障害者 雇用 - jeed.or.jp · 「合理的配慮の提供」に関する事例...

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障害者 雇用 平成29年7月25日発行・毎月1 回25日発行・通巻第479号 ISSN 0386-0159 No. 479 2017 8 8 月号 「爬虫類専門店」沖縄県・高 たか あつ さん 就職はゴールではなくスタート ~多様な人材が活躍し続けられる職場~ 積水ハウス株式会社(大阪府・東京都) 世界中から集めた植物を守り育てる 日本新薬株式会社 山科植物資料館(京都府) 編集委員が行く グラビア 障害者雇用は多様性への気づきを生み出す ~聞こえなくても見えなくても成長できる環境づくり~ 株式会社UDジャパン 代表取締役 内山早苗さん 私のひとこと 職場ルポ 得意分野を活かして『職人の世界』で活躍中 ~「世界で1 組」のリングをつくる~ 株式会社杢目金屋(東京都)

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Page 1: 障害者 雇用 - jeed.or.jp · 「合理的配慮の提供」に関する事例 「障害者雇用事例リファレンスサービス」 / ... 研究開発レポート 28 障害者在宅就業支援の現状と課題に関する研究

誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています

障害者と雇用

平成29年7月25日発行・毎月1 回25日発行・通巻第479号 ISSN 0386-0159

No.4792017 8

8 月号

「爬虫類専門店」沖縄県・高たか

江え

洲す

昌あつ

樹き

さん

就職はゴールではなくスタート~多様な人材が活躍し続けられる職場~ 積水ハウス株式会社(大阪府・東京都)

世界中から集めた植物を守り育てる日本新薬株式会社 山科植物資料館(京都府)

編集委員が行く

グラビア

障害者雇用は多様性への気づきを生み出す~聞こえなくても見えなくても成長できる環境づくり~  株式会社UDジャパン 代表取締役 内山早苗さん

私のひとこと

職場ルポ 得意分野を活かして『職人の世界』で活躍中 ~「世界で1組」のリングをつくる~株式会社杢目金屋(東京都)

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間瀬大輔(ませ だいすけ) 1975(昭和50)年、父の転勤先の名古屋で、男女の二卵性双生児で低体温児として生まれました。自閉症をともなう発達障害、言葉の遅れ、虚弱体質のため、2年の就学猶予後、茅ヶ崎市立西浜小学校入学。このころはまだ、住んでる地域に特別支援学校などありませんでした。 極度の少食・偏食を克服するために、週末は嫌いな食べ物をリュックに入れ、友人家族らとよくハイキングに行きました。少食・偏食の解消、体力増強にもなりました。山ではすれ違う人々が必ず声をかけてくれるため、発語にもつながりました。 公立中学校卒業後、社会福祉法人・藤沢育成会「よし介

すけ工芸館」に通所。機

はた織おりや版画の仕事をしていました。

 現在は、東京都千代田区にある「東京海上ビジネスサポート株式会社」でシュレッダー作業などの仕事をしています(2010年入社)。週末はCDを聴きながら、旅の思い出を描くのが楽しみの1つです。僕の絵を、勤務している会社のカレンダーに使っていただいて、とても嬉しいです。 (文/間瀬大輔)

間瀬 大輔「イタリアの果物屋さん」

旅行先で市場へ行くのが楽しみです。きれいな色の花、果物、野菜、珍しい魚、生ハムの塊

かたまり、穴のあいた大きなチーズ、美味しそうな匂い。

その土地の様子がわかって楽しい時間です。最近では、ポルトガルの市場で見た、大きな干

ほし鱈だらの解体が面白かったです。

子どものころは少食・偏食だった僕ですが、いまは食べることが大好きです。

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12

19

インフォメーション

エ ッ セ イ

「合理的配慮の提供」に関する事例 「障害者雇用事例リファレンスサービス」/発達障害者の雇用ノウハウに関する動画「ともに働く職場へ~事例から学ぶ発達障害者雇用のポイント~」/平成29年度 就業支援課題別セミナー「雇用分野における合理的配慮」のご案内

第 2 回 みんなでつくるバリアフリーマップ『WheeLog!』織田友理子

15グ ラ ビ ア世界中から集めた植物を守り育てる日本新薬株式会社 山科植物資料館(京都府) 文/写真:小山博孝

2

10N O T E

私のひとこと

職 場 ル ポ 4

得意分野を活かして『職人の世界』で活躍中~「世界で1組」のリングをつくる~株式会社杢目金屋(東京都) 文:清原れい子/写真:小山博孝

編集委員が行く 20

就職はゴールではなくスタート~多様な人材が活躍し続けられる職場~積水ハウス株式会社(大阪府・東京都) 編集委員 箕輪優子

障害者雇用は多様性への気づきを生み出す~聞こえなくても見えなくても成長できる環境づくり~株式会社UDジャパン 代表取締役 内山早苗さん

精神障害者の雇用と職場定着 Vol.3職場定着に向けて(1)~毎日の体調の変化を把握する~

障害者と雇用

◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp)

表紙の説明表紙の説明表紙の説明        「将来やってみたい職業だったので描きました。生き物を描くのがむずかしかったですが、自分の好きな爬虫類の絵が描けて楽しかったです。受賞を聞いたときは、選ばれると思っていなかったので、びっくりしました。6年生になってからは、国語の学習に集中できるようになりました」(平成28年度障害者雇用支援月間ポスター原画募集・小学校の部高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞)

ニュースファイル

掲 示 板

28研究開発レポート障害者在宅就業支援の現状と課題に関する研究障害者職業総合センター研究部門

26霞が関だより農業関連分野における生活困窮者への就労支援の現状と課題農林水産省 農林水産政策研究所 小柴 有理江

No.4792017 8 月号

前頁

「イタリアの果物屋さん」 作者:間瀬 大輔(東京海上ビジネスサポート株式会社)

心のアート

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2働く広場 2017.8

株式会社UDジャパン

代表取締役

内山早苗

障害者雇用は多様性への気づきを生み出す

〜聞こえなくても見えなくても成長できる環境づくり〜

高齢者、障害者、育児中、介護中……。お

客さまだけでなく、企業で働く社員も多様に

なっているいま、その多様性をどのように活か

すかが企業の生産性に大きく影響する。

UDジャパンの理念は、「ノーマライゼーシ

ョンの推進」。だれもが当たり前に能力を発揮

できる環境を醸じょうせい成し

、企業に多様な社員への育

成業務(テキストづくりや研修、昇格試験や

その評価)を提供している。UDジャパンでは、

20数年にわたり、障害のある社員も、障害が

ない社員同様に「段階をふんで育成してほしい」

と企業に働きかけてきた。そしてここ5〜6年、

障害のある社員の育成に取り組む企業が確実

に増加し、障害のある社員への研修依頼が年々

増えている。

働き方改革は必然の課題

障害者の法定雇用率は、2018年4月に

2・2%に上がる。2021年3月までには

2・3%となる。これらの障害のある社員に生

産性向上を求めないならば、そのしわ寄せはほ

かの社員が負担することになる。しかも、定年

延長による高年齢社員は増加し、産休や育休、

介護中……フルタイムで稼働ができる社員が少

なくなってきた。いままさに、働き方改革が迫

られている。高齢であろうと、育児中であろう

と、障害があろうと、生産性を向上できる環

境整備が求められているのだ。

育成は利益に直結……

計画的な育成で成果を期待

UDジャパンが研修事業や運営支援を担当

している企業を、2つ紹介したい。

* 

* 

A社は、業績が好調な特例子会社だ。「社員

の成長が会社の成長を支えます」と謳うた

い、障

害に関係なく、個人の持てる能力を発揮でき

る環境をつくっている。

UDジャパンは、ここで新入社員研修、フォロ

ーアップ研修、2年目、3年目と4回の研修を段

階的に実施して今年で6年になる。障害に合

わせた合理的配慮を行い、一般企業の新入社員

と同じ研修プログラムを実施していく。

研修カリキュラムにはある程度のひな形はあ

るものの、社員一人ひとりの不足能力、伸ばし

てほしい能力などを、トップや関係者にヒアリ

ングし、その内容を受けてカスタマイズをして

いく。また、A社側も、社員が研修でつくった

目標設定を上司面談などで確認し、われわれ

と情報を共有するので、講師も、彼らの成長の

度合いや変化を把握し、細かい指導を行える。

6年間、同じ社員たちと接して実感するこ

とがある。それは、「戦力として期待し、成長

をうながす環境を整えれば、障害の有無、障

害の程度や種類に関係なく、人は大きく成長

していく」ということだ。

* 

* 

B社は外資系IT企業で、障害のある社員

に2年間集中して自社のIT教育を行う。資

格取得はもちろんだが、このほかにもビジネス

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3 働く広場 2017.8

内山早苗 (うちやまさなえ)

株式会社UDジャパン 代表取締役、一般社団法人ダイバーシティ・アテンダント協会 代表理事、NPO 法人ユニバーサルイベント協会 代表理事、NPO 法人障がい者就業・雇用支援センター 副理事長、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「雇用管理サポート事業協力専門家」

明治大学卒業後、出版社勤務を経て 1983 年創業、現在に至る。一貫して企業の人材育成に関する仕事を行う。なかでも障害者・高齢者などの組織での雇用・能力開発に注力し、テキスト、マニュアル、研修、調査などを専門とする。また、2005(平成 17)年より、障害のある人もない人もともにダイバーシティを体験する「ユニバーサルキャンプin八丈島」(参加者 120 ~ 130 名)を毎年実施。

スキルの研修や自分自身の

障害を受け入れる「メンタ

ル研修」が教育体系に組み

込まれている。UDジャパン

は、B社で10年にわたって

研修を行っている。彼らの

吸収力と成長は目覚ましく、

多様な障害のある同期や先

輩たちとの切磋琢磨した交

流のなかで、お互いの特性

に配慮できるコミュニケーシ

ョン能力も身につけていくこ

とを実感している。

障害は、ある意味ひとつの特性である。障害

によってできない部分はたしかにあるが、それ

以外は同じである。企業もほかの社員同様に

彼らに期待し、育成の機会を与えれば、彼ら

も意欲をもって自ら学ぶ姿勢を獲得し、光る

人材に成長していく。

ただ、その特性により育成の方法はそれぞれ

だ。聴覚障害の社員が聴者と一緒に研修を受け

ても、よほど講師が合理的配慮を行って研修を

しないかぎり、内容の修得はむずかしいだろう。

UDジャパンでは、聞こえない社員には手話通

訳やパソコン筆記などの情報保障を行い、見え

ない社員には、プロジェクターをすべて読み上

げたり、パソコンの読上げ機能が使えるように

テキストデータを支給したりするなど、音声情

報を渡すよう配慮する。講師陣は彼らの特性

をよく理解する者を揃えている。知的障害のあ

る社員の研修も行っている。研修で会社から期

待されていることを感じた参加者は、前向きに

研修に取り組み、確実に成長していく。企業は

たしかな効果を感じ、その年の秋や2年目のフ

ォロー研修の依頼をしてくれるところが増えて

いる。今年4月も多様な新入社員に研修を行っ

たが、その企業数は年々多くなっている。

重要なのは上司や周りの人の理解研修

しかし、いくら本人が努力しても、一緒に働

く上司や先輩・同僚が彼らの障害特性を理解

していなければ、コミュニケーションはすれ違

い、彼らの成長をうながすことはできない。私

どもが必ずお願いするのは、障害のある社員の

特性を理解して、どのような配慮(合理的配慮)

が必要なのかを学んでいただくことである。

一緒に働く上司や先輩に、彼らの研修を見学

してもらったり、障害についての理解研修を受

けていただいている。双方の学びが実現できた

ときには、2・2%の人材が貴重な戦力になっ

てくる。

360度の視点が商品や

サービスに活かされる

障害への理解が深まると、高年齢社員や育児

中・介護中の社員への配慮も自然に生まれてく

る。「価値観や特性の違いがあるのが当たり前」

という認識になり、それぞれの角度から考えら

れるようになる。この360度の視点で、自社

の商品やサービスが自然にダイバーシティに配

慮したものに変わっていく。インバウンド(※)

も含め、お客さまの半分以上に、何らかの配慮

が必要な状況が進んでいるいま、人材の多様性

こそが今後求められる商品やサービスを生み出

す原動力になり、多様化した社会で企業が生き

残る基盤になるのではないか。ダイバーシティ

の推進が戦略になると確信している。

図:ダイバーシティ研修の資料より

※外国人が訪れてくる旅行のこと。訪日外国人旅行

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4働く広場 2017.8

        

得意分野を活かして『職人の世界』で活躍中~「世界で1組」のリングをつくる~

(文)清原れい子 (写真)小山博孝

株式会社杢もく

目め

金がね

屋や

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-4-2シャロンビルTEL03-3408-7863 FAX03-3408-7864

取材先データ

Keyword:就労移行支援事業所、精神障がい、業務体制の工夫・改善、勤務時間の配慮

―株式会社杢も く

目め

金が ね

屋や

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5 働く広場 2017.8

木もく

目め

金がね

。初めて聞く名だった。木目金は、

金属の色の違いを利用して木目状の文様

を創り出す、日本独自の特殊な金属加工

技術のこと。江戸時代初期に生まれ、幕

末には刀とう

装そう

具ぐ

をはじめ、煙き

せる管

、矢や

立たて

、茶

道具などが制作されたが、明治時代に廃

刀令が出されると、その技術はすたれて

しまった。

「株式会社杢もく

目め

金がね

屋や

」は、木目金の伝

統技術を現代に活かそうと、東京藝術大

学で彫金を学んだ現・社長の髙橋正樹さ

んが1997(平成9)年に創業し、20

03年に会社組織に。同時にNPO法人

「日本杢目金研究所」を設立し、伝統技

術の研究と復元、収集、保存、普及にも

力を入れている(木目金の歴史、技術な

どの詳細はホームページをご覧ください。

https://www.mokum

eganeya.com/

)。

髙橋さんは、「人と人の絆を結ぶジュ

エリー(つながるカタチ)」として、木目

金の技術を再現した婚約指輪や結婚指輪

を世に送り出した。なぜ指輪だったのか、

管理部部長の八木さんにお聞きした。

「木目金の特性を現代に活かすことを考

えたとき、『お客さまの幸せとつながりを

表現できる結婚指輪が適しているのでは

ないか』と考えたからです。デザインは

『紅べに

ひとすじ』から始まり、『恋こ

風かぜ

』、『桜

一輪』など、お客さまのご要望にお応え

することを大切にして、どんどん増えて

おります」

マーケティング部アシスタントマネー

ジャーの和わ

久く

田だ

さんが、さらに説明して

くれる。

「木目金の特徴は、手づくりですので、

唯一無二の模様ができます。その、世界

にひとつだけの模様の板を分かちあって

つくられる結婚指輪により、お2人だけ

の絆を感じることができます。そういっ

たことから、『ご両親に感謝の気持ちをプ

レゼントしたい』、『みんなの絆というこ

とで家族で一緒につくりたい』というお

客さまのご希望もあり、結婚指輪と同じ

板からつくる、お父さまのタイクリップ、

お母さまのペンダントなどの商品を設定

しております」

20の直営店と31の取扱店を全国で展開

し、販売員は全員正社員。江戸時代当時

の箪たんす笥

や蔵く

らど戸

など、伝統工芸品を什じ

ゅうき器

して使う店舗は、杢目金屋の情報発信拠

点だと八木さんは話す。

「店舗は、木目金の価値を広めていくこ

とを第一に成長していければ、と考えて

おります。木目金の歴史を理解して、伝

統文化の価値を提供していくこと、すべ

        

得意分野を活かして『職人の世界』で活躍中~「世界で1組」のリングをつくる~

伝統技術を現代に活かす

八木管理部部長

木目金リング

マーケティング部アシスタントマネージャーの和久田さん

①作業工程の分業化と可視化を進め、 障がいがあっても制作可能な体制を整え、雇用を実現②勤務時間は本人や支援機関と相談のうえで調整③「障がい者雇用促進室」を設置し、 面談や日報で体調管理を行うなどのケアを実施

POINTPOINTPOINT

※本誌では通常「障害」と表記しますが、(株)杢目金屋様の要望により「障がい」としています

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6働く広場 2017.8

次に角棒状に圧あ

延えん

、タガネで模様を形成

する工程などを経て、木目金が完成。そ

の木目金を使って、指輪づくりに入る。

八木さんが杢目金屋の制作システムにつ

いて教えてくれた。

「ジュエリーの制作は『職人の世界』と

いわれるところがあり、最初から最後ま

で1人で手がけて、修業に10年かかると

いわれているのですが、当社の制作部門

は『分業化』と『見える化(可視化)』をす

ることにより、若い社員でも制作可能な

体制を整えています。全工程を複数のラ

インに分けて、スキルに応じた工程の分業

体制をとることで、それぞれが作業に集

中し、短期間でスキルを習熟できるよう

にしています。その結果、若者の雇用が可

能になり、ひいては伝統技術やものづく

りの継承にもつながっていると思います」

社員の平均年齢は27歳。専門学校や大

学で彫金を学んだ学生を新卒で採用して

いる。分業化と可視化の徹底で、若者の

雇用創出とともに障がい者の雇用も可能

になった。

「ベテランスタッフの手元の動画をモニ

ター画面で確認し、工程表を見ながら作

業を行うことで、新卒でも即戦力として

業務にあたることができます。売上げに

準じて雇用も増やしており、若年層と障

がい者の方の雇用につなげることができ

ています」

障がい者の雇用は、社長の思いから始

てオーダーメイドで、お客さまのご要望

をお聞きして一緒につくっていくことは、

販売員が正社員として、しっかり取り組

まなければ、むずかしいと思っておりま

す。また、全国にいるお客さまの指輪の“生

涯メンテナンス”を行っていくためにも、

店舗を広げてきました」

会社設立以来、結婚情報誌などで宣伝

してきた。一般にはまだ広く知られてい

ないが、着実にファンを増やし、14期連

続増収。直近5期での新規顧客は2万組

を超える。

商品は本社近くのアトリエでつくり、

制作と販売の一貫体制をとる。ホームペー

ジの「アトリエ紹介」には、「杢目金屋の

アトリエで職人達は、伝統技術・木目金を

通して、『ものづくり』の魅力・やりがいを

『お客様のメッセージ』から感じとりなが

ら、障がい者の仲間と共にリング制作を

おこなっております。おふたりの『世界

に1組だけ』のリングは、障がい者の自

立と社会参加を支援しています」とある。

社員数は160人で、大多数が正社員。

店舗の9割は女性、制作部門も半数以上

を女性が占める。障がい者は、制作工程

で7人(発達障がい4人、精神障がい3

人)が正社員として働き、障害者雇用率

は4・4%。素材づくりから始める、世

界に1組の指輪づくり。今回は、東京・

神宮前にあるアトリエの制作現場をご紹

介する。

木目金の制作工程は、材料の金属板を

研磨し、表面の油分・汚れなどを除去す

ることから始まる。板を重ねて圧力をか

け、熱を加えて接合、表面を切せっ

削さく

し形状

を整え、再び熱を加えながらねじり加工、

分業化と可視化で、若者も

障がい者も「職人」に

杢目金屋の制作アトリエ

材料となる金属板の研磨

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7 働く広場 2017.8

りました」

障がい者の採用が始まった当時、担当

となった八木さんは、障がい者と働く経

験は初めてだった。

「ゆくゆくは、完成品の段階までつく

れることを目ざしているのですが、初め

はどこまでできるかわからなかったので、

最初の工程の地金を磨くことから始めま

した。予想以上に習得スピードが速く、

正確で丁寧で、きちんとした仕事が健常

者以上にできるところもあるのだと実感

しました。最初のコミュニケーションの取

り方と、いかに技術を教えるかを大事に

しています」

2015年、初めて採用した精神障が

い者はレーザー刻字業務に配置した。

「就労支援機関から、パソコンが得意で

集中力が高い人がいるとご紹介いただき

ました。障がい者の雇用では、切り出せ

る作業を考え、その作業に合った方をご

紹介いただき、働く場を増やして可能性

を広げてきましたが、発送業務は障がい

者の方だけでこなせるようになってきま

まったそうだ。

「代表の髙橋が、障がい者が実際に

作業しているところを見学したことが

あり、いつかは障がいのある方と一緒

にものづくりをして、障がい者にもや

りがいを感じていただきたいという夢

があり、会社が雇用できるような規模

になったら雇用したいと考えていまし

た。2013年ごろ、東京都の『オーダ

ーメイド型障害者雇用サポート事業』

※を知って、ご相談したのが最初です」

初めてのことゆえ、どう取り組んだ

らいいのか、障がい者がどんな仕事が

できるのかがわからず、支援員に現場

を見てもらい、作業を細かく切り出す

ことから始めた。採用は、障がい者就

労移行支援事業所「T&E」と国立精

神・神経医療研究センターから紹介さ

れた人のなかから行っている。

「年齢層が若く、女性が多いという

職場環境に比較的スムーズになじめそう

な方、ものづくりですので、集中力が高

くて丁寧に作業ができる方で、それぞれ

の業務に合った方をご紹介いただいてい

ます。実習を1週間行って、お互いが納

得したら、契約社員として3カ月働き、

正社員へという流れです」

2014年、発達障がいの人が初めて

入社した。

障がい者は、現在、金属の研磨と接合

した金属を加工する「地金制作」に2人、

木目金の板をリング形状にする「内リン

グ制作」に1人、指輪の内側に機械を使

用して刻印していく「レーザー刻字」に

2人、完成した指輪の梱こん

包ぽう

および発送、

写真撮影も行う「商品発送」に2人。具

体的な作業は、地金制作ラインの責任者

だった矢や

ヶか

部べ

さんが教えた。

「初めに、加工や模様制作につなげて

いくのに重要な、地金を磨く部分を担当

してもらいました。この工程ができた1

人はステップアップして、加工部分にた

ずさわっています。火を扱う作業は初め

てですので、工具の扱い方、火のつけ方、

消し方、あて方、角度などを教えました。

ねじり加工も行っていますが、一気に作

業すると折れてしまったりするので、少

しずつ丁寧にと教えて、できるようにな

活き活きと

活躍できる環境に

熱を加え、ねじり加工などをして、木目金をつくる

制作現場で指導にあたる管理部・障がい者雇用促進室の矢ヶ部さん(左)

こうして、世界に1組のリングがつくられる

※採用前の社内環境整備から採用後の定着まで、障がい者雇用に専門的な知識を有する担当の支援員が、企業ごとのニーズに合わせた支援計画を作成し、企業の障がい者雇用を支援する事業(現在、この事業は終了)

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8働く広場 2017.8

「最初はうまくいきませんでした。刻ん

だ字が曲がらないようにまっすぐに、決

まった位置に正確に入れることがポイン

トです」

国立精神・神経医療研究センターで、

杢目金屋を紹介された。週5日、1日6

時間勤務する。

「IT企業で働いていましたので、パソ

コンを使えて、制作過程の見える製造業

が希望でした。合っている仕事だと思い

ますが、作業が細かいのがたいへんで

す。シフトで夜勤をしていた以前の仕事

に比べると負担が少ないので、働き続け

られると思います。土日は、翌週に疲れ

を残さないために家で休んでいます」

 さん( 歳)は入社して8カ月。担

当業務は、完成した指輪を撮影し、その

データと商品の指輪を直営店に送ること

だ。「

発送以外にも撮影などの仕事をしてい

ます。高価なリングを扱うので、落とし

たり、傷つけたりしないように慎重に作

業をしています」

これまで数カ所で働いてきた。

「ここは、働きやすいです。人間関係も

いいですし、仕事もだいぶ慣れてきて、

自分に合っていると実感できるようになっ

てきたので、長く働きたいと思います。

いつかは、ここのリングをつけたいですね」

出来上がった商品はすべて社長が検品

のうえ発送している。

した。障がいのある方だから、そこそこ

でいいというスタンスで雇用はしていませ

ん。会社に貢献し、社会に貢献できるよ

うに、活躍できる場で活き活きと働ける

環境をつくっていきたいと考えています」

勤務時間は、多くの人が5時間15分で、

長い人は6時間だ。

「6時間の方も最初は4

時間からスタートしていま

す。いまはまだ集中力、体

力などの面で8時間勤務は

むずかしいですね。勤務時

間は、就労支援機関と密に

相談しながら決めています

が、3カ月に1回、本人と

われわれも交えた三者面談

をして状況を確認していま

す。本人も就労支援機関に

出向いて、面談をしているようです」

7人の障がい者のうち、先に入社した

3人は、一般社員と同じ日報を、後から

入社した4人は、体調面などを詳しくチ

ェックした日報を書き、矢ヶ部さんがコ

メントを返す。

「日報のやり取りで、できるだけ体調面

や精神面の変化に気づけるようにしてい

ます」

作業の手を休めてもらい、制作工程順

34

3925

に4人に話を聞いた。最初の研磨作業を

担当するIさん( 歳)は入社4年目。

実習を経験し、細かい作業は合っていそ

うだと思い、入社を決めた。

「自分に合っている仕事で、充実して

います。油分がとれていないとか、汚れ

ているだけで接着がうまくいかなくなる

ので、きれいな木目金ができるように、

磨き残しがないように気をつけていま

す。これからは、経験を積み重ねて、ミ

スなく、早く確実に作業ができるように

していきたいです。ほかの工程はまだよ

くわからないのですが、挑戦できるなら

頑張ってみたい。働き続けていきたいで

す」K

さん( 歳)は実習を経て、201

4年1月に入社した。地金の研磨作業を

行った後、接合した金属の加工作業に

移った。

「最初はできるかどうか不安だったので

すが、この会社なら合いそうだと思いま

した。気をつけているのは、金属の板に

均等に火をあてることで、コツがつかめ

てきました。これからは、作業内容のク

オリティを安定させていきたいです。目

標は、現状維持。働き続けていきたいと

思います」

半年前に入社したFさん( 歳)は、

レーザー刻字の担当で、 ㎜幅の指輪の

内側やペンダントの裏に文字を入れる。

作業はものすごく細かい。

「自分に合う」職場で、

一人前の職人を目ざす

地金制作担当のIさん

木目金を制作するKさん。均等に熱をあて、結合、ねじりをくり返す

23

32

M

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9 働く広場 2017.8

にも必要なのかと思います」

八木さんは、職場の雰囲気は自然に見

えると話す。

「分け隔てなく教えたり、報告をもらっ

たり、特に障がい者という意識はしてい

ないように見受けられますね。コミュニ

ケーションを高めるために、部署ごとに

月1回、“飲みニケーション”をするのが

会社のルールです。参加費の一部を支給

して、夜にできない場合はランチを一緒

にするようにしていますが、障がい者の

方たちも参加しています」

杢目金屋では、伝統文化の継承のほか、

使用するすべての電気をグリーン電力で

まかなったり、緑の募金に参加したり、

教育支援活動を行うなど、さまざまな社

会的な活動にも取り組んでいる。和久田

さんに社風を尋ねた。

「桜というデザインの縁で、“さくら並

木プロジェクト(※)”にも参加していま

すが、社会とのかかわりを大切にしてい

る会社だと思います。結婚指輪の制作は、

人の幸せをつくる仕事ですので、結婚す

るおふたりだけではなく、もっと広い意

味での幸せを考えていこうという思いが

ありますね」

購入者が、ひとつにつながった模様の

結婚指輪を、2つに分かち合うデザイン

と手法などが評価され、2015年にグ

ッドデザイン賞を受賞。同年に経済産業

省の「おもてなし経営企業選」に選ばれ、

2017年には「伝統技法をデータ化し、

安定したクオリティで提供できる体制を

整備。若者の雇用確保と全従業員の5%

(申請時)にあたる障がい者雇用率を実現。

顧客の声を取り入れながら、経営改善に

取り組んでいること」が評価され、同省

の「おもてなし規格認証★★(紺認証)」

も受けた。

八木さんは、さらに障がいのある人た

ちの雇用を進めていきたいという。

「どんどんスキルアップをして、地金の

人は模様をつくる工程にチャレンジして、

リングを丸めている人は、完成品への工

程を目ざしてほしいと思います。今後は、

制作だけではなくて、本社の事務関係の

業務の切り出しをして受入れ体制をつく

りたいです。いまは精神障がいや発達障

がいの方だけで、バリアフリーの面から

身体障がいの方の受入れはむずかしいと

ころもありますが、雇用人数と、身体障

がい、知的障がいなど、障がい種別を広

げていけるような形をとっていきたいと

思います」

「世界で1組」の指輪づくり。アトリエ

では、障がいのある人たちが、各自の得

意分野を活かす形で、ともに作業を進め

ていた。質の高い商品を提供し、企業の

社会的な責任を大切に考える企業は、障

がい者雇用も当たり前のこととして取り

組んでいた。

2016年、「より細か

くケアができる体制に」と

管理部に「障がい者雇用促

進室」を設置し、矢ヶ部さ

んが専任となった。

「現場で教えてきた土台

はありますが、いまも手探

り状態です。教えたのに忘

れてしまうことがあったり、

一歩進んで二歩下がるとか、なかなか前

に進まないこともあります。一つひとつ

丁寧に根気よく進めていくことが大事で

はないかと思います」

穏やかに話す矢ヶ部さんに、配慮して

いることを聞いた。

「あいまいに話したり、『こんな感じで』

と話すと伝わらないので、明確に具体的

に伝えることが大事だと気づかされまし

た。それは障がい者にかぎらず、健常者

ステップアップと

雇用の拡大を

レーザー刻字作業をするFさん。刻印文字の確認をする作業は細かい

発送業務をするMさん。完成した指輪を写真撮影し、データ処理をする(左、左下)

※東日本大震災での津波を後世に伝承するため、大津波の到達地に桜の植樹をするプロジェクト

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10働く広場 2017.8

精神障害のある人が職場に定着する

ためには、どのようなことがポイントに

なるのでしょうか。今回は、健康管理

に焦点をあてて考えてみましょう。

一般に精神障害は、精神疾患がベース

にあり、疾病と障害が共存しているた

め、大部分の人が服薬の継続と定期的

な通院を必要としています。また、病

気とストレスには関連性があるといわれ

ており、良好な体調を維持するために

は、疲労やストレスをコントロールする

ことが大切なポイントになります。

健康管理については、本人が自分の

病気を理解し、主治医と相談しながら

自己管理していくことが基本になりま

すが、安定した勤務を継続するために

は、それに加えて本人の状況をふまえ

た企業側の配慮と、医療機関や支援機

関のサポートが必要です。

「忘れずに服薬

する」、「睡眠を7

時間とる」など

自分にあった毎日

の健康管理のほか

に、調子を崩しそ

うなサインに気づ

き、そのときに適

切な対処をすることで、体調の波を小

さくすることができます。「眠れない」、

「いらいらした気分になる」、「音に敏感

になる」など、サインの出方は人によっ

てそれぞれですが、就職する前に、「調

子を崩すきっかけ、調子を崩すときの

サイン、調子を崩したときの対処方法」

について整理しておき、採用時には、本

人と企業と支援機関がこれらの情報を

共有することが重要です。

本人が健康管理に留意していても、

疾病によって、あるいは環境の変化やス

トレスによって、体調に変化が見られる

ことがあります。採用後、企業は本人

の様子に気を配り、普段と異なる様子

が見られる場合には一声かけて状況を

確認するなど、早めに体調の変化を把

握することが大切です。

体調不良が続く際は、支援機関とも

十分に連携をとって対応策を検討しま

しょう。状況によっては、主治医から情

報収集することが必要になる場合もあ

りますが、その際には、必ず本人の同

意を得てください。

職場で体調の変化を確認する方法と

しては、朝礼や終礼時に「昨日はよく

眠れた」、「新しい仕事だったのでいつも

職場定着に向けて(1)~毎日の体調の変化を把握する~精神障害者の職場定着を図るために大切なポイントを、

今号と次号の2回に分けて紹介します。今回は、体調の変化を把握することの大切さや、健康管理のポイントなどについてご紹介します。

良好な体調維持を

するために

より疲れた」など、本人からその日の

疲労度や気分について一言コメントして

もらう、業務日誌に健康状況の欄を設

けて記入してもらう、支援機関などで

使用していたチェックリストを記入し

て、定期的に提出してもらうなどの取

組みが見られます。

体調チェックが重要であることは理解

していても、大勢の前で話すのは気が引

けると感じる人もいれば、一緒に働く人

には知っておいてほしいと思う人もいる

ので、本人の気持ちを考慮しつつ、プラ

イバシーにも配慮したうえで、取り組み

やすい方法を検討するとよいでしょう。

このように本人と企業が体調の変化

を共有することによって、不調の際には

仕事内容の軽減や就業時間の調整など

早めの対策をとることができます。逆

に体調が安定していることが確認でき

れば、仕事内容の拡大を検討すること

もできるでしょう。

また、日々の健康状況を共有するこ

とをきっかけに、コミュニケーションが

とりやすくなり、本人の不安やストレ

スの軽減にもつながります。健康管理

面への配慮については、次ページも参考

にしてください。

精神障害者の雇用と職場定着 Vol.3

健康管理が職場定着の鍵

健康管理のポイント

N O T E

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※川崎市HPより http://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000065084.html※川崎市HPより http://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000065084.html

11 働く広場 2017.8

より疲れた」など、本人からその日の

疲労度や気分について一言コメントして

もらう、業務日誌に健康状況の欄を設

けて記入してもらう、支援機関などで

使用していたチェックリストを記入し

て、定期的に提出してもらうなどの取

組みが見られます。

体調チェックが重要であることは理解

していても、大勢の前で話すのは気が引

けると感じる人もいれば、一緒に働く人

には知っておいてほしいと思う人もいる

ので、本人の気持ちを考慮しつつ、プラ

イバシーにも配慮したうえで、取り組み

やすい方法を検討するとよいでしょう。

このように本人と企業が体調の変化

を共有することによって、不調の際には

仕事内容の軽減や就業時間の調整など

早めの対策をとることができます。逆

に体調が安定していることが確認でき

れば、仕事内容の拡大を検討すること

もできるでしょう。

また、日々の健康状況を共有するこ

とをきっかけに、コミュニケーションが

とりやすくなり、本人の不安やストレ

スの軽減にもつながります。健康管理

面への配慮については、次ページも参考

にしてください。

通院時間の確保

本人が通院している医療機関が休日や夜間に診療していない場合には、勤務を休んで通院時間を確保することが必要になります。一般的には有給休暇を利用することが多いですが、時間休を取得できるようにしたり、通院休暇の制度などを設けている企業もあります。

産業保健スタッフとの連携

産業医や産業保健師がいる場合には、本人との面談を依頼したり、医療機関との連携についてアドバイスを得ることができます。

就業時間の柔軟な設定

短時間での就労から開始し、段階的に時間を延ばしていくことも有効です。体調に波が出やすい人の場合は、一時的に就業時間を短縮し、安定してきたら元の時間に戻すなど、柔軟な時間の設定を行っている企業もあります。

医療機関や支援機関との連携

調子を崩すサインや対応方法を確認しておく、支援機関を交えて定期的な面談を実施する、就業時間や職務内容について相談するなど、企業だけですべてを解決しようとせずに医療機関や支援機関と連携しながら対応することが大切です。

安定勤務と働きやすい職場環境づくりを目ざす「K-STEP」精神障害のある方がセルフケアシートに自分の体調をチェックし、それを職場で毎日上司や同僚に報告することで、

情報共有を図るとともに課題の解決に役立てます。

■効果【利用者の感想】

●自分の状態把握、体調管理に役立った。●「今日の体調はどうか」と聞かれても、これまで何と答えてよいのかわからなかったが、「セルフケアシート」があると報告しやすくなった。●毎日報告することで、自分の弱いところを上司に伝えやすくなり、上司とのコミュニケーションも取りやすくなった。

【企業の感想】

●配慮した方がよいと思ってもそれが正しいのかわからず、心配しすぎると本人に対して失礼だと思ったり、やる気を削いでしまうのではないかという思いもあった。「セルフケアシート」により、ある程度本人から「こういう配慮をしてもらえますか」といった自己申告があるため、配慮が提供しやすくなった。

■特徴●障害理解の促進 「セルフケアシート」を使い〝体調を見える化〟することで、病気や障害への理解が進みます。●体調の共有化報告のルーチン化により、本人も体調を伝えやすくなります。企業にとっては、1~2分程度の報告を受けることで障害特性や体調を共有できるというメリットがあります。●合理的配慮提供の促進共有化により、本人からの配慮要求や企業からの配慮提案がしやすくなります。

●職場内での孤立防止毎日の報告により、職場内のコミュニケーションが誘発されます。●導入にあたり、特別な設備や費用・維持費は一切かかりません

健康管理面への配慮

精神障害者の就労後の職場定着に向けて、川崎市が就労移行支援事業所などと協力してつくった支援プログラムK-STEP(川崎就労定着プログラム)の概要を紹介します。K-STEPについては、本誌2016年11月号「編集委員が行く」でも紹介しています。

〈「セルフケアシート」サンプル〉

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12働く広場 2017.8

「合理的配慮の提供」に関する事例 「障害者雇用事例リファレンスサービス」

 2016年4月から、事業主に、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置を講ずること(合理的配慮の提供)が義務づけられています。  しかし、「どのような配慮をすればいいのかわからない」という企業の方や、「企業から相談されたが、どのように助言すればよいか迷う」という支援者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。  「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、障害者の雇用に取り組んでいる企業の取組みを紹介し、「合理的配慮の提供」に関する事例(合理的配慮事例)についても掲載しています。  今後、企業や支援機関のみなさまに役立つ事例を追加掲載していきますので、ぜひご利用ください。

みなさまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、ホームページからアンケートへのご協力をお願いします。

http://www.ref.jeed.or.jp/

精神障害者のデータ入力業務の事例

★業種や事業所規模、障害種類などの条件を設定して事例を検索することができます。

発達障害者の雇用ノウハウに関する動画

「ともに働く職場へ~事例から学ぶ 発達障害者雇用のポイント~」

ホームページで紹介しています!

合理的配慮事例を検索する場合は、こちらのチェック欄を選択してください。

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13 働く広場 2017.8

JEED 発達 ともに働く 検索

発達障害者の雇用ノウハウに関する動画

「ともに働く職場へ~事例から学ぶ 発達障害者雇用のポイント~」

ホームページで紹介しています!

 実際の企業における発達障害者の雇用事例を通して、発達障害者とともに働く職場をつくるためのさまざまなノウハウについて紹介しています。 また、事例ごとに、有識者による簡単なポイント解説を加えています。機構ホームページに掲載していますので、ぜひご覧ください。 DVDの無料貸出しも行っていますので、あわせてご利用ください。

【株式会社藤三 藤三センター】 発達障害のある方にさまざまな業務を順番に経験してもらい、新たな仕事にチャレンジできる仕組みをつくっています。もしミスマッチがあっても、もとの仕事に戻れるようにするなどさまざまな配慮を行って、ご本人の特性と職場環境とのマッチングをはかっています。

2. 適材適所による能力発揮をうながす仕組みづくりと職域の拡大に取り組んだ事例

【京浜パネル工業株式会社 山形工場】 発達障害のある方を初めて雇用した会社が、職場定着を進めるために社内研修、ナビゲーションブックの作成、ジョブコーチ支援の活用などを行って、ご本人と周りの方が障害特性や、得意なこと、苦手なこと、必要な配慮などについて共通の理解を深めています。

1. 初めての発達障害者雇用と職場定着に取り組んだ事例

【グリービジネスオペレーションズ株式会社】 発達障害のある方の、集中力の高さや細かいところまで気づくことができるといった強みをいかし、リーダーとサブリーダーを決めて業務を進めるなどさまざまな取組みを行っています。 仕事の幅が広がり、自らの成長を感じることで本人のやりがいが深まっています。

4.発達障害の特性や強みをいかし、働きがいを感じられる職場づくりに取り組んだ事例

【総合メディカル株式会社】 発達障害のある方のなかには、抽象的な表現が理解しづらい、音や光に敏感で作業に集中できないなどの特性のある方がいます。特性に配慮して職場環境を整えながら、さまざまな事務作業を経験してもらい、ご本人にあった仕事を任せるという取組みを進めています。

3. 個々の障害特性や状態に配慮し、能力発揮と職場環境の改善に取り組んだ事例

〈DVDの無料貸出しに関するお問合せ〉

〈上記動画の内容と「障害者雇用事例リファレンスサービス」に関するお問合せ〉

TEL:043- 297- 9513 FAX:043- 297- 9547 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部雇用開発課

中央障害者雇用情報センター  TEL:03- 5638- 2792 FAX:03- 5638- 2282

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14働く広場 2017.8

「雇用分野における合理的配慮」のご案内当機構では、労働、福祉、医療、教育などの分野で障害のある方の就業支援を担当し

ている方のうち、実務経験がある方を対象として、新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上を図るための「就業支援課題別セミナー」を実施しています。平成 29 年度のテーマは、「雇用分野における合理的配慮」です。みなさまの受講を心よりお待ちしています。

▪ 差別禁止・合理的配慮に関する障害者関連施策の動向▪ 企業における合理的配慮の取組みと現状▪ 合理的配慮における苦情処理・紛争解決援助の現状▪ 法律や判例などから見る合理的配慮に関して企業に求められる対応と課題▪ グループワーク

 平成29年度 就業支援課題別セミナー 平成29年度 就業支援課題別セミナー

職業リハビリテーション部 研修課TEL:043-297-9095 E-mail:[email protected]:http://www.jeed.or.jp/

◎申込方法:「就業支援課題別セミナー受講申込書」に必要事項を記入し、申込受付期間内にメールでお申込みください。

◎受講申込書・カリキュラム:当機構ホームページからダウンロードできます。◎申込受付期間:2017 年8月 21 日(月)~ 10 月3日(火)◎受講決定の通知:申込受付期間終了後、受講の可否についてメールにて通知します。

定員を超えた場合は、複数名の申込みをされた法人などに対して人数の調整をさせていただくことがあります。また、やむをえずお断りをすることがあります。あらかじめご了承ください。

内 容

お 申 込 み

お 問 合 せ

受講料無 料

現在、障害者の就労や雇用に関する支援を担当している方・労働、福祉、医療、教育などの支援機関の職員であって、障害者を 雇用する事業主の相談など、障害者の就業支援を担当している方、など

※ 支援の実務経験があり、合理的配慮についての基礎的な知識があることを 前提とした内容となっていますので、ご留意ください。

対 象 者

2017 年 11 月1日(水)~ 11 月2日(木)日 程

障害者職業総合センター(千葉県千葉市美浜区若葉 3-1-3)会 場

講義

演習

30 人程度定 員

就業支援課題別セミナー 検索

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グラビア

写真/文 小山博孝

世界中から集めた植物を守り育てる日本新薬株式会社 山科植物資料館(京都府)

山科植物資料館〒607-8182 京都府京都市山科区大宅坂ノ辻町39TEL:075-581-0419 FAX:075-592-7199

取材先データ

日本新薬株式会社〒601-8550 京都府京都市南区吉祥院西ノ庄門口町14 TEL:075-321-1111 FAX:075-321-0678

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指示された肥料を入れ、耕す関戸良りょう

亮すけ

さん(28歳)

種子採種のための袋がけ作業

朝8時30分、全員でラジオ体操

京都市山や

科しな

区の一角に、日本新薬

株式会社の山科植物資料館がある。昭

和初期、多くの日本人を悩ませた回

虫。その駆除薬「サントニン」は当時、

100%輸入で高価だったことから、

国産化を図るべく、日本新薬がサント

ニンの原料となる植物「ミブヨモギ」

の栽培、研究を行う山科試験農場を

1934(昭和9)年に開設した。敷地

7,920㎡内には「ミブヨモギ記念館」

があり、同社発展の礎い

しずえ

となったサントニ

ンの歴代の商品や、研究器材、資料など

が展示されている。屋外の植物見本園

には、同社の社員たちが世界各地から

収集した約3000種の薬用・有用植

物が栽培、展示され、予約制で公開もさ

れている。これらの植物の育成、管理

などに、4人の障害者が、ほかの社員

とともに汗を流し活躍している。

植物管理課長の勝か

田た

義よし

弘ひろ

さんは「こ

こに異動して4年目になります。前の

職場でも、聴覚障害の方や、知的障害

の方とともに働きました。仕事を指導

する側の、指示の仕方が悪いと彼らが

混乱するだけですので、指導する人の

育成が大切です。私は、わかりやすい

指示の徹底を図ってきました。いま、

日本新薬では、障害者31人(身体14人、

知的13人、精神4人)が、本社などで

働いています。ここで働く4人も、な

くてはならない貴重な戦力です。先輩

たちが世界中から苦労して集めた植物

を守り、育てていくのが、私たちの役

目です」と語る。

7,920㎡の敷地に、約3,000 種の薬用・有用植物が栽培されている山科植物資料館

日本新薬の歴史を紹介するミブヨモギ記念館

耕運機を使って、見本園を耕す岸田寛ひろ

史し

さん(21歳) ミブヨモギ記念館外観

16働く広場 2017.8

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勝田植物管理課長

指示された肥料を入れ、耕す関戸良りょう

亮すけ

さん(28歳)

種子採種のための袋がけ作業大温室での植物への水やりも大切な仕事だ

体操が終わって園内を見回る 朝8時30分、全員でラジオ体操

京都市山や

科しな

区の一角に、日本新薬

株式会社の山科植物資料館がある。昭

和初期、多くの日本人を悩ませた回

虫。その駆除薬「サントニン」は当時、

100%輸入で高価だったことから、

国産化を図るべく、日本新薬がサント

ニンの原料となる植物「ミブヨモギ」

の栽培、研究を行う山科試験農場を

1934(昭和9)年に開設した。敷地

7,920㎡内には「ミブヨモギ記念館」

があり、同社発展の礎い

しずえ

となったサントニ

ンの歴代の商品や、研究器材、資料など

が展示されている。屋外の植物見本園

には、同社の社員たちが世界各地から

収集した約3000種の薬用・有用植

物が栽培、展示され、予約制で公開もさ

れている。これらの植物の育成、管理

などに、4人の障害者が、ほかの社員

とともに汗を流し活躍している。

植物管理課長の勝か

田た

義よし

弘ひろ

さんは「こ

こに異動して4年目になります。前の

職場でも、聴覚障害の方や、知的障害

の方とともに働きました。仕事を指導

する側の、指示の仕方が悪いと彼らが

混乱するだけですので、指導する人の

育成が大切です。私は、わかりやすい

指示の徹底を図ってきました。いま、

日本新薬では、障害者31人(身体14人、

知的13人、精神4人)が、本社などで

働いています。ここで働く4人も、な

くてはならない貴重な戦力です。先輩

たちが世界中から苦労して集めた植物

を守り、育てていくのが、私たちの役

目です」と語る。

全職員での朝礼

耕運機を使って、見本園を耕す岸田寛ひろ

史し

さん(21歳)

剪せん

定てい

作業をする桝ます

谷たに

正まさ

俊とし

さん(43歳)

17 働く広場 2017.8

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採種作業 採種した種子を顕微鏡でチェック

見本園周辺での除草作業

18働く広場 2017.8

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19 働く広場 2017.8

みんなでつくるバリアフリーマップ『WheeLog!』

NPO 法人 PADM(遠位型ミオパチー患者会)代表。TREAT-NMD Alliance 役員。YouTube 専用チャンネル「車椅子ウォーカー」代表。Googleインパクトチャレンジでグランプリ受賞。ユースリーダー賞受賞。著書『ひとりじゃないから、大丈夫。』(鳳書院)、DVD『Walker「私」の道』(ブロックス)などがある

織田友理子おだ・ゆりこ

第2回

『WheeLog!』公式サイト:https://www.wheelog.com/hp/

 前回、アプリ「みんなでつくるバリアフリーマッ

プ『W

heeLog!

』」のことを書きましたが、5月28

日に、このアプリのリリース記念イベントを、六本

木ヒルズのハリウッドホールにて開催しました。な

んと、スペシャルゲストとして小池百合子東京都知

事に来ていただき、G

oogle

からも役員クラスの方が

2人参加してくださいました。このリリース記念イ

ベントには総勢約270人、車椅子ユーザーも50人

以上に参加いただき、最高のスタートを切ることが

できました。私は、このような大がかりなイベント

を開催した経験がないうえに、人手も予算もかぎら

れたなかで、多くの方に支えられて、なんとか成功

させることができました。ご協力くださった方々に

は、感謝の気持ちでいっぱいです。

 このアプリは、約2年の開発期間を経てようやくリ

リースできたのですが、この間は日々プレッシャーと

の闘いでした。毎日のようにプロジェクトメンバーや

開発会社とのやり取り。それに加え「どういった情

報を必要としているのか」、「本当に車椅子ユーザー

に喜ばれるアプリになるのだろうか」、「社会の役に

立つアプリになるのだろうか」などと思い悩み、眠

れない日もたくさんありました。実は、A

pple

のア

プリ審査を通過したのが、ギリギリのイベント2日

前の26日でした! 

iOS

は申請を通すのが厳しいと

聞いていたものの、「イベントに間に合わなかったら

どうしよう」と、本当に寿命が縮まる思いでした。

 アプリをつくりあげていくなかで特に気をつけた

点は、投稿数を増やすためにも「楽しんで投稿して

もらえるよう、人と人とがつながれる仕組みをつく

る」ということです。

日本だけでも200万人以上

いるといわれている車椅子ユーザー同士や、健常者

の方ともつながれるよう工夫しました。

 また、日常生活のさまざまな要素をゲームの形に

する「ゲーミフィケーション」の概念も取り入れま

した。「ポケモンGO」のような高度な仕組みはつ

くれませんでしたが、〝石ころ〞をゲットして、磨

いていき、最後には宝石になっていく、というもの

です。すべてのカテゴリーにおいて宝石をゲットし

た方は「ウィーログマイスター」と呼ばれます。し

かし、ウィーログマイスターになるためには、相当

数の投稿をしなければいけないため、なかなか実現

できないでしょう。

私も無理なほどです(笑)。

 今後は、「マッピングイベント」という形で、町お

こしなどにもこのアプリを活用していただくなど、

全国各地でイベントを開催していきたいです。早

速、6月11日には沖縄市にて、リリース後初となる

「WheeLog!

」を活用した「マッピングイベント」を

開催しました。オープニングには沖縄市長も駆けつけ

ていただき、エイサー演舞も行われました。30℃を超

す気温のなか、約20人の車椅子ユーザーや、ボランテ

ィアスタッフを合わせて60人以上も参加してください

ました。また、車椅子用のリフトつき車両を4台も用

意していただくなど、想像していたよりも充実したイ

ベントとなり、とても感動しました。

 現在、台湾やアメリカなど、海外からも投稿してい

ただけるようになりました。多言語化を目ざしてい

ましたが、とりあえず英語は実装することができま

した。今後は、世界中で使っていただけるようにな

りたいです。

「WheeLog!

」はまだまだ

未完成のところもあります。

これからもっと頑張っていか

なければいけないと思いま

す。みなさんに協力していた

だけるような、育てていただ

けるようなアプリにしたいで

す。このアプリが心のバリア

フリーを醸

じょう

成せい

するツールと

なってほしいです。ご協力、

よろしくお願いします

5月28日に行われた『WheeLog!』のリリース記念イベント

沖縄市で開催された「マッピングイベント」で、参加者のみなさんと

アプリのスクリーンショット

「WheeLog!」へは、左のQRコードからアクセスできます

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20働く広場 2017.8 20Keyword:職域拡大、職場環境の整備、人事評価制度、キャリアアップ

(写真)小山博孝

就職はゴールではなくスタート

横河電機株式会社 箕輪 優子

積水ハウス株式会社(大阪府・東京都)

~多様な人材が活躍し続けられる職場~

取材先データ

積水ハウス株式会社 本社〒 531-0076 大阪府大阪市北区大淀中1-1-88 梅田スカイビル タワーイーストTEL 06-6440-3021(広報部)

積水ハウス株式会社 東京特建支店〒 151-0053 東京都渋谷区代々木 2-1-1新宿マインズタワー

編集委員から今回は、女性や障がいのある社員など、多様な人材が活躍している積水ハウス株式会社の「ダイバーシティ交流会」の事務局を務める山本学

まなぶ

さん(設計部大阪設計室)、阿部泰

や す

貴た か

さん(東京特建支店総務課)を紹介したい。

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21 働く広場 2017.8

在職者の活躍を推進している(図2・3)。

今回、取材させていただいた障がいの

あるお2人も、この厳しい条件をクリア

し、現在は総合職として活躍している。

積水ハウスグループは、「1事業所1

人以上の障がい者雇用と定着」を実現し

ていくなかで、2015年12月からダイ

バーシティの推進の一環として「ダイバ

ーシティ交流会」をスタートした。第一

回の大阪を皮切りに、2016年には東

材サステナビリティ宣言」として、「積水

ハウスグループにおけるすべての多様な

人材が最大限の能力を発揮し、個人と組

織が持続的に成長を目ざす」ことを実現

するために、勤続満3年以上で、職種に

応じた必須資格を取得し、一定以上の社

内評定を得ている、などの条件をクリア

した社員が、一般事務職、地域勤務職、

生産技能職から総合職に転換できる「キ

ャリアアップ・チャレンジ制度」を導入し、

21

積水ハウスは、「人間は夫そ

々ぞれ

かけがえの

ない貴重な存在であると云う認識の下に、

相手の幸せを願いその喜びを我が喜びと

する奉仕の心を以って何事も誠実に実践

する事である」という「人間愛」を根本哲

学とする企業理念を掲げている(図1)。

また、2006(平成18)年には「人

① 「キャリアアップ・チャレンジ制度」を導入し、障がいのある社員の活躍を推進② 「1事業所1人以上の障がい者雇用と定着」を実現するため、 「ダイバーシティ交流会」をスタート③ 常に向上心を持ち、新しいことにチャレンジし続けていく姿勢や、 新しいことに取り組める環境の整備を進める

POINTPOINTPOINT

﹁キャリアアップ・

チャレンジ制度﹂の導入

就職はゴールではなくスタート図1 企業理念

図2 積水ハウスグループ ダイバーシティの推進

図3 「キャリアアップ・チャレンジ制度」の流れ

私たちの根本哲学

人間愛

人間性豊かな住まいと環境の創造

最高の品質と技術

行動への道標

私たちの事業の意義私たちの目標

2020 年女性管理職登用拡大を目ざして「働き方改革」実践中

「女性技術者活躍推進委員会」発足「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」開講 両立相談窓口の開設

在宅勤務個別対応開始

介護支援制度の拡充

育児費用支援サービス導入

制度の枠を超えた働き方「個別対応」開始

育児支援制度の拡充育児休業中社員へ SNS 情報提供の開始

「女性営業推進委員会」発足

キャリアアップ・チャレンジ制度スタート退職者復職登録制度導入

女性営業職の採用拡大積水ハウスリフォーム社会人採用開始

働き方改革

両立サポートキャリア促進

真実・信頼私たちの基本姿勢

※本誌では通常「障害」と表記しますが、積水ハウス(株)様の要望により「障がい」としています

2004年

2005年

2006年

2014年

2016年

中期経営ビジョン「S-Project」

サステナブル宣言

人材サステナビリティ宣言

〔8月〕女性活躍推進グループ設置

ダイバーシティ推進室設置

女性活躍推進法行動計画策定

新たなステージへ

結果通知

職群・就業

区分転換

面 

キャリアビジョン

シート提出

(

本人・上司記入)

キャリア研修

筆記試験

(Web受験)

多面観察実施

応 

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22働く広場 2017.8

北、北関東、東関東、首都圏、中部、中

国、四国、九州と、全国各地で8回開催

し、99人の障がいのある社員と19人の支

援者、合計118人が参加した。本運

営においても、今回、取材させていただ

いたお2人は事務局として、企画段階か

ら積極的に活動している。

最初に、積水ハウスの本社にお邪魔し

た。ダイバーシティ推進室長の伊藤みど

りさんから、積水ハウスグルー

プでのダイバーシティの取り組

みや、障がい者雇用についてのお

話をうかがった。人事部の西原

靖やすし

部長と幸ゆ

純じゅん

也や

さん、広報部の

寺澤伸しん

一いち

課長と辻井香奈さんに

も同席いただき、設計部 大阪設

計室で主任を務める山本学まなぶさん

(入社18年目/聴覚障がい)と上

司の黒田一弘部長に、職場での

様子など、お話をうかがった。

入社から現在までに担当した

仕事について聞かせてください

入社してすぐの地域勤務職時

代は、設計者のラフな手書きの

平面図をもとに、設計者のニー

ズを思い描きながら、CAD(コ

ンピューターを利用して行う住

宅の設計、製図)入力を行って

22

いました。また外注業者への仕事の配分

などが主な業務でした。

総合職になってからは、CAD業務

に加え、ほかの社員がCAD業務で困

ったときの技術的なサポートをしたり、

営業の支援ツールを開発したり、「ダイ

バーシティ交流会」の運営など、さまざ

まな業務を担当しています。

職務以外では、月2回、昼休みに部内

有志による手話勉強会を行っています。

休日は、地域の小学校、中学校、高校で

手話の指導を行っています。

最も得意な仕事、やり甲斐のある仕事

はなんですか

ほかの社員が「難関だ」と思うような

仕事を、諦めずに創意工夫をして解決で

きたときにやり甲斐を感じます。

例え

ば、多数発生する変更作業を自動化した

り、複雑な部材のCAD入力を可能に

したことなどです。

仕事をするうえで大切だと思うこと、

努力していることはなんですか

仕事に関する資格取得や読書など「自

己投資」を大切にしています。現在、「福

祉住環境コーディネーター2級」、「測量

士補」、「建設業経理士2級」、「2級ファ

イナンシャル・プランニング技能士」な

ど、全部で14の資格を保有しています。

資格を取ることで、知識が増えたりスキ

ルアップしたりするだけでなく、 「お客

さまの立場に立った見方」ができるよう

設計部

大阪設計室で

主任を務める山本学さん

ダイバーシティ推進室長の伊藤みどりさん

(左より)人事部部長の西原靖さん、幸純也さん、広報部の辻井香奈さん、課長の寺澤伸一さんと、取材をする箕輪優子編集委員(右)

積水ハウスの本社がある梅田スカイビルお話をうかがった山本学さん

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23 働く広場 2017.823

になりました。

「キャリアアップ・チャレンジ制度(地

域勤務職から総合職)」に応募するため

に取り組んだことはなんですか

応募するにあたり、必要な資格である

「二級建築士」や「宅地建物取引士」な

どを取得しました。

また、総合職に転換した後に担当した

い業務などについては、上司との面談を

重ねることで、やりたい業務、できる業

務、やらねばならない業務を整理し、キ

ャリアプランをしっかり描きました。

「地域勤務職」から「総合職」に転換

したことで、職務内容、役割、意識がど

のように変化しましたか

1人でできる業務のほか

に、障がいのある社員の情

報交換の場である「ダイバ

ーシティ交流会」の事務局

を担当するなど、他部署と

のさまざまな調整が必要で、

なおかつ広範囲にわたる業

務が多くなり、責任も増え

てきました。以前からやっ

てみたいと思っていたこと

が徐々に実現していくこと

に、歓よろこびび

や愉た

しさ、やり甲

斐を感じています。

「ダイバーシティ交流会」

の事務局としての山本さん

の役割はなんですか

「ダイバーシティ交流会」の目的を明

確にし、他部署の人達との運営会議を開

催し、交流会のプログラムなどを企画・

立案します。各地域で開催される交流会

にも参加し、みなさんの意見を聞き、さ

らに企画に反映させています。

参加者から「仕事や人間関係の工夫な

どを共有できて有意義だった」、「今後も

ダイバーシティ交流会を続けてほしい」

との感想が数多く寄せられていること

が、さらなるモチベーションにつながっ

ています。

新たにチャレンジしてみたいこと、今

後の目標を聞かせてください

障がいのある社員が孤立しないよう

に、仕事の悩みなどを気軽に相談できる

場をもっと増やしていきたいです。

これから就職を目ざす方へのメッセー

ジをお願いします

会社生活において、具体的に、どのよ

うな業務ができるのか、どのような状況

では業務遂行が困難なのか、どのような

環境であれば力を発揮できるのかなど、

まわりの社員にわかってもらう努力をす

ることも必要です。1人で悩まず、社員

同士お互いに理解し合うことが重要なポ

イントだと思います。

就職先の会社選びについては、福利厚

生制度だけでなく、研修制度や交流会な

ど、社員の活躍を具体的に後押ししてく

れる仕組みも重要だと思います。

設計部 大阪設計室で主任として活躍する山本さん

上司である部長の黒田一弘さんと打合わせをする山本さん

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24働く広場 2017.8 24

次に、東京特建支店にお邪魔し、総務

課で活躍する阿部泰やす

貴たか

さん(入社7年目

/先天性右手機能障がい)にお話をうか

がった。総務長の海うみ

野の

隆たか

幸ゆき

さんと、広報

部の細井佳子さんにも同席いただいた。

入社から現在までに担当した仕事に

ついて聞かせてください

主担当業務は会計業務で、個々の物

件の売上高、原価、利益の計算を行っ

ています。また、それらの数字をまと

め、支店の月次売上の計算もしていま

す。その際、現状の課題を考慮しなが

ら正しい数字が算出できるように、他

部署とも打ち合わせをします。

最も得意な仕事、やり甲斐のある仕

事はなんですか

主担当の会計関連業務では、支店の

あらゆる会計監査の対応をしており、

それが最も得意な仕事です。

また、日常業務を通じて、小さな相

談から大きな相談までいろいろ受けま

すが、仕事をしていくなかで、ほかの

人から必要とされるときが、自分の存

在意義を一番感じられるため、やり甲

斐があります。

仕事をするうえで大切だと思うこと、

努力していることはなんですか

大切なことはたくさんありますが、「自

主性」が一番重要だと思います。なぜな

らば、自ら積極的に仕事にかかわること

で、知識を得られたりスキルアップした

りするからです。また、支店のすべての

人と同じ目標に向かって一緒に仕事をし

ますので、受動的(消極的)な人よりも

能動的(積極的)な人と仕事をする方が、

お互いに支えあえるため、効率よく円滑

に仕事ができると思います。それは、障

がいの有無にかかわらず同じことだと思

います。障がいがあることで消極的になっ

てしまう人もいますが、できることや配

慮してほしいことを自主的に発信し、業

務の幅を広げようとする姿勢が、チャン

スをつかみ、自身を成長させることにつな

がると思います。

努力していることは、常に知識を増や

すことです。「総務」は多種多様な相談

を受けますので、たくさんの知識が必要

となりますが、問題を解決するためには

経験も必要になります。資格取得だけで

なく、業務上発生した問題の原因を探求

し、理解し、解決していくことによって

も知識を増やしています。

入社から現在まで「働くこと」を通じ

て、スキル以外で成長したと実感してい

ることはなんですか

以前は、どちらかというと他者よりも

自分の心配の方が多く、将来への不安も

ありましたが、現在は、障がいのあるほ

かの社員の悩みや、問題解決に目が向く

ようになりました。多くの人の配慮や支

えにより、いまの自分があるのだと実感

していますので、その恩返しは、障がい

を持ったほかの社員に還元することだと

思っています。このような意識の変化や、

「障がいのある社員」ではなく「一社員」

としての自覚が生まれたことが、仕事を

通しての成長だと思います。

「キャリアアップ・チャレンジ制度(地

域勤務職から総合職)」に応募するため

に取り組んだことはなんですか

以前から、総合職になることを視野に

入れて業務に取り組んでいました。キャ

リアアップ・チャレンジ制度の必須資格

の取得はもちろんですが、総務として必

要な資格を、最短期間で、なおかつ1回

の受験で取得しました。また、上司には、

基本的な業務や指導も総合職を目ざすこ

とを意識してもらっていましたので、総

合職へのステップになるような経験を積

むことができました。

「地域勤務職」から「総合職」に転換

したことで、職務内容、役割、意識がど

のように変化しましたか

仕事の範囲が広がり、いままで以上に

責任のある仕事を任されるようになりま

した。仕事の進め方についても、一歩先を

求められていると強く感じており、指示

がある前に予測して事前準備を行い、素

早く対応ができるように心がけています。

「ダイバーシティ交流会」の事務局とし

東京特建支店総務課の

阿部泰貴さん

東京特建支店総務長の海野隆幸さん(左)と、今回お話をうかがった阿部泰貴さん(中央)広報部の細井佳子さん(右)

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25 働く広場 2017.8

また、職務以外でも、関東エリアの障

がいがある社員と定期的に食事会を開催

し、各々の相談や悩みを解決できるよう

なネットワークづくりを行っています。

新たにチャレンジしてみたいこと、今

後の目標を教えてください

支店の総務長を目ざしています。そし

て、障がいがあっても、仕事を通して活

躍できるということを自ら示すことで、

社内にとどまらず、社会全体のダイバー

シティの推進につながるようにしたいと

考えています。

これから就職を目ざす方へのメッセー

ジをお願いします

障がいがあることで、希望する仕事に

就けなかったり、健常者とまったく同じ

ように仕事をこなすことができない場合

もあり、辛い思いをしている人や、不安

がある人もいると思いますが、決して自

分の目標や夢を諦めないでください。就

職することがゴールではなく、「仕事を

通じてなりたい自分になること」が“就

職活動”です。働くうえでは、障がいが

あるために、できないことを伝えること

も大切ですが、それ以上に“障がいがあ

ってもできること”をアピールすること

が重要です。そして明朗さも大切です。

選考では、障がいの有無に関わらず、そ

の人がどのような人か“人間性”を見ら

れますので、明るく前向きな姿勢で就職

活動を行ってください。そうすればきっ

と、うまくいくと思います。

山本さん、阿部さんに共通しているの

は、常に向上心を持ち、自主的に新しい

ことにチャレンジし続けているというこ

とだ。その取り組みの姿勢や成果につい

て、山本さんの上司である部長の黒田さ

ん、阿部さんの上司である総務長の海野

さんも、非常に高く評価している。こう

した、すべての社員が働きやすく、モチ

ベーションを高く保ちながら働き続けら

れる仕組みがあることも、お2人が今後

も活躍していくうえで重要なことだと私

は思う。

障がいのある方々の職域が拡大し、入

社後のキャリアアップについても数多く

紹介されている昨今においても、「障が

いがある=補助的な仕事」と誤解してい

る企業があるかもしれない。企業で活躍

している社員を紹介していくことで「障

がいの有無にかかわらず、社員が成長を

していくための仕組みと環境が整ってい

る。そして、障がいの制約に対する合理

的配慮がなされ、公平なチャンスと評価

のもとで、社員はキャリアアップし、人

としても成長し続ける」ということが、

より多くの方に伝わることを心から願っ

ている。

25

ての、阿部さんの

役割を教えてくだ

さい本

社の事務局

に、全国の「ダイ

バーシティ交流

会」のあり方や、

当社のダイバーシ

ティ推進につなが

るような提案を

し、取り組みの活

性化を図っていま

す。また、東京で

開催される、今年

度の「ダイバーシ

ティ交流会」の具

体的な運営も行っ

ています。

参加者から「交

流会で他者の話を

聞いて刺激になっ

た」、「自身で抱え

ていた問題がほか

の障がい者に相談

することによって解決に向かった」など

の声を聞き、この交流会で、普段はかか

わりのない社員同士が、成功事例や解決

策を情報共有することに大きな意味があ

ると改めて感じました。これから入社す

る社員のためにも継続的に開催する必要

があると思っています。

新しいことにチャレンジ

し続ける姿勢と取り組み

東京特建支店総務課で働く阿部さん

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26働く広場 2017.8

農業関連分野における生活困窮者への就労支援の現状と課題農林水産省 農林水産政策研究所  小柴有理江

者の受入れを目的としたカフェ事業について述べます。

カフェ事業では2段階の支援が行われており、まず第1段階である

就労準備支援では、生活困窮者の居場所として「ひきこもり者社会参

加支援センター『創はじめ』」を設け、コーヒー焙煎などの軽作業を行います。

生活困窮者は、そこに通うことで生活のリズムを整え、人とのかかわ

りを持ち、社会参加を目ざしていきます。

第2段階の中間的就労支援(就労訓練)では、地域の古民家を改装

したカフェレストラン「創カフェ」をオープンし、2015年時点で

8人が就労しています。カフェは週3日の営業であり、出勤日や時間、

仕事内容は各自の状況によって決められます。ひきこもりの人たちは

対人関係が苦手な人が多いため、洗い場から始めて厨房、シェフの補

助、ホールやレジなどの接客へと徐々に担当範囲を広げていきます。

こうしたカフェでの就労訓練を経て企業に就職したり、飲食店で働く

ようになった人もいます。なお、就労支援にあたっては、『中間的就労・

就労支援マニュアル』を作成し、就労支援の目標管理を行ったり、就

労に必要な基礎的計数管理(原価計算等)を習得するための座学など

も行っています。

 麦の郷では、こうした段階的な訓練と目標管理の導入などのサポー

トによって、生活困窮者への就労支援を行っていました。また、地域

とのかかわりを持てる農業関連事業にたずさわることは、地域社会に

貢献している実感を得ることができ、就労意欲の増進につながりやす

いとの指摘もありました。

その反面、課題は、生活困窮者に対する就労支援は、障害者への就

労支援と異なり、必要な施設整備や人件費は法人の持ち出しとなる点

です。この点に関しては、農業分野については、2016年度から生

活困窮者への就農を含めた就労を支援する新規事業が厚生労働省に

よって講じられることとなりました。今後、こうした支援策がどのよ

うな効果を発揮していくのか、またどのような就労支援が農業関連分

野で展開されていくのか注目されます。

農林水産政策研究所は、農林水産省に所属する社会科学系の研究

所です。約10年にわたって「農業分野での障害者就労」(農福連携)

に関する調査・研究に取り組んできました。今回は、こうした研究成

果のうち、2016(平成28)年度に実施した「生活困窮者への就労

支援」に関する研究について概要をご紹介します。

生活保護受給者や生活困窮者の増加を背景として、生活困窮者自立

支援法が成立し、新たな生活困窮者自立支援制度が創設されました。

新たな制度の就労支援には、いわゆる中間的就労として「就労訓練

事業」が導入され、その受入れ先として農業や食に関する分野(「農

業関連分野」)にも関心が高まっています。農福連携に取り組む障害

者就労支援事業所のなかでも、新たな制度に先行して生活困窮者への

就労支援を行う事例が見受けられました。本研究では、そうした先駆

的な事例を分析し、農業関連分野での生活困窮者への就労支援につい

て、その特徴や課題を分析しました。

全国の先進事例を分析したところ、その支援のあり方は大きく3つ

のタイプに分けられました(表)。タイプⅠは、中間的就労の場とし

てひきこもり者などを受け入れ、生活習慣の改善も含む包括的・段階

的な支援を行うものです。タイプⅡは、中間的就労の場として農作業

技術などの習得に絞った支援を行うものです。タイプⅢは、障害者手

帳を取りにくい発達障害者や、一般就労が困難な生活困窮者を長期的

に受け入れる居場所づくりです。

今回はタイプⅠに焦点をあて、和歌山市の社会福祉法人一麦会(通

称「麦の郷」。以下、「麦の郷」)の事例を紹介します。麦の郷は大型

の法人であり、農業や食品製造を含めいくつもの事業所があり、その

なかで生活困窮者への就労支援を行っています。ここでは、生活困窮

1

研究の背景

2

農業関連分野で生活困窮者を受け入れている

障害者就労施設

4

事例からみる課題

3

農業関連分野での就労支援の取組み事例

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27 働く広場 2017.8

資料:聞き取り調査より作成

註:1)いずれも 2015 年時点のデータであるただし、NPO法人土と風の舎の「利用障害者数」および「生活困窮者などの数」は、2014 年度における就労訓練の試行者数である

2)「移行」とは就労移行支援事業、「A型」とは就労継続支援A型事業、「B型」とは就労継続支援B型事業を指す3)「主たる支援対象」中の「(障)」は障害者、「(生)」は生活困窮者のことを指す

表 生活困窮者の就労支援を行っている組織の概況

タイプ事例 法人名 所在地

障害者就労支援サービス

事業内容 主たる支援対象

利用障害者数

生活困窮者などの数

生活困窮者への主な支援方法

1 社会福祉法人一麦会 和歌山市 移行、A型、

B型

露地野菜、農作業請負、加工、直売所・レストラン・カフェ運営、カーメンテナンス、クリーニング、印刷、作業請負 など

・(障) 知的障害者、 精神障害者・(生) ひきこもり

82 13

短期的な受入れ、生活習慣の改善も含む段階的な支援

2 NPO 法人アゲイン 神戸市 移行、A型、

B型

水稲、露地・施設野菜、農作業請負、パン製造

・(障) 知的障害者、 精神障害者・(生) ひきこもり

63 2

3 公益財団法人喝破道場 高松市 ―

ハーブ栽培・加工カフェ運営

・(障) 精神障害者・(生) ひきこもり 生活保護受給者 など

5 約30

4 NPO 法人土と風の舎 川越市 ―

体験農園、園芸福祉指導

・(障) 精神障害者・(生) 発達障害者

(1) (1)

短期的な受入れ、農作業技術に特化した支援

5 NPO 法人杜の家 岡山市 A型

農作業請負 ・(障) 精神障害者・(生) 生活保護受給者

17 3

6 NPO 法人UNE 長岡市

地域活動支援

センター

水稲、露地野菜、加工、直売所・レストラン運営、作業請負

・(障) 知的障害者・(生) 生活保護受給者

8 8

長期的な受入れによる居場所づくり

7株式会社

金沢ちはらファーム

金沢市 ―(一般雇用)

露地野菜、施設果樹、加工、体験農園

・(障)(生) 発達障害者 10

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28働く広場 2017.8

障害者在宅就業支援の現状と

課題に関する研究

1はじめに

IT技術の急速な進展に加えて、ワークライ

フバランスの考え方の浸透により、在宅勤務や

モバイルワークなどが広がりをみせており、交

通機関の混雑対策として在宅勤務の話題も出て

きつつあります。

職場への移動にともなう時間的・体力的な負

担がなく、生活面の支援も仕事の合間に受けら

れる在宅で働く形態は、障害者にとって自分の

生活に合った働き方ができ、特に重度の身体障

害者にとってメリットが多い場合もあると考え

られます。

このため、厚生労働省では、企業が在宅で就

業する障害者本人や在宅就業支援団体に仕事を

発注した場合に、特例調整金または特例報奨金

を支給する制度を2006(平成18)年度に制

定し、在宅就業障害者に対する支援を行ってい

ます(図1参照)。

当研究部門では、厚生労働省からの要請を受

け、在宅就業支援団体やそこに登録する障害者

の現状を把握するとともに、制度の活用状況を

分析し、今後の支援制度改善に向けた課題や支

援策を検討しました。

2調査研究の方法

障害者の在宅就業の実態を把握するため、在

宅就業支援団体など(厚労省登録団体のほか、

在宅就業障害者の就業相談や情報提供、技術面

の支援を行うとともに、企業からの発注を受け

て登録者に仕事を供給している団体を独自で把

握)49団体(回収率71・4%)と、団体への外注

状況や制度の認知度の把握のため、在宅ワーカー

障害者職業総合センター研究部門

への外注が多いとされる、情報サービス業を主

業務とする企業および特例子会社1,235社

(回収率18・4%)を対象にアンケート調査を行

いました。また、詳細な実態を把握するため、

幅広く専門家や支援団体への聞き取り調査もあ

わせて行いましたが、ここでは今後の進展が見

込まれるIT技術を活用する支援団体と企業の

外注ニーズの現状に関することを中心に取り上

げます。

3調査研究の結果

⑴IT活用系在宅就業支援団体を対象とした実

態調査の結果

まず、団体に登録する障害者が従事可能な割

合が多い作業は文字入力などの基礎的なスキル

であって、描画ソフトやCADソフトなど、一般

に中級程度以上と思われるスキルを持つ障害者

図1 特例調整金・報奨金制度の概要

図2 IT系支援団体が受注量を確保しにくい理由

在宅就業障害者

在宅就業支援団体

特例調整金・特例報奨金の支給(当機構)

〔発注奨励〕

仕事の発注

仕事の発注

納品

支給申請

支給

職業講習、就職援助などの支援

対価の支払い

証明書の交付

評価額(発注額)35万円ごとに

特例調整金➡2.1万円

特例報奨金➡1.7万円

在宅就業障害者ができる作業の需要が少ない

団体の運営体制の脆弱さ(人員体制)

作業を受注するための営業活動の弱さ(ノウハウ)

納期の短いものなど、受注したことによるリスクが大きいものが増えてきた

委託先として認めてもらえない(入札参加資格などが得にくい)

そのほか 42.9%

0 20 40 60 80 100(%)

23.8%

47.6%

52.4%

47.6%

81.0%

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29 働く広場 2017.8

は全体の3分の1程度で、従事可能な作業と供

給可能な作業がマッチしていない状況がうかが

えました。企業などからの受注作業では、「十分

な量を確保しにくい」と回答した支援団体が全

体の91・3%で、その理由は「在宅就業障害者

ができる作業の需要が少ない」と回答した支援

団体の割合が最も多い結果でした(図2参照)。

また、受託上での納期面などのリスクがある

場合は、「受注せざるをえないが、団体職員への

負担が増えるなどで苦労する」という回答が最

も多くあげられ(32・1%)、「従事できる登録

者で作業内容をシェアする」や、「協力会社と作

業分担をする」など、支援団体によってはリス

クの軽減策をとっているところも見られました。

⑵情報サービス業の企業を対象とした実態調査

の結果

情報サービス業の企業は在宅ワーカーに、「よ

りよい結果を得るための専門的な知識技術」

(80・0%)を最も求めていました。支援団体で

は、e―ラーニングなどで専門性が高まる支援方

法を検討し、登録障害者のスキル向上を図って

いくことが必要と考えられます。

在宅就業をする個人(事業主)への委託につ

いては、「納期が守られ、仕上がりに問題がなけ

れば支障がない」という企業や、「小規模の委託

から始めて実績を評価しながら進めたい」とす

る企業の割合が、委託を考えていない企業に比

べ若干ながら上回っていました(図3参照)。

また、特例調整金や特例報奨金の制度の認知

度は30・3%でしたが、実際に当該調整金など

を申請したことがある企業はわずか0・9%でし

た。また、制度を「詳しく知らない」、「見聞き

したことがない」という企業は全体の3分の2

を超えており、この制度の企業への周知が進ん

でいないことが推測されます。支援団体の調査

では、「十分な受注量が確保しにくい」理由とし

て、「運営体制の弱さ」や「営業活動の弱さ」が

あげられていたことからも、制度の周知にもつ

ながる営業活動の強化が望まれます。

4まとめ

調査結果から、企業が在宅ワーカーに高い専

門性を求める一方で、条件さえ満たせば、外注

に関して前向きな姿勢である企業が多く存在す

ることがわかりました。とはいえ、制度の活性

化を図るうえで、登録障害者の持つスキル(専

門性が高い者が少ない)と支援団体が供給した

い作業内容(専門性が高い)にはギャップがあ

ること、それに加えて、人員不足やノウハウ不

足による支援団体の営業活動の弱さが課題と

なっているようです。このため、この制度の活性

化のためには、「障害者のスキルの向上」と「制

度の周知や外注のための営業活動の強化」の2

点に焦点を当て、積極的に支援策を講じていく

必要があると考えています。

また、障害者のスキルや支援団体の営業力の

向上が前提にはなりますが、支援団体が責任を

持って良質な委託作業を行えるのであれば、ビ

ジネスパートナーの1つとして支援団体が企業

からの受注を取れる市場が存在することもわか

りました。

なお、企業が外注する際に感じているリスク

に関しては、情報セキュリティ対策をする、支

援団体間で長所を活かした作業の分担をする、

組織的に責任を持って納期までの納入を履り

行こう

るなどの対応をしている支援団体もありました。

在宅就業者に直接または在宅就業支援団体

(厚生労働大臣の登録を受けたもの)を通じて仕

事を発注した事業主に支払われる特例調整金お

よび特例報奨金に関しては、小口発注も支給対

象となるよう、2015年4月から評価額(企

業から外注した在宅就業障害者などへの年間支

払総額)の最低金額を105万円から35万円に

引き下げる障害者雇用促進法の施行令の改正が

ありました。また、障害者雇用納付金を納める

場合には、特例調整金の額に応じて納付する額

も減額されます。

各支援団体の業務や連絡先などの情報は、当

機構の在宅就業支援ホームページ「チャレンジ

ホームオフィス」(http://w

ww

.challenge.jeed.or.jp/

)から入手できます。厚生労働大臣登録の

各支援団体が相談に応じますので、企業のみな

さま、今後の外注の際、ご参考にしていただけ

ればと思います。

図3 情報サービス業の企業での外注に関する考え方

25.8%

12.9%

15.7%

21.3%

24.2%

納期が守られ、仕上がりに問題がなければ個人への発注も問題ない

納期や仕上がりに不安があるので、小規模の委託役務から始めて、実績を評価しながら進めたい小規模の役務の委託が中心となり、委託内容の調整などに手間がかかるので、委託は考えていない納期や仕上がりに不安があり、結果を期待しにくいので、委託は考えない

そのほか

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30働く広場 2017.8

型事業所などの福祉的就労、市外への就労、ま

た市外から市内事業所への就労も含んでいる。達

成後も支援を継続していく。

障害者とアーティスト、市民が協働で作品を

創作し、その成果を発表する国際芸術祭「ヨコ

ハマ・パラトリエンナーレ2017」が始まった。

同展は「アートの力で多様な人々の出会いと協

働の機会を創出し、だれもが居場所と役割を実

感する地域社会の実現に貢献する」とのビジョン

を掲げ、今回で2回目。5月末、「象の鼻テラス」(横

浜市)で開催されたキックオフイベントでスター

ト。9月末までさまざまな場所でワークショップ

が行われ、10月上旬に発表会、11月からは展示

会が横浜市内各所で予定されている。

「合同会社バンビーノ」(横浜市)代表の坂東

友恵さんが、視覚障害がある子どもでも遊べる

玩具「こどもトランプ1

to

10」を発売した。

きっかけは、わが子とトランプで遊んでいて、

「シンプルで数字そのものに親しめる商品があれ

ばいい」と考えたこと。カードは4種類で、マ

ルやハートなどそれぞれの形に穴が開き、穴は

種類ごとに1~10個。配色も4色に分かれてい

る。遊び方は通常のトランプとは異なり、同じ

だり、指さすことで、必要な支援を伝えられる

ようにした。スカーフのメッセージ部分が見える

ように、背中に羽織ったりして使用。ケガをした

場合、包帯や止血の布としても使える。

横須賀市は、特例子会社の誘致を積極的に推

進するため、「特例子会社等設立支援補助金」制

度を設けているが、本制度を利用して「株式会

社NTTドコモ」(東京都)の特例子会社「株式

会社ドコモ・プラスハーティ」(東京都)が、9

月に新たな事業所を設置することになった。

場所は「ドコモR&Dセンタ」(横須賀市)。本

年度は障害者5~6人を採用し、最終的に20人

程度の雇用を予定。消毒清掃を中心としたオフ

ィスの衛生環境向上にかかわる業務などを行う。

 総そう

社じゃ

市は2011(平成23)年4月から、働

くことができる障害者を支援するために、「障が

い者千人雇用事業」に取り組んできたが、今年

5月に目標の千人を超えた。

千人の雇用に向けて、障がい者千人雇用セン

ター、ハローワーク総社、総社市役所の「3本の

矢」で支援。障害者向けの就職面接会を行った

り、福祉的就労から一般就労へ移行し6カ月以上

経過した人に就労支援金10万円を支給する市独

自の施策などを実施した。

就労者は一般就労のほか、就労継続支援A・B

東京都は、2020年の東京五輪・パラリンピ

ックを盛り上げようと、大会エンブレムの広報P

R用バッジを作成し配布してきたが、視覚障害

者が触ってデザインが理解できるように凸凹がつ

いたバッジを新たに作成した。

サイズは、縦2・8㎝、横3・7㎝と通常のバッ

ジの約1・3倍。ケガを防ぐため、留め具はピン

ではなく、マグネットを使用。視覚障害者団体

や視覚障害特別支援学校、都内の障害者スポー

ツ団体の所属選手などに配布している。

習志野市は、障害のある人が情報を取得しな

がら安全に避難し、避難所でも必要な支援や周

囲の理解を得ながら生活するための手助けとし

て、オリジナルの「災害時支援・みまもり」スカ

ーフを製作した。

大きさは、70㎝×70㎝。4隅に「言葉が話せま

せん」、「耳が聞こえません

手話・筆談で教えて

ください」、「目が不自由です

手を貸してくだ

さい」、「伝えたいこと」の4つのメッセージを入

れた。

視覚障害者向けのメッセージが入っている部分

にはフエルトを貼りつけ、裏表や位置がわかるよ

うに、聴覚障害者向けにはいずれかを〇で囲ん

視覚障害者向け五輪バッジ作成

東京

市の補助金制度を活用し、

特例子会社が事業所を設置

神奈川

「障がい者千人雇用事業」目標を達成

岡山

災害時の障害者用スカーフを製作

千葉 地方の動き

生活情報

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」

開幕

神奈川

だれでも遊べる万能トランプ

神奈川

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31 働く広場 2017.8

数のカードを探したり、足して10になる組合せ

を見つけたりする。検品や箱詰めは、市内の福

祉施設の障害者が担当している。

http://www.bam

binojapan.com/index.htm

l

  

徳島県内の障害者授産施設などからなるNP

O法人「とくしま障害者授産支援協議会」の統一

ブランド「awanowa」製品が、「文化の森ミ

ュージアムショップ」(徳島市)で販売されている。

 

店内の専用コーナーには、藍染の手ぬぐいやT

シャツ、恐竜の足跡がプリントされた缶バッジな

どが並ぶ。期間限定の販売が好評だったため、常

設販売となった。

  「株式会社デザインマインドカンパニー」(東京

都)が運営する就労移行支援事業所「ジョブサ

品川区」では、障害者手帳を持ち、就職活動を

している障害者に、スーツの無料レンタルサービ

スを開始した。

 

障害者雇用の現場では、面接だけでなく、企

業見学、実習などでも、スーツ着用が一般的にな

りつつあるため、安心して就職活動に専念できる

環境づくりの一環として考えられた。

 

予約の電話で、必要なサイズや利用日程など

を伝え、約束の日に本人が「ジョブサ品川区」に

就職活動などに無料スーツレンタル

東京 働く 授

産施設の統一ブランド製品を発売

徳島

行き、試着して受取り。返却期日までにクリー

ニングのうえ、返却する。

問合せ:03ー6417ー0280

 「株式会社武蔵野銀行」(埼玉県)は、障害者

の雇用促進を目的とした新会社「むさしのハー

モニー株式会社」を設立し、事業を開始した。

 

業務は、名刺印刷、ゴム版などの事務用品、

販促品の作成、パソコン入力などの事務受託など。

着実な業務スキルの取得を目ざし、障害者3人

でスタート。2018年度初めを目途に障害者5

人以上を雇用し、特例子会社の認定取得を予定。

  

中野市(長野県)は、北陸地方で食品スー

パーを展開する「アルビス株式会社」(富山県)

と「農業と福祉の連携による地域づくり協定」

を締結した。

 

アルビスの子会社「株式会社アルビスファー

ム信州なかの」が就労継続支援A型事業所の申

請手続を開始。中野市の農地や遊休地を利用し

て、タマネギ、ズッキーニなどの農産物の生産・

加工を行い、アルビス各店で販売するほか、総

菜工場で原材料として使用する。

  

伊い

万ま

里り

市の市街地に障害者が働く店舗「漬も

ん屋 

鉢はち

瓶がめ

」がオープンした。

 

障害者の就労拠点の整備などを支援する日本

財団の「はたらくNIPPON!計画」を活用

し、築150年の呉服店を再生。障害者福祉施

設を経営するNPO法人「にこにこくらぶ」(伊

万里市)が運営する。

 

伊万里焼の器を使い、特産の伊万里牛などの

グリルをメインとしたランチメニューには、手づ

くりの漬物とかまど炊きのご飯、味噌汁がつく。

喫茶メニューと漬物の販売コーナーも設けた。障

害者のスタッフが配膳や接客を学びながら、工賃

アップを目ざす。

農業で障害者就労の連携

長野

障害者の社会参画の拠点に、漬物店開店

佐賀

障害者たちが銀行事務などを受託

埼玉

地方アビリンピック 検索

平成29年度地方アビリンピック開催予定

富山県、鹿児島県、新潟県*7月25日(火)時点。部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります*  の県は開催終了

7 月末~ 9月

富山新潟

鹿児島

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32働く広場 2017.8 32

<働く広場の読者のみなさまへ>

次号予告

職場ルポ

全国で衣料品店を展開する「株式会社ウィ

ゴー」の倉庫部門をになっている、株式会社

ウェルメット(大阪府)を訪問。実習やトラ

イアル雇用制度を活用し、支援学校などから

の採用を積極的に行い、障害者の雇用創出に

取り組む様子を取材します。

編集委員が行く 

齊場三十四編集委員が久留米リハビリテー

ション病院と、総合せき損センター(福岡県)

を取材。障害者のための先端機器や、スマー

トフォンの活用による環境コントロールなど、

就労を目ざしたリハビリを行う現場を紹介し

ます。

グラビア

平成29年度「障害者雇用支援月間ポスター

原画

入賞作品」をご紹介します。

本誌を購入するには――

●定期購読は、インターネットからのお申し込みが便利です。バックナンバーも購入できます。

●(株)廣済堂にお申し込みいただいても購入できます。1冊ずつの購入も受けつけます。

 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822

インターネットから定期購読検索富士山マガジンサービス

■ 声—障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。

  ●発 行ーー独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  発行人ーー企画部長 小林 淳 編集人ーー企画部次長 児玉順子〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉 3−1−2  電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課)ホームページ http://www.jeed.or.jp  メールアドレス [email protected]●発売所ーー株式会社 廣済堂 〒108−0014 港区芝 4−7−8 芝サンエスワカマツビル9F 電話 03−5484−8821  FAX 03−5484−8822

8月号

編 集 委 員(五十音順)

・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。

あなたの原稿をお待ちしていますあなたの原稿をお待ちしています

埼玉県立大学教授

エフピコダックス株式会社 障がい者雇用責任者

佐賀大学名誉教授

山陽新聞社会事業団専務理事

一般社団法人 JUNE(樹音) 

株式会社ダイナン 経営補佐

文京学院大学 人間学部 客員教授

東京学芸大学名誉教授

有限会社まるみ 代表取締役社長

横河電機株式会社

朝 日 雅 也且 田 久 美齊場三十四阪 本 文 雄武 田 牧 子樋 口 克 己松 爲 信 雄松 矢 勝 宏三 鴨 岐 子箕 輪 優 子

定価(本体価格129 円+税) 送料別平成29年7月25日発行無断転載を禁ずる

「働く広場」 広告募集のお知らせ広告掲載を希望される企業の方は、㈱廣済堂までご連絡ください。

【判 型】:A4判、中綴  【頁数】:カラー8頁(表紙含む)、2色28頁【定 価】:本体価格 129 円+税  【発行部数】:5万 2 千部  【発行形態】:月刊(毎月25日発行)【問合せ】:株式会社 廣済堂 「働く広場」編集担当

(TEL 03-5484-8821  FAX 03-5484-8822  mail [email protected]

2017 年 9 月号は、「平成 29 年度障害者雇用支援月間ポスター原画 入賞作品」の公表日の関係から、お手元に届く日程が通常よりも数日遅れることが見込まれています。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いします。ご不明の点は、当機構企画部情報公開広報課(電話 043-213-6216)までおたずねください。

広告の掲載位置・規格

表 3

本文

カラー

2色

(裏表紙の裏)

(P.31)

A4フルサイズA4の2分の1A4フルサイズA4の2分の1

150,000 75,000 100,000 50,000

掲載料金(円、税抜)

<高齢・障害・求職者雇用支援機構>

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第25回職業リハビリテーション研究・実践発表会平成29年11月9日(木)・10日(金) 東京ビッグサイト で開催!

みなさまのご参加をお待ちしています。

事務局 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構                        障害者職業総合センター 研究企画部企画調整室(千葉市美浜区若葉3- 1- 3)

    TEL:043- 297- 9067 FAX:043- 297- 9057    E-Mail:[email protected]  HP:http://www.nivr.jeed.or.jp

参加者の募集などについて

「職業リハビリテーション研究・実践発表会」は、職業リハビリテーションに関する研究成果の発表をはじめ、就労支援に関する実践事例や企業における障害者の雇用事例を紹介し、参加者相互の意見交換や情報共有を図るものです。昨年は 1,074 人の方が参加され、参加者相互の意見交換や情報共有が行われました。今年は以下の日程で開催します。

入場無料

 障害者職業総合センターの研究成果の発表に加え、企業や教育、福祉、医療、研究機関など、さまざまな分野の方々が発表をします。昨年は「新版F&T感情識別検査による特性評価と結果の解釈」「ワークサンプル幕張版(MWS)新規課題の開発について」など1 1 8 の発表が行われました。

 過去の論文集は、                でご覧いただけます。

研究発表の内容

検索職 リ ハ 発 表 会

 ● 基礎講座 職業リハビリテーションに関する基礎的事項に関する講義 「精神障害」「発達障害」「難病」

 ● 支援技法普及講習 職業センターで開発した支援技法の普及講習

 ● 特別講演 「ひとりひとりの輝きのために ~地域と連携しながら 誰もが働きやすい職場づくりを目指して~」 酒井 和希 氏(株式会社エヌ・エフ・ユー)

 ● パネルディスカッションⅠ テーマ「精神障害者の継続雇用のために」

 ● 研究発表(口頭発表) テーマごとに分科会を設定 

 ● 研究発表(ポスター発表) 発表者による説明・参加者との討議 

 ● パネルディスカッションⅡ テーマ「障害者雇用の現場で実践する合理的配慮」

11 月 9 日(木)

11 月 10 日(金)

 参加者の募集とプログラムの詳細は8月下旬ごろ下記ホームページなどでご案内する予定です。

特別講演の様子

ポスター発表の様子

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8月号 平成29年7月25日発行 通巻479号

毎月1回25日発行 

定価(本体価格129円+税)