減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓 - hitotsubashi...

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減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓 ――輸出加工区のライフ・サイクル論再論―― 『東京外国語大学論集』第 73 号所収(近刊予定) はじめに 1 マキラドーラ産業の発展と減退 2 マキラドーラ産業の減退要因 3 マキラドーラ産業の今後 おわりに はじめに 1980 年代初頭の累積債務危機の発生以来,メキシコは自らの開発戦略を輸入 代替工業化から輸出志向工業化へと転換した。その過程においてマキラドーラ 産業はメキシコの輸出志向工業化戦略の中核的役割を果たしてきた 。マキラド ーラ産業は,メキシコの輸出志向工業化を高度化させることにおいて制約を抱 えつつも,それ自身は急速な発展を遂げた。 しかしながら 2001 年から 2003 年にかけて,これまで発展の陰に隠れていた マキラドーラ産業の減退が顕在化することになった。700 以上のマキラドーラ企 業が閉鎖され,約 23 万人が職を失った。過去においても一時的な成長の鈍化や, 若干の減退は見られたものの,これほど大規模な減退に直面したのはマキラド ーラ産業にとって初めての経験であった。 本稿では,第1に,これまでのマキラドーラ産業の発展と 21 世紀初頭に起こ った大幅な減退を概観する。第2に,米国会計検査院(United States General Accounting Office)の研究を中心に,マキラドーラ産業が経験した初めての深 刻な減退の要因について概観する。第3に,マキラドーラ産業の減退には部門 間で大きな格差が見られたことに注目し,その原因について既存研究を手がか りに考察を深める(Sargent and Matthews [2004]; 藤本[2003])。最後に以上 の検討を通じて,今日に至る輸出志向工業化期におけるマキラドーラ産業の発 展を振り返りながら,同産業の今後の発展の方向性について言及したい。 1 マキラドーラ産業の発展と減退

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Page 1: 減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓 - Hitotsubashi ......ラドーラ産業の企業数は2000年当時の79.7%,被雇用者数については82.2% にまで減少した。例えば,1973年から1974年の米国経済の景気後退の影響によ

減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓

――輸出加工区のライフ・サイクル論再論――

『東京外国語大学論集』第 73 号所収(近刊予定)

はじめに 1 マキラドーラ産業の発展と減退

2 マキラドーラ産業の減退要因

3 マキラドーラ産業の今後

おわりに

はじめに

1980 年代初頭の累積債務危機の発生以来,メキシコは自らの開発戦略を輸入

代替工業化から輸出志向工業化へと転換した。その過程においてマキラドーラ

産業はメキシコの輸出志向工業化戦略の中核的役割を果たしてきた 1。マキラド

ーラ産業は,メキシコの輸出志向工業化を高度化させることにおいて制約を抱

えつつも,それ自身は急速な発展を遂げた。

しかしながら 2001 年から 2003 年にかけて,これまで発展の陰に隠れていた

マキラドーラ産業の減退が顕在化することになった。700 以上のマキラドーラ企

業が閉鎖され,約23万人が職を失った。過去においても一時的な成長の鈍化や,

若干の減退は見られたものの,これほど大規模な減退に直面したのはマキラド

ーラ産業にとって初めての経験であった。

本稿では,第1に,これまでのマキラドーラ産業の発展と 21 世紀初頭に起こ

った大幅な減退を概観する。第2に,米国会計検査院(United States General

Accounting Office)の研究を中心に,マキラドーラ産業が経験した初めての深

刻な減退の要因について概観する。第3に,マキラドーラ産業の減退には部門

間で大きな格差が見られたことに注目し,その原因について既存研究を手がか

りに考察を深める(Sargent and Matthews [2004]; 藤本[2003])。 後に以上

の検討を通じて,今日に至る輸出志向工業化期におけるマキラドーラ産業の発

展を振り返りながら,同産業の今後の発展の方向性について言及したい。

1 マキラドーラ産業の発展と減退

Page 2: 減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓 - Hitotsubashi ......ラドーラ産業の企業数は2000年当時の79.7%,被雇用者数については82.2% にまで減少した。例えば,1973年から1974年の米国経済の景気後退の影響によ

表1 マキラドーラ産業の基本指標

1982 1988 1994 2000 2003 2005企業数 585 1,396 2,085 3,590 2,860 2,816被雇用者数 127,048 369,489 583,044 1,291,232 1,062,105 1,166,250純輸出額 (単位:100万USドル) 976 2,338 5,803 17,759 18,410 21,723投入財輸入額 (単位:100万USドル) 2,229 7,808 20,466 61,709 59,057 75,679投入財の国内調達率 1.30% 1.70% 1.50% 3.10% 3.17% 3.42%(出所) Poder Ejecutivo Federal, 各年版。

マキラドーラ産業の減退の分析に入る前に,累積債務危機が発生した 1982 年

から深刻な減退を迎える直前までのマキラドーラ産業の発展を簡単に振り返っ

てみたい 2。

表1を見れば明らかなように,1982 年から 2000 年かけてマキラドーラ産業は

急成長を遂げた。とくに雇用創出(被雇用者数は約 13 万人から約 129 万人に増

加)と輸出促進ならびに外貨獲得(約 10 億ドルから約 180 億ドルに増加)にお

いて著しい成果を上げたと言える。

他方で,マキラドーラ産業において用いられる投入財の輸入額を見た場合,

同期間において約 22 億ドルから約 617 億ドルへと急増している。また投入財の

国内調達率は 1.3%から 3.1%へと増加しつつも,依然として非常に低い水準に

ある。この意味において,マキラドーラ産業は,「他の国内産業との連関を 小

限に限定」(田島[2006], p. 35 ページ)した典型的な保税加工産業としての性

格を今日においても色濃く残していると言える。

次に 2001 年から 2003 年にかけて観察されたマキラドーラ産業の減退につい

て概観してみる。2000 年と 2003 年とを比較した場合,企業数は 730 社減少し,

被雇用者数は 23 万人減少した。また外国直接投資額も,約 30 億ドルから約 20

億ドルへと急減した 3。

今回のマキラドーラ産業の減退を過去におけるそれと比較した場合,企業数,

被雇用者数とも減少率が大きいことが特徴である。今回の場合,2003 年のマキ

ラドーラ産業の企業数は 2000 年当時の 79.7%,被雇用者数については 82.2%

にまで減少した。例えば,1973 年から 1974 年の米国経済の景気後退の影響によ

ってマキラドーラ産業の減退が見られた時,企業数についてはそれまでのピー

ク時の 97.4%,被雇用者数は 88.5%に減少した。1970 年代末期のマキラドーラ

産業の賃金上昇による影響が見られた時期には,企業数については 94.4%,被

雇用者数については97.0%に減少した(Wilson [1992], pp. 39-40; 田島 [2006],

41 ページ)。

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表2 マキラドーラ産業の主要部門の企業数と被雇用者数

部門   繊維,アパレル,靴   電気・電子機器・付属品       輸送機器年 企業者数 被雇用者数 企業者数 被雇用者数 企業数 被雇用者数1997 780 182,042 440 225,650 196 177,0081998 895 214,306 473 257,250 209 193,3071999 1,036 258,745 512 291,163 225 209,5412000 1,150 291,642 558 337,471 246 237,7872001 1,133 275,758 565 297,914 267 226,6182002 790 231,964 486 233,333 249 232,4752003 673 216,032 468 226,708 260 241,7872004 606 208,722 448 243,916 273 247,9362006 568 200,008 433 253,977 292 257,316

(出所) INEGI [2005]; INEGI [2006]

次にマキラドーラ産業の中でとくにどの部門において企業数および雇用の減

少が著しかったのか確認する。表2によれば,マキラドーラの主要部門である

繊維・アパレル・靴,電気・電子機器部門の減少が著しかったことが読み取れ

る。また表にはないが,その他にも家具・装飾用具,木・金属製品,玩具,ス

ポーツ用品等も減少が大きかった部門である(INEGI [2005])。これらの部門と

は対照的に,輸送機器部門は順調な成長を遂げている。

表3 マキラドーラ産業の主要部門輸出額 (単位:100 万ドル)

部門 マキラドーラ全体   繊維,アパレル,靴   電気・電子機器,同設備     輸送機器年 輸出額(a) 輸出額(b) (b)/(a) 輸出額(c) (c)/(a) 輸出額(d) (d)/(a)

1993 21853.0 1616.3 7% 11175.9 51% 2897.8 13%1994 26269.2 2092.7 8% 13828.2 53% 3268.4 12%1995 31103.3 2801.5 9% 16564.7 53% 3908.1 13%1996 36920.3 3647.6 10% 18983.1 51% 4646.8 13%1997 45165.4 5176.2 11% 22261.1 49% 5462.6 12%1998 53083.1 5936.6 11% 25353.8 48% 6934.9 13%1999 63853.6 6986.3 11% 30667.6 48% 7616.3 12%2000 79467.4 7679.7 10% 38922.4 49% 10181.8 13%2001 76880.9 6898.9 9% 34383.3 45% 10667.3 14%2002 78098.1 6794.9 9% 33384.7 43% 11450.5 15%2003 77467.1 6571.2 8% 31316.1 40% 11749.5 15%2004 86951.7 6424.1 7% 35202.4 40% 13214.3 15%2005 97401.4 6423.9 7% 41071.7 42% 14479.1 15%

(出所)Poder Ejecutivo Federal [2006], p.358

また輸出額をみても,繊維・アパレル・靴および電気・電子機器の減少が著

しく,他方で輸送機器がその輸出を順調に伸ばしていることがわかる。この部

門間における格差に関しては,後段で再び取り上げることにする。

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2 マキラドーラ産業の減退要因

ここでは 近のマキラドーラ産業の減退要因を分析した既存研究の成果を整

理しながら,その要因について考察を深めていきたい。主に取り上げるのは米

国会計検査院(United States General Accounting Office)の『マキラドーラ

産業の減退が米墨間国境地域と貿易に与える影響』と題する報告書である

(USGAO[2003])。

同報告書は,2001 年から 2003 年にかけてのマキラドーラ産業の減退の要因に

は,大きく分けて米国の景気循環に帰する要因とマキラドーラ産業の競争力低

下という構造的要因があると指摘している 4。米国の景気循環に帰する要因とは,

2000 年の第 4 四半期から始まった米国の景気後退のことを指している。また構

造的要因としては次の点があげられている。それは第1に,米国市場における

中国,中米・カリブ海諸国からの輸入製品との競争の激化,第2に,メキシコ

通貨ペソの実質実効為替レートの上昇,第3に,メキシコの税制および政策の

変化,とくにマキラドーラ制度の核となる税制上のメリットが廃止されたこと

である。以下,それぞれの要因について詳しく見ていきたい。

2-1 米国経済の景気後退

まず米国の景気循環が,今回のマキラドーラ産業の減退の主たる要因である

ことを米国の政府関係者,研究者,産業界がともに指摘していると報告書は述

べている。実にマキラドーラ産業の製品の 98%は米国向けに輸出されているこ

とからも(USGAO [2003], p. 24),米国経済の景気後退がマキラドーラ産業の

減退に与えた影響の大きさを伺い知ることができる。図1は,米国経済の動向

とマキラドーラ産業の雇用との間の相関関係を示している。

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図1 米国 GDP の年間成長率とマキラドーラ産業における雇用 1980-2002 年

(出所)USGAO [2003], p. 25

他方で,前述したように以前のマキラドーラの減退期と比較した場合,今回

のそれは企業数および被雇用者数とも減少率はとくに大きいということが言え

る。また図1をよく見ると,今回,米国 GDP 増加率の低下を大きく下回ってマ

キラドーラ産業の雇用が低下していることが読み取れる。

さらに米国の景気後退期を越えて 近のマキラドーラ産業の動向を観察して

みると,2005 年は同産業全体で約 116 万人の雇用があり,2003 年に比して約 10

万人の雇用回復が見られた(表1参照)。一方で,その回復には部門において格

差が見られ,電気・電子部門が雇用数を若干回復しつつあり,輸出額について

は 2000 年の水準を超えて増加に転じているのに対して,繊維・アパレル部門に

関しては,2003 年の半ばから見られた米国の景気回復後も引き続き減退する傾

向にある。したがって部門によっては,米国の景気循環よりもさらに強くその

減退を規定する長期的・構造的要因があると考えられる。

2-2 米国市場における競争の激化

既に述べたように多くの論者が今回のマキラドーラ産業の減退の主たる要因

として米国経済の景気後退を指摘する一方で,米国市場における競争の激化と

くに中国の台頭を同時にその要因として指摘している 5。次の図2によれば,

1995年から2000年にかけてメキシコと中国はともに米国への輸出を急増させて

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いることがわかる。しかし 2000 年以降,メキシコの米国に対する輸出の伸びが

鈍化する一方で,中国は順調にその輸出を増加させた。その結果,2003 年には

メキシコと中国の地位が逆転し,米国の輸入国としてメキシコが第 3 位に後退

し,中国が第 2位に上昇した。

図2 米国のメキシコと中国からの輸入額 1995-2004 年

(単位:100 万ドル)

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

輸入

額 メキシコ

中国

(出所)United States Department of Commerce, ITA [2006]。

(注)原図は 2002 年までのデータを基に作成されていたが,筆者

によりそれ以降のデータを追加し作成。

原図は,USGAO[2003], p. 27, Figure 11

報告書は,米国市場におけるメキシコと中国の競合関係をさらに詳しく分析

している。それによれば,2002 年においてメキシコからの輸入が年間 1 億ドル

を超える米国の輸入部門は152部門に及んでいた。1995年から2002年にかけて,

同 152 部門中 47 部門でメキシコはそのシェアを低下させた。一方で中国はメキ

シコが米国市場におけるシェアを低下させた 47 部門中の 35 部門で,そのシェ

アを増加させている。表4は,1995 年から 2002 年にかけて米国が中国からの輸

入シェアを増加させた上位 25 部門を表している。また同表はそれらの多くの部

門で米国がメキシコからの輸入シェアを減少させたことも示している。これら

の事実を基に会計検査院の報告書は次のように述べている。「偶然生じたかもし

れない関連について次に示唆するような直接的な関連が実際あったのか立証す

ることは困難であるが,いくつかの部門において中国が米国市場のシェアを高

めると同時にそれと同じ部門においてメキシコがそのシェアを失っているよう

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に見受けられる。それらの部門は,玩具,家具,家電製品,テレビ・ビデオ・

同部品,アパレル・繊維である。マキラドーラ産業は,中国が米国市場でシェ

アを高めつつある部門に集中している」(USGAO [2003], pp.63-64)。

表4 米国市場におけるメキシコ製品と中国製品のシェアの変化 1995-2002 年

(単位:100 万ドル)

メキシコ 中国 アメリカの アメリカの アメリカの アメリカの アメリカの アメリカの 輸入額 輸入に占める 輸入に占める 輸入額 輸入に占める 輸入に占める

品目  2002年 比率 1995年 比率 2002年  2002年 比率 1995年 比率 2002年玩具,パズル, 模型 180 4.5% 2.2% 6,927 73.3% 84.3%家具・同部品 595 6.9% 4.7% 4,932 12.2% 38.7%健康器具等 176 5.4% 4.8% 2,011 28.7% 55.3%変圧器,電源装置(adp機器または設備) 1,625 25.4% 24.8% 1,553 10.8% 23.7%電気機械家電製品 408 24.8% 20.6% 1,062 35.8% 53.5%テレビ受信機(ビデオモニターおよびビデオプロジェクター内臓型) 4,797 65.6% 47.5% 860 2.6% 8.5%繊維を材料とする既製品 340 29.6% 19.1% 839 33.9% 47.1%宝飾品・同部品 158 2.9% 2.6% 524 1.0% 8.6%テレビ・ラジオ・レーダー装置の部品 1,021 34.7% 24.3% 523 3.6% 12.5%コンロ,レンジ,暖炉,調理器具,バーベキュー, 325 42.5% 26.8% 467 7.1% 38.5%火鉢,家庭用非電気機器修理等のために輸入された物品の輸出 3,870 11.6% 11.5% 371 1.0% 1.1%輸出された物品の輸入文房具,紙,板紙 116 20.6% 16.5% 349 33.1% 49.6%電球のフィラメントまたは放電灯・同部品 244 18.0% 16.0% 341 7.0% 22.4%記録されていないメディア 266 12.5% 9.5% 333 10.3% 11.9%ブラジャー,ガードル,コルセット,ブレース,サスペンダー 201 18.8% 11.8% 309 5.2% 18.2%ガーター,同製品繊維を材料とする衣料品,フェルトまたは不織布製既製品 233 46.9% 28.1% 252 18.7% 30.4%トレーラ,セミトレーラ;機械力で推進しないその他乗り物;同部品 113 40.7% 14.7% 165 8.4% 21.4%アルミニウム製品 180 22.3% 22.3% 162 7.0% 20.1%女性または女児用スリップ,ペチコート,ブリーフ,パンティ 196 9.0% 9.0% 149 4.4% 6.8%ナイトドレス,パジャマ,ネグリジェ,バスローブ,同製品遠心分離機;ろ過または浄化機械・装置 449 19.7% 15.5% 136 1.7% 4.7%石油および瀝青炭油(原油以外) 569 2.4% 2.1% 96 0.0% 0.4%安全ガラス(硬質(強化)または合わせガラス製) 279 41.6% 41.0% 84 0.6% 12.3%矯正装具;添え木等;身体の人工部品;補聴器およびその他器具 143 13.0% 5.2% 82 2.0% 3.0%衛生器具(陶器製のシンク,洗面器および台座,浴槽,ビデ,便器, 210 51.4% 44.4% 71 0.0% 15.0%貯水タンク,小便器計量または検査機器,同部品および付属品 141 8.7% 7.8% 39 0.3% 2.2%(出所)USGAO [2003], pp. 64-65(注)太字は筆者による。

また会計検査院がインタビューを行った企業団体の代表の中には,メキシコ

が中国のみならず中米・カリブ海諸国からの競争に直面していることを指摘す

る者もいた。とくに具体的な言及があったのがアパレル部門である。図3は,

メキシコ,中国,中米・カリブ海諸国からの米国の繊維・アパレル輸入の推移

を示している。メキシコは米国の繊維・アパレル製品の輸入シェアを 1994 年の

7%から 2000 年の 14%へと増加させ,同製品の米国の輸入相手先国として 1 位

となった 6。しかしながら近年その勢いは陰りを見せ,再び中国に逆転され,中

米・カリブ海諸国にも追いつかれようとしている。

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図3 メキシコ,中国,中米・カリブ海諸国からの米国の繊維・

アパレル輸入の推移 1990-2002 年 (単位:100 万ドル)

(出所)USGAO [2003], p. 30

このように中国製品および中米・カリブ海諸国の製品が,米国市場で競争力

を高めつつある要因について,会計監査院はいくつかの指摘を行っている。ま

ず米国国際貿易委員会(United States International Trade Commission)が

ジェネラル・エレクトロニックに対して行った調査(Watkins [2002])に依り

ながら,中国がメキシコに対して,労働コスト,電気コスト,サポーティング・

インダストリーの多様性において競争力上の優位性をもっていることを指摘し

ている 7。同様の指摘は他の研究でも行われており 8,次の表5はアパレル産業

の直接投資コストについて中国のみならず中米・カリブ海諸国も含めてメキシ

コと比較したものである。同表は,中国および中米・カリブ海諸国がメキシコ

に対し,労働コストおよび電気コストにおいて優位性をもっていることを示し

ている。

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表5 メキシコ,中国,中米・カリブ海諸国のアパレル産業

投資コスト比較 (2002-03 年時点)

人件費 輸送コスト 電気代 金融コスト国名 (ドル/時間) ドル/FEU (セント/Kwh) (%ポイント)グアテマラ 1.49 1,950 14.21 9.9エルサルバドル 1.58 2,100 8.04 4.6ホンジュラス 1.48 1,400 11.72 8.9ニカラアグア 0.92 2,050 11.70 15.8コスタリカ 2.70 1,450 8.11 15.0中国 0.68-0.88 4,300 5.07 3.3メキシコ 2.45 1,750 17.14 4.4ドミニカ共和国 1.65 1,600 9.74 9.5コロンビア 2.65 N.A. 6.84 7.4(出所)中畑・ゴメス[2005](注)人件費は諸手当を含む。輸送コストは40フィートコンテナ当たりの 米国までの海上輸送コスト,金融コストは市中銀行の貸出金利から 預金金利を引いた中間マージンのこと。

以上,指摘した労働コスト,インフラコスト等の生産コスト上の優位性に加

えて,中国,中米・カリブ海諸国製品が米国市場でのシェアを伸ばしている要

因として,これらNAFTA(North American Free Trade Agreement: 北米自由貿

易協定)域外諸国が,特定の品目において米国市場に自由にアクセスできるに

ようになったことがあげられる(USGAO[2003], pp. 28-29)。メキシコはNAFTA

の発効によってNAFTA域外諸国よりも有利な北米市場へのアクセスを得ていた。

しかしながらWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)交渉での自由化

の進展や米国がNAFTA域外諸国に対しても自国市場への優先的な市場アクセス

を認めるようになったことによって,米国市場のアクセスに対するメキシコの

優位性は失われていった 9。例えば繊維・アパレル製品に関しては,2000 年の

貿易と開発法(The Trade and Development Act of 2000)の下で, カリブ海地

域開発計画(Caribbean Basin Initiative: CBI)に含まれる諸国の繊維・アパ

レル製品に対して,米国は米国産投入財を使用するなど一定の条件の下で米国

市場への優先的なアクセスを認めるようになった。さらにWTOの繊維・衣類協定

(WTO Agreement on Textiles and Clothing)によって,繊維およびアパレル

製品に対する輸入数量制限は 2004 年までに撤廃された。また会計検査院の報告

書では直接言及されていないが,情報技術機器に関して,WTOの情報技術協定

(Information Technology Agreement:ITA)により米国の関税率が 0%または低

率となったことが,この部門におけるNAFTA域外諸国からの米国の輸入を増加さ

せる要因になったことも念頭にいれるべきであろう(峯村[2001a])。

2-3 メキシコ側の政策的要因

Page 10: 減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓 - Hitotsubashi ......ラドーラ産業の企業数は2000年当時の79.7%,被雇用者数については82.2% にまで減少した。例えば,1973年から1974年の米国経済の景気後退の影響によ

次にマキラドーラ産業の競争力低下の要因を,メキシコの政策上の問題から検

討してみたい。まず報告書が指摘していることは,メキシコの通貨ペソの実質実

効為替レートがドルに対して上昇したことである 10。従来からマキラドーラ産業

の発展とペソの切り下げとの関係は指摘されてきたが 11,報告書でも企業団体の

責任者へのインタビューや独自の回帰分析の結果からその要因を指摘している。

もっともその影響は,米国経済の景気の変動の指標として用いられた米国GDPの変

化が与える影響よりもかなり小さいものであった 12。

次に報告書はメキシコの税制および政策の変化を取り上げている(USGAO[2003],

pp. 32-34)。具体的には,その変化によってマキラドーラ企業の税負担と管理上

のコストが増加し,なおかつ頻繁な変更が長期にわたる投資計画の策定を困難に

したことを指している。この問題については会計検査院がインタビューを行った

3分の2の企業団体がマキラドーラ産業の減退の要因として指摘した。

1990 年代半ばまでマキラドーラ企業は法人税・資産税などの課税から事実上免

れていた。しかしながら 1995 年,マキラドーラ企業はその資産または操業コスト

の一部に対して課税されるようになった。さらに 1998 年,マキラドーラ企業を恒

久的施設として見なそうとするメキシコ政府の動きによって,米墨間における二

重課税問題の発生が危惧されることになった 13。2002 年に 2007 年までマキラド

ーラ企業に対する恒久的施設の認定は留保されることが発表されたが,マキラド

ーラ税制は不安定な状況が長期化することになった 14。

後に報告書は,マキラドーラという制度の核となる保税加工制度の廃止がマ

キラドーラ産業減退の主要因の1つとなったことをあげている。NAFTAの第 303 条

の 2001 年からの実施により, NAFTA域外から保税で輸入した投入財に組立加工を

施し,NAFTA域内へ輸出することができなくなった。つまりNAFTA域外諸国にとっ

て,マキラドーラ 大のメリットが失われたことになる 15。とくに投入財の多く

をアジアからの輸入に依存している日本,韓国,台湾企業の影響が大きく,メキ

シコから他国への生産移管が進んだ。また第 303 条の実施がNAFTA発行後 7 年間猶

予されたにもかかわらず,その間にメキシコが十分なサポーティング・インダス

トリーの育成に成功しなかったことも, NAFTA域外国のマキラドーラを中心に撤

退を招く原因となった 16。

さらに報告書では指摘されていないが,メキシコが 恵国待遇関税を 1999 年に

平均で 3%引き上げたことは,メキシコとのFTAに参加していない諸国に対して貿易

転換効果を引き起こし,メキシコの貿易とくにマキラドーラの生産に必要な投入

財輸入の障害となった 17。同時期に米国市場へのアクセスが改善したこともあり,

生産コスト,税コストの上昇したメキシコで生産するインセンティブがNAFTA域外

国の企業にとって失われた結果,メキシコからアジアへ生産を移管し,直接米国

に輸出する(「アジアで作ってアメリカで売る」)という傾向が強まることになっ

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た(峯村直志[2001a])。

3 マキラドーラ産業の今後

これまでのところでは主に,今回のマキラドーラ産業減退の概観と,マキラド

ーラ産業全体にかかわる競争力低下の要因を取り上げてきた。一方,今回のマキ

ラドーラ産業の減退で特徴的なことは,部門間に大きな格差が見られたことであ

る。マキラドーラ産業の主要三部門の中でも,繊維・アパレル・靴,電気・電子

機器部門の減退が著しく,他方で輸送機器部門はマキラドーラ産業全体の減退と

は対照的に順調な成長を遂げてきた。ここではこのような対照性が見られた原因

に焦点をあて,その原因を探る上で手がかりとなる研究を検討することで,今後

のマキラドーラ産業のあり方について示唆を得たい。

J・サージェント(John Sargent)とL・マシュー(Linda Matthews)は,2002

年と 2003 年にレイノサとグアダラハラに所在する 6 万 7 千人を雇用する 55 のマ

キラドーラ企業を調査した(Sargent and Matthews [2004])18。調査の目的は,

成熟し生産コストも高くなった輸出加工区――マキラドーラ――を,多国籍企業

が利用し続ける理由について考察を深めることにあった 19。その理由として,既

存研究ではマキラドーラ産業の高度化――単純な組み立て加工から製造,さらに

は研究開発を担う――が指摘されてきた。しかしながらこうした技術的高度化を

遂げたマキラドーラ企業でも,近年のマキラドーラ産業が経験した深刻な減退を

避けることができなかった。例えば 新の技術を利用し,高度に複雑な製品を生

産するグアダラハラの電子産業クラスターにおいても深刻な雇用の喪失が見られ

た。他方で,依然としてメキシコに留まりマキラドーラ企業を利用する多国籍企

業も存在しており,それにはこうした技術的要因以外に多国籍企業がメキシコに

拠点をおく重要な理由があると彼らは主張している。

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表6 米国市場における競争の類型

グローバル市場 マキラドーラが米国において低コスト国の生産者と競争に直面する市場。 標準化された製品,低コストの生産者 既に十分標準化された製品を生産し,価格競争を行っている。グローバル市場と地域市場が混合する市場 北米市場で販売される大量生産で,標準化された低コスト製品の生産。マキラドーラが,

低コスト国の生産者に譲った市場。非標準化されたセグメントで競争するために,マキラドーラは以下のビジネス・モデルを採用している。

   コーポレート・シェルター 契約製造ビジネス・モデル。間接経費を削減するため,非標準化された時間依存性の高い少量生産製品を高コスト国から低コスト国(ここではメキシコ)へ効率的に移転する。

   デュアル・ソーシング 多国籍企業が大量生産品の生産地として最も低コストである国の輸出加工区を利用している。マキラドーラの場合,同じ製品を作っていても,北米市場の需要の変動に即座に対応するために生産を行っている。

   大量・特注生産 特注かつ時間依存性の高い製品を北米市場に供給する。地域市場 マキラドーラが米国において低コスト国の生産者と競争に直面しない市場。 JIT生産者 大規模な自動車部品製造者であることが多い。北米市場の顧客にJITで供給する。 無欠陥生産者 北米市場の顧客に対して,100%の品質が最重要視される一方,低コストに関して重要で

はない医療製品および航空関連製品を供給する。 低価格・重量製品の生産者 重量があり輸送が困難で,比較的高価ではない製品の組み立てまたは製造を行っている 再製品化センター 顧客によって製造者に返品された製品の修理等を行っている。(出所)Sargent and Matthews [2004], p. 2021

現地調査から彼らは多国籍企業親会社の調達ネットワークと米国市場における

競争の特徴からマキラドーラ産業が直面する競争について3つのカテゴリーを導

き出した(表6参照)。第1に,マキラドーラ企業が低コスト国(中国である場合

が多い)の企業と北米市場において直接競争している場合であり,それは「グロ

ーバル市場」での競争として分類されている。第2に,標準化された低コスト製

品の場合,低コスト国で生産され,同じ品目であっても非標準化された製品や需

要の変動への対応についてはマキラドーラが生産する場合であり,「グローバル市

場と地域市場が混合する市場」での競争と位置づけられている。第3に,「地域市

場」での競争であり,低コスト国との競争に直面しないケースである。米国市場

に近接するメキシコの立地上の優位性をフルに活かして,顧客の厳しい要求に迅

速に的確に反応することが重視されるビジネス・モデルにマキラドーラが利用さ

れる場合を指す。より具体的には,北米市場に向けてジャスト・イン・タイム(Just

in Time)で 終製品を供給したり,顧客の需要の変化に迅速に対応する特注製品

を供給したり,輸送コストが大きい製品についてはその輸送コストを 小化する

という役割を果たすことである。そして調査の結果,「グローバル市場」で低コス

ト国の企業と競争するマキラドーラ企業が深刻な減退を経験する一方で,「グロー

バル市場と地域市場が混合する市場」において低コスト国の企業と競争の住み分

けをしている,または低コスト国の企業と競争が無い「地域市場」に参入するマ

キラドーラ企業は概して順調な操業を行っていることが発見された 20。

その発見から彼らが引き出した政策提言は,低コスト国の企業との競争を避け,

成熟した大市場への地理的な近接性を活用することが,高コスト化した輸出加工

区であるマキラドーラにとってその発展を維持する上で重要であるということで

ある。製造業にとってメキシコの立地特殊的優位性(location specific

advantages)は,北米市場への輸送時間が短いことおよび輸送コストが小さいこ

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とである。他方でその劣位性は,中国等,より低コスト国との比較において生産

コストが高いことである。彼らは,マキラドーラがメキシコの立地特殊的優位性

を活かすビジネス・モデルを選択することにより,中国など低コスト国の製品と

競合せず,棲み分けが可能になることを示した。これまでマキラドーラや輸出加

工区の生き残り策は,主に製品や生産工程の技術的高度化または国内の後方連関

の強化に注目して議論されてきたことを考えれば,この研究が打ち出した視点は

独創的なものであると言える。さらにたとえ生産コストが高くなっても地理的近

接性を活用することで,輸出加工区の延命が少なくとも一部の部門では可能であ

ると示した点については,輸出加工区のライフ・サイクルを考える上で非常に興

味深い論点を提供しており,今後十分な検討が必要になると考えられる 21。

こうした直接投資受入国の立地特殊的優位性を成熟した大市場への近接性から

捉える視点とともに,多国籍企業の調達活動を考察する上で興味深い視点を提供

しているのが,製品の技術的性格に関する藤本隆宏の議論である。藤本は,製品

アーキテクチャという概念を用いて製品の技術的性格を類型化し,その設計と生

産上の特徴から,各製品の国際分業がどのような広がりをもつか考察するための

手掛かりを与えている。

藤本によれば,製品アーキテクチャとは「『どのようにして製品を構成部品や工

程に分割し,そこに製品機能を配分し,それによって必要となる部品間・工程間

のインターフェース(情報やエネルギーを交換する「継ぎ手」の部分)をいかに

設計・調整するか』に関する基本的な設計思想」であり(藤本[2003],p.87),そ

れには大きく4つの概念がある。インテグラル(擦り合わせ)型製品の場合,部

品設計の相互調整が必要であり,相互に緊密な連携を取る必要がある。それに対

してモジュラー型(組み合わせ)型製品の場合,部品・モジュールが自己完結的

な機能をもち,インターフェースも非常に単純化されている。したがって既存製

品を寄せ集めれば多様な製品ができ,製品機能が十分発揮できる。オープン(業

界標準)型は基本的にモジュラー型であって,なおかつインターフェースが業界

レベルで標準化した製品である。したがって企業を超えた寄せ集め設計が可能で

あり,異なる企業から部品を集めて組み立てれば,機能性の高い製品を生み出す

ことができる。それに対してクローズ(囲い込み)型は,部品間のインターフェ

ース設計が基本的に一社で閉じているものを指す。

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図4 設計情報のアーキテクチャ特性に

よる製品類型

インテグラル モジュラー    (擦り合わせ)    (組み合わせ) 自動車 メインフレーム

クローズ オートバイ 工作機械(囲い込み) 軽薄短小型家電 レゴ

ゲーム・ソフトパソコン

オープン パッケージ・ソフト(業界標準) 新金融商品

自転車 (出所)藤本[2003], p. 90

電子機器はモジュラー・オープン型アーキテクチャの典型である。パソコンな

どの電子機器ではインターフェースが業界レベルで標準化しており,既存部品を

寄せ集めれば多様で高機能の製品を作ることができる。したがって特定の地域を

越えたグローバルな生産と調達が可能となる。これに対してインテグラル・クロ

ーズ型アーキテクチャの典型は自動車であり,下請けのような濃密な企業間分業

または分厚い産業集積が優れた製品の開発・生産に不可欠となる。また多国籍企

業本社からの詳細な仕様を基に生産を行う,または本社を通じて供給される裁断

済み織布を縫製するアパレル製品の場合は,モジュラー・クローズ型であると考

えられる。

電気・電子機器および繊維・アパレル製品の生産は,その部品・製品の輸送費

が比較的小さいこと,またモジュラー型アーキテクチャという製品の技術的性格

によってグローバルなアウトソーシングが可能となっている。電子部門の場合,

NAFTA域外から輸入される投入財に大きく依存しているので 22,NAFTA第 303 条の

実施により,マキラドーラを介した保税加工による北米諸国への輸出が困難にな

った。さらに米国のITバブルの崩壊が電子製品のライフ・サイクルを長期化させ

たことにより,同部門における輸送費(輸送距離・時間の長さ)の重要性はさら

に小さくなった(Hisamatsu [2006], p. 16)。繊維・アパレル部門については同

部門における世界的な供給過剰が価格競争を激化させたことにより賃金など生産

コストが高くなったマキラドーラでの生産が不利になった 23。そして前節で既に

述べたようにNAFTA域外国に対してNAFTA加盟国と同等の市場アクセスを米国が認

めるようになり,そのことがメキシコでの生産を行う必要性をさらに減じさせた。

以上の要因によって電気・電子機器および繊維・アパレル部門を中心に,多国籍

企業がメキシコから撤退し,中国や中米・カリブ海諸国へその生産拠点を移管し

たと考えられる。

それに対して自動車などの輸送機器については,部品・製品の輸送コストが高

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く,製品の設計・開発・生産において企業内外の緊密な連携やジャスト・イン・

タイムの供給が重要となる。したがってこれらの部門の多国籍企業は,マキラド

ーラが高コスト化する状況においてもメキシコに留まったと考えられる 24。

以上,グローバリゼーション下において,経済活動の地理的配置が,製品の技

術的な性格,輸送費,需要,多国籍企業の戦略とどのように関わってくるかとい

うことを検討してきた。 後に,メキシコの輸出志向工業化期におけるこれまで

のマキラドーラ産業の発展を振り返りながら,今後のマキラドーラ産業の発展の

方向性を考察してみたい 25。

1980 年代初頭,メキシコは他の後発工業国に先んじて経済政策・制度の自由化

と規制緩和に取り組み,自らの開発戦略を輸出志向工業化に転換した。それに伴

いマキラドーラ産業はメキシコの開発戦略の拠点として位置づけられることにな

った。当時メキシコは米国や他のNICs(Newly Industrializing Countries: 新

興工業国)に対して相対的低賃金国であった。さらに保税加工制度や付加価値関

税制度などメキシコと米国の関税優遇措置や,米国への近接性という優位性を活

かし,マキラドーラ産業は急速に発展した 26。

マキラドーラ産業にとって1つの転機となったのが1994年のNAFTA発効である。

NAFTAは域内諸国からの輸入に対して関税を撤廃していったが,それは海外での付

加価値額に対して関税を賦課する付加価値関税制度よりも,メキシコにとって米

国への輸出に際し関税上有利な制度である。ただしこの関税撤廃の恩恵を享受す

るには,NAFTAで定められた原産地規制を満たさなければならない。それはマキラ

ドーラ産業についても同様で,NAFTA域外国から輸入された投入財に大きく依存す

るマキラドーラ企業(主に日本,韓国,台湾などのアジア系企業)は,そうでな

いマキラドーラ企業(主に米系企業または電子部門)に対して競争上不利になる

可能性が生じた。しかしながらマキラドーラ産業全体としては,NAFTAによる域内

取引自由化の恩恵や原産地規則達成のため多国籍企業が北米への生産移転を進め

たことで,その発展を維持し続けた 27。

次の転機となったのが今回のマキラドーラ産業の減退であり,その背後には中

国などさらなる後発国の工業力の強化,グローバリゼーションの進展,マキラド

ーラ産業の高コスト化がある。メキシコが輸出志向工業化に開発戦略を転換した

当時,多国籍企業の要求に応えられる工業力水準をもつ後発国は主に NICs に限定

されていたが,今日はより多くの国にそれが広がっている。また米国のメキシコ

に対する関税上の優遇措置は,米国の関税・数量規制の引き下げによって特別な

ものではなくなっている。このような状況の下で,マキラドーラ産業の高コスト

化は,労働集約的部門および関税コストに敏感な部門を中心にマキラドーラから

の撤退を招いた。

以上のような構造的変化は不可逆的なものであると考えられ,グローバリゼー

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ションの下で,メキシコおよびマキラドーラ産業は国際分業の中でこれまでと違

った位置取りを必要としている。すなわちかつてのような労働集約的部門への特

化から,より資本・技術集約的部門への特化を進める同時に,米国への地理的近

接性を活かし,北米市場の需要や生産と同期した供給を行う等,他の国では代替

不可能な役割を果たしていくことである。そのためにはインフラの改善や 28,マ

キラドーラによって形成された産業集積の高度化のための施策として技術・職業

訓練を通じた人的資源の開発,技術開発のための援助などにおいて公的部門も積

極的な役割を果たさなければならないと考えられる 29。

おわりに

高コスト化したメキシコのマキラドーラから多国籍企業が撤退していく現象は,

グローバリゼーションの下で労働集約的部門の比較優位がメキシコから失われつ

つあることを示している。高コスト化したマキラドーラ産業が今後も発展してい

くためには,従来指摘されていた技術的な高度化および後方連関効果の強化とと

もに,グローバリゼーション下におけるメキシコおよびマキラドーラ産業の国際

分業上の位置を考慮した公的支援が求められる。それはメキシコがグローバリゼ

ーション下において後発工業国間で発生する条件切り下げ競争(race to the

bottom)から抜け出し,国際分業において代替不可能な位置を今後も占めるため

に必要な「国家の役割」である。

注 1 もともとマキラドーラとは,メキシコにおける保税加工制度の一種を指す名称である。

しかしながら一般には,その制度の適用を受けて操業する企業や産業についてもマキラド

ーラと呼称している。 2 累積債務危機を契機にメキシコの開発戦略は輸出志向工業化へ転換し,マキラドーラ産

業はメキシコの開発戦略の拠点として位置づけられるようになった。マキラドーラ産業と

メキシコの輸出志向工業化の展開に関する詳しい分析については,田島[2006]を参照され

たい。 3 2003 年半ばからの米国経済の拡大によって,マキラドーラ産業に関するいくつかの指標

(被雇用者数,外国直接投資額および純輸出額)は改善の兆しを見せつつある。他方で企

業数は 1998 年の企業数を下回る水準に留まっている。今回の減退期において労働集約的マ

キラドーラの多くが淘汰され,マキラドーラ産業はよりハイテクかつ資本集約的部門への

特化を強めつつあると考えられる。Council of Economic Adviser [2005], p. 49; Poder

Ejecutivo Federal [2006], p. 380; Secretaría de Economía [2006], Cuadro No.1. 4 J・カリージョ(Jorge Carrillo)らも同様の要因を指摘している。Carrillo y Gomis [2003] 5 会計検査院がインタビューを行った 23 の企業団体のうち,約半数以上が中国の台頭をそ

の要因として挙げている。USGAO[2003], p. 26 6 このように 1994 年以降,メキシコからの繊維・アパレル輸入が増加した理由の1つは,

北米自由貿易協定(NAFTA: North American Free Trade Agreement)の発効である。NAFTA

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によって,米国への輸入について関税上の優遇措置を受ける場合,輸入品が NAFTA の原産

地規則を満たさなければならない。そこで繊維・アパレル産業のサプライ・チェーンを担

う米系企業がこぞって東アジアからメキシコへ生産を移転したことが,メキシコからの輸

入拡大の要因となった。田島[2006];Bair and Gereffi [2001];内多[1998]を参照。 7 中国の賃金水準については,Banister [2005]も参照。それによれば 2002 年の中国都市

部における労働者の推定時給は 0.95 ドル,郷鎮企業のそれは 0.41 ドルであった。 8 例えば峯村[2001b]; 中畑・ゴメス[2005] 9 中国は,2001 年末に WTO 加盟に加盟した。 10 1998 年第4四半期よりペソが持続的にドルに対して切り上がるのに対して,メキシコの

競争相手である中国の元が 1998 年初め頃から切り下がっていた。USGAO[2003], pp. 30-31 11 Wilson [1992]等参照。逆にペソの実質実効為替レートの上昇がメキシコ製品の国際競

争力を弱め,国際的な債務・通貨危機を引き起こしてきたという指摘も数多くなされてき

た。それを単にメキシコ通貨当局の政策運営の失敗という問題に帰結させることに対して

安原は疑問を呈している。安原によれば,通貨・為替政策の主な目標をインフレ率の低下

と対外債務の利子支払いにおかなければならないエマージング諸国にとって,それらの政

策は所与のものであることを示している。言い換えれば海外からの資本流入によって経済

成長の原資を獲得するメキシコのようなエマージング諸国にとって,その通貨の過大評価

は構造的な問題として捉えられるべきであると述べている。安原[2003],第 9 章 12 会計検査院による回帰分析の結果は以下の通りである。米国 GDP が 1%減少することで

マキラドーラの雇用は 3.68%減少するのに対して,ペソの実質為替レートが 1%上昇するこ

とでその雇用は 0.17%しか減少しない。USGAO [2003], p. 59 13 「恒久的施設」の一例は,ある企業の海外で活動する支店があげられる。この支店は,

活動している海外の国から見て非居住者でありながら,その国の政府から課税される。 14 しかしながら「恒久的施設」としての認定が留保された代替措置として,所有資産の

6.9%または操業コストの 6.5%のどちらか高い方をベースに課税されることになり,マキ

ラドーラ企業は税コストの増加を余儀なくされた。さらにこの留保は,税法の改正による

ものではなく,税務雑則の改定という行政府の意向により変更可能な方式で行われたため,

それを不安視される向きもある。長島[2002] 15 第 303 条の実施により,生産コストが 20%上昇したケースもあると報告されている。

USGAO [2003], pp. 35-36

マキラドーラ制度の変更を控え,日系企業など域外企業はその代替措置を求めた。その

具体化したものが産業分野別生産促進措置(PROSEC: Programa de Prmoción Sectorial)

である。同措置は主に電機機器,電子機器,自動車・同部品を対象としており,NAFTA 域内

に輸出を行うか否かを問わず,部品,原材料,機械・設備の輸入について 0―5%の優遇関

税が適用するものである。同措置は 2000 年 11 月 20 日に施行された。

しかしながら PROSEC は,輸出促進をとりわけ重視したマキラドーラ制度とは異なって,

メキシコ国内の産業育成にも力点を置いている。このため国内のサプライヤーから調達可

能とみなされた品目は PROSEC の対象外とされる。同制度の発足当初はとくに多くの品目が

PROSEC の対象外とされたために,マキラドーラ産業の生産に大きな支障が生じた。金沢

[2001]

マキラドーラ産業の減退という事態を受けて,2001 年から 2002 年にかけて PROSEC の対

象となる品目が大幅に拡大された。電子,繊維・アパレルをふくむ 22 の工業部門の 1万 6000

品目以上が新たに PROSEC に付け加えられた。USGAO[2003], p. 39 16 会計検査院の報告書以外に峯村[2001a]も参照。 17 2001年のメキシコの 恵国待遇による平均関税率は16.5%であった。メキシコの当局は,

この関税率の引き上げの理由を対外ショックによって引き起こされた政府財政に対する悪

影響を補填するためと説明した。WTO, Secretariat [2002], pp. 32-33

Page 18: 減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓 - Hitotsubashi ......ラドーラ産業の企業数は2000年当時の79.7%,被雇用者数については82.2% にまで減少した。例えば,1973年から1974年の米国経済の景気後退の影響によ

18 表 1 によれば,2003 年のマキラドーラ産業全体の被雇用者数は約 106 万 2 千人だった。

この調査の対象となった被雇用者数がマキラドーラ産業全体のそれに占める比率は 6.3%で

ある。 19 調査対象となった 55 のマキラドーラのうち,33 のマキラドーラは多国籍企業によって

経営を支配されていた。そのうち米国とメキシコのみで操業を行う多国籍企業によって経

営を支配されているマキラドーラは 8 つのみで,他の多国籍企業は立地戦略上すでにメキ

シコ・マキラドーラ以外の選択肢をもっていた。Sargent and Matthews [2004], p. 2020 20 ただしサージェントとマシューらはとくに言及していないが,数量的な需要の変動に対

応するためにマキラドーラが利用される場合,その生産の受注は受動的で不安定にならざ

るを得ないと考えられる。関下[2006],271 ページ参照。 21 ここで念頭においている輸出加工区のライフ・サイクル論とは,藤森英男らを中心とし

たアジア経済研究所の研究グループによって提起された仮説を指している。藤森[1978]。

輸出加工区のライフ・サイクル論について詳しくは,田島[2006]の第2章を参照されたい。 22 例えばグアダラハラの電子産業クラスターで用いられる投入財の約 90%は NAFTA 域外

から輸入されており,同電子産業の生産は関税の変化に敏感に反応すると言われている。

Hisamatsu [2006], p. 16. 近年,再び同産業の輸出が増加しているは,米国の景気回復と

共に,注 15 で指摘した PORSEC の適用を受ける品目が増加し,電子部品については関税率

が 0%になったことがその要因として考えられる。中畑[2006]参照。 23 E・ダッセル・ピータース(Enrique Dussel Peters)と L・X・ドン(Liu Xue Dong)は,1970

年代における繊維・アパレル製品の世界市場の成長率が 3%であったのに対し,1990 年~2002

年の間は 1%を下回っていたことを指摘している。Dussel Peters y Dong [2005], p. 286 24 UNCTAD(United Nations Conference on Trade and Development:国連貿易開発会議)

も 2004 年版の『世界投資白書』において,繊維・衣類・電気・電子部門と輸送機器部門に

対照性が見られた要因について同様の指摘を行っている。すなわち米国に対するメキシコ

の地理的近接性が,輸送費が高く,かつジャスト・イン・タイムが重要な輸送機器部門を

メキシコに留めさせたと指摘している。UNCTAD [2004], pp. 61-62

また河村と折橋は,電気機械産業よりも自動車産業のほうが「移動可能性」が低い理由

を挙げており,それは以下の点に整理できる。①製品アーキテクチャの違い,②担当して

いる工程の違い(北米の電気機械産業の場合, 終組立工程に特化している場合が多く,

したがって設備も簡単で,労働者のスキルも高いものが求められない),③工場建設時の必

要投下資本額の違い,④製品の輸送性の違い。河村・折橋[2005] 25 マキラドーラ産業の発展段階についての議論は,Carrillo, Hualde y Quintero Ramírez

[2005]も参照のこと。 26 米国の付加価値関税制度については,田島[2006]第 4 章を参照されたい。 27 NAFTA がメキシコの経済発展に果たした役割は,田島[2006]の第 6 章および第7章を参

照されたい。 28米国と国境を共有するメキシコの6つの州の高速道路はおおむね良く整備されているが,

それでもその 32%がコンディションの良くない状況にあると言われている(USGAO [2003],

p. 41)。米国との近接性,輸送コストの低さがメキシコの立地特殊的優位性であることを

考慮すれば,高速道路などへのインフラへの投資は優先度の高い政策であると言える。 29 国境地帯の経済活動人口の3分の1以上が,初等教育またはそれ以下の教育しか受けて

いないと言われている。USGAO [2003], p. 41. またR・A・パストール(Robert A. Pastor)

は,メキシコの教育に関する資源配分の問題を次のように指摘している。メキシコはその

享受者が一部である高等教育に不釣合いなまでに資金を投入する一方,初等・中等教育に

対する資金投入は不十分である。また地方における教育の質は非常に低い。パストールは,

近年のメキシコの経済発展と教育レベルが,1980 年代のポルトガルおよびスペインと同等

の水準にあることに注目した。そして当時のポルトガルおよびスペインの教育政策を研究

Page 19: 減退期におけるマキラドーラ産業からの教訓 - Hitotsubashi ......ラドーラ産業の企業数は2000年当時の79.7%,被雇用者数については82.2% にまで減少した。例えば,1973年から1974年の米国経済の景気後退の影響によ

し,メキシコ政府は総合大学への資金を減少させ,中等教育,そして貧困な地方において

技術・コンピュータ訓練に重点をおくコミュニティ・カレッジにより多くの資金を投入す

べきだと提言した。Pastor[2001], pp. 140-142

また産業集積が形成された後の公的部門が果たす役割については,園部・大塚[2004];

木村[2002],マキラドーラに焦点を絞ったものとしては,Villavicencio y Casalet [2005];

Hisamatsu [2006]を参照のこと。

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