障害者差別解消法と...
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障害者差別解消法と
知的障害者の合理的配慮
明石市福祉部福祉総務課
障害者施策担当課長 金 政 玉
きむ じょんおく
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障害者差別解消法の成立の経過とその後の動き 2006年12月 第61回国連総会において障害者の権利に関する条約を採択
2007年 9月 我が国による障害者の権利に関する条約の署名
2011年 6月 障害者虐待防止法の制定
同 年 8月 障害者基本法改正 ※「差別の禁止」を基本原則として規定
2012年 6月 障害者総合支援法の制定、障害者優先調達推進法の制定
2013年 6月 障害者差別解消法成立
※改正障害者基本法の「差別の禁止」の基本原則を具体化
障害者雇用促進法改正
※雇用の分野における差別を禁止
公職選挙法改正(後見人条項の削除)
2014年 1月 障害者の権利に関する条約の締結
2015年 2月 障害を理由とする差別の解消に関する基本方針を閣議決定
同 年 3月 雇用分野における差別禁止と合理的配慮に関する指針の策定
同年9~11月 内閣府・各省庁における対応要領、対応指針の策定
2016年4月 障害者差別解消法と改正障害者雇用促進法の施行
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障害を理由とする差別の禁止のポイント 障害者差別解消法(第7条・第8条)
不当な差別的取扱い 合理的配慮の提供
行政機関等
(国及び地方公共団体等)
合理的配慮を行わなければならない。
事業者 (※1)
合理的配慮を行うよう努めなければならない。(※2)
禁止 法的義務
禁止 努力義務
(※1)事業者には、個人事業者、NPO等の非営利事業者も含む。
(※2)雇用における合理的配慮は、すべての事業主に対して法的義務となる。 2
【正式名】障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
※人権や福祉分野で「差別の解消」が法律名に入ったのは初めて。
⇒改正障害者基本法(2011年)の差別の禁止条項(第4条)を具体化
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障害者差別解消法の差別禁止について
1 行政機関等(事業者)は、その事業又は事務を行うに当たり、障害を
理由として障害者でない者と不当な取扱いをすることにより、障害者
の権利利益を侵害してはならない。(第7条及び第8条)
2 行政機関等(事業者)は、その事業又は事務を行うに当たり、障害者
から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった
場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権
利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び
障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理
的な配慮をしなければならない(するように努めなければならない)。
(同条)
社会的障壁とは? ●障害者が、日常生活又は社会生活を営む上で、
障壁となるような社会の事物、制度、慣行、
観念その他の一切のもの。
①事物⇒街の中の移動を妨げる階段、利用 しにくい施設、交通機関など ②制度⇒利用しにくい、利用できない制度 ③慣行⇒障害者の存在を考えていない、表 向きは中立的な規則、基準、慣習 など ④観念⇒障害者への偏見、差別意識など
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■障害を理由として、以下のような取扱いを行うこと。
○障害があることだけを理由にして入店や入居、就職などの 際に区別、制限、排除すること。 ○ 窓口対応を拒否、又は対応の順序を後回しにすること。 ○ 資料の送付、パンフレットの提供、説明会やシンポジウ ム等への出席等を拒むこと。 ○ 事業を実施するときに、特に必要ではないにもかかわら ず、障害を理由に、来訪の際に付き添い者の同行を求める 等の条件を付けること。 ○ 客観的に見て人的体制、設備体制が整って対応可能であ るにも関わらず、対応に当たって介助者や家族の同伴、時 間の指定など正当な理由のない条件を付すこと。
不当な差別的取扱いについて
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内閣府の対応指針から
正当な理由があるため不当な差別的取扱いに当たらない場合の考え方
○正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由とし
て、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが
客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的
に照らしてやむを得ないと言える場合である。
⇒(例?)音楽会、コンサート、映画館など
○正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに
正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことがあ
ってはならない。
⇒(例?)単身入居の場合、コンビニでの買物
○正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説
明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。
○個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:
安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損
害発生の防止等)の観点を踏まえて、具体的場面や状況に応じ
て総合的・客観的に判断することが必要である。 6
合理的配慮の基本的な考えかたは?
●合理的配慮は、障害のある人の性別、年齢、障害の状 態などの特性に応じて、社会的障壁を取り除くことが 求められる具体的場面は状況に応じてさまざまであり 多様で個別性の高いもの。 ※いわゆる「環境整備」とはちがう・・・ ●障害のない人と比べて、同等の社会参加の機会が実現 されること。 ⇒スタートラインは、いっしょに!? ⇒かけ声だけではなく、生活場面で実質的な平等が得 られる具体的な配慮が必要。 ※ただし、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な 変更には及ばないことを理解する必要がある。 具体的には?
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合理的配慮の提供にかかわる 重すぎる負担?
1. すぐにできる配慮
→絵図や写真などによる会話、わかりやすい
説明
2.障害の特性を理解し、柔軟な対応による配慮
→職場での出勤時間の変更や会議のサポート
3.技術やスキルを身につけることでできる配慮
→わかりやすい情報の提供、
パンフレットの作成
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■過重な負担がある場合は、合理的配慮を しなくてもいい? 例えば・・・・ ○過重な負担については、個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応 じて客観的に判断することが必要。 ○行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、 障害のある人にその理由を説明し理解を得るよう努めることが必要。 ▼事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)、▼実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的支援の制約)、▼費用・負担の程度、▼事務・事業規模、▼財政・財務状況
○合理的配慮の提供について話し合うときの三つのポイント ①代わりの配慮の案(代替案) ②時間をかけての配慮の実施 ③お互いの事情を理解し、折合(合意)ができるための建設的な対話 *相手方が配慮できないときの客観的な説明が大切
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(1)複数の機関等によって紛争の防止や解決を図る事案 の共有 (2)関係機関等が対応した相談事例の共有 (3)障害者差別に関する相談体制の整備 (4)障害者差別の解消に資する取組の共有・分析 (5)構成機関等における斡旋・調整等の様々な取組によ る紛争解決の後押し (6)障害者差別の解消に資する取組の周知・発信や障害 特性の理解のための研修・啓発
障害者差別解消支援地域協議会の役割
地域協議会は何をするのですか? (地域協議会の手引き・概要から)
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地域協議会の構成機関例(都道府県)
国機関 法務局(人権擁護委員)、労働局 等
地方機関 都道府県障害福祉課・福祉事務所、保健所、精神
保健福祉センター、都道府県消費生活センター、
教育委員会、都道府県警 等
当事者 障害当事者団体、家族会 等
教育 校長会、PTA連合会、
福祉 都道府県社会福祉協議会、福祉専門職団体、社会
福祉施設等団体、障害者修行・生活支援センター
医療保健 医師会、歯科医師会、看護協会、医療機関 等
事業者 商工会議所、経営者協会、公共交通機関、特例子
会社 等
法曹等 弁護士、司法書士会 等
その他 学識経験者、新聞社、放送局、自治会連合会 等 11
地域協議会の構成機関例(市町村)
国機関 地方法務局○○支局、公共職業安定所 等
地方機関 障害福祉課、保健センター、市町村消費生活センター、教
育委員会、警察署 等
当事者 障害当事者団体、家族会 等
教育 校長会、PTA連合会 等
福祉 市町村社会福祉協議会、(相談)支援事業者、民生委員・
児童委員 等
医療保健 医師、歯科医師、保健師、看護師 等
事業者 商工会議所、公共交通機関、特例子会社 等
法曹等 弁護士、人権擁護委員、行政書士 等
その他 学識経験者、自治会連合会 等
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当事者、家族、関係者、事業者、市民との建設的対話と支え合いが、共生社会に向けた地域づくりの大きなステップになる
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①合理的配慮の提供支援の仕組みづくり ②相談体制の整備(差別事案の調整と解決)
③障害理解のための啓発 ④障害者差別解消支援地域協議会
障害者差別解消の四つの柱
明石市障害者差別解消条例の制定に向けて
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【分野別内訳】
1 公共交通機関、公共的施設・サービス等 32件(18件)
2 情報・コミュニケーション 19件( 8件)
3 福祉サービス 9件( 6件)
4 商品・サービス 20件( 7件)
5 住宅 4件(2件)
6 医療 4件(3件)
7 教育 5件(4件)
8 雇用 11件(7件)
9 その他 46件(39件)
10 配慮を受けて助かったことなど 52件(52件)
差別事例収集概況/収集(団体及び一般公募) 件数 202件(146件) ※カッコ内は2015年4月の差別事例募集で寄せられた件数
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(仮称)明石市差別解消条例検討会 構成メンバー
学識経験者・弁護士 3名
社会福祉・保健医療関係者 4名
障害者の支援者 2名
障害者又は障害者の家族 5名
民間事業者 3名
教育関係者 1名
関係行政機関の職員 3名
公募市民 5名
・・・合計26名
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2015年5月 ●第1回検討会の開催 ・障害者差別解消法施行に向けた動きの説明 ・障害を理由とした差別と思われる事例の検討 6月~7月 *事業者アンケートの実施(アンケート送付件数 579件) ・回答件数 157件(平成27年8月)
*6月「障害のある人もない人も共に暮らすまちづくり」フォーラム *7月 タウンミーティングの実施(市内2か所) 8月 ●第2回検討会の開催(※第1回モデル会議) ・タウンミーティングと事業者向け書面ヒアリング結果の報告 ・地域協議会の在り方について(内閣府アドバイザー参加) 10月 ●第3回検討会の開催(第2回モデル会議) ・条例素案の検討 11月 ●第4回検討会の開催(第3回モデル会議) ・条例素案のまとめ 12月 *地域共生フォーラム開催(内閣府との共催) テーマ:「障害者差別解消の実現に向けて」 12月~翌年1月 *パブリックコメントの実施(市民17人から46件の意見) 2016年 3月 *市議会に条例提案 ⇒ 成立
取り組みの経過
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※モデル会議は、内閣府の「障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業」の指定を受けて実施
明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例
第1章 総則(第1条~第7条)
1. 障害を理由とする差別を解消するにあたっては、障害のある人とない人との権利の平等が最大限尊重されなければならない。
2. 共生社会の実現は、障害のない人も含めたすべての人の問題として認識し、相互理解と人格の尊重を基本として行われなければならない。
3. 障害を理由とする差別の解消は、差別する側とされる側がお互いを一方的に非難するのではなく、ともに協力し合う事によって実現しなければならない。
4. 合理的配慮の提供は、障害のある人もない人も等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられることを基本として行われなければならない。
基本理念
基本理念に対する理解を深め、合理的配慮の提供支援をはじめとする障害を理由とする差別の解消に関する取組の普及及び啓発を市と協力して取り組むよう努める。
1. 合理的配慮の提供のあり方について積極的に調査及び研究し、率先して合理的配慮の提供を行う。
2. 市民、事業者、及び行政機関等が合理的配慮の提供を行うための支援(合理的配慮の提供支援)を行う。
3. 市民及び事業者の協力を得て、障害に関する理解に関する取組を行う。
4. 障害を理由とする差別の解消に関する相談を受け、紛争解決に向けて必要な支援を行う。
市の責務~積極的な合理的配慮の提供支援~ 市民・事業者の役割
合理的配慮の提供に向けた 協力体制
第2章 合理的配慮の提供支援及び障害理解の啓発(第8条・第9条)
市は、市民、事業者及び行政機関等が合理的配慮の提供を容易に行うことができるよう、合理的配慮の提供支援に関する施策を実施。 合理的配慮の提供に伴う 経済的な負担の一部を公的に助成 • 点字メニューなどコミュニケーションツールの作成にかかる費用 • 折りたたみ式スロープや筆談ボードなど物品の購入にかかる費用 • 手すりやスロープの工事施工にかかる費用 *要綱で実施
合理的配慮の提供支援
たとえば・・・
障害と障害者に対する市民の理解を深めるため、障害理解に対する研修などの必要な取組を行う。
・ 高齢者大学での研修 ・ 小学校手話教室(手話言語コミュニケーション条例) ・ 市民フォーラムの開催
障害のある者とない者との相互理解を深めるため、交流の機会を提供するなどの必要な取り組みを行う。
・タウンミーティングを開催し当事者の声を聴く
障害理解の啓発 18
不当な差別的取扱い
正当な理由なしに、障害又は障害に関連する事由を理由として、障害者を排除し、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件をつけ、その他障害者に対する不利益的な取り扱いをすること。
合理的配慮の提供 ① その障害のある人が困っていそうだな、と思われるとき ② 障害のない人と同じ権利を行使できるようにするため ③ ご本人の意思を尊重しながら
④ 性別、年齢、障害の状況に応じて、必要かつ適切な措置を講じる。
*その実施が、措置を行う者にとって、社会通念上相当な範 囲を超えた過重な負担とならない程度で。
何人も、障害を理由とする差別をしてはならない(第10条)。
差別=「不当な差別的取扱」+「合理的配慮の提供をしないこと」
差別を解消するために・・・
第3章 障害を理由とする差別の解消(第10条~第15条)
相談助言
•障害者、家族等関係者、事業者は、市等へ障害を理由とする差別に関する相談ができる。
•内容に応じて相談員が解決に向けた助言、調整を行う。
あっせん申立
•相談・助言で解決しない場合は、障害者、その関係者からの申立によってあっせん手続に移行する。
•あっせん手続は、第三者委員会(地域協議会あっせん部会)が行う。
勧告公表
•一部の悪質事案者については、明石市行政手続条例の手続等による手続保障を行ったうえで、勧告し、公表することがある。
第2節 障害を理由とする差別の解消に関する施策
※勧告公表まで完了しても、障害を理由とする差別が解消されて
いない場合は、市長は引き続き差別解消に向けた対応をする
ことができる。
第3節 明石市障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会
差別をなくす地域づくり
明石市
障害者
学識
経験者
事業者
法律
関係者
関係行政機関
障害を理由とする差別に関する地域課題について、明石市を中心とした地域ぐるみで解決できる協議会を立ち上げる。
【所管事項】 • 障害を理由とする差別を解消するために必要な施策について市長に意見を述べること。
• この条例の施行状況の検討と見直し。
• あっせんの審理。
• その他差別解消に必要なこと。
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「手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等障害者の コミュニケーション手段の利用を促進する条例」の概要
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第2章 手話言語の確立 ・ 手話を学ぶ機会の提供 ・ 手話を用いた情報発信等 ・ 手話通訳者の確保及び養成
第3章 要約筆記・点字・音訳の促進 ・ 要約筆記等を利用するための環境整備 ・ 要約筆記者の確保及び養成 第4章 多様な障害者のコミュニケーション手段の利用促進 ・盲ろう者用コミュニケーション支援従事者の確保養成 ・知的、発達障害者用コミュニケーション手段の支援
・代用音声、重度障害者用意思伝達装置への支援
目的① 手話は言語である 目的② 多様なコミュニケーション手段の促進
【基本理念(第2条)】 ① 障害のある人とない人とが相互の違いを理解し、その個性と人格とを互いに尊重する。 ② 利用者の障害特性に応じてコミュニケーションを円滑に図る権利を最大限保障する。 ③ 手話が独自の言語体系と歴史的背景を有する文化的所産であると理解しつつ、手話を普及する。
【市の責務(第4条)】 ・事業者等が合理的配慮できるよう支援 ・市民に対する普及・啓発 ・環境整備 ・調査・研究への協力
【市民の役割(第5条)】 基本理念に対する理解を深め、手話等コミュニケーション手段の普及、利用促進に係る市の施策に協力する。
【事業者の役割(第6条)】 基本理念に対する理解を深め、市の施策に協力するとともに、合理的配慮の提供に努める。
【明石市手話言語等コミュニケーション施策推進協議会】 障害者/コミュニケーション支援従事者/公募市民等からなる協議会を新設。(第17条) 市長は、手話等コミュニケーション手段に関する施策を策定する際には、協議会の意見を聞き、尊重する(第7条2項)
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手話言語・ 障害者コミュニケーション条例
手話言語の確立 【第2章】
多様なコミュニケーションの促進 【第3章・第4章】
障害者差別解消条例
2016年3月 成立をめざす
手話言語・障害者コミュニケーション条例と 障害者差別の解消に関する条例の関係
コミュニケーション支援も含んだ条例は明石市が全国で初めて
3年間で必要な見直し
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