需要地系統の保護制御システムの開発 -- 分散型電源大量導入 …背 景...
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背 景省エネなどの社会的ニーズや経済性などの消費者ニーズにより、今後、配電系統を中心に分散型電源が大量に導入される可能性がある。この場合、系統事故時や保守時の保護・保安に大きな影響を与える恐れがある。また、一方では、健全区域への無停電供給など、供給信頼面での活用が期待できる。当所では、導入に伴う問題の発生を防ぎ、分散型電源のフリーアクセス化を達成するとともに、同電源の有効活用により需要家、供給者双方にメリットを与える新たな系統形態として、「需要地系統」を提案し、研究を進めている。このうち、系統事故時の問題点としては、分散型電源により事故電流の供給が分担化されて事故検出が困難化したり、単独運転が発生し、事故が除去できなくなる可能性があり、これらの対策技術を事前に確立しておく必要がある。
目 的需要地系統における系統事故の検出、除去手法について提案し、シミュレーションにより有効性を検証する。
主な成果1.系統事故検出、除去の基本方式分散型電源の大量導入時に想定される問題点を勘案し、配電線の区間単位での事故の検出と事故区間の判定を実施する自律分散型の短絡検出方式、および単独運転が発生した場合に、ループコントローラ(注)からの無効電力の注入により、周波数や電圧を変化させて停止させる単独運転防止方式を提案した。(図1)2.提案方式のシミュレーション評価EMTPによるシミュレーションにより、提案する方式の有効性について評価し、
次を明らかにした。(1)系統短絡事故時では、分散型電源によって事故供給電流が分担化され、変電所、分散型電源側ともに検出できなくなる場合がある。一方、事故点周辺では、事故電流が最大で1.5倍程度に増大し、提案方式を採用すると検出可能となる。以上により、提案する短絡検出方式は、検出の信頼性を高める上で必要な方式となる。(図2)
(2)単独運転が発生した場合、分散型電源総容量の15%程度の無効電力を注入することで、各分散型電源はこれによって発生する周波数異常を検出し、停止させることができる。この場合、異常な電圧上昇の発生は無く、また必要な無効電力値は、常時や緊急時の融通面から必要と考えているループコントローラの容量(=500kVA~1MVA)で十分賄える値であり、有効な方式である。(図3)
(注)設備利用率の向上や電圧の安定化を図るためループ状系統構成を基本とする需要地系統において、各ループ点の潮流や電圧を制御する自励式変換器を使用した制御装置。
電力輸送電中研報告
-分散型電源大量導入時の基本方式の提案-
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需要地系統の保護制御システムの開発
研究報告:T01044キーワード:需要地系統、分散型電源、系統保護・保安、自律分散型制御、単独運転防止
関連研究報告書
主 担 当 者 小林 広武(狛江研究所・需要家システム部)
連 絡 先 (財)電力中央研究所 狛江研究所 事務部・研究管理担当
Tel 03-3480-2111(代)
e-mail ko-rr-ml @ criepi.denken.or.jp
図2 配電線短絡事故時における線路各地点の事故電流と検出可能性(分散型電源側での検出が不可能なケース)
図3 無効電力注入による単独運転時の周波数の変化
図1 提案する自律分散型の保護制御方式