子どもの行動を変容させる会話術 ~コーチング~cjid/tayori/no.256.pdf ·...

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平成18年12月18日発行 No.256 秋田県総合教育センター 児童生徒支援班 TEL018(873)7205 ~コーチング~ 子どもの行動を変容させる会話術 「○○しなさい 「○○してはダメ!」と頭ごなしに言うのではなく 「どうしたいのかな? 「そのために はどうするのがいいと思う?」と子ども自身に考えさせ,決めさせることを継続的に行っていくと,子どもは 何事にも前向きに考えるようになると言われています。 ここで紹介するのは,コーチングのコミュニケーション・スキルの一部です。コーチングとは相手の目標達 成をサポートする双方向の会話術です。コーチングでは「答えは相手の中にある」というスタンスで,常に相 手を「認め ,相手の話を「聞く」ということが基本となります。 相手の「どうなりたいのか 「何をしたいのか」という目的や目標と 「どう実現するか 「どんな行動をと るか」という行動計画をはっきりさせるためのサポートをすることに焦点をあてます。 <相手を『認め ,話を『聞く』> コーチングのコミュニケーション・スキル 【1】リフレイン『相手の言葉を繰り返す』 ・ みんなで遊んで楽しいよ」→「楽しいんだね」 ・ ・・・でつらいんだ」→「つらいんだね」 【2】質問する『何が事実か,何が可能かを考えさせる質問をする』 ・ 何をしたいの?」 ・ そのとき何があったの?」 ・ 今,本当はどうしたいの?」 ・ 何があったらできそうですか?」 ・ どんな方法が考えられますか?」 ・ やり終えた(やらなかった)ときの気分はどうだと思う?」 【3】沈黙する『相手が黙ってしまったら,何も言わず次の言葉を待つ』 ・ ゆっくり考えていいよ。待っているからね (相手に時間の保証をする) 【4】承認する『相手の存在,考え,言動を味方の立場で受け入れる』 ・ 今までより頑張れたね」 ・ やり方をかえてみたんだね」 ・ よく気がついたね」 ・ よくあやまれたね」 ・ じょうずだね」 【5】選択肢を与える『二者択一ではなく三つ以上の選択肢を示す』 ・ AやBやCなどがあるけど,何をしたいか自由に選んでみて」 ・ イ,ロ,ハなどいろいろ出ましたが,どれかを選んでやってみない?」 【6】提案する『新しい視点を提供し,本人に選択させる』 ・ いつもと順番を変えて,ちょっと難しそうな課題からやってみようか?」 (参照)親と教師のためのやさしいコーチング 大石良子著 草思社 ・Eメール相談:[email protected] ・児童生徒支援班HP:http://www.akita-c.ed.jp/~cjid/ ・電話相談:0120(37)7804 ,018(873)7206 ・来所申込み018(873)7206 生徒指導だより」の回覧,または増刷しての配布をお願いします。

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Page 1: 子どもの行動を変容させる会話術 ~コーチング~cjid/tayori/NO.256.pdf · どんなことにも有効な万能薬のように思われるかも知れませんが,よく効く薬ほど取り扱いは難しいもので

平成18年12月18日発行

No.256秋田県総合教育センター児童生徒支援班

TEL018(873)7205

~コーチング~子どもの行動を変容させる会話術

「○○しなさい 「○○してはダメ!」と頭ごなしに言うのではなく 「どうしたいのかな? 「そのために」 , 」はどうするのがいいと思う?」と子ども自身に考えさせ,決めさせることを継続的に行っていくと,子どもは何事にも前向きに考えるようになると言われています。

ここで紹介するのは,コーチングのコミュニケーション・スキルの一部です。コーチングとは相手の目標達成をサポートする双方向の会話術です。コーチングでは「答えは相手の中にある」というスタンスで,常に相手を「認め ,相手の話を「聞く」ということが基本となります。」

相手の「どうなりたいのか 「何をしたいのか」という目的や目標と 「どう実現するか 「どんな行動をと」 , 」るか」という行動計画をはっきりさせるためのサポートをすることに焦点をあてます。

<相手を『認め ,話を『聞く』>コーチングのコミュニケーション・スキル 』

【1】リフレイン『相手の言葉を繰り返す』・ みんなで遊んで楽しいよ」→「楽しいんだね」「・ ・・・でつらいんだ」→「つらいんだね」「

【2】質問する『何が事実か,何が可能かを考えさせる質問をする』・ 何をしたいの?」 ・ そのとき何があったの?」 ・ 今,本当はどうしたいの?」「 「 「・ 何があったらできそうですか?」 ・ どんな方法が考えられますか?」「 「・ やり終えた(やらなかった)ときの気分はどうだと思う?」「

【3】沈黙する『相手が黙ってしまったら,何も言わず次の言葉を待つ』・ ゆっくり考えていいよ。待っているからね (相手に時間の保証をする)「 」

【4】承認する『相手の存在,考え,言動を味方の立場で受け入れる』・ 今までより頑張れたね」 ・ やり方をかえてみたんだね」 ・ よく気がついたね」「 「 「・ よくあやまれたね」 ・ じょうずだね」「 「

【5】選択肢を与える『二者択一ではなく三つ以上の選択肢を示す』・ AやBやCなどがあるけど,何をしたいか自由に選んでみて」「・ イ,ロ,ハなどいろいろ出ましたが,どれかを選んでやってみない?」「

【6】提案する『新しい視点を提供し,本人に選択させる』・ いつもと順番を変えて,ちょっと難しそうな課題からやってみようか?」「

(参照)親と教師のためのやさしいコーチング 大石良子著 草思社

・Eメール相談:[email protected] ・児童生徒支援班HP:http://www.akita-c.ed.jp/~cjid/・電話相談:0120(37)7804 ,018(873)7206 ・来所申込み018(873)7206

生徒指導だより」の回覧,または増刷しての配布をお願いします。・「

実際のコーチング会話例

いつもひとりぼっちでいるA子』

『(心配性の母親が、子どもがいじわるさ

れているのではないかと、連日担任に電

話をかけてくる)

先生「ねえ、みんなと外へ行かないの」

A子「だって、入れてって言ったら、いやだ

っていわれたもん」

先生「あら、いやだって言われたの。そうだ

(リフレ

ったの。誰に言われたのかな?」

イン・質問する)

A子「・・・・・」

先生はじっとして、A子と目を合わせな

(沈黙する)

がら待っていました。

A子「だって、面倒くさいんだもん」

。」

先生

面倒くさいんだ

そうだったんだ

リフレイン・承認する

ということは

誰にも言われていないのね」

A子「うん」

先生「よく正直に言えたね。どういうことが

(承認する・質問する)

面倒なの?」

A子「だって、お母さんはしつこく、今日は

どうだった?仲間はずれにされなかった?

って聞いてくるんだもん」

先生「そうか、そういうことだったんだ。お」

母さんは大事なA子さんが心配なんだね

A子「心配しすぎでしつこい」

先生「そうかもね。いいこと教えてあげよう

か。お母さんはA子さんがかわいくて大

事だから心配していると思うよ。だから。

心配しなくていいよって言うといいかも

例えば『私、仲間はずれにされてないか

ら心配しないで』って言ってみるのはど

(提案する・選択肢を与える)

う?」

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「ほめる」を考える

最近は「ほめる」ことの重要性が叫ばれ,その結果「叱られる」経験をする子どもが少なくなってきている,ということを耳にすることがあります。またじょうずに「叱る」ことができる大人も減ってきている,という指摘もあります 「ほめる」ことは,。どんなことにも有効な万能薬のように思われるかも知れませんが,よく効く薬ほど取り扱いは難しいものです。大切なことは,どんなタイミングで,何をどう「ほめる」か,またお互いの関係が確立していない状態では,思わぬ逆の結果になってしまうこともあります。

「ほめる」ことの意味①『新しい自分に気づかせる ・・・ あなたはこんな人のように私には見えますよ」と,自分の目に』 「映ったその人の姿を伝えてあげることによって,本人が気づかなかった自分を見せてあげる。

②『自己決定への支援 ・・・ 周囲の人から,認められている,大切にされている,関心をもたれて』 「いる,愛されていると感じると,やる気や意欲が出て,自分の力で成長する」と言われている。

<自尊感情を高めるほめ方>

「ほめられるからやる」だけでは,いつまでたっても自発的な活動へは広がっていきません 「ほめる」。という行為を,教師の手から子どもの手に移すための簡単な方法があります。それは伝えたいことをわざと伝えずに,子どもに考えさせることです。

例)テレパシー作戦

① 「みんな,よく頑張ったね。これから頑張ったことについて三つ,みんなにテレパシー指示)で伝えます ・・・ (しばらく間をおいて)。 」

② 「では,伝わった人,手を挙げて下さい (または紙に書かせる)こうすれば学級全員」に対して同時にはたらきかけることになる。

③ 「伝わったことを発表してください」 三つ以上の「頑張ったことを」共有できる。

<生徒指導総合研修講座>

-不登校の理解と対応- 10月27日(金)心を育てる生徒指導

東京学芸大学教授の小林正幸先生を招いて講座が行われました。その一部要旨を紹介します。

不登校について① 異年齢集団遊びが消え,人間関係づくりを経験する場が少なくなったのが一因

不登校の形成要因(ストレッサー) 自己解決力の育成・嫌なことがある ・ソーシャルスキルを身に付ける・嫌なことを自力解決できない ・嫌なことを発散するセルフコン・周囲が本人を支えきれない トロールを身に付ける

子ども 「嫌な場所から逃れる」のは人間として正常な反応)保護者)一番困っていると同時に子どもにかかわる重要人物教 師)歩く登校刺激として積極的に家庭訪問(不快感を取り払い,安心感を与える)

子ども,保護者との関係づくりを第一に考える(楽しい時間の共有)「学校に来て」と言わなくても,かかわりがうまくいけば意図は理解できる

・・・ 『頑張る』と『我慢する』の違い② 他者評価に懸命で対人不安な状態が多い

(自己評価) 』 (他者評価)『頑張る』 『我慢する

過去の自分と 周りからのほ比べて,フィー める,叱るといドバックできる う行為がポイン(自分の進歩が トになる。周りわかる 。先に から認められな)進む力がある。 ければ,耐えき「昨日に比べ, れずにつぶれてこれができるよ しまう。

遠い目標に対して,し したいことがあるのうになった」たくないこともする。 に,それをしない。