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卒業論文 Excel を用いた 恒星内部構造の計算 I09G040 西井嵩浩 岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科 田邉研究室

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卒業論文

Excelを用いた

恒星内部構造の計算

I09G040 西井嵩浩

岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科

田邉研究室

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要約

岡山理科大学田邉研究室は従来, 3 つの望遠鏡による観測を主体とし, 特に激変星な

どの突発天体を主に観測(測光, 分光)されている. しかし, 本卒業研究においては, あ

えて観測は行わず, 理論のみの研究を行った. ここで, ポリトロープ・モデルによる星

の内部構造を Excel により解くことが本研究の目的である. 歴史上の様々な天体物理学

者たちがおこなってきた理論計算を追体験することも本研究の醍醐味のひとつであり,

如何にして星の内部構造を計算したのかを本論文にまとめることにする.

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目次

第 1 章 序論

1.1 星の内部構造と天体物理学

1.2 私と天体物理学

1.3 本研究の目的

第 2 章 星の内部構造に関する天文学的基礎

2.1 概要

2.2 ニュートン力学~重力の基礎~

2.3 星の明るさ~絶対等級と実視等級~

2.4 星の表面温度~輻射~

2.5 有効温度~ボロメトリック補正~

2.6 星の諸量 1~星の距離~

2.7 星の諸量 2~星の質量~

第 3 章 星の内部構造に関わる熱力学

3.1 概要

3.2 理想気体の状態方程式

3.3 気体の分子運動論

3.4 理想気体の内部エネルギー

3.5 熱力学の第 1 法則

3.6 理想気体の比熱

3.7 理想気体の断熱変化

第 4 章 恒星内部の静力学平衡

4.1 概要

4.2 静力学平衡の式

4.3 球殻の質量

第 5 章 恒星内部の静力学平衡

5.1 概要

5.2 ポリトロープ的状態方程式とポリトロープ指数

5.3 レイン・エムデン方程式

5.4 ポリトロープ・モデル

p.4~p.7

p.4~p.6

p.6~p.7

p.7

p.8~p.25

p.8

p.8~p.10

p.10~p.13

p.13~p.20

p.20~p.21

p.22~p.23

p.23~p.25

p.26~p.37

p.26

p.26~p.29

p.29~p.31

p.31

p.32

p.33~p.35

p.35~p.37

p.38~p.42

p.38

p.38~p.41

p.41~p.42

p.43~p.48

p.43

p.43

p.44~p.46

p.46~p.48

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第 6 章 恒星内部の静力学平衡

6.1 概要

6.2 レイン・エムデン方程式の冪級数展開 1(n=整数)

6.3 レイン・エムデン方程式の冪級数展開 2(n=1.5 の場合)

第 7 章 恒星内部の静力学平衡

7.1 概要

7.2 Excel を用いた恒星内部構造の計算

7.3 冪級数展開による数値解の精度~考察~

7.4 冪級数展開による数値解の精度~まとめ~

第 8 章 恒星内部の静力学平衡

8.1 概要

8.2 結論~第 2 章~

8.3 考察と結論~ポリトロープ・モデル~

8.4 総結論と今後の課題~ポリトロープ・モデル~

8.5 Excel とポリトロープ・モデルにおける追体験

謝辞

参考文献

補遺

補遺 1 2 項定理について

補遺 2 n=1.5 の場合においての補足

p.49~p.54

p.49

p.49~p.52

p.52~p.54

p.55~p.62

p.55

p.55~p.58

p.58~p.61

p.61~p.62

p.63~p.66

p.63

p.63~p.64

p.64~p.65

p.65~p.66

p.66

p.67~p.68

p.69~p.71

p.72~p.73

p.72

p.72~p.73

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第 1 章 序論

1.1 星の内部構造と天体物理学

天体物理学(Astro physics)とは物理学を駆使して天体現象を研究しようとする学問で

ある. 扱う対象が天体現象であるため, 我々の住む地上では取り扱えない極端な状態を

理解するための物理学を必要とする場合がある. このことから, 天体物理学は天体現象

を通じて自然を支配している物理を知ろうとする物理学者と, 物理法則と観測と宇宙

そのものの姿を知ろうとする天文学者との共通の学問領域となっている. 天文学は人

類の文明発祥の時代にまでさかのぼる古くから存在する学問であるが, 天体物理学の

歴史はそれに比べるとずっと新しいものである .なぜなら , 量子力学※ 1 (Quantum

mechanics)や原子核物理学※2 (Nuclear physics)等の新しい物理学が必要としたからであ

る. これらの物理学の登場により発展した分野は輻射輸送論※3 (Theory of radiative

transfer), 星のスペクトル理論※4 (Spectrum theory of the star), そして恒星内部構造論※5

(Theory of stellar structure)と恒星進化論※6 (Stellar evolution)である. これらは天体物理学

の基礎分野として現在でも重視されている . 本論文ではポリトロープ・モデル※7

(Polytropic models)により恒星の内部構造を計算するというものである. ポリトロープ・

モデルについては後ほど詳しく議論する. なお, 天体物理学には実に様々なものがあり,

先程挙げたもの以外にも多く存在し, 例えば宇宙論※8 (Cosmology),理論天体物理学※9

(Theory astro physics)等も挙げられる.

さて恒星の内部は直接に観測できないが, 一定の物理法則に支えられて恒星物質が

一定の形状を保っている(一定の物理法則とは, 恒星の内部の至る所で万有引力と圧力

とがつり合う必要がある=力学的平衡状態である). その内部を支配している物理法則

は, 我々地上の実験室で行われるものと同等でならなければならないはずなので, これ

を用いて推論できるわけである. このことから, 物理法則の知識が豊富になるほど推論

も精彩を加え現実的なものに近くなるといえる. 推論は一つの観測量から出発して他

※1 原子や電子といったミクロな世界での現象を解く際に使用される力学.

※2 原子核の核構造や核反応等を扱う学問.

※3 輻射とは電磁波である.天体現象において物理的に次の 2 つの形で関与する.

1.エネルギー輸送の 3 要素伝導,対流,輻射(放射)のうちの輻射にあたる.

2.運動量輸送,すなわち力である.

これは天文学的現象における主要なエネルギー輸送であるといえる.詳しくは「2.2 恒星の表面温度」を参照

※4 太陽や恒星のスペクトルの研究の基礎はドイツの物理学者グスタフ・ローベルト・キルヒホフ(Gustav Robert

Kirchhoff)により与えられた

※5 本論文の目的である.詳しくは 1.3 恒星内部構造論の歴史とポリトロープ・モデル,4 章恒星内部構造論参照.

※6 恒星の誕生から恒星の最期までにおこる恒星内部構造の変化を扱う理論.

※7 圧力と密度がある関係式(後に記術)を満たし,力学平衡にある球対称な流体の天体をポリトロープガス球等と呼ぶ.

ポリトロープの内部構造はレイン=エムデン方程式(Lane-Emden equation)を用いて記述される。

※8 宇宙全体を一個の実体として理解しようとする学問である.

※9 観測結果より新たな現象を予測するモデルを構築する.恒星の内部構造を近似するポリトロープもその一つである.

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の観測量に行き着くものでなければ, その検証はできない. 恒星内部構造論の場合では,

HR 図※10 (Hertzsprung-Russell diagram)(1913)や, 質量光度関係(Mass-luminosity relation)※

11 (1924), それに周期光度関係(Period-luminosity relation)※

12(1908)等が検証資料となる.

しかし, 恒星内部構造論がジョナサン・ホーマー・レイン (Jonathan Homer Lane) (米)に

よって初めて採り上げられたのは, これら観測事実がまだわかっていなかった 1870 年

である. これは, 理想気体の状態方程式: ボイル・シャルルの法則(Ideal gas law: Boyle

Charles law)※13 のもとに平衡を保っている二つの恒星モデルについて, 内部の密度, 温

度 , 圧力を比較し合った研究である . これを発展させたロバート・エムデン(Robert

Emden)(独)(図 1.1.1)は 1907年に「ガス球論」を発刊した. ここで彼はガス法則としてポリ

トロープ・モデルなる関係を採用した. したがってポリトロープ・モデルは理論天体物

理学の一分野でもあるといえる. 1915 年以来アーサー・スタンレー・エディントン卿(Sir

Arthur Stanley Eddington)(英)(図 1.1.2)は, この理論に打ち込み, 質量光度関係等の成果を

得て, 1926 年に「恒星内部構造論」を著した. 恒星内部では輻射平衡が成り立つという見

地に立ち, 輻射エネルギーの生産関係を適当に仮定することによって, ポリトロープ・

モデルを適用した. その後原子核物理学が発展し, 恒星内部のエネルギー発生機構が熱

核融合反応であることが明らかとなり, 恒星内部構造論は充実し, 恒星の進化過程(恒

星進化論)まで論じられるようになった.

ポリトロープ・モデルは時間発展を解くシミュレーションが主流になった今日でもそ

の重要性は変わっていない(なお, 時間発展を追うソフトは市販されている). 特に白色

矮星(White dwarf star)の内部構造を扱ううえでこのポリトロープ・モデルが有効である.

白色矮星は「激変星※14 (Cataclysmic variable star)」の主星:田邉研究室の観測ターゲット

であるために関連性が深い. 白色矮星以外の星についてもエネルギー輸送を無視でき

る場合は有効であるといえる.

※10 縦軸に絶対等級,横軸にスペクトル型をとった恒星の分布図.

※11 恒星の質量が大きければ大きいほど絶対等級が小さくなる(明るくなる)関係.

※12 脈動変光星に対する変光周期と平均光度との関係.明るい脈動変光星ほど周期が長いという関係になっている.

※13 ボイル・シャルルの法則といい PV=nRT で表される.

1.ボイルの法則は圧力(P)が強ければ体積(V)は小さくなる.

2.シャルルの法則は温度(T)が高くなれば体積(V)が大きくなる.

詳しくは 3 章星の内部構造に関わる熱力学参照.

※14 普段は暗い星であるが, ある日突然爆発的に明るく輝き出す変光星.

参考 : 加藤正二,1989,天体物理学基礎理論-序,ごとう書房

: 荒木俊馬,他,1958,天文学の歴史 新天文学講座Ⅶ-第 5章,恒星社

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1.2 私と天体物理学

例年田邉研究室では観測を重点的に行うゼミ生が多い中, 私が天体物理学の方向へ

進もうとした経緯について述べることにする. 地球の外側には何があるのかと質問す

るとたいていの人は太陽系が存在すると答える. では太陽系のさらに外側には何が存

在するのかと質問を続けていくと最終的には必ず答えられなくなる. 答えられない, す

なわちわからない場所やモノに疑問を抱きはしないだろうか. それを知りたくなった

からこそ天文学に興味を持ちだした. 天文学好きの人の多くは実際に星を観て天文学

に興味を持つ人が多い. そのような場合ならばここでの表題を「私と天文学」としたで

あろう. しかし宇宙や星の物理的な構造が知りたかったので「私と天体物理学」という

表題にし区別した. 「天文学」と「天体物理学」とを区別した理由は, 「1.1 星の内部構造と

天体物理学」で述べたように似て非なるものであるからである.

ではいつ頃天体物理学に興味を持ちはじめたのかを述べる. 先に述べた疑問を抱い

たのは幼稚園の頃だと記憶している. 突然頭の中に湧いて出てきたかのようにこの疑

問が飛び出してきた. そこで様々な絵本を読んだが理解できるはずもなく疑問として

残ってしまう. しかし絵本を読んだことにより太陽系すら知らなかった当時の私に現

在(1995 年頃)の知られている宇宙の簡単な構造(太陽系や銀河系等)を知ることができ天

図 1.1.1: エムデン 図 1.1.2: エディントン

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文学の基盤となる知識を得ることができた. この経験がなければ, 現在天文学を選んで

いなかったかもしれない.

成長とともに天文学への知識と興味も少しずつ増えていき, 高校 3 年生の頃には, 大

学で本格的な天文学を学びたいと決心し, 結果現在に至る.

本論文では天体物理学の 1分野である恒星内部構造論を主に扱う. 恒星の内部構造に

興味を持つこととなったきっかけは高校生の頃に読んだ「学校では教えない教科書 面

白いほどよくわかる宇宙の不思議」という本を読んだとき, 恒星進化論について強い関

心と興味を持つこととなる. 物理的な証明はされてはいなかったが非常にわかりやす

い解説がなされていた. 数学があまり得意ではなかった当時においてはこれが大変良

かったといえた.

岡山理科大学へ入学し 3年間基礎固めをした後に田邉研究室へ入ることが許され, 田

邉健茲教授により本格的な天体物理学をご教授頂いたことを誇りに感じている. 恥ず

かしながら高校生の頃, 天体物理学を理解するための物理学と数学がこれほど必要と

なるとは想像もつかなかった. 大学生活を通じて, 特にこの 1 年間を通して本物の天体

物理学が学べたと改めて感じているところである.

1.3 本研究の目的

コンピュータの無かった当時では手計算にも時間がかかったと容易に考えられる.

そこで本研究の目的は今日, 最も広く使用されている計算ソフト「エクセル」を使い, 効

率的かつ容易に星の内部構造を解こうとするものである. また, 天文学の基礎について

も軽く触れておく(2 章).

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第2章 星の内部構造に関する天文学的基礎

2.1 概要

恒星内部構造論の本題に入る前に 2012 年度の 1 年間に行った定例ゼミの中でも天文

学(特に恒星内部構造論と深く関わるもの)を勉強するうえにおいて特に押さえておき

たいと考えられるものを本章にてまとめておく. 定例的なゼミは基本的に以下の文献

(Tayler,R.,J.,1994,The Stars : their structure and evolution Second edition Chapter2 ,

Cambridge University)

により進められたのでここに記しておく.

2.2 ニュートン力学~重力の基礎~

重力(Gravity)は質量に働く力全般をさす.

1. 地球上において物体が地面に近寄ろうとす

る力. 重さを作り出す原因である. Gravity よ

り地球の重力加速度を小文字で g と略すこ

とができる.

2. 物体と物体が互いに引き合う力. 天体物理

学において万有引力 (Universal gravitation)

と同一として扱う . なお万有引力定数※ 1

(Gravitational constant)を大文字の G で表す.

万有引力 (万有引力の法則 (Law of universal

gravitation))とは, すべての 2 物体はその質量の

積に比例する引力で引き合っているとアイザッ

ク・ニュートン卿(Sir Isaac Newton)(図 2.2.1)は考

えた. 万有引力の大きさは 2 物体の距離の 2 乗

に反比例することを見いだした. 以下にその式

を記すと,

𝐹 = 𝐺𝑀𝑚

𝑟2 (2.2.1)

である. ここで F は万有引力の大きさ, M,m は物体の質量, r は物体間の距離, そして G

は万有引力定数である. ニュートン力学※2 においてこの式がすべての物体の間で成立

するといえる. ここで例として地球の質量を求める. 地球の表面付近にある質量mの物

※1 = . 2 1 𝑚 ・ 2

※2 古典力学とも呼ぶ.量子力学がミクロな世界ならばニュートン力学はマクロな世界にて適用される.

図 2.2.1: ニュートン

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体に作用する地球の重力加速度 mg は, 半径 REで質量が MEの地球の作用する万有引力

によるものなので,

𝑚𝑔 = 𝐺𝑚𝑀𝐸

𝑅𝐸2 (2.2.2)

となる. さらに(2.2.2)式を次のように変形させると,

𝑀𝐸 =𝑔𝑅𝐸

2

𝐺 (2.2.3)

となり, 重力加速度 g=9.8m/s2, 半径 RE=6.37×10

6m を(2.2.3)式に代入すると地球質量

ME=6.0×1024

kg となる.

では, 密度 ρが一定である球対称な星を仮定し, 中心からの距離 r≦Rおよび r>Rの

点における重力加速度の変化を考えてみる(図 2.2.2).

星の中心から距離 r にある点 mにおける重力加速度は星の中心に向かい, その大きさは

点 m より中心にある質量のみが関係してくる(万有引力の法則より). 星の中心から半径

r までの球体の質量を M(r)とすると, 点 m における重力加速度の大きさは,

𝑔 = 𝐺𝑀(𝑟)

𝑟2 (2.2.4)

となる. ここで球の体積 4/3πr3, 密度 ρより質量 M (r)は,

𝑀(𝑟) =4

3𝜋𝑟 𝜌 (2.2. )

で表せる. ここで点 m が星の半径 R より中心にある場合(r≦R)は,

𝑔 = 𝐺

43𝜋𝑟

𝜌

𝑟2 (2.2. )

となり, 整理すると,

𝑔 =4

3𝐺𝜋𝑟𝜌 (2.2. )

図 2.2.2: 密度一定球対称の星

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となり, 星の内部においては半径に比例して重力加速度が大きくなる. したがって星の

表面で重力加速度が最大となり, 星の中心部では重力加速度は 0 となる. 点 m が星の半

径Rよりも外側にある場合(r>R)では, rが大きくなっても質量M(R) は変化しないので,

𝑔 = 𝐺

43𝜋𝑅

𝜌

𝑟2 (2.2.8)

となり, 整理すると

𝑔 =4

3𝐺𝜋𝑅 𝑟 2𝜌 (2.2. )

となり, 星の外側では半径の逆 2 乗で無限遠に重力加速度が小さくなるといえる. 以下

に密度一定球対称な星における半径における重力加速度分布曲線を示す(図 2.2.3).

2.3 星の明るさ~絶対等級と見かけの等級~

星から放たれた光の観測された明るさは通常, 等級(Magnitude)で示される. 等級は明

るさを対数で表し値が小さなほど明るい. 等級は見かけの等級(Apparent magnitude)と絶

対等級(Absolute magnitude)とに分けられる. 実視等級は星そのものの明るさではなく見

かけの明るさであり m で表す. 絶対等級は星を 10 パーセク(Parsec: pc) ※3の距離に置

いたときの明るさである. すなわち星そのものの明るさでありMで表す. 絶対等級と見

かけの等級との間の関係については本節の最後にて詳しく議論する. 定量的測光※4 方

法が導入された 19 世紀にはギリシャ時代の古い定性的な測定とできるだけ一致するよ

うに次のように定めた.

図 2.2.3: 密度一定球対称な星における半径における重力加速度分布曲線

※3 1pc=3.08568×1016m=3.26156×100光年

※4 望遠鏡に光電管(現在は冷却 CCD が主流)と測光用フィルターを付けて天体を撮像し,明るさを精密に測定する.

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𝑚 = 𝑐 − 2. 𝑙𝑜𝑔𝐿 (2.3.1)

ここでmは見かけの等級, Lは調べられた波長領域における星の明るさ, cは定数である.

明るさ(Luminosity) L※5 は地上に置かれた測定器に入る光量を測定している. ここで

(2.3.1)式を変形し光度 L を求める式を示す.

𝐿 = 1 𝐶+𝑚2.5 (2.3.2)

星の内部構造を議論する場合には星が毎秒あたり放出している絶対的なエネルギー

量が必要あり, 実視等級から絶対等級への変換を行う必要がある. この変換にはその星

までの距離 d を知り, 地球上の単位面積あたりに入ってくるエネルギー量に 4πd2

を乗じなければならない(図 2.3.1).

ただし距離がわかる星はそう多くないうえに星から出た光が星間空間に存在する気体

や地球大気により光が散乱されたり吸収されたりするためこの方法だけでは不十分だ

といえる. 地球大気の影響に関しては宇宙空間へ出ていけば関係なくなるが, 星間気体

が存在するという困難は, より正確な効果の補正が可能になった現在でも本質的には

取り除くことは不可能である.

さて本節の本題である星の放っている光の量(絶対光度)と観測される見かけの光度

の関係を示していく. 星の放っている全エネルギー(絶対光度)Lsは,

𝐿𝑠 = ∫ 𝐿𝜆

0

𝑑𝜆 (2.3.3)

図 2.3.1: 全エネルギー(光度)

※5 L=flux(1m2に 1 秒間の光の入る量)

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で表せる. ここで, Lλdλは星の放っているエネルギー波長が λと λ+dλとの間のものであ

る. ここで, 地球大気や星間空間が光に対して完全に透明と仮定するならば, 地球表面

上の単位面積あたり単位時間あたりに到着するエネルギーはLs/4πd2である. 波長 λの光

が地球表面に届く確率を tλ, 観測装置の感度を sλとすると, 波長 λと λ+dλとの間の光の

flux(地球表面上の単位面積あたり, 単位時間あたりに観測されるエネルギー:lλdλ)は,

𝑙𝜆𝑑𝜆 =𝐿𝜆𝑑𝜆𝑡𝜆𝑠𝜆4𝜋𝑑2

(2.3.4)

である. これを全エネルギーで表すと,

𝑙𝑠 = ∫𝐿𝜆𝑑𝜆𝑡𝜆𝑠𝜆4𝜋𝑑2

𝑑𝜆∞

0

(2.3. )

となる.

なお, 測光(Photometry )(L)は全波長域における光を観測しているのに対し, 分光

(Spectroscopy) (Lλ)は限られた波長域のみを観測している(図 2.3.2).

ここで, 絶対等級(M)と見かけの等級(m)との間の関

係を与える式を証明しておく. ノーマン・ロバート・ポ

グソン(Norman Robert Pogson)(図 2.3.3)により導かれ

たポグソンの式,

𝑚 −𝑚2 = 2. lo (𝑙2𝑙 ) (2.3. )

は, m1とm2の 2つの物体(星)を扱っているが, M,mと

する 1 つの物体(星)として考える. ここで, M は 10Pc

の場所での flux(地球表面上の単位面積あたり, 単位時

間あたりに観測されるエネルギー)であり, m は地球で

の flux となる. 絶対的な明るさを L, 見かけの明るさ

を l とするとき次の図のようになる(図 2.3.4).

図 2.3.2: 測光と分光

図 2.3.3: ポグソン

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ポグソンの式を 1 つの物体(星)として考えたときは次のようになる,

𝑚 −𝑀 = 2. lo (𝐿

𝑙) (2.3. )

ここで電磁波(光)は逆 2 乗則で減衰するため,

𝐿

𝑙=𝑟2

1 2 (2.3.8)

となり, 整理すると,

𝑀 = 𝑚 − 𝑙𝑜𝑔 (𝑟

1 ) (2.3. )

となり, 絶対等級 M が求まる.

2.4 星の表面温度~輻射~

星から放出された光の性質は波長あるいは振動数に対する強度分布により特徴づけ

ることができる. 光の性質の完全な記述はすべての波長に対する光度 lλを観測すること

により得られる. 輻射量(Quantity of radiation)はすべての波長域に対して一様に幾何学

的係数 4πd2 だけ減少するので光の波長依存性は星までの距離に直接影響されることは

ない. しかし調べようとする星が遠ざかったり近づいたり, また地球と星が相対的な運

動をしている場合, ドップラー効果※6 (Doppler effect)によって光の性質は変化する. ド

ップラー効果によりスペクトルがわずかに赤方あるいは青方に偏移することを利用し

て, 星の相対運動の速度を調べることができる. 星の速度が光速度に近い時には光の性

質に重大な変化をもたらす. (2.3.4)式から, 光が途中で散乱されたり吸収されたりする

とき, この効果がすべての波長に対して一様でないため光の性質は変化してしまう. し

かし, 逆にこれを利用してどの程度吸収が起こっているかを推定することができる.

さて, 星の色は表面温度と密接に結びついているわけだが表面温度は必ずしも一意

図 2.3.4: 1 つの物体として考えるポグソンの式のイメージ

※6 ドップラー効果は V=(Δλ/λ)c.ここで,Δλはずれた波長,c は光速度である.

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的に決めることはできない . 温度は系が熱力学的平衡状態※ 7 (Thermodynamic

equilibrium)にあるときのみ定義できるものである. この場合では光のエネルギー分布

は温度によって一意的に決定できる. これが黒体輻射(Black body radiation)あるいはプ

ランク分布(Planck distribution )と呼ばれるものである. プランクの法則(Planck's law):

(マックス・カール・エルンスト・ルートヴィヒ・プランク(図 2.4.1)(Max Karl Ernst Ludwig

Planck))より系が熱力学的平衡状態にあるときには波長が v と v+dv との間で, 単位時間

あたり, 単位面積を通じて面に垂直な方向への単位立体角あたりの輻射量は,

𝐵𝜈(𝑇) =2ℎ𝜈

𝑐21

𝑒ℎ𝜈𝑘𝑇 − 1

(2.4.1)

で与えられる. Bν(T)は温度 Tでのプランク分布関数(Planck distribution function)と呼ばれ,

v は光の振動数, c は光速度(3.00×108ms

-1), h はプランク定数(Planck's constant)(6.63×

10-34

Js), k はボルツマン定数(Boltzmann constant )(1.38×10-23

jK-1

)である. ここで, Bv(T)は

入射する電磁波を完全に吸収する物体からの放射についてのみ成り立つといえる: 黒

体輻射の法則(Black body radiation law).

プランクの公式以前にはヴィーンの放射法則(Wien's radiation law): (ヴィルヘルム・カ

ール・ヴェルナー・オットー・フリッツ・フランツ・ヴィーン(図 2.4.2)(Wilhelm Carl Werner

Otto Fritz Franz Wien))とレイリー・ジーンズの法則(Rayleigh Jeans law): (第 3 代レイリー

男爵・ジョン・ウィリアム・ストラット(図 2.4.3)(John William Strutt 3rd Baron Rayleigh), ジ

ェームズ・ホップウッド・ジーンズ(図 2.4.4) (Sir James Hopwood Jeans))が考案されていた

※7 ある物理系を孤立系とし, そのまま長い時間放置しておくとその系は熱平衡の状態の物理状態に達する. 熱平衡の状

態という物理状態に達する. 熱平衡に達すると系の性質は場所に依存しなくなるため系のどの部分でも同じ温度にな

る. 式で表すと, ΔU-ΔW-TΔS=0 となる. ここで ΔUは系の内部エネルギー, ΔWは系になされた仕事, TΔSは熱力学温度

である.

図 2.4.1: プランク 図 2.4.2: ヴィーン

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が, ヴィーンの放射法則は短波長領域においては実験データと一致するが長波長領域

では一致しなかったのに対し, レイリー・ジーンズの法則は長波長領域においては実験

データと一致するが短波長領域では一致しないという矛盾があると知られていた. そ

こでプランクは短波長領域, 長波長領域いずれの波長においても実験データと一致す

る法則を発見した. これがプランクの法則(2.4.1)式である.

ところで, 我々は温度という言葉を系が熱力学的平衡状態にないときにも用いてい

る. この場合は粒子の平均的運動エネルギーの大きさとして温度を定義している. 星に

対して粒子がどのような運動エネルギーをもっているかは観測によって知ることがで

きず, 観測可能な光から表面温度を導かなければならない.

ここで, (2.4.1)式より実際に太陽(6,000K)を仮定したとき, 輻射強度が最大値をとると

きの振動数(vmax)を求める. さらに輻射強度(λmax)も求める. まずは輻射強度が最大値を

とるときの振動数(vmax)を求める. (2.4.1)式より,

ℎ𝜈

𝑘𝑇= 𝑥 (2.4.2)

とおくと,

𝐵𝜈(𝑇) =2ℎ𝑣

𝑐21

𝑒𝑥 − 1 (2.4.3)

となる. ここで(2.4.2)式を変形すると,

𝜈 = (𝑘𝑇

ℎ)𝑥 (2.4.4)

となり, これを(2.4.3)式に代入し, 整理すると,

図 2.4.4: ジーンズ 図 2.4.3: レイリー

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𝐵𝜈(𝑇) =2

𝑐2ℎ (𝑘𝑇

ℎ) 𝑥

𝑒𝑥 − 1 (2.4. )

となる. ここで右辺を,

2

𝑐2ℎ (𝑘𝑇

ℎ)

= 𝑎 (2.4. )

とおき(a=定数), 右辺ののこりを微分すると,

𝑓′(𝑥) =3𝑥2

𝑒𝑥 − 1+ 𝑥 (

1

𝑒𝑥 − 1) (2.4. )

となる. ここで,

𝑔(𝑥) = (1

𝑒𝑥 − 1) (2.4.8)

とおき, 微分すると,

𝑔(𝑥)′ = −𝑒𝑥 −

(𝑒𝑥 − 1)2 (2.4. )

となり, 整理すると,

𝑔(𝑥)′ = −(𝑒𝑥 − 1)2𝑒𝑥 (2.4.1 )

となる. ここで(2.4.7)式に(2.4.10)式を代入すると,

𝑓′(𝑥) =3𝑥2

𝑒𝑥 − 1+ 𝑥 (−(𝑒𝑥 − 1)2𝑒𝑥) (2.4.11)

となり, すべての微分が完了する. (2.4.11)式を整理すると,

𝑓′(𝑥) = 𝑥2(𝑒𝑥 − 1) {3 − (𝑒𝑥 − 1) 𝑥𝑒𝑥} (2.4.12)

となる.ここで, f’(x)=0 となるとき, 輻射強度の最大値となる.(2.4.12)式に(ex-1)をかけ,

右辺第 1 項を消去し, exでまとめると,

𝑒𝑥 =3

3 − 𝑥 (2.4.13)

となり, 右辺と左辺の x にそれぞれ値を入れていけば次の(表 2.4.1)のようになる. ここ

で e は自然対数の底: ネイピア数(Napier's constant)= 2.718・・・である.

表 2.4.1: x における関数値

x 2.00 2.10 2.20 2.30 2.40 2.50 2.60 2.70 2.80 2.90 3.00

3

3 − 𝑥 3.00 3.33 3.75 4.29 5.00 6.00 7.50 10.00 15.00 30.00 ∞

ex 7.38 8.16 9.03 9.97 11.02 12.18 13.46 14.88 16.44 18.17 20.09

ここで, x におけるそれぞれの関数値の接点がある場所を決める必要があるが, 先に(表

2.4.1)をグラフ化したものを(図 2.4.5)に示す.

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(表 2.4.1)と(図 2.4.5)から x はおおよそ 2.80 で交わることが読み取れる. 輻射強度が最大

値をとるときの振動数(νmax)を求める方程式,

𝑥 =ℎ𝑣𝑚𝑎𝑥𝑘𝑇

(2.4.14)

において, x=2.80, T=6000(K), k=1.38×10-23

(jK-1

), h=6.63×10(-34

Js)として計算すると,

𝑣𝑚𝑎𝑥 ≒ 3. 1 4𝑠 (2.4.1 )

となり, 輻射強度が最大値をとるときの振動数(vmax)が求まる.

では, 輻射強度(λmax)を求めていく. ここで, 気をつけなければならないのが, ここで

は(2.4.1)式が使用できないという点にある. 絶対温度 T の物体の表面 1m2 から波長が λ

と λ+Δλ の間の電磁波によって 1 秒間に放射されるエネルギーの量を表す式, いいかえ

ると, 単位立体角あたりの分光放射輝度は, 波長 λの関数として次の式で与えられる.

𝐼(𝜆, 𝑇)𝛥𝜆 =2𝜋ℎ𝑐2

𝜆51

𝑒ℎ𝑐𝜆𝑘𝐵𝑇 − 1

𝛥𝜆 (2.4.1 )

ここで, (2.4.16)式より輻射強度(λmax)を求める.まず,

ℎ𝑐

𝜆𝑘𝑇= 𝑥 (2.4.1 )

とおき, 変形すると,

𝜆 =ℎ𝑐

𝑥𝑘𝑇 (2.4.18)

となる. これを(2.4.16)式へ代入すると,

図 2.4.5: x における関数値

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𝐼(𝜆, 𝑇) = 2𝜋(𝑘𝑇)5

ℎ4𝑐 𝑥5

𝑒𝑥 − 1 (2.4.1 )

となる. ここで次の部分のみを微分すると,

(𝑥5

𝑒𝑥 − 1)

= 𝑥4

𝑒𝑥 − 1−

𝑥5𝑒𝑥

(𝑒𝑥 − 1)2 (2.4.2 )

となる. ここで,

(𝑥5

𝑒𝑥 − 1)

= (2.4.21)

とすると, (2.4.20)式より,

𝑥4

𝑒𝑥 − 1{ −

𝑥𝑒𝑥

𝑒𝑥} = (2.4.22)

となり, 整理すると,

𝑒𝑥 =

− 𝑥 (2.4.23)

となり, 右辺と左辺の x にそれぞれ値を入れていけば次の(表 2.4.2)のようになる.

表 2.4.2: x における関数値

x 4.00 4.10 4.20 4.30 4.40 4.50 4.60

− 𝑥 5.00 5.56 6.25 7.14 8.33 10.00 12.50

ex 54.60 60.30 66.70 73.70 81.50 90.00 99.50

x 4.70 4.80 4.90 4.91 4.92 4.93 4.94

− 𝑥 16.70 25.00 50.00 55.60 62.50 71.40 83.30

ex 109.90 121.50 134.30 135.60 137.00 138.40 139.80

x 4.95 4.96 4.97 4.98 4.99 5.00

− 𝑥 100.00 125.00 166.70 250.00 500.00 ∞

ex 141.20 142.60 144.00 145.50 146.90 148.40

ここで, 再び x におけるそれぞれの関数値の接点がある場所を決める必要がある. なお

(表 2.4.2)では, x=4.00~4.90 までにおいて, 接点が無いため, x=4.90~5.00 までの区間は

0.01 刻みで示す. (表 2.4.2)をグラフ化したものを(図 2.4.5)に示す.

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(表 2.4.2)と(図 2.4.6)から x はおおよそ 4.96 で交わることが読み取れる. 輻射強度(λmax)

を求める方程式,

𝑥 =ℎ𝑐

𝜆𝑚𝑎𝑥𝑘𝑇 (2.4.24)

において, x=4.96, T=6000(K), k=1.38×10-23

(jK-1

), h=6.63×10(-34

Js), c=3.00×108(km/s)とし

て計算すると,

𝜆𝑚𝑎𝑥 ≒ 4.84 1 7𝑚 (2.4.2 )

となり, 輻射強度(λmax)が求まる. なお, 484(nm)はスペクトルでいえば黄緑付近に相当す

る(6,000K を含めたプランク分布図は本節最後に示す).

多くの星では光のエネルギー分布がプランク分布からそれほどずれていないので,

星の表面温度は容易に定義できる. もし光エネルギー分布がプランク分布からずれて

いるときには温度を決定することは困難である. そのときは色指数により光の性質を

規定する. なお, 色指数とは星の光の 2 つの波長域における等級の差である. ここで, U,

B, Vの 3色で測光することにより 3つの色指数U-B, B-V, U-Vを得ることができる. ここ

で, U, B, V はおのおのの波長における星の等級を示している. 3 つの波長領域に対して

用いられるフィルターはだいたい 1,000Å ※8の幅をもち, 中心波長はおおよそ,

図 2.4.5: x における関数値

※8 1Å=10-10m=0.1nm, 1,000Å=10-7m=0.1μm

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𝜆𝑈 ≈ 3, Å, 𝜆𝐵 ≈ 4,4 Å, 𝜆𝑉 ≈ 4 Å, (2.4.2 )

である.

最後に 3,000K, 6,000K, 12,000K においてのプランク分布を示しておく.

ここで, 横軸は振動数(v/v0)であり, 縦軸は輻射強度(Bvc

2/2hv

30)である. 波の振動数(v

0)

は 10-14

m/s である.

2.5 有効温度~ボロメトリック補正~

星の内部構造論から予測される星の性質と観測結果の比較という問題に向き合うこ

とになる. 理論的な計算によって全波長にわたるエネルギー分布を出すことは, 難しい

が, 星の放っている全エネルギーを知ることは易しい. この場合, 有効温度 Te と呼ばれ

る量がしばしば用いられる. 有効温度は, 考えている星と同じ半径で, 温度 Te の黒体輻

射から放出される全エネルギーがちょうど星の全エネルギーに等しいような温度 Te で

あると定義される.

𝐿𝑠 = 𝜋𝑎𝑐𝑟𝑠2𝑇𝑒

4 ≡ 4𝜋𝑟𝑠2𝜎𝑇𝑒

4 (2. .1)

ここに , rs は星の半径であり , a は輻射密度定数 (Radiation density constant)

(7.55×10-16

Jm-3

K-4

), σ はステファン・ボルツマン定数 (Stefan Boltzmann constant)

(5.67×10-8

Wm-2

K-4

)であり, aと σ=ac/4の関係にある. ここで, 理論と観測とを比較するさ

いの重要な問題の 1 つは, 有効温度を色指数と, 輻射の光度をある特定の波長領域での

図 2.4.6: 3 つの温度におけるプランク分布

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等級と結びつけることである. とくに(Ls, Te)から(MV -B-V)への変換である. このような

変換は熱電対※9 (Thermocouple)で星の全エネルギーを測定するか, 数多くの狭波長冷却

CCD 測光による等級測定によってのみ可能である. 事実上このような観測は限られた

数の星に対してのみ行われ, その結果から有効温度と色指数, あるいは輻射等級と実視

等級との間の経験的な関係を求める. この経験則を他の星に対しても適応させる. 主系

列星※10 (Main sequence star)に対する変換を(表 2.5.1)に示し, それを(図 2.5.1)に示す.

表 2.5.1: 主系列星の色指数(B-V), 絶対実視等級(MV), 有効温度(logTe), 絶対輻射等級

(Mbol)の間の関係

B-V MV logTe Mbol B-V MV logTe Mbol

-0.3 -4.4 4.48 -7.6 0.5 3.8 3.8 3.8

-0.2 -1.6 4.27 -3.5 0.6 4.4 3.77 4.3

-0.1 0.1 4.14 -0.8 0.7 5.2 3.74 5.1

0 0.8 4.03 0.4 0.8 5.8 3.72 5.6

0.1 1.5 3.97 1.3 0.9 6.2 3.69 5.9

0.2 2 3.91 1.9 1 6.6 3.65 6.2

0.3 2.3 3.87 2.2 1.1 6.9 3.62 6.4

0.4 2.8 3.84 2.8 1.2 7.3 3.59 6.6

M

M

図 2.5.1: 主系列星の色指数(B-V), 絶対実視等級(MV), 有効温度

(logTe), 絶対輻射等級(Mbol)の間の関係

※9 温度差を測定するセンサ

※10HR 図上で, 左上から右下に延びる線である主系列に位置する恒星. 右上ほど, より高温で絶対等級で明るく, 左下に

なるにつれてより低温で絶対等級で暗くなる.

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2.6 星の諸量 1~星の距離~

星の距離を測るのには様々な方法があるが, ここでは三角法を利用した直接的な観

測による測定方法を述べていく. 太陽のまわりを公転する地球上である星を観測する

ことを考える.

地球が太陽のまわりの軌道上を運動することによって, 非常に遠方の星に対するその

星の見える方向は変化する. 変化する角度がわかれば三角形 EE’S は確定し, 太陽まで

の距離が求まる. ここで(図 2.6.1)より, 𝐸𝑆′̅̅ ̅̅ =d, 𝑆𝑆′̅̅ ̅̅ =d’, 𝐸𝑆̅̅̅̅ =r とするとき,

𝑟

𝑑= 𝑠𝑖𝑛𝜃

𝑟

𝑑′= 𝑡𝑎𝑛𝜃 (2. .1)

で各距離が求まる. 角 ES’S は星の視角と呼ばれる. 地球から最も近い恒星でさえこの

角度は 1’’以下である. ここで, 視角がちょうど 1

’’になるような距離を 1 パーセクと定義

される(詳しい距離は 2 章 3 節※3).

さて, 先ほど述べた距離決定方法の説明は問題をいくらか簡単化している. 実際の星

を考えると, 銀河系の中に存在している星は他のすべての星のつくっている重力場の

中で互いに 104~10

6m/s の速度で動きまわっている. 距離を測りたい星がこのような速

度で d’に垂直な方向に移動している場合を考えてみる(視線方向 d’に移動している場合

は, この差はたいして重要ではない. なぜならば, d’に対して垂直な方向に移動してい

るときに比べて移動距離が十分小さいからである). 地球が E から E’へ移動している半

年の間に星 S’は S’’まで移動する.

(図 2.6.2)より, 先ほど述べた距離の測定方法では正しい解は得ることができない. 観測

図 2.6.2: 恒星が太陽に対して相対的に運動している場合の視差

図 2.6.1: 恒星の視差

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している星が近接連星※11(Close binary star)でないかぎり, 観測している数年の間運動は

直線的で, なおかつ速度も一様であると仮定することができる. なぜなら, 一様な直線

運動からのずれは数千年あるいは 10 万年にもおよぶ時間ではじめてわかる程度の小さ

なものだからである. このように仮定すると, 数年にわたる観測によって星の固有運動

による移動と, 地球が太陽のまわりを運動しているための周期的な視角とを分離する

ことが可能である. 図は, 地球が E から E’へ移動し, 再び E へ戻ってくる間に, 恒星は

S’から S’’へ, S

’’から S’’’へと移動するとしている. 遠い星の場合, 視差∠ES

’’S を直接測定

することはできないが∠EPE’と∠S’ES’’’との 2 つの角度は測定可能である.

2.7 星の諸量 2~星の質量~

本章の最後として, 質量の求め方について述べることにする. 星の質量を直接的に知

る唯一の方法は連星系の力学を調べることである. 用いる方法は連星が近接連星なの

か離れた連星なのかにより異なる. 2 つの星が比較的離れている連星を考える. 重力作

用を及ぼし合っている連星はケプラーの法則(Kepler’s laws):(ヨハネス・ケプラー(図

2.7.1)( Johannes Kepler))より, 互いに重心(Center of gravity)のまわりを楕円軌道を描い

て回転している(図 2.7.2). 連星が, 地球から観測できるほど互いに離れていたならば,

長時間の観測より重心のまわりの連星の軌道を知ることができる.さらに連星系の視角

が観測できるならば,地球からの距離がわかることから, 軌道の見かけの大きさから実

際の大きさを知ることができる. このように, 連星の回転周期と軌道半径とがわかれば

ケプラーの法則を用いて 2 つの星の質量を決定できる.

※11 2 つの恒星が万有引力で結びつき共通重心のまわりを公転している. 両星間の距離が星の半径か直径と同程度にまで

接近して回っているもの.

図 2.7.1: ケプラー

図 2.7.2: 2 つの星の楕円軌道

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まず連星系の視角(距離)がわかり, その軌道が円である場合を考えたときの質量を求

める(図 2.7.3). その後にケプラーの第 3 法則を証明しておく.

地球から連星の距離がわかっていることから, 2 つの軌道半径 r1, r

2がわかる. 軌道の

中心は系の重心だから,

𝑀 𝑟 = 𝑀2𝑟2 (2. .1)

または,

𝑀 𝑀2

=𝑟2𝑟 (2. .2)

が成り立つ. ここに, M1, M2はおのおのの 2 つの質量である. 観測により r1, r

2がわかる

から質量比はわかる. 質量比がわかったところで連星系の総質量を求める. ケプラーの

法則,

𝑎

𝑃2=𝐺𝑀24𝜋2

=一定 (2. .3)

を太陽系のような質量比が圧倒した系であるとすると,

𝑎

𝑃2=𝐺𝑀𝑠4𝜋2

=一定 (2. .4)

となり(ここで s=太陽), これを整理すると,

𝑃2 =4𝜋2𝑟

𝐺𝑀𝑠 (2. . )

となる. この場合は主星の質量のみがわかる.

質量比がある程度均等な系においては, 2 つの星の間の距離であることから, r=(r1+ r

2),

質量の和であることから Ms=(M1+M2)として, 回転周期 P(1 つの星がその軌道を完全に

描く時間)との間に,

図 2.7.3: 円軌道を描く連星系

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𝑃2 =4𝜋2(𝑟 𝑟2)

𝐺(𝑀 +𝑀2) (2. . )

という関係が成り立つ. ここで, (2.7.6 式)を整理すると,

𝐺𝑀 +𝐺𝑀2 =4𝜋𝑟

+ 4𝜋𝑟2

𝑃2 (2. . )

となることから, 連星系の総質量となる. ここで P も r1も r2も観測から求まるため, 右

辺を導くことが可能となる. 2 つの式, 比を求める(2.7.2 式)と連星系の総質量(2.7.7 式)

を用いると, おのおのの星の質量が計算することができる. もし, 連星系の視角が測定

できないときは, たんにみかけの軌道の大きさを知ることができず, 2 つの星の質量を

見出すことはできない. ただし, この場合でも(2.7.2 式)から質量の比だけは求められる.

ところで, ケプラーの法則には第 1 法則から第 3 法則までが存在する. 順に, ケプラ

ーの第 1 法則は連星軌道は楕円である, ケプラーの第 2 法則は面積速度一定の法則であ

る. そして,ケプラーの第 3 法則は a3/P

2=一定というものである. 先にも述べたがここで

ケプラーの第 3法則を証明しておくことにする. 万有引力の法則よりM2(大質量星:太陽

系でいう太陽に相当)と M1(小質量星:太陽系でいう惑星に相当)の間には, その距離の 2

乗に反比例し, 質量の積に比例する引力が働く,

𝐹 = 𝐺𝑀𝑚

𝑟2 (2. .8)

ここで, M1が半径 r, 公転周期 P の公転をするには

𝐹′ = 𝑀 𝑟 (2𝜋

𝑃)2

(2. . )

の向心力※12 (Centripetal force)が必要となる. ここで, (2.7.8 式)を左辺, (2.7.9 式)を右辺と

すると,

𝐺𝑀 𝑀2𝑟2

= 𝑀 𝑟 (2𝜋

𝑃)2

(2. .1 )

となり, 整理すると,

𝑟

𝑃2=𝐺𝑀24𝜋2

(2. .11)

となり, ケプラーの第 3 法則が求まる. これらの法則は一般の楕円軌道についても成立

つことが示される.

※12 物体を曲線軌道で動かす力.

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第 3 章 星の内部構造に関わる熱力学

3.1 概要

序論ではポリトロープ・モデルにより恒星の内部構造(特に白色矮星)を理解すること

が可能であると述べた. 本論文では今後ポリトロープ・モデルを使い恒星の内部構造を

議論することにする. 恒星の内部構造を理解するうえでまず重要となるのが理想気体

の断熱変化(Adiabatic change of ideal gas)についてである. なぜなら恒星は理想気体とし

て扱えるためである. ここで, 理想気体の断熱変化を理解するためにいくつかの理論が

必要となる. 本章ではまずそれらを議論したのちに理想気体の断熱変化について議論

し, 最終的にポリトロープ・モデルと深く関連させる.

そもそも熱力学(Thermodynamics )とは, 個々の物質の分子構造とは無関係な形で,

熱に関する一般的性質をいくつかの法則にまとめ, それらを出発点にして具体的な問

題を扱う学問である. 外部と熱および仕事のやりとりのある物体の状態変化でのエネ

ルギー保存則を熱力学の第 1法則とよぶ. これは熱は高温の物体から低温の物体へ自然

に移動するが, その逆(低温から高温)の移動は自然には生じない. この過程を不可逆過

程(Irreversible process)という. 状態変化の起こる向きについての法則が熱力学の第 2 法

則である. これはエントロピー(Entropy)とよばれる物理量(状態量)を導入することによ

って, 「エントロピーは常に増大する」という形で定量的に定式化される. なお, 熱力学

第 2 法則については本研究に直接関係しないため議論しないことにする.

3.2 理想気体の状態方程式

気体に関するいくつかの事実が実験により知られている. 温度が一定のとき, 気体の

体積 V と圧力 p は反比例する(図 3.2.1). この関係は,

=一定 (温度は一定) (3.2.1)

となる. この関係はロバート・ボイル(Robert Boyle)(図 3.2.2)により発見されたので, ボ

イルの法則(Boyle's law)という.

圧力を一定に保ちながら, 気体を温めると, 気体は膨張して体積が増す. 気体の温度

を 1℃上昇させると体積は 0℃(273.15K)のときの体積 V0 の 1/273.15 だけ減少する(図

3.2.3). したがって, t℃のときの体積 V は,

= (1 +𝑡

2 3.1 ) 0 (圧力は一定) (3.2.2)

となる. この関係はジャック・アレクサンドル・セザール・シャルル(Jacques Alexandre

César Charles) (図 3.2.4)により発見されたので, シャルルの法則(Charles's law)という.

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ここでシリンダーとピストンを考える. 気体は分子の集団で, 温度が上がると分子の

運動が激しくなり, 結果的に気体がピストンを押すこととなり, 気体の体積が増える.

逆に温度が下がると分子の運動は弱くなり, 結果的に気体がピストンを押す圧力が減

り, 気体の体積は減少する. (3.2.2)式から, -273.15℃(0K)では気体の体積は 0 になると推

測されるが実際には 0K になる前に気体は液化する(気体が液化, 固化しても 0K で分子

の熱運動が止まると考えられる). なお, K(ケルビン)は絶対温度である. 絶対温度は,

𝑇 = 𝑡 + 2 3.1 (3.2.3)

であるため, シャルルの法則を絶対温度で表すと,

=𝑇

2 3.1 0 (圧力は一定) (3.2.4)

図 3.2.1: ボイルの法則 図 3.2.2: ボイル

図 3.2.3: シャルルの法則 図 3.2.4: シャルル

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となる.

同温, 同圧, 同体積の希薄気体の中には, どのような気体でもつねに同じ数の分子が

含まれている . これをアボガドロの法則(Avogadro's law):(アメデオ・アボガドロ(図

3.2.5)(Amedeo Avogadro)による仮説(最終的にアルベルト・アインシュタイン(図 3.2.6)

(Albert Einstein)とジャン・バティスト・ペラン(図 3.2.7) (Jean Baptiste Perrin)により証明

された))という.

ボイルの法則, シャルルの法則, アボガドロの法則にしたがう気体を理想気体という.

標準状態(1 気圧=1.01325×105N/m

2, 0℃=273.15K)では 22.414L の理想気体の中に 1 モル

(mol)の分子, つまり, 個数が,

= . 22 1 2 𝑚𝑜𝑙 (3.2. )

の分子が含まれている. ここで NAをアボガドロ定数※1 (Avogadro constant) という.

ここで, シリンダーの中の気体の体積 V は, 絶対温度 T とモル数 n が一定のときはボ

イルの法則によって圧力 p に反比例し, 圧力 p とモル数 n が一定のときは絶対温度 T に

比例し, 圧力 p と絶対温度 T が一定のときはモル数 n に比例する. そこで, この 3 つの

関係をまとめると, n モルの気体の圧力 p, 体積 V, 絶対温度 T の間には,

= 𝑛𝑅𝑇 (3.2. )

という関係があり, これをボイルシャルルの法則という. なお, R は気体定数である. ボ

イルの法則, シャルルの法則より, R は,

𝑅 =𝑃

𝑇 (3.2. )

となる. ここで, P=1.01325×105N/m

2, V=22.414L , T=273.15K より,

※1 12C 12 g の中に含まれている原子の総数で定義される

図 3.2.5: アボガドロ 図 3.2.6: アインシュタイン 図 3.2.7: ペラン

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𝑅 = 8.31 ( ・𝑚𝑜𝑙) (3.2.8)

となる. ここで R は気体の種類によらず一定である.

現実の気体は, 低温や高密度のときには(3.2.6)式からずれるが, 高温低密度の希薄

な気体の場合には(3.2.6)式は気体の状態をよく表す. 理想気体とは, (3.2.6)式をつねに満

足する気体の存在を想定したものである. (3.2.6)式は理想気体の圧力, 体積, 温度, モル

数などの気体の状態を表す量の関係式なので, 理想気体の状態方程式という.

3.3 気体の分子運動論

ボイルシャルルの法則は分子論の立場で説明できる. ここで, 容器の中の気体が壁に

及ぼす圧力を, 壁に衝突する気体分子の作用としてミクロな立場で考える.

1 辺の長さ L の立方体の容器に n モルの気体, つまり nNA個の気体分子が入っている

とする. 本来これらの分子は壁に衝突するか他の分子に衝突すると運動状態を変える

が, 気体は希薄なのでここでは簡単のために分子同士の衝突は無視できるものとして

考える. ここで図 3.3.1の右側の壁に速度 v=(vx,vy,vz)で弾性衝突(Elastic collision)する 1つ

の分子に注目する. この弾性衝突で速度 v の壁に平行な成分の vy,と vzは変化しないが,

壁に垂直な x 成分は vxから- vxに変わる. そこで質量 m の分子の運動量 mv は壁に垂直

な成分が(-mvx)-( mvx)=-2 mvxだけ変化する. これは運動量変化と力積の関係によって衝

突の際に分子が受けた左向きの力積(「力」×「作用時間」)に等しい. また, 作用反作用の

法則※2 (Newton's third law: Action reaction law)により, この分子が壁に及ぼす力積は右向

きの2 mvxである. この分子は他の壁に衝突して, 再びこの右側の壁に戻ってくる. ここ

で, 1 往復する時間は, 2L/ vxなので, 時間 t にこの分子が同じ壁に衝突する回数は,

図 3.3.1: 気体分子の運動(壁との衝突)

※2 ニュートンの運動の法則の第 3法則である. 2つの質点の間に働く力には 1方の質点に作用する力だけでなく, 他方

への反作用の力がある. この力は大きさが等しく, 向きは逆である.

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𝑡2

=𝑣𝑥𝑡

2𝐿 (3.3.1)

であり, この間に 1 個の分子が壁に及ぼす力積は,

2𝑚𝑣𝑥 𝑣𝑥𝑡

2𝐿=𝑚𝑣𝑥

2

𝐿𝑡 (3.3.2)

となる. これを全分子について加えれば, 気体が壁に及ぼす力積が求められる. nNA個の

分子の vx2の平均値を(vx

2)と記すと, vx

2 を全分子について加えれば nNA(vx2)となる. そこ

で全分子が時間 t の間に壁に及ぼす力積は,

𝑛 𝑚(𝑣𝑥2)

𝐿𝑡 (3.3.3)

である. 一方, 全分子が壁に及ぼす力を F とすると, 時間 t の間の力積は Ft なので, 平

均の力 F は,

𝐹 =𝑛 𝑚(𝑣𝑥

2)

𝐿 (3.3.4)

となる. ここで, 壁の面積は L2なので, 気体の圧力 p は,

=𝐹

𝐿2=𝑛 𝑚(𝑣𝑥

2)

(3.3. )

となる(ここで V=L3). 気体分子の運動は全体としては等方向であり, (vx

2)= (vy

2)= (vz

2)だ

と考えられる. ここで, ピタゴラスの定理※3 (Pythagorean theorem)により,

𝑣2 = 𝑣𝑥2 + 𝑣

2 + 𝑣 2 (3.3. )

となり, その平均値は,

(𝑣2) = (𝑣𝑥2) + (𝑣

2) + (𝑣 2) = 3(𝑣𝑥

2) (3.3. )

となる. ここで(3.3.7)式の関係より(3.3.5)式は,

=1

3= 𝑛 𝑚(𝑣

2) =2

3𝐸 (3.3.8)

となる. ここで,

𝐸 =1

2= 𝑛 𝑚(𝑣

2) (3.3. )

は気体分子の全運動エネルギーである. ここで, (3.3.8)式とボイルシャルルの法則(3.2.6)

式を比較すると,

1

2𝑛 𝑚(𝑣

2) = 𝐸 =3

2𝑛𝑅𝑇 (3.3.1 )

となり, 気体分子の全運動エネルギーE は絶対温度 T に比例する. ここで (3.3.10)式か

ら, 気体分子 1 個あたりの平均の運動エネルギーは,

※3 直角三角形の 3 辺の長さの関係を表す等式であり, a2+b2=c2という関係がある. 今回の場合では, 3 次元空間内の一

般化のため, vx, vy, vz を用いて(3.3.6)式のようになる.

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1

2𝑚(𝑣2) =

3

2

𝑅

𝑇 (3.3.11)

である. ここで,

𝑅

= 𝑘𝐵 (3.3.12)

とおける. ここで kB(あるいは k)はボルツマン定数=1.38×10-23

J/K であり, (3.3.11)式に代

入すると,

1

2𝑚(𝑣2) =

3

2𝑘𝐵𝑇 (3.3.13)

となり, 気体分子の運動エネルギーE は絶対温度 T に比例するといえる. なお, 絶対温

度 T を(3.3.13)式で定義すれば気体分子運動論(Kinetic theory of gases)からボイルシャル

ルの法則を導くことができる.

3.4 理想気体の内部エネルギー

物質中の分子の熱運動の運動エネルギーと位置エネルギーの総和を, その物質の内

部エネルギーという. 前節では分子間の力を無視しているので, 気体分子は熱運動の位

置エネルギーをもたない. 前節で議論した運動エネルギーは気体分子の運動重心運動

の運動エネルギーである.

単原子分子の運動は重心運動だけなので(3.3.10)式のEにはヘリウム(He), ネオン(Ne),

アルゴン(Ar)のような単原子分子から構成された nmol の気体分子の熱運動の全エネル

ギー(内部エネルギー:U)は,

=1

2𝑛 𝑚(𝑣

2) =3

2𝑛𝑅𝑇 (3.4.1)

となる.

2 原子分子や 3 原子分子等は, 分子の回転や振動も考えなければならないので, 内部

エネルギーは(3.4.1)式よりも大きくなると考えられる. そこで, (3.4.1)式の代わりに,

=𝑓

2𝑛𝑅𝑇 (3.4.2)

とおく. 実験によれば低温でないかぎり, 単原子分子の場合には f=3,であり, 2 原子分子

の場合 f≒5, 3 原子分子の場合 f≳6 である(詳しくは 3.6 節, 3.7 節で示す). これは, 分子

の回転運動のエネルギーのためだと解釈されている. 2 原子分子の場合, 2 つの原子を結

ぶ軸のまわりの回転運動のエネルギーは無視できるので, 3 原子分子の場合よりも回転

運動のエネルギーは少ない. ここで, 分子の中での原子の振動は超高温にならなければ

起こらない. 高温になると様々な新しいタイプの熱運動が生じるため, fの値は温度とと

もに増加する.

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3.5 熱力学の第 1 法則

熱力学の第 1 法則は, 熱を含めた「エネルギー」という保存する量の発明という形で,

ジェームズ・プレスコット・ジュール(James Prescott Joule) (図 3.3.1), ユリウス・ロベル

ト・フォン・マイヤー(Julius Robert von Mayer) (図 3.3.2), ヘルマン・ルートヴィヒ・フェル

ディナント・フォン・ヘルムホルツ(Hermann Ludwig Ferdinand von Helmholtz) (図 3.3.3)に

よって独立に発見された.

さて, 熱の実体は高温の物体から低温の物体に移動しているエネルギーであるから,

外部と熱的および力学的に作用し合う物体にエネルギー保存則を適用することができ

る. これを熱力学の第 1 法則という. 物体に外部から熱 Q が入ったり外部が物体に仕事

W をすると物体の内部エネルギーU は増加する. ここで, 物体が外部と力学的および熱

的に作用し合い, 外部から物体に熱 Q が入り, 外部が物体に仕事 Wをした場合に, その

前と後ろでの物体の内部エネルギーU の変化は,

後 − 前 = + (3. .1)

である. 物体から外部に熱が出た場合は Q<0, 物体が外部に仕事をした場合は W<0で,

負符号の数値を代入すればよい. (3.3.1)式を微小量の形で表すと,

𝛥 = 𝛥 + 𝛥 (3. .2)

となる. (3.3.1)式, (3.3.2)式では, U, Q, W などの単位は共通のものを選ばなければならな

い. もし, U と W の単位に J, Q の単位に cal を使うと(3.3.1)式は,

後 − 前 = 4.18 + (3. .3)

となる. なお, 物体が状態 A から状態 B へ変化するとき出入りする熱と仕事は A と B の

間の状態変化の経路によって異なるので, 熱 Q, ΔQと仕事 W,ΔWは始状態と終状態だけ

では決まらない.

図 3.3.1: ジュール 図 3.3.3: ヘルムホルツ 図 3.3.2: マイヤー

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3.6 理想気体の比熱

理想気体が断熱変化(ΔQ=0)をする場合, p と V(あるいは p と ρ)の間の関係についてそ

れぞれ議論する.

「定積モル比熱」

体積を一定にして 1 モルの気体に熱 ΔQ を加えて温度を ΔT 上昇させる場合には, 外部

は気体に仕事をしないので(ΔW=0), 内部エネルギーの増加 ΔU=ΔQ である. この式の両

辺を ΔTで割ると, 「熱容量」=「加えた熱 ΔQ」/「温度上昇 ΔT」なので, 1 モルの気体の熱容

量である定積モル比熱 CVは,

𝑉 = (𝛥

𝛥𝑇)定積

=𝛥

𝛥𝑇 (3. .1)

となる.

「定圧モル比熱」

気体に熱 ΔQを加えると温度が ΔT 上昇し, 体積が ΔV 増加するので, 外部は気体に仕事

-pΔVをするので, 熱力学第 1 法則は,

𝛥 = 𝛥 − 𝛥 (3. .2)

となる. ここで内部エネルギー:U, 熱エネルギーQ, 圧力 p, 体積 V である. 断熱変化な

ので,

𝛥 = (3. .3)

となるので, (3.5.1)式は,

𝛥 = − 𝛥 (3. .4)

となる. ここで 1 モルの気体の状態方程式は

= 𝑅𝑇 (3. . )

であり, これを微分(Δ=d とおく)すると,

𝑑 + 𝑑 = 𝑅𝑑𝑇 (3. . )

となり, さらに圧力 p を一定に保って熱 ΔQを加えると,

( + 𝑑 ) = 𝑅(𝑇 + 𝑑𝑇) (3. . )

という関係が成り立つ. これと pV=RT から

𝑑 = 𝑅𝑑𝑇 (理想気体の定圧変化) (3. .8)

という関係が導かれるので, (3.5.2)式は

𝑑 = 𝑑 − 𝑅𝑑𝑇 (理想気体の定圧変化) (3. . )

となり, この両辺を ΔTで割ると, 1 モルの気体の熱容量である定圧モル比熱 Cpは,

= (𝑑

𝑑𝑇)定圧

=𝑑

𝑑𝑇+ 𝑅 = 𝑉 + 𝑅 (3. .1 )

となる. (3.5.10)式を整理すると, 定圧モル比熱 Cpと定積モル比熱 CVの間の

− 𝑉 = 𝑅 (3. .11)

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という関係が得られる.

ここで定積モル比熱 CV は体積(容量)は一定であり, 温度の上昇により圧力が上昇し,

定圧モル比熱 Cpは圧力は一定であり温度の上昇により体積が増える(図 3.5.1).

ここで, 気体の分子運動論(3.3 節)では, 1 モルの気体の内部エネルギーは, (3.4.2)式であ

ると記した. これを T で微分すると,

𝑉 =𝑑

𝑑𝑇

𝑓

2=𝑓

2𝑅 (3. .12)

となる.

ここで, 注意しなければならないのが, (3.6.12)式は単原子分子には正確に成り立つと

いえるが, 2 原子分子, 3 原子分子においては, (3.6.12)式は成り立たない. なぜなら 3.4 節

で議論したように, 分子の回転運動のエネルギーを考慮しなくてはならないためであ

る. これは, 温度が上昇するほどエネルギーが増加するため単純ではない.

ここで参考までに, 単原子分子: f=3, 2 原子分子: f≒5, 3 原子分子 f≳6, R=8.31 として,

それぞれ(3.6.12)式に代入していくと,

𝑉 =𝑑

𝑑𝑇

𝑓

2=3

2𝑅 = 12.4 ( ・𝑚𝑜𝑙) (単原子分子) (3. .13)

𝑉 =𝑑

𝑑𝑇

𝑓

2≒

2𝑅 = 2 . 8 ( ・𝑚𝑜𝑙) (2原子分子) (3. .14)

𝑉 =𝑑

𝑑𝑇

𝑓

2

2𝑅 = 24. 3 ( ・𝑚𝑜𝑙) (3原子分子) (3. .1 )

となる. ここで, 以下の表にそれぞれの真値を示す.

図 3.5.1: (Cp-CV=R)定積モル比熱 CVと定圧モル比熱 Cp

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表 3.6.1: 気体のモル比熱(1 気圧, 15℃での値, 単位は J/(K・mol))

気体 Cp =

Cp- Cv

He 20.94 1.66 8.30

Ar 20.90 1.67 8.40

O2 29.50 1.40 8.37

N2 28.97 1.41 8.35

CO2 36.80 1.30 8.50

SO2 40.70 1.26 8.40

先に述べたように, 2 原子分子, 3 原子分子では(3.6.12)式では成り立たたない. ところ

が比熱比 γについてはよく合う. このことは熱の分子運動論が正しいことの証拠にほか

ならない.

3.7 理想気体の断熱変化

物体が断熱材で囲まれている場合のように外部との熱の移動が無視できる状況での

物体の状態変化を断熱変化(Adiabatic change)という. なお, ポリトロープ・モデルはこ

の状態を仮定しているモデルである. ポリトロープ・モデルが白色矮星においてより有

効的だといえる根拠としては, 中心部からの熱源が枯渇しているので熱の流れ(中心部

から表面まで)がないので, 白色矮星は断熱の状態にあるといえる. 断熱変化: ΔQ=0 よ

り, (3.3.2)式と(3.3.1)式は次のようになる.

𝛥 = 𝛥 , 後 = 前 + (断熱変化) (3. .1)

気体を断熱圧縮すると, 外部が気体に仕事をするので(W>0), 気体の内部エネルギーが

増加して, 気体の温度は上昇する. 気体を断熱膨張させると, 気体が外部に仕事をする

ので(W<0), 内部エネルギーが減少して気体の温度は下がる. 気体が断熱的に体積を変

えるときの圧力の変化は, 温度も変化するため, 温度が一定のときよりも激しくなる.

さて, 理想気体の断熱変化における関係について議論し, 本章を終える. ここで 1 モ

ルの理想気体を考える. 断熱変化では dQ=0なので, 熱力学の第 1法則は dU=dWとなる

が, 外部が気体にする仕事は,

𝑑 = − 𝑑 (3. .2)

であり,

𝑉 =𝑑

𝑑𝑇 (3. .3)

から

𝑑 = 𝑉𝑑𝑇 (3. .4)

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となるので,

𝑉𝑑𝑇 = − 𝑑 (3. . )

という関係をえる. 状態方程式 pV=RT は, p, V, T が p+dp, V+dV, T+dT に変化すると,

( + 𝑑 )( + 𝑑 ) = 𝑅(𝑇 + 𝑑𝑇) (3. . )

より,

+ 𝑑 + 𝑑 + 𝑑 ・𝑑 = 𝑅𝑇 + 𝑅𝑑𝑇 (3. . )

となる. ここで, dp・dV はきわめて小さい量なので無視し, pV=RT を使うと,

𝑑 + 𝑑 = 𝑅𝑑𝑇 (3. .8)

となる. (3.7.5)式から

𝑑𝑇 = −

𝑉𝑑 (3. . )

となり, この式と(3.6.11)式を使うと RdT は

𝑅𝑑𝑇 = −𝑅

𝑉 𝑑 =

𝑉 − 𝑉

𝑑 = (1 − 𝑉) 𝑑 (3. .1 )

と表せる. Cpと CVの比を γとすると,

= 𝑉

(3. .11)

となる. なお,

𝑉 =𝑓

2𝑅 (3. .12)

を使うと

= 𝑉 + 𝑅

𝑉=𝑓 + 2

𝑓 (3. .13)

となるので, 1 原子分子(f=3)では γ=1.67, 2 原子分子(f≒5)では γ≒1.40, 3 原子分子(f≳6)

では γ 1.33 となることになる. (3.7.10)式, (3.7.11)式を使うと(3.7.8)式は,

𝑑 + 𝑑 = (3. .14)

となるので, これを,

𝑑

+

𝑑

= (3. .1 )

と変形し, 積分すると(1/x の原始関数は log∣x∣),

𝑙𝑜𝑔 + 𝑙𝑜𝑔 = 𝑙𝑜𝑔 + 𝑙𝑜𝑔 𝛾 = 𝑙𝑜𝑔 𝛾 =定数 (3. .1 )

となり, 断熱変化では,

𝛾 =一定 (3. .1 )

または,

𝜌𝛾=一定 (3. .18)

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という関係がある. ここで, PV=RT を使うと(3.7.17)式から,

𝑇 𝛾 =一定 (3. .1 )

𝑇𝛾

𝛾 =一定 (3. .2 )

という関係が導かれる.

さて, ポリトロープ・モデルにおいて重要となるのが, ポリトロープ指数(Polytropic

index): nを決めることである. ポリトロープ・モデルについて詳しくは5章で議論すると

して, ポリトロープ指数を導き本章を終える.

比熱比 γ (3.7.11)式を,

= 1 +1

𝑛 (3. .21)

とおき, 1 原子分子 (γ=1.66=5/3)を使うと,

1 +1

𝑛=

3 (3. .22)

となり, 整理すると,

𝑛 =3

2 (3. .23)

となり, n=1.5 となる. 2 原子分子に関しても(γ≒1.40=7/5)となり, 同様に計算すると,

n=2.5 となる. 3 原子分子についても同様である. ここで n はポリトロープ指数であり,

星の内部構造を決めるうえで重要な指数である.

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第 4 章 恒星内部の静力学平衡

4.1 概要

第 3 章では, 星の内部構造を導くうえで重要となる熱力学(理想気体の断熱変化)に

ついて議論し, 断熱指数 γ とポリトロープ指数 n との関係を求めた. しかし星の内部構

造を決定するうえで, もうひとつ基本的な問題がある. 本章でその問題について議論し

たのちに次章からポリトロープ・モデルによる星の内部構造について具体的に議論して

いく.

まず星の構造に関しては基本的に2つの仮定がある. 1つは, 恒星は進化するがその性

質は非常にゆっくりなものであり, 物理量の時間微分は無視できるという仮定である.

もう 1 つは, 恒星は球対称であるという仮定である. これら 2 つを仮定すると, 物理量

は中心からの距離 r だけに依存し, 星の構造は簡単な方程式で表すことができる. この

2 つの仮定のもとに, ここで導く必要がある方程式は静力学平衡の式または静水圧平衡

の式(Hydrostatic equilibrium)である. この式は, 星の任意の半径地点において, 星の内部

からの圧力と, 星の外部からの圧力, さらに, 万有引力との和が 0 となるときに成立す

る式である. 主系列の恒星は膨張する(星の表面が半径方向に対して外側へ移動する)こ

ともなく, また収縮する(星の表面が半径方向に対して内側へ移動する)こともないのは

この状態であるからである.

本章ではこの静力学平衡の式について主に議論していくことにする.

4.2 静力学平衡の式

球対称な星の内部に小さな体積要素を考え, それに働く力を考える.

図 4.2.1: 球対称な星の中心から r の点での体積要

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体積要素の 2 つの面 ABCD, A’B’C’D’は, 体積要素の中心と星の中心 O とを結んだ直線

に垂直であり, ともに δSという面積をもっているとする. ここで下側の面ABCDは中心

O から r, 上側の面 A’B’C’D’は中心 O から r+δr の距離にあるとするならば, この体積要

素の体積は δSδrとなり, これが無限小の要素であるとき, その質量 m は半径 r での密度

ρ(r)を用いて,

𝑚 = 𝜌( ) 𝑆 𝑟 (4.2.1)

となる. この体積要素に働く力は要素の 6 つの面に働く圧力と万有引力である. まず 6

つの面に働く圧力について議論する.

圧力は下面 ABCDと上面 A’B’C’D’とを除けば, すべて厳密につり合っているため, 面

ABCD, A’B’C’D’の受ける力のみを考えればよい. ここで, 圧力 P は単位面積あたりに加

わる力の大きさにより決定されるので,

𝑃 =𝐹

𝑆 (4.2.2)

の関係がある. ここで, S: 面積, F: 力である. (4.2.2)式を力の式に変形すると,

𝐹 = 𝑃𝑆 (4.2.3)

となり, 圧力を力で表すことができる. 上面 A’B’C’D’の受ける力は半径方向内側(面

A’B’C’D’の上面の物質が押し潰す圧力: P(r+δr) )であるため, (4.2.3)式より,

𝐹 = 𝑃(𝑟 + 𝑟) 𝑆 (4.2.4)

となる. ここで下面 ABCD の受ける力は半径方向外側(面 ABCD の下面の物質が持ち上

げる圧力: P(r))であるため, (4.2.3)式より,

𝐹 = 𝑃(𝑟) 𝑆 (4.2. )

となる.

一方, 万有引力については, 密度が球対称に分布している場合, 体積要素に働く万有

引力は非常に簡単な形になる. ニュートンの万有引力の法則にしたがうと, 体積要素に

働く万有引力は体積要素よりも半径方向内側にある全質量が中心にあると考えたとき

の力であり, 半径方向外側の物質は関係しない(詳しくは 2.1 節). したがって, 質量

m(4.2.1 式)をもつ無限小の体積要素に働く力は万有引力の法則,

𝐹 = 𝐺𝑀𝑚

𝑟2 (4.2. )

より,

𝐹 =𝐺𝑀(𝑟)𝜌(𝑟) 𝑆 𝑟

𝑟2 (4.2. )

となる. ここで, (4.2.6)式の M は無限小の体積要素 m までの半径質量であるため M(r)と

おく. (4.2.7)式は万有引力なので半径方向内側への力となる. またこの式は体積要素が

無限小である場合のみに有効である.

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さて, 星が静力学的平衡状態にあれば, 体積要素に働く力は 0 であると述べた. これ

は, (4.2.4 式), (4.2.5 式), (4.2.7 式)の合力が 0 となることを意味しているので,

𝑃(𝑟 + 𝑟) 𝑆 − 𝑃(𝑟) 𝑆 + (𝐺𝑀(𝑟)𝜌(𝑟)

𝑟2) 𝑆 𝑟 = (4.2.8)

となる. ここで, 無限小の体積要素なので左辺第 1 項, 第 2 項を微分すると,

𝑑𝑃(𝑟)

𝑑𝑟=𝑃(𝑟 + 𝑟) − 𝑃(𝑟)

𝑟 (4.2. )

となり, 両辺に δrをかけると,

𝑑𝑃(𝑟)

𝑑𝑟 𝑟 = 𝑃(𝑟 + 𝑟) − 𝑃(𝑟) (4.2.1 )

となる. ここで, (4.2.8)式左辺第 3 項を右辺へ移項し, 左辺を δSでまとめると,

(𝑃(𝑟 + 𝑟) − 𝑃(𝑟)) 𝑆 = −(𝐺𝑀(𝑟)𝜌(𝑟)

𝑟2) 𝑆 𝑟 (4.2.11)

となり, 両辺を δrでわり, 式を整理すると,

(𝑃(𝑟 + 𝑟) − 𝑃(𝑟))

𝑟= −(

𝐺𝑀(𝑟)𝜌(𝑟)

𝑟2) (4.2.12)

となる. ここで左辺は(4.2.10)式より,

(𝑃(𝑟 + 𝑟) − 𝑃(𝑟))

𝑟=𝑑𝑃(𝑟)

𝑑𝑟 𝑟 (4.2.13)

が成立つ. これを整理すると,

𝑑𝑃(𝑟)

𝑑𝑟= (𝑃(𝑟 + 𝑟) − 𝑃(𝑟)) (4.2.14)

となるので,

𝑑𝑃(𝑟)

𝑑𝑟= −(

𝐺𝑀(𝑟)𝜌(𝑟)

𝑟2) (4.2.1 )

が成立つ. ここでP, M, ρそれぞれついている添字(r)を省略し, P, M, ρで半径 rでの圧力:

P, 半径 r の球内部に含まれる質量: M, 半径 r での密度: ρを意味するとすると(4.2.15)式

は,

𝑑𝑃

𝑑𝑟= −(

𝐺𝑀𝜌

𝑟2) (4.2.1 )

となり, 静力学平衡の式が得られる.

(4.2.16)式は星の内部構造を理解するうえでとても重要となる式の 1 つである. しか

しこれだけでは星の内部構造について議論することができない. この静力学平衡の式

の他に球殻の質量を求める方程式が必要となる. それについては次節にて議論するこ

とにする.

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4.3 球殻の質量

(4.2.16)式の 3 つの物理量 M, ρ, r は互いに独立ではない. なぜなら半径 r 内の質量 M

はその各点の物質密度 ρで決定されるからである. ここで半径 r と r+δr との間の球殻を

考える.

ここで δr が小さいとき, この球殻に含まれている物質の質量は,

𝑀(𝑟 + 𝑟) − 𝑀(𝑟) = 4𝜋𝑟2𝜌 𝑟 (4.3.1)

となる. ここで, (4.2.8)式左辺第 3 項の無限小の体積要素の質量 m は,

𝑚 = 𝑀(𝑟 + 𝑟) −𝑀(𝑟) (4.3.2)

と(4.2.1)式より,

𝑀(𝑟 + 𝑟) − 𝑀(𝑟) = 𝜌(𝑟) 𝑟 𝑆 (4.3.3)

となる. ここで(4.3.3)式左辺を微分すると,

𝑑𝑀(𝑟)

𝑑𝑟=𝑀(𝑟 + 𝑟) − 𝑀(𝑟)

𝑟 (4.3.4)

となり, 両辺に δrをかけると

𝑑𝑀(𝑟)

𝑑𝑟 𝑟 = 𝑀(𝑟 + 𝑟) − 𝑀(𝑟) (4.3. )

となる. ここで, 右辺をもとの形にもどすと両辺の δrは消えるので,

𝑑𝑀(𝑟)

𝑑𝑟= 𝜌(𝑟) 𝑆 (4.3. )

となり, δS=4πr2より

𝑑𝑀(𝑟)

𝑑𝑟= 4𝜋𝑟2𝜌(𝑟) (4.3. )

図 4.3.1: 球対称な星の中心から r の点での球殻

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となる. ここで r は添字なので省略すると,

𝑑𝑀

𝑑𝑟= 4𝜋𝑟2𝜌 (4.3.8)

となり, 半径 r 内の質量M は各地点の密度 ρで決定されるという関係があることが示さ

れた. なお, (4.3.9)式を積分形にすると.

𝑀 = ∫ 4𝜋𝑟′2𝜌(𝑟′)𝑑𝑟′

0

(4.3. )

となる.

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第 5 章 ポリトロープ・モデル

5.1 概要

4 章で導いた方程式(4.2.16)式と(4.3.8)式は星の構造を決める 2 つの方程式である. こ

れらの方程式は 3 つの物理量 P, M, ρの r に関する 2 つの微分方程式である. ここで, 星

の構造を決定するうえで 3 つの物理量の間にもう 1 つの関係式が必要となる. それは,

星内部の物質の状態方程式である. この方程式によって, 圧力と密度との間に一定の関

係を与えられる. しかし一般的に状態方程式はもう 1 つの物理量: 温度 T を含んでいる

ため, 少なくとももう 1 つの方程式が必要となるため非常に複雑となり, コンピュータ

のなかった当時(1926 年以前)では非常に困難な問題であった. しかし, この 2 つの方程

式のみでも恒星の内部構造が解けるモデル(熱の出入りが無いと仮定する: 断熱変化)の

拡張であるポリトロープ・モデルでは温度は独立変数ではない. このモデルにより,恒星

の内部の密度分布を導くことが可能である.

本章ではまず, ポリトロープ関係式について次節で議論し, そののちにポリトロー

プ・モデルに必要である方程式(4 章)や仮定(ポリトロープ関係式)(3 章), を使い, ポリト

ロープ指数nを仮定したレイン・エムデン方程式(Lane-Emden equation)を導く(レイン・エ

ムデン方程式はジョナサン・ホーマー・レインとロバート・エムデンに由来する). レイ

ン・エムデン方程式を導いたのちにはポリトロープ・モデルについての概念について議

論する. 具体的な厳密解を示し, 3.7 節で求めたポリトロープ指数 n の各値により, 星の

内部構造にどのような変化が生じるのかを議論していく.

5.2 ポリトロープ的状態方程式とポリトロープ指数

3.7 節では理想気体の断熱変化を仮定し, ポリトロープ指数 n を求めた. ここで, ポリ

トロープ(天体物理学において)とは, 圧力と密度が,

𝑃 = 𝜌𝛾 ( = 1 +1

𝑛) ( .2.1)

の関係 (ポリトロープな関係)を満たし, 力学的平衡にある球対称な星に適用される.

ここで, 星は理想気体であるため(理想気体と考える), ポリトロープガス球(Polytropic

gaseous spheres)という※1. ここで, n はポリトロ―プ指数, K は比例定数である. (5.2.1)式

のような気体は, レイン・エムデン方程式に対するポリトロープな解として現れる. こ

れは, 密度 ρの変化に伴う圧力 P の変化についての仮定を表す関係式である.

※1 そのほかに, ポリトロープ球やポリトロープ流体ともいう.

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5.3 レイン・エムデン方程式

ここでレイン・エムデン方程式を導く. 静力学平衡の式(詳しくは 4.2 節)

𝑑𝑃

𝑑𝑟= −(

𝐺𝑀𝜌

𝑟2) ( .3.1)

の両辺に r2/ρをかけると,

𝑟2

𝜌

𝑑𝑃

𝑑𝑟= −𝐺𝑀 ( .3.2)

となり, r で微分すれば,

𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜌

𝑑𝑃

𝑑𝑟) = −𝐺

𝑑𝑀

𝑑𝑟 ( .3.3)

となる. ここで, 球殻の質量の式(詳しくは 4.3 節),

𝑑𝑀

𝑑𝑟= 4𝜋𝑟2𝜌 ( .3.4)

を代入すると,

𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜌

𝑑𝑃

𝑑𝑟) = −𝐺4𝜋𝑟2𝜌 ( .3. )

となり, 両辺を 1/r2でわると,

1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜌

𝑑𝑃

𝑑𝑟) = −4𝜋𝐺𝜌 ( .3. )

となる. ここで, ポリトロープ的状態方程式,

𝑃 = 𝜌𝛾 ( = 1 +1

𝑛) ( .3. )

を仮定して, (5.3.6)式のdP/drを変数変換※2 (Change of variables)をするために, rで微分す

ると,

𝑑𝑃

𝑑𝜌

𝑑𝜌

𝑑𝑟=𝑑𝑃

𝑑𝑟 ( .3.8)

となり, 整理すると,

𝑑𝑃

𝑑𝑟=𝑑

𝑑𝜌𝑃𝑑𝜌

𝑑𝑟 ( .3. )

となり, (5.3.7)式を代入すると,

𝑑𝑃

𝑑𝑟=𝑑

𝑑𝜌{ 𝜌 +

}𝑑𝜌

𝑑𝑟 ( .3.1 )

となり, 微分すると,

※2 (5.3.6)式には r が存在するが, (5.3.7)式には r が存在しないから.

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(𝑑𝑃

𝑑𝑟)′

= (1 +1

𝑛)𝜌

𝑑

𝑑𝜌 ( .3.11)

となり, (5.3.6)式に代入すると,

1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜌 (1 +

1

𝑛)𝜌

𝑑𝜌

𝑑𝑟) = −4𝜋𝐺𝜌 ( .3.12)

となる. ここで, K(1+1/n)は係数より,

(1 +1

𝑛)1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜌𝜌 𝑑𝜌

𝑑𝑟) = −4𝜋𝐺𝜌 ( .3.13)

となる. ここで, (5.3.13)式の 1+1/n を,

1 +1

𝑛=𝑛

𝑛+1

𝑛=𝑛 + 1

𝑛 ( .3.14)

とし, さらに(5.3.13)式の r2/ρ・ρ1/nを,

𝑟2

𝜌𝜌 = 𝑟2𝜌 𝜌

= 𝑟2𝜌 +

=

𝑟2

𝜌

( .3.1 )

とする. ここで, (5.3.14)式, (5.3.15)式を(5.3.13)式に代入すると,

(𝑛 + 1

𝑛)1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜌

𝑑𝜌

𝑑𝑟) = −4𝜋𝐺𝜌 ( .3.1 )

となり, 両辺を 4πGでわると,

(𝑛 + 1)

4𝜋𝐺𝑛

1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜌

𝑑𝜌

𝑑𝑟) = −𝜌 ( .3.1 )

となる. ここで,

𝜌 = 𝜌𝑐𝜃 (𝜌𝑐 =一定) (

𝑑𝜃

𝑑𝑟=𝑑𝜃

𝑑𝜃

𝑑𝜌

𝑑𝑟より) ( .3.18)

とおくと,

(𝑛 + 1)

4𝜋𝐺𝑛

1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(

𝑟2

(𝜌𝑐𝜃 )

𝑑𝜌𝑐𝜃

𝑑𝑟) = −𝜌𝑐𝜃

( .3.1 )

となり, 整理すると,

(𝑛 + 1)

4𝜋𝐺𝑛

1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(

𝑟2

𝜌𝑐 𝜃

𝑑𝜌𝑐𝜃

𝑑𝑟) = −𝜌𝑐𝜃

( .3.2 )

となる. ここで, 定数 ρcを左辺にまとめると,

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(𝑛 + 1)

4𝜋𝐺𝑛

𝜌𝑐𝜌𝑐

𝜌𝑐

1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝜃 𝑑𝜃

𝑑𝑟) = −𝜃 ( .3.21)

となり, これを微分し, 整理すると,

[ (𝑛 + 1)

4𝜋𝐺𝜌𝑐

]1

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝑑𝜃

𝑑𝑟) = −𝜃 ( .3.22)

となる. ここで, 左辺の係数は長さの 2 乗の次元を表すことから,

[ (𝑛 + 1)

4𝜋𝐺𝜌𝑐

] = 2 ( .3.23)

とおき, (5.3.22)式に代入すると,

21

𝑟2𝑑

𝑑𝑟(𝑟2

𝑑𝜃

𝑑𝑟) = −𝜃 ( .3.24)

となる. ここで,

𝑟 = ( .3.2 )

とおき, (5.3.24)式に代入すると,

21

( )2𝑑

𝑑( )(( )2

𝑑𝜃

𝑑( )) = −𝜃 ( .3.2 )

となり, これを整理すると, 長さの次元である αが消え, 最終的に,

1

2𝑑

𝑑 ( 2

𝑑𝜃

𝑑 ) = −𝜃 ( .3.2 )

となる. これが「レイン・エムデン方程式」である.

5.4 ポリトロープ・モデル

ポリトロープ・モデルにより, 星の内部の半径距離における密度分布曲線を導くこと

が可能である. いいかえれば, ポリトロープ指数(n 値)により, 星のモデルをつくること

ができるといえる.

以下にスブラマニアン・チャンドラセカール(図 5.4.1)(Subrahmanyan Chandrasekhar)に

より書かれた教科書(1939)より, 各ポリトロープ指数における ξ1(星の表面部分=半径 1

となる)の厳密解を(表 5.4.1)し示し, さらに, n=0, n=1, n=5 についての厳密解も(図 5.4.2)

に示す. なお, (図 5.4.1)はチャンドラセカール教授がノーベル物理賞を受賞された年

(1983)に, 日本(広島県)へ来日されたときに田邉教授と撮影されたものである.

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表 5.4.1: 各 n 値における ξ1の数値解(Chandrasekhar,S.,1939 より引用)

n 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

ξ1 2.4494 2.7528 3.14159 3.65375 4.35287 5.35528 6.89685

n 3.25 3.50 4.00 4.50 4.90 5.0

ξ1 8.01894 9.53581 14.97155 31.83646 169.47 ∞

図 5.4.1: 右:チャンドラセカール教授夫妻, 左:田邉健茲教授(1983 年 4 月)

図 5.4.2: n=0, n=1, n=5 の密度分布曲線(解析解)(エクセルにより作図)

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(表 5.4.1)からわかるように, n が 5 となれば半径は無限大となる. さらに, ξ1を星の半径

と仮定していることから, ポリトロープ指数が大きくなるにつれて, 星の中心密度は高

くなるといえる. 以下の表には各ポリトロープ指数における実際の天体例を挙げる.

表 5.4.2 各 n 値における天体例

ポリトロープ指数: n 実際の天体例

0.5~1.0 主系列星

1.5 白色矮星(非相対論的), 褐色矮星,

3.0 白色矮星(相対論的)

5.0 半径無限大

∞ 球状星団(等温ガス球)

ここで, n=1.5, n=3 は量子統計力学※3 (Quantum statistical mechanics)より証明された値で

ある.

ここで, (図 5.4.2)の元となる解析解(n=0, n=1, n=5)それぞれにおける式を記しておく.

𝜃0 = 1 −1

2 (𝑛 = ) ( .4.1)

𝜃 =𝑠𝑖𝑛

(𝑛 = 1) ( .4.2)

𝜃5 =1

(1 +13

2)

2

(𝑛 = ) ( .4.3)

レイン・エムデン方程式では n=0, n=1, n=5のみでしか解析的には解けない. ここで, n=0,

n=5 においては上表からも使えそうにないといえる. n=1 においては主系列星に近そう

だが, これだけでは星の内部構造を理解するには現実的ではない. そこで, 他の n につ

いても何らかの形で解く必要があるといえる. 詳しくは次章にて議論することにする.

※3 量子力学(ミクロ)である場合においての統計力学を量子統計力学という.

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第 6 章 レイン・エムデン方程式の級数解法

6.1 概要

前章では解析解(n=0, n=1, n=5)を紹介したが, 解析解のみでは星の内部構造を理解す

るうえで現実的ではないといえた. それ以外の nについては数値解にしか解けないとい

える.

レイン・エムデン方程式から数値解を得る方法としては 2 通りの解き方が存在する. 以

下にはそれを記す.

1. 常微分方程式の数値解法 : ルンゲ・クッタ法 (Numerical solution of the Ordinary

differential equation: Runge Kutta method)により数値解を得る.

2. 冪級数展開: テイラー展開(Power series expansion: Taylor expansion)により数値解を

得る.

今回は 2 の冪級数展開を用いて数値解析を行うことにする. ここで冪級数展開を解くと

き, n=0, 1, 2, 3・・・のような場合と, n=0.5, 1.5, 2.5・・・のような場合では計算方法が異なる.

6.2節では,前者の場合を, 6.3節においては後者の場合(n=1.5のみ)をそれぞれ計算するこ

とにする.

6.2 レイン・エムデン方程式の冪級数展開 1(n=整数)

レイン・エムデン方程式(5.3.27)式を微分すると,

1

2(2

𝑑𝜃

𝑑 + 2

𝑑𝜃

𝑑

𝑑𝜃

𝑑 ) = −𝜃 ( .2.1)

となり, これを整理すると,

𝑑2𝜃

𝑑 2+2

𝑑𝜃

𝑑 = −𝜃 ( .2.2)

となる. ここで, θを次のように級数展開する.

𝜃 = 1 + 𝑎2 2 + 𝑎4

4 + 𝑎 + ・・・+ 𝑎2𝑘

2𝑘 + ・・・(= ∑𝑎2𝑘 2𝑘

𝑘

) ( .2.3)

ここで, 級数を ξ6までとることにし, (6.2.3)式を 1 階微分, 2 階微分すると, それぞれ

𝑑𝜃

𝑑 = 2𝑎2 + 4𝑎4

+ 𝑎 5 + ・・・+ 2𝑘𝑎2𝑘

2𝑘 + ・・・ ( .2.4)

𝑑2𝜃

𝑑 2= 2𝑎2 + 4・3𝑎4

2 + ・ 𝑎 4 + ・・・+ 2𝑘(2𝑘 − 1)𝑎2𝑘

2𝑘 2 + ・・・ ( .2. )

となる. ここで(6.2.2)式右辺は,

−𝜃 = −(1 + 𝑎2 2 + 𝑎4

4 + 𝑎 + ・・・+ 𝑎2𝑘

2𝑘 +) ・・・ ( .2. )

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となる. ここで,

= 𝑎2 2 + 𝑎4

4 + 𝑎 + ・・・ (| |<1) ( .2. )

とおくと,

−𝜃 = −(1 + ) ・・・ ( .2.8)

となる. ここで, 2 項定理※1(Binomial theorem)より,

−𝜃 = −[1 + 𝑛 +𝑛(𝑛 − 1)

2 2 +

𝑛(𝑛 − 1)(𝑛 − 2)

+ ・・・] ( .2. )

となる. ここで(6.2.7)式より,

𝑛 = 𝑛(𝑎2 2 + 𝑎4

4 + 𝑎 + ・・・) ( .2.1 )

となり,

𝑛 2 =𝑛(𝑛 − 1)

2(𝑎2

2 + 𝑎4 4 + 𝑎

+ ・・・)2 ( .2.11)

より,

𝑛 2 =𝑛(𝑛 − 1)

2(𝑎22 4 + 2𝑎2𝑎4

+ ・・・) ( .2.12)

となり,

𝑛 =𝑛(𝑛 − 1)(𝑛 − 2)

(𝑎2

2 + 𝑎4 4 + 𝑎

+ ・・・)2 ( .2.13)

より,

𝑛 =𝑛(𝑛 − 1)(𝑛 − 2)

(𝑎2 + ・・・) ( .2.14)

となる. ここで, (6.2.9)式, (6.2.10)式, (6.2.12)式, (6.2.14)式より,

−𝜃 = −

[ 1 + 𝑛(𝑎2

2 + 𝑎4 4 + 𝑎

+ ・・・)

+𝑛(𝑛 − 1)

2(𝑎22 4 + 2𝑎2𝑎4

+ ・・・)

+𝑛(𝑛 − 1)(𝑛 − 2)

(𝑎2 + ・・・) ]

( .2.1 )

となり, 整理すると,

−𝜃 = −

[ 1 + 𝑛𝑎2

2 + {𝑛𝑎4 +𝑛(𝑛 − 1)

2𝑎22} 4

+{𝑛𝑎 +𝑛(𝑛 − 1)

22𝑎2𝑎4 +

𝑛(𝑛 − 1)(𝑛 − 2)

𝑎2 }

]

( .2.1 )

となり, 右辺についてはこれで整理された. ここで, (6.2.2)式左辺に着目する. 左辺を整

理すると, (6.2.4)式, (6.2.5)式より

※1 詳しくは補遺 1 を参照

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- 51 -

𝑑2𝜃

𝑑 2+2

𝑑𝜃

𝑑 = ∑2𝑘(2𝑘 − 1)𝑎2𝑘

2𝑘 2

𝑘

+ 2∑2𝑘𝑎2𝑘 2𝑘 2

𝑘

( .2.1 )

となり, 整理すると,

𝑑2𝜃

𝑑 2+2

𝑑𝜃

𝑑 = 2∑{𝑘(2𝑘 − 1) + 2𝑘}𝑎2𝑘

2𝑘 2

𝑘

( .2.18)

となり,

𝑑2𝜃

𝑑 2+2

𝑑𝜃

𝑑 = 2∑𝑘(2𝑘 + 1)𝑎2𝑘

2𝑘 2

𝑘

( .2.1 )

となる. ここで, (6.2.19)式を, ∞=4 とすると,

𝑑2𝜃

𝑑 2+2

𝑑𝜃

𝑑 = 2 [

1(2・1 + 1)𝑎2・ 2・ 2 + 2(2・2 + 1)𝑎2・2

2・2 2

+3(2・3 + 1)𝑎2・ 2・ 2 + 4(2・4 + 1)𝑎2・4

2・4 2] ( .2.2 )

より,

𝑑2𝜃

𝑑 2+2

𝑑𝜃

𝑑 = 𝑎2 + 2 𝑎4

2 + 42𝑎 4 + 2𝑎

+ ・・・ ( .2.21)

となり, 左辺についても整理された. ここで, (6.2.16)式と(6.2.21)式の係数比較をすると,

𝑎2 = −1 ( .2.22)

より,

𝑎2 = −1

( .2.23)

となり, a2が求まり, さらに,

2 𝑎4 = −𝑛𝑎2 ( .2.24)

より,

𝑎4 = −𝑛

2 (−1

) =

𝑛

12 ( .2.2 )

となり, a4が求まり, さらに,

42𝑎 = −(𝑛𝑎4 +𝑛(𝑛 − 1)

2𝑎2) ( .2.2 )

より,

𝑎 = −1

42{𝑛 (

𝑛

12 ) +

𝑛(𝑛 − 1)

2(−1

)2

} ( .2.2 )

より,

𝑎 = −1

42(𝑛2

12 +𝑛(𝑛 − 1)

2・3 ) = −

𝑛(8𝑛 − )

1 12 ( .2.28)

となり, a6が求まる. ここで(6.2.23)式, (6.2.25)式, (6.2.28)式を(6.2.3)式に代入すると,

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- 52 -

𝜃 = 1 −1

2 +

𝑛

12 4 −

𝑛(8𝑛 − )

1 12 + ・・・ ( .2.2 )

となり, n にポリトロープ指数を代入すると半径距離における密度分布曲線が描ける(詳

しい結果については次章).

6.3 レイン・エムデン方程式の冪級数展開 2(n=1.5 の場合)

前節ではレイン・エムデン方程式を冪級数展開により計算し, (6.2.29)式を導いた. n=

整数値においては, (6.2.29)式のように, どの nにも対応するといえる(整数値に限る). そ

こで, n=整数値における数値解をグラフ化し, 表 5.4.1 と比較したさい, ξ6までの級数に

おいては n=1 までが限界であり, それより大きな n になると, ξ6までの級数ではたりな

いということが判明し(詳しくは次章), 本研究の目的のひとつである n=3 についてはこ

の方法では厳しいという結果を得た. そこで, 本研究のもうひとつの目的である n=1.5

に着目することにした. n=1.5 においても同様に(6.2.29)式を使いたいところではあるが,

n=整数の場合と異なり, そう単純ではないということが判明した. それは, n=整数の時

のようにすべての n に対応できる式はなく, 各 n それぞれにおいて個別の計算を必要と

するからである. ここで, (6.2.29)式に n=1.5 を代入しても表 5.4.1 とは合わなくなるとい

う結果も得ている. ※2 そこで, 先にも述べたが, 本節では本研究の目的のひとつである

n=1.5 についての数値解を導くことにし, 詳しい結果に関しては次章にて議論すること

とする.

レイン・エムデン方程式を微分した(6.2.2)式の右辺について, 前節同様 θ の級数を

(6.2.3)式より ξ6までとることにし, (6.2.7)式とおく. ここで,

−𝜃 2 = −[(1 + )

2]

( .3.1)

とする. ここで,

(1 + ) 2 = 1 +

1

2 + ・・・ ( .3.2)

となり, f(x), f(1)としてそれぞれ 3 階微分すると,

𝑓(𝑥) = 𝑥 2 𝑓 ′(𝑥) =

1

2𝑥

2 𝑓 ′′(𝑥) = −

1

4𝑥

2 𝑓 ′′′(𝑥) =

3

8𝑥

52 ( .3.3)

𝑓(1) = 1 𝑓 ′(1) =1

2 𝑓 ′′(1) = −

1

4 𝑓 ′′′(1) =

3

8 ( .3.4)

となり,

(1 + ) 2 = 1 +

1

2 −

1

4 2 +

3

8 − ・・・ ( .3. )

※2 詳しくは補遺 2 を参照

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- 53 -

となり, 再び(6.2.7)式より,

(1 + ) 2 =

[ 1 +

1

2(𝑎2

2 + 𝑎4 4 + 𝑎

+ ・・・)

−1

4(𝑎2

2 + 𝑎4 4 + 𝑎

+ ・・・)2

+3

8(𝑎2

2 + 𝑎4 4 + 𝑎

+ ・・・) − ・・・]

( .3. )

となり, (6.3.6)式より,

(1 + ) 2 = [

1 +1

2(𝑎2

2 + 𝑎4 4 + 𝑎

+ ・・・) −1

4(𝑎22 2 + 2𝑎4𝑎2

+ ・・・)

+3

8(𝑎2 + ・・・) − ・・・

] ( .3. )

となり, (6.3.7)式より,

(1 + ) 2 = 1 +

1

2𝑎2

2 + (1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) 4 + (

1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

+3

8𝑎2 ) ( .3.8)

となる. ここで(6.3.1)式, (6.3.8)式より,

−𝜃 2 = −[1 +

1

2𝑎2

2 + (1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) 4 + (

1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

+3

8𝑎2 ) ]

・・・ ( .3. )

となり,

𝐵 =1

2𝑎2

2 + (1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) 4 + (

1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

+3

8𝑎2 ) ( .3.1 )

とおくと,

−𝜃 2 = −[1 + 𝐵] ( .3.11)

となる. ここで, (1+B)3=(1+3B+3B

2+B

3)より,

−𝜃 2 = −

[ 1 + 3 {

1

2𝑎2

2 + (1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) 4 + (

1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

3

8𝑎2 ) }

+3 {1

2𝑎2

2 + (1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) 4 + (

1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

3

8𝑎2 ) }

2

+{1

2𝑎2

2 + (1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) 4 + (

1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

3

8𝑎2 ) }

]

( .3.12)

となり,

−𝜃 2 = −

[ 1 +

3

2𝑎2

2 + 3(1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) 4

+3(1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

3

8𝑎2 ) + 3・

1

4𝑎22 4

+3・1

2𝑎2 (

1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) +

1

8𝑎2 + ・・・]

( .3.13)

より,

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- 54 -

−𝜃 2 = −[

1 +3

2𝑎2

2 + {3 (1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) +

3

4𝑎22} 4

+{1

8𝑎22 + 3(

1

2𝑎 −

1

2𝑎2𝑎4 +

3

8𝑎2 ) + 3・

1

2𝑎2 (

1

2𝑎4 −

1

4𝑎22)} + ・・・

] ( .3.14)

となり, 右辺についてはこれで整理された. ここで, (6.2.2)式左辺に着目し, 左辺を整理

すると, (6.2.4)式, (6.2.5)式より, (6.2.19)式となることから, (6.2.21)式となる. ここで,

(6.3.14)式と(6.2.21)式の係数比較をすると,

𝑎2 = −1 ( .3.1 )

より,

𝑎2 = −1

( .3.1 )

となり, a2が求まり, さらに,

2 𝑎4 = −3

2𝑎2 ( .3.1 )

より,

𝑎4 = −3

2・1

2 (−1

) =

1

8 ( .3.18)

となり, a4が求まり, さらに,

42𝑎 = −{3(1

2𝑎4 −

1

4𝑎22) +

3

4𝑎22} = −

3

2𝑎4 ( .3.1 )

より,

𝑎 = −3

2・1

8 ・1

42=

1

224 ( .3.2 )

となり, a6が求まる. ここで(6.3.16)式, (6.3.18)式, (6.3.20)式を(6.2.3)式に代入すると,

𝜃 .5 = 1 −1

2 +

1

8 4 −

1

224 + ・・・ ( .3.21)

となり, 密度分布曲線が描ける(詳しい結果については次章). 先にも議論したが, 冪級

数展開による解法において, n=整数値以外の場合は, このようにひとつひとつを計算す

る必要がある.

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第 7 章 Excel を用いた恒星内部構造の計算

7.1 概要

前章では冪級数展開による解法で n=整数値における方程式および, n=1.5 においての

方程式を求めた. 本章ではそれらを使い, エクセルにより, 星の内部構造を計算する過

程を含めて詳しく議論することにする.

7.2 Excel を用いた恒星内部構造の計算

n=整数値(6.2.29)式 n=0~n=5 まで, および n=1.5 について以下に記す.

𝜃0 = 1 −1

2 ( .2.1)

𝜃 = 1 −1

2 +

1

12 4 −

1(8・1 − )

1 12 + ・・・ ( .2.2)

𝜃2 = 1 −1

2 +

1

4 −

2(8・2 − )

1 12 + ・・・ ( .2.3)

𝜃 = 1 −1

2 +

1

4 4 −

3(8・3 − )

1 12 + ・・・ ( .2.4)

𝜃4 = 1 −1

2 +

1

3 4 −

4(8・4 − )

1 12 + ・・・ ( .2. )

𝜃5 = 1 −1

2 +

1

24 4 −

(8・ − )

1 12 + ・・・ ( .2. )

𝜃 .5 = 1 −1

2 +

1

8 4 −

1

224 + ・・・ ( .2. )

となる. これらを使い, エクセルにて作図することにする. ここで, 半径 ξを 0.1 刻みで

プロットすることにする. 次の表 7.2.1~表 7.2.7に(7.2.1)式~(7.2.7)式全ての計算結果を示

す.

表 7.2.1: n=0 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.7 0.9183333 1.4 0.6733333 2.1 0.265

0.1 0.9983333 0.8 0.8933333 1.5 0.625 2.2 0.1933333

0.2 0.9933333 0.9 0.865 1.6 0.5733333 2.3 0.1183333

0.3 0.985 1 0.8333333 1.7 0.5183333 2.4 0.04

0.4 0.9733333 1.1 0.7983333 1.8 0.46 2.5 -0.041667

0.5 0.9583333 1.2 0.76 1.9 0.3983333

0.6 0.94 1.3 0.7183333 2 0.3333333

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表 7.2.2: n=1 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.8 0.8966947 1.6 0.6246179 2.4 0.2785627

0.1 0.9983342 0.9 0.8703621 1.7 0.583145 2.5 0.2354136

0.2 0.9933467 1 0.8414683 1.8 0.5407315 2.6 0.1928539

0.3 0.9850674 1.1 0.8101827 1.9 0.4975997 2.7 0.1509984

0.4 0.9735459 1.2 0.7766875 2 0.4539683 2.8 0.1099335

0.5 0.9588511 1.3 0.7411765 2.1 0.4100504 2.9 0.0697137

0.6 0.9410707 1.4 0.7038527 2.2 0.3660507 3 0.0303571

0.7 0.9203108 1.5 0.6649275 2.3 0.322162 3.1 -0.008158

表 7.2.3: n=2 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.8 0.8997786 1.6 0.6581487 2.4 0.3149001

0.1 0.998335 0.9 0.8751617 1.7 0.6224142 2.5 0.2541439

0.2 0.9933599 1 0.848545 1.8 0.5854713 2.6 0.1854794

0.3 0.9851339 1.1 0.8201573 1.9 0.547082 2.7 0.1070279

0.4 0.973754 1.2 0.7902153 2 0.5068783 2.8 0.0165969

0.5 0.9593523 1.3 0.7589119 2.1 0.464343 2.9 -0.088349

0.6 0.9420921 1.4 0.7264043 2.2 0.4187892

0.7 0.9221638 1.5 0.6928013 2.3 0.3693389

表 7.2.4: n=3 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.7 0.9238923 1.4 0.7409882 2.1 0.4278778

0.1 0.9983358 0.8 0.9025851 1.5 0.7086217 2.2 0.3515491

0.2 0.9933731 0.9 0.8793991 1.6 0.6739259 2.3 0.259864

0.3 0.9851998 1 0.8545635 1.7 0.636141 2.4 0.1490121

0.4 0.9739579 1.1 0.8282573 1.8 0.5942193 2.5 0.0145244

0.5 0.9598369 1.2 0.8005833 1.9 0.5467803 2.6 -0.14879

0.6 0.9430641 1.3 0.7715395 2 0.4920635

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表 7.2.5: n=4 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.6 0.9439867 1.2 0.8077915 1.8 0.5669755

0.1 0.9983367 0.7 0.9254963 1.3 0.7790595 1.9 0.4966947

0.2 0.9933862 0.8 0.9051142 1.4 0.7476043 2 0.4095238

0.3 0.9852648 0.9 0.883074 1.5 0.7123884 2.1 0.3006549

0.4 0.9741574 1 0.8595238 1.6 0.6719494 2.2 0.1643302

0.5 0.9603051 1.1 0.8344827 1.7 0.6243255 2.3 -0.006263

表 7.2.6: n=5 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.6 0.94486 1.2 0.81184 1.8 0.50374

0.1 0.9983375 0.7 0.9269758 1.3 0.7814717 1.9 0.396825

0.2 0.9933993 0.8 0.9073659 1.4 0.7462526 2 0.2592593

0.3 0.9853291 0.9 0.8861866 1.5 0.7041016 2.1 0.0826741

0.4 0.9743526 1 0.8634259 1.6 0.6522193 2.2 -0.142867

0.5 0.9607567 1.1 0.8388333 1.7 0.5869675

表 7.2.7: n=1.5 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 1 0.8453869 2 0.5047619 3 0.1870536

0.1 0.9983346 1.1 0.8158437 2.1 0.4698128 3.1 0.1565276

0.2 0.9933533 1.2 0.784587 2.2 0.4355373 3.2 0.1247043

0.3 0.9851009 1.3 0.7518798 2.3 0.4020471 3.3 0.090853

0.4 0.9736515 1.4 0.7179919 2.4 0.3694062 3.4 0.0541085

0.5 0.9591076 1.5 0.6831961 2.5 0.3376232 3.5 0.0134603

0.6 0.9415992 1.6 0.6477635 2.6 0.3066445 3.6 -0.032258

0.7 0.9212821 1.7 0.6119589 2.7 0.2763457

0.8 0.8983363 1.8 0.576036 2.8 0.2465237

0.9 0.872964 1.9 0.540232 2.9 0.2168885

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表 1~表 7 を合成した図を以下に示す.

本研究の結果として, ξ6までの冪級数展開により 7 種類の n を導くことができた. 詳し

い議論については次節にておこなうことにする.

7.3 冪級数展開による数値解の精度~考察~

ξ6までの冪級数展開により得た結果(図 7.2.1)より, 各 n について考察する.

1. n=0

n=0 においては, (6.2.29)式の n に 0 を代入すると, (7.2.1)式のように非常に単純な形とな

る. これは, 解析解と全く同じ形になっていることが(5.4.1)式からも読み取ることがで

きる. グラフとしては半径 ξの増加とともに放物線を描くように密度も低下していくこ

とになる.

2. n=1

n=1 は, 解析解(5.4.2)式とは少し異なる形となる(7.2.2)式. 次の表(7.3.1)には解析解(n=1)

の半径(ξ)を 0.1刻みでプロットした計算結果を示す. なお, n=1についての数値解の表に

ついては, 前節表 7.2.2 を参照のこと. 図(7.3.1)は, 表(7.2.2)と表(7.3.1)の比較をおこなっ

たものを示す.

図 7.2.1: ξ6までの冪級数展開における n=0~n=5 までの 7 種類の結果

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表 7.3.1: 解析解 n=1

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 #DIV/0! 0.9 0.8703632 1.8 0.5410265 2.7 0.1582888

0.1 0.9983342 1 0.841471 1.9 0.4980527 2.8 0.1196386

0.2 0.9933467 1.1 0.8101885 2 0.4546487 2.9 0.0824998

0.3 0.9850674 1.2 0.7766992 2.1 0.4110521 3 0.04704

0.4 0.9735459 1.3 0.7411986 2.2 0.3674984 3.1 0.0134131

0.5 0.9588511 1.4 0.7038927 2.3 0.3242197 3.2 -0.018242

0.6 0.9410708 1.5 0.6649967 2.4 0.281443

0.7 0.920311 1.6 0.6247335 2.5 0.2393889

0.8 0.8966951 1.7 0.5833322 2.6 0.1982698

図(7.3.1)から読み取れるように, 数値解のほうが, 半径(ξ)がやや小さくなる(中心密度比

がやや小さくなる). これは, 冪級数展開による解法の特徴であり(ξ6 は負であるため),

半径(ξ)が 2.7 前後のところで, ξ6が少しずつ影響しているためだと考えられる. もし, 級

数を ξ8までとっていたならば, ξ

8は密度正の力が働くため, より解析解に近くなるとい

える. しかし, 冪級数展開により手で解ける限界はまず ξ6 までであって, ξ

8 となると困

図 7.3.1: n=1 における数値解と解析解の比較

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難である. しかし, これらのことを考慮しても n=1 は冪級数展開により解くことは十分

可能であるといえる.

3. n=2

n=2については解析解が存在しないため, 表(5.4.1) (Chandrasekhar,S.,1939より引用)を参

考にする. 表(5.4.1)によれば, ξ1=4.35287 となっている. 本研究による冪級数展開による

数値解では, 表(7.2.3)および図(7.2.1)より ξ1=2.8~2.9 であることが読み取れる. このこと

から, ξ1の値の差が約 1.5 ほどである. 図(7.2.1)を見ると, 半径(ξ)がおおよそ 2.0 前後で,

ξ6が少しずつ影響し始める. ξ

6を制御する ξ8が存在しないため(冪級数展開では困難), 半

径(ξ)がおおよそ 2.5 前後では密度負の力が圧倒するため, ξ1は本来よりも大幅に小さく

なるといえる.

4. n=3

n=3についても n=2と同等の理由により ξ1は本来よりもさらに大幅に小さくなるといえ

る. なお, 表(5.4.1)によれば, ξ1=6.89685 であり, 表(7.2.4)および図(7.2.1)より ξ1=2.5~2.6

である.

5. n=4

n=3 のときよりも, 比率で ξ1 は本来の値よりもさらに大幅に小さくなるといえる.表

(5.4.1)によれば, ξ1=14.97155 であり, 表(7.2.5)および図(7.2.1)より ξ1=2.2~2.3 である.

6. n=5

n=5 の ξ1 は表(5.4.1)により, 本来なら∞であるが, n=2~n=4 のときと同様の結果である.

表(7.2.6)および図(7.2.1)より ξ1=2.1~2.2である. なお,n=5については解析解が存在してい

る. 次の表(7.3.2)には解析解(n=5)の半径(ξ)を 0.1 刻みでプロットした計算結果を示す.

なお, n=5 についての数値解の表については, 前節表 7.2.6 を参照のこと. 図(7.3.2)は, 表

(7.2.6)と表(7.3.2)の比較をおこなったものを示す.

表 7.3.2: 解析解 n=5

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.9 0.8969422 1.8 0.5828155 2.7 0.3636724

0.1 0.9998334 1 0.8660254 1.9 0.5516253 2.8 0.3467432

0.2 0.9986693 1.1 0.8322744 2 0.522233 2.9 0.3309577

0.3 0.9955301 1.2 0.7965662 2.1 0.4946496 3 0.3162278

0.4 0.989501 1.3 0.7597737 2.2 0.4688416 3.1 0.3024707

0.5 0.9797959 1.4 0.7226923 2.3 0.4447447 3.2 0.2896098

0.6 0.9658343 1.5 0.6859943 2.4 0.4222756

0.7 0.9473107 1.6 0.6502103 2.5 0.40134

0.8 0.924237 1.7 0.6157296 2.6 0.3818389

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図(7.3.2)から読み取れるように n=5 においては冪級数展開では解けないことがわかる.

仮に, 級数を ξ8 までとることができたとしても密度正の要素により密度無限大へ向か

って発散してしまう.

7. n=1.5

冪級数展開では, n=2~n=5 においては解けないといえた. 6.2 節にてレイン・エムデン方

程式の冪級数展開において, n=1.5 に絞った理由のひとつに, n=2.よりも大きな値では使

い物にならないためである. n=1.5 が良い値になれば, 本研究の大きな成果のひとつと

なる. n=1.5については解析解が存在しないので, 表(5.4.1)を使うと, ξ1=3.65375となって

いる. 冪級数展開による数値解では,表(7.2.7)および図(7.2.1)より ξ1=3.5~3.6 であること

が読み取れる.このことから, ξ1 の値の差が約 0.1 ほどであり, 級数が ξ6まででも n=1.5

については, まずまず良い値であるといえる.

7.4 冪級数展開による数値解の精度~まとめ~

7.3 節で考察したことを以下にまとめる.

1. 冪級数展開によって得られる数値解は, n=0, n=1, n=1.5 である.

2. 手で計算するうえで, 級数は ξ6までが限界だといえる.

図 7.3.2: n=5 における数値解と解析解の比較

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3. n の値が大きくなるほど精度が悪くなる. また, 可能であると仮定するならば, 級数

はより高次元までとるほど精度は良くなる.

4. 成果としては, n=3 は解けなかったが, n=1.5 は解けたといえる.

さらに詳しい考察と総まとめについては, 最終章にて議論することにする.

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第 8 章 結論

8.1 概要

2 章では, これまでのゼミでの内容をまとめ, 3 章では理想気体の断熱変化について議

論し, さらに n の求め方についても議論した. 4 章では静力学平衡について議論し, 球殻

の質量を導く方程式についても求めた. 5章ではポリトロープ・モデルについて議論し, 6

章ではレイン・エムデン方程式の解について, 実際に計算した. 7 章では計算した結果と

予め計算されていた値とを比較し, 考察した. 最終章となる本章では, まず次節にて 2

章について結論を述べ, 8.3 節ではポリトロープ・モデルについて考察し, 結論づける.

8.4 節では, 総結論と今後の課題について箇条書きで述べることにし, 8.5 節では, Excel

とポリトロープ・モデルを組み合わせることによる星の内部構造の計算について, 私的

に感じたことを述べて終結させることにする.

8.2 結論~第 2 章~

以下に, 2 章にて議論してきたことの結論をそれぞれ記すことにする.

2.2 ニュートン力学~重力の基礎~

ニュートンの万有引力の法則について触れ, 地球の質量を求めたところ, 6.0×1024

kg

となった. 星の内部においては半径に比例して重力加速度が大きくなり, 星の外側では

半径の逆 2 乗で無限遠に重力加速度が小さくなるといえる.

2.3 星の明るさ~絶対等級と実視等級~

実視等級は見かけの明るさであって, 絶対等級は星の絶対的な明るさを示し, 星を 10

パーセクの距離に置いたときの明るさである. ここで, ポグソンの式より, 絶対等級 M

を求めることが出来る.

2.4 星の表面温度~輻射~

星の色は表面温度と密接に結びついているが, 温度は系が熱力学的平衡状態にある

ときのみ定義できる. プランクの法則より系が熱力学的平衡状態にあるときには輻射

量を求めることができる. ここで, 太陽(6,000K)を仮定したとき, 輻射強度が最大値を

とるときの振動数(vmax)は 3.50×1014

s-1となり, 輻射強度(λmax)は 4.84×10

-7 m となること

が計算より導かれた. これは, スペクトルでいえば黄緑付近に相当することからまずま

ずの結果だといえそうであるが, 輻射強度に関しては図 2.4.6 より, 真値とずれがある

ことがわかる. 図 2.4.6 には 3,000K, 6,000K, 12,000K においてのプランク分布を示し, 温

度が高いほど, 振動数も輻射強度もともに高くなるといえた.

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2.5 有効温度~ボロメトリック補正~

有効温度は, 考えている星と同じ半径で, 温度 Teの黒体輻射から放出される全エネル

ギーがちょうど星の全エネルギーに等しいような温度 Te であると定義される. 理論と

観測とを比較するとき, 有効温度を色指数と, 輻射の光度をある特定の波長領域での等

級と結びつけることが重要となった. ここで, 主系列星に対する変換を図 2.5.1 に示し

た.

2.6 星の諸量 1~星の距離~

星の距離を測るのに, 三角法を利用した直接的な観測による測定方法が存在する. 地

球から最も近い恒星でも視角は 1’’以下であり, この距離を 1 パーセクと定義する.

2.7 星の諸量 2~星の質量~

星の質量を直接的に知る唯一の方法は連星系の力学を調べることであり, 重力作用

を及ぼし合っている連星はケプラーの法則より導くことができるといえた.

8.3 考察と結論~ポリトロープ・モデル~

ポリトロープ・モデルについて考察するまえに, 理想気体の断熱変化(3 章)についてと

静力学平衡(4 章)についてをまとめる.

3 章結論(星の内部構造に関わる熱力学)

密閉された容器に入った 1 モルの理想気体の状態方程式は PV=RT で表せる. この気

体の内部エネルギーを U とすると, その変化 dU は熱力学第 1 法則より dU=dQ-PdV と

なる. 断熱変化(dQ=0)の場合, 圧力と密度の関係は P=Kργ(γ=Cp/Cv: 比熱比)であること

が示される. ここでポリトロープ指数 n は, 1 原子分子では(γ≒1.40=7/5)となり, n=1.5 と

なる. 2 原子分子では(γ≒1.40=7/5)となり, n=2.5 となることがいえる. 3 原子分子につい

ても同様である.

4 章結論(恒星内部の静力学平衡)

恒星のような球対称の天体において,中心から r の距離にある質点 m には星の中心部

O へ引かれる力, すなわち万有引力 F が働いている. 一方, 質点 m の下面では上向きの

圧力 P(r)δSが働き, 質点の上面では下向きの圧力 P (r+δr)δSが働いている. 万有引力と

上向き圧力と下向き圧力の和が 0 となることが静力学的平衡の条件となることから次

のように表され,

𝑃(𝑟 + 𝑟) 𝑆 − 𝑃(𝑟) 𝑆 + (𝐺𝑀(𝑟)𝜌(𝑟)

𝑟2) 𝑆 𝑟 = (8.3.1)

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最終的に

𝑑𝑃

𝑑𝑟= −(

𝐺𝑀𝜌

𝑟2) (8.3.2)

となる. さらに, 半径 r 内の質量 M は各地点の密度 ρで決定されるという関係がある.

𝑑𝑀

𝑑𝑟= 4𝜋𝑟2𝜌 (8.3.3)

考察と結論~ポリトロープ・モデルについて~

力学平衡の式, 球殻の質量を表わす方程式の 2つの微分方程式のみでも恒星の内部構

造が解ける(断熱変化の拡張)ポリトロープ・モデルでは温度は独立変数ではない. この

モデルにより, 恒星の内部の密度分布を導くことが可能である. (8.3.2)式を微分したも

のにに, (8.3.3)式を代入し, ポリトロープ的状態方程式である

𝑃 = 𝜌𝛾 ( = 1 +1

𝑛) (8.3.4)

を仮定したものを代入し, 計算していくと, 最終的に,

1

2𝑑

𝑑 ( 2

𝑑𝜃

𝑑 ) = −𝜃 (8.3. )

となり, ポリトロープ指数 nを仮定したレイン・エムデン方程式を得た. ここで, 冪級数

展開により解を得ることにしたが 7.3 節で議論したように n=0, n=1, n=1.5 のみしか解を

得ることができなかった. n=1.5 に至っては, 精度もそこまで良いものではないという

観点から, もうひとつの解法である, 常微分方程式の数値解法(ルンゲ・クッタ法)によ

って解を得なければならないといえた.

8.4 まとめと今後の課題~ポリトロープ・モデル~

総まとめ

本研究の総まとめとして以下にまとめる.

1. 冪級数展開よりも(ルンゲ・クッタ法)を用いたほうが良さそうである(検証する必要

がある).

2. 冪級数展開において n が大きくなればなるほど, より高次までの級数をとる必要が

ある.

3. nが大きいほど ξ1は大きくなり(n=5で ξ1は∞となる), nが小さいほど質量が中心に集

中する.

4. n=∞は等温ガス球であり, 球状星団(Globular cluster)に対応していると考えることが

できる.

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今後の課題

本研究の今後の課題として以下にまとめる.

1. 質量 M, 中心密度 ρc, 半径 R との関係を明らかにする.

2. ルンゲ・クッタ法についてもエクセルで解いてみる. このとき, 冪級数展開よりもど

のくらい精度が良いかを検証する.

3. 量子統計力学より, ポリトロープ指数 n がどのようになるのかを求めてみる.

4. ポリトロープ・モデルにより実際の星の物理量を求めてみる.

8.5 Excel とポリトロープ・モデルにおける追体験

エクセルを使い, ポリトロープ・モデルを冪級数展開による解法により, 星の内部構

造を導くことは半分可能であった. ルンゲ・クッタ法についてもエクセルで解いてみる

と, 星の内部構造を十分解けそうである. このモデルは 1926 年以前に完成されたモデ

ルであるが, コンピュータの無かった当時では ξ1 を計算するにも一苦労だったといえ

ることが身をもって体験することができた(Excel では瞬時にできる). またこれまで, 実

に様々な計算をしたが, これらのことを空白状態から作り上げた当時の天体物理学者

たちは, いかにすばらしかったのかを, 本研究をすることによって身をもって追体験す

ることができたといえた.

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- 67 -

謝辞

田邉健茲教授には, 4 年次の卒業研究にて熱くご指導していただき大変お世話になっ

たと感じておりますとともに, 最後まで暖かく見守っていただいたことを心より厚く

お礼申し上げます. 4 年次の時だけではなく, 入学する以前からもお世話になっていた

こと, 大学へ入学してからは, 1年次から3年次における講義や実験ではお世話になった

とともに, 3 年次でのプレゼミにおいても, 大変お世話になったことも心より厚くお礼

申し上げます. 天文学に関する知識だけではなく理論的な考え方についても深くご指

導していただきました. そのおかげで卒業研究も私の希望どおりの理論をすることが

できました. また, お忙しい中, 本卒業論文だけでなく, 中間発表会, 卒業研究要旨, 卒

業研究発表会においても添削等していただいたこと, 本当に感謝の念で一杯にござい

ます. 田邉研究室で過ごせたこの 1 年間のことを大切な思い出にし, また田邉健茲教授

にご指導していただいたことを誇りにしていきたいと思います. この場を借りて改め

て感謝の意を示します.

田辺研究室博士課程 3 年生の今村和義先輩には, 中間発表会, 卒業研究要旨, 卒業研

究発表会において添削等や, 具体的で適切なアドバイスをしていただいたこと, 本当に

助かりました. 心より厚くお礼申し上げます. 中間発表会前日には朝まで付き合ってい

ただいたことを今でも覚えております. さらに日頃, 分からないところを質問しては,

どんな時にでも, とても親切で丁寧にご指導していただいたこと, そしてこの 1 年間今

村和義先輩のおかげでとても楽しい 1 年間となったことも含めて心から感謝の意を示

します.

田辺研究室修士課程 2 年生の高木良輔先輩には, この 1 年間, 実に様々なご提案をし

ていただきましたことを覚えております. 中間発表会や, 卒業研究要旨, 卒業研究発表

会においては, 様々な資料を提供していただきとても助かりました. 中間発表会の前日

には朝まで付き合っていただいたにも関わらず, 発表会当日にもお越しいただいたこ

とを心からお礼申し上げます. さらに, 卒業研究発表会に至っては, 私たち 4 年生のた

めに, お忙しい中準備を含めて進行に至るまでしていただいたことについてもこの場

を借りてお礼申し上げます.

田辺研究室修士課程 1 年生の小木美奈子先輩には, ゼミで大変お世話になりました.

小木美奈子先輩にはゼミの後にも関わらず, 私の分からないところをたくさん教えて

いただきました. ゼミでは常に私の何歩も先を進まれていて, 小木美奈子先輩に追いつ

こうとしていたことを覚えております. また, 卒業研究要旨の添削, 卒業研究発表会の

ための計算(ポリトロープ指数 n=1.5)までしていただき, 卒業研究発表会にて大変助か

ったこと, さらに卒業研究発表会の準備進行に至るまでしていただいたこと, 心から感

謝いたします.

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加藤研究室 4 年生の村中亮竜さん, 井上聡さん, 福田研究室の田村佳那さんには同じ

4 年生としてともに助け合い, また切磋琢磨して高め合うことができたと思います. こ

の 1 年間とても楽しかったです.

そして, 田邉健茲教授の奥様である直子夫人には大変お世話になりました. いつも影

で見守っていてくださったこと, 事あるごとの差し入れ等を含め, 生活面でお世話にな

ったことを心からお礼申し上げます.

最後になりましたが, 私を今日まで育ててくださった両親には大変お世話になった

とともに, 4 年間大学へ行かせてくださった両親, 親戚一同には心から感謝致します.

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参考文献

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- 72 -

補遺

補遺 1 2 項定理について

6.2 節(6.2.9)式を導くために 2 項定理を使用した. ここで, 2 項定理について証明して

おく.

𝑛 = (𝑛 − 1)(𝑛 − 2)・・・(𝑛 − 𝑘)・・・1 ( . 1.1)

より,

𝑛

(𝑛 − 𝑘)= 𝑛(𝑛 − 1)(𝑛 − 2)・・・(𝑛 − 𝑘 + 1) ( . 1.2)

より,

𝑘 =𝑛

𝑘 (𝑛 − 𝑘) ( . 1.3)

となり,

𝑘 =𝑛(𝑛 − 1)・・・(𝑛 − 𝑘 + 1)

𝑘 ( . 1.4)

となる. (A.1.4)式より,

=𝑛 −

1 = 𝑛 ( . 1. )

2 =𝑛(𝑛 − 1)

2 =𝑛(𝑛 − 1)

2 ( . 1. )

=𝑛(𝑛 − 1)(𝑛 − 2)

3 =𝑛(𝑛 − 1)

( . 1. )

となり, それぞれが求まる.

補遺 2 n=1.5 の場合においての補足

6.3 節の, n=1.5 において, (6.2.29)式に n=1.5 を代入しても表 5.4.1 とは合わなくなると

いう結果をここで示す. ここで, (6.2.29)式に n=1.5 を代入すると,

𝜃 .5 = 1 −1

2 +

1.

12 4 −

1. (8・1. − )

1 12 + ・・・ ( . 2.1)

となる. これを使い, エクセルにて作図することにする. ここでも, 半径 ξを 0.1 刻みで

プロットすることにする. 次の表 A.2.1 に(A.2.1)式の計算結果を示す.

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表 A.2.1: n=1.5 の結果

ξ θ ξ θ ξ θ ξ θ

0 1 0.8 0.898271289 1.6 0.643602489 2.4 0.3220096

0.1 0.998334583 0.9 0.872832194 1.7 0.605972383 2.5 0.277072483

0.2 0.993353289 1 0.845138889 1.8 0.5676004 2.6 0.230028489

0.3 0.985100744 1.1 0.815404333 1.9 0.528563833 2.7 0.180259244

0.4 0.973650489 1.2 0.7838464 2 0.488888889 2.8 0.127007289

0.5 0.959103733 1.3 0.750682633 2.1 0.448541444 2.9 0.069362833

0.6 0.9415876 1.4 0.716124489 2.2 0.407417289 3 0.00625

0.7 0.921252883 1.5 0.680371094 2.3 0.365331883 3.1 -0.063587417

ここで上表は (6.2.29)式に直接 n=1.5 を代入して得た値である. 一方, 6.3 節で計算した,

(6.3.21)式又は, (7.2.7)式より得た, 表(7.2.7)を合成した図を以下に示す.

ここで, 上図と表 5.4.1 (Chandrasekhar,S.,1939 より引用)を比較してみると, あきらかに

(A.2.1)式, すなわち, (表A.2.1)により計算された解は表(5.4.1)より ξ1は小さくなっている

ことがわかる. このことから, n=1.5 の場合では, n=整数値の場合の式である(6.2.29)式を

適用することができないといえる.

図 A.2.1: ξ6までの冪級数展開における n=1.5(表 7.2.7)と n=1.5(表 A.2.1)の結果