ガン細胞の定義 1. 正常な抑制を無視して増殖する 2. 他の細胞...

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ガン細胞の定義 1. 正常な抑制を無視して増殖する 2. 他の細胞の領域に進入し占領する 異常な1個の細胞 制御されない増殖 腫瘍 良性腫瘍 悪性腫瘍 被膜に覆われ一個の塊と してまとまる 周囲の組織を浸潤 (転移)

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  • ガン細胞の定義

    1. 正常な抑制を無視して増殖する

    2. 他の細胞の領域に進入し占領する

    異常な1個の細胞

    制御されない増殖

    腫瘍

    良性腫瘍 悪性腫瘍

    被膜に覆われ一個の塊と

    してまとまる

    周囲の組織を浸潤

    (転移)

  • ガンの分類

    上皮組織由来 ガン腫(carcinoma)

    結合組織・筋肉由来 肉腫(sarcoma)

    肺ガン・胃ガン・大腸ガン・乳ガン・

    子宮ガン・前立腺ガン・膀胱ガン・

    皮膚ガンなど

    造血細胞由来

    免疫系

    神経系

    白血病(leukemia)

    リンパ腫(lymphomas)

    神経膠腫(gliomas)

    軟骨肉腫など

  • 発ガン(carcinogenesis, oncogenesis)

    化学発ガン

    ウィルス発ガン

    放射線発ガン

    初期変化 発ガン促進期

    (Initiation) (Promotion)

    ガン化

    (Carcinogenesis)

    発ガン

    イニシエータ

    発ガン

    プロモータ

    ガン原性物質

  • イニシエーター:アゾキシメタン

    プロモーター: デオキシコール酸

    デオキシコール酸:胆汁酸(胆汁の成分)が腸内細菌によって変化させられたもの)

    実験例

  • AOM-DC誘発大腸ガンモデルラット

  • 肝臓

    胆嚢

    胆汁酸:脂肪消化のために分泌

    小腸(回腸)末端部から吸収され肝臓へ戻る

    吸収されなかった二次胆汁酸は大腸へ流れ込む

    腸内細菌によって変成、発ガンプロモーターとなる(二次胆汁酸)

  • アゾキシメタン+デオキシコール酸による肝臓癌

    正常 肝癌

  • 対照群

    腫瘍発生率8/8

    AF2531群

    腫瘍発生率3/8

    AOM-DC誘発大腸癌モデルラット結腸伸展図

  • 変異原生を示す物質のスクリーニング

    Aimes Test(エイムス試験)

    サルモネラ菌

    ただしHis要求性変異株

    ラット肝ホモジェネート

    調べようとする化合物

    混合

    サルモネラ菌用培地

    (ただしHisを含まない)

    に接種する

  • 変異原生物質

    無添加

    変異原生物質添加

    Hisを含まない培地にはえてきたサルモネラ菌

    =His非要求性

    要求性から非要求性へ(復帰変異株)

  • O O

    O

    O O

    OCH 3

    O O

    O

    O O

    OCH 3

    アフラトキシン

    O

    アフラトキシン2,3-エポキシド

    発ガン物質の代謝による活性化

    肝臓内酵素シトクロムP450の作用

    DNAにたいする結合能を獲得=発ガン物質化

  • 3.ガンウィルスの発見ー前史

    1911 ニワトリ肉腫の研究

    肉腫組織

    肉腫に罹患した

    ニワトリ

    ホモジナイズ

    正常ニワトリ

    肉腫に罹患

    P.Raus

    ウィルスの概念の確立・・・・1932年

    ラウスのノーベル賞受賞・・・1965年

  • 1970年代のラウス肉腫ウィルスの研究で

    わかったこと

       (遺伝子操作技術以前)

    1.ウィルスに含まれる遺伝子が細胞のガン化を支配する

    2.ガン遺伝子はウィルスの増殖・粒子形成には必要ない

    3ー1.

    3ー2 v- src の同定とc- src の発見

    src :sarcoma(肉腫)遺伝子

    (遺伝子操作技術確立以降)

    v:ウィルス性 c:細胞性

    v-src と相補性の遺伝子が正常細胞に

    存在する事を証明 = c-s rc

    1976 Stehelin

    c-s rc プロトオンコジーン=

    プロトオンコジーン概念の証明

  • ガン遺伝子 src (サーク)はもとも

    とウィルスが持っていたものではない

    染色体に組み込み

    *レトロウィルスなのでRNAを鋳型にしてDNA

    を逆転写酵素で作ってから取り込まれる

    宿主の c-src をとりこむ

  • 2.ガンは遺伝子の疾患である

    原型ガン遺伝子

    (proto-oncogene)

    タバコ

    食品中の発ガン物質

    放射線

    ガンウィルス

    ガン遺伝子

    (oncogene)

    変異と活性化

    ガン抑制遺伝子

    変異と失活

    細胞のガン化

  • 4ー1.ヒトガン遺伝子のクローニング

    Weinbergら1979

    NIH3

    T3細胞

    マウス

    由来

    DNA抽出

    トランスフェクション

    ガン化

    ヒト膀胱ガン細胞

    化学発ガン剤処方によるガン化

    これによりガン遺伝子の検索法を確立した

  • 4ー2.ヒトガン遺伝子の検索法

    ガン細胞

    DNA抽出

    DNA+リン酸

    カルシウム

    NIH/3T3細胞のトランスフェクション

    培養細胞のガン化

    腫瘍の発生

  • ヒト膀胱ガン細胞

    ガン遺伝子のクローニング

    Weinbergら 1982

    ハーヴェイ肉腫ウィルスの ras 遺伝子と相同

    であることを発見

    ras 遺伝子ほ乳類の

    7

    H- ras このウィルスガン遺伝子ももちろん

    ヒト細胞染色体に相補する遺伝子が

    ある.

    正常細胞ras遺伝子と比較

  • 4ー3.ガン細胞由来と正常細胞由来の

         ras 遺伝子の比較

    細胞ガン化能力

    膀胱ガン細胞 ras 遺伝子クローン

    ras 遺伝子クローン正常細胞

    あり

    なし

  • 4ー4 .ras 遺伝子塩基配列の比較と

        Rasタンパク質アミノ酸配列の比較

    .5'.-AGCG ATG ACG GAA TAT AAG CTG GTG GTG GTG GGC GCC GGC GGT ........V V V G A G

    M T E Y K L

    G ..........

    1 2 3 4 5 6

    7 8 9 10 11 12

    GGC G

    G T C V

    正常 ガン細胞

    塩基配列がGGCから GTCへ変化

  • 乳ガンの遺伝子

    BRCA1遺伝子:BRCAタンパク質は核内に存在、遺伝子の発現調節

    コドン位置1112122

    塩基変異ATG > ATTGTA > GCAATC > GTCTTA > TCA

    アミノ酸変異Met > IleVal > AlaIle > ValLeu > Ser

    BRCA1の変異を持つと80%の確率で乳ガンになる危険性40%の確率で卵巣ガンになる危険性がある

  • 原型ガン遺伝子からガン遺伝子への活性化

    3つの遺伝的アクシデント

    点突然変異遺伝子の転座遺伝子の増幅

  • ras 遺伝子の場合

    塩基配列の変異による産物のアミノ酸組成変異

    結合したGTPを加水分解できないRasタンパクになる

    シグナル出しっぱなし状態になる

    点突然変異

  • myc 遺伝子の場合

    2. 染色体転座

    正常,8番染色体

    バーキットリンパ腫では14番染色体に転座

  • myc 遺伝子

    活発に転写されている遺伝子

    強力なプロモーター・エンハンサーの下流に位置

    活発に転写されている遺伝子と融合

    Mycタンパクの過剰な生産

  • N-myc 遺伝子の場合

    遺伝子増幅で活性化

    正常,細胞あたり2コピー

    神経芽細胞腫:200から2000コピー

    遺伝子増幅

  • myc 遺伝子

    >>>>

    N- Myc タンパク質の過剰生産が起こる

  • ①細胞増殖因子

    ②細胞増殖因子受容体

    ③チロシンキナーゼ類

    ④Gタンパク質

    ⑤セリン・スレオニンキナーゼ類

    ⑥細胞質制御因子

    ⑦核内タンパク質

    ⑧その他

    ガン遺伝子の分類

  • ガン抑制遺伝子の変異

  • ガン細胞

    正常細胞

    細胞融合

    7.ガン抑制遺伝子

    抑制遺伝子の概念

    1986年 Dryjaら

    網膜芽細胞腫に対する抑制遺伝子

    rb 遺伝子のクローニング成功

    12

  • ガン抑制遺伝子のクローニング

    50以上あると推定されているが,

    クローニングされたものは少ない.

    p 53, wt-1, krev-1, nf 1, dccなど

    スクリーニングは、ガン遺伝子よりも難しい

    対立遺伝子の一方の変異では表現型で確認できないから

  • 原型ガン遺伝子(proto-oncogene)

    ガン遺伝子(oncogene)

    変異と活性化

    細胞のガン化正常遺伝子

    異常タンパク

    ヘテロ状態でガン化させる

  • ガン抑制遺伝子

    細胞のガン化

    異常タンパク活性失活

    一方の正常タンパクが働いてガンを抑制

    異常タンパク活性失活

    ホモ状態でないとガン化させない

  • 遺伝子調節領域

    転写開始点

    mRNA遺伝子調節領域

    Poly-A付加部位

    -AAAAAG-ppp-

    5‘

    RB遺伝子の異常 ①エキソン部分の異常

    ①異常RBタンパクを作ってしまう

    CH3

    ②プロモーター領域の過剰なメチル化

    -AAAAAG-ppp-

    ②正常なRBタンパクだがほとんど転写されない

  • Cyclin DCDK 4

    Cyclin ECDK 2

    E2FRBP

    PP

    P

    P PG1/S期移行E2F

    RB

    RB E2F E2Fの不活化

    G1停止

    つまり細胞周期の制御系

  • 細胞周期とガン遺伝子・ガン抑制遺伝子

  • S期

    間期

    分裂準備

    2h

    細胞分裂

    2h

    G1期

    G0期静止期

    WT1

    RBp53

    ガン抑制遺伝子産物によるブレーキング

    Ras

    Myc

    Fos

    Jun

    ガン遺伝子による加速

    G2期 M期

  • 増殖因子

    シグナル伝達経路

    初期遺伝子発現

    転写因子

    二次遺伝子発現

    サイクリンCDK

    RB

    E2F

    RB

    E2F

    分離

    DNA合成開始

    転写因子

  • 増殖因子

    シグナル伝達経路

    初期遺伝子発現

    転写因子

    二次遺伝子発現

    サイクリンCDK

    RB

    E2F

    RB

    E2F

    分離

    DNA合成開始

    転写因子

    ストレス p53

    p21CKI

    G1チェックポイントの仕組み(井出 2006)

  • アポトーシスの経路と制御因子の関係

    ガン細胞のアポトーシス耐性

  • ほ乳類の細胞死

    T細胞レセプター

    シグナル

    TNFレセプター

    シグナル

    Fas シグナル

    グルココルチコイド

    プロスタグランジン

    細胞死の誘導

    正常細胞

    ウイルス感染

     以下のものの枯渇

    インターロイキン

    エリスロポエチン

    神経成長因子(NGF)

    細胞内Ca2+濃度上昇

    cAMP濃度上昇

    ADP-リボシル化

    c-fos

    c-jun

    c-myc

    Rb

    p53

    細胞の縮小クロマチン凝縮

    発現する遺伝子 エンドヌク

    レアーゼ

    アポトーシ

    ス小体の

    マクロファ

    ージによる

    貪食

    山田ら1997にもとづく

    c-fos c-jun c-mycRb p53

  • アポトーシスの経路と制御因子の関係

    p53

    アポトーシス

    p21

    bcl-2

    Cdk-サイクリン

    RB

    c-Myc

    E2F

    c-MycRB

    E2F

    P

    細胞増殖刺激

    ガン原遺伝子

    p53による転写制御細胞増殖抑制

    癌抑制遺伝子

    アポトーシス抑制

    bcl-xbcl-2

  • ガン抑制遺伝子p 53 転写制御因子

    数多い標的遺伝子群 (150種類以上)

    p53

    細胞周期制御系 p21 WAF1 14-3-3σ Reprimo

    血管新生抑制系 BA/1 TSP1

    アポトーシス発動系 BAX NOXA p53AlP1 PUMA Killer/DR5

    p53標的遺伝子

    P

    DNAの損傷

    MDM2

    Ub-Q 分解

  • p53p53 Alp1

    アポトーシス発動

    p53p 21

    細胞周期停止 (G1期停止)

    p53p53 R2

    DNA修復

    細胞の生存

    細胞死

    P

    P

    P

    DNAの損傷がおこると,p53が活性化、プロモーターとして働く

  • 酪酸による発ガン抑制遺伝子p21の活性化( Nakano et al. 1997)

    p21 WAF 1タンパク質発現量

    p21 WAF 1

    Cyclin DCDK 4

    Cyclin ECDK 2

    E2FRBP

    PP

    P

    P PG1/S期移行

    RBタンパク質 低リン酸化E2F結合可能型(活性型)

    E2F

    RB

    RB E2F E2Fの不活化

  • A:正常組織

    (第1群・第2群)

    B:腫瘍組織(第3群)

    C:腫瘍組織(第4群)

    図7:結腸組織におけるアポトーシス細胞の分布

  • ガンの分子メカニズムと治療法

    細胞増殖因子・細胞増殖因子レセプターの異常

    例:上皮細胞増殖因子受容体のチロシンキナーゼ

    正常なレセプタータンパクEGFが結合して活性化

    異常なレセプタータンパクEGFでなくても活性化状態EGFがなくても活性化状態

    EGF

    正常細胞:EGFがないと増殖しないガン細胞:EGFがなくても増殖できる

  • ガンの分子メカニズムと治療法

    細胞増殖因子・細胞増殖因子レセプターの異常

    上皮細胞増殖因子受容体のチロシンキナーゼ

    血小板由来増殖因子受容体のチロシンキナーゼ

    抗体治療

    異常なレセプタータンパク

    抗体分子でふさいでしまう

  • 細胞内情報伝達系

    シクロオキシゲナーゼ2(Cox2)

    チロシンキナーゼ

    セリンスレオニンキナーゼ

    酵素反応阻害剤の開発

  • テロメラーゼの発現抑制

    ガン細胞とテロメラーゼ活性

    ガン細胞のテロメアサイズは短い

    分裂増殖が盛んなため

    ガン細胞では、テロメラーゼが発現

  • ガン細胞とアポトーシス抵抗性

    Bcl-2 遺伝子の発現抑制

    アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用

    Bcl-2タンパクとヘテロ二量体形成する類縁タンパクを結合させて失活

    Baxタンパクによる阻害

    mRNA

    アンチセンスヌクレオチド

  • p53 遺伝子の変異の修復

    p16ー INK4 遺伝子の変異の修復

    アデノウィルスによる遺伝子治療

    正常遺伝子を導入する

  • ガン細胞と血管新生

    アンギオスタチン・エンドスタチン(血管新生阻害タンパク質)の使用

    血管内皮細胞成長因子(VEGF)阻害剤

    ガン細胞は、増殖が速い=栄養を要求

    栄養補給のために、血管を必要とする

    血管を引っぱってくるために、血管新生を誘導する

  • ガン細胞と転移

    nm23(ヌクレオシド二リン酸キナーゼ)による転移抑制

    プロテアーゼ阻害剤