famsとchooseldを用いたインシリコ創薬パイプライン
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FAMSとchooseLDを用いたインシリコ創薬パイプライン
中央大学理工学部 物理学科 田口善弘
生命科学科 岩舘満雄 梅山秀明
タンパク質立体構造予測ソフトFAMSとインシリコ化合物スクリーニングソフトchooseLDを用いたインシリコ創薬パイプラインを作成
GEOなどに公開されている疾患遺伝子発現データから疾患現遺伝子 を 推 定 し 、 そ の 遺 伝 子 の 立 体 構 造 を FAMS で 予 測 し てchooseLDでリガンドを既知の化合物データベースからスクリーニングすることで治療薬の候補化合物を推定する。
疾患原因遺伝子公開遺伝子発現データベースからの推定
主成分分析とは?M
N
N×M次元ベクトル
M次元
1
2
3
N
1
2
3
N
N×2次元ベクトル
PC1
PC2
PC1
PC2
主成分分析を用いた変数選択法人工データによるデモンストレーション
サンプル
遺伝子
一部の遺伝子だけが2グループ間に差がある
△
○ 遺伝子を主成分分析で2次元に埋め込む「だけ」で「原点から遠い遺伝子(+)」を選ぶ「だけ」で自動的に(ラベル情報なしで)2群に差がある遺伝子(△)を選択できる→教師なしの変数選択
Fogel, B. L., Cho, E., Wahnich, A. et al. Mutation of senataxin alters disease-specific transcriptional networks in patients with ataxia with oculomotor apraxia type 2. Hum. Mol. Genet. 23, 4758–4769 (2014).
AOA2患者(○)vs健常者(△)の皮膚の培養セルライン(2 vs 2)
PC1:99% PC2:0.4%
PC2:0.2% PC2:0.1%
第1主成分は99%だが患者と健常者に差がない。あるのは1%以下の気しか無い第2,3,4主成分
第2,3,4主成分の主成分得点が有意に大きい(BH基準補正P値で0.01以下)遺伝子を選択し708個を選んだ。
ALSへの応用例
生物学的な検証1:KEGGパスウェイ解析アルツハイマー、パーキンソン、ハンチントンなどがヒット
他の同様な解析でも生物学的に意味がある項目が多数検出
生物学的な検証2:PPIネットワーク
選択遺伝子間に緊密なネットワークがあり、生物学的に協働的に作用している可能性の高い遺伝子群が選択されていると期待できる
13
708 211
〜20,000
選択遺伝子
ALS関連遺伝子(by Gendoo)
P=4×10−4
PC2:0.7% PC3:0.4%
○△+:3種類の変異遺伝子挿入ー正常遺伝子挿入→どの変異を入れても同じような遺伝子発現異常が起きている
Fogel, B. L., Cho, E., Wahnich, A. et al. Mutation of senataxin alters disease-specific transcriptional networks in patients with ataxia with oculomotor apraxia type 2. Hum. Mol. Genet. 23, 4758–4769 (2014).
ALS関連実験その2:ALS関連変異遺伝子のセルラインへの挿入4セルライン×(3変異遺伝子)
第2,3主成分の主成分得点が有意に大きい(BH基準補正P値で0.01以下)遺伝子を選択し715個を選んだ。
→生物学的な検証1:KEGGパスウェイ解析アルツハイマー、パーキンソン、ハンチントンなどがヒット
他の同様な解析でも生物学的に意味がある項目が多数検出
14
715 211
〜20,000
選択遺伝子2
ALS関連遺伝子(by Gendoo)
P=2×10−3
393
708 715
〜20,000
選択遺伝子 選択遺伝子2
KEGGパスウェイ解析は一致
特に重要な遺伝子の選択→2つの方法の上位の積集合を採用
29
100in
708
100in
715
選択遺伝子 選択遺伝子2
ALSに特に関係している遺伝子多数
29遺伝子の一部が構成するネットワーク
インシリコ創薬の実行
(株)インシリコサイエンス
CCR6を対象にインシリコ創薬を実行
T helper type 17 (Th17) cells:炎症を起こすことが知られている。ALS患者の血液で上昇。
regulatory T cell (Treg) cell:炎症を抑制。ALS患者の血液で減少。
実験的自己免疫性脳脊髄炎:CCL20を伴うCCR6に誘導されたTh17の移動で発症CCL20を伴わないCCR6に誘導されたTregの移動で抑制
→CCR6の場面に応じた活性化・抑止が治療対象に。
cf. CCL20を伴うCCR6の患部への移動はALSでは治療対象となったことはないが、リウマチで治療対象として試みられたことがある。
CCR6の立体構造を予測
FAMS:北里大学薬学部梅山研究室・中央大学理工学部岩舘研究室で開発されたタンパク質立体構造予測ソフトウェア
今回はADRB2(PDBに立体構造あり)をテンプレートに立体構造を予測理由:・作動薬POGが結合した立体構造がPDBに3つ・3種類の異った阻害剤がそれぞれ結合した立体構造がPDBにある→CCR6の作動薬・阻害剤をスクリーニングできる
インシリコスクリーニングソフト:chooseLDを使用
chooseLD:北里大学薬学部梅山研究室・中央大学理工学部岩舘研究室で開発のインシリコスクリーニングソフト
Comparative Dockingを用いてPDBに登録されたリガンド結合蛋白の立体構造からリガンドを推定
化合物ライブラリ:AKOS社のライブラリを使用。登録化合物数は数百万。
テンプレートリガンド(PDBに登録されたADRB2に結合しているリガンド)との谷本指数を使った類似性検索で数千個程度の化合物を選択
↓
chooseLDでランク付け:FPAScore:テンプレートリガンドとのアラインメントの良さでリガンドとしての可能性を評価
スクリーニングされた作動薬・阻害剤共にpubchemにおいて、”Related Compounds with Annotation”に多くの蛋白との結合が報告されている。
→作動薬・阻害剤候補として有望
実験的検証が必要。
作動薬候補
阻害剤候補
結論
パブリックドメインデータセットから遺伝子スクリーニングをインシリコ創薬を行うパイプラインを作成した。
ALSに対して同パイプラインを用いてCCR6を創薬ターゲットとして特定し作動薬と阻害剤の候補を見つけた
このパイプラインを用いた共同研究などを募集しています。