強震動シミュレータ:gms強震動シミュレータ:gms...

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GMSとは(独)防災科学技術研究所によってパッケージ化された、3次元差分法(FDM)により地震波伝播のシミュレーション を行うためのツール群です。GMSはすべて無料でダウンロードして ( http://www.j-map.bosai.go.jp/GMS/) 使用することが 出来ます。また、主にF90(フォートラン90)で書かれた差分計算ソルバーは、ソースコードも公開されています。 3次元地下構造を考慮した地震動のシミュレーションや、強震動予測、地震動予測地図作製において標準的手法として用いら れるようになった3次元差分法による計算を行う際に必要となる煩雑な作業を、可能な限りGUIにより簡略化しました。 システムの構成 目的および内容 特徴 解析例 (2003年十勝沖地震) 強震動シミュレータ:GMS 1.最小限の手間で3次元波動伝播シミュレーション 差分計算に必要な、震源・構造・入出力・計算条件等、膨大な パラメータの設定作業をGMSでは視覚的・直感的に行うこ とができます。 2.各種ツールと差分計算ソルバーを完全に分離 きめ細かい作業が必要なパラメータ設定ツール・可視化 ツールと、大きなマシンパワーが必要なソルバーを完全に分 離しました。 3.多くのプラットフォームに対応する差分計算ソルバー PCからWS、スパコンまで幅広いプラットフォームに対応し ており、MPIを用いた並列化計算も可能です。 4.小さい計算機負荷 不連続格子を採用することにより、計算機負荷(計算時間・ メモリ容量)を数分の1から十分の1程度に軽減できます。 ●パラメータ設定 パラメータ設定ツールで構造・観測点・震源の設定を行います。 ●計算波形と観測波形 2003年十勝沖地震では、震源から200km以上も離れた苫 小牧(勇払平野)において石油タンクが溢流し大規模火災が 発生するなど、長周期地震動による被害が起きました。解析に より得られた3次元波動場をボリュームレンダリングしたとこ ろ、勇払平野の深い堆積平野端部に入射した地震波が軟弱 な堆積層で増幅され、表層でトラップされることで長周期の地 震動が数百秒以上にわたって継続する様子が再現され、複雑 な伝播をしていることが分かりました。 防災システム研究センター 「地震動予測・地震ハザード評価手法の高度化に関する研究」チーム

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Post on 19-Sep-2020

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 GMSとは(独)防災科学技術研究所によってパッケージ化された、3次元差分法(FDM)により地震波伝播のシミュレーションを行うためのツール群です。GMSはすべて無料でダウンロードして (http://www.j-map.bosai.go.jp/GMS/) 使用することが出来ます。また、主にF90(フォートラン90)で書かれた差分計算ソルバーは、ソースコードも公開されています。  3次元地下構造を考慮した地震動のシミュレーションや、強震動予測、地震動予測地図作製において標準的手法として用いられるようになった3次元差分法による計算を行う際に必要となる煩雑な作業を、可能な限りGUIにより簡略化しました。

システムの構成

目的および内容

特徴 解析例 (2003年十勝沖地震)

強震動シミュレータ:GMS

1.最小限の手間で3次元波動伝播シミュレーション差分計算に必要な、震源・構造・入出力・計算条件等、膨大なパラメータの設定作業をGMSでは視覚的・直感的に行うことができます。

2.各種ツールと差分計算ソルバーを完全に分離きめ細かい作業が必要なパラメータ設定ツール・可視化ツールと、大きなマシンパワーが必要なソルバーを完全に分離しました。

3.多くのプラットフォームに対応する差分計算ソルバーPCからWS、スパコンまで幅広いプラットフォームに対応しており、MPIを用いた並列化計算も可能です。

4.小さい計算機負荷不連続格子を採用することにより、計算機負荷(計算時間・メモリ容量)を数分の1から十分の1程度に軽減できます。

●パラメータ設定パラメータ設定ツールで構造・観測点・震源の設定を行います。

●計算波形と観測波形

2003年十勝沖地震では、震源から200km以上も離れた苫小牧(勇払平野)において石油タンクが溢流し大規模火災が発生するなど、長周期地震動による被害が起きました。解析により得られた3次元波動場をボリュームレンダリングしたところ、勇払平野の深い堆積平野端部に入射した地震波が軟弱な堆積層で増幅され、表層でトラップされることで長周期の地震動が数百秒以上にわたって継続する様子が再現され、複雑な伝播をしていることが分かりました。

防災システム研究センター「地震動予測・地震ハザード評価手法の高度化に関する研究」チーム