多機関共同非介入研究における 中央倫理審査を活用する方法...2.1.1...

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多機関共同非介入研究における 中央倫理審査を活用する方法 日本医療研究開発機構 平成 31 年(令和元年)度 中央 IRB 促進事業 「多様な多施設共同非介入臨床研究における中央 IRB の基盤整備とその効率的運用に関する研究」研究班 国立大学法人 大阪大学 国立大学法人 東北大学 国立大学法人 東京医科歯科大学 国立研究開発法人 国立がん研究センター 国立大学法人 神戸大学 公立大学法人 和歌山県立医科大学 国立大学法人 徳島大学 国立大学法人 山口大学 学校法人 日本医科大学 国立大学法人 鳥取大学 国立大学法人 広島大学 学校法人 昭和大学 聖マリアンナ医科大学 2020 3 31 日作成

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  • 多機関共同非介入研究における 中央倫理審査を活用する方法

    日本医療研究開発機構 平成 31年(令和元年)度 中央 IRB 促進事業

    「多様な多施設共同非介入臨床研究における中央 IRB の基盤整備とその効率的運用に関する研究」研究班

    国立大学法人 大阪大学 国立大学法人 東北大学

    国立大学法人 東京医科歯科大学 国立研究開発法人 国立がん研究センター

    国立大学法人 神戸大学 公立大学法人 和歌山県立医科大学

    国立大学法人 徳島大学 国立大学法人 山口大学 学校法人 日本医科大学 国立大学法人 鳥取大学 国立大学法人 広島大学

    学校法人 昭和大学 聖マリアンナ医科大学 2020年 3月 31 日作成

  • ※ 本マニュアルは多機関共同非介入研究を行う予定の研究者向けに当委員会の中央倫理審査を活用してもらう目的で大阪大学医学部附属病院の倫理審査委員会(以下、当委員会)をモデルとして作成したものである。使用に当たっては各施設の状況に応じて適宜修正を行うこと。

  • 1. はじめに 1.1 委員会概要

    当委員会の概要、審査内容、開催日程、委員構成などに関しては、下記ホームページを参照すること。 (参考例) 大阪大学医学部附属病院 介入・観察研究倫理審査委員会 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/hp-crc/person_concerned/index.html

    1.2 中央倫理審査とは

    複数の研究機関が共同して行う医学系研究において、研究機関の長が同一の倫理審査委員会(より正確には倫理審査委員会の設置者)に審査を依頼し、一括した倫理審査(中央倫理審査)を行うことができる。人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(文部科学省・厚生労働省、平成26年12月22日、その後の改正も含む。以下「医学系指針」という。)「第 11の 4」に定められている。

    1.3 中央倫理審査のメリット・デメリット

    研究機関にて共通で用いる研究計画書等の作成や倫理審査委員会からの審査意見等への対応は、一括して研究代表者が行うので研究マネジメントを行いやすく、研究代表機関以外の研究者は申請等にかかる手続きが軽減される。また、研究開始後の変更申請等についても新規審査同様に各研究機関での倫理審査は不要となる。一方、研究代表機関は各研究分担機関の体制等を確認する必要があるため実質負担が大きくなる。 また、医学系指針に定める研究機関の長の責務は各研究機関に残るため、倫理審査後の研究実施に関する許可や定期報告、重篤な有害事象の報告、終了報告などは各研究機関の規程に従って各研究機関で別途対応する必要がある。中央倫理審査を活用する場合は、各研究機関の管理体制が疎かににならないようにすることが必須である。

    1.4 本マニュアルが対象とする研究

    複数の研究機関による医学系指針に基づいて実施される観察研究等の介入を伴わない研究(以下、「非介入研究」)を対象としている。

    http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/hp-crc/person_concerned/index.html

  • 1.5 用語 侵襲(医学系指針第 2) 研究目的で行われる、穿刺、切開、薬物投与、放射線照射、心的外傷に触れる質問等によって、研究対象者の身体又は精神に傷害又は負担が生じることをいう。 侵襲のうち、研究対象者の身体及び精神に生じる傷害及び負担が小さいものを「軽微な侵襲」という。 介入(医学系指針第 2) 研究目的で、人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因(健康の保持増進につながる行動及び医療における傷病の予防、診断又は治療のための投薬、検査等を含む。)の有無又は程度を制御する行為(通常の診療を超える医療行為であって、研究目的で実施するものを含む。)をいう。 多機関共同非介入研究 複数の研究機関が共同で行う非介入研究を指す。 研究代表者(医学系指針ガイダンス第 5の 11) 多機関共同非介入研究を総括する研究責任者を指す。 研究代表機関 研究代表者が所属する機関を指す。 中央倫理審査委員会 多機関共同非介入研究に参加する複数の研究機関の研究計画について、一括して審査を行う倫理審査委員会を指す。

  • 2. 申請準備 2.1 各研究分担機関で確認する事項

    多機関共同非介入研究を行う予定の研究者が当委員会で中央倫理審査を受けるにあたって、研究代表機関の研究者が各研究分担機関の研究者へ確認する事項は下記の通りである。「多機関共同非介入研究における倫理審査集約化に関するガイドライン(案)」に記載の研究機関要件確認書などを適宜活用すること。 2.1.1 研究実施機関に関する確認事項

    各研究分担機関の研究者が自機関の体制について確認する事項である。自機関での体制が確認できない、または不明であるという機関には、当該機関の倫理審査委員会を担当している部署に連絡し、確認してもらう。 ① 研究機関の長の責務(医学系指針「第 6」関連) ・研究に関する総括的な監督 ・研究の実施のための体制・規程の整備等 ・研究の許可等 ・大⾂への報告 など、医学系指針を遵守して研究を実施できる体制があるかどうかを確認する。 ② 手順書の整備 ・研究の実施に関する手順書 ・試料・情報の保存に関する手順書 ・安全性情報・有害事象に関する手順書 ・個人情報の管理に関する手順書 など、医学系研究を行う上で必要な手順書が整備されているかどうかを確認する。 特に、代表機関として、重篤な有害事象の報告およびプロトコル逸脱の報告に関して各機関でどのような様式・方法で行われているのか、について事前に確認しておくことは、実際に研究を行う上で非常に重要である。 ③ 機関外の倫理審査委員会に審査依頼可能と規定した文書 自機関以外の倫理審査委員会に審査を依頼することが可能かどうかを確認する。

    2.1.2 当該研究の実施体制に関する確認事項

    各研究分担機関の研究者が当該研究における自機関の実施体制を確認する。 ① 当該研究機関概要 自機関の概要について記載したホームページ、パンフレットなどがあるかどうかを確認する。

  • ② 研究情報・試料の保管管理体制 自機関の研究情報・試料を保管する責任者(通常、当該機関の研究責任者)とその保管場所について確認する。 ③ 個人情報保護 医学系指針「第 14~17」の記載事項を遵守して実施可能かどうか、および個人情報管理者を確認する。 ④ 匿名化の実施の有無 匿名化の方法について確認すると共に、同意説明文書に記載しているかどうかを確認する。 ⑤ 下記における原資料等全ての医学系研究関連記録の直接閲覧の受け入

    れ モニタリング、監査、倫理審査委員会の調査、または規制当局の調査の際に直接閲覧の受け入れが可能かどうかを確認する。 ⑥ 当該研究への企業等の資⾦提供の有無 当該研究への企業等からの資⾦提供がある場合、適切に管理されているかどうかを確認する。 ⑦ 当該研究における事務連絡窓口 自機関の実施体制について把握している事務連絡窓口の連絡先を確認する。

    2.1.3 研究者の要件に関する確認事項

    各研究分担機関の研究者が医学系研究を行う上で必要な自機関の研究者の要件を確認する。 ① 研究の適正実施に必要な教育研修(医学系指針「第 4」関連) 研究の適正実施に必要な教育研修を受けているかどうかを確認する。 例)研修を受けていない場合は、CROCO、 ICR-web、CREDITS、e-APRIN(臨床研究に関する e-learning サイト)などで研究を行う上で必要とされる講義を受講すること。 CROCO:https://bvits.dmi.med.osaka-u.ac.jp/croco/login.aspx ICR-web:https://www.icrweb.jp CREDITS:https://www.uhcta.com e-APRIN:https://edu.aprin.or.jp ② 当該研究の利益相反関係の管理(医学系指針「第 19」関連) 医学系指針を遵守して適切に対応しているかどうかを確認する。

    https://bvits.dmi.med.osaka-u.ac.jp/croco/login.aspxhttps://www.icrweb.jp/https://www.uhcta.com/https://edu.aprin.or.jp/

  • 2.2 中央倫理審査委員会に確認する事項 2.2.1 倫理審査委受託契約

    当委員会では非介入研究の中央倫理審査を受託する際に、委託される機関との間で契約(中央倫理審査に関する委受託契約)を省略しているが、委託される機関によって事情が異なる可能性があるので、申請前に契約の必要性について各機関で確認しておく。

    2.2.2 申請書類

    新規申請時には、当該研究のプロトコル(研究計画書)、研究倫理審査依頼書(新規申請)、および研究者リストに加えて、研究や倫理審査委員会の求めに応じて同意説明文書・同意書・同意撤回書、オプトアウト文書、他の研究機関への試料・情報に関する記録など当該研究で使用される文書、を提出する。 変更申請や有害事象発生時などは研究倫理審査依頼書(新規申請以外)と必要な書類を準備する。

    (例) 新規申請 新規申請以外

    必須

    ・研究計画書 ・研究倫理審査依頼書(新規申請) ・研究者等リスト(すべての施設) (要件確認書)

    ・研究倫理審査依頼書(新規申請以外) ・研究計画書等、変更が生じた書類 (変更申請時)

    ・変更箇所一覧(変更申請時) ・報告書(各種報告時)

    必要時

    ・同意説明文書 ・同意書・同意撤回書 ・オプトアウト文書 ・他の研究機関への試料・情報に 関する記録 など

    ― (委員会が必要とするものを提出しても

    らう場合あり)

    * 中央倫理審査委員会に申請する書類については委員会により異なる可能性がある。本マニュアルでは

    「中央倫理審査(非介入研究)の体制整備に関するマニュアル」を参照としている。

    2.2.3 審査費用・支払い時期 中央倫理審査にかかる費用は下記の通りである。自機関で審査を行う場合よりも高くなる可能性があるので申請前に確認しておく。なお、審査費用は原則申請時に支払う*が、支払いが困難な場合は事務局に相談すること。また、一度申請された場合は取下げや却下された場合も費用の返還は行われないので注意する。

  • * 委員会によっては毎年費用が発生する場合もあり、費用の考え方や支払い時期について委員会により

    異なる可能性がある点に留意。

    2.2.4 審査にかかる期間

    研究の内容および申請の種類による。申請から承認までにかかる期間を確認しておく。

    区分 2~10 施設

    11~20 施設

    21~30 施設

    31~40 施設

    41~50 施設

    51 施設以上

    新規 ●●円 ●●円 ●●円 ●●円 ●●円 ●●円

    変更 ●●円 ●●円 ●●円 ●●円 ●●円 ●●円

  • 3. 申請 申請後、倫理審査委員会事務局による確認、倫理審査委員会による審査の流れ*となる。原則、研究代表者または研究代表機関の担当者(研究事務局)が窓口となって対応すること。 (参考例) 審査の流れ

    *審査のフローや確認事項(特に機関要件の確認や機関の長の実施許可の確認)については機関により異

    なる可能性がある。参考として多機関共同非介入研究における倫理審査集約化に関するガイドラインの審

    査フローを掲載している。

  • 承認後 3.1 実施許可

    中央倫理審査委員会からの承認通知受理後、各研究機関で研究機関の長へ研究実施の許可を申請する。自機関で倫理審査が行われた場合、通常研究者が関わることのないプロセスだが、中央倫理審査の場合は必須である。実施許可を得ず、研究を行った場合、医学系指針違反となるため必ず本プロセスを研究開始前に踏むことに留意*する。

    *中央倫理委員会事務局に実施許可の報告をする場合もあり。

    3.2 各種報告

    各種報告(研究の進捗状況、研究中止・終了、重篤な有害事象・安全性情報(侵襲を伴う場合)、不適合、研究の実施・継続に影響を与えると考えられる事実又は情報(研究計画書からの逸脱等)等)については、各研究機関の長に行うべきものと倫理審査委員会に行うべきものを各々確認し、必要な報告およびその方法について事前に把握しておく。 (研究機関の長への報告事項) 1.研究の進捗状況 2.研究計画の変更 3.研究中止・終了に関する報告 4.研究の実施・継続に影響を与えると考えられる事実又は情報等 (研究計画書からの逸脱等) 5.不適合に関する報告 6.重篤な有害事象に関する報告(侵襲を伴う場合) 7.安全性情報(侵襲を伴う場合) (倫理審査委員会への報告事項・倫理審査委員会に意見を求める事項) 1.研究計画の変更 2.研究中止・終了に関する報告 3.研究の実施・継続に影響を与えると考えられる事実又は情報等(必要に応じて) 4.不適合に関する報告 5.重篤な有害事象に関する報告(侵襲を伴う場合) 6.安全性情報(侵襲を伴う場合)

    3.3 変更申請

    プロトコルを含む研究に使用される文書の変更などが生じた場合、研究代表者が当委員会へ変更申請を行う。申請方法に関しては適宜確認すること。承認後は、各研究機関で研究機関の長へ報告を行うことを忘れないように留意する。

  • 4. お問い合わせ 本委員会での中央倫理審査に関して何かご不明な点などありましたら下記までお問い合わせください。 (参考例) 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘 2番 2号 最先端医療イノベーションセンター棟 4階

    大阪大学医学部附属病院 倫理審査委員会 中央倫理審査担当 [email protected]

  • 【参考】「多機関共同非介入研究における倫理審査集約化に関するガイドライン」要件確認書