農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ...

13
農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 誌名 農村生活研究 = Journal of the Rural Life Society of Japan ISSN ISSN 05495202 巻/号 巻/号 135 掲載ページ 掲載ページ p. 30-41 発行年月 発行年月 2008年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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Page 1: 農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ …農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 農村生活研究 = Journal

農作業体験学習の前後における子供の意識変化について

誌名誌名 農村生活研究 = Journal of the Rural Life Society of Japan

ISSNISSN 05495202

巻/号巻/号 135

掲載ページ掲載ページ p. 30-41

発行年月発行年月 2008年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ …農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 農村生活研究 = Journal

[報文]

農作業体験学習の前後における子供の意識変化について一一農業・農村体験学習の教育的機能・保健休養機能の

定量的評価に関する研究(1 )一一

山本徳司'

Changes in Attitudes of Children after Participating in Agricultural Hands-On Study Programs

Quantitative Evaluation of the Educational and Recreational Benefits of Learning

through Farming and Rural Experiences in Agricultural Farming Villages (I)

Tokuji Yamamoto

Programs 0妊'eringlearning through farming and rural experiences in agricultural

farming villages are qualitatively known to have educational and recreational benefits,

but no thorough investigation of the magnitude of the quantitative effects of these

benefits has been conducted. Quantitative studies of such effects could help promote

urban/rural exchanges and revitalize rural communities. At the same time, this type of

study is linked to the design of e妊ectiveenvironmental, food, and agricultural education

programs, and could serve as a new assessment index for future research relating to the

educational benefits of such programs

Accordingly, in this study we investigated the effects of hands-on experience by

identifying and analyzing the types of changes in the attitudes of children participating

in hands-on study programs in agricultural and farming villages.

The results quantitatively demonstrated changes in attitude towards farming

villages and agriculture after participation in these hands-on study programs, differences

in viewpoints vis-a-vis types of participation, different effects based on different

approaches to rice harvesting and rice planting, and differences in the behavior of

parents and children.

[キーワード]

教育的機能 educationalfunctions, 意識変化 changesin attitude, 保健休養機能

health & relaxation functions, アンケート questionnairesurvey, 農村体験学習

learning through farming and rural experiences in agricultural farming villages

*(独)農研機構 農村工学研究所

-30一

Page 3: 農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ …農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 農村生活研究 = Journal

1.はじめに

農業・農村空間は食料を生産する空間のみなら

ず,ゆとりと安らぎに満ちた居住空間として,ま

た,人格形成の場,伝統文化継承の場,快適な余

暇活動の場,さらに,自然を通じ,次世代を担う

青少年の教育の場として見直され,都市住民を含

む多くの国民に,その必要性が再認識されている。

食料・農業・農村基本法においては,農業・農村

の持つ多面的機能は食料の安全供給,国土の保全

機能,水源のi函養機能といった基本的な役割の他

に,自然環境の保全機能,良好な景観の形成機能,

文化の伝承機能,教育・保健休養機能が明確に位

置づけられている。その中で,最近特に注目され

ているのが,農業・農村が持つ教育 ・保健休養機

能である。

教育的機能については,近年, r食Jと「農」

の距離がますます広がり,食料を生産する場であ

る農業に対する知識・関心が低下する中で,食と

農の繋がりや食品の安全性の認識,産業としての

農業の理解などを促進するための「農業 ・農村体

験」に期待が寄せられている。特に,小学校から

高等学校までのすべての教育課程に取り入れられ

た「総合的な学習の時間Jでの「農業体験学習」

は,それが持つ食農教育効果が脚光を浴びるとと

もに,これらの活動の地域活性化への派生効果も

期待されている。

また,農業・農村には,水,澄んだ空気,美し

い自然,四季の変化など安らぎに満ちた効果要素

も存在し,保健休養機能の期待もされている。最

近ではグリーンツーリズムが期待され,都会では

得ることのできない, rゆとり jや「やすらぎJといった心の豊かさを,農村の豊かな自然や美し

い景観などの「いやし」の場に求めようとする

人々が増えている。一方,農村も都市との交流活

動を促進することで,農産物の販売といった経済

効果にも間接的な影響を与えている。

以上のように,農業 ・農村は教育・保健休養機

能を有していることが定性的に認められているの

であるが,定量的な効果の大きさについては経済

的な指標以外は十分に解明されておらず,そのた

農作業体験学習の前後における子供の意識変化について

め,現場においては,農業・農村での体験学習に

ついてその効果を疑問視している教育者も多く,

十分な施策推進には至っていない面もある。

農業・農村体験がもっ教育・保健休養機能の効

果を定量的に解明することは,都市農村交流の増

加,農業者の意欲促進,グ1).ーンツーリズムの促

進など,地域の活性化に繋がると同時に,効果の

高い環境教育や食農教育プログラムの設計にもつ

ながり,今後の教育機能に関する研究の新たな評

価指標になると考えられる。

そこで,筆者が進める一連の研究では,アン

ケート手法,心理・生理反応計測により,農業・

農村体験に参加した子供たちの意識変化,気分変

化,脳の活動状態を捉え,定量的に農業・農村体

験を評価することを試みていく 。

そのうち,本論文では,農作業体験前後の意識

変化をアンケートによって把握・分析し,体験プ

ログラムによる意識変化の効果と教育的効果につ

いて解明する。

2.教育的機能の定量的評価の意義

これまで農業・農村体験学習の効果について

は,観察やアンケート等により定性的な評価は進

んでおり,農作業体験等が子供たちの情緒の安定

に大きな影響を与えていることや,それらの行為

を通した持続的な活動が,日常学習の意欲の増進

に働きかけていることが明らかにされてきた。ま

た,園芸療法等の臨床研究として,園芸行為が高

齢者の身体機能の改善に影響を及ぼすこと等の研

究もなされてきた。

これらの研究は,農業 ・農村体験や地域環境教

育を推進していく上での重要な背景となるもので

ある。しかし,体験学習の効果を直接的に心理計

測と脳科学の側面からより具体的かっ定量的に計

測した事例はないことから,実質的な効果は不明

確な側面もある。

近年の研究で,農村現場での体験活動と学校内

菜園との違いについても徐々に解明されつつある

が,これについても不確かな要因が多く,教育現

場では賛否両論あるところである。現場での理解

が進まない理由は多々あるものの,やはり,農作

EA

qJ

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農村生活研究第51巻第 3号 2008.3

業体験や農村体験学習が子供たちの心理にどれほ

どの影響を与えているのかが未だ明確に説明され

ていないことは大きな理由の一つである。

全体的に効果があることはある程度言えたとし

ても,細かい活動毎にどれほどの効果が期待でき

るのかが明確にならなければ,今,その活動が一

人ひとりの子供にとってふさわしい体験活動なの

かどうかも不明である。例えば,苦しさを知るこ

とも大切だと言われるが,楽な精神状態からの苦

しきの体験は有効になると思われるものの,苦し

い精神状態に苦しさを与えるとそれは逆効果にな

る場合もある。一人ひとりの子供の心理状態を十

分考慮しながら適正なプログラムを展開していく

必要があるはずだが,その指標はまだない。

本研究は,まだ途についたばかりで,本論につ

いても十分な成果となっていないことは承知して

いるが,この論文で扱うアプローチの方向性が,

明らかに新しい農業・農村体験学習プログラムの

設計や効果的な食農教育のあり方,環境教育と環

境保全意識の醸成にかかる活動を行うに当たって

機能することが期待されることから,本論を展開

するに至った。

3.教育的効果の指標と研究範囲

体験によって得られる教育的効果は様々なもの

がある。農業 ・農村体験学習によって得られる機

能としては水田,畑,牧場,畜舎などの生産現場

を対象として,生き物を育てる行為による情緒安

定機能,生命倫理,環境倫理の育成による環境保

全への意識の高揚機能,植物,生き物,土,水と

人との関わり学習による生産活動の認識機能,職

業としての理解による担い手意識促進機能,農業

者からの情報による地域農業情勢の理解に伴う社

会学習機能などが挙げられる。また,体験活動そ

のものによって得られる基礎的な機能としては,

先生と生徒,親子,生徒どうしのコミュニケー

ション力,個人の表現力 ・想像力・基礎学力・活

気 ・学習意欲などがある。

このような複合的で多様な教育的効果を定量的

に分析するためには, ①誰が効果を得たのか(効

果主体),②何によって効果を得たのか(効果要

因), ③いつ効果が現れたのか (効果時期).④何

を評価の指標とするのか (評価指標)の 4つの側

面を明確にする必要がある。

特に,評価指標は多様なものが扱われる。心理

テスト,インタビュー,感想文,アンケート, 絵

画を通して直接的に効果について聞き取る方法,

行為者の観察を通して変化していく様相を捉える

方法,行為時または行為時前後の心理的変化を計

量心理学によって捉える方法,生理反応の違いに

よって捉える方法等があり,評価の指標も専門家

の客観的な定量変換から計測数値を用いるものが

ある。

このように,指標によって評価される効果はそ

れぞれ異なることから,多様な教育的効果を一つ

の指標で評価することは困難である。意識変化を

生むだけでも,後々は大きな教育的効果に結びつ

く可能性もあれば,認識そのものが体験直後に変

わる場合もあり,意識または無意識に,心や脳が

反応している場合もある。

そこで,本一連の研究では,先ずはアンケート

を用いて顕在意識を捉える。次に,気分状態を計

測する心理質問紙 (POMS: Profile of Mood

States)を用いて気分変化を捉え,さらに,近赤

外光による無侵獲脳内酸素モニターを用いて脳の

動きを読み取り,これらの結果を並べ分析するこ

とによって,教育的効果について解明することと

した。

そのうち本論文では,効果主体を体験活動者本

人,効果時期を短期に限定,効果要因については,

田植え,稲刈り等の農作業体験ツアーの各段階と

して,体験前後のアンケートの結果を指標とする

ことによって,体験学習プログラムによる意識変

化と変化に伴い表出した教育的効果を解明した結

果について論じる。

ここで示す教育的効果とは,体験プログラムに

よる意識変化があることと,体験前に持っていた

意識と体験後の意識変化の結果を併せた食 ・農

業 ・農村などに対する認識の変化を指す。便宜上,

前者を体験プログラムの効果,後者を教育的な効

果と呼ぶこととするが,筆者はこの両方を教育的

効果として扱う。

一32-

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4.調査の方法

(1)調査内容と手順

本調査では,北海道由仁町M農園において,札

幌市在住で,札幌市内出身の大人20人,子供14人

の親子を対象とし,春に田植え体験 1日ツアー,

秋に稲刈り 1日ツアーに参加してもらう 。田植え

と稲刈りの参加者は同一にして実施する。体験前,

体験中,体験後に様々な意識アンケートを行うこ

とによって,個人での意識が変化していく過程,

親と子供の意識変化の違い,教育的効果について

明らかにする。また回目と 2回目の体験の意

識変化の違いについても捉える。

農作業体験ツアー全体のフローは図 lに示すと

おりである。意識変化を見るために,かなり統制

を取ったスケジュールを組んだが,それぞれの体

験内容における各人の行動については自由度を持

たせた。パスツアーとなるが,目的地への到達時

聞は90分程度とし,都市部から50km圏内にある。

移動に伴う疲労を極力抑えながらも,都市部と

はまったく異なった景観に触れ,農村に訪問した

新鮮さが伝わるようにした。

8:30 学校へ集合

8: 30-9:10 p(郎(前) + 意識アンケート(期待}

9: 10-9:20 乗車(点呼) <トイ レ〉

9:20 出発

9:20-10:50 移動中 (挨拶+日程説明+長沼町道の駅で休息)

10:切 到着

10:50-11:00 意識アンケート(印象)<大人のみ〉

ll:∞-11:20 MA圃お話 + 田植え準備

11:20-12:20 田植え体験

11:20-12:20 脳内厳禁計測 (6名予定)

12:20 回値え体験終了

12:20-13:20 昼食(カレー) + 農業者の方々との交流

13:20-13:55 円副IS(後) + 意識アンケート(満足)

13:55-14:05 乗車(点呼) <トイ レ〉

14:05 出発

14:05-15:35 移動中

15: 35-15:45 お礼挨w15:45 解散

図1 農作業体験ツアー全体のフロー

農作業体験学習の前後における子供の意識変化について

(2) 意識変化の指標

裁の農作業体験前後による意識変化を捉えるた

めの質問項目は「被験者属性JI農業体験の経験」

「農業・農村体験に対する意識JI子供への教育効

果JI体験した内容JI印象に残ったことJI感想Jである。

「農業・農村体験に対する意識」については,

現地へ行く前の農業・農村に対する意識を 『体験

前期待度1.現地に到着し,田んぼや広大な景色

を見たときの農業・農村に対する意識を 『体験中

印象度J,農業体験を終えた後の意識を 『体験後

満足度jとし,評点を 1から 5までとして,体験

に対する意識の変化を見た。期待度の選択肢は

「かなり期待しているJI少し期待しているJIあまり期待していないJI全く期待していないJの

4択であり,印象度と満足度の選択肢は「期待よ

りかなり上JI期待より少し上JI期待と同じ」

「期待より少し下JI期待よりかなり下Jの5択と

した。印象度と満足度は,期待度からの変化の度

合いを 5段階評価に換算した相対的な値の比較と

した。また, I子供への教育効果Jについては,

f体験前期待度J,r体験後満足度jの2通りに分

け, I農業・農村体験に対する意識」と同様の選

択肢で評価する。

子供の農作業体験前後による意識変化を捉える

ための質問項目は「被験者属性JI農業・農村へ

のイメージJI農業・農村体験に対する意識JI体

験した内容JI印象に残ったことJI感想」である。

親に対して行った質問「農業体験の経験」の代わ

りに農業・農村に対する率直なイメ}ジを聞い

た。「農業・農村体験に対する意識Jと「農業・

農村へのイメージ」については, r体験前期待度j

と 『体験後満足度jの2つに分けて評価すること

とした。親への質問とほぼ対応するように設定し

たが,小学校 5,6年生を対象としていることか

ら,表現は子供にわかりやすい内容に変えた。な

おここで,意識変化とは思考,感覚,感情,意志

を含む広い心的変化を指すこととする。また,ア

ンケートは,疲労を極力伴わないよう,行きのパ

ス搭乗前と昼食時と帰りのパス搭乗前の休息時間

帯に15分程度で実施するとともに,意識せずに回

答してもらうため,質問は基本的には文章回答で

-33-

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農村生活研究第51巻第 3号 2∞8.3

写真 1 アンケー 卜調査

写真2 田植え体験

はなく選択肢方式とし,一部文章回答とした。

(写真 1. 2)

結果に触れる前に,対象属性について簡単に説

明する。性別,年齢,出身地,農業・農作業体験

の有無等について詳細に聞き取っているが,これ

らについての結果表を詳細に示すことは誌面の都

合上不可能であるので,概括的に内容を述べる。

親の男女比は 1 2¥年齢は40歳前後に集中,農

村・農作業の経験はほぼ全員な し,都市闇生まれ

の都市園生活者である。子供は男女比 2 1 .小

学校4年生,農村 ・農作業の経験はほぼ全員なし

である。

5.田植え体験前後の意識変化

(1) 親の意識変化

図2は,親の田植え体験時の体験に対する意識

変化を見たものである。これは,体験前期待度,

体験中印象度,体験後満足度を 5段階評点に換算

して比較しているが,全体的に満足度は上昇して

いることがわかる。項目別に注目すると. I田植

え作業の楽しさJI汗をかくこと」が体験前期待

度,体験中印象度より大きく上昇し,体験プログ

ラムの効果が表れている。

聞き取り調査より,農業体験を肌で直接感じた

事が大きな満足度として示されたと判断できる。

(2) 子供の意識変化

図3は子供の田植え体験時の体験に対する意識

変化を見たものである。子供の場合は,体験前期

待度,体験後満足度の 2回を評価してもらってい

るが,全体的に満足度は上昇傾向にあった。特に

「農村の自然に触れる事JI回植え作業の楽しさ」

「良い経験が出来る事」が大きな変化を示してい

た。しかし. I汗をかくことJI友達と話が出来る

事JI親と話が出来る事」に期待と満足との差異

はあまりみられなかった。

6.稲刈り体験前後の意識変化

(1) 親の意識変化

図4は親の稲刈り体験時の体験に対する意識変

化を捉えている。田植え体験時と同様に,全体的

に満足度は上昇していた。体験中印象度より体験

後満足度に大きな差がみられた項目は. I農村の

生き物に触れる事JIお米の出来方を学ぶ事JI農

業について学ぶ事JI農村について学ぶ事JI参加

者と話す事JI親子の信頼関係」である。次に項

目別に注目すると「汗をかくことJI子供との話」

は体験後満足度が体験中印象度より下がってい

た。

また. I稲刈り作業の楽しさJI農家と話が出来

る事」は体験中印象度と体験後満足度に差異は見

られなかった。

回植え体験時に比べ稲刈り体験時は「お米ので

き方を学ぶ事JI農業について学ぶ事JI農村につ

いて学ぶ事」の満足度が期待より大きく上がって

おり,体験プログラムの効果がより強く出ている。

2回目であることと収穫による達成感が変化の要

因として考えられる。

-34-

Page 7: 農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ …農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 農村生活研究 = Journal

農作業体験学習の前後における子供の意識変化について

5.0

4.5

一・一前期待虚

血ー 中印象慶

一・一後満足度

4.0 出叫酔岨

3.5

3.0

2.5

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ザ〆パpづ℃p渋ぺ〈φて予:5;f〈正ダ弓155噌〆心ぷづ心cひ*川今や会f,4戸Jグ予f6ザF4ザ~I!l中 や沙* 争+

田植え体蛾項目

図 2 田植え体験前・中・後意識変化(親)

5.5

5.0

4.5

n

u

R

d

aa守内

d

M可紘

3.0

2.5

2.0

/封切/ン万引必出/~- -~~. .~ .-.~ .;:

・ぷ回植え体駁項目

図3 田植え体験前・後意識変化(子供)

5.0

4.5

-・一 前期待度

由・ 中印象度

--ト後済足度

4.0

国官民3.5

3.0

2.5

/Y〆AJ〉ペザネウツてペJVユペ〆〆〆。Jf¥dF pやザグぶク F J 6 64FPF ♂争 争

稲刈り体験項目

図 4 稲刈り体験前・中・後意識変化(親)

-35-

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農村生活研究第51巻第 3号 2008.3

5.0

『・一前期待度

→・ー後粛足度4.5

4.0

思民

3.5

3.0

2.5

。・~....(j)~・F 併記骨ザ也、ρ 計百骨折 .;.. -~ -~ -~ -~

Jむてバペ'l!t"~'"*"",令官グシジシ会や♂,骨折。昨 け V 事。今

稲刈り体験項B

図5 稲刈り体験前・後意識変化(子供)

80.0 -規 口子供

70.0

60.0

50.0

き 40.0P時

30.0

20.0

10.0

。。ー. ."令命町4、,b 4

ev 8 印e9象に鳴wっ9た項JA目r3〆4r45/吋 FJY '

伏.1>やF

図6 田植え体験において印象に残った項目

(2)子供の意識変化 る。

図5は子供の稲刈り体験を実施した時の体験に

対する意識変化を見たものである。全体的に稲刈

り体験後も満足度は上がっていた。項目別に見る

と, ['稲刈り作業の楽しさ」に大きな差異がみら

れた。しかし, ['ストレス解消」に差異はみられ

なかった。田植え体験と比較すると, ['農業につ

いて学ぶ事J['農村について学ぶ事」に若干の差

がみられ,稲刈り体験時の方が体験プログラムの

効果が高いが,それ以外に大きな差異はみられな

い。また, ['ストレス解消Jは稲刈り時に比べ,

田植え時の方が満足度の差異が大きかった。 2回

目の作業のため,飽きの状態も発生したと見られ

7.印象に残った体験内容

図6は親と子供の田植え体験後の印象に残った

体験内容についての評価である。親と子供で比較

してみると,子供の方が全体的に印象に残った内

容の割合が高い。親・子供ともに強く印象に残っ

たものは「農作業」であり,親に注目すると,

「農家との交流J['参加者同士の交流Jが20%程度

であり,他は10%程度と低い値を示した。しかし,

nhv

qJ

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農作業体験学習の前後における子供の意識変化について

80.0

70.0

60.0

50.0

-s. 40.0

時 30.0

20.0

10.0

。。ール4ト

-続 口子供

グ (i>.... >t iiý't~ 〆♂ pd 〆〆 r~.,.U' •• 'ち合φ令状号

唱ト .'や

図 7 稲刈り体験において印象に残った項目

印象に残った項目

5.0

-観 口子供

4.0

3.0

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肱 2.0

1.0

0.0

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〆〆〆〆 f.' ,t:.' .. 〆、,

. ' • • ~r 田植え体厳後の鹿黛に対する考え方

図 8 体験後の農業に対する意議(親子供比較)

子供に注目すると, r空気J50%, r生き物J30%

となっており,親はコミュニケーション,子供は

環境そのものに印象が強く残っている。聞き取り

の結果からも,都市域に住む子供たちが初めて農

業体験を行い,北海道の広大な農業地帯を実感し

たことが推察される。また,子供たちはドジョウ

やカエル捕りをして遊んでいたことから,生き物

に対する興味も印象として強く残る体験となっ

た。

図7は親と子供の稲刈り体験後の印象に残った

体験内容についての評価である。親,子供ともに

「農作業」の割合が高いことは田植えと変わらな

いが,田植え時と比べ,親子ともに「参加者同士

の交流jが増加している。また,親は「農家との

交流Jが田植え時より増加し,子供は「生き物と

の接触」が増加している。体験への慣れによって,

それぞれが関心となる対象をより深く追求した。

8.農業に対する意識

図8は,親と子供の全体験を終えてからの農業

に対する感想である。「農業に対する考えが変

わったか」と「お米に対する考えが変わったかJについては,体験前に比べて,関心の度合いは上

がった。これは,農業者の苦労やお米の貴重さを

改めて感じた結果に要因があると思われる。しか

し, r農業に従事したいかJr農村に対する考えは

dqJ

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農村生活研究第51巻第 3号 2∞8.3

100.0

90.0

80.0

70.0

60.0

ま 50.0

~ 40.0

持 30.0

-親体厳したロ干供体厳した

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~.,r *"~φdvpJJ ,dク J ・~γ 6i"

争4炉

図 9 田植え体験後の体験内容の比較(親子)

体殿内容

変わったか」は,平均的な値を示し,農業やお米

に対するほどの関心は得られていない。農作業を

やるのと農業という職業に就くのはまったく異

なった意識で評価している。

子供の農作業体験を終えでの農業に対する感想

を見ると, ['農村に対する考えは変わったかJ['お

米に対する考えは変わったかJは高い値を示して

いたのに対して, ['農村に住んでみたくなったかJは低かった。回植え体験は子供たちにとって初め

ての体験であったが,子供ながらに,親と同様,

農業・農村を自分の生活にすることには違和感が

あったと考えられる。この結果は,親の稲刈り体

験でも同様の傾向を示した。

但し,農業や食の重要さについての認識が向上

したことは,高い教育的効果となった。

9.親と子供の体験内容の差

(1) 田植え体験

図 9は親と子供の体験項目の違いをみたもので

ある。親・子供ともに「凹んぼに入ったJ['水や

泥を触ったJ['苗を植えた」はほぼ全員が体験し

ていた。 しかし, ['生き物を捕った」を体験した

割合は少なかった。また,親は「お互いに (子供)

話したJが80%以上を占めるのに対し,子供は

「お互いに(親)話 したJが50%程度であるのに

対して, ['田んぼや景色を見たjは親が60%に対

して子供は80%程度となっており,親と子供の田

植え体験を通じての行動に対する認識の違いが表

れた。

(2) 稲刈り体験

図10は親と子供の稲刈り体験項目の違いをみた

ものである。親・子供ともに, ['田んぼに入ったj

「水や泥を触ったJ['稲を刈った」を体験した人の

割合が高かった。親だけを見ると, ['参加者と話

した」の割合が100%となっており,農業体験を

通じて参加者同士の交流があったとみられる。ま

た,子供に注目すると,田植え体験時と比較して

稲刈り体験時は「参加者と話したJ['農家の人と

話したJの項目の割合が高くなっている。これは,

体験活動の回数を重ねることで,体験行為そのも

のより,コミュニケーションに費やす時間が増加

したと読み取れる。このようにコミュニケーショ

ンが増えるということも,重要な教育的効果と

なっていると考えられる。

10. 参加形態

図11は,回植え体験前後で,農業・農村体験は

親子と子供だけとどちらの参加が良いかについて

親に質問をした結果である。体験前は「どちらか

というと親子」の割合が75%で「親子」の割合が

15%を占めていたのに対し,体験後は「親子」の

-38-

Page 11: 農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ …農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 農村生活研究 = Journal

1∞0

90.0

80.0

70.0

60.0

つ 50.0

-:... 40.0

梼 30.0

20.0

10.0

。。

農作業体験学習の前後における子供の意識変化について

-規体置費したロ子供体践した

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体隊内容

図10 稲刈り体験の体験内容比較(親子)

分からな 子供だけ どちらか

どちらかというと親子75%

日目 ー というと子供だけ

5首

(田植え体験前〈親))

分からな子供だけ口百

(田植え体験後〈親))

371‘

図11 田植え体験前後の参加形態についての見方り体験の体験内容比較(親子)

割合が41%,rどちらかというと親子」が37%と

なっており,体験後は「親子」の割合が高くなっ

ている。これは,田植え体験を通じ,親子での触

れ合いの楽しさや大切さが再認識されたと思われ

る。

図12は稲刈り体験後に, r農業体験は親子・子

供どちらの参加が良いか」について,親と子供に

質問した結果である。親は, r親子J54%, rどちらかというと毅子J46%となっており,田植え体

験時よりもさらに,親子参加の重要性の認識があ

がっていることがわかる。しかしその反面,子供

の結果に注目すると, r子供だけJ33%, rどちら

かというと子供だけJ25%となっており,半数以

上が子供だけでの参加が良いと回答している。親

子の意識の違いが腕面に表れている。

11. 親から見た体験の教育的効果について

図13は,田植え体験前後においての,農業・農

村の持つ教育的効果について親に質問した結果で

ある。全体的に体験後の評価は上昇していたが,

項目ごとの体験前後の大きな差は見られなかっ

た。唯一,r一般学力の向上Jに関しては,元々,

効果があると感じていないし,体験前後の差も小

さかった。一般学力の向上についての評価は低い。

-39-

Page 12: 農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ …農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 農村生活研究 = Journal

農村生活研究第51巻第 3号 2008.3

いうと親子46%

(稲刈り体験後〈親))

25弛

(稲刈り体験後(子供))

図12 稲刈り体験後の親子の参加形態についての見方

6.0

5.5

5.0

A暖 4.5

~ 4.0

3.5

3.0

2.5

一口一回植え体圏直前 一・一田植え体厳後

一世一福山lり体蹟前 --6-稲刈り体蛾後

教育効果の項目

図13 体験前後の教育効果の見方についての変化

稲刈り体験での結果を見ると,稲刈り体験は 2度

目の体験ということで,田植え体験よりも体験プ

ログラムの効果は低いが,自然・生き物の観察

力・科学的知識,自然や生き物への関心は田植え

体験と同様またはそれ以上の前後間での体験プロ

グラムの効果が表れており,繰り返しの効果があ

る教育的機能もあると考えられる。

12.考察

農作業体験ツアーの前・中・後の意識変化や農

業・農村に対する認識評価をアンケートによって

読み取ったところ,体験プログラムを進めること

によって, r農作業の楽しさJrお米の出来方を学

ぶ事H農業について学ぶ事H参加者と話すこと」

「親子の信頼関係」等について,子供たちの意識

変化が起こ っていることが定量的に明らかとな

り,体験プログラムの効果測定が可能となった。

また,印象に残る体験については,大人は「農

家とのふれあい」等のコミュニケーション機能で

あるのに対して,子供は「空気jや「生き物」等

の環境そのものであり,農村現場で体験を実施す

ることの意義も伺えた。

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Page 13: 農作業体験学習の前後における子供の意識変化につ …農作業体験学習の前後における子供の意識変化について 誌名 農村生活研究 = Journal

今後は,本手法を様々な体験プログラムに適用

し,意識をより大きく変化させ,変化の継続性が

確保でき,それが効果的に教育的効果に繋がるよ

うな体験プログラム設計の手法を他の評価指標と

も統合化しながら開発していくとともに,他の指

標との関連性についても解明する。

13. おわりに

本研究では,田植えと稲刈りの農作業体験ツ

アーを不特定の集団に実施し,農作業体験の前・

、 中・後の半日のうちに 3回のアンケ}トを行うこ

とで,体験内容や農業に対する意識変化について

分析を行った結果である。文章回答や聞き取りに

拠らず,短い回答時間でのイメージの選択肢回答

による方法を使うことによって,自身の意識につ

いて,意識させずにその変化を捉えることができ

た。

これまで,農作業体験の意識調査は多くなされ

ているが,体験後アンケートが多く,今回のよう

な体験中の変化を捉えるものは少ない。

教育的機能を評価するに当たって,体験行為そ

のものに対して意識がどのように変化するのかを

捉えることは,よりよい体験プログラムを設計す

る上で重要な課題である。

指標に頼らず,教育者が子供の意識状態の変化

を正確に把握できるのならば,このような指標を

捉えることなく,いつも学習行為と子供の心理を

追いながら,状況を変化させていけば良い。 しか

し,農業体験プログラムはあまりにも多くの教育

農作業体験学習の前後における子供の意識変化について

要素を含むが故に,それが子供たちに与える影響

は明確とならないことから,このような指標も駆

使しながら,定量的な状況分析の上に立った適正

な学習を実施していくことも今後重要な課題とな

るのではないだろうか。

なお,本研究を進めるにあたって,農村工学研

究所の山田伊澄,北海道立中央農業試験場の金子

剛氏,由仁町M農園のスタッフの皆様に,多大な

ご協力,ご指導を頂きました。ここに深く感謝い

たします。

参考文献

1)加藤一郎監修 f教育と農村 どう進めるか体験学習』

農村開発企画委員会編,地球社. 1986年。

2)玉井康之「体験学習内容の類型および教育効果と山

村留学 自然・社会・生活体験学習を環境教育の

基礎形成一一J1998年。

3)安藤義道「学童農園の現状と課題一一茨城県水海道

市“あすなろの里"一一」農村生活研究,第36巻第

3号. 1992年. 27-32頁。

4 )山田伊澄 「農業体験のもつ教育的効果に対する地域

住民の評価一一長野県上田市を対象としたアンケー

ト結果をもとに 」農業経営通信.203. 2000年,

14-17頁。

5 )山田伊澄「農業小学校の取り組み実態と卒業文集か

らみた教育的効果の分析」農林業問題研究. 158.

2∞5年. 185-188頁,。

6)山本徳司「農業体験学習の取り組み方による教育的

効果の発現特性と農業体験プログラム設計ツール」

平成18年度農村工学研究所研究成果情報.2∞6年。

7 )山田伊澄「農業体験学習の実施場所と教育的効果の

関連性一一大都市の小学生へのアンケート結果をも

とに一一」日本農業教育学会誌,第37巻別号.2006

年.55-58頁。

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