中心対称性のない結晶構造 ・ラシュバタイプ ・カイラル構造γ : γ1 =...
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2014/12/15B4 Nagasaki Kazuya
導入中心対称性のない結晶構造
例)CeIrSi3 例)TaSi2・ラシュバタイプ ・カイラル構造
Fig. 1.
Ref. 3)
反転対称性を持たず(正方晶c方向に反転対称性の破れ)、 c面に平行なミラー面がない構造。
結晶空間群が反点心,鏡映面を持たず,結晶学的な右旋,左旋構造が許される構造。
反対称スピン-軌道相互作用が生じ、電荷とスピンの縮退が解かれる。(フェルミ面分裂) 2
導入
CeIrSi3
Ref. 3)
Hc2Hc2(0) = 450kOe (H//[001])Hc2(0)= 95kOe (H⊥[001])
巨大な上部臨界磁場の出現(TSC = 1.6K)
ラシュバ型のスピン-軌道相互作用においては、全ての伝導電子のスピンは、c軸方向に対して垂直方向をとる。
upスピンdownスピン伝導電子からなる縮退したフェルミ面が分裂することによる。
スピンがc面内に寝ているためにc軸方向(H//[001])に磁場を印加したときに、常磁性効果が働かない。
巨大な上部臨界磁場 3
導入
LaIrGe3 , LaRhGe3 , LaCoGe3
(4f電子を持たない参照物質)
[dHvA](LaIrGe3)
Ref. 6)Ref. 6)
Ref. 6)
branch αのΔε : 1090K, 511K, 461Ksplitting energy
スピン-軌道相互作用の大きさがIr-5d>Rh-4d>Co-3dなため.
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VSi2
導入 カイラル構造
VSi2にドハースを用い、カイラル構造の反対称スピン-軌道相互作用の大きさを初めて明らかにした.
分裂エネルギー(反対称スピン-軌道相互作用の大きさ)
α: Δε=19K (F=7.9×107Oe)β: Δε=39K (F=4.1×107Oe)γ: Δε=110K (F=1.8×107Oe)
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Ref. 7)
Ref. 7)
Ref. 7)
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TaSi2
導入
結晶構造
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目的
計算と実験でTaSi2のカイラル構造によるフェルミ面特性を明らかにする.分裂エネルギー(反対称スピン-軌道相互作用)がV-3d伝導電子と比べてかなり大きくなると予想されるのでその確認.
実験TaSi2単結晶の精製
テトラアーク炉を用いたチョクラルスキー法残留抵抗:ρ0=0.014μΩcm 残留抵抗比:RRR(=ρRT/ρ0)=2200 ρRT : 室温の抵抗
dHvA標準的な磁場変調法という手法.
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結果と考察
dHvA振動: F(= )[Oe]はフェルミ面の極断面積に比例.
eSc π2/
代表的な3つのdHvA branch⇒α(α´)、β(β´)、γ(γ´)
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結果と考察TaSi2の反転対称性の破れにより、どの枝も2つに分裂.分裂エネルギー: −+∗ −
=Δ FF
cmec
ε
∗cm :サイクロトロン有効質量(電子の静止質量m0 を単位として表現)
επ ddSmc )2(
2=∗
( )SecF π2=
Δεは次の2式から得られる
F+F-
右の図を比べてみても分かる通りTaSi2のΔεはVSi2のそれよりも極めて大きい
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結果と考察
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結果と考察
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結果と考察 検出されたdHvA branch は次のように対応付けられる.
1). α(α´)は球形の膨らんだ軌道の電子のフェルミ面による(band105,106)2). β(β´)は複数つながった領域に関連した軌道に対応3). γ(γ´)は楕円体のホールのフェルミ面による(band103,104)
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結果と考察
検出されたbranchは、理論的計算の結果からよく説明される.
計算で得られるγb=2.63mJ/(K2mol) で、実験値はγ=3.12mJ/(K2mol) で一致している. それに応じ、 は より少し重い.
Ta-5d伝導電子はγ branchへの主な誘因である.
分裂エネルギーは理論値と近い値である.
∗cm bm
TaSi2とVSi2でフェルミ面はほぼ同じであるのに分裂エネルギーΔεが一桁も異なっている…例.)TaSI2のα branch → 493K
VSi2のα branch → 19K
このカイラル構造では、Ta-5d伝導電子の分裂エネルギーはV-3d伝導電子のそれよりかなり大きい.
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結果と考察
(c)other
→ magnetic breakthrough effect+磁場
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結果と考察
γ1,γ2...ドハースの磁場の影響により出現
電子 3回内側 → γ〃 2回 〃 → γ1〃 1回 〃 → γ2〃 0回 〃 → γ´
通常dHvAで得られる枝
Magnetic Breakthroughで生じた枝
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結果と考察dHvAの振幅(強度)をγ : γ´=γ1 : γ2 とする。
約 γ : γ1 = γ´: γ2 = 3 : 51→3 2→4 29/501→4 2→3 21/50
Magnetic breakthrough 経由
γ :
γ1 :
γ2 :
γ´:
5029
5029
5029 ××
5029
5021
50213 ×××
5029
5021
50213 ×××
5029
5029
5029 ××
γ : γ1 = 29・29・29: 3・21・21・29≒ 3 : 5
実験結果とよく合う
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結果と考察
Magnetic breakthrough はα branch (α´branch)でも起こっている。
α、α´の断面積は分かれている。
しかし、2か所縮退しているところがある。
dHvAの磁場によりα1が生じる
Α1のdHvA振幅(強度)は小さい↑
2つの縮退した領域の分裂エネルギー(Δε)がごくわずかなものではないため。
α´
α
α1
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まとめ
理論的、実験的ともにTaSi2のカイラル構造によるフェルミ面特性を明らかにした。
TaSi2のカイラル構造では、エネルギーバンド(フェルミ面)は完全に↑スピン、↓スピンにわかれている。
2つに分裂したフェルミ面に対応する分裂エネルギーが大きい。(α-α´:493K 、 β-β´:564K 、 γ-γ´ : 617K ) ここで主な伝導電子はスピン軌道相互作用の大きなTa-5d電子である。
これらの値はV-3d電子に基づくVSi2の値よりも大きい。(19K, 39K, 112K)
Magnetic Breakthrough の発見