性物質の経表皮排出,真皮内の肉芽腫と,周囲に炎症

を伴う軟骨組織が認められ, chondrodermatitis

nodularis chronica helicis と診断した.下床の軟骨を

含め切除後3ヵ月の現在,再発はみられていない.

 ダリェー病の2例 遠山京子,白浜茂穂,戸倉新樹,

古川福実(浜松医大)

 症例1, 62歳男.45歳頃より体幹,上下肢に,角化

性小丘疹が多発し夏季増悪.慢性C型肝炎のため,エ

トレチネート投与せず抗生剤内服,外用にて経過観察

中.症例2, 21歳男.19歳頃より脊部に限局した褐色

丘疹出現.皮膚症状はエトレチネート内服にて軽決.

いずれも家族歴はみられず,組織は典型的.