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改正下請法に対応した書類の作成・交付・保存の手引き 平成 16 5 社団法人 全日本トラック協会

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Page 1: 改正下請法に対応した書類の作成・交付・保存の手 …...イ 書類の作成・保存義務(第5条) ウ 下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)

改正下請法に対応した書類の作成・交付・保存の手引き

平成 16 年 5 月

社団法人 全日本トラック協会

Page 2: 改正下請法に対応した書類の作成・交付・保存の手 …...イ 書類の作成・保存義務(第5条) ウ 下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)

- 目 次 -

要旨

Ⅰ 改正下請法に対応した書類の作成・交付・保存の概要

1.改正下請法の趣旨と適用対象 ···················································· 1

2.元請事業者の義務··································································· 3

3.3条書面の作成・交付 ····························································· 5

(1)3条書面の条件··································································· 5

(2)3条書面作成にあたってのフローチャート ······························· 8

(3)連続的・継続的業務の場合 ~契約書&覚書による対応 ············ 10

(4)スポット的業務の場合 ~都度ごとの発注書による対応 ············ 14

4.5条書類の作成・保存 ···························································· 18

Ⅱ 改正下請法に対応したモデル書式(案)

1.運送委託契約書及び覚書 ························································· 21

運送委託契約書(モデル案) ··················································· 23

覚書(モデル案)·································································· 26

覚書による運賃・料金表の記載例 ············································· 28

2.作業指示書兼発注書 ······························································· 31

作業指示書兼発注書(モデル案) ············································· 32

作業指示書兼発注書(モデル案)記入例 ···································· 33

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要旨 1

改正下請法に対応した書類の作成・交付の要旨

○改正下請法第3条では、口頭での不明確な発注によるトラブルの防止、下請事業者保護の観点から、

下請事業者への発注にあたり元請事業者に書面の作成・交付を義務付けています。 ○この書面には所定の必要記載事項がすべて記入・明記されていなければなりません。この「3条書

面」の作成・交付が下請法に対応するうえでの最大のポイントとなります。 ○「3条書面」は必要記載事項が全て記入・明記されていれば様式・名称は問われません。すでに契

約書や覚書、作業指示書(運行指示書)などを作成・交付している場合、まずこれらの書類に必要

記載事項が記入・明記されているかどうかを確認し、3条書面とすることを検討しましょう。 ○連続的・継続的に行われる業務で取引の基本的な条件が一定の場合、契約を締結し、契約書や覚書

を3条書面とするのが便利です。契約書を3条書面とすれば、個別の役務提供のたびに発注書を出

す必要はありません。スポット的な業務委託の場合はその都度発注書を交付する必要があります。

図1 元請事業者の義務 ◆参考:継続的な運送委託における都度の発注書面の必要性 Q35:継続的な運送委託において、契約書を発注書面とすることが可能か。それとも個々の運送を委託

するたびに発注書面を交付する必要があるのか。 A:契約書の内容が、発注書面の具体的記載事項が全て網羅(下請代金の額については算定方法を

記載することも可)されていれば、個別の役務提供のたびに発注書面を交付する必要はない。

注)「改正下請代金支払遅延等防止法解説書」(財団法人公正取引協会:平成 16 年1月)より抜粋。

ア 書面の交付義務(第3条)

イ 書類の作成・保存義務(第5条)

ウ 下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)

エ 遅延利息の支払義務(第4条の2)

義 務

ア 受領拒否の禁止(第1項第1号)

イ 下請代金の支払遅延の禁止(第1項第2号)

ウ 下請代金の減額の禁止(第1項第3号)

エ 返品の禁止(第1項第4号)

オ 買いたたきの禁止(第1項第5号)

カ 購入・利用強制の禁止(第1項第6号)

キ 報復措置の禁止(第1項第7号)

ク 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

             (第2項第1号)

ケ 割引困難な手形の交付の禁止(第2項第2号)

コ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止

           (第2項第3号)

サ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止

            (第2項第4号)

禁 止 行 為

公正取引委員会

措置請求

調査・検査

違反したときは50万円以下の罰金

禁止行為を行ったときは勧告措置

当該下請取引に係る事業の所管省庁

(第9条)

(第6条)

(第4条)

調査・検査

(第9条)

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要旨 2

契約時点で全ての業務内容および委託条件が確定している

委託先との関係

連続的・継続的業務

定 型 的 業 務スポット的業務

契約書には下請法3条規則の記載事項が 全てが網羅されているか

 その都度発注書が出されているか

発注書には下請法3条規則の記載事項が 全てが網羅されているか

契約期間と料金表を定めた契約書があるか

図2 3条書面作成にあたってのフローチャート

元請事業者と下請事業者の名称 下請代金の額(算定方法でも可)

役務提供委託をした日 下請代金の支払期日 下請事業者の役務内容 手形を交付する場合、手形の額(支払い 比率でも可)・手形の満期

下請事業者から役務が提供される期日 ・期間 一括決済方式注)の場合、金融機関名、貸

し付けまたは支払可能額、金融機関へ支 下請事業者から役務が提供される場所 払う期日

下請事業者の給付の内容について検査を 原材料等を元請事業者から購入させる場 する場合は、その検査を完了する期日 合、その品名、数量、対価及び引渡しの

期日並びに決済の期日及びその方法

現在の契約書で、

対 応 可 能 性 大 。

欠けている項目を 契約書もしくは 別紙・覚書で追加 的に記載する

発注書の作成交付 が必要

欠けている項目を 発注書で追加的に 記載する

現在の発注書で、

対 応 可 能 性 大 。

運送委託の場合における3条書面の作成・交付にあたってのチェック事項

④ ⑤

① ⑦

注1)「一括決済方式」とは下請法3条規則第1条第1項第六号にいう債権譲渡担保方式、ファクタリング方式、併存的債務引受方式による決済方式の総称であり、公正取引委員会通達のなかで使用されている用語である。

注2)チェックマークを付していない項目(⑥、⑪)は、製造委託を想定したもので運送・保管委託には関係が薄いと思われる項目である。

契約書には下請法3条規則の記載事項が 全て網羅されているか

発注書には下請法3条規則の記載事項が 全て網羅されているか

③ ⑨

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Ⅰ 改正下請法に対応した書類の 作成・交付・保存の概要

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1

1.改正下請法の趣旨と適用対象 ◎下請法は同業者(利用運送事業者を含む)間での不公正取引を規制するものであり、資本

金規模によって規制の対象となる取引、優越的地位にある事業者を定義している。

◎改正下請法は平成 16 年4月1日から施行されており、4月1日以降に発注された取引か

ら適用される。

◎自社や委託先の資本金規模、取引の行われた時期から、自社が元請事業者注)に該当するの

かどうか、適用対象となる取引なのかどうかを確認する必要がある。

注)「下請代金支払遅延等防止法」では「親事業者」といわれていますが、この冊子では「親事業者」のこ

とを「元請事業者」といいます。 ■下請法の趣旨と運送・保管業務への適用拡大 下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」とする)は、下請取引の公正化及び下請事業

者の利益保護を目的としており、同業者間での不公正取引を規制し、元請事業者による優越

的地位の濫用を防止するものです。 平成 15 年6月の法改正により、運送・保管業務が「役務提供委託」として適用対象に追

加されたことから、トラック運送事業においても元請事業者は下請事業者に対する書面の交

付や書類の保存などの義務を負うことになりました。 ■適用対象となるか否かの確認 下請法の対象となる取引においては、元請事業者は下請事業者に対する書面の交付や書類

の作成・保存義務等を負いますが、すべての下請取引が対象となるわけではありません。自

社や委託先の資本金規模、下請取引の行われた時期をみて、下請法の対象となる取引になる

のかどうか、元請事業者に当たるのかどうかを 初に確認する必要があります。 ■資本金規模からみた適用対象 運送・保管で対象となる取引は、①資本金3億円超の事業者が、資本金3億円以下の運送

事業者に運送・保管を委託する場合、②資本金 1 千万円超3億円以下の事業者が資本金1千

万円以下の事業者に運送・保管を委託する場合です。この取引に該当する発注者(元請事業

者)が「優越的な地位にある事業者」として取り扱われ、規制対象となるのです。同じ資本

金区分に属する運送事業者に委託する場合は対象とはなりません。 ■発注時期からみた適用対象 改正された下請法は平成 16 年4月1日より施行されています。下請法の適用対象となる

のは4月1日以降に行われた下請取引であり、3月 31 日以前に行われた下請取引について

は適用されません。今後発注される下請取引はもちろんですが、すでに行われた下請取引で

あっても、4月1日以降に発注された下請取引であれば、4月1日以降発注分から改正下請

法が適用されている点に留意する必要があります。

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図表1-1 資本金規模による元請事業者・下請事業者の定義

図表1-2 独占禁止法と下請法の規制対象

図表1-3 発注時期からみた適用対象

荷主企業 親事業者 下 請役務の提供

業務の委託 業務の委託

役務の提供

独占禁止法による特 殊 指 定 下 請 法

元 請 事 業 者 下 請 事 業 者

資本金3億円超の法人事業者

資本金1千万円超3億円以下の法人事業者

資本金1千万円超3億円以下の法人事業者

(または個人事業者)

資本金1千万円以下の法人事業者

(または個人事業者)

〈資

:下請法の適用対象

発 注 時 期

平成16年4月1日

現在平成1 6年3月

31日以前に発注された過去の取引には適用され

ない

平成16年4月1日以降に発注された取引

から適用

現在の取引・今後発注される取引には当然適用

法 律 の 効 力

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2.元請事業者の義務 ◎下請法により元請事業者は下請事業者への書面の交付や書類の作成・保存など 4つの義務

を負う。

◎運送事業者が下請法に対応するうえで大きなポイントとなるのが、①下請事業者に対する

「3条書面」の交付と、②「5条書類」の作成・保存である。

◎3条書面の交付は口約束によるあいまいな発注によるトラブル防止を目的としたもので

あり、5条書類の作成・保存は元請事業者における下請代金の支払の管理、行政機関等に

よる検査の資料とするためである。 ■元請事業者の義務 下請法により、元請事業者は①書面の交付義務(下請法第3条)、②書類の作成・保存義

務(第5条)、③下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)、④遅延利息の支払義務(第

4条の2)が課せられます。元請事業者が①、②の義務に違反した場合には、50 万円以下の

罰金が科せられます(第 10 条)。 なお、これらの義務のほかに、第4条のなかで元請事業者の 11 項目の禁止行為が定めら

れており、これらに違反した場合には勧告措置がとられます。 ■下請法対応上のポイント~3条書面と5条書類 元請事業者の義務のなかで、運送事業者が下請法に対応するうえで大きなポイントとなる

のが、①書面の交付義務(第3条)と②書類の作成・保存義務(第5条)です。 ①の書面は「3条書面」といわれるもので、元請事業者から下請事業者に対して、発注に

際して取引内容や代金、支払期日や支払方法等を明記した書面を交付させることで、口約束

などあいまいな発注によるトラブルを防止しようとするものです。 ②の書類は「5条書類」といわれるもので、元請事業者に実際の発注内容を記載・記録さ

せた書類を作成させるとともに、2年間保存させることで、元請事業者における下請代金の

支払の管理、公正取引委員会等の行政機関による検査を迅速・確実に行うための資料にする

ことを目的としています。 この3条書面や5条書類の条件(必要となる記載事項や具体的な記載方法等)や、具体的

な作成方法についてはこのあと詳しくみることとします。 ■3条書面と5条書類に関する法令 3条書面、5条書類として必要となる記載事項や具体的な記載方法等については、それぞ

れ公正取引委員会規則のなかで定められており、3条書面については「下請代金支払遅延等

防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」(以下「3条規則」とします)、5条書類に

ついては「下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する

規則」(以下「5条規則」とします)があります。

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下請取引(発注)に際しての 下請事業者に対する書面の交付

実際の取引内容に関する 書類の作成・保存

内 容

条 文 (書類等の作成及び保存) 第5条 親事業者は、下請事業者に対し製造委

託等をした場合は、公正取引委員会規則で定め

るところにより、下請事業者の給付、給付の受

領(役務提供委託をした場合にあっては、下請

事業者がした役務を提供する行為の実施)、下

請代金の支払その他の事項について記載し又

は記録した書類又は電磁的記録(電子的方式、

磁気的方式、その他人の知覚によっては認識す

ることができない方式で作られる記録であっ

て、電子計算機による情報処理の用に供される

ものをいう。以下同じ。)を作成し、これを保

存しなければならない。

◆口頭での曖昧な発注によるトラブルの防止 ◆書面作成・交付を通じた取引内容の明確化 ◆下請取引の公正化・下請事業者の保護

趣旨・目的 ◆実際の発注内容の記録によるトラブルの防止 ◆公正取引委員会等の行政機関による検査を円

滑・迅速に行うための資料確保

下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の

記載事項等に関する規則 (3条規則)

下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又

は電磁的記録の作成及び保存に関する規則 (5条規則)

下請代金支払遅延等防止法施行令 下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の

記載事項等に関する規則 (3条規則)

下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又

は電磁的記録の作成及び保存に関する規則 (5条規則)

必要記載事項 を定める法令

電磁的方法 による場合 の法令

図表2-1 元請事業者の義務

図表2-2 3条書面と5条書類

(書面の交付等) 第3条 親事業者は、下請事業者に対し製造委

託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規

則で定めるところにより下請事業者の給付の

内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法そ

の他の事項を記載した書面を下請事業者に交

付しなければならない。ただし、これらの事項

のうちその内容が定められないことにつき正

当な理由があるものについては、その記載を要

しないものとし、この場合には、親事業者は、

当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事

項を記載した書面を下請事業者に交付しなけ

ればならない。

ア 書面の交付義務(第3条)

イ 書類の作成・保存義務(第5条)

ウ 下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)

エ 遅延利息の支払義務(第4条の2)

義 務

ア 受領拒否の禁止(第1項第1号)

イ 下請代金の支払遅延の禁止(第1項第2号)

ウ 下請代金の減額の禁止(第1項第3号)

エ 返品の禁止(第1項第4号)

オ 買いたたきの禁止(第1項第5号)

カ 購入・利用強制の禁止(第1項第6号)

キ 報復措置の禁止(第1項第7号)

ク 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

             (第2項第1号)

ケ 割引困難な手形の交付の禁止(第2項第2号)

コ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止

           (第2項第3号)

サ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止

            (第2項第4号)

禁 止 行 為

公正取引委員会

措置請求

調査・検査

違反したときは50万円以下の罰金

禁止行為を行ったときは勧告措置

当該下請取引に係る事業の所管省庁

(第9条)

(第6条)

(第4条)

調査・検査

(第9条)

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3.3条書面の作成・交付

(1)3条書面の条件 ◎元請事業者は下請事業者への発注に際して、役務の内容や下請代金、支払期日や支払方法

等について記載した書面を作成・交付する義務がある。これを3条書面という。 ◎3条書面には必要記載事項が全て記載・明記されていなければならないが、とくに様式や

名称は指定されていない。複数の書類に分けて記載することも可能である。 ◎書類の交付に代えて電子メール等の電磁的方法による発注も認められているが、下請事業

者からの事前の承諾が必要である。 ■下請法第3条の趣旨と概要 下請法第3条では口頭での不明確な発注によるトラブルの防止、下請事業者保護の観点か

ら、下請事業者への発注にあたり、元請事業者に書面の作成・交付を義務付けています。こ

の書面が「3条書面」といわれるもので、元請事業者となる運送事業者が下請法に対応する

うえで、この3条書面の作成・交付が大きなポイントとなります。 ■3条書面の必要記載事項

3条書面として必要となる具体的な記載事項については、公正取引委員会規則(3条規則)

のなかに定められています。3条書面には原則としてこの必要記載事項が全て記入・明記さ

れていなければなりません。下請事業者への発注に際して、元請事業者は下請事業者に対し

て必要記載事項を全て記載・明記した書類を交付しなければならないのです。 3条規則には具体的な必要記載事項が全部で 11 項目定められていますが、このうち運送・

保管の下請取引に関係がある項目だけを取り出して整理してみると、次の図表のとおり9項

目となります。元請事業者は3条書面の作成・交付にあたり、作成した書面がこれらの項目

をもれなく明確に記入できているかどうかをチェックする必要があります。 ■3条書面の様式・名称 上記のとおり、3条書面には必要記載事項が定められていますが、所定の事項が全て記

載・明記されていれば、とくに様式や名称は問われません。 また、1 つの書類のなかに必要記載事項を全て記入しなければならないわけではなく、複

数の書類のなかに必要項目を分けて記載し、あわせて3条書面とすることもできます。ただ

し、この場合はこれらの書類の関連性が分かるような記載が必要となります。 ■電磁的方法による発注 3条書面の交付は紙ベースだけではなく、電子メール、EDI(電子データ交換)やホー

ムページ上など、電磁的方法による発注も認められています。ただし、3条書面を電子メー

ル等で下請事業者に送付する場合は、事前に下請事業者に対して、使用する電磁的方法の種

類および内容を示して、承諾を得なければなりません。

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図表3-1-1 3条書面の必要記載事項

下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則 第1条 下請代金支払遅延等防止法(以下「法」という。)第3条の書面には、次に掲げる事項を

明確に記載しなければならない。 一 親事業者及び下請事業者の商号、名称又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であ

って親事業者及び下請事業者を識別できるもの①

二 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託(以下「製造委託等」という。)

をした日②、下請事業者の給付(役務提供委託の場合は、提供される役務。以下同じ。)の内容

③並びにその給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が委託を受けた役務を

提供する期日(期間を定めて提供を委託するものにあっては、当該期間④))及び場所

⑤ 三 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日

⑥ 四 下請代金の額

⑦及び支払期日

⑧ 五 下請代金の全部又は一部の支払につき手形を交付する場合は、その手形の金額及び満期

⑨ 六 下請代金の全部又は一部の支払につき、親事業者、下請事業者及び金融機関の間の約定に基

づき、下請事業者が債権譲渡担保方式(下請事業者が、下請代金の額に相当する下請代金債権

を担保として、金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付けを受ける方式)又はフ

ァクタリング方式(下請事業者が、下請代金の額に相当する下請代金債権を金融機関に譲渡す

ることにより、当該金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)若し

くは併存的債務引受方式(下請事業者が、下請代金の額に相当する下請代金債務を親事業者と

共に負った金融機関から、当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)により金融

機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付け又は支払を受けることができることとする

場合は、次に掲げる事項 イ 当該金融機関の名称 ロ 当該金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとする額 ハ 当該下請代金債権又は当該下請代金債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払う期日

⑩ 七 製造委託等に関し原材料等を親事業者から購入させる場合は、その品名、数量、対価及び引

渡しの期日並びに決済の期日及び方法⑪

運送委託の場合における3条書面作成・交付にあたってのチェック項目

元請事業者と下請事業者の名称 下請代金の額(算定方法でも可) 役務提供委託をした日 下請代金の支払期日 下請事業者の役務内容 手形を交付する場合、手形の額(支 払い比率でも可)・手形の満期

下請事業者から役務が提供される 期日・期間 一括決済方式注)の場合、金融機関名、

貸し付けまたは支払可能額、金融 下請事業者から役務が提供される 機関へ支払う期日 場所 原材料等を元請事業者から購入させ 下請事業者の給付の内容について る場合、その品名、数量、対価及び 検査をする場合は、その検査を完 引渡しの期日並びに決済の期日及び 了する期日 その方法

① ② ③ ④

⑦ ⑧ ⑨

注1)「一括決済方式」とは上記第1条第1項第六号にいう債権譲渡担保方式、ファクタリング方式、併存的債務引受方式による決済方式の総称であり、公正取引委員会通達のなかで使用されている用語である。

注2)チェックマークを付していない項目(⑥、⑪)は、製造委託を想定したもので運送・保管委託には関係が薄いと思われる項目である。

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7

図表3-1-2 書面の交付に代えることができる電磁的方法とその条件

1.電子メールにより提供する場合

2.WEBホームページにより提供する場合

3.FAXにより提供する場合

●書面の交付に代えて電磁的記録による提供を行う場合は、下請事業者側がファイルに記録する

ことが必要である。 ●下請事業者のファイルに記録されなかったときは、下請法第3条に違反することになるので、

元請事業者において下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要である。 ●元請事業者がシステムの故障等により、下請事業者に対して、電磁的方法による提供を行うこ

とができなかった場合は、当該下請事業者に対して書面を交付する必要がある。 「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」より

①使用する電磁的方法の種類

(電子メール、WEB等)

及び内容の提示

②事前の承諾

パ ソ コ ン

パ ソ コ ン

メール

※下請事業者のメールボックスに送信するだけでは足りず、下請事業者側が当該メールを受信し自己のパソコン

に保存していることが必要。

パソコン

WEBホームページ

元 請 事 業 者

FAX

※下請事業者がプラウザ等で閲覧しただけでは足りず、下請事業者が閲覧した事項について、別途電子メールで送信するか、ホームページでダウンロード機能を持たせるなどして、下請事業者のファイルに記録できるような方策等の対応が必要となる。

FAX FAX

FAX

受信と同時に書面によ

り出力されるタイプ

電磁的記録をファ

イルに記録する機

能を有するタイプ

「書面の交付」に該当

「電磁的方法による提供」に該当

パ ソ コ ン

下 請 事 業 者

○●物流株式会社アクセス

ダウンロード

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8

(2)3条書面作成にあたってのフローチャート ◎3条書面はとくに様式は指定されていないため、必要記載事項を全て記入・明記できるの

であれば、既存の書類からの作成も可能である。 ◎連続的・継続的な業務委託の場合は契約書や覚書を3条書面とするのが便利である。スポ

ット的な業務委託の場合はその都度発注書の交付が必要になる。 ■既存の書類の確認 これまで説明したとおり、3条書面は所定の記載事項が全て記載・明記されていればよい

のであり、とくに様式や名称は問われません。これまでの下請取引にあたって作成してきた

書類に、3条書面としての記載事項がもれなく記入されているのであれば、既存の書類を3

条書面として使うことが可能なのです。 このため、これまでの下請取引にあたって作成してきた書類があれば、その内容を確認し、

3条書面として活用できるかどうかをチェックするとよいでしょう。欠けている項目があっ

ても、その項目を追加的に記載すれば3条書面とすることができます。 ■契約書の活用

下請事業者との間で契約を締結し、契約期間と料金表を定めた契約書を取り交わしている

場合は、まず、この契約書を3条書面として活用することを検討しましょう。 運送や保管の下請取引は連続的・継続的に行われ、取引内容が定型化しているものが多く、

こうした業務については基本的な取引内容について契約書を取り交わした方が便利です。後

にみるように、契約書を3条書面とする場合には、その都度の発注書の交付が必要なくなっ

て書類作成業務負担を軽減でき、支払期日の面でもメリットが得られる可能性があります。 契約書を3条書面とするためには、所定の記載事項が全て記入・明記されていなければな

りません。仮に欠けている項目があれば、契約書本体、もしくはそれに付属する覚書など別

紙のなかに追加的に記載することで3条書面とすることができます。 契約書・覚書(p10 参照)を3条書面とする場合、3条書面とは別に作業指示書・依頼書や

運行指示書といった書類を交付する際は代金を記載しなくても構いません。 ■その都度の発注書の交付 契約期間や料金表を定めた契約書が取り交わされていない場合、スポット的な業務委託、

非定型的な業務内容で、年間契約が締結できないような場合は、その都度発注書を下請事業

者に交付しなければなりません。これまで口頭や電話のみでの委託を行っていた場合には、

あらためて発注書を作成・交付する必要があります。 すでに発注書が出されているのであれば、あとは3条書面としての必要記載事項が全て網

羅されているかどうかをチェックし、足りない項目があれば追加的に記載しましょう。 作業指示書・依頼書や運行指示書といった名目の書類が交付されていれば、これらの既存

書類に必要記載事項を明記することで3条書面としていく方法もあります。

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契約時点で全ての業務内容および委託条件が確定している

委託先との関係

連続的・継続的業務

定 型 的 業 務スポット的業務

契約書には下請法3条規則の記載事項が 全てが網羅されているか

 その都度発注書が出されているか

発注書には下請法3条規則の記載事項が 全てが網羅されているか

契約期間と料金表を定めた契約書があるか

図表3-2 3条書面作成にあたってのフローチャート

元請事業者と下請事業者の名称 下請代金の額(算定方法でも可) 役務提供委託をした日 下請代金の支払期日 下請事業者の役務内容 手形を交付する場合、手形の額(支払い 比率でも可)・手形の満期

下請事業者から役務が提供される期日 ・期間 一括決済方式注)の場合、金融機関名、貸

し付けまたは支払可能額、金融機関へ支 下請事業者から役務が提供される場所 払う期日

下請事業者の給付の内容について検査を 原材料等を元請事業者から購入させる場 する場合は、その検査を完了する期日 合、その品名、数量、対価及び引渡しの 期日並びに決済の期日及びその方法

現在の契約書で、

対 応 可 能 性 大 。

欠けている項目を 契約書もしくは 別紙・覚書で追加 的に記載する

発注書の作成交付 が必要

欠けている項目を 発注書で追加的に 記載する

現在の発注書で、

対 応 可 能 性 大 。

① ② ③ ④ ⑤

⑦ ⑧ ⑨ ⑩

注1)「一括決済方式」とは下請法3条規則第1条第1項第六号にいう債権譲渡担保方式、ファクタリング方式、併存的債務引受方式による決済方式の総称であり、公正取引委員会通達のなかで使用されている用語である。

注2)チェックマークを付していない項目(⑥、⑪)は、製造委託を想定したもので運送・保管委託には関係が薄いと思われる項目である。

発注書には下請法3条規則の記載事項が 全て網羅されているか

契約書には下請法3条規則の記載事項が 全て網羅されているか

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(3)連続的・継続的業務の場合 ~契約書&覚書による対応~

◎連続的・継続的業務の場合は契約書と覚書による対応が便利である。年間契約を締結すれ

ば、連続的・継続的な業務としての取り扱いが可能になる。 ◎現在の契約書に3条書面としての必要記載事項が全て記入・明記されていれば、契約書を

3条書面として活用することができ、あらためて3条書面を作成する必要はない。 ◎代金や支払方法等については契約書に付属する別紙「覚書」のなかで取り決めておけば、

改定を行う際、契約書はそのままにして覚書だけを変更することで対応が可能となる。 ■契約書を作成するメリット 下請法では、原則として個々の発注のたびに書面の作成・交付が必要とされていますが、

契約書自体が3条書面として認められれば、契約の取り決め内容に変更がない限り、個々の

発注の都度、書面を作成・交付する必要はなくなります。 また、契約書を3条書面とすれば、支払期日の面でもメリットがあります。支払期日につ

いては、原則として役務の提供を受けてから 60 日以内とされていますが、連続的・継続的

な業務として、1ヶ月間の運送実績に応じて料金を決める月ぎめの契約を締結すれば、例え

ば 4 月初めに提供された運送業務については、4月末日に4月分の役務が提供されたものと

みなし、4月末日(締日)から起算して 60 日以内、すなわち翌々月(6月)末の支払が可

能となります。これを個別に発注したのであれば、遅くとも翌月末(5月)までの支払とな

ることに留意して下さい。 ■契約書に付属する別紙「覚書」による対応 上記のように契約書を3条書面とする方法には元請事業者にとってもメリットがありま

すが、契約書のなかで全ての事項について細かに取り決めることは実際には困難であり、ま

た、取引内容・代金に変更があった場合はあらためて契約書を作成・交付しなければなりま

せん。こうしたことから、契約書では基本的な事項、各事業者や取引に共通する項目のみ定

めておき、代金の決め方や支払方法については、契約書とは別に「覚書」という名称の付属

書類を別途作成し、そのなかで取り決める方法が多くとられています。 契約書とは別の書類を作成すれば、代金改定や支払方法の変更があった場合にもこの覚書

等だけを変更すれば足り、契約書本体を変更せずに済みます。 ■料金関係の記載方法 下請法では、原則として具体的な金額を代金欄に記載する必要があるとされていますが、

具体的な金額の記載が困難な場合には「算定方法」による記載でも可能とされています。た

とえば、月ぎめの契約を締結し、1ヶ月間の輸送実績に応じて代金が決まる場合には、契約

書や覚書のなかで具体的な金額を記載することはできないため、契約書のなかでは「支払代

金は覚書のなかで定める」と記載しておき、この覚書のなかに算定方法として料金表(タリ

フ)を記載するという方法があります。

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ス ポ ッ ト 的 業 務 の 場 合

その都度・個別の業務ごとの発注書の発行 (役務が提供されてから 60 日以内の支払)

5日 15 日 25 日

締切後 30 日(1ケ月以内)

役 務 の 提 供 時 期

※各々役務が提供された(サービスを受領)したときが起算日 となり、支払日も起算日から60日以内となる。

5日 15 日 25 日

5日 15 日 25 日

1ケ月締切制度を採用している場合●

役 務 の 提 供 時 期

※個別の輸送を月末に締切る場合は、締切後30日(1ケ月)以内(個々の輸送 は60日以内とされているため)に支払日を設定し、支払う必要がある。

図表3-3-1 連続的・継続的業務とスポット的業務における支払期日の比較

1ケ月間の運送実績に応じて代金を定める 月ぎめの契約を締結 (月末締めの翌々月末支払)

5日 15 日 25 日

起 算 日 支 払 日

60日以内の支払 役 務 の 提供時期

連 続 的 ・ 継 続 的 業 務 、 定 型 的 業 務 の 場 合

※月はじめの業務についても翌々月末の支払が可能に。たとえば、4月5日の業務●についても月単位の役務とみなされていることから6月末の支払が可能になる。

起算日 起算日 起算日 支払日 支払日 支払日

起算日 支払日

60日以内の支払

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■算定方法による記載 下請代金として算定方法を記載する場合は、下請代金の具体的な金額を「自動的に」確定

できるものでなければならないとされています。また、下請代金の具体的な金額が確定した

後、支払日の前までに代金の額を下請事業者に書面で通知する必要があります。 覚書における料金表(単価表)の記載パターンとしては、①時間をベースにしたもの、②

距離(区間)をベースにしたもの、③重量・個数をベースにしたもの、が考えられます。 ■支払期日の記載 支払期日の記載方法としては、具体的な年月日を記入するほか、「毎月○日締め、翌月○

日支払」というように、支払制度を記入する方法もあります。 さきにみたとおり、支払期日は原則として、サービスを受領してから(役務の提供を受け

てから)60 日以内の期日に定めなければなりませんが、連続的・継続的業務として年間契約

を締結し、1ヶ月間の運送実績に応じて代金を決める内容とすれば、月初めに頼んだ業務に

ついては、月末締めの翌々末日払いとすることも可能です(これを個別に発注したのであれ

ば、遅くとも翌月末までの支払いが必要となります)。 また、「支払条件」として、「支払期日」と「支払方法」を合わせて記載する方法もありま

す。例えば、支払方法として手形と現金を併用する場合には「毎月○日締め。手形支払期日

翌月○日。現金支払日翌月○日」と記載します。 ■支払方法の記載 支払方法としては、①現金払い(口座振込み)、②手形交付、③一括決済方式があります。 支払代金を金融機関の口座振込みにより支払う場合には、その旨記入します。支払期日が

金融機関の休業日に当たる場合に、当該金融機関の翌営業日に支払うこととする場合には

(ただし、順延期間は2日以内の場合に限られます)、その旨も記入する必要があります。 下請代金の支払手段として手形を交付しようとする場合には、その額又は支払額に占める

割合および支払手形の満期日を記入します。満期日に代えて振出日から満期日までの日数

(期間)を記入してもかまいません。 下請代金の支払手段として一括決済方式を用いる場合には、①下請事業者がこの方式によ

り下請代金の額に相当する金銭の貸付又は支払を受けることができる金融機関の名称、②当

該貸付又は支払を受けることができる額又は支払額に占める割合、③この方式により支払う

下請代金の額に相当する金銭を元請事業者が金融機関に支払う日を記載します。 注)「一括決済方式」とは下請法3条規則第1条第1項第六号にいう債権譲渡担保方式、ファクタリング方

式、併存的債務引受方式による決済方式の総称であり、公正取引委員会通達のなかで使用されている用

語である。 ■委託内容と役務の提供場所の記載 委託場所も3条書面の必要記載事項ですが、業務内容のなかに場所の記載が記されていれ

ば、あらためて委託場所を記載する必要はありません。 また、委託内容から場所の特定が不可能な場合も、場所の記載は不要となります。例えば、

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連続的・継続的業務として年間契約を締結し、車両1台につき、時間あたり、1日あたりの

単価を提示して、実際の稼動時間(稼動日数)に応じて下請代金を支払う内容の取り決めを

行っている場合がこれに該当します。

図表3-3-2 契約書と覚書 契約書 覚書注*) 記載事項 ○各事業者、取引に共通する事項

○大まかな事項の取決め ○細部の取り決めを覚書に委任する旨

○契約書で決めるのが困難な細目の取決め ○改定・変更される可能性のある項目

期 間 有効期間

○年間・自動更新 ○特段の申し入れのない限り1年ごとに自

動更新とする。

○契約書の期間にそろえてもよいが、契約書

とは別に期間を定める方法もある。 ○基本契約が失効した場合には自動的に効

力を失う。 時 期 ○契約締結時の1回のみ。

○特段の申し入れのない限り基本的に自動

更新とする。

○取引内容に変更・改定があったときにはあ

らためて作成・交付する。

具体的な項目 A.3条書面としての記載項目の全て ※覚書のなかに記載を委ねる項目について

はその旨を明記する B.その他契約書として一般的な項目 →目的、遵守事項、契約の解除、機密保持等 →信義則、損害賠償 等

○委託業務の範囲・具体的な委託業務内容 ○代金関係についての項目 →支払代金・単価表 →支払方法・支払時期 等

※3条書面としての必要記載項目のうち、代

金関連の項目が中心 目 的

○多くの取引、下請事業者に効率的に対応す

るための共通フォーマットとしての活用 ○覚書発行の根拠

○取引内容の変更・改定の際における迅速・

柔軟な対応

注 1)覚書とは法律用語であり、契約の当事者が、契約の解釈を明らかにしたり、これを補足した

りするために取り交わす文書。との意味合いで使われる。

注 2)「協定書」「支払等について」などの名称が使われることがある。

◆参考:委託内容と役務の提供場所の記載例 以下の例のように、委託内容に役務の提供場所が記載されている場合には、あらためて場

所を記載する必要はない。 委託内容:貨物積み込み先 ○○㈱(○○区○○町所在)→取卸先:△△㈱(△△市△△町所在) ◆参考:支払方法の記載例 ①全額現金払い(口座振込みによる。支払期日が金融機関の休業日に当たる場合、順延期間が2

日以内の場合には当該金融機関の翌営業日に支払う) ②手形割合○%、手形期間○日 ③現金○%、手形期間○日(手形期間○日、総額○万円未満のときは全額現金払い) ④支払総額○万円以上のときは手形払い、期間○日 ⑤支払総額○万円未満全額現金 支払総額○万円以上のときは、手形○%(期日○日)、残額現金 ⑥現金○% 一括決済方式○%(金融機関名、金融機関との決済期日○年○月○日) 又は(金融機関名、決済は支払期日から起算して○日目) 注)「改正下請代金支払遅延等防止法解説書」(財団法人公正取引協会:平成 16 年1月)より作成。

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(4)スポット的業務の場合 ~都度ごとの発注書による対応

◎連続的・継続的な業務とは言えないスポット的な業務委託、非定型的な業務内容で、年間

契約が締結できない場合は、その都度発注書を下請事業者に交付する必要がある。 ◎発注書には原則として3条書面として必要な記載事項を全て記載・明記し、発注後「直ち

に」下請事業者に交付しなければならない。 ◎発注書には原則として具体的な下請代金を記載しなければならない。ただし、具体的な金

額の記載が困難な場合には、算定方法による記載が認められている。 ◎3条書面はとくに様式は定めていないため、スポットの場合も作業指示書や運行指示書が

出されていれば、それに必要な記載事項を追加して3条書面とすることも可能である。 ■発注書の作成が必要なケース

突発的な需要や緊急事態に対応するために、そのとき、その場限りでやむなく新規の事業

者に委託する場合や、今後継続的に利用するかどうかわからない場合など、どうしても年間

契約の締結(契約書の作成・交付)が難しいときには、法律の定める原則どおりにその都度

発注書を出す必要があります。 一方、先に説明したとおり、連続的・継続的な業務として年間契約を締結し、契約書と覚

書で必要な記載事項が全て記載・明記できれば、その都度の発注書は不要となる可能性が高

くなります。このため、これまで利用実績のある事業者で、年に数回ではあっても利用する

事業者、委託内容がある程度決まっている事業者については、できるだけ年間契約を締結し

て前述の契約書・覚書を取り交わし、連続的・継続的業務として取り扱う方が、契約による

明確な取り決めを定着させていくうえでも望ましく、下請法の趣旨に適うものといえます。 ■発注書の作成方法 前に説明したとおり、「3条書面」は所定の事項が記載・明記されていればよく、様式や

名称は問われません。必ず「発注書」という名称の新たな書式をあらためて作成・交付しな

ければならないわけではありません。 たとえば、これまでの委託のなかで、「作業指示書」もしくは「運行指示書」など、委託

する作業内容についてその都度指示している書類が出されていれば、これに下請代金や支払

方法など、「3条書面」として必要な項目を追加して記載する方法でも発注書を作成するこ

とができます。 ■代金関係の記載方法 発注書の作成にあたっても代金関係の記載がポイントになります。その都度作業指示書等

が出されていても、作業内容や場所・期日についての記載が中心であり、代金関係について

は記載されていないことが多いため、作業指示書等から3条書面としての発注書を作成する

場合、必ず代金関係の記載欄を追加して記入することが必要になります。

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図表3-4-1 契約書・覚書と発注書の比較 契約書&覚書 発注書 対象となる業

務 ○連続的・継続的業務 ○定型的業務

○スポット的業務 ○非定型的業務

対象となる事

業者

○過去に利用実績のある事業者で今後も利

用可能性のある事業者 ○定期的に利用している事業者/委託内容

がほぼ決まっている事業者

○新規事業者で今後利用するかどうかわか

らない事業者 ○突発的な需要、緊急事態への対応のために

委託したその場・そのとき限りの事業者 時 期 ○契約書は基本的に契約締結時の1回のみ。

○契約期間は1年、特段の申し入れのない限

り基本的に1年ごとの自動更新とする。 ○取決め内容に変更があれば、契約書本体は

変更せずに付属覚書のみを変更する。

○原則として発注(委託)の都度作成・交付

する。 ○個別の委託業務ごとに発行する必要あり。 ○原則として発注の際に「直ちに」交付する。

作成方法 既存の書類か

らの作成

○既存の契約書や覚書からの作成も可能 ○契約書&覚書に3条書面の必要記載事項

が網羅されていればそのまま3条書面に。

○既存の「作業依頼書」または「運行指示書」

からの作成も可能。 ○上記書類に3条書面の必要記載事項が網

羅されていればそのまま3条書面に。 記載項目 3条書面としての記載項目の全て

○契約書と付属する別紙覚書とに分けて記

載することも可能。 ※覚書のなかに記載を委ねる項目について

はその旨を明記し、書類の相互の関連性が

分かるようにする必要がある。

3条書面としての記載項目の全て ○正当な理由があれば「当初書面」と「補充

書面」に分けて記載することも可能。 ※補充書面を出す場合には、当初書面との関

連性が分かるようにする必要がある。

支払時期

○連続的・継続的業務として月末締めの翌々

月支払が可能。 ○スポット業務として個々の役務の提供が

なされた日から起算して 60 日以内。 ○1カ月締切制度の場合には月末締め翌月

末までに支払。 メリット デメリット

○連続的・継続的業務として1ヶ月の運送実

績に応じた月ぎめの契約にすれば個別の

書類作成業務の負担が軽減。 ●印紙税の負担が生じる。

○下請契約の成立を証明するものでないの

で、収入印紙は不要。 ※ただし、下請事業者から承諾書(請書)を

とった場合、この承諾書に収入印紙を貼る

必要がある。 ◆参考:継続的な運送委託における都度の発注書面の必要性 Q35:継続的な運送委託において、契約書を発注書面とすることが可能か。それとも個々の

運送を委託するたびに発注書面を交付する必要があるのか。 A:契約書の内容が、発注書面の具体的記載事項が全て網羅(下請代金の額については算

定方法を記載することも可)されていれば、個別の役務提供のたびに発注書面を交付

する必要はない。 注)「改正下請代金支払遅延等防止法解説書」(財団法人公正取引協会:平成 16 年1月)より抜粋。

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■算定方法による記載 代金については、具体的な金額の記載が難しい場合には算定方法による記載が認められて

おり、1枚の書類にまとめる必要もないため、発注書上は算定方法のみ記載して、料金表(タ

リフ)を別途添付する形でも対応は可能です。たとえば、発注時点では個数やトン数が不明

であり、実際に輸送してみないと金額が確定できないようなケースでは、個数ベース、トン

数ベースでの料金表タリフを添付しておいて、発注書には「料金は別添の料金表による」と

記載しておけばよいのです。このように発注書と料金表を別々に作成する場合、メインとな

る発注書には料金表との関係は明記しておかなければなりません。 ただし、算定方法は下請代金の具体的な金額を「自動的に」確定できるものでなければな

らないとされています。例えば「元請事業者が荷主から収受する運賃の○%」といった不確

定な方法は、算定方法として認められません。その場合には、運賃体系そのものの変更が求

められることになります。また、下請代金の具体的な金額が確定した後、支払日の前までに、

代金の額を下請事業者に書面で通知する必要があります。 ■発注書交付の時期 発注書には3条書面として必要な事項を全て記載・明記したうえで、下請事業者に対して

「直ちに」交付しなければなりません。 ただし、必要記載事項のうち、発注時点で定めることができないことにつき正当な理由が

ある項目がある場合は、とりあえずそれ以外の項目について記載した書面(以下「当初書面」

とします)を交付して、当初書面に記載できなかった項目については内容が確定した後に別

途書面(以下「補充書面」とします)を交付することが認められています。

■補充書面の発行が認められる「正当な理由」とは 補充書面を発行する方法を採る場合、当初書面に、記載できないことについての「正当な

理由」と「内容を定めることができる予定期日」を記載しなければなりません。問題はどの

ような場合が「正当な理由」として認められるかですが、算定方法が記載できるのに記載し

ない場合は「正当な理由」として認められていません。例えば、実際の輸送個数や輸送距離

に応じて料金を決めている場合、実際に輸送してみなければ料金は確定しませんが、その場

合でも個数ベースや輸送距離による算定方法の記載は可能なため、代金欄を空欄にしたまま

算定方法も記載せずに発注書とすることは認められません。 また、荷主から収受できる代金がいくらになるかがわからないこと、荷主からの支払時期

がわからないこと等、荷主との関係も下請法上は「正当な理由」としては認められません。 トラック運送事業における下請取引の場合、「正当な理由」に該当するようなケースはほ

とんどなく、具体的金額が決まらない場合でも算定方法を必ず記載し、荷主からの運賃に応

じて下請事業者への支払代金を決めるような運賃体系をとっている場合には、個数や距離ベ

ース、車両ベース(車両1台あたりの運賃)などの明確な運賃体系に変更するなどの対応を

採る必要があります。

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図表3-4-2 「正当な理由」がある場合における補充書面の発行 ◆参考:「正当な理由がある」と認められる例・認められない例 「正当な理由」とは、取引の性質上、発注(委託)した時点では具体的記載事項の内容を定

めることができないと客観的に認められる理由である。 正当な理由があると認められる例 ○ソフトウェア作成委託において 終ユーザーが求める仕様が確定しておらず、正確な委託内

容を決定することができない場合 ○広告製作物の作成委託において製作物の具体的な内容が確定していない場合 ○放送番組の作成委託において番組の具体的な内容が確定していない場合 ○製造委託において、元請事業者はその基本性能等の概要使用のみを示して委託を行い、下請

事業者が持つ技術により詳細設計を行って具体的な仕様を決定していく場合 正当な理由があると認められない例 ○具体的記載事項の内容について決定できるにもかかわらず決定しない場合 ○下請代金の額として「算定方法」の記載が可能であるにもかかわらず記載しない場合 ○荷主からの収受運賃に応じて下請事業者への代金を決定する場合

注)改正下請代金支払遅延等防止法解説書(財団法人公正取引協会:平成 16 年1月)より作成

発注(委託) 納入(役務の提供)

※発注に際して 直ちに交付

※内容が確定し 次第直ちに交付

発注(委託)段

階で明確に記載

できる項目

発注(委託)段階

で内容が定めら

れないことにつ

き正当な理由が

ある項目

当初書面への記載事項 ◆必要記載事項のうち「直ちに」記載す

ることができない項目以外の項目 ◆内容が定められない理由 ◆内容を定めることになる予定期日

【3条書面としての必要記載事項】

補充書面への記載事項 ◆必要記載事項のうち「直ちに」記載

することができなかった項目 ◆当初書面との関係

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4.5条書類の作成・保存 ◎元請事業者は実際の取引内容や支払金額・方法等について記載した書類を作成し、2年間

保存しておかなければならない。この書類を「5条書類」という。 ◎5条書類も必要な記載事項が全て記載・明記されていなければならないが、ほとんどの項

目は3条書面の記載事項と重複しているため、3条書面とは別に新たな書類を作成する必

要性は小さい。 ◎5条書類についても、電磁的な方法による取引記録の作成・保存が認められている。 ■書類の作成・保存義務 下請法第5条では、「3条書面」とは別に、下請事業者から実際に提供された役務内容や

役務の提供が行われた日、実際に支払われた下請金額や方法等について記載・記録した書類

の作成を義務付けています。 この書類は公正取引委員会等の行政機関による検査時に必要な資料となるため、元請事業

者は2年間の保存が義務付けられており、「5条書類」といわれています。トラック運送事

業者にとっては、3条書面の作成・交付とともに、この5条書類の作成・保存も、下請法に

対応するうえで大きなポイントとなります。

■下請法第5条の趣旨 下請法第5条が設けられた趣旨は、元請事業者に書類を作成・保存させることによって、

下請取引に係るトラブルを未然に防止するとともに、行政機関による迅速・正確な検査を確

保するためです。書面作成を通じて下請取引に係るトラブルを未然に防止するという趣旨は

下請法第3条と同じですが、公正取引委員会等による検査を迅速・円滑に実施するために必

要とされる書類です。

■5条書類の作成方法 5条書類も3条書面と同じく必要な記載事項が公正取引委員会規則(5条規則)のなかで

定められており、これらの事項を全て網羅していなければなりません。ただし、5条書類の

必要記載事項をみると、その内容は3条書面の必要記載事項がベースとなっており、ほとん

どの項目が重複しています。したがって、3条書面がきちんと作成されており、下請事業者

への委託後、とくに役務の内容や支払条件の変更等が行われていなければ、基本的に下請事

業者に交付した3条書面の控えを保存するだけで対応可能であり、5条書類としてあらため

て書類を作成する必要は小さいと思われます。 実際に運送業務が行われた日や実際の支払金額など、なかには3条書面の必要記載事項以

外の項目もありますが、多くの場合は元請事業者から下請事業者に対して支払明細通知書が

発行されているかと思いますので、この支払明細通知書で対応可能です。

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◆参考 書類の作成・保存義務に関する法令 ○下請法第5条(書類等の作成及び保存) 第5条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、公正取引委員会規則で定め

るところにより、下請事業者の給付、給付の受領(役務提供委託をした場合にあっては、下

請事業者がした役務を提供する行為の実施)、下請代金の支払その他の事項について記載し又

は記録した書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式、その他人の知覚によっては認識

することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供され

るものをいう。以下同じ。)を作成し、これを保存しなければならない。 ○5条規則第3条(保存期間) 第3条 法第5条の書類又は電磁的記録の保存期間は、第1条第1項から第3項までに掲げる

事項の記載又は記録を終った日から2年間とする。

図表4-1 3条書面と5条書類における必要記載事項の比較 3条書面の具体的記載事項

5条書類の具体的記載事項

元請事業者と下請事業者の名称

下請事業者の名称

役務提供委託をした日

役務提供委託をした日

下請事業者の役務内容

下請事業者の役務の内容

下請事業者から役務が提供される期日・期間

下請事業者から役務が提供される期日・期間

下請事業者から役務が提供される場所

下請事業者から役務が提供された期間・期日

下請代金の額(算定方法でも可)

下請代金の額

下請代金の支払期日

下請代金の支払期日

手形を交付する場合、手形の額(支払比率でも可)・手形の満期

手形を交付した場合、手形の額・交付日・手形の満期

一括決済方式の場合、金融機関名、貸付けまたは支払可能額、金融機関へ支払う期日

一括決済方式の場合、金融機関からの貸付けまたは支払いを受けられる額や期間の始期、金融機関への支払日

サービスの変更・やり直しをさせた場合、その内容と理由 下請代金に変更があった場合、増減額と変更理由 支払った下請代金の額・支払日・支払手段 遅延利息を支払った場合、遅延利息額と支払日

注)網掛け部分は共通項目、斜字体表記はほぼ同じ項目、太枠内は5条書類のみの事項である。

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■電磁的方法による取引記録の保存 5条書類についても、3条書面の場合と同じく、電磁的な方法による取引記録の作成・保

存が認められています。 ただし、公正取引委員会等の検査にあたって、その内容が容易に確認できるようにするた

め、以下の要件を満たす必要があります。 ①記録事項について訂正または削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認でき

ること ②必要に応じて電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に出力することができること。 ③下請事業者の名称等や範囲指定した発注日により、電磁的記録の記録事項の検索をする

ことができること

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Ⅱ 改正下請法に対応した モデル書式(案)

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◎3条書面のモデル案として、次の3書面を示しています。

①運送委託契約書 ②覚書 ③作業指示書兼発注書

◎運送委託契約書と覚書は、連続的・継続的業務、定型的業務に適用されるもので、2つ

の書面がワンセットで扱われます。 ◎作業指示書兼発注書は、スポット的な業務委託の際に交付されるものです。 1.運送委託契約書及び覚書 ■運送委託契約書の条文 ここで示す運送委託契約書(モデル案)は、3条書面として有効な条文にほぼ限定した、

必要 小限の契約書になっています。実際の運送委託契約では、信義則や事故時の対応、

保険の付保、事業者によってはユニフォームの着用など細かな規定を盛り込んでいるもの

と思います。それらのことについては、各事業者の判断により追記してください。

■運送委託契約書の規定事項 第1条:本契約の目的を規定しています。この条文により運送に関する下請取引である

ことを明示します。 第2条:委託する業務の範囲を規定しています。このモデル案では覚書に詳細規定を委

ねています。 第3条:契約期間を規定しています。この契約期間を定めることにより、連続的・継続

的業務であることを明示します。 第4条:運賃・料金及び支払方法を規定しています。このモデル案では覚書にその詳細

規定を委ねています。 第5条:運賃・料金の改定についての規定です。契約期間内に運賃・料金を改定するこ

とができる旨を明示しておくことが望まれます。 第6条:業務委託に伴う付帯事項を取りまとめ、その遵守を求めています。基本的な事

項を示していますので、必要により追記してください。 第7~9条:業務委託契約の締結に伴う義務的事項、契約解除事項、規定外事項を定め

ています。

■契約書と覚書の関係づけ 「覚書」とは契約書に付帯する付属書類です。そのため、契約書との関係づけを明確に示

すことが必要です。具体的には、覚書の頭書の記載と署名・押印により、基本となる契約書

との関係を特定します。運送委託契約書(モデル案)では、その第2条(運送の業務範囲)

と第4条(運賃・料金及び支払方法)について、具体的な規定を覚書に委ねています。 運送委託契約書では、あくまで基本的な規定を取り扱い、例えば下請事業者が異なるこ

とにより内容が変化することなどは覚書で取り決めます。モデル案では、運送の業務範囲

と運賃・料金及び支払方法を規定していますが、いずれも下請事業者によって取り決め内

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容が異なる可能性があるものです。 ■覚書(モデル案)の記載事項 1.運送の業務範囲を規定しています。モデル案では、「運送」の他に「運送に付帯する

業務」と取り決めています。 2.運賃・料金の決定方法を規定しています。覚書で単価表を規定し、1 ヶ月間の輸送

実績をもとに運賃・料金を決定する方法が一般的かと思います。単価表には、別紙

に示すように1日あたり、運行1回あたりなどに加え、積載量等に応じた単価表も

あります。委託する運送業務の実態に照らして公正な方法、運賃・料金の具体的な

金額が簡単に計算できる方法等を取り決めることが必要です。 3.請求及び支払方法を規定しています。連続的・継続的業務とみなされる場合、月単

位の支払いとする必要があります。モデル案でも 1 ヶ月間の運賃・料金の合計額を

下請事業者が請求することにしています。そして、支払日は遅くとも当該月末日か

ら 60 日以内に設定することが必要です。 ■3条書面の具体的記載事項と運送委託契約書及び覚書の規定内容との関係

①元請事業者と下請事業者の名称 契約締結者が元請事業者と下請事業者となります。

②役務提供委託をした日 契約締結日が役務提供委託をした日となります。

③下請事業者の役務内容 第2条(運送の業務範囲)と覚書における単価表により示されます。

④下請事業者から役務が提供される期日・期間 契約期間が下請事業者から役務が提供される期間となります。

⑤下請事業者から役務が提供される場所 運行区間にもとづく単価表を取り決めている場合など、発地(積込先)と着地(取卸

先)が明記される場合には、そこが役務提供の場所となります。また、時間や距離な

どにもとづく運賃を取り決めている場合には、場所の特定が不可能ですので、契約書

に明示する必要はありません。 ⑥下請代金の額(算定方法) 第4条と覚書の単価表で算定方法として示されます。

⑦下請代金の支払期日 第4条と覚書記載の支払方法により示されます。

⑧手形を交付する場合、手形の額(支払比率)・手形の満期 覚書の支払方法に記載することが必要です。

⑨一括決済方式の場合、金融機関名、貸付けまたは支払可能額、金融機関へ支払う期日 覚書の支払方法に記載することが必要です。

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運 送 委 託 契 約 書(モデル案)

●●株式会社●●支店(以下甲という)と○○運輸株式会社(以下乙という)は、甲の

営業に関わる貨物の運送業務について、次の通り運送委託契約(以下本契約という)を締

結する。

第 1 条(目 的)

甲の営業に関わる貨物の運送業務について、甲が乙に委託した場合、乙はこれを遂行

することに努めるものとする。

第 2 条(運送の業務範囲)

甲が乙に委託する運送業務の範囲は、別紙覚書の通りとする。

第 3 条(契約期間)

本契約は、平成●年●月●日から平成●年●月●日までの●●間とする。

ただし、本契約の満了する1ケ月前までに、甲乙いずれかから書面による何らかの意

思表示のない場合は、契約期間満了の翌日から更に1ケ年の有効期間をもって更新され

るものとし、その後も同様とする。

第 4 条(運賃・料金及び支払方法)

第2条の委託業務に対する運賃・料金及び支払方法は、別紙覚書の通りとする。

第 5 条(運賃並びに料金の改定)

本契約期間内であれ、公租公課の増減、物価の変動等社会情勢の変化、または経済状

態の変動があった場合、甲は前条に規定する運賃・料金を改定することができるものと

する。

ただし、甲は改定しようとする時期の●ケ月前までに書面をもって申し入れ、乙から

書面による同意を得なければならない。

収入印紙

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第 6 条(遵守事項)

本業務の遂行にあたり、乙は次の事項を遵守するものとする。

(1)第2条の一切の業務について、甲の指示に従い、全て乙の責任において履行する

ものとする。

(2)乙は、本契約を誠実に履行するため、乙の所有する車両のうち、甲の貨物運送に

配車すべき車両及び乗務する運転乗務員を甲にあらかじめ登録するものとする。

(3)甲がこの契約による業務に従事する、前項で乙が甲に登録した車両及び乗務員を

不適格と認めた場合、甲は乙に対してその車両及び乗務員の交換及び交替を請求

できるものとする。

(4)乙は、本契約による業務に従事中、第三者と紛争を生じた時は、乙の責任におい

て解決を図るものとし、甲に対していささかの迷惑をかけないものとする。

(5)本契約の業務遂行を困難にする事情が発生した場合は、その理由のいかんを問わ

ず、乙は速やかに甲に報告し、その指示を求め、当該業務に支障を生じさせないよ

う配慮しなければならない。

第 7 条(機密保持)

甲または乙は、それぞれこの契約の履行によって知り得た秘密を第三者に漏洩しては

ならない。

第 8 条(契約の解除)

1.甲または乙が本契約の各条項に違反したときは、甲または乙は何ら催告の手続を

要することなく本契約を直ちに解除することができるものとする。

2.契約期間中に甲または乙が自己都合により、本契約を解除しようとするときは、そ

の3ケ月前までに書面により相手方に申し入れなければならない。

3.天災地変、またはその他不可抗力等、甲、乙の責に帰することのできない事由に

より、本契約業務の遂行が困難となった場合、甲または乙は、相手方にその事由

を書面で通知する事により本契約の全部または一部を解除する事ができるもの

とする。

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4.甲または乙が、差押、仮差押、破産、会社整理、会社更生の申立がなされたとき

は、本契約は自動的に解除されるものとする。

第 9 条(規定外事項)

本契約に定めのない事項、及び契約事項の解釈に疑義が生じたときは、甲乙協議の上

決定するものとする。

本契約締結の証として、契約書2通作成し、甲、乙それぞれ記名捺印のうえ、各1通

を保有するものとする。

平成●年●月●日

●●株式会社 ●●支店

○○運輸株式会社

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覚 書(モデル案)

●●株式会社●●支店(以下甲という)と○○運輸株式会社(以下乙という)は、平成

●年●月●日付けで両者が締結した運送委託契約(以下本契約という)の第2条(運送の

業務範囲)、第4条(運賃・料金及び支払方法)について、次の通り覚書を締結する。

1.(貨物運送の業務範囲)

(1) 甲が取扱う貨物の運送業務。

(2) その他上記に付帯する業務。

2.(運賃及び料金)

支払単価表(例) 業 務 内 容 車 種 料 金 備 考

集荷配達業務 2トンL 1日 円 ターミナル継送業務を

含む。 三郷~大阪間輸送業務 (往復) 10トン 1運行 円 往復料金

三郷~静岡~浜松間輸送 (片道) 10トン 1運行 円 片道料金

ただし、上記料金は消費税を除く金額である。

3.(請求及び支払方法)

(1) 料金の計算期間は、各月1日から月末日までとし、乙はその合計金額に消

費税相当額を加算して甲に請求する。

(2) 料金の支払は銀行振込とし、振込日は料金計算月の翌月末日とする。

以上、本覚書を証すため本書2通作成し、甲・乙記名捺印のうえ各1通を保有する。

注)覚書の有効期間を定めることが望ましい。

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平成●年●月●日

甲 ●●株式会社 ●●支店

○○運輸株式会社

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覚書における運賃・料金表の記載例 覚書における運賃及び料金(支払単価)の記載例としては次のようなものが考えられる。 1.運行日数(時間) 料 金 表

車 種 料 金(円/日) 備 考

ライトバン 1日の作業時間を超える場合、1時間当たり●●円の割増しとする。

2トン車

2トンロング

4トン車

10トン車

10トン保冷車

注1)運転手1名の場合の料金であり、助手1名につき●●円/日を加算する。 注2)1日の作業時間は8:00~17:00の間とする。

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2.運行区間(距離) 料 金 表 ①2トン車・4トン車

(単位:円) 着地

発地

上段:片道料金 下段:往復料金

②10トン車

(単位:円) 着地

発地

上段:片道料金 下段:往復料金

注)上記に規定しない運行区間の場合、両者協議のうえ金額を決定する。

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3.積載重量(トン) 料 金 表

(単位:円/トン) 輸送距離

積載重量 50km未満

50km以上 100km未満

100km以上

1トン未満

1トン以上5トン未満

5トン以上10トン未満

10トン以上

注 1)荷姿に関わらず重量(トン)による単価とする。 注 2)輸送距離は、「自動車路線営業キロ程表」によるものとする。 4.積載個数(個・ケース) 料 金 表

(単位:円/個)

個 数

集 荷 配 送

基本料金 エリア外割増 基本料金 エリア外割増

100個未満

100個以上 200個未満

200個以上 500個未満

500個以上

注)基本料金は●●管内での集荷、●●管内での配送の場合の単価である。

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2.作業指示書兼発注書 ■作業指示書兼発注書の性格 作業指示書兼発注書は、運送委託契約を取り交わしていない下請事業者にスポット的に

運送業務を委託する場合に交付します。したがって、3条書面に求められる具体的記載事

項を明確に記載することが必要です。また、作業指示書として活用可能な書式であれば、

実務上も効率的です。 ■作業指示書兼発注書の記載事項 3条書面に求められる具体的記載事項に即して示します。 ①元請事業者と下請事業者の名称

発行事業者が元請事業者、送付先事業者が下請事業者となります。 ②役務提供委託をした日

発行日が役務提供委託をした日となります。 ③下請事業者の役務内容 積み込み先と取り卸し先で示されます。付帯業務は、作業内容欄、荷役機器の種類欄

により示されます。特別な付帯業務または詳しい説明が必要な場合は、特記事項欄に

示されます。 ④下請事業者から役務が提供される期日・期間 作業日欄もしくは発指定日時、着指定日時で示されます。

⑤下請事業者から役務が提供される場所 役務内容と同様に、積み込み先と取り卸し先で示されます。付帯業務の場合は、作業

場所欄で示されます。 ⑥下請代金の額(算定方法) 支払代金欄で示されます。算定方法を示すことでも可能ですが、その場合には車種欄、

台数欄、重量欄、容積欄または数量欄に必要事項を記載し、具体的な金額が自動的に

計算されるようにしておかなければなりません。 ⑦下請代金の支払期日 支払期日欄に示されます。スポット的な業務委託の場合には、月単位に一括支払の方法

は認められませんので、役務の提供を受けた日(取り卸し先への運送が終了した日もし

くは付帯業務が終了した日)から60日以内の期日を具体的に記入することが必要です。 ⑧手形を交付する場合、手形の額(支払比率)・手形の満期 支払方法欄に具体的に示されます。

⑨一括決済方式の場合、金融機関名、貸付けまたは支払可能額、金融機関へ支払う期日 支払方法欄に具体的に示されます。

■作業指示書兼発注書への収入印紙の貼付について モデル案は、下請法に対応するため、元請事業者から下請事業者に一方的に取引条件等

を通知するとともに、その業務を委託するために作成される文書であり、運送委託契約の

成立を証明する文書には該当しないものと考えられます。したがって、モデル案の場合に

は、収入印紙を貼付する必要はありません。 ただし、下請事業者が作業指示書兼発注書の受領に対して、業務委託を承諾した文書(請

書)を署名・押印のうえ作成し、元請事業者に返送した場合には、請書が契約の成立を証

する課税文書として取り扱われ、下請事業者が印紙税の納税義務者となります。

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○○運輸株式会社 殿 発行日 年 月 日

●●株式会社 ●●支店 発注番号: - -

作 業 指 示 書 兼 発 注 書(モデル案)

Ⅰ 運送業務 作 業 店 名

作業日 平成 年 月 日 ~ 月 日 作業時間 :00 ~ :00

発 指 定 日 時 積み込み先:

月 日 時 分

住 所: 連絡先:

着 指 定 日 時 取り卸し先:

月 日 時 分

住 所: 連絡先:

輸送距離 Km 車種 台 数 台

重 量 トン 容 積 m3 数 量 個・ケース

特記事項:

*輸送距離は、「自動車路線営業キロ程表」によります。 Ⅱ 付帯業務

作 業 店 名

作業日 平成 年 月 日 ~ 月 日 作業時間 :00 ~ :00

作 業 場 所

作 業 内 容

荷役機器の種類

特記事項:

Ⅲ 代 金

支 払 代 金 円 *本注文書の支払代金は消費税・地方消費税抜きの金額です。支払期日には法定税率による消費税額・地方消費税額分を加算して決済します。

*支払代金の他、提供に要した●●費、●●費の実費を支払います。

支 払 方 法

支 払 期 日 毎月 日締め切り、翌月 日支払 月 日

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○○運輸株式会社 殿 発行日 2004 年 ●月 ●日

●●株式会社 ●●支店 発注番号: 000 - 010 - 0001

作 業 指 示 書 兼 発 注 書(モデル案)

Ⅰ 運送業務 作 業 店 名 新橋営業所

作業日 平成 16 年 5 月 26 日 ~ 月 日 作業時間 :00 ~ :00

発 指 定 日 時 積み込み先:晴海工業晴海工場

5月 26 日 8時 00 分

住 所:東京都中央区晴海・・・ 連絡先:03-3256-・・・・

着 指 定 日 時 取り卸し先:浅井電気静岡店

5月 26 日 15 時 00 分

住 所:静岡県静岡市・・・ 連絡先:054-・・・・・

輸送距離 Km 車種 4トン車 台 数 1 台

重 量 トン 容 積 m3 数 量 個・ケース

特記事項:

精密機械(易損品)

*輸送距離は、「自動車路線営業キロ程表」によります。 Ⅱ 付帯業務

作 業 店 名 新橋営業所

作業日 平成 16 年 5 月 26 日 ~ 月 日 作業時間 7:00 ~ 8:00

作 業 場 所 晴海工業晴海工場

作 業 内 容 積み込み(手積み)

荷役機器の種類 なし

特記事項:

Ⅲ 代 金

支 払 代 金 100,000 円 *本注文書の支払代金は消費税・地方消費税抜きの金額です。支払期日には法定税率による消費税額・地方消費税額分を加算して決済します。

*支払代金の他、提供に要した●●費、●●費の実費を支払います。

支 払 方 法 現金口座振込

支 払 期 日 毎月 日締め切り、翌月 日支払 2004 年 6 月 30 日

記 入 例

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『記入上の留意点』 ①作業店名は、具体的な運送指示等を与える店所を記入する。 ②作業日は、下請事業者が委託運送業務を実施する日(期間)を具体的に記入する。また、

傭車など時間を基準に下請代金を取り決めている場合などには、下請事業者が委託運送

事業を実施する1日の作業時間帯を記入する。この場合、③及び④は必要により記入す

る。 ③貸切輸送などを委託する場合、具体的な積み込み先(施設名、住所、連絡先)と発指定

時間等がある場合には、その日時を記入する。傭車など時間をベースに委託している場

合には、必要により記入する。 ④上記に対応する具体的な取り卸し先(施設名、住所、連絡先)と着指定時間等がある場

合には、その日時を記入する。 ⑤輸送距離を明示する必要がある場合に記入する。スポット的な下請け取引の場合、積み

込み先と取り卸し先の指定では、正確な下請代金の算定が難しいことが想定される。こ

のような場合に、輸送距離を明示する。なお、輸送距離の算出基準を注釈等として明確

に記載する必要がある。車種を指定する必要がある場合、車種欄に記入する。保冷品を

輸送する場合の保冷車の指定などが考えられる。また、台数を指定する場合には、後段

の台数欄に記入する。⑤で車種と台数を指定した場合、次の⑥の記入を省略することも

できる。また、車種のみ指定し(台数を指定せず)、⑥で運送重量を示して必要台数の

算定は下請事業者の判断に任せる方法もある。いずれの場合にも、指定もしくは表示し

た内容により具体的な下請代金の取り決めが可能となるように、必要な項目を明確に記

載しなければならない。 ⑥輸送重量等をベースに下請代金を取り決める場合などに、運送品の重量、容積または数

量を記載する。なお、「(旧)原価計算書等の添付を省略できる範囲について」による

と、重量は荷造包装を含めた総重量で計算し、容積品の場合は、1 立方メートルを 280キログラムで換算、実重量と換算重量のいずれか大なる方の重量による、とされている。

⑦運送品目など、委託する上で特記すべき事項がある場合に記入する。 ⑧~⑬については、運送業務に付帯する業務を合わせて委託する場合に記入する。また、

元請事業者が貨物運送に合わせて請け負った梱包を梱包業者に委託する場合も、下請法の

対象となる。このように運送業務と切り離して付帯業務を委託する場合にも⑧~⑬の欄に

記入する。 ⑧付帯業務について具体的な作業指示等を与える作業店等を記入する。 ⑨下請事業者が委託された付帯業務を実施する日(期間)と1日の作業時間帯を具体的に

記入する。 ⑩下請事業者が付帯業務を実施する具体的な作業場所を指定する。 ⑪作業内容が十分に理解できるように記入する。図等を用いて詳細に説明する必要がある

場合には、そのための説明書を交付し、その旨を記載する。 ⑫付帯業務に荷役機器を使用する場合、その荷役機器の種類を指定する。

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⑬付帯業務を実施する上で特記すべき事項がある場合に記入する。 ⑭~⑯については、運送業務と付帯業務の両者を合わせた支払代金関係を記入する。 ⑭支払代金は、具体的な金額を記入することが望ましいが、算定方法を記入することもで

きる。その場合には、金額算定の根拠となる単価を明示するとともに、当該単価に対応

する数量を②~⑥、⑨等の欄に具体的に記入しておかなければならない。 下請代金は、本体価格と消費税等を区分して明示することが望ましい。モデル案では、

注釈に「消費税・地方消費税抜き」と明示しているが、このほかに本体価格と消費税等

を区分してそれぞれの額を明示する方法、内税方式として消費税等込みの代金を記載す

る方法等がある。後者の場合には、内税方式であることを注釈等として明確に記載する

必要がある。 口座振込の場合で、その振込手数料を差し引いて代金を支払う場合には、その旨を記載

し、また、付帯業務において下請事業者が梱包資材等を手当てし、その実費を元請事業

者が負担する場合には、その旨を記載する必要もある。 ⑮下請代金を口座振込により支払う場合には、その旨を記載する。下請代金から、下請代

金を下請事業者の金融機関口座へ振り込む際の手数料を差し引いて支払う場合は、その

旨を記載する必要がある。 手形を交付する場合には、その額または支払額に占める割合及び支払手形の満期日を記

入する。満期日に代えて振出日から満期日までの日数(期間)を記入することもできる。 一括決済方式による場合には、下請事業者が下請代金の額に相当する金銭の貸付けまた

は支払を受けることができる金融機関の名称、当該貸付けまたは支払を受けることがで

きる額または支払額に占める割合、下請代金の額に相当する金銭を元請事業者が金融機

関に支払う日を記載する。 ⑯下請代金を実際に支払う年月日を具体的に記入することが望ましいが、締切日と支払日

等の元請事業者の規定を記入することもできる。その場合、委託業務が終了した日から

60 日以内に支払日を設定する必要がある。

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改正下請法に対応した書類の 作成・交付・保存の手引き

平成16年5月 初版発行

発 行 社団法人全日本トラック協会

〒 163-1519 東京都新宿区西新宿1丁目6番1号

新宿エルタワー19階

TEL.03(5323)7109(代)

ホームページ http://www.jta.or.jp