需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5...

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21世紀政策研究所新書

需要家の視点からエネルギー問題を考える

セミナー12

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セミナー12(2017年10月30日)

基調講演

エネルギー政策の現状と課題····································································

7

 

小澤 

典明

経済産業省資源エネルギー庁

資源エネルギー政策統括調整官

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パネルディスカッション··································································································

79

エネルギーを考える

   【パネリスト(順不同)】�

 

小澤 

典明

一般財団法人日本エネルギー経済研究所参与  

十市  

一般財団法人気象業務支援センター気象予報士 

村山 

貢司

新日鐵住金株式会社技術総括部上席主幹    

小野  

   【モデレータ】�

21世紀政策研究所研究副主幹         

竹内 

純子

経済産業省資源エネルギー庁

資源エネルギー政策統括調整官

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4

ごあいさつ

経団連資源・エネルギー対策委員長 

加藤 

泰彦

 

経団連の資源・エネルギー対策委員会では国民生活や事業活動の基盤であるエネルギ

ー問題について、皆さま方に考えていただくきっかけを広くご提供できればと考え、21

世紀政策研究所との共催で本日のセミナーを開催いたしました。

 

わが国のエネルギー需要は、東日本大震災後の危機的な状況からはひとまず脱するこ

とができたと言えます。一方で昨年(2016年)11月のパリ協定発効を受け、気候変

動対策の観点からエネルギーの問題について改めて考える必要性が増していると言えま

す。わが国は長期エネルギー需給の見通し、いわゆる2030年度のエネルギーミック

スを踏まえ、2030年度までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減す

るという目標を国連に登録しています。エネルギーミックス、ひいては温室効果ガス削

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5  

減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

めるとともに、供給側としても発電時にCO 

を排出しない電源を拡充する必要があり

ます。

 

しかしながら、原子力発電所の再稼働が現状は5基にとどまっていますし、再生可能

エネルギーについては安定性の問題や導入拡大に伴う電気料金の負担増が問題となって

います。加えてエネルギー供給の大部分を占める化石燃料については、引き続き原燃料

として重要な役割を果たすことが期待されており、温暖化対策の観点から一層の高効率

化や安価で安定的な資源調達の確保が求められます。こうした状況を踏まえますと、エ

ネルギー供給事業者はもちろん、エネルギーユーザーも含めて経済界全体としてエネル

ギー問題への関心を高めていくことが重要であると考えます。

 

そこで、本日は資源エネルギー庁でエネルギー政策立案の中心的な役割を担っていら

っしゃる小澤典明資源エネルギー政策統括調整官をお招きして、現在のエネルギー情勢

やエネルギー政策についてお話を伺うこととしました。さらに、その後のパネルディス

カッションでは有識者や経済界の代表にも加わっていただき、エネルギー問題を複眼的

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6

にとらえた議論を行っていただきたいと考えています。

 

本日のプログラムを通じて皆さま方のエネルギー問題に対するご理解が深まりました

ら、大変うれしく思います。

    

2017年10月30日

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基調講演エ

ネルギー政策の現状と課題 

 小澤 

典明

経済産業省資源エネルギー庁

資源エネルギー政策統括調整官

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8

 

エネルギーの全体像(一次エネルギー、二次エネルギー)

 

本日は、最近のエネルギー政策の現状と課題について説明したいと思います。皆さま

には、エネルギー問題について普段からご関心をお持ちいただいておりますが、少しお

さらいも含め、その上で今後どういったことが課題になっているのか、あるいはどうい

った方向に行くのだろうかということをお話しさせていただければと思います。

 

図1(10ページ)は、エネルギーの全体像です。左側に一次エネルギー、右側に二次

エネルギーとありますが、一次エネルギーと言われるものは原油、石炭、天然ガス(L

NG)、再生可能エネルギー、原子力の基となっているウランというものになります。

この一次エネルギーについて日本は現状、ほとんど国内では採れずに、海外に依存して

いる状態です。

 

2030年に向けたエネルギーミックスについて、再生可能エネルギーは22〜24%、

原子力が20〜22%程度の見通しという話があります。この見通しとは二次エネルギーの

電力の構成の話で、一次エネルギーの供給の内の4割の電力の部分の中での割合を示し

ているということです。

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9  基調講演

 

したがって、電力は一次エネルギーの4割を占

めますが、例えば、そのうちの20〜22%が原子力

ということであれば、全体のエネルギーでいえば

1割を占めるか占めないかというのが一次エネル

ギーの中での原子力の割合という話になります。�

再生可能エネルギーも同様で、これは1割ぐらい

を目指すか目指さないかというのが全体像の話で

す。

 

電力以外の6割は非電力、いわば化石燃料の部

分です。原油、石炭、LNGをベースにつくられ

るガソリン、灯油、石炭あるいは都市ガスといっ

たもので、これが全体の過半、6割以上を占めて

います。

 

したがって、電力構成の話がよく議論になりま

小澤 典明氏

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すが、全体像から見ると化石燃料の重要性というも

のは依然として過半を占めているし、この道行きが

どのようになっていくかということが、エネルギー

の全体像から見ると非常に大事だということです。�

最初に、全体像として、非電力のほうであるいわゆ

る化石燃料が6割以上を占め、電力が4割程度を占

めていることを紹介します。

 

日本のエネルギーの選択の歴史

 

図2は、一次エネルギーにおける日本のエネル

ギーの選択の歴史を示したものです。上のグラフ

は絶対量を描いていて、一次エネルギーの供給を

1953年から数値で示しています。下のグラフは

それを100%の割合に引き直したものです。戦後

エネルギーの全体像(一次エネルギー、二次エネルギー)

6割

4割

ガソリン、灯油 石炭、コークス 都市ガス

自動車、ボイラー 原料(製鉄など) 工業用、家庭用など

- LNG火力 - 石炭火力 - 石油火力 - 原子力 - 再エネ

原油 石炭 LNG 再エネ ウラン

電気

<一次エネルギー> <二次エネルギー>

様々な用途

(非電力)

(電力)

1

25

15

15

45

図1 エネルギーの全体像(一次エネルギー、二次エネルギー)

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11  基調講演

(注1)1990

年度以降、数値の算出方法が変更

され

ている。

(注2) 2030

年の「新エネ」は水力を含んだ数値

となっている。

(出典

)総合エネル

ギー統計

より作

水力から

石炭

脱石油。

ガスと原子力の開発に 

石炭の再評

価 

暖化

の要請

から原子力重

視へ

世界最高の省エネ国

家へ

石炭から石油へ

これ

からの

0

100

200

300

400

500

600

7001953195419551956195719581959196019611962196319641965196619671968196919701971197219731974197519761977197819791980198119821983198419851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013

2030

(百

万kl)

(年

度)

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

1953195419551956195719581959196019611962196319641965196619671968196919701971197219731974197519761977197819791980198119821983198419851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013

2030(年

度)

石油

水力

石炭

原子

天然

ガス

新エネ

新エネ

原子

天然

ガス

石炭

水力

一次

エネル

ギー

日本のエネルギーの選択の歴史

2

図2 日本のエネルギーの選択の歴史(一次エネルギー)

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12

の復興期から高度成長期、オイルショック、その後の1990年代のデフレ、地球温暖

化問題の顕在化というように、ここ50年以上にわたって描いていますが、一次エネルギ

ーの供給は増えてきています。

 

戦後復興のころの中心、ベースは石炭と水力で、量も小規模なものでした。この当

時、1960年ぐらい、石炭と水力が中心でしたが、日本のエネルギーの自給率は60%

を占めていました。石炭も十分に採れましたし、水力が中心ということで、この段階で

のエネルギー自給率は60%を占めていました。もちろん、まだエネルギー全体の供給・

需要が小さかったので、そういったことが可能だったと言えます。その後、石油への転

換が始まり、なおかつエネルギー需要が伸びて供給しなければならないということで、

自給率は徐々に低下していきます。1970年になるとエネルギーの自給率は15%程度

になります。この10年でエネルギー需給が石炭から石油に変わったことで、60%から15

%まで急激に落ちることになります。

 

その後、石油の需要が伸び、供給も増えていきますが、オイルショック以降、石油に

ばかり頼ってはいけないということで、原子力、新エネルギー、天然ガスをできるだけ

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13  基調講演

増やそうと取り組んできたという歴史になります。1998年ぐらいになると、原子力

と新エネルギーと水力を足したものが一次エネルギー全体の2割程度を占めるところま

で増えました。オイルショックの経験を踏まえて石油の代替エネルギーをどんどん増や

していこうということで、1998年ぐらいはこの割合が最大2割ぐらいまで伸びたの

です。

 

しかし、2011年の東日本大震災以降、原子力発電が事実上ストップしたこともあ

り、その後は化石燃料に改めてかじを切らざるを得ないことになりました。今は化石燃

料以外のものが1割程度、石油が4割、天然ガスが2・5割、石炭が2・5割と、9割

ぐらいを化石燃料が占めています。いわば昔に戻っている状況です。今はエネルギー自

給率を高めながら、化石燃料への依存をもう少し減らさないといけないということでか

じを切っていますが、温室効果ガス、CO 

の排出削減と相まって対応しなければなら

ないということです。

 

図3(14ページ)は、一次エネルギーのうちの4割を占めると先ほど説明した電力の

話です。電力もだいたい同じような傾向で、戦後復興期は石炭、水力でほとんど自給で

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14

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

195219551960196519701971197219731974197519761977197819791980198119821983198419851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013

2030

億kWh

(年度)

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

195219551960196519701971197219731974197519761977197819791980198119821983198419851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013

2030

(年度

(出

典)資

源エネル

ギー庁

「電

源開発の概要」、「電

力供

給計

画の

概要」を基

に作成

水力から

石炭

脱石油。

ガスと原子力の開発に 

石炭の再評価 

暖化の要

請から原子力

重視へ

世界最高の省エネ国

家へ

石炭から石油へ

これ

からの

LNG

石炭

石油

新エネ

原子

水力

LNG

石炭

石油

新エネ

子力

水力

電力

日本のエネルギーの選択の歴史(電力)

3

図3 日本のエネルギーの選択の歴史(電力)

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15  基調講演

きていましたが、需要増に伴って石油、火力を導入し、その後、LNG、原子力と増や

していきました。しかし、東日本大震災以降は原子力発電がほぼゼロになり、新エネル

ギーへかじを切ることになります。

 

先日、私は、黒部川第四発電所というところへ行ってきました。黒部ダムです。これ

は1956年に着工して、1963年に完成しました。1961年から発電を開始して

いますが、そのころは、図3の下のグラフを見ていただければわかるように水力が発電

の中心でしたので、黒部川第四発電所の取り組みは非常に大きかったわけです。

 

ちなみに、その当時の黒部川第四発電所の規模は25万キロワットでした。25万キロワ

ットというと、今では原子力発電所1基が100万キロワット、あるいはLNG火力と

か石炭火力でも100万キロワットが基本になってきているので、それに比べると非常

に小さいものですが、当時はその25万キロワットで大阪府の需要の半分は賄えたという

ことです。

 

当時、それだけの規模感のものに取り組んだ壮大なプロジェクトだったと思います

が、そういった電源の獲得という努力があった上で、ここまでの道のりになってきてい

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16

ることを私も改めて実感しました。これからも電力の多様なバランスが大事になります

が、それにどうきめ細かく対応していくのかがこれからの重要な課題になると考えられ

ます。

 

第一次石油危機後のエネルギー政策の変遷

 

図4は、第一次石油危機(オイルショック)後のエネルギー政策の変遷、歴史です。

1973年の第一次オイルショック以降はオイルショック対策ということで、石油需給

の適正化、国民生活安定緊急措置法などが実施されました。売り惜しみ、買いだめをし

ないための法律などを整えていくという歴史がありました。私の所属している資源エネ

ルギー庁は1973年7月25日に設置されました。ちょうどオイルショックのタイミン

グの時です。その時から、オイルショックへの対応ということで、どのように安定供給

を図るのか。石油はもちろんですが、それ以外のエネルギーをどのように獲得していく

のか。このことが大きな課題でした。

 

その後は電源三法、つまり電源獲得のための整備、税制、特別会計を導入するための

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17  基調講演

法律がつくられます。サンシャイン計

画というのは再生可能エネルギーを導

入するための研究開発のプログラムで

す。それから備蓄ですね。ムーンライ

ト計画というのは省エネです。省エネ

ルギー法を整備したり、省エネを進め

ていきました。このようなことが最初

の10年ぐらいの取り組みとなります。

 

1990年代になると、法律的な流

れでいえば電力・ガスの自由化、地球

温暖化対策推進法を整備していきまし

た。2002年にはエネルギー政策基

本法、詳細は後でご説明しますが、こ

れを整備し、2010年代は、福島第

第一次石油危機後のエネルギー政策の変遷 4

1973年 国民生活安定緊急措置法 1973年 石油需給適正化法 1974年 電源三法(発電用施設周辺地域整備法、電促税法、電源特会法) 1974年 サンシャイン計画 1975年 石油備蓄法 1978年 石油開発公団法等改正(石油公団と改称、国家石油備蓄業務開始) 1978年 ムーンライト計画 1979年 省エネルギー法 1980年 石油代替エネルギー法(のちの非化石エネルギー法) 1994年 ガス事業法改正(小売の部分自由化) 1995年 電気事業法改正(発電部門への市場原理導入) 1997年 新エネルギー法 1998年 地球温暖化対策推進法 1999年 電気事業法改正(小売の部分自由化) 1999年 ガス事業法改正(小売自由化範囲の拡大①) 2002年 RPS法 2002年 エネルギー政策基本法 2003年 電気事業法改正(小売自由化範囲の拡大) 2003年 ガス事業法改正(小売自由化範囲の拡大②) 2011年 原賠機構法 2011年 FIT法 2013年 電気事業法改正(電力システム改革①:広域機関の設立) 2014年 電気事業法改正(電力システム改革②:小売全面自由化(2016年4月1日~)) 2015年 電気事業法改正(電力システム改革③:発送電分離) 2015年 ガス事業法改正(小売全面自由化(2017年4月1日~))

図4 第一次石油危機後のエネルギー政策の変遷

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18

一原子力発電所の事故後になりますけれど、事

故収束対策のための原賠機構法の整備、FIT

(全量固定価格買取制度)法、それから電力・ガ

スシステム改革の法律の整備といったことを進め

てきました。このようなことがこの40年強の間に

取り組んできたことになります。

 

2011年東日本大震災及び福島第一原子力発

電所事故後の変化

 

図5は、東日本大震災以降の変化を整理したも

のです。

 

自給率は、2015年には7%まで落ちまし

た。再生可能エネルギーの導入と、原子力発電所

が少しずつ動き出していますので、16年は8%ま

(��� ) (��������� ) (CO2��� )

���

2010年 20%

2015年 7%

福島の事故 �����の��

2010年度 3.7億t-CO2

2015年度 4.3億t-CO2

2010年度 20.37円 13.65円

電気料金(kWhあたり)

① ② ③

家庭用 産業用

2030年 概ね25%程度 欧米に遜色ない削減目標 電力コストを

現状より引き下げる

2016年度 22.43円 15.62円 (10%増) (14%増)

2011年東日本大震災及び福島第一原発事故後の変化

エネルギー起源CO2(電力分)

5 図5 2011年東日本大震災及び福島第一原発事故後の変化

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19  基調講演

で上がっていますが、依然として9割は海外に依存する、ほぼ化石燃料に依存するとい

う状態が続いています。

 

エネルギーコストは一時期より落ち着いていますが、震災前に比べ、家庭用、産業用

ともまだ高いレベルです。電気料金は一時期、家庭用は25%、産業用も40%上昇しまし

た。油価が落ち着いていますから、今のレベルですが、依然として上昇した状態です。

 

CO 

の排出量も増えた状態がまだ続いています。こういったものをどのように是正

していくのかが課題です。

 

日本のエネルギー自給率

 

図6(20ページ)は、エネルギー自給率の国際比較です。

 

図6の一番下ですが、日本の自給率は2016年で8%ですし、主な国産資源は正直

申し上げて、ゼロです。

 

主要国と比較すると、米国の自給率は最近上がっています。73%から88%と、この15

年で9割近くまで上がっていて、今は恐らく自給率100%を超えているだろうと言わ

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20

れています。シェールオイル、シェールガスの増

産といったことにより、自給率が十分に賄える状

態になっています。英国、ドイツ、フランスは自

給率がだいたい維持されている状況です。英国は

石油が中心的な国産資源ですし、ドイツは石炭で

す。フランスは多くの一次エネルギーを原子力で

賄っています。中国、インドも石炭が採れます

が、最近は自給率が急激に落ちています。したが

って、中国、インドは人口も多いので、資源獲得

を国際的にどのように展開していくのかというこ

とが注目すべき点ですし、これらへの対応がどう

なっていくのか、日本としてどのように受け止め

るのかということが大事な課題となります。

資源に乏しい日本のエネルギー自給率

出所:IEA・Energy Balances 2017 ※日本の自給率は資源エネルギー庁推計

��� (2000年)

��� (2016年)

37% 仏

40%

20% 8%

73% 88%

54% 52%

65% 80%

84% 98%

※中印は2015年

主な 国産資源 天然ガス 石炭・石油

原子力

石炭

石炭

石炭

無し

英 67% 74% 石油

6 図6 資源に乏しい日本のエネルギー自給率

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21  基調講演

 �

石油・ガス輸入の国際比較、石油・ガス生産量

の国際比較

 

図7は、その中で石油・ガスの輸入の国際比較

です。

 

図7の一番下の日本は石油の海外からの輸入依

存度が99%、うち中東が85%と非常に高くて、地

政学上のリスクを受けやすい状況です。これを変

えよう変えようと努力していますが、依然として

このような高い状態です。中国、インドの石油輸

入依存は最近増えています。6割、8割というか

たちで海外に依存していますが、中東への依存度

はそれほど高くありません。

 

一方、ドイツ、フランスも石油・ガスの輸入依

存は高いのですが、ロシア等々とのパイプライン

石油・ガス輸入の国際比較

����

�� ��

41% 3% 8% 0%

22% 46% 1% 10%

97% 99% 25% 2%

4% 0% 96% 90%

31% 4% 61% 29%

46% 25% 83% 40%

85% 23% 99% 98% 出所:IEA・Energy balances他から資源エネルギー庁作成 ※中・印は2015年のデータ

��中� �����

パイプライン 連結

タンカー 輸送

パイプライン 連結

パイプライン 連結

���� ��中� �����

15% カナダ

12% ノルウェー

15% サウジアラビア

37% ロシア

37% サウジアラビア

3% カナダ

32% ノルウェー

40% ノルウェー

44% ロシア

15% トルクメニスタン

22% カタール

28% オーストラリア

9% サウジアラビア

15% サウジアラビア

タンカー 輸送

タンカー 輸送

パイプライン 連結

パイプライン 連結

パイプライン 連結

パイプライン 連結

パイプライン 連結

※欧州大で��������

タンカー 輸送

タンカー 輸送

タンカー 輸送

※ロシア等と��������

※��������

※��������

※��������

※��������

7 図7 石油・ガス輸入の国際比較(2016年)

Page 22: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

22

の連結があり、中東への依存度は高くない状況です。ですから、日本とは違った意味で

の地政学上のさまざまな課題があるということです。米国はいま輸入依存は減っていっ

ています。これが主要国の石油・ガス輸入の動向です。

 

図8は、原油・天然ガスの各国の生産量の最近の動きです。

 

2016年の生産量で申し上げますと、原油、天然ガスとも今は米国が生産量トップ

です。中東のサウジアラビアでもなく、ロシアでもなく、両方ともいま米国がトップと

いう状態です。これが国際的な石油市場、天然ガス市場にどういった影響を与えるかと

いうのは注目すべきことだと思います。

 

日本の化石燃料の輸入先及び中東依存度

 

図9(24ページ)は、日本の化石燃料の輸入先及び中東依存度を石炭・原油・天然ガ

スで示しています。石炭はオーストラリアに七十数パーセント依存しているので、中東

などの地政学リスクはかなり低く、安定的な獲得が可能です。原油は中東への依存度が

非常に高い。天然ガスはオーストラリアが一番の輸入先になっているので、相対的なリ

Page 23: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

23  基調講演

図8 世界の国別原油・天然ガスの生産量(2016年)

原油 天然ガス

1Bcm=LNG換算で約73万トン

米国 21.7%

ロシア 16.2%

イラン 5.4%

カタール 9.4%

カナダ 4.6% 中国

3.9%

ノルウェー 3.3% サウジアラビア

3.0%

アルジェリア 2.3%

インドネシア 2.1%

その他 32.2%

全世界合計 3,539Bcm

【LNG換算25.8億トン】

世界の国別原油・天然ガスの生産量(2016年)

出所:BP統計2017を基に作成。原油、シェールオイル、オイルサンド、NGLを含む数値)

8

原油 天然ガス

1Bcm=LNG換算で約73万トン

米国 21.7%

ロシア 16.2%

イラン 5.4%

カタール 9.4%

カナダ 4.6% 中国

3.9%

ノルウェー 3.3% サウジアラビア

3.0%

アルジェリア 2.3%

インドネシア 2.1%

その他 32.2%

全世界合計 3,539Bcm

【LNG換算25.8億トン】

世界の国別原油・天然ガスの生産量(2016年)

出所:BP統計2017を基に作成。原油、シェールオイル、オイルサンド、NGLを含む数値)

8

原油 天然ガス

1Bcm=LNG換算で約73万トン

米国 21.7%

ロシア 16.2%

イラン 5.4%

カタール 9.4%

カナダ 4.6% 中国

3.9%

ノルウェー 3.3% サウジアラビア

3.0%

アルジェリア 2.3%

インドネシア 2.1%

その他 32.2%

全世界合計 3,539Bcm

【LNG換算25.8億トン】

世界の国別原油・天然ガスの生産量(2016年)

出所:BP統計2017を基に作成。原油、シェールオイル、オイルサンド、NGLを含む数値)

8

原油 天然ガス

1Bcm=LNG換算で約73万トン

米国 21.7%

ロシア 16.2%

イラン 5.4%

カタール 9.4%

カナダ 4.6% 中国

3.9%

ノルウェー 3.3% サウジアラビア

3.0%

アルジェリア 2.3%

インドネシア 2.1%

その他 32.2%

全世界合計 3,539Bcm

【LNG換算25.8億トン】

世界の国別原油・天然ガスの生産量(2016年)

出所:BP統計2017を基に作成。原油、シェールオイル、オイルサンド、NGLを含む数値)

8

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24

��

(2

016

年)

��

�(

20

16年

出典

:貿

易統

ホル

ムズ

海峡

��

(2

016

年)

9 日本の化石燃料の輸入先および中東依存度

サウジアラビア

35.7%

アラブ首長国連邦

24.5%

カタール

9.2%

クウェート

6.8%

イラン

6.7%

ロシア

6.1%

メキシコ

2.7%

イラク

2.3%

インドネシア

1.6%

オマーン

1.2%

その他

3.1%

原油輸入量

335万BD

中東依存度

86.4%

(ホルムズ依存度

85.2%)

中東依存度

23.6%

(ホルムズ依存度

20.5%)

オーストラリア

75.5%

インドネシア

10.8%

ロシア

10.0%

カナダ

1.8%

中国

1.1% アメリカ合衆国

0.7% その他

0.1%

一般炭輸入量

1億

2,495万トン

中東依存度

0%

(ホルムズ依存度

0%)

9 図9 日本の化石燃料の輸入先及び中東依存度

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25  基調講演

スクが低く、多角化された状態です。

 

激しい変動を繰り返す油価

 

図10(26ページ)は、油価の動きです。

 

油価については、1970年から見てみると全体としてはずっと上昇基調ですが、最

近になり、その乱高下は大きなレベルになっています。2008年7月に150ドル近

くまで行き、その後、リーマンショックがあって急激に落ち、また100ドル近くまで

上がり、最近、足下は50ドル前後で推移しています。

 

今後の見通しですが、図10の右側はIEAのシナリオです。2040年断面でどうな

るかというと、少し先ですが、78ドルから146ドルの範囲で動いていく、幅があるこ

とになっています。この幅は需要の想定によるものです。需要が大きく伸びる、54億ト

ンぐらいまでいく場合には150ドル近くになり、48億トンであれば124ドル、33億

トンであれば78ドルというように、需要と連関するかたちでの価格の見通しを立ててい

ます。

Page 26: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

26

激しい変動を繰り返

す油価

0 20 40 60 80

100

120

140

160

1970年 1972年 1974年 1976年 1978年 1980年 1982年 1984年 1986年 1988年 1990年 1992年 1994年 1996年 1998年 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 2016年

アラビアンライトOSP

ブレント

TI

2040年

※1983

年に

WTI先

物(N

YME

X)とブレント先

物(IP

E、現

ICE)が

上場

。※

価格はバレル当たり、需要は原油換算。

運輸

部門

の需

要減

少には

燃費

改善

等他

の要

因も寄

与。

EV・P

HVの

普及

は一

例。

(08.07)�上

��

�W

TI

145.29��

ブレント

146.08��

��

需要

(2040

年)

48億トン

(運輸

:29億)

33億トン

(運輸

:18億)

出所:

WEO

2016

(全車分の約

2%)

��

50����

146 ドル

(11.03)�

��

��

(08.09)���ン

����

(80.9)イラン・

イラク戦争勃発

(01.09)米国同時

多発テロ発生

(79.2)イラン暫定

革命政府成立

(90.10) 湾岸戦争時最高値

40.42ドル)

(04~)

新興国需要急増

(73.10) 第

4次

中東戦争

54億トン

(運輸

:34億)

EV・PH

V

(2040年

)

全体で▲

6億

うち運輸で▲

5億

(約

80%)

0.3億台

1.5億台

7.1億台

全体で▲

15億

うち運輸で▲

11億

(約

70%)

(全車分の約

8%)

(全車分の約

36%)

124 ドル

78 ドル

※2040年

の原油価格・原油需要・

EV,PHVの

幅は

IEAのW

EOシナリオに基づく

146ド

ル:新たな政策が実施されない場合

(現行政策シナリオ)

124ド

ル:パリ協定の各国自主目標実現水準

(新政策シナリオ)

78ド

ル:パリ協定の気温上昇2度以下目標達成水準

(450ppm

シナリオ)

10 図10 

激しい変動を繰り返す油価

Page 27: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

27  基調講演

 

この需要変動の大きな部分は運輸部門です。世界的に見れば運輸部門が原油需要の5

割から6割程度を占めていますので、その影響が大きいわけです。図10の一番右側にE

V・PHVとありますが、このシナリオの中には電気自動車、プラグ・イン・ハイブリ

ッドの普及率がどうなっているかという想定もあります。これがあまり普及しない、全

車分の約2%ということであれば、原油需要は依然として維持されるので、非常に高く

て150ドルぐらいの油価になる。8%程度まで入ってくれば124ドル。全体の36%

と大規模に入ってくると78ドルになる。

 

したがって供給面の影響、例えば米国がシェールオイル、シェールガスなど、あるい

はほかのところでの供給がどんどん増えるというようなことのみならず、需要面の影響

というものが油価の不確実性を高める傾向なので、引き続きこういったものについては

十分に注視しなければいけません。特に需要面の影響、電気自動車、プラグ・イン・ハ

イブリッドなど運輸部門の需要が大きいので、ここがどういう動向になっていくのかは

注視すべきだろうと考えています。

Page 28: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

28

 

わが国のエネルギー政策

 

続いて、現在のわが国のエネルギー政策について、エネルギー基本計画とエネルギー

ミックスを中心に説明をします。

 

2002年にエネルギー政策基本法を施行しました。それまではエネルギー政策の基

本法がない中で個別の対応をやってきましたが、地球温暖化問題など新たな課題もあり

ましたので、総合的に進めようということで2002年に成立しました。

 

エネルギー基本計画は4回つくっていますが、2014年4月の第四次が最新です。

閣議決定をして進めていますが、3年に1度の検討ということで現在、次期計画の検討

時期に来ています。エネルギーミックスは、2015年に示させていただいています。

 

図11は、エネルギー政策の4つの基本的視点です。基本原則として「3E+S」、安

定供給、経済効率、環境適合、その前提となる安全性を追求していくということです。

 

エネルギー政策のエッセンスが、図12(30ページ)の現在のエネルギー基本計画から

抜粋した三つのパラグラフに集約されていますので、ご紹介します。

 

最初のパラグラフには、「3E+S」、エネルギー政策の原則が書いてあります。エネ

Page 29: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

29  基調講演

ルギー政策の要諦は、安全性を前提としてエネルギ

ーの安定供給、低コストでのエネルギー供給の実

現、同時に環境への適合を図るため最大限の取り組

みを行う。3E+Sの原則です。

 

この中でも自給率が低いわが国では安定供給が大

事なので、よく読んでいただくと「エネルギーの安

定供給を第一とし」とあります。その上で、同時に

低コスト、環境適合を図る最大限の努力を行うとい

うことです。日本のエネルギー政策の基本は、根本

はやはり安定供給をどうやって達成していくか。自

給率が低い、資源に乏しいことを前提にすると、こ

れをどのように確保していくのか。このことが大事

なので、安定供給を第一とする基本は変わらない。�

その上で低コスト、環境適合を図っていくのが原則

Energy Security Economic Efficiency Environment

Safety

安定供給 (自給率が高い)

経済効率 (コストが低い)

環境適合 (CO2が少ない)

安全性 +

エネルギー政策は、3E+S を追求 (スリーイー・プラス・エス)

エネルギー政策の4つの基本的視点 12 図11 エネルギー政策の4つの基本的視点

Page 30: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

30

ということにしています。

 

2番目のパラグラフは、�

それぞれのエネルギー源の

話です。それぞれ強みと弱

みを持っていて、わが国の

エネルギー供給構造を一手

に支えられるような単独の

エネルギー源は存在しな

い。したがって、それぞれ

が強みを発揮して、弱みが

適切に補完されるような組

み合わせを持つ供給構造を

実現することが必要であ

る。要はエネルギーミック

図12 エネルギー基本計画(平成26年4月11日閣議決定)〜抜粋〜

 「エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(EnergySecurity)を第一とし、経済効率性の向上(EconomicEfficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合

(Environment)を図るため、最大限の取組を行うことである。」

 「各エネルギー源は、それぞれサプライチェーン上の強みと弱みを持っており、安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しない。 危機時であっても安定供給が確保される需給構造を実現するためには、エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多層的な供給構造を実現することが必要である。」

 「エネルギー分野においては、直面する課題に対して、一国のみによる対応では十分な解決策が得られない場合が増えてきている。例えば、原子力の平和・安全利用や地球温暖化対策、安定的なエネルギー供給体制の確保などについては、関係する国々が協力をしなければ、本来の目的を達成することはできず、国際的な視点に基づいて取り組んでいかなければならないものとなっている。エネルギー政策は、こうした国際的な動きを的確に捉えて構築されなければならない。」

Page 31: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

31  基調講演

ス、ミックスされたエネルギー供給が大事である。エネルギーミックスの重要性を書い

たものです。それぞれが補完し、組み合わせをつくるということでいうと、多様性のあ

るエネルギー源をバランスよく組み合わせることが大事であるとしています。

 

3番目のパラグラフは、国際的な面です。エネルギー問題については一国のみの対応

では十分な解決が得られないので、エネルギー政策は国際的な動きを的確にとらえて構

築されなければならないとしています。地球温暖化対策もそうですし、さまざまな面で

の国際協力、それから地政学あるいは地形学への注意深い対応が必要だということを書

いています。

 

エネルギー基本計画はただ単に政策の方向性を文章で書いてありますが、一つひとつ

きめ細かく見ると注意深く書かれています。今、この見直しの作業に入っていますが、

これをどのように整理していくかということが基本計画の当面の見直しの作業というこ

とになります。

Page 32: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

32

 

エネルギーミックス

 

図13のエネルギーミックスですが、、再生可能エネルギー、原子力、LNG、石炭が

それぞれ全体の4分の1から5分の1を占めています。石油というのは電源構成でいう

と緊急時にしか使えませんので3%となっていますが、これも残した上で残りの四つに

ついて4分の1から5分の1ずつを占めるというものです。

 

その多様性を失わずにバランスよく組み合わせて、何かがなくなってもほかのもので

代替できるようにということで、4分の1ぐらいずつのバランスで供給できることが望

ましい。今はそのようなところを目指しています。以前の第3次のエネルギーミックス

の時には、特に電源構成の中では原子力は50%までを目指すとしていました。これは温

暖化に配慮したものでしたが、過度のエネルギーに集中的に頼るのはよくないというこ

とで、現在のエネルギーミックスでは構成に修正を加えています。

 

図14(34ページ)は、石炭、LNG、原子力、再エネが1%減ったり増えたりすると

どうなるかという、いわば感度分析です。例えば電源構成全体の中で石炭が1%増える

と、他のエネルギー源に比べるとCO 

排出量はLNG比プラス440万トン、原子力

Page 33: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

33  基調講演

10,650億kWh程度 (総発電電力量) 地熱

1.0~1.1%程度

再エネ (水力除く)

24.5

再エネ (水力除く)

26.1 再エネ (水力除く)

18.5

再エネ(水力除く) 5.6

再エネ(水力除く) 7.3 再エネ(水力除く)

6

水力, 3.1

水力, 14.2

水力, 1.8

水力, 11.3 水力, 6.1 水力, 8.6

石炭, 45.8 石炭, 16.5

石炭, 30.4

石炭, 2.2

石炭, 39.7 石炭, 31.9

石油その他, 0.9

石油その他, 5.1

石油その他, 0.5

石油その他, 0.3

石油その他, 0.9 石油その他, 12.2

天然ガス, 10.0

天然ガス, 17.2

天然ガス, 30.0

天然ガス, 2.3

天然ガス, 26.9

天然ガス, 40.5

原子力, 15.6 原子力, 20.8 原子力, 19.0

原子力, 78.4

原子力, 19.2

原子力, 0.9

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

再エネ27.6%

再エネ40.3%

再エネ20.3%

再エネ13.4%

再エネ14.6%

(発電電力量に占める割合)

再エネ16.9%

出典: 【日本】総合エネルギー統計(確報値)、電力調査統計(確報値)等より資源エネルギー庁作成 【日本以外】2014年推計値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2016 edition)

ドイツ(2014年) スペイン(2014年) イギリス(2014年) フランス(2014年) アメリカ(2014年) 日本(2015年)

2030年度の電源構成

地熱…0.3% バイオマス…1.8%

風力…0.5% 太陽光…3.4% 水力…8.6%

<参考:2015年度>

再エネ22~24%程度

原子力22~20%程度

LNG27%程度

石炭26%程度

石油 3%程度

水力 8.8~9.2%程度

太陽光 7.0%程度

風力 1.7%程度

バイオマス 3.7~4.6%程度

電源構成の国際比較

14

図13 2030年度の電源構成

10,650億kWh程度 (総発電電力量) 地熱

1.0~1.1%程度

再エネ (水力除く)

24.5

再エネ (水力除く)

26.1 再エネ (水力除く)

18.5

再エネ(水力除く) 5.6

再エネ(水力除く) 7.3 再エネ(水力除く)

6

水力, 3.1

水力, 14.2

水力, 1.8

水力, 11.3 水力, 6.1 水力, 8.6

石炭, 45.8 石炭, 16.5

石炭, 30.4

石炭, 2.2

石炭, 39.7 石炭, 31.9

石油その他, 0.9

石油その他, 5.1

石油その他, 0.5

石油その他, 0.3

石油その他, 0.9 石油その他, 12.2

天然ガス, 10.0

天然ガス, 17.2

天然ガス, 30.0

天然ガス, 2.3

天然ガス, 26.9

天然ガス, 40.5

原子力, 15.6 原子力, 20.8 原子力, 19.0

原子力, 78.4

原子力, 19.2

原子力, 0.9

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

再エネ27.6%

再エネ40.3%

再エネ20.3%

再エネ13.4%

再エネ14.6%

(発電電力量に占める割合)

再エネ16.9%

出典: 【日本】総合エネルギー統計(確報値)、電力調査統計(確報値)等より資源エネルギー庁作成 【日本以外】2014年推計値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2016 edition)

ドイツ(2014年) スペイン(2014年) イギリス(2014年) フランス(2014年) アメリカ(2014年) 日本(2015年)

2030年度の電源構成

地熱…0.3% バイオマス…1.8%

風力…0.5% 太陽光…3.4% 水力…8.6%

<参考:2015年度>

再エネ22~24%程度

原子力22~20%程度

LNG27%程度

石炭26%程度

石油 3%程度

水力 8.8~9.2%程度

太陽光 7.0%程度

風力 1.7%程度

バイオマス 3.7~4.6%程度

電源構成の国際比較

14

10,650億kWh程度 (総発電電力量) 地熱

1.0~1.1%程度

再エネ (水力除く)

24.5

再エネ (水力除く)

26.1 再エネ (水力除く)

18.5

再エネ(水力除く) 5.6

再エネ(水力除く) 7.3 再エネ(水力除く)

6

水力, 3.1

水力, 14.2

水力, 1.8

水力, 11.3 水力, 6.1 水力, 8.6

石炭, 45.8 石炭, 16.5

石炭, 30.4

石炭, 2.2

石炭, 39.7 石炭, 31.9

石油その他, 0.9

石油その他, 5.1

石油その他, 0.5

石油その他, 0.3

石油その他, 0.9 石油その他, 12.2

天然ガス, 10.0

天然ガス, 17.2

天然ガス, 30.0

天然ガス, 2.3

天然ガス, 26.9

天然ガス, 40.5

原子力, 15.6 原子力, 20.8 原子力, 19.0

原子力, 78.4

原子力, 19.2

原子力, 0.9

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

再エネ27.6%

再エネ40.3%

再エネ20.3%

再エネ13.4%

再エネ14.6%

(発電電力量に占める割合)

再エネ16.9%

出典: 【日本】総合エネルギー統計(確報値)、電力調査統計(確報値)等より資源エネルギー庁作成 【日本以外】2014年推計値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2016 edition)

ドイツ(2014年) スペイン(2014年) イギリス(2014年) フランス(2014年) アメリカ(2014年) 日本(2015年)

2030年度の電源構成

地熱…0.3% バイオマス…1.8%

風力…0.5% 太陽光…3.4% 水力…8.6%

<参考:2015年度>

再エネ22~24%程度

原子力22~20%程度

LNG27%程度

石炭26%程度

石油 3%程度

水力 8.8~9.2%程度

太陽光 7.0%程度

風力 1.7%程度

バイオマス 3.7~4.6%程度

電源構成の国際比較

14

Page 34: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

34

電源

��

を�

���

た�

�の

��

��

▲1�

���▲

1�

子力

▲1�

エネ▲

1�

��

+1�

4.4百

万t-CO

2

▲640億

+8.4百

万t-CO

2

+340億

+8.4百

万t-CO

2

▲1,840億

���+

1�

4.4百

万t-CO

2

+640億

+4.0百

万t-CO

2

+980億

+4.0百

万t-CO

2

▲1,200億

原子

力+

1�

8.4百

万t-CO

2

▲340億

▲4.0百

万t-CO

2

▲980億

±0百

万t-CO

2

▲2,180億

再エネ+

1�

8.4百

万t-CO

2

+1,840億

▲4.0百

万t-CO

2

+1,200億

±0百

万t-CO

2

+2,180億

※各

数値

はいずれ

も概数

��

���

子力

エネ

発電効率

41%

48%

燃料単価

14,044

円/t

79,122円

/t 1.54

円/kW

h -

FIT買取単価

22

円/kW

h

��

�2030�

��

※1

火力

の発

電効

率は

、再エネ導

入増

に伴う設

備利

用率減

少による効

率低下

を想

定した値

2

火力

の燃

料単

価は

燃料

輸入

費、原

子力

の燃料

単価は

核燃料

サイクル費

※3

再エネについては

、便

宜上

全て風

力発

電で計

算したもの。実際

には

、電源

の特性

を踏

まえた代替

のあり方に沿

って

導入

が進

むことに留

意が必

15 図14 

電源構成を変化させた場合の影響

Page 35: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

35  基調講演

比プラス840万トンとなります。一方で、コストについてはLNGより安いというこ

とで、640億円の減。さらに再エネと比較しても安いので1840億円のコスト低下

につながります。原子力と比較した場合には、石炭のほうが少しコスト高なので340�

億円のコスト増になるということです。

 

コストとCO 

の面で、原子力が1%増えると、石炭、LNGに比べてCO 

が相当

減る。コストについてもそれぞれについて大きな減少があることを示しています。再エ

ネについては、CO 

の削減効果は石炭、LNGに比べたら高いけれど、コストについ

てはほかの三つのエネルギーに比べると相当かかってしまうということです。このよう

な感度分析もしながら、どういったバランスにしていくかを考えています。

 

エネルギー基本計画の見直しの検討

 

3年前の2014年に現在のエネルギー基本計画をつくりました。エネルギー政策基

本法では少なくとも3年ごとに検討を加えましょうということにされているので、いま

検討の時期となります。そこで、今年(2017年)の8月から総合資源エネルギー調

Page 36: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

36

査会の基本政策分科会というものを開催して、現在のエネルギー基本計画の見直しの検

討作業を開始しています。

 

図15の上部に18名の委員名簿を載せていますが、この検討作業にあたっていただいて

いる委員の方々です。

 

図15の下部の名簿は、エネルギー情勢懇談会の委員です。エネルギー基本計画、エネ

ルギーミックスは2030年を念頭に置いたものですが、2050年をにらんでエネル

ギーの将来像を見極める必要があると考えています。そこで経済産業大臣主催のエネル

ギー情勢懇談会を設置し、そこで2050年に向けた将来像をどのように考えていくか

ということの検討を進めています。

 

上の「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」が2030年に向けたエネルギー

基本計画の見直し、課題の洗い出しをやっている委員会で、下の「エネルギー情勢懇談

会」が2050年に向けた将来像を議論するという懇談会です。この両方の議論を連携

して進めていくということで現在取り組んでいます。

Page 37: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

37  基調講演

「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会」の開催と「エネルギー情勢懇談会」の設置 2014年に策定したエネルギー基本計画については、策定から3年が経過し、エネルギー政策基本法で定めら

れている検討の時期にきている。このため、8月9日に総合資源エネルギー調査会基本政策分科会を開催し、

議論を開始。 また、我が国は、パリ協定を踏まえ「地球温暖化対策計画」において、地球温暖化対策と経済成長を両立さ

せながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すこととしている。他方、こ

の野心的な取組は従来の取組の延長では実現が困難であり、技術の革新や国際貢献での削減などが必要である。このため、幅広い意見を集約し、あらゆる選択肢の追求を視野に議論を行って頂くため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」を新たに設置し、8月30日に第1回、9月29日に第2回を開催。

エネルギー情勢懇談会 委員名簿

飯島 彰己 三井物産(株)代表取締役会長

枝廣 淳子 東京都市大学環境学部教授、(有)イーズ代表取締役

五神 真 東京大学総長

坂根 正弘 (株)小松製作所相談役

白石 隆 (独)日本貿易振興機構アジア経済研究所所長

中西 宏明 株式会社日立製作所取締役会長

船橋 洋一 (一財)アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

山崎 直子 宇宙飛行士

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会 委員名簿

坂根 正弘 (株)小松製作所相談役

秋元 圭吾 (公財)地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー

伊藤 麻美 日本電鍍工業(株)代表取締役

柏木 孝夫 東京工業大学特命教授

橘川 武郎 東京理科大学イノベーション研究科教授

工藤 禎子 (株)三井住友銀行常務執行役員

崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー

武田 洋子 (株)三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長

チーフエコノミスト

辰巳 菊子 (公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問

寺島 実郎 (一財)日本総合研究所会長

豊田 正和 (一財)日本エネルギー経済研究所理事長

中上 英俊 (株)住環境計画研究所代表取締役会長

西川 一誠 福井県知事

増田 寛也 野村総合研究所顧問 東京大学公共政策大学院客員教授

松村 敏弘 東京大学社会科学研究所教授

水本 伸子 (株)IHI常務執行役員 調達企画本部長

山内 弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授

山口 彰 東京大学大学院工学系研究科教授

図15 委員名簿

「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会」の開催と「エネルギー情勢懇談会」の設置 2014年に策定したエネルギー基本計画については、策定から3年が経過し、エネルギー政策基本法で定めら

れている検討の時期にきている。このため、8月9日に総合資源エネルギー調査会基本政策分科会を開催し、

議論を開始。 また、我が国は、パリ協定を踏まえ「地球温暖化対策計画」において、地球温暖化対策と経済成長を両立さ

せながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すこととしている。他方、こ

の野心的な取組は従来の取組の延長では実現が困難であり、技術の革新や国際貢献での削減などが必要である。このため、幅広い意見を集約し、あらゆる選択肢の追求を視野に議論を行って頂くため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」を新たに設置し、8月30日に第1回、9月29日に第2回を開催。

エネルギー情勢懇談会 委員名簿

飯島 彰己 三井物産(株)代表取締役会長

枝廣 淳子 東京都市大学環境学部教授、(有)イーズ代表取締役

五神 真 東京大学総長

坂根 正弘 (株)小松製作所相談役

白石 隆 (独)日本貿易振興機構アジア経済研究所所長

中西 宏明 株式会社日立製作所取締役会長

船橋 洋一 (一財)アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

山崎 直子 宇宙飛行士

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会 委員名簿

坂根 正弘 (株)小松製作所相談役

秋元 圭吾 (公財)地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー

伊藤 麻美 日本電鍍工業(株)代表取締役

柏木 孝夫 東京工業大学特命教授

橘川 武郎 東京理科大学イノベーション研究科教授

工藤 禎子 (株)三井住友銀行常務執行役員

崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー

武田 洋子 (株)三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長

チーフエコノミスト

辰巳 菊子 (公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問

寺島 実郎 (一財)日本総合研究所会長

豊田 正和 (一財)日本エネルギー経済研究所理事長

中上 英俊 (株)住環境計画研究所代表取締役会長

西川 一誠 福井県知事

増田 寛也 野村総合研究所顧問 東京大学公共政策大学院客員教授

松村 敏弘 東京大学社会科学研究所教授

水本 伸子 (株)IHI常務執行役員 調達企画本部長

山内 弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授

山口 彰 東京大学大学院工学系研究科教授

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38

 

日本のエネルギー政策の論点

 

そこでは、次のさまざまな環境変化、状況変化を踏まえて、検討作業を進めていま�

す。

 

変化1として、例えば原油価格は現在100ドルから50ドルということで落ち着いて

いますが、原油価格のトレンドの見極めはエネルギーを選択する上では重要なポイント

です。

 

これが今後どのようになっていくのか。そして、これは供給面の変動ですが、新興国

の成長、シェール革命の持続性に加え、先ほど申し上げたEVの普及の程度といったも

のがどうなるのか。油価にも大きな影響を与えるので、こういったことをどのように見

極めるのか。

 

変化2として、再生可能エネルギーについては導入を進めていますが、海外では1キ

ロワットアワー当たり40円から10円台というものが出てきています。FIT(全量固定

価格買取制度)による支援をやっている中で、現在は再エネ投資が火力とか原子力を上

回るレベルまでになっていますが、こういった中でFIT支援後の自立化の支援をどの

Page 39: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

39  基調講演

ようにやっていくのか。あるいは再エネについても調整力の確保、あるいはネットワー

クの整備をどのようにやっていくのか。このようなことが課題になるので、そういった

ことをどのようにやっていくのか。

 

変化3として、自動車産業でEV化競争が激化しています。これは原油需給等にも大

きく影響を与えますし、供給構造にも変化を与える可能性があるので、どのように見極

めていくのか。

 

変化4として、原子力については脱原発を宣言している国がある一方で、新興国を含

めて原子力の導入・開発に関心のある国が依然として多くあります。世界的な動向をど

のようににらんでいくのか。あるいは、原子力への信頼回復についてどのように取り組

んでいくのかということが重要な課題となります。

 

変化5として、電力・ガスの全面自由化と再エネの拡大ということではどうなのか。

自由化の下で長期投資をどのようにやっていくのか、予見可能性をどう高めていくの

か。投資環境の整備が新しい課題として出てきていますが、こういったものにどのよう

に対処するのか。

Page 40: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

40

 

変化6としてはパリ協定、地球温暖化の話です。米国の離脱表明がありましたが、そ

の後もトレンドは変わらずに世界的には地球温暖化対策をしっかり進めようということ

です。来月にCOP23がありますが、こういった中での主要国のCO 

戦略はどうなっ

ていくのか。

 

変化7として、そもそものエネルギー需要はどうなっていくのか。欧米、日本はあま

り伸びない、停滞する状況ですが、その中で新興国は急激に伸びていく可能性がありま

す。そういった中で日本の産業の可能性、CO 

削減をどのようにやっていくのか。

 

変化8として、国ベースでいうと中国の動きをどのようにとらえていくのか。これは

サプライチェーンの問題、それからCO 

排出削減、エネルギー需要と供給の問題でも

大事なので、これの位置づけ、考えをどのようにとらえていくのかという問題がありま

す。

 

変化9として、そういった中で金融面でのエネルギーへのリスクマネー供給がどのよ

うに展開されるのかというのは重要な視点です。

 

変化10として、エネルギーについては地政学上の問題、課題がありますので、これを

Page 41: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

41  基調講演

どのように見ていくのか。

 

このような変化を踏まえた論点について検討作業を進めています。

 

エネルギー政策を考える上では、これらにとどまらずさまざまな要因をいわば連立方

程式を解くようなかたちで、それがどのように短期的、中長期的に変化していくのかと

いうことを見極めていくことが大事なので、それにトライしていますが、ただ、一つひ

とつの動きがダイナミックに変わった時にはその対応が難しい局面もあろうと思いま

す。原則、エネルギー政策の軸を大事にして、どれだけの柔軟性を持って対応できる

か、機動性を持って対応できるかということが非常に大事になります。そこで、政策の

原則を守りながら柔軟性をどのように確保して政策を展開するかということが重要にな

ってきます。

 

エネルギーミックスの進捗

 

図16(42ページ)が、2030年のエネルギーミックスの進捗です。

 

一番右側の進捗状況というグラフを見てください。それぞれエネルギーミックスの目

Page 42: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

42

2016年度

2010年度

0%

25%

50%

20102020

2030

2 3 420102020

2030

経済成長

1.7%/年

2010年

2030年度

2016年

徹底した

省エネ

2013年度

(ミックス

策定時

)

5 10 1520102020

2030

2010年度

2016年度

2030年度

0 5 10 1520102020

2030

2030年度

2016年度

2010年

0%

15%

30%

20102020

2030

2030年度

2016年度

2010年度

※2016年

度は「2018年

度までの日本の経済・エネルギー需給見通し」(

日本エネルギー経済研究所)を基に推計した値

※2030年

度の電力コストは系統安定化費用

0.1兆円を含む

出所)総合エネルギー統計等を基に資源エネルギー庁作成

取組指標 成果指標

震災前

2010年度)

震災後

(2013年

度)

足下

(2016年

度:推計

) ミック

ス目標

2030年度)

進捗状況

①ゼロエミ電源

比率

35%

再エネ

10%

原子力

25%

12%

再エネ

11%

原子力

1%

17%

再エネ

15%

原子力

2%

44%

再エネ

22~24%

原子力

22~20%

②省エネ

(原油換算の

最終エネルギー消費

)

3.8億kl

産業・業務:

2.4 家

庭:

0.6 運

輸:

0.8

3.6億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.5億kl

産業・業務:

2.2 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.3億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.4 運

輸:

0.6

③CO

2排出量

(エネルギー起源

) 11.4億

トン

12.4億トン

11.4億

トン

9.3億トン

④電力コスト

(燃料費+

FIT買

取費

)

5.0兆円

燃料費:

5.0兆円

(原油価格

84$/bbl)

FIT買取:

0兆円

9.8兆円

燃料費:

9.2兆円

(原油価格

110$/bbl) 数量要因+

1.6兆円

価格要因+

2.7兆円

FIT買

取:

0.6兆円

6.3兆円

燃料費:

4.2兆円

(原油価格

48$/bbl) 数量要因▲

0.9兆円

価格要因▲

4.1兆円

FIT買

取:

2.0兆円

9.2~9.5兆

燃料費:

5.3兆円

(原油価格

128$/bbl) FIT買

取:3.7~

4.0兆円

⑤エネルギー

自給率

(1次

エネルギー全体

) 20%

6%

8%

24%

30年ミック

スの進捗

~着実に進展。他

方で道半ば~

18

図16 

30年ミックスの進捗 〜着実に進展。他方で道半ば〜

2016年度

2010年度

0%

25%

50%

20102020

2030

2 3 420102020

2030

経済成長

1.7%/年

2010年

2030年度

2016年

徹底した

省エネ

2013年度

(ミックス

策定時

)

5 10 1520102020

2030

2010年度

2016年度

2030年度

0 5 10 1520102020

2030

2030年度

2016年度

2010年

0%

15%

30%

20102020

2030

2030年度

2016年度

2010年度

※2016年

度は「2018年

度までの日本の経済・エネルギー需給見通し」(

日本エネルギー経済研究所)を基に推計した値

※2030年

度の電力コストは系統安定化費用

0.1兆円を含む

出所)総合エネルギー統計等を基に資源エネルギー庁作成

取組指標 成果指標

震災前

2010年度)

震災後

(2013年

度)

足下

(2016年

度:推計

) ミック

ス目標

2030年度)

進捗状況

①ゼロエミ電源

比率

35%

再エネ

10%

原子力

25%

12%

再エネ

11%

原子力

1%

17%

再エネ

15%

原子力

2%

44%

再エネ

22~24%

原子力

22~20%

②省エネ

(原油換算の

最終エネルギー消費

)

3.8億kl

産業・業務:

2.4 家

庭:

0.6 運

輸:

0.8

3.6億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.5億kl

産業・業務:

2.2 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.3億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.4 運

輸:

0.6

③CO

2排出量

(エネルギー起源

) 11.4億

トン

12.4億トン

11.4億

トン

9.3億トン

④電力コスト

(燃料費+

FIT買

取費

)

5.0兆円

燃料費:

5.0兆円

(原油価格

84$/bbl)

FIT買取:

0兆円

9.8兆円

燃料費:

9.2兆円

(原油価格

110$/bbl) 数量要因+

1.6兆円

価格要因+

2.7兆円

FIT買

取:

0.6兆円

6.3兆円

燃料費:

4.2兆円

(原油価格

48$/bbl) 数量要因▲

0.9兆円

価格要因▲

4.1兆円

FIT買

取:

2.0兆円

9.2~9.5兆

燃料費:

5.3兆円

(原油価格

128$/bbl) FIT買

取:3.7~

4.0兆円

⑤エネルギー

自給率

(1次

エネルギー全体

) 20%

6%

8%

24%

30年ミック

スの進捗

~着実に進展。他

方で道半ば~

18

2016年度

2010年度

0%

25%

50%

20102020

2030

2 3 420102020

2030

経済成長

1.7%/年

2010年

2030年度

2016年

徹底した

省エネ

2013年度

(ミックス

策定時

)

5 10 1520102020

2030

2010年度

2016年度

2030年度

0 5 10 1520102020

2030

2030年度

2016年度

2010年

0%

15%

30%

20102020

2030

2030年度

2016年度

2010年度

※2016年

度は「2018年

度までの日本の経済・エネルギー需給見通し」(

日本エネルギー経済研究所)を基に推計した値

※2030年

度の電力コストは系統安定化費用

0.1兆円を含む

出所)総合エネルギー統計等を基に資源エネルギー庁作成

取組指標 成果指標

震災前

2010年度)

震災後

(2013年

度)

足下

(2016年

度:推計

) ミック

ス目標

2030年度)

進捗状況

①ゼロエミ電源

比率

35%

再エネ

10%

原子力

25%

12%

再エネ

11%

原子力

1%

17%

再エネ

15%

原子力

2%

44%

再エネ

22~24%

原子力

22~20%

②省エネ

(原油換算の

最終エネルギー消費

)

3.8億kl

産業・業務:

2.4 家

庭:

0.6 運

輸:

0.8

3.6億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.5億kl

産業・業務:

2.2 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.3億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.4 運

輸:

0.6

③CO

2排出量

(エネルギー起源

) 11.4億

トン

12.4億トン

11.4億

トン

9.3億トン

④電力コスト

(燃料費+

FIT買

取費

)

5.0兆円

燃料費:

5.0兆円

(原油価格

84$/bbl)

FIT買取:

0兆円

9.8兆円

燃料費:

9.2兆円

(原油価格

110$/bbl) 数量要因+

1.6兆円

価格要因+

2.7兆円

FIT買

取:

0.6兆円

6.3兆円

燃料費:

4.2兆円

(原油価格

48$/bbl) 数量要因▲

0.9兆円

価格要因▲

4.1兆円

FIT買

取:

2.0兆円

9.2~9.5兆

燃料費:

5.3兆円

(原油価格

128$/bbl) FIT買

取:3.7~

4.0兆円

⑤エネルギー

自給率

(1次

エネルギー全体

) 20%

6%

8%

24%

30年ミック

スの進捗

~着実に進展。他

方で道半ば~

18

2016年度

2010年度

0%

25%

50%

20102020

2030

2 3 420102020

2030

経済成長

1.7%/年

2010年

2030年度

2016年

徹底した

省エネ

2013年度

(ミックス

策定時

)

5 10 1520102020

2030

2010年度

2016年度

2030年度

0 5 10 1520102020

2030

2030年度

2016年度

2010年

0%

15%

30%

20102020

2030

2030年度

2016年度

2010年度

※2016年

度は「2018年

度までの日本の経済・エネルギー需給見通し」(

日本エネルギー経済研究所)を基に推計した値

※2030年

度の電力コストは系統安定化費用

0.1兆円を含む

出所)総合エネルギー統計等を基に資源エネルギー庁作成

取組指標 成果指標

震災前

2010年度)

震災後

(2013年

度)

足下

(2016年

度:推計

) ミック

ス目標

2030年度)

進捗状況

①ゼロエミ電源

比率

35%

再エネ

10%

原子力

25%

12%

再エネ

11%

原子力

1%

17%

再エネ

15%

原子力

2%

44%

再エネ

22~24%

原子力

22~20%

②省エネ

(原油換算の

最終エネルギー消費

)

3.8億kl

産業・業務:

2.4 家

庭:

0.6 運

輸:

0.8

3.6億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.5億kl

産業・業務:

2.2 家

庭:

0.5 運

輸:

0.8

3.3億kl

産業・業務:

2.3 家

庭:

0.4 運

輸:

0.6

③CO

2排出量

(エネルギー起源

) 11.4億

トン

12.4億トン

11.4億

トン

9.3億トン

④電力コスト

(燃料費+

FIT買

取費

)

5.0兆円

燃料費:

5.0兆円

(原油価格

84$/bbl)

FIT買取:

0兆円

9.8兆円

燃料費:

9.2兆円

(原油価格

110$/bbl) 数量要因+

1.6兆円

価格要因+

2.7兆円

FIT買

取:

0.6兆円

6.3兆円

燃料費:

4.2兆円

(原油価格

48$/bbl) 数量要因▲

0.9兆円

価格要因▲

4.1兆円

FIT買

取:

2.0兆円

9.2~9.5兆

燃料費:

5.3兆円

(原油価格

128$/bbl) FIT買

取:3.7~

4.0兆円

⑤エネルギー

自給率

(1次

エネルギー全体

) 20%

6%

8%

24%

30年ミック

スの進捗

~着実に進展。他

方で道半ば~

18

Page 43: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

43  基調講演

標というものがありますが、実績(●○)が目標である点線の軌道にようやく乗り出して

いるという状況です。

 

ゼロエミッション電源比率については、再エネが少しずつ増えているのと、原子力発

電所の再稼働が少しずつ始まっていることでようやく軌道に乗り出しています。

 

省エネは産業部門を中心に引き続き進んでいるので、これを家庭・運輸にどのように

展開していくのかが課題です。

 

CO 

の排出量もようやく軌道に乗り始めて下がり出しています。

 

電力コストは、今いったん落ち着いているけれど、今後再生可能エネルギーの賦課金

が増えてきますので、これをどのようにうまく抑制的にできるのかです。

 

エネルギー自給率もようやく軌道に乗り出して8%まで来ていますが、これを24%ま

でどのように持ち上げていくのか。

 

まだまだ緒に就いたばかりで道半ばなので、このエネルギーミックスの実現に向けた

課題の洗い出しをどうやっていくのかということが重要になります。

Page 44: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

44

 

エネルギーミックス実現に向けた課題─再エネの課題─

 

エネルギーミックスの実現に向けては、再エネ、省エネ、原子力、資源・火力、それ

ぞれに課題があります。再エネについては、どのようにしたら主要な電源にできるかと

いうことが課題です。省エネは引き続き重要です。原子力は再稼働、重要なベースロー

ド電源としての位置づけですが、最大の課題は、やはり社会的信頼をどうやって回復し

ていくのかです。化石燃料はやはりエネルギーセキュリティの最後のとりでとして重要

なので、その確保・強化のための取り組みをどうするのか。エネルギー源ごとの課題と

してこのようなものがあります。

 

まず、再エネの課題について説明します。

 

図17は、FIT(全量固定価格買取制度)導入後の賦課金の推移です。2017年と

いう右から2番目の棒グラフを見てください。現在、賦課金は年度ベースで2兆円を超

えた状態になっています。買取費用は2・7兆円ですが、そのうち賦課金として各家庭

でご負担いただいているのは今年度で2兆円を超える見込みまで来ています。

 

皆さん、ご自宅で電気料金の明細書を見ていただくと、いま賦課金が1割以上を占め

Page 45: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

45  基調講演

ています。要は、電気料金のうちの10%が

賦課金ということで、各家庭、消費者の皆

さんにご負担いただいています。再エネの

普及、導入は大事ですが、この負担をどの

ようにしていくのか。導入と負担のバラン

スをどのようにとっていくのか。賦課金は

まだしばらく増加してしまいますが、導入

と負担のバランスをどのようにとっていく

のかということは非常に大事で、これはや

はり重要な課題です。

 

再エネを主力電源とするにあたっての3

つの課題を整理したのが、図18(46ペー

ジ)です。

 

コストについては、日本はまだまだ高い

国民負担を踏まえた効率的な導入

エネルギーミックスの検討においては、電力コストを現状より引き下げた上で、再生可能エネルギー拡大のために投ずる費用(買取費用)を3.7~4.0兆円と設定しているところ。

固定価格買取制度の開始後、既に3年間で買取費用は約1.8兆円(賦課金は約1.3兆円)に達しており、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図るべく、コスト効率的な導入拡大が必要。

電力コストを現状 よりも引き下げる

2013年度 2030年度

���買取 費用 〈再エネ〉

燃料費 〈火力・原子力〉

�� �定� 費用

5.3 兆円 程度 9.2

兆円

0.5 兆円

3.7 ~4.0 兆円 程度

0.1兆円 程度

再エネ 拡大のために 投ずる費用

9.7 兆円

原�再�� 再エネ 火力�効率� による燃料費�減

(注) 再エネの導入に伴って生じるコストは買取費用を計上している。 これは回避可能費用も含んでいるが、その分燃料費は小さくなっている。

エネルギーミックスにお�る 電力コストの���

出典:「長期エネルギー需給見通し関連資料」より

固定価格買取制度導入後の賦課金�の��

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2030年度

買取費用

(賦課金)

約4800億円

約9000億円

約2兆3000億円

(約3300億円)

(約6500億円)

(約1兆8000億円)

約1兆8400億円

(約1兆3200億円)

賦課金 単価

0.22 円/kWh

1.58 円/kWh

0.35 円/kWh

0.75 円/kWh

2.25 円/kWh

エネルギーミックス における

FIT買取費用 3.7兆円~4.0兆円

(91円/月) (195円/月) (410円/月) (585円/月)

約2兆7045億円

(約2兆1404億円)

(686円/月)

2.64 円/kWh

(57円/月) 標準家庭 月額負担額

20

図17 固定価格買取制度導入後の賦課金等の推移

Page 46: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

46

ので、日本の高コスト構造をどのように是正してい

くかです。調整力については、火力に依存していま

すが、先々は蓄電池をうまく活用して、火力だけに

依存するというかたちは回避したいけれど、蓄電池

のコストが高いので、これをどのように下げていく

ことができるのか。もう一つ、再エネを語る時に大

事なのはネットワーク(NW)です。送電網の整備

が並行して重要ですが、これの負担、再設計、さら

には分散型のネットワークの導入に向けた仕組みを

どのようにつくっていくのか。こういったことを総

合的に解決しなければいけません。

 

図19は、欧州と日本の太陽光発電コストの推移

と、日本の高コスト構造の是正をどのように図って

いくのかを示しています。

再エネを主力電源とするにあたっての3つの課題

���� ���� ���

��

�� 海外では 大幅に下落

調整を 火力に依存

火力・原子力の立地に応じて構築

日本の高コスト是正

調整電源たる火力の維持 + 蓄電池コストの削減

再エネに応じた既存NWの再設計 + 分散型NWの導入

参照例 “Clean energy‘s dirty secret - Wind and solar power disrupting electricity systems" The Economist, Feb 25th 2017

21 図18 再エネを主力電源とするにあたっての3つの課題

Page 47: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

47  基調講演

 

また、再エネの導入拡大に当たっては蓄電池コス

トの抜本的低減も必要です。調整力としての火力の

維持というのは大事ですが、将来、調整力を蓄電池

で担うとして、家庭用の電力料金あるいは産業用の

電力料金を現状に維持するためには、蓄電池のコス

トを今の100分の1、1000分の1まで持って

いかないといけないということを示したものが図20

(48ページ)です。相当にハードルが高いというこ

とです。これをどこまで実現していけるのか、その

見通しはどうかということが大事になってきます。

 

次に、再エネの進展に応じた電力ネットワーク

(NW)の構造改革について説明します。図21(49

ページ)に整理していますが、これまで火力、原子

力を中心にして既存の電気事業者にお願いしていた

課題1:日本の再エネの高コスト構造の早期是正

2010年 2016年

40円 10円

40円 20円

(出所)Bloomberg New Energy Financeデータ等より資源エネルギー庁推計

欧州と日本の太陽光発電コストの推移 [円/kWh]

総コスト 総コスト※ 設備 工事 運転維持費

12円 5円 3円

6円 2円 2円 ○FIT高価格と 競争の不在 ○多段階の 流通構造

○多段階の 下請け構造 ○平地の少ない 地理条件

○専門企業の 未成熟 ○ビッグデータ 未活用

〇欧州や中国が先行。我が国の再エネ産業の競争力をどう強化するか?

※欧州・日本の総コストは、世界平均の太陽光発電コスト

22 図19 課題1:日本の再エネの高コスト構造の早期是正

Page 48: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

48

ネットワークは、再エネが入ってきた時にはネ

ットワークの再設計が必要になります。特に九

州、北海道など供給適地を中心にネットワークを

どう整備していくのか。その場合の負担をどのよ

うに賄っていくのか。将来、分散型の再エネ、蓄

電池、需要地近接という時には分散型ネットワー

クが必要になってきますが、そういったところへ

の投資をどういうかたちで負担していくのかとい

うことが課題になります。

 

エネルギーミックス実現に向けた課題

 

─原子力の課題─

 

次に、原子力の課題について説明します。

 

図22(50ページ)が、わが国における原子力発

課題2:調整火力維持+蓄電池コストの抜本的低減

(出所)資源エネルギー庁試算

〇蓄電池の革新をどう加速するか?我が国が世界をリードする条件は?

�� ��

�電

��

再エネ 再エネ

火力 蓄電池

現在の コスト

家庭用 パリティ

産業用 パリティ

CO2フリー CO2排出

※蓄電池は、バックアップ無しでの成立を前提に、1日の需要全体の3日分の容量が必要と仮定。パリティは、人件費・材料費を考慮すると成立しない可能性あり (上記記載の蓄電池コストは電池パックのコストを表し、システム全体では5~10倍のコストとなると仮定)。調整コストには抑制費用・系統費用を含む。 なお、ここでの「パリティ」は、系統を通してバックアップ火力も活用した分散型再エネが、系統電力と同コストとなる「グリッドパリティ」等の定義とは異なる点に留意。

20円

130円

150円

7円 7円

18円 8円

25円

+ + + + +

15円 = = =

蓄電池コスト: 4万円/kWh

100分 の1 1000分

の1

> >

(30年目標) (30年目標)

単位:円/kWh

蓄電池コスト: 約400円/kWh 蓄電池コスト:

約40円/kWh LIBのセル価格 (エネ庁ヒアリング)

NASはシステムで 4万円/kWh程度 (2012「蓄電池戦略」

(経産省))

23 図20 課題2:調整火力維持+蓄電池コストの抜本的低減

Page 49: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

49  基調講演

電所の現状です。

 

いま全国で再稼働しているのは5基です。原子

炉設置変更許可合格証が規制委員会から出ている

ものは7基ありますし、現在、審査書案ができて

パブリックコメントを行っているのが東京電力の

柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の2基がありま

す。これの許可が近々に出るということであれば

原子炉設置変更許可済のものが9基になります。

 

一方で、まだ審査中のものが14基あります。B

WRという沸騰水型のものが中心ですが、これも

徐々に審査が進んでいるので、時間はある程度か

かっているけれど、原子炉設置変更許可が出てき

て、一定の時間をかけながら再稼働につながって

いくことが期待されます。原子力発電所が動き出

課題3:再エネの進展に応じた電力NWの構造改革

〇大規模NWの再設計と分散NWへの投資をどう並行して進めるか?

火力・原子力 再エネ +火力

分散型再エネ +蓄電池

旧一般 電気事業者 (10社)

多様な プレーヤー

需要地域 臨海部

供給適地中心 (北海道・九州等)

需要地 近接

NWの 再設計

既存NWの 更新投資

分散NW への投資

旧一般 電気事業者 (10社)

今まで 現状 将来

24 図21 課題3:再エネの進展に応じた電力NWの構造改革

課題3:再エネの進展に応じた電力NWの構造改革

〇大規模NWの再設計と分散NWへの投資をどう並行して進めるか?

火力・原子力 再エネ +火力

分散型再エネ +蓄電池

旧一般 電気事業者 (10社)

多様な プレーヤー

需要地域 臨海部

供給適地中心 (北海道・九州等)

需要地 近接

NWの 再設計

既存NWの 更新投資

分散NW への投資

旧一般 電気事業者 (10社)

今まで 現状 将来

24

課題3:再エネの進展に応じた電力NWの構造改革

〇大規模NWの再設計と分散NWへの投資をどう並行して進めるか?

火力・原子力 再エネ +火力

分散型再エネ +蓄電池

旧一般 電気事業者 (10社)

多様な プレーヤー

需要地域 臨海部

供給適地中心 (北海道・九州等)

需要地 近接

NWの 再設計

既存NWの 更新投資

分散NW への投資

旧一般 電気事業者 (10社)

今まで 現状 将来

24

課題3:再エネの進展に応じた電力NWの構造改革

〇大規模NWの再設計と分散NWへの投資をどう並行して進めるか?

火力・原子力 再エネ +火力

分散型再エネ +蓄電池

旧一般 電気事業者 (10社)

多様な プレーヤー

需要地域 臨海部

供給適地中心 (北海道・九州等)

需要地 近接

NWの 再設計

既存NWの 更新投資

分散NW への投資

旧一般 電気事業者 (10社)

今まで 現状 将来

24

課題3:再エネの進展に応じた電力NWの構造改革

〇大規模NWの再設計と分散NWへの投資をどう並行して進めるか?

火力・原子力 再エネ +火力

分散型再エネ +蓄電池

旧一般 電気事業者 (10社)

多様な プレーヤー

需要地域 臨海部

供給適地中心 (北海道・九州等)

需要地 近接

NWの 再設計

既存NWの 更新投資

分散NW への投資

旧一般 電気事業者 (10社)

今まで 現状 将来

24

Page 50: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

50

15基

廃炉決定済

東京電力㈱

福島第一原子力発電所

北海道電力㈱

泊発電所

東北電力㈱

女川原子力発電所

中部電力㈱

浜岡原子力発電所

日本原子力発電㈱

東海・東海第二発電所

東京電力㈱

柏崎刈羽原子力発電所

九州電力㈱

川内原子力発電所

中国電力㈱

島根原子力発電所

北陸電力㈱

志賀原子力発電所

日本原子力発電㈱

敦賀発電所

関西電力㈱

高浜発電所

関西電力㈱

美浜発電所

(H29.1.18)

東北電力㈱

東通原子力発電所

東京電力㈱

東通原子力発電所

九州電力㈱

玄海原子力発電所

関西電力㈱

大飯発電所

(H27.8.11) (H

27.10.15)

東京電力㈱

福島第二原子力発電所

電源開発㈱

大間発電所

110 ��

110 ��

110 �2

110 ��

138 �2

52 ��

83 ��

139

110 78

78 78

78 46

17

84 84

136 2�

136 2�

58 2�

58 26

91 7

110 �2

110 26

110 2�

110 2�

110 27

89 ��

56 �6

137

118 ��

118 �7

83 ��

54 2�

121 ��

36

34 50

56

46

116 ��

82 2�

118 2�

118 2�

110 ��

110 ��

83 22

110 ��

138

118 2�

118 2�

83 �2

83 ��

87 �2

87 �2

89 ��

114 2�

(H25.12.25)

(H28.4.20)

(H29.5.17)

(H29.5.24)

(H27.11.5)

(H26.6.10)

(H25.9.27)

(H26.5.20)

(H25.7.8)

(H28.10.5)

(H26.8.12)

(H26.12.16)

(H26.2.14)

(H25.12.27)

(H27.6.16)

5基

稼働中

( ) 内は原子炉を起動した日

7基

原子炉設置

変更許可済

( ) 内は許可日

14基

新規制基準への

適合性審査中

( ) 内は申請日

19基

適合性審査

未申請

110 2�

PWR

BW

R

ABW

R

出力

(万kW

) 年数

※平成29年

9月20日

時点

四国電力㈱

伊方発電所

57 ��

57

(H28.8.12)

89 22

(H29.6.6)

我が国における原子力発電所の現状

25

図22 

我が国における原子力発電所の現状

15基

廃炉決定済

東京電力㈱

福島第一原子力発電所

北海道電力㈱

泊発電所

東北電力㈱

女川原子力発電所

中部電力㈱

浜岡原子力発電所

日本原子力発電㈱

東海・東海第二発電所

東京電力㈱

柏崎刈羽原子力発電所

九州電力㈱

川内原子力発電所

中国電力㈱

島根原子力発電所

北陸電力㈱

志賀原子力発電所

日本原子力発電㈱

敦賀発電所

関西電力㈱

高浜発電所

関西電力㈱

美浜発電所

(H29.1.18)

東北電力㈱

東通原子力発電所

東京電力㈱

東通原子力発電所

九州電力㈱

玄海原子力発電所

関西電力㈱

大飯発電所

(H27.8.11) (H

27.10.15)

東京電力㈱

福島第二原子力発電所

電源開発㈱

大間発電所

110 ��

110 ��

110 �2

110 ��

138 �2

52 ��

83 ��

139

110 78

78 78

78 46

17

84 84

136 2�

136 2�

58 2�

58 26

91 7

110 �2

110 26

110 2�

110 2�

110 27

89 ��

56 �6

137

118 ��

118 �7

83 ��

54 2�

121 ��

36

34 50

56

46

116 ��

82 2�

118 2�

118 2�

110 ��

110 ��

83 22

110 ��

138

118 2�

118 2�

83 �2

83 ��

87 �2

87 �2

89 ��

114 2�

(H25.12.25)

(H28.4.20)

(H29.5.17)

(H29.5.24)

(H27.11.5)

(H26.6.10)

(H25.9.27)

(H26.5.20)

(H25.7.8)

(H28.10.5)

(H26.8.12)

(H26.12.16)

(H26.2.14)

(H25.12.27)

(H27.6.16)

5基

稼働中

( ) 内は原子炉を起動した日

7基

原子炉設置

変更許可済

( ) 内は許可日

14基

新規制基準への

適合性審査中

( ) 内は申請日

19基

適合性審査

未申請

110 2�

PWR

BW

R

ABW

R

出力

(万kW

) 年数

※平成29年

9月20日

時点

四国電力㈱

伊方発電所

57 ��

57

(H28.8.12)

89 22

(H29.6.6)

我が国における原子力発電所の現状

25

15基

廃炉決定済

東京電力㈱

福島第一原子力発電所

北海道電力㈱

泊発電所

東北電力㈱

女川原子力発電所

中部電力㈱

浜岡原子力発電所

日本原子力発電㈱

東海・東海第二発電所

東京電力㈱

柏崎刈羽原子力発電所

九州電力㈱

川内原子力発電所

中国電力㈱

島根原子力発電所

北陸電力㈱

志賀原子力発電所

日本原子力発電㈱

敦賀発電所

関西電力㈱

高浜発電所

関西電力㈱

美浜発電所

(H29.1.18)

東北電力㈱

東通原子力発電所

東京電力㈱

東通原子力発電所

九州電力㈱

玄海原子力発電所

関西電力㈱

大飯発電所

(H27.8.11) (H

27.10.15)

東京電力㈱

福島第二原子力発電所

電源開発㈱

大間発電所

110 ��

110 ��

110 �2

110 ��

138 �2

52 ��

83 ��

139

110 78

78 78

78 46

17

84 84

136 2�

136 2�

58 2�

58 26

91 7

110 �2

110 26

110 2�

110 2�

110 27

89 ��

56 �6

137

118 ��

118 �7

83 ��

54 2�

121 ��

36

34 50

56

46

116 ��

82 2�

118 2�

118 2�

110 ��

110 ��

83 22

110 ��

138

118 2�

118 2�

83 �2

83 ��

87 �2

87 �2

89 ��

114 2�

(H25.12.25)

(H28.4.20)

(H29.5.17)

(H29.5.24)

(H27.11.5)

(H26.6.10)

(H25.9.27)

(H26.5.20)

(H25.7.8)

(H28.10.5)

(H26.8.12)

(H26.12.16)

(H26.2.14)

(H25.12.27)

(H27.6.16)

5基

稼働中

( ) 内は原子炉を起動した日

7基

原子炉設置

変更許可済

( ) 内は許可日

14基

新規制基準への

適合性審査中

( ) 内は申請日

19基

適合性審査

未申請

110 2�

PWR

BW

R

ABW

R

出力

(万kW

) 年数

※平成29年

9月20日

時点

四国電力㈱

伊方発電所

57 ��

57

(H28.8.12)

89 22

(H29.6.6)

我が国における原子力発電所の現状

25

Page 51: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

51  基調講演

すと、総体として電力料金のコストの削減につながる、それからCO 

の排出削減につ

ながるというメリットがあります。

 

いま説明したことをもう少し整理したのが図23(52ページ)です。

 

今は、5基は再稼働、7基は許可済みで、14基が審査中です。2030年の電力構成

の中に占める割合で言うと、これが徐々に進めば原子力の比率が一定規模まで戻ってい

くということです。再稼働すれば燃料コスト、CO 

は図23に記載のとおりそれぞれ削

減につながります。

 

最大の課題は社会的信頼の回復で、事故収束・福島復興、安全性の一層の向上、地域

周辺も含めた防災対策の強化が大事になってきます。バックエンドとして出てくる放射

性廃棄物の最終処分、それから使用済燃料の当面の中間貯蔵といった対応を総合的・複

合的に進めていくことが大事になってきます。

 

図24(53ページ)は、原発再稼働と社会的信頼の回復についての世論調査です。

 

これは各新聞社が実施したここ5年ぐらいの世論調査の動きです。再稼働についてど

のように考えますか、イエスか、ノーかと聞くと、賛成の方が20%〜40%、反対の方が

Page 52: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

52

原子

力 ~

安全

最優

先で

の再

稼動

が、CO

2削減

と再エ

ネ負

担増

の軽

減に

<事

故収

束・福

島復

興>

•福島事故を真摯に反省

•廃炉・汚染水と福

島復興につ

いて、国

も前面に出る方針

<安

全性

の向

上>

•世界で最も厳しい水準の新

規制基準を策定。規

制委員

会による厳格な審査

•継続的・自律的な安全性向上

のための体制構築

<防

災対

策の

強化

•政府・関係機関が連携し、避

難計画の策定をバックア

ップ

•実動部隊など関係組織や事業

者が連

携し、防

災対策を強化

<最

終処

分・中

間貯

蔵>

•国が前

面に立

って、最終処分に

関する科学的特性マップを提

示、国民理解を醸成

•官民が連携し、使

用済燃料

の中間貯蔵能力拡大に向け

た取組を強化

最大

の課

題:

社会

的信

頼の

回復

•安全最優先の再稼動や廃炉を着実に実施するため、高

度専門人材の確保、技

術開発、投

資の促

進が必要。

技術

・人材

の確

2030年度

原発

比率

20~22%

稼働

の影

1基稼

働:

料コス

ト →

350~630億

円/年

削減

CO2

→ 260~

490万ト

ン/年

削減

※ (日本の年間

CO2排出量:約

11億トン)

100万kW級原発

(稼働率

80%)が

LNGまたは石油火力を代替した場合

(2016年度推計値による

)

•5基

:安

全性

の確

保を

大前

提に

再稼

•7基

:設

置変

更許

可を取得

14基:

現在

、新規

制基

準へ

の適

合性

審査

26 図23 

原子力 〜安全最優先での再稼働が、CO2 削減と再エネ負担増の軽減に〜

Page 53: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

53  基調講演

原発再稼働と社

会的信頼の回復

��

��

(2012年

)

反対

:50~60%

2013年

※産経は

2015年以降、

調査実績なし

賛成

:20~40%

〇原子力に対する社会の見方は、国

ごとにどう違

っているか?

20%

30%

40%

50%

60%

70%

日経

朝日

読売

毎日

産経

2014年

2015

2016年

※日経は

2016年以降、

調査実績なし

2017年

27 図24 

原発再稼働と社会的信頼の回復

Page 54: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

54

50%〜60%ということで、賛成1、反対2という1対2の割合はあまり変わっていませ

ん。その意味では再稼働に対する慎重論が国民の皆さんの間ではまだ多いということで

す。これを再稼働の中での安全実績を積み重ねながら、どのようにしてさらなる信頼向

上に向けて取り組んでいくか。このことが大事になってきます。

 

私自身、原子力発電所の再稼働に関連しての理解活動ということで、各地域の自治体

に足を運んで住民説明会など、それこそ前線に立ってやらせていただいたことが何度も

あります。最初の再稼働の時の川内原子力発電所、鹿児島で行われた住民説明会は、5

〜6回やりましたが、この時の雰囲気は本当に厳しいものでした。反対の方、慎重派の

方が多く集まっている中での、いわば怒号が飛び交う中で説明会をさせていただくこと

が当初は続きました。

 

最近は、許可が出たものでいうと玄海の3、4号機、大飯の3、4号機の住民説明会

がそれぞれ、佐賀、福井、京都でも開かれていますが、最近の住民説明会では、いわば

荒れた状態の中での説明会という雰囲気ではなくなってきています。静かというか、落

ち着いた中で説明ができるような環境にまで変わってきていますが、ただし、国民総体

Page 55: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

55  基調講演

としての慎重論がまだある中で、しっかりとした対応が必要となります。

 

図25(56ページ)は、原子力発電コストの現状です。

 

核燃料サイクル費用、事故リスク対応費用はコスト試算の中にも入れ込んでいます。

最近の対策費用の増加部分を含めても単価への影響は限定的であることをお示ししてい

ます。

 

核燃料サイクルについては、サイクルを推進することが今の基本方針です。特に軽水

炉サイクル、現在の通常の原子炉のサイクルですが、これについては六ヶ所の再処理工

場の竣工も含め、しっかりと進めていくことを基本方針にしています(57ページの図

26)。

 

特に原子力発電所の再稼働が進む、あるいは廃炉が進むと、その中で使用済燃料対策

が大事になります。これについては国と電気事業者の間での協議会をつくり、アクショ

ンプランを策定し、その中で電気事業者に計画をつくっていただき、使用済燃料の保管

能力の拡大に取り組んでいただいています。特に乾式貯蔵(58ページの図27)といっ

て、これまでのプールで使用済燃料を貯蔵するだけではなく、乾式のかたちで頑丈な容

Page 56: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

56

原子力発電コストの現状

〇福島事故費用の増大や安全対策強化はコスト増加要因。他方で、複数の炉

で長期間にわたり負

担するため、発

電単価への影響は限定的。

〇海外案件のコスト増大について、

OEC

Dは初号機要因などと指

2011 年

2015 年

足下

の動き

資本費等

核燃料

サイクル費用

事故リスク

対応費用

8.9円~

10.1円~

5.8円

1.4円

0.5円~

7.0円

1.5円

0.3円~

+0.1円

+

0.1~0.3円

再処理関係:

12.2兆円

ウラン燃料単価:

0.8円

1F事故:

5兆円

2000炉

年で積立

資本費

4400億円

減価償却方式で試算

資本費

5000億円

一括計上方式で試算

再処理関係:

12.6兆円

ウラン燃料単価:

0.9円

再処理関係:

13.9兆円

1F事故:

11兆円

4000炉

年で積立

1F事故:

21.5兆円

4000炉

年で積立

○海外では建設費1兆円超

の例も

OECD

分析)

建設実績がない新型炉

計画・工程管理の甘さ

※その他契約形態による影響もあり

○日本は上記とは異なる状況

※計にはその他政策経費含

“Nuclear N

ew Build”

(OECD/N

EA 2015)

28 図25 

原子力発電コストの現状

Page 57: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

57  基調講演

我が国は、資

源の有効利用、高

レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使

用済燃料を再処理し、回

収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針

としている。

核燃料サイクル全体の方針

安全確保を大前提に、

プルサーマルの推進、

六ヶ所

再処理工場の竣

工、M

OX燃料加工工

場の建設、むつ中間貯

蔵施設の竣工等を進め

る。また、・・・(

略)・・・、

プルサーマルの推進等に

よりプルトニウムの適切

な管理と利

用を行う。

軽水炉サイクル

速炉や、加

速器を用いた核種変換など、放

射性廃棄物中に

長期に残留する放射線量を少なくし、放

射性廃棄物の処理・処

分の安全性を高める技術等の開発を国際的なネットワークを活

用しつつ推進する。

米国や仏国等と国

際協力を進めつつ、高

速炉等の研究開発に

取り組

む。

加速器を用いた核種変換など

高速炉サイクル

もんじゅに

ついては、・・・(

略)・・・これ

までの取組の反省や検

証を踏まえ、あらゆる面において徹底的な改革を行い、・・・

(略)・・・実

施体制の再整備や新規制基準への対応など克

服しなければならない課題について、国

の責任の下、十

分な対

応を進める。

もんじゅ

核燃料サイクルのエネルギー基本計画における位置付け

30

図26 

核燃料サイクルのエネルギー基本計画における位置付け

Page 58: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

58

器に入れて保管するものを促進しようというこ

とです。これで安定的・中期的に保管できるよ

うな環境を整えていくことに現在取り組んでい

ます。

 

もんじゅ・高速炉を巡る議論につきまして

は、もんじゅについては昨年(2016年)末

に廃炉にすることを政府としても決めました。

しかし、その知見も生かして高速炉の開発には

引き続きしっかり取り組んでいくということで

現在、高速炉開発のための戦略を策定中です。

 

続いて、よく核のゴミと言われますが、高レ

ベル放射性廃棄物の最終処分の問題について説

明します。

 

これについては今年(2017年)の7月

日本原子力発電(株)東海第二発電所での乾式貯蔵

乾式貯蔵施設の例

原子力発電の使用済燃料は全国の各サイトで約15,000トンを貯蔵。再稼働や廃炉の進展、六ヶ所

再処理工場やむつ中間貯蔵施設の竣工の遅れ等により、貯蔵場所がかなり逼迫している原発が存

在。使用済燃料対策は喫緊の課題。

平成27年10月の最終処分関係閣僚会議において、「使用済燃料対策に関するアクションプラン」を

策定。本プランに基づいて、乾式貯蔵の導入促進など使用済燃料の貯蔵能力の拡大に向けた取組

を加速する。

平成29年10月24日に、政府と事業者による協議会(第3回)を実施。同協議会において、世耕経

済産業大臣から原子力事業者に対し、①使用済核燃料対策の一層の強化とともに、②個社の対応

のみならず、各社がより連携・協力して取組を加速するよう要請。

(1)政府と事業者の協議会を設置(平成27年11月)

→ 第1回:H27.11.20、第2回:H28.10.20、第3回:H29.10.24

(2)「使用済燃料対策推進計画」の策定を要請

→ 上記協議会において策定し毎年フォローアップ

(3)交付金制度の見直しによる自治体支援の拡充(乾式貯蔵

施設への重点支援)

→ 平成28年4月に見直した交付規則を施行 等

使用済燃料対策に関するアクションプランと対応

使用済燃料対策について 31

図27 乾式貯蔵施設の例

Page 59: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

59  基調講演

に地盤の科学的特性を示したマップを国から提示させていただきました。3年半ほど議

論に議論を重ね、ようやくこのマップを提示させていただいています。これですぐに最

終処分の場所を決めるということではなく、ここから理解活動を進めて、複数の地域に

国から申し入れをさせていただくことにしています。それもスケジュールありきではな

く、しっかりとした理解活動を進めて取り組んでいきます。

 

科学的特性マップの概要については、図28(60ページ)に示しています。科学的特性

マップは全国を四つの色塗りにしています。

 

図29(61ページ)の日本地図が、科学的特性マップの全体像です。日本に占める面積

割合として、グリーンは科学的に安定していて好ましい特性が確認できる可能性の高い

地域ですが、これが全体の35%。特に濃いグリーン、沿岸部ですが、これは30%です。

関係する自治体はそれぞれ900自治体になります。ここがその地域の含まれる自治体

となります。これから継続して丁寧な意見交換会、説明を行っていきます。

 

図30(62ページ)は、各国の原子力利用に関するスタンスです。左下の将来的に使わ

ないと宣言している国もありますが、今後もまだまだ利用したいという国もあります

Page 60: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

60

地下

深部

の長

期安

定性

等の

観点

(オレンジ)

将来

の掘

削可

能性

の観

(シル

バー)

輸送

面でも好

ましい

(グリーン沿

岸部

好ましい�性

が確認

できる

能性

が相

対的に高い

(グリーン)

安全

な地

層処

分が

成立する

と確

認できる可

能性

が相対

的に低

安全

な地

層処

分が

成立する

と確

認できる可

能性

が相対

的に高

火山

の近

傍(中

心か

ら半

径15km

活断

層の

近傍

(断

層長

×0.0

1幅

隆起

・侵

食が

大きい範囲

温が

高い範

など

田・ガス田

、炭

田の

ある範

<要件・基準>

海岸

からの

距離

が短

い範囲

(20km

目安

(沿

岸海

底下

や島

嶼部を含

む)

好まし�ない�

性があると�定

�れる

一つでも

該当

する

場合

該当

する

場合

一つでも

該当

する

場合

いずれ

も該

当しない場

球科

学的

・技

術的

観点

から、一

律・客

観的

な要

件・基

準に基

づき、日

本全

国の地

��

性を��

分(�

)で�

す。

会科

学的

観点

(土

地確

保の

容易

性など)は

要件

・基

準に含

めない。

「科学的特性マップ」の概要

34

図28 

「科学的特性マップ」の概要

Page 61: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

61  基調講演

図29 科学的特性マップ

○日本全国に占める面積割合 オレンジ :約30% シルバー :約 5% グリーン :約35% グリーン沿岸部 (濃いグリーン) :約30%

○地域特性区分に一部でも含まれる自治体数 オレンジ :約1,000 シルバー :約 300 グリーン :約 900 グリーン沿岸部 (濃いグリーン) :約 900

○2017年7月28日 経済産業省HPで公表

○日本全国の地域特性を4区分(色)で示す

注記:「科学的特性マップ」本体は、1/200万の縮尺で作成(約90cm×約120cm)

地層処分に関する「科学的特性マップ」の公表 36

Page 62: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

62

〇各国のエネルギー政策上、原

子力はどう位

置づけられているのか。今

後の各国の原子力戦略は?

��

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���

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���

��

・米国

[99] ・フラ

ンス

[58] ・中国

[37]

・ロシア

[35]

・インド

[22]

・カナダ

[19]

・ウクライナ

[15] ・英国

[15]

・スウェーデン

[8]

・チェコ

[6] ・パキスタン

[5] ・フィン

ランド

[4] ・ハンガリー

[4] ・アルゼンチン

[3] ・南アフリカ

[2] ・ブラジル

[2] ・ブルガリア

[2] ・メキシコ [2]

・オランダ

[1]

・トルコ

・ベラルーシ

・チリ

・エジプト

・インドネシア

・イスラエル

・ヨルダン

・カザフスタン

・マレーシア

・ポーランド

・サウジアラビア

・タイ

・バングラディシュ

・UAE

・韓国

[24](2017年

方針表明/

2079年頃閉鎖見込)

・ドイツ

[8] (2011年

法制化/

2022年閉鎖)

・ベルギー

[7](

2003年法制化/

2025年閉鎖)

・台湾

[6] (

2017年法制化/

2025年閉鎖)

・スイス

[5] (

2017年法制化/-)

・イタリア

(1988年

閣議決定/

1990年閉鎖済)

・オーストリア

(1978年

法制化)

・オーストラリア

(1998年

法制化)

※(脱原発決定年/脱原発予定年)

スイスは運転期間の制限を設けず

出所:W

orld Nuclear Association

ホームページ

(2017/8/1)より資エ庁作成

(注)主な国を記載

[]は運転基数

[]は運転基数

・スタンスを表明していない国も多数存在

各国の原子力利用に関するスタンス

38

図30 

各国の原子力利用に関するスタンス

〇各国のエネルギー政策上、原

子力はどう位

置づけられているのか。今

後の各国の原子力戦略は?

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・カナダ

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・ウクライナ

[15] ・英国

[15]

・スウェーデン

[8]

・チェコ

[6] ・パキスタン

[5] ・フィン

ランド

[4] ・ハンガリー

[4] ・アルゼンチン

[3] ・南アフリカ

[2] ・ブラジル

[2] ・ブルガリア

[2] ・メキシコ [2]

・オランダ

[1]

・トルコ

・ベラルーシ

・チリ

・エジプト

・インドネシア

・イスラエル

・ヨルダン

・カザフスタン

・マレーシア

・ポーランド

・サウジアラビア

・タイ

・バングラディシュ

・UAE

・韓国

[24](2017年

方針表明/

2079年頃閉鎖見込)

・ドイツ

[8] (2011年

法制化/

2022年閉鎖)

・ベルギー

[7](

2003年法制化/

2025年閉鎖)

・台湾

[6] (

2017年法制化/

2025年閉鎖)

・スイス

[5] (

2017年法制化/-)

・イタリア

(1988年

閣議決定/

1990年閉鎖済)

・オーストリア

(1978年

法制化)

・オーストラリア

(1998年

法制化)

※(脱原発決定年/脱原発予定年)

スイスは運転期間の制限を設けず

出所:W

orld Nuclear Association

ホームページ

(2017/8/1)より資エ庁作成

(注)主な国を記載

[]は運転基数

[]は運転基数

・スタンスを表明していない国も多数存在

各国の原子力利用に関するスタンス

38

Page 63: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

63  基調講演

し、将来的な利用に関心を持っている国もあります。

 

福島復興のための取り組みについては、オフサイトとしては、大熊町、双葉町を除く

地域の避難指示がようやく解除されました。復興へ向けてこれから取り組んでいきま

す。汚染水についても、現在は検出できないほど低いレベルまで周辺海域の放射線濃度

は下がってきています。廃炉についても現在、中長期ロードマップでようやく格納容器

の中を確認できるようになりましたので、時間はかかるけれど、これから国と東京電力

とでしっかり進めていきます。図31(64ページ)が福島第一原子力発電所の1〜4号機

の現状です。

 

エネルギーミックス実現に向けた課題─省エネの課題─

 

続いて、省エネの課題について説明します。

 

省エネについては、省エネ法が1979年にできあがりました。図32(65ページ)

が、省エネ法の概要です。

 

現在、産業・業務部門、運輸部門、家庭部門、それぞれ事業者ごとの規制、機器ごと

Page 64: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

64

福島第一原子力発電所

1~4号機の現状について

注水

1号

1号機

2号

3号機

4号

燃料取り出

し開始:

2023年度

燃料取り出

し開始:

2018年度中頃

燃料取り出

しは完了

燃料デブリはなし

いずれかの号機から燃

料デブリ取り出

し開始:

2021年内

水素

燃料

溶融

燃料デブリ

水素

爆発

使用済燃料

プール

建屋カバー撤去完了

【2016年

11月】

建屋最上階へアクセスするための

構台の設置開始【2016年

9月】

取出用カバー等設置開始

【2017年

1月】

注水

燃料

溶融

392体

615

注水

構台

566体

燃料

溶融

水素

爆発

1~3号機は安定状態を維持した上で、使

用済み燃料プール内の燃料取り出

しに向けた準備作業中(ガレキ

撤去、除

染、遮

へい、取

出用設備の設置等)。

その後、事

故時に溶けて固まった燃料(=燃料デブリ)の取り出

しを目指す。

��

��

クローラクレーン

燃料取り出し用カバー

1533/1533

取り出

し�

�燃

料(体

(2014/

12/22燃

料取り出し��� 41

爆発

図31 

福島第一原子力発電所1〜4号機の現状について

Page 65: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

65  基調講演

特定事業者

(エ

ネルギー使用量

1,500kl/年以上)

・エ

ネルギー管理者等の選任義務

・エ

ネルギー使用状況等の定期報告義務

・中

長期計画の提出義務

特定貨物/旅客輸送事業者

(保有車両数トラック

200台以上、鉄道

300両以上等

)

・計画の提出義務

・エネルギー使用状況等の

期報告義務

対象:エネルギー消費機器、熱損失防止建築材料の製造又は

輸入事業者

<トップランナー制度>(

32品目)

動車や家電製品等のエネルギー消費効率の目標を設定し、製

造事業者等に目標の達成を求める制度

事業者の一般消費者への情報提供の努力義務

・家電等の小売事業者による省エネ情報(年間消費電力、燃

費等)の提供

・電力・ガス会社等による省エネ情報提供

一般消費者への情報提供

省エネ法は、工

場等の設置者や輸送事業者、荷

主を対象に、省

エネ取組の規範(判断基準)を示して努力を求

めるととも

に、一

定規模以上の事業者にエネルギーの使用の状況等を定期報告させ、必

要に応じて指導等を実施。

省エネ法の概要

工場・事業場

工場等を設置して事業を行う者

・事業者の努力義務

貨物

/旅客輸送事業者(貨物

/旅客の輸送を業として行う者

・事業者の努力義務

エネルギー消費機器等

特定荷主

(年間輸送量

3,000万トンキロ以

上)

・計画の提出義務

・委託輸送に係るエネルギー

使

用状況等の定期報告義務

運輸

報告義務等対象者

努力義務の対象者

荷主(自らの貨物を輸送事業

者に輸送させる者)

・事業者の努力義務

※建築物に関する規定は、平成29年

度より建築物省エネ法に移行

42 図32 

省エネ法の概要

Page 66: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

66

の規制を行っていますが、更なる省エネのために、事業者間の連携、荷主と輸送事業者

の連携を強化してもらう。EV・PHVの普及促進、それから機器間連携による省エネ

です。これはIoT、AIを活用したものですが、そういったものを進めて5000万

キロリットルほどの省エネを進めたい。これをぜひ実現に結びつけたいと考えています

(図33)。

 

資源政策について

 

次に、資源政策について説明します。

 

現在、政府は「地球儀を俯瞰する外交」と言っています。それと連動した多面的な協

力を展開していきたいと考えており、中東以外でも、日米、日露のエネルギー協力も進

めていきます。国際マーケットの活用ということでは、例えばLNGなどについても仕

向地条項、自分で買ったものをほかのところに売ってはいけないという条項があります

が、そういった条項の撤廃、あるいは長期契約の見直しといったことに官民挙げて積極

的に取り組んでいきたいと考えています。

Page 67: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

67  基調講演

省エネ

~更なる省エネのためには連携と新

技術の活用が課題~

運輸

0.8 億kl

(2016年

度)

個人等

0.5億kl

●原単位の改善が停滞

事業者間連携による省エネ

事業者の枠を超え、

●同業種間

●サプライチェーンの連携

で、共同での省エネを推進

●貨物自動車は乗

用車に比べ電動

化が難しい

機器ごとの規制(機器トップランナー制度)

●従来技術の延長だけではさら

なる省エネは困難

機器間連携による省エネ

IoT、AIで

機器間の連携を促進

産業・業務

2.2億kl

(2016年

度)

家庭

0.5億kl

(2016年

度)

貨物

0.3億kl

荷主・輸送事業

者の連携強化

Eコマース事業者

の省エネ取組強化

●川上・輸送・川

下の連携で省エネ

燃費基準

(+エコカー減税等)

家電の効率目標

エネルギー消費の7割まで拡大

工場・事業場単位の規制

事業者ごとの規制

(産業トップランナー制度)

荷主・

輸送事業者規制

更なる

EV・PH

V FCVの

普及促進

●EV・

PHV

FCVの普及は

これから

44 図33 

省エネ 〜更なる省エネのためには連携と新技術の活用が課題〜

Page 68: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

68

 

それ以外の資源政策についても、図34を参照ください。

 

自動車のEV化について

 

ここで、自動車のEV化について考えてみたいと思います。

 

自動車産業において、EV開発競争が激化してきました(70ページの図35)。先週末

もモーターショーが開かれていましたが、その中でもEVなどの動きがあります。

 

そのような中で、需要への影響、供給への影響を冷静に見ていく必要があります。こ

れがどのように展開していくかについては注視をしています。エネルギー政策にも大き

な影響を与えるだろうというので、この見極めをしっかりとやっていきたいと考えてい

ます。

 

ちなみに、図36(71ページ)はEV化のCO 

インパクトはゼロエミ比率により大き

く異なるというものです。電気自動車が導入されると、例えば電気自動車が動いている

ところではCO 

は排出されていませんが、その動力源となる電源がどういうものであ

るかということに大きく依存することを示しています。

Page 69: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

69  基調講演

資源・火力

~最後の砦としての資源政策(多角化、市場化、強靭化)~

地球儀を俯瞰する外交と連動した多面的協力の展開

国際マーケットの活用による低廉かつ安定的な調達の実現

国内外のあらゆるリスクに耐えうる供給力の強靱化

背景・課題

今後の方向性

中東地域以外の資源国の台頭

中東地政学リスクの高まり

日米・日露エネルギー協力の新展開

産油国協力の再構築

(サウジ産業化支援

等)

成長するアジア市場との一体化による柔軟な調達

LNG需

要開拓、仕向地条項撤廃、価格指標整備

等)

内需の先細り

LNGの割高な調達

南海トラフ等未曾有の災害の

発生リスク

需給構造変化に伴う

政策資源リバランスの必要性

整備してきた災害対応制度・体制の実行性向上

(自治体等との連携強化、継続的な訓練及び制度見直し

等)

眠れる資産としての石油備蓄・基地の有効活用

(石油備蓄・基地の運用柔軟化、アジアとの協力

等)

45

図34 

資源・火力 〜最後の砦としての資源政策(多角化、市場化、強靭化)〜

Page 70: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

70

現�

��

��

(�

��

��

��

���

(�

��

����

��

280km

(30kWh)

約700km

(56kW

h)

300�

(��

円/kW

h) 180

�円

(約

5�

円/kW

h)

〇EV化はエネルギーの需要構造、そして供給構造を変える可能性。

〇海外における政策はどう動

くのか?

〇自動車産業やメジャーの長期戦略は?

��

��

���

��

(�

��

����

150円

(�

�円

/kWh)

15~25

(約40

~400

円/kW

h)

10�

の�

100~

1000�

の�

【�

・�

】 2040

年�でに

������

������の

��

�����

【�

�】

2018年

��

定�の

EV/PHVの

���

��

【�

�】

2030年

�でに

EV/PHVの

����

20~

30%に

2040年

��

��

(����

���

��

定�

�����

IEA・W

EO

現�

��

����

IEA

・WEO

��

����

IEA

・WEO

450ppm

����

54億

��

(0.3

億�

� 48

億��

(1.5

億�

� 33

億��

(7.1

億�

(1��

��

の�

(2��

��

の�

(3��

NEDO

30

年目標

現時点で

目標未設定

激化する自動車産業のEV開発競争

47

図35 

激化する自動車産業のEV開発競争

Page 71: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

71  基調講演

EV化の

CO2インパクトはゼロエミ比

率により大

きく異なる

132

69

59

ガ����

HV

2015年

:16%

2015年

:94%

電源構成によりCO2排出量に大きな幅

ガ����

�HV EV (�

��

��

ゼロエミ比

率)

(石

�32%

,ガス

40%,石

油12%

(石

�0%

,ガス

4%,石

油2%

) ※

2025年

原子

力50%

,2030年

再エネ

40%

��

��

2030年

:44%

(石

�26%

,ガス

27%,石

油3%

) 41

82

5

2015年

:27%

(石

�70%

,ガス

2%,石

油0%

2030年

:42%

(石

�51%

,ガス

7%,石

油0%

) 62

34

23

49 2015

年:45%

(石

�44%

,ガス

10%,石

油1%

) ※

2030年

ゼロエミ比

率50%

程度

2015年

:57%

(石

�26%

,ガス

16%,石

油2%

2030年

:66%

(石

�12%

,ガス

21%,石

油1%

47 2010

年:35%

(石

�26%

,ガス

29%,石

油10%

出所:日本自動車研究所、

IEA Energy Balances、W

EO2016等

を基に試算

2040年

:49%

(石

�43%

,ガス

8%,石

油0%

) 53

EU

���

���ス

EU

低減の

可能性

※2015年

の平均燃費想定

※直近の最高燃費想定

CO2�

��

[g-CO2/km

] ※燃料製造から自動車走行まで

Well to W

heel)

※欧州・中国のライフサイクル計算には一部日本の想定を適用

48 図36 

EV化のCO2 インパクトはゼロエミ比率により大きく異なる

Page 72: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

72

 

例えば、図36の一番右側の中国です。石炭比率がまだ高いので、ゼロエミ比率は

2015年で27%、2030年で42%で、その後ゼロエミ比率が高まっていっても、一

番左側のCO 

排出量を見ると、その電源を使った電気自動車では依然として1キロメ

ートル当たり50グラムとか70グラムのCO 

が排出されていることを示しています。

 

電気自動車はもちろん見た目は、その場ではCO 

を排出しませんが、その電源構成

によっては排出することになるので、電源構成をどのようにしていくかということが非

常に大事です。欧州の、一番下にあるフランスでは、電気自動車を導入したらほとんど

CO 

を出さないことになります。フランスでは原子力が電源の7割、8割を占めてい

るので、その影響によるものです。

 

現在の政府の取り組み

 

最後に、現在の政府の取り組みにつきまして説明しますが、まず、各国の取り組みに

ついてです。図37が、各国の低炭素戦略ですが、日本も長期戦略を2020年までに整

備して出すということで、関係省庁が連携して取り組む必要があります。

Page 73: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

73  基調講演

米国離脱後も継続する脱CO2のトレンド

再エネ

原発

火力

海外貢献

経済措置

CCS

▲80~

95%

(1990年比

) ○

50年

80%

22年ゼロ

石炭新設原則支援

せず

途上国

支援枠組

▲75%

(1990年

比)

50年の記載無し

30年40%

50年

の記載無し

25年50%

火力新設投資回避

世界全体で

削減

80%

(2005年比

)

50年50~

80%

50年5~

50%

50年0~

20%

50年0~

5% ○

国際貢献考慮

80%以上

(2005年

比)

50年55~

65%

50年17~

26%

50年10~

33%

※検討されていた火力規制は

政権交代で撤回

50年0~

25%

技術協力

36%以上

(2010年

比)

50年30~

60%

50年5~

20%

50年30~

45% -

再エネ・原子力・CCS・海外貢献・経済的措置から成る低炭素対応の国際競争に。

〇主要国のCO2戦略は?特に、米

国・欧州・中国・インドの動向は?

出所:各国の長期戦略・政策目標(電源構成について、独仏は長期戦略への記載はなく、法令等で規定され、加米は長期戦略内の複数のモデル分析結果、

中国は能源研究所と中国電事連の見通しを四捨五入等)より

49 図37 

米国離脱後も継続する脱CO2 のトレンド

米国離脱後も継続する脱CO2のトレンド

再エネ

原発

火力

海外貢献

経済措置

CCS

▲80~

95%

(1990年比

) ○

50年

80%

22年ゼロ

石炭新設原則支援

せず

途上国

支援枠組

▲75%

(1990年

比)

50年の記載無し

30年40%

50年

の記載無し

25年50%

火力新設投資回避

世界全体で

削減

80%

(2005年比

)

50年50~

80%

50年5~

50%

50年0~

20%

50年0~

5% ○

国際貢献考慮

80%以上

(2005年

比)

50年55~

65%

50年17~

26%

50年10~

33%

※検討されていた火力規制は

政権交代で撤回

50年0~

25%

技術協力

36%以上

(2010年

比)

50年30~

60%

50年5~

20%

50年30~

45% -

再エネ・原子力・CCS・海外貢献・経済的措置から成る低炭素対応の国際競争に。

〇主要国のCO2戦略は?特に、米

国・欧州・中国・インドの動向は?

出所:各国の長期戦略・政策目標(電源構成について、独仏は長期戦略への記載はなく、法令等で規定され、加米は長期戦略内の複数のモデル分析結果、

中国は能源研究所と中国電事連の見通しを四捨五入等)より

49

Page 74: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

74

 

図38は、わが国における再エネ中心の体系への経済的措置と市場機能の活用の強化に

ついて整理をしたものです。経済的措置、例えば税金がどうなっているのか、FIT

(全量固定価格買取制度)の賦課金がどうなっているのかということです。経済的措置

としては、2016年で化石燃料関連税プラスFITということで言うと3兆円ほどの

負担がかかっているので、一定の経済的措置はすでに導入されているということです。

これに加え、電源について市場機能としての非化石価値の取引市場を導入しようという

ことで、現在準備をしています。

 

政府は、以上のような諸々のこともあわせ、地球温暖化対策の関係としては、図39

(76ページ)の一番左側の「地球温暖化対策計画」を整備しました。その中で、2050�

年にCO 

排出80%削減を目指すという方針は書いていますが、詳細は書いていませ

ん。経済産業省、環境省、それぞれ考え方を出していますが、まだ完全に一致している

わけではありませんので、これから整合をもって進めていくための検討をしていくこと

が大事になります。もちろん、その基礎となるのはエネルギー源のCO 

排出削減をど

のように進めていくかということなので、それについてはエネルギー基本計画の見直し

Page 75: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

75  基調講演

非化石目標達成の義務化

2030年度ゼロエミ電源比率

44%

(エネルギー供給構造高度化法)

2010年

2016年

2030年ミック

電源開発促進税

0.3兆

0.3兆円

0.3兆

程度

石油石炭税

0.5兆

0.4兆円

0.3兆

程度

温対税

0.3兆

0.2兆円

程度

FIT賦課金

1.8兆

3兆円

程度

合計

0.8兆

2.8兆円

4兆

程度

2012年

導入

2012年

導入

経済的措置

非化石価値取引市場の創設

事業者間で非化石価値のトレード

市場機能 〇2050年

の世界に向けて、この

経済措置をどのようにしていくか。

再エネ中心の体系へ経済的措置と市

場機能の活用を強化

50

図38 

再エネ中心の体系への経済的措置と市場機能の活用を強化

Page 76: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

76

日本では、大

きな方針を定め、関

係機関で対応の方向性を検討中

「地球温暖化対策計画」

(政府)

全ての主要国が参加する枠組みの下、

経済と両

立させながら、2050年

80%削減を目指す。

従来の取組の延長では実現困難。

イノベ

ーションでの解決を追求。

国内投資を促進して国際競争力強化

「長期地球温暖化対策

プラットフォー

ム報告書」

(経産省)

80%

削減達成には、国

内、既

存技術

内に閉じた対策では限界。

アプローチ

国際貢献(二国間クレジット、公

的ファイナ

ンス(

JBIC等))

グローバル・バリュー

チェーン(低炭素

製品等の国内外の普及による削減)

イノベ

ーション(省エネ、畜

エネ、CO

2固定化等)

「長期低炭素ビジョン」

(環境省)

国内での長期大幅削減を達成。

既存技術の最大限の活用+イノベ

ーションの創出(経済社会のイノベ

ーション

を含む)

国内で

80%削減を実現した場合、電

力については、低

炭素電源(再エネ、

CCS付火力、原

子力発電)が

9割。

世界の情勢、成

長や地政学リスク、温

暖化対策の動向、トレ

ンドは?

技術の変革、産

業構造の変化、金

融の動向は?

主要国の環境戦略、エネルギー戦略は?

技術革新・人材投資・海外貢献で世界をリードできる

国、制度、産業としての総合戦略を構想

今後、2050年

へ向けたエネルギーを取り巻

く世界の情勢を見極める

51 図39 

日本では、大きな方針を定め、関係機関で対応の方向性を検討中

Page 77: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

77  基調講演

の検討とあわせ、しっかりとした道行きを定めていきたいと考えています。その上で総

合戦略を組み立てていきたいということで現在取り組んでいます。

 

私からの話は以上ですが、エネルギー政策については現在、エネルギー基本計画の見

直しの検討を進めています。もちろん、オープンの場でやっているので、さまざまな観

点でご確認いただきながら、あるいはさまざまなご意見をいただきながら検討を深めて

いきたいと思います。

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パネルディスカッション

 

エネルギーを考える

 【パネリスト(順不同)】

  小澤 

典明

一般財団法人日本エネルギー経済研究所参与   十市  

一般財団法人気象業務支援センター気象予報士  村山 

貢司

新日鐵住金株式会社技術総括部上席主幹     小野  

 【モデレータ】

21世紀政策研究所研究副主幹          竹内 

純子

経済産業省資源エネルギー庁

資源エネルギー政策統括調整官

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80

竹内 

ここからは、パネルディスカッションとして、小澤資源エネルギー政策統括調整

官に、日本エネルギー経済研究所の十市様、気象業務支援センターの村山様、新日鐵住

金の小野様に加わっていただき、エネルギーに関する議論を深めてまいりたいと思いま

す。

 

冒頭の基調講演で、今の日本のエネルギー事情を考えた時の課題について、小澤資源

エネルギー政策統括調整官から総合的にご説明いただきましたが、例えばそのことによ

ってどのようなリスクが高まっているのか。具体的には消費者や企業に対する影響と

か、地球環境に対する影響とかについて、十市様、村山様、小野様のそれぞれご専門の

分野からご説明いただければと思います。

 

総合的なエネルギー・環境戦略の推進を

十市 

私からは、課題ということで話をさせていただきます。先ほど小澤資源エネルギ

ー政策統括調整官からいろいろ話がありましたが、私自身は現在のエネルギー・環境戦

略全体を考えると、このままで2030年度の目標を含めて達成できるかどうかについ

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81  パネルディスカッション

て非常に懸念を持っています。総合的なエネルギ

ー・環境戦略を立て、それを具体的な対策として

官民挙げてきちっとやる体制になっていないので

はないか。先日の総選挙においても、例えば原発

ゼロを憲法に書き込もうというような政党が現れ

てきている。このことは私に言わせると一種の排

除の論理で、原子力発電ゼロを前提にして、先ほ

ど話のあった「3E+S」とか、長期需給見通し

の目標を達成するのは極めて難しいと思います。�

ただ、国民世論はそういったものを支持する状況

にあることを踏まえて話をします。

 

私は日本のエネルギー戦略を常に三つの視点か

ら考えています。

 

1番目は国際情勢です。米国の指導力が低下し

竹内 純子研究副主幹

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82

ています。中東情勢の流動化が進んでいます。中国の著しい台頭があります。このよう

な中で日本の将来のエネルギー・環境戦略を考えなければいけません。

 

2番目は気候変動のリスクです。これは先ほどより触れられているとおりです。

 

3番目はいまエネルギー分野でも技術革新がものすごい勢いで進んでいます。シェー

ル革命もそうですし、太陽光、蓄電池、電気自動車、電力と情報通信技術、IoTの融

合、このようなものが同時に進んでいるので、これらを踏まえ、総合的に日本の将来の

エネルギー・環境戦略を考えないといけないというのが私の問題意識です。

 

国際情勢から日本のエネルギー・環境戦略を考える

十市 

国際情勢については、まず地政学的な問題として中東の不安定化という問題があ

ります。

 

中東自体、もともと不安定ですが、昨今の状況を見ますと、IS(イスラム国)はあ

る程度撲滅されたけれど、この地域においてイランの影響力が一段と高まり、イラン、

イラク、さらにはシリアという地域ではイスラムのシーア派が一段と力を強めており、

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83  パネルディスカッション

それに対しサウジアラビアは大変な危機感を持っ

ています。

 

サウジアラビア自身は、いまイエメンと戦争状

態ですが、イエメンのバックにはイランがいま

す。国交断絶したカタールのバックにもイランが

います。ですから、中東ではサウジアラビアとイ

ランの覇権争いがこれからも続くと考えなければ

いけません。そこに米国のトランプ政権が出てき

ているということです。現在のところ石油情勢に

物理的な影響は出ていませんが、いつ、どういう

影響が出るか、全く予断を許さない状況が続くと

私は思います。

 

もう一つは資源を輸送するシーレーンの問題で

す。ホルムズ海峡、マラッカ海峡がありますが、�

十市 勉氏

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これについてもご承知のように中国が南シナ海において大変な勢いで海洋開発、領海化

を進めていますし、完全に既成事実をつくっています。南沙諸島でも3000メートル

級の滑走路を備えた飛行場ができ、レーダー設備等々を含め、この地域はもう完全に中

国の軍事基地になっています。

 

日本が調達する原油あるいはLNGはほとんどが南シナ海を通ってくるわけですか

ら、日中関係に問題がなければ直接影響はないかもしれませんが、日中関係で政治的な

対立が出てくれば日本のシーレーンに一挙に影響が出るでしょう。このような問題も含

めて日本の将来のエネルギーの安定供給も考えなければいけないと思います。

 

もう1点、中国はこの南沙諸島、南シナ海でフローティング、洋上の原子力発電所の

開発を今の5カ年計画の中でやろうとすでに取り組んでいます。中国はいま国を挙げて

原発強国に向けて邁進しています。現在、9月時点で稼働中の原子力発電所が37基、建

設中は20基ですから、2020年になるとあっという間にフランスに追いつく感じです。

 

いま、中国は海外にも出ていますし、2030年には1億3000万キロワット、

100基を超えて世界の原子力大国になると考えられます。日本の原子力の将来を考え

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85  パネルディスカッション

る場合には、もう日本一国の問題では済まないということです。もし万が一、中国で大

きな事故が起きれば、日本にも当然影響が出ますから、そういう視点でも日本の将来の

エネルギー政策・戦略、原子力についても考える必要がますます強まっていると思いま

す。

 

電力自由化とエネルギー政策の課題

十市 

日本国内について見ると、この数年、東日本大震災以降、昨年(2016年)か

ら電力の自由化が始まり、今年はガスの自由化も始まっています。私の問題意識は、電

力については、いかに安くてクリーンな電力の安定的供給を実現するかです。これが最

大の、日本の産業あるいは経済、国民生活にとって大事なことになります。その中で今

の政策の取り組みを見ていると、必ずしも全体最適が図られていないのではないのかと

考えています。個々の問題では最適化の取り組みが経済産業省の取り組みとしてありま

すが、全体としてきちっと、本当に全体最適を目指すようなことがなされているのかに

ついて、私自身は懸念を持っています。

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86

 

現在の自由化による電力市場改革は電気料金の値下げにつながる意味では評価すべき

です。ただ、供給過剰であるがゆえに、今は新規の投資をしなくても大丈夫です。今は

卸電力市場で、スポットで、変動費ベースで電気を買い、売れば、儲かるという仕組み

になっています。これはサステイナブルではありません。5年先、10年先を考えると、

固定費が回収できるような制度設計をきちっとやらないといけませんが、それがなされ

ていません。持続可能な電力システム制度をきちっと整備しなければいけないというの

が、電力についての課題の1点目です。

 

2点目の課題は、電力自由化と原子力の利用の両立です。いま再稼働が5基進んでい

るけれど、当初の計画から見るとものすごく遅れています。当初は、新規制基準の下で

の審査期間は半年、1年ということでした。もちろん、安全対策を徹底的にやることは

大事ですが、原子力発電所の審査体制の人員を含めての強化とか、あるいは審査のやり

方についても、あまりにもペーパーワークが中心になりすぎていて、本来的な安全対策

はどうかということに私は懸念を持っています。それと原子力の非化石価値をどのよう

に評価するかです。CO 

の排出削減の努力が正当に評価されなければ、たぶん民間は

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87  パネルディスカッション

低炭素に向けた投資をしないでしょう。現在、非化石価値市場の創設が検討はされてい

るけれど、再生可能エネルギーだけではなく、原子力を含めて総合的に進めるべきだと

思います。

 

私自身は2030年、2050年に人類が直面する地球温暖化対策を本当にやるに

は、原子力という選択肢は残しておかないといけないと考えています。それにはリプレ

ースとか新増設についても国として明確な方向性を示さないと、投資のリスクも大きい

ため、民間企業はたぶんできないと思います。こういう問題もいま検討されている審議

会等できちっと議論していただきたいと思っています。

 

それには原子力に対する国民の信頼がまだまだ回復していませんから、放射線とか廃

炉とか高レベル放射性廃棄物の処分についての正確な情報提供ですね。国も先ほどの科

学的特性マップを含めて取り組みを始めていますが、そこには一段と力を入れていただ

きたいと思います。国民の原子力に対する信頼を回復するためにも、料金の値下げとか

CO 

が確実に削減できるという目に見えた成果が求められます。今そういう方向に少

しずつ進んでいますが、もう少しスピードアップが必要ではないかと思います。

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88

 

再生可能エネルギーへの期待と課題

十市 

再生可能エネルギーについては、1点だけ申し上げます。先ほど再生可能エネル

ギーのFIT(全量固定価格買取制度)の話もありましたが、昨年(2016年)12月

時点で稼働している太陽光発電だけを見ても、20年間固定価格ですから、もうすでに17

〜18兆円は確実に将来の負担になります。昨年12月段階での計画が全部実現すると40兆

円を超えます。最近はバイオマスについても相当多くの新規案件の認可があり、これが

全部実現すれば1年間に1兆円ですから20年間で20兆円という膨大な資金がいります。

国民はこういう問題を必ずしも十分に理解していないと思うので、再生可能エネルギー

の利用拡大は進めるべきですが、負担の問題とかそういうことも含め、理解を広めてい

くことが極めて大事かと思います。

 

日本のエネルギー・環境戦略とその課題

十市 

また、エネルギー安全保障の向上と外交・安全保障政策の強化という意味では、

中東地域の安定化、シーレーンの安全確保、あるいは海外インフラ建設への支援、特に

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89  パネルディスカッション

アジア途上国の発電市場とかLNGインフラなどへの支援を含めて進めていく必要があ

ります。

 

アジアでのエネルギー地域協力の推進については、省エネ、新エネ、原子力、環境と

いうことで、これも日中韓・ASEANとのエネルギー協力が必要です。申し上げたい

のは東アジア各国との原子力協力、特に安全対策です。中国、韓国、台湾、特にいま中

国がものすごい勢いで原子力開発を進めていますから、情報交換とか、緊急時、もし事

故が起きた時の対応を含めて日本がイニシアティブをとってやっていく必要があると思

います。ロシア極東の資源開発の問題もあります。

 

それと、日本の将来、20年先、30年先、40年先がどうなるかは極めて不透明です。そ

の中で、多様性を持ったエネルギーミックスをどのように実現するのか。エネルギー技

術革新の推進、発電分野での脱炭素化などが考えられます。これから電気自動車が普及

していくとガソリン車から電気自動車へシフトするでしょうが、量的な効果がどれぐら

いあるのか。

 

いろいろな試算がありますが、ラフに考えると、日本のガソリン車が全部電気自動車

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90

にシフトしたとすると、約1000億キロワットアワーの電力需要が新たに生み出され

ます。これは、日本の現在の電力需要の十数パーセントになりますが、これを大きいと

見るか、小さいと見るかは意見が分かれますが、相当な量です。また、低炭素化を進め

るために熱需要で使っている化石燃料を電気に換えるとか、これからいろいろなことが

起きる可能性があります。

 

最後に申し上げたいのは、エネルギー政策は経済産業省が中心にやっていますが、い

ま申し上げたようなことをこれから全部やろうとすると省庁横断的な取り組みがが不可

欠です。国としての戦略を決める司令塔がないといけない。特にいま原子力について司

令塔がほとんどないことが最大の問題ではないか。そこがきちっとしない限り日本の将

来のエネルギー・環境政策、戦略はうまくいかないと思います。

 

太陽光発電の不安定性

村山 

私は長年、温暖化防止活動を続けてきた中で、先進国の中で一番南にある日本は

とりわけ太陽光を利用しなければいけない。風力も含め、電力で言えば再生可能エネル

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91  パネルディスカッション

ギーを増やしていく。これがCO 

を減らす一番

早い道だと訴えてきました。しかし、その辺で議

論が少しおかしくなってきて、再生可能エネルギ

ーが増えれば原子力発電がいらなくなるという乱

暴な議論になっています。私たちが求めていたの

は、再生可能エネルギーを増やすことにより、電

力で言えば火力の稼働率を減らすことが可能にな

り、それで二酸化炭素が減る。再生可能エネルギ

ーを増やすためには、火力、水力、原子力を含

め、しっかりしたバックアップがなければいけま

せん。

 

今年(2017年)の夏がわかりやすいので、�

図40(93ページ)を用意しました。青が今年の、�

オレンジが平年の、8月の旬別の東京の日照時間

村山 貢司氏

Page 92: 需要家の視点から エネルギー問題を 考える · 2018-04-13 · 5 めるとともに、供給側としても発電時にCO減目標の達成には、エネルギーの需要家がオイルショック並みのより一層の省エネを進

92

です。東京で太陽光発電をやろうとすると、平年値に少しリスクをかけたもので年間の

発電量を計算していきますが、8月の中旬、東京の場合はほとんど発電できません。

 

図41は仙台ですが、仙台は8月の上旬、中旬、もしここに太陽光発電所があれば、ほ

とんど稼働しないという状況です。今年(2017年)6月に六ヶ所村を見学してきま

した。六ヶ所村にはメガソーラーがありますが、8月中旬の日照時間はわずか0・1時

間。太陽光発電はほとんど稼働しない状況です(94ページの図42)。

 

事業者は年間平均で発電できればいいということですみますが、日々の電力供給を考

えると、このような不安定なエネルギーですから、しっかりしたバックアップが必要に

なります。では、8月上旬や下旬はどうなのか。図43(94ページ)は六ヶ所村の8月の

毎日の日照時間です。上旬でもまともに発電できるのは1日だけでした。つまり、8月

の前半の20日間はほとんど発電ができない。これがもし2カ月続けば、簡単に言うと事

業者はつぶれてしまいます。

 

一般に天気が悪いと風が強くなるので、風力発電で賄えばいいではないかという議論

があります。8月の仙台の平均風速は2メートルで、平年の風速よりも0・7メートル

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93  パネルディスカッション

図40 2017年8月旬別日照時間(東京)

図41 2017年8月旬別日照時間(仙台)

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94

図42 2017年8月旬別日照時間(六ヶ所)

図43 2017年8月の日別日照時間(六ヶ所)

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95  パネルディスカッション

弱かった。風力発電のエネルギーは風速の3乗に比例します。今年の8月は、平年の

2・7メートルに比べると効率は40%程度に落ちてしまう。つまり、太陽光もだめ、風

力もだめという現状になっています。これが今年だけではなく、毎年のように起きてい

ます。

 

温暖化による再生可能エネルギー資源への影響

村山 

将来、温暖化が進んだ場合にどうなるか。大ざっぱな予想ですが、高緯度地方の

温度が大きく上がるため、南北の温度差が小さくなって、風が弱まってきます。つま

り、現在よりも風力発電の効率は落ちます。気温が上昇することで空気中の水蒸気が増

加しますので、雲が増加して日照時間が減少します。これは確実に起きることです。今

の設備で100というものができても、将来的にはこの再生可能エネルギーの資源が減

少してしまうわけです。こういったことも頭に入れて、エネルギーというものをどのよ

うに考えていくのか。突然の乱暴な議論ではなく、気候変動の要素というのはリスクが

大きいですから、これに取り組んでほしいと思います。

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96

 

電気料金の上昇が製造業に与える影響

小野 

私からは「わが国のエネルギーを取り巻く現状と課題」ということで、日本国内

に製造基盤を有する製造業の立場から話をします。

 

まず、一つがコストの問題です。東日本大震災後、特に電気料金が上昇しました。

2014年以降、下落に転じていますが、これは国際的な原油価格が低下した影響が大

きいためで、構造的にはまだ上昇傾向が続いていると考えています(98ページの図44)。

 

図44の右上の棒グラフは電源構成ですが、2010年に比べ2015年は原子力の停

止に伴い火力の比率が上がっています。そこに加え、その下のグラフのFITです。再

生可能エネルギーを否定するものではありませんが、FIT制度においては大きな需要

家負担が発生するのも事実です。今年度(2017年度)は買取費用で2・7兆円、賦

課金で2・1兆円です。この金額は先般の総選挙でも議論になった消費税1%、これと

同じ金額が電気代だけに乗っているということであり、よく考えなければいけないと思

います。

 

製造業にとって電気料金はどういう影響を与えるのか。

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97  パネルディスカッション

 

図45(99ページ)の棒グラフは、製造品出荷額

と購入電力使用額を示しています。製造業全体で

出荷額は2010年に対して2014年は4%増

加しています。一方で購入電力の使用額は、34%

上昇しています。私が身を置いている鉄鋼業に限

って言えば、鉄鋼業全体では4%の出荷額増に対

して電気料金は52%も増えています。これが実態

です。

 

これが何を招くのかというと、特に鉄鋼業の中

でも電気の使用量の多い普通鋼電炉に対するイン

パクトが極めて大きいといえます(100ページ

の図46)。普通鋼電炉業では1トンの製品をつく

るのに約700キロワットアワーの電気が必要で

すが、この電気料金が例えば1円上がるとトン

小野 透氏

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98

13003300

650013200

1800021400

0.220.35

0.75

1.58

2.25

2.64

0 0.5

1 1.5

2 2.5

3

0

10000

20000

30000

40000

20122013

20142015

20162017

2700023000

18400

9000

48002500

回避原価

賦課⾦総額

億円

¥/kWH

買取総額

賦課⾦単価

1.1 2.2

4.7 7.5

14.9 9.0

29.3

43.2 44.0

8.5

8.5 9.6

25.0

30.3 31.6

28.6

1.0 1.1

0%

20%

40%

60%

80%

100%

20102013

2015

原子力

石炭

水力

LNG

石油等

再エネ

電源構成の変化

FIT賦課金等推移

60 70 80 90

100

110

120

130

140

150

20102011

20122013

20142015

天然ガス輸入価格

家庭用電気料金

産業用電気料金

燃料費は震災前のレベルを下回るも、電気料金は

構造要因(電源構成・FIT

等)により高止まりの

状況

エネルギー単価の推移

* 2010年

度の

単価

を100

とする

図44 

エネルギーコスト

kWh

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99  パネルディスカッション

製造����������������������製造品出荷額���������購入電力使用額������。

電�������製造品出荷額���������購入電�使用額�������製造�������購入電力使用額������。������。

電気料金負担増の実態

製造品出荷額と購入電力使用額(2010年=100)

製造業計 製鋼・製鋼圧延業(電炉業) 銑鉄鋳物製造業

製造品出荷額 購入電力使用額 製造品出荷額 購入電力使用額 製造品出荷額 購入電力使用額

出所:工業統計

図45 製造品出荷額と購入電力使用額(2010年=100)

製造����������������������製造品出荷額���������購入電力使用額������。

電�������製造品出荷額���������購入電�使用額�������製造�������購入電力使用額������。������。

電気料金負担増の実態

製造品出荷額と購入電力使用額(2010年=100)

製造業計 製鋼・製鋼圧延業(電炉業) 銑鉄鋳物製造業

製造品出荷額 購入電力使用額 製造品出荷額 購入電力使用額 製造品出荷額 購入電力使用額

出所:工業統計

製造����������������������製造品出荷額���������購入電力使用額������。

電�������製造品出荷額���������購入電�使用額�������製造�������購入電力使用額������。������。

電気料金負担増の実態

製造品出荷額と購入電力使用額(2010年=100)

製造業計 製鋼・製鋼圧延業(電炉業) 銑鉄鋳物製造業

製造品出荷額 購入電力使用額 製造品出荷額 購入電力使用額 製造品出荷額 購入電力使用額

出所:工業統計

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100

図46 

電気料金の上昇が経常利益に与える影響

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101  パネルディスカッション

当たり700円コストが上がることになります。過去5年間のトン当たりの経常利益が

155円から5000円、平均すると2000円程度ですから、1円の上昇の影響の大

きさがおわかりになるかと思います。図46の下に記載したように、直近でわれわれの業

界から統廃合を含め、消えていった事業所がこれだけあることも事実です。

 

エネルギー政策に求めるもの

小野 

われわれ日本国内に製造基盤を有する製造業が、エネルギー政策、エネルギー基

本計画の見直しに当たって、何を求めるかであります。

 

一つ目は、日本の国際競争力向上に資する政策・制度であること、

 

二つ目は、中長期的にも安心して国内での生産基盤への投資ができるような政策・制

度であること、

 

三つ目は、新たな事業機会の創出、イノベーションを促すような政策・制度であるこ

と、

 

四つ目は、特にエネルギー政策において、3Eのバランスあるエネルギー政策である

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こと、

 

五つ目は、国際的に遜色のないエネルギーコストを実現すること、

 

これが私のエネルギー政策に求めるものであります。

 

自由化とエネルギーミックス達成のバランス

竹内 

いま日本が掲げているエネルギーミックスの全体像、比率については皆さまにも

ご理解いただいているところかと思いますが、そのエネルギーミックスを達成していく

のは非常に難しいのではないかということが、ここでは共有できたかと思います。私が

講演でエネルギーミックスの説明をすると、やらなければいけない、達成しなければい

けないのはわかったけれど、それを自由化とどう両立させるのか、そこがわかりにくい

というようなご質問をよくいただきます。

 

そこで小澤資源エネルギー政策統括調整官から、自由化という市場原理、市場の選択

によってエネルギーの絵姿を実現していく部分と、あるべき3Eのバランスをとったエ

ネルギーミックスを達成していくところをどのようにやっていこうとお考えなのか。政

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103  パネルディスカッション

府の施策について、簡単に補足願います。

小澤 

自由化との関係についてですが、その前にまず、いま3名の方からいただいたご

意見はそれぞれ大変貴重なものと思います。十市様からいただいた話、バランスのとれ

た総合戦略が必要であるのは大事なことです。村山様からお話しいただいた、いわゆる

再生可能エネルギー、特に太陽光については安定性の問題から、そこをどう処理してい

くかは大事です。小野様の製造業の視点、特に鉄の視点から見て電力コストの問題とエ

ネルギー政策に求める視点については、われわれも肝に銘じてやらなければいけないと

思います。

 

電力のコストは製造業というか、実際に需要の多い方々からしてみると大事な視点

で、それをどのように下げていくかということも、われわれが政策を展開していく上で

大事だと思っていますし、自由化によりコストの引き下げを追求していくというところ

があります。一方で、自由化の中で競争してコストを下げていこうとすると、長い目で

見た時の、長期的な投資意欲がなかなか出にくいことが発生します。例えば原子力のよ

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104

うな長期的な投資が必要であり、なおかつ、初期投資が大きいようなものについては、

長い目で見た予見可能性というものが大事になってくるので、そういったものへの投資

意欲が場合によっては削がれる可能性があります。

 

したがって、エネルギー政策を考えていく上で、長期的な投資の予見可能性をどのよ

うに高めていくかということが大事です。エネルギーの需要見通し、需給見通しを整備

しているのは、そういった側面もあります。特にこれからさらに自由化が進んでいく中

で、長期的な投資とのバランスをどのように組み合わせて実際の政策を打っていくかと

いうことは大事なので、その視点は引き続き追求していきたいと思います。長期的な意

味での投資を喚起していくことがエネルギー政策の表裏一体として重要だと思います。

竹内 

予見可能性を高める施策を追求していくという説明でしたが、追加でお伺いしま

す。今のエネルギー基本計画には、新規制基準に合格した原子力発電所の再稼働は認め

るという言葉は入っていますが、新設とか、投資に関わるような文言は一切入っていな

いと思います。その点についてはいかがお考えでしょうか。

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105  パネルディスカッション

小澤 

いま質問のあった原子力の新増設あるいはリプレースという表現はエネルギー基

本計画には入っていません。ただ一方で、エネルギー基本計画では、原子力のための事

業環境整備について進めていくとしてあり、事業環境整備の中でそういったことにどの

ように対処していくのかということが大事になってくると思います。

 

いま、実際に2030年にエネルギーミックスをどうやって達成していくのかという

ことの検討を始めていますが、2050年に向けた全体像をどのようにやっていくのか

ということを考えた時、エネルギー源としての原子力の重要性はあろうかと思います。

それをどのような文脈で整理していくかが今の検討の大事な一つかと思います。

 

再生可能エネルギーのコストの低減

竹内 

自由化とエネルギーミックスについて説明いただきましたが、エネルギーミック

スの実現に向けた議論を更にしていきたいと思います。

 

まず、一つ重要なのが、非化石電源と言われる再生可能エネルギーあるいは原子力の

比率を、再生可能エネルギーは電源構成で22〜24%、全体のエネルギーで言えば1割と

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106

いう話がありました。原子力は電源構成で20〜22%、これも全体で言うと1割というこ

とですが、この目標の比率まで高めていくことが重要かと思います。まず、再エネにつ

いて考えてみます。

 

先ほど、小野様からも、FITの賦課金の問題について強くご指摘いただきました。

賦課金をどう下げていくか。十市様からもご指摘いただきましたが、すでに認定してし

まったものが稼働するだけでも相当な負担になる。そうだとすると、FITで買い取り

をするコストは毎年、技術の普及具合、コストの低下具合に応じて買取価格は年度、年

度で下げていきますが、そうは言ってもすでに認定した分のコストが相当膨らむと想定

されています。ここについてはどのように下げていこうとお考えなのか、これも小澤資

源エネルギー政策統括調整官にお伺いしたいと思います。

小澤 

FITについては、さまざまな指摘がありますが、かなりの負担が増えてきてい

ます。もちろん、太陽光を中心にした導入は大事ですが、負担が相当増えていることは

事実で、手直しをしないといけないということで、今年(2017年)の4月に改正F

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107  パネルディスカッション

IT法を施行しました。この中で大事なことは三つあります。

 

一つは、太陽光発電の認定したものはありますが、この中で、認定はとったけれど実

際の事業を展開していない、あるいは十分な土地を確保していないようなケースがさま

ざまにありました。こういったものについては、いったん認定を取り消し、改めて事業

をやるつもりがあるかどうか。もう1回しっかり準備していただいた上で申請していた

だこうというので、認定を取り消す仕組みを入れました。これに伴い、もともと100�

万オーダーの認定の案件がありましたが、数十万の案件については認定が取り消しにな

りました。そういったかたちで、実際に太陽光発電の事業を行おうというケースに絞

り、政策を進めていこうというのが、まず一つです。

 

メガソーラー、大きなものについて、これも固定で当初の認定した時点での価格で買

い取るというのではメリットが非常に大きいので、もう少しコスト意識を高めて対応し

ようということで入札制度を導入することにしました。メガソーラーの部門について

は、入札して、安い価格のものから導入していく。高い価格を設定したものではなく、

より安いものを採用する仕組みを入れました。これでコストを削減しようというのが二

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108

つ目です。

 

三つ目は調達価格、毎年の買取価格ですが、これについては丁寧に見直しをしていこ

うということです。もともと太陽光発電の買取額は40円程度でしたが、今は21円まで下

がってきています。これについてもさらに予見可能性を高めるということで、1年後、

2年後の買取価格の見込みも書いています。18円程度まで下げていく。先々は7円程度

を目指す。このようなことにいま取り組んでいます。見通しをしっかり示すことをさせ

ていただいています。

 

もう1点、説明します。非化石価値の取引市場、非化石価値の評価をしっかり入れよ

うということで、そういった市場を電力部門に導入しました。太陽光のみならず再生可

能エネルギー、水力、原子力についての価値を、いわば非化石価値をお互いに買い取り

をしながらやる。買い取った分のメリットについて、再生可能エネルギーの分について

コストがより抑制できるように、非化石価値が取引できるということで、その部分のコ

ストを安くしよう。そういった仕組みも入れようということで整備しています。

 

こういった諸々のことをやり、できる限り負担と導入のバランスをとっていきたいと

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109  パネルディスカッション

いうことで、いま取り組んでいます。ただ、そうは言っても当面の部分は、十市様から

もありましたように、FITの賦課金はまだ増加せざるを得ない状況なので、それをさ

らに、どのように是正していくか。これは長い目で見た場合の課題だと思います。

竹内 

再エネについて、もう少しお話を聞きたいことがあります。FIT(全量固定価

格買取制度)もだいぶ修正も行われてきつつあるところですが、私はまだ十分だとは思

っていません。買取価格が20円ぐらいまで下がってきたということでしたが、海外では

もうその半分、3分の1の価格がすでに実現しています。この10月、サウジアラビアで

実際に政府が入札していた太陽光の案件で、1キロワットアワー当たり2セントを切っ

ているプロジェクトも出てきています。こういう中で日本ではまだ、どうしてこんなに

高いのか。いろいろ問題意識はあると思いますが、小野様、FITの修正についてコメ

ントをいただけますか。

小野 

今のご説明のとおり、欧州等では太陽光のみならず風力なども建設コストがずい

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ぶん下がってきていて、日本とは大きく乖離しているという感じがします。そういった

技術革新等によるコスト低減が、最終需要家に、電気料金を支払うわれわれですが、わ

れわれのところに還元されるのかどうか。これが大きなポイントです。少なくともこれ

までのFITならびにその運用では、中国から太陽光パネルが大量に入ってきてコスト

は下がったけれど、それが電気料金の低下につながったかというと、そうではなかった

のではないかと思います。

 

そういったところが最終的に電気の需要家に、電気料金を払うわれわれにちゃんと還

元されるような制度であってほしいと思います。プライスリーディング的な買取価格設

定とか、ようやく入札制度が始まるということですが、そのような経済原理の入った制

度をもっと強化していただきたいと思います。

 

再生可能エネルギー拡大に伴う社会的コストについて

竹内 

確かに入札制度が入りましたが、対象は2メガワット以上の太陽光発電だったと

思います。日本だと、そこまでのボリューム感のものがどれだけあるのかなというとこ

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111  パネルディスカッション

ろも気になっていますが、経済競争性をどんどん入れていくべきだろうというような指

摘を小野様からいただきました。

 

あと二つ、再エネでお聞きしたいことがあります。再生可能エネルギーについて、先

ほど村山様からご指摘をいただいたように、太陽が照っていない時、風が弱くなってし

まった時、そこをどうするのか。人間がコントロールできる電気、電源を維持しておく

必要がある。あるいは、その不安定性をうまく吸収して、滑らかな電気を供給できるよ

うに送電線を整備する。このような社会的コストと言われるものがかかってくるという

指摘をいただいたと思いますが、こういったものをどう見ていくのか。

 

FITの賦課金は再エネ導入のための直接的なコストですが、そこについても消費者

はあまり理解していないと思いますが、ほかにも、そうか、そういうコストがかかるの

かという点を理解している消費者の方はなかなかおられない。このような中で結構なコ

ストがかかってくる部分を、小澤資源エネルギー政策統括調整官は、どのように整えて

いくというお考えなのかについて、ご説明をお願いします。

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小澤 

私の基調講演でも説明しましたが、コストについてどのように理解してもらうか

という意味で、電気料金の明細のところに再エネの賦課金は明示しています。皆さん、

見ていただくと、いま1割以上を占めていますが、そういったコストがかかっているこ

とを、もう少しわかりやすく、どうやって情報提供していくかは非常に大事なことと思

います。もちろん、そういったことの情報の普及もさらにありますし、われわれがさら

に説明していくこともありますが、コストのかかっていることについて、政府だけでは

なく、NPOとかからの情報提供についてもさらに取り組んでいただくことが大事かと

思います。

 

あと、制度自体について、この4月から見直をし、施行をしています。その中で、入

札制度を導入しました、新しい認定制度にしましたということについて、十分な普及、

十分にご理解いただいているのかどうかということもあるので、いま資源エネルギー庁

の中では、そういったものについて、ソーシャルネットワークも含めた情報提供をでき

る限り双方向でやるような仕組みを整えつつあります。そういったことも含め、情報提

供できればと思います。

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113  パネルディスカッション

 

一次エネルギー全体からFITを考える

竹内 

再エネについて、もう1点、小澤資源エネルギー政策統括調整官にお伺いしま

す。基調講演の冒頭で、エネルギーミックスというとどうしても電気の中での電源のつ

くり方の議論だけに注目が集まってしまっているけれど、一次エネルギーを含めた全体

を見るべきだ。一番初めにそのような大きなご示唆をいただいたかと思います。

 

ただ、全体を考えていく、全体のエネルギーミックスを考えて低炭素化を進めていく

ことになると、話の途中にもあった、例えばEV、運輸部門で電化を進めることとエネ

ルギーをつくる場面の低炭素化、つまり供給側の低炭素化と需要側の電化の掛け算がか

なり重要なキーワードになってくるのではないかと思います。

 

図47(114ページ)は、石油・石炭税(石石税)、温暖化対策税(温対税)などエ

ネルギー利用に関わる税金の総額ですが、その中でFITはひと桁上の2兆円となって

います。FITは、先ほど十市様からも話がありましたが、電気にだけかかるコスト、

税金ということになります。電気にこのような高額のコスト、税金をかけていると電化

は進まないのではないか。このようなことが懸念されますが、冒頭におっしゃった「全

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体で見る」ことについてどのようにお考えなのか、お聞かせいた

だけますか。

小澤 

エネルギーの全体像を考える時、例えばいまFITに注目

が集中すると、電力、電化といったところに議論が集中します

が、われわれはやはり全体をしっかり見ないといけない。これま

での一次エネルギーは、戦後の歴史を見ると化石燃料、特に石油

がエネルギー供給の大宗を占める時期がここ40年ぐらいずっと続

いています。現状においても石油は、2015年でも40%以上が

一次エネルギーの供給の中心ですし、天然ガスは24%、石炭にお

いても26%ですから、化石燃料が大宗を占めていますから、われわれはこれを忘れては

いけないし、この供給をしっかりと安定させることが大事だということは強調しておき

たいと思います。

 

その上で、いまFIT制度のところで電気に賦課金がかかっているという話があり

横断的課題(システム改革)~経済性(自由化と競争)と公益性(低炭素化)の両立~

これまでの対応と成果

経済的措置

<経済的措置> 温対税の導入(2012年施行、2014年、2016年に上乗せ) FIT制度の導入(2012年創設)

<市場機能の活用> 非化石目標達成の義務化 → 2030年度にゼロエミ電源比率44%を目指す (エネルギー供給構造高度化法)

非化石価値取引市場の創設 → 事業者間で非化石価値のトレードが可能に → ゼロエミ電源比率44%の達成手段を多様化

低炭素化の実現

更なる競争の活性化等

間接オークションの導入 → 入札価格の安い順に送電することを可能に

ベースロード電源市場を創設 → 新電力のベースロード電源へのアクセス確保を促進

容量市場を創設 → 再エネ導入も見据え、調整力等に必要な発電容量を確保

● 2015 広域機関設立 電力・ガス取引監視等委員会発足

● 2016 小売全面自由化

● 2020 発送電分離 石石税 0.4兆円

温対税 0.3兆円

電促税 0.3兆円

FIT 2兆円

経済的措置と市場機能の活用で、ゼロエミ電源比率44%を実現

(2016年度)

46

図47 エネルギー利用に関わる税金   (2016年度)

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115  パネルディスカッション

ました。図47で申し上げれば、例えば石油・石炭税(石石税)とか温暖化対策税(温

対税)というのは、石油のほうにもかかっている税金であり、併せて0・7兆円です。

1兆円に及ばない範囲ですが、そういったレベルでの税金がかかっています。そのよう

な経済的な負荷がかかっている意味では化石燃料、それから電気のほうではいまFIT

が増えているけれど、両方にそれぞれ税というかたち、あるいは賦課金というかたちで

の負荷が乗っているという意味では、同様です。そのレベルに差が出てきているので、

これをどのように直していくかということが大事だと思いますが、そういう状況です。

 

電化については、そうは言ってもEVというものが今後、仮に急速に伸び、先ほど十

市様からもありましたが、ガソリンが代替されると電力の需要が1割ぐらい伸びていく

といったこと。いわば需要サイドからそういったニーズが出てくると、賦課金や税金の

多寡はゼロでないにしても、需要から誘引されて供給が変わっていく可能性は起こりう

るだろうと思います。

 

ただ、化石燃料の重要性は原料の部分も含め、引き続き大事であることをわれわれは

忘れてはいけないということで基調講演の最初で申し上げました。

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116

 

自由化と原子力の両立

竹内 

石油などにも多くの税金がかかっていますから、これをさらに引き上げてFIT

と同等のレベルにしようというわけではもちろんないので、そこは誤解のないようにお

願いします。消費者の選択を阻害するような税のあり方、負担のあり方ということで

は、エネルギーミックスの達成が逆に非効率的になるのではないかという懸念を申し上

げたわけです。

 

ここでもう一つの非化石電源である原子力について考えてみたいと思います。

 

先ほど十市様から、原子力の現在及び将来に対しての懸念をおっしゃっていただいた

かと思います。小澤資源エネルギー政策統括調整官からも予見可能性を高める重要性に

ついておっしゃっていただきましたし、非化石価値を認める市場の立ち上げという紹介

もありました。

 

私は自由化と最も食い合わせの悪いのが原子力とよく言っていますが、十市様から改

めて、原子力というものの非化石の価値を認める好例として、海外で、例えばニューヨ

ーク州、イリノイ州あたりでとられているような施策とか、あるいはイギリスでとられ

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117  パネルディスカッション

ているような施策として、非化石価値を認める、あるいはそういうことをフックにして

予見可能性を高めていくといった対策について、皆さまにご紹介いただけますでしょう

か。

十市 

その前に、まずFITについて一つだけ申し上げます。当初、FITをつくった

時から、たぶんこういうことが起きるだろうと懸念していたことが現実に起こっている

ということです。新しい制度ですから、しょうがないのですが、どうもそういうことが

きちっとやられていないというのが1点です。

 

もう一つ、原子力と自由化の話もそうですが、いろいろな市場を、非化石価値市場を

つくろう、容量市場をつくろう、ベースロード市場をつくろうなど、市場をたくさんつ

くりましょうという議論を別々にやっているけれど、それで電力の安定供給、CO 

削減、コスト面でリーズナブルな価格で電力を供給できるのか。そこがちゃんとやられ

ているのかということについて、私はFITの問題も含め、非常に疑問を持っていま

す。電力の供給が混乱したり不安定になれば、日本にとって取り返しのつかないことに

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なります。そういうことがはっきりしない限り、民間企業はたぶん投資できないでしょ

う。発電事業者やLNG事業者だけではなく一般企業の方も、どういう制度ができるの

か、その枠組みがはっきりしないと投資できない現状がいま起きているわけです。

 

個々の問題をきちっとやるのはもちろんいいけれど、どうも全体的な枠組みが混乱し

ている。これが今日、私の申し上げたい最大のことです。経済産業省もいろいろなこと

を一生懸命やっておられるのは認めるけれど、そこをきちっとやっていただかないと、

FITの問題を含め、日本の産業、国民生活にとって非常に問題かと思います。

 

原子力については、米国もそうですし、イギリスもそうですが、電力自由化が先行し

ているところを見ると、いろいろなリスクがあるわけですから、原子力新設の投資は起

きないということです。その結果、電力の供給不足が懸念されるイギリスは、差額決済

方式の固定価格買取制を導入して、EDFだとか中国の企業が投資をしているけれど、

それでも問題だということで、いま議論しています。米国でもニューヨーク州やイリノ

イ州などでは、CO 

を削減するには一定の原子力比率を維持しないといけないという

ことで、原子力発電に対して非化石価値(ゼロエミッション・クレジット)を州として

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119  パネルディスカッション

認める制度を導入しています。

 

日本も自由化と原子力は両立しない面がありますから、目に見えるかたちで制度をつ

くっておかないとだめではないかと思います。すでに電力会社は、経済的にペイしない

のを理由に、原子力発電所の稼働を40年から60年に延長するのをやめるケースが増えて

います。2030年に20〜22%という目標には30基動かないとだめですから、もう完全

に絵に描いた餅になる可能性がかなり高いと思います。そのさらに先になれば、リプレ

ースや新増設がなければ、2040年、50年とどんどん減っていきます。今、よほど

きちっと全体を見た大きなグランドデザイン、具体的な施策を進めないと、原子力分野

の人材もいなくなるのではないか。そうなると、たぶん後戻りできない状況になる可能

性がかなり高いと思います。その意味でも、ここ数年が一つの大きな分かれ目かなと私

自身は考えています。

 

省エネに対する国民の意識

竹内 

ここ数年と言うと、今回、エネルギー基本計画が見直され、また3〜4年後に見

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直すということになりますが、今回の見直しは重要なタームであるというようなお考え

かと思います。

 

もう一つ、需要家の視点からエネルギー問題を考えるという今回のテーマの中でお伺

いしたかったのは、省エネの問題です。需要家の視点から考えると、省エネは非常に関

わりがあると思いますが、省エネにもコストがかかる。省エネというものに対し、日本

の国民はどれぐらいコスト負担をするつもりがあるのか、あるいは逆に期待される省エ

ネ技術とか、省エネについて、一般の方に講演されることも多い村山様のご意見をお伺

いしたいと思います。

村山 

一般の方にお尋ねすると、省エネに対する意識はものすごく高い。ただ、皆さ

ん、自分自身でもうやっていると思い込んでいるのです。うちは省エネの家電ですと。

しかし、テレビの大きさは2年前の2倍になっている。結局、使っている電力は少しも

減らない。このような省エネタイプが多いので、根本的なところでは、国のやっている

トップランナー方式のようなものをもっと徹底していただき、知識を広めていただくこ

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121  パネルディスカッション

とが大事だと思います。

 

追加で発言させてください。東京電力は今日も、東京の気温、千葉の気温が何度だか

ら総需要がどのぐらいになるという予測を立てています。太陽光発電や風力発電が増え

ると、そのポイント、ポイントできめ細かな気象情報が要求されますが、その予測コス

トをいま電力会社が負担しています。もし外れたら大変なことになります。

 

われわれ気象情報関係者は「曇ときどき晴れ、所により一時雨」というような、今ま

での天気予報ではもう済まない時代になっています。では、誰がわれわれの予測コスト

の負担をしてくれるのかという議論が全くされていないという不満が多少あります。

竹内 

これは私どもには気がつかない論点だったと思います。ありがとうございます。

 

最後に皆さまから一言ずつお願いをしたいと思います。

 

今日は2030年をターゲットに議論しましたが、エネルギーというインフラを考え

る上で2030年はわりと近い、明日に近いものです。一方、われわれは2040年、

50年、2100年というようなことを考えていかないと議論の方向を見誤る可能性が

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あるのではないか。そこで長期的な視点も含め、お話しいただけるとありがたく思いま

す。

小野 

二つだけです。一つは国際的なイコールフッティングの実現、もう一つは予見可

能性の確保です。安心して日本国内に投資できる環境はキープしていただきたい。いま

トヨタ、日産、ホンダ、スズキといった日本の自動車、日本ブランドの自動車の7割ぐ

らいはもう海外生産になってきています。私個人としては、「メイド・イン・ジャパン

の日本製品」にこだわりたいと思っているので、そういう投資環境をぜひつくっていた

だきたいと思います。

村山 

2030年までに残された時間が10年強しかないのが一番の厳しい条件だと思い

ます。その10年強で、今日議論されたようなことが本当に実現できるのか、実現するた

めには何をやったらいいのかということを、われわれはもう一度きちんと考えなければ

いけないと思います。

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123  パネルディスカッション

十市 

われわれはいま2030年という断面でいろ

いろな議論をしていますが、それを本当に実現する

ためにはその途中、例えば2025年とか、それな

りのタイムスパンでも考えないといけないし、それ

から、2040年、50年というようなより将来に

ついても真剣に考えないといけないという点が一つ

です。

 

もう一つ、予見可能性との関係で申し上げると、�

各産業界でこれからますます脱炭素化について取り

組まないといけないのですが、そのためにはインセ

ンティブがないといけない。自主的な取り組みとい

うのは、これはこれで大事ですが、守っても守らな

くても何もペナルティーがないという制度の下で

は、脱炭素化の目標実現は非常に難しいと思いま

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す。その点はそれぞれメリット、デメリット、いろいろな議論がありますが、明確な仕

組みを作らないと投資は進んでいかないと私は思います。

小澤 

エネルギーは国を支える重要なインフラなので、制度、仕組みも含め、長期的な

見通し・安定性が大事だということは痛感しています。その意味で、いま十市様からい

ただいたような、2030年という断面ではなく途中のプロセス、さらにはその先を見

越した対応が重要だというのは同感です。

 

そういった中で、小野様からも指摘があったように、エネルギーに支えられる適切な

投資環境を整備していく視点も大事です。それと、先ほど村山様から話のあった、さま

ざまなコストがあるでしょうし、不安定性があってはならないというようなことがある

ので、そういったものを含めた課題を洗い出し、長い目で見て安定的な仕組み・対応を

とることが重要だということを改めて痛感しています。

 

その上で、エネルギー政策はその原点に戻るわけです。安定供給があり、コスト・環

境的にもしっかり考える。もちろん、安全性が大前提ですが、そういった原点に返り、

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125  パネルディスカッション

その上でさまざまなエネルギーの選択肢を残し、それをバランスよく組み合わせること

が大事です。そういう原点に必ず戻っていくものだと思うので、そのような視点に立

ち、エネルギー政策の検討を深めていきたいと思います。

竹内 

需要家はエネルギー問題により、もちろんコストの負担も含め、一番左右される

存在だと思います。われわれの問題意識としてのエネルギー問題というものを、これか

らも皆さまと一緒に勉強する場を設けていきたいと思います。

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講演者等略歴紹介(敬称略、順不同。2017年10月30日現在)

小澤 典明(おざわ・のりあき)

経済産業省資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官

京都大学工学部原子核工学科卒業。京都大学大学院原子核工学科修了。1989年通商産業省(現経済産業省)入省、原子力安全基盤機構ワシントン事務所長、経済産業省産業技術環境局環境政策課地球環境技術室長、経済産業省大臣官房参事官(エネルギー政策担当)、資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力立地・核燃料サイクル産業課長を経て、2016年 6月より現職。

十市 勉(といち・つとむ)

一般財団法人日本エネルギー経済研究所参与海外電力調査会非常勤理事関西電力株式会社社外監査役

東京大学大学院地球物理コース博士課程修了。1973年日本エネルギー経済研究所入所。2006年専務理事、2011年顧問、2017年より現職。この間、各種のエネルギー分野の政府審議会の委員を歴任し、エネルギー政策の立案に関与。また、多摩大学経営情報学部客員教授や東京工業大学グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院非常勤講師なども務める。著書に『21世紀のエネルギー地政学』産経新聞出版(2007年)、『実現可能な気候変動対策─政策・経済・技術・エネルギーのバランス』共著・丸善出版(2013年)、『シェール革命と日本のエネルギー』電気新聞ブックス エネルギー新書、日本電気協会新聞部(2013年)(同改訂版、2015年)など。

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村山 貢司(むらやま・こうじ)

一般財団法人気象業務支援センター専任主任技師気象予報士第 1期花粉の少ない森づくり運動推進委員会会長多摩市文化振興財団評議員東京都アレルギー疾患対策検討委員会委員東京都花粉症対策検討委員会委員

東京教育大学農学部卒業。1972年日本気象協会入社、2003年より現職。1987年 4月から2007年 3月までNHKの気象解説を担当。この間温暖化防止センターの講師として各地で講演を行う。1997年から2002年に科学技術庁の花粉症克服に向けた総合研究で研究班班長を務め、環境省の自動花粉観測システムはなこさんを作る。著書に『異常気象』KKベストセラーズ(1999年)、『病は気象から』実業之日本社(2003年)、『台風学入門』山と渓谷社(2006年)、『猛暑、厳寒で株価は上がる?』経済界(2007年)、『体調管理は天気予報で‼』東京堂出版(2012年)など。

小野 透(おの・とおる)

新日鐵住金株式会社技術総括部上席主幹一般社団法人日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会企画部会委員一般社団法人日本鉄鋼連盟技術政策委員会企画委員会委員長、環境エネルギー政策委員会電力委員長

慶應義塾大学工学部卒業。ペンシルベニア州立大学セラミックス科学修了。1981年新日本製鐵株式会社入社。2012年より現職。国のエネルギー政策に対して、総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会委員、火力判断基準ワーキンググループオブザーバー委員などを通じて、日本国内に事業基盤を有する製造業の立場から意見を発信してきた。

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竹内 純子(たけうち・すみこ)

21世紀政策研究所研究副主幹筑波大学客員教授NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会委員

慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1994年東京電力入社。2012年より現職。水芭蕉で有名な国立公園「尾瀬」の自然保護に10年以上携わり、農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員等を歴任。その後、地球温暖化国際交渉や環境・エネルギー政策に関与し、国連気候変動枠組条約交渉にも参加。著書に『みんなの自然をみんなで守る20のヒント』山と渓谷社(2010年)、『誤解だらけの電力問題』ウェッジ(2014年)、『電力システム改革の検証』共著・白桃書房(2015年)、『まるわかり電力システム改革キーワード360』共著・日本電気協会新聞部(2015年)、『原発は“安全”か─たった一人の福島事故調査報告書─』小学館(2017年)など。

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セミナー12

需要家の視点からエネルギー問題を考える

2018年3月31日発行

編集 21世紀政策研究所

〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2経団連会館19階

TEL  03-6741-0901FAX  03-6741-0902

ホームページ http://www.21ppi.org

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21世紀政策研究所新書【セミナー】(※は刊行予定)

01 

英国と欧州のエネルギー・

環境政策動向(2016年10月28日)

02 

英国のEU離脱(2016年10月4日)

03 

中国企業の現状(2016年10月26日)

05 

トランプ政権と日米関係(2017年2月17日)

06 

トランプ政権のエネルギー温暖化政策(2017年3月27日)

07 

トランプ政権の評価─米国現地調査を踏まえて(2017年4月20日)

08 

韓国新政権と今後の日韓関係(2017年5月19日)

09 

トランプ政権のこれまでと今後、そして日本への影響(2017年9月26日)

10 

文在寅政権の現状と諸政策の見通し(2017年9月29日)

11 

欧州の政治・経済情勢から展望するEUの未来(2017年10月24日)

12 

需要家の視点からエネルギー問題を考える(2017年10月30日)

 

21世紀政策研究所新書は、21世紀政策研究所のホームページ(http://w

ww.21ppi.org/sem

inar/index.html

)でご覧

いただけます。

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21世紀政策研究所新書セミナー6

トランプ政権のエネルギー温暖化政策

トランプ政権のエネルギー温暖化政策

セミナー6