外国人労働者政策における「日本モデル」から 「韓国モデル」へ...

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6691外国人労働者政策における「日本モデル」から 「韓国モデル」への転換 韓国における雇用許可制の評価を中心に 福島大学経済経営学類教授   佐 野 孝 治  37 Ⅰ 課題と方法 .なぜ韓国の雇用許可制を取り上げるのか 韓国は経済成長に伴い1980年代末から外国人労 働者 を受け入れ始めた「受け入れ後進国」であっ た。1991年から実施していた「産業研修生制度」も 日本をモデルにしたものであり,日本と同様,「建 前は研修生,本音は低賃金労働者」であったため, 送り出しプロセスでの不正,賃金不払い,不法労働 化,人権侵害など問題点が多く,まさに「現代 版奴隷制度」 と呼ばれるほどであった。 しかし金大中,盧武鉉政権の下で,市民運動と国 民世論の後押しを受けて,2004月に,「外国人 勤労者雇用などに関する法律」が施行され,雇用許 可制へと大きく転換した。この制度は様々な問題点 は残っているものの日本の研修生・実習生制度より は優れた制度である。国際移住機構(IMO)のマッ キンリー事務総長も「雇用許可制は良いシステムで, 多くの国にとって良いモデルになる」と評価してい また李明博政権になり,韓国人と外国人の社会的 統合を主要課題とする統合政策がすすめられてい る。外国人処遇基本法(2007月)や多文化家族 支援法(2008月)など相次いで制定され,外国 人参政権も認められるようになった。 このように韓国は2000年代に入り,「日本モデル」 を捨て,雇用許可制などの外国人労働者政策,統合 政策などの面で日本よりも速いスピードで制度革新 を進めている。 外国人に対する政策を考える際に,カナダやオー ストラリアの多文化社会やヨーロッパの移民政策を モデルとすることが多い。しかし韓国モデルの方が 日本にとってより参考になると考えられる。その理 由として,韓国社会は日本との類似点が多いからで ある。たとえば外国人比率が3%と少なく「単一民 族」的情緒を持っている点,また少子高齢化が進む 中で,長期的には外国人に依存せざるを得ないとい う点などである。かつて韓国が「日本に学べ」と言っ たように,現在は日本が「韓国に学べ」と言わなく てはならなくなってきているのかもしれない。 本稿の課題は,雇用許可制を中心に,外国人労働 者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」 への転換について考察することである。そのため雇 用許可制の成果と問題点を分析するとともに,李明 博政権の外国人労働者政策の特徴を明らかにする。 「現代版奴隷制度」と国際的に非難される「日本モ デル」である外国人研修・技能実習制度を韓国が廃 止し,新制度にチェンジできたのに,なぜ日本はで きないのかを探る上でも韓国の雇用許可制の分析は 重要な意義を持っていると考える。 なお韓国では結婚移民の増加にともない,外国人 全体の統合政策に焦点が当てられつつあるが,日本 の研修生・実習生制度に対する示唆点を明らかにす るうえでも,本稿では考察対象を外国人労働者,特 に非専門職である雇用許可制に限定する。 .雇用許可制に関する先行研究 韓国の雇用許可制についての代表的な日本語文献 として宣元錫[200620072009]をあげることが できる。宣氏は継続的に外国人労働者について研究 しており,最近は統合政策に力点を移している。ま

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6691)

論 文

外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換

―韓国における雇用許可制の評価を中心に―

福島大学経済経営学類教授  佐 野 孝 治 

―  ―37

Ⅰ 課題と方法

1.なぜ韓国の雇用許可制を取り上げるのか 韓国は経済成長に伴い1980年代末から外国人労働者1を受け入れ始めた「受け入れ後進国」であった。1991年から実施していた「産業研修生制度」も日本をモデルにしたものであり,日本と同様,「建前は研修生,本音は低賃金労働者」であったため,送り出しプロセスでの不正,賃金不払い,不法労働 者2化,人権侵害など問題点が多く,まさに「現代版奴隷制度」3と呼ばれるほどであった。 しかし金大中,盧武鉉政権の下で,市民運動と国民世論の後押しを受けて,2004年8月に,「外国人勤労者雇用などに関する法律」が施行され,雇用許可制へと大きく転換した。この制度は様々な問題点は残っているものの日本の研修生・実習生制度よりは優れた制度である。国際移住機構(IMO)のマッキンリー事務総長も「雇用許可制は良いシステムで,多くの国にとって良いモデルになる」と評価している4。 また李明博政権になり,韓国人と外国人の社会的統合を主要課題とする統合政策がすすめられている。外国人処遇基本法(2007年5月)や多文化家族支援法(2008年3月)など相次いで制定され,外国人参政権も認められるようになった。 このように韓国は2000年代に入り,「日本モデル」を捨て,雇用許可制などの外国人労働者政策,統合政策などの面で日本よりも速いスピードで制度革新を進めている。 外国人に対する政策を考える際に,カナダやオー

ストラリアの多文化社会やヨーロッパの移民政策をモデルとすることが多い。しかし韓国モデルの方が日本にとってより参考になると考えられる。その理由として,韓国社会は日本との類似点が多いからである。たとえば外国人比率が3%と少なく「単一民族」的情緒を持っている点,また少子高齢化が進む中で,長期的には外国人に依存せざるを得ないという点などである。かつて韓国が「日本に学べ」と言ったように,現在は日本が「韓国に学べ」と言わなくてはならなくなってきているのかもしれない。 本稿の課題は,雇用許可制を中心に,外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換について考察することである。そのため雇用許可制の成果と問題点を分析するとともに,李明博政権の外国人労働者政策の特徴を明らかにする。

「現代版奴隷制度」と国際的に非難される「日本モデル」である外国人研修・技能実習制度を韓国が廃止し,新制度にチェンジできたのに,なぜ日本はできないのかを探る上でも韓国の雇用許可制の分析は重要な意義を持っていると考える。 なお韓国では結婚移民の増加にともない,外国人全体の統合政策に焦点が当てられつつあるが,日本の研修生・実習生制度に対する示唆点を明らかにするうえでも,本稿では考察対象を外国人労働者,特に非専門職である雇用許可制に限定する。

2.雇用許可制に関する先行研究 韓国の雇用許可制についての代表的な日本語文献として宣元錫[2006,2007,2009]をあげることができる。宣氏は継続的に外国人労働者について研究しており,最近は統合政策に力点を移している。ま

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6692)

た白井京[2007,2009,2010]も韓国の外国人政策や法制度について継続して紹介している。さらに外国人研修生制度の改正に対応し,政府系シンクタンクでも韓国の雇用許可制に対する調査が行われており,労働政策研究・研修機構[2007],外務省領事局外国人課[2007]などがある。その他,佐藤忍[2008]などを挙げることができるが,概ね雇用許可制の制度の紹介であり,実態調査に基づいた研究はほとんどない。特に雇用許可制の評価に関する研究はほぼ皆無といってよい。 次に,韓国語文献としては,ソルドンフン[2003,2006,2009],李キュヨン[2007]などを代表的研究としてあげることができる。特にソルドンフン氏は,理論面,実態分析面でも第一人者といってよい。また2009年に雇用許可制5周年を迎えたこともあり,韓国産業人力公団[2009],国家人権委員会[2009]などでワークショップが開催されるとともに,外国人移住労働運動協議会[2009],李チョルスン[2009]などのアンケート調査も実施されている。ただし雇用許可制の評価に関しては,人権か競争力かというように,そもそも評価基準も違うため,議論百出という状態である。 続いて,英語文献としては,それほど数は多くないが,Kevin Gray[2006, 2007],Amnesty International[2006, 2009]などの研究・調査がある。

3.研究方法 研究方法は文献や統計資料による研究とともにインタビュー調査を行った。2009年11月から2010年2月にかけて,①政府系機関(労働部・雇用政策室外国人力政策課,行政安全部・自治行政課,韓国産業人力公団),②支援センター(韓国外国人勤労者支援センター,駅三グローバルヴィレッジセンター),③労働組合(移住労働者労働組合),④市民団体(外国人移住・労働運動協議会,ソウル外国人労働者センターなど),⑤宗教団体,⑥学識経験者などを対象に実施した。おもなインタビュー項目は,雇用許可制を中心とした外国人労働者政策の成果と問題点,世界金融危機以降の外国人労働者の現況,李明博政権の外国人労働者政策,韓国の外国人労働者支援ネットワークなどについてである。本稿は雇用許可制の評価に焦点をあてるため,支援ネットワークに関する考察やインタビュー内容の記述は別稿5の課題とする。

Ⅱ 韓国における「圧縮的国際労働力移動」

 雇用許可制の評価を行う前に,韓国における国際労働力移動について概観しておこう。韓国は1960年代の外国人労働者の送り出し国から,50年間の間に受け入れ国へと急激に転換しており,「圧縮的国際労働力移動」と呼ぶことができる。たとえば日本と比較するならば,日本の最初のブラジル移民は1908年であり,100年目を迎えていることを考えれば,韓国は半分の期間で送り出し国から,受け入れ国に転換している。またフィリピンやバングラディシュなど韓国と同時期に送り出し国だった国が依然として送り出し国であるのとは対照的に,受け入れ国に転換した韓国のケースは国際的にみても特異なケースであり,開発経済学の観点からみても重要な論点を提供しているといえる。

1.韓国の海外出稼ぎ 韓国の海外出稼ぎは,①初期(1963~73年),②拡大期(74年~82年),③衰退期(83年以降)に分けることができる6。最初の海外出稼ぎは1963年のドイツへの鉱夫247人の派遣であり,65年以降,ベトナム(基地建設,整備・修理),ドイツ(看護師,鉱夫)などへ拡大し,73年には6,863人であった。次の拡大期にはオイルショックにより好況だった中東向けの建設労働者として海外出稼ぎは急拡大した。中東だけで1982年には,15万1,583人,累計で89万人に達した(図表1)。82年の送金額は19億3,890万ドル,累計で81億5,720万ドルであった。これは当時のGDPの3%,輸出の11%に相当し,韓国の経済成長に大きく寄与したといえる7。続く,1983

年以降は,韓国経済の成長と民主化運動による賃金水準の上昇とともに海外出稼ぎは急減していくこととなる。韓国の海外出稼ぎは,組織的(海外開発公社を通す),集団的,短期的という特徴を持っていた。

2.外国人労働者の急増と諸問題の発現 1970年代以降の高成長と1980年代の民主化運動の中で賃金が高騰し,3D業種(Difficult,Dirty,Dangerous)の中小企業で労働力不足が深刻化することになった。そのため1988年のソウルオリンピック頃から外国人労働者が急増した。外国人労働者数は1987年の6,409人から2009年末には72万9,824人へと,20年で114倍に増加した(図表2)。これは労働力人口2,435万人の3%に相当する。ちなみに外国

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6693)

人数は2010年3月末現在,118万598人であり,住民登録人口の2.4%を占めるに至っている。居住地域は京畿道(31%),ソウル市(29%)と首都圏に集中している(図表3)。ビザ類型別でみると図表4の網掛け部分と不法滞在者(生産活動年齢)が外国人労働者である。2002年まではほとんどが不法滞在であり,人権侵害など多くの問題が発生した。 これに対して1990年までは韓国政府は無為無策であった。その後日本の研修生制度をモデルに,1991

年海外投資企業向け産業技術研修生制度,1993年産業研修生制度(対象を中小企業へ拡大),2000年研

修就業制度などを整備したが,本音(低賃金労働)と建前(研修)がわかれている日本に比べ,本音の部分が前面に出され,後述するような様々な問題が発生した。これに対応する形で,2004年8月17日に雇用許可制が施行され,①「外国人勤労者雇用等に関する法律」,②「出入国管理法」(非専門就業,訪問就業)が適用されることになった。そして2007年1月には産業研修制が廃止された。続いて2007年3月に外国国籍同胞訪問就業制の施行,2010年4月には雇用許可制の第5次改正が行われた。

0

100,000

200,000

300,000

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500,000

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700,000

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1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

就労ビザ

研修ビザ

不法滞在者

総計

図表2 ビザ類型別外国人労働者の推移(単位:人)

出所:法務部[各年]『出入国管理統計年報』などにより作成。

―  ―39

図表1 海外出稼ぎ労働者の推移(単位:人)200,000

165,000

130,000

95,000

60,000

25,000

19731974 19761975 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990

中東総計

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出所:労働部『労働白書』各年版より作成。

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6694)

京畿31%京畿31%

慶南6 %

仁川6 %

忠南4 %

慶北4 %

釜山4 %

忠北3 %

全南2 %

全北2 %

大邱2 %

その他7 %

ソウルソウル29%29%

図表3 外国人の居住地域(2010年3月現在,単位:%)

出所:法務部[2010]『出入国外国人政策統計月報』より作成。

図表4 ビザ別外国人滞在者数(2010年3月末現在、単位:人,%)

総滞在者 構成比 合法滞在者 不法滞在者 不法滞在率総  計 1,180,598 100 1,002,435 178,163 15.1%査証免除(B-1) 28,388 2.4 14,130 14,258 50.2%観光通過(B-2) 65,640 5.6 55,174 10,466 15.9%短期商用(C-2) 32,493 2.8 7,365 25,128 77.3%短期総合(C-3) 58,718 5 20,962 37,756 64.3%短期就業(C-4) 666 0.1 387 279 41.9%留  学(D-2) 68,158 5.8 62,151 6,007 8.8%産業研修(D-3) 5,353 0.5 1,261 4,092 76.4%一般研修(D-4) 16,819 1.4 11,916 4,903 29.2%宗  教(D-6) 1,639 0.1 1,584 55 3.4%駐  在(D-7) 1,480 0.1 1,447 33 2.2%企業投資研修(D-8) 7,848 0.7 7,136 712 9.1%貿易経営(D-9) 3,440 0.3 3,419 21 0.6%訪問同居(F-1) 44,274 3.8 37,838 6,436 14.5%居  住(F-2) 133,210 11.3 123,325 9,885 7.4%同  伴(F-3) 14,527 1.2 14,095 432 3.0%在外同胞(F-4) 54,733 4.6 53,860 873 1.6%永  住(F-5) 27,981 2.4 27,081 0 0.0%そ の 他 55,189 4.7 53,404 1,785 3.2%教  授(E-1) 2,249 0.2 2,240 9 0.4%会話指導(E-2) 23,515 2 23,393 122 0.5%研  究(E-3) 2,100 0.2 2,089 11 0.5%技術指導(E-4) 230 0 224 6 2.6%専門職業(E-5) 551 0 531 20 3.6%芸術興行(E-6) 4,194 0.4 2,785 1,409 33.6%特定活動(E-7) 9,240 0.8 8,480 760 8.2%船員就業(E-10) 5,392 0.5 4,269 1,123 20.8%研修就業(E-8) 336 0 0 336 100.0%非専門就業(E-9) 207,402 17.6 160,007 47,395 22.9%訪問就業(H-2) 304,833 25.8 300,982 3,851 1.3%

 注:網掛け部分が外国人労働者。 出所:法務部[2010]『出入国・外国人政策統計月報』より作成。

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6695)

Ⅲ 雇用許可制の特徴と推進力

 雇用許可制の制度については,宣元錫[2006]や労働政策研究・研修機構[2007]などで紹介されているので,簡単に述べるにとどめ,導入の推進力や最近行われた改正のポイント,雇用許可制による外国人労働者の動向について述べていくことにする。

1.雇用許可制の基本原則と概要 まず雇用許可制の基本原則8は,労働市場補完性の原則と均等待遇の原則である。前者は韓国人労働者を優先して雇用するために,①労働市場テスト,②事業場移動の規制(3回まで),③賃金ダンピング防止などを行う。後者は外国人労働者に対する差別を禁止するものであり,最低賃金制,労働三権,国民年金,健康保険,雇用保険,労働災害補償保険などの適用が受けられるというものである。 雇用許可制度の概要は図表5のとおりであるが,まず韓国政府とフィリピン,タイ,インドネシアなど15ヶ国政府との間で二国間協定(MOU)を締結し,送り出し機関,受け入れ機関ともに政府系機関である点,G2G(政府対政府)である点が,民間機関・ブローカーが介在する研修生制度とは大きく異なっている。毎年外国人政策委員会が外国人労働者の受け入れ人数を決定するクォータ制をとっている。また受入業種もポジティブリスト方式で限定されている。労働市場補完性の原則にのっとり,労働市場テ

スト(求人努力)をしても韓国人労働者を採用できなかった使用者(中小企業)に対し外国人労働者の雇用を許可する制度である9。他方送り出し国の労働者は事前に登録の上,韓国語試験を受け,合格者のみが事前教育を受け,企業と雇用契約を結ぶことができる。また先述のように労働法や保険の適用など韓国人労働者と同じ待遇が原則である。 以上のような非専門就業ビザ(E-9)による一般雇用許可制に加えて,韓国系外国人(在外同胞)を対象とする特例雇用許可制がある。これは中国やCIS諸国(旧ソ連地域)に居住する韓国系外国人に対し5年間有効,1回最長3年間滞在可能な訪問就業ビザ(H-2)を発給する制度である。既存の訪問同居または非専門就労ビザで入国した場合,および入国を希望する満25歳以上の中で一定の要件を満たした場合に,訪問就業ビザに変更することができる。2007年3月に,この訪問就業制が施行され,韓国系中国人(朝鮮族)が急激に増加した。彼らには,事業場の移動や出入国の制限がないことに加え,サービス業,建設業での就労も認められているなど優遇されている。

2.雇用許可制改正のポイント 「外国人勤労者の雇用等に関する法律」はこれまで5回改正され,ワンストップサービスや韓国系中国人の雇用条件が緩和されるなどしてきた。 2009年10月に行われた第5次改正(2010年4月施行)のポイントは,第一に,労働契約の期間を1年単位の繰り返しの契約から3年(追加2年)に変更して,在留期間の範囲内で,当事者間で決定することができること。第二に,外国人労働者は在留期間

(3年)が満了すると1度出国し,1ヶ月後に再入国するという手順を踏まなければならなかったが,使用者が労働部に再雇用申請を行えば最長で5年間継続勤務できるようになったこと。第三に,事業所の変更時の求職活動期間が2ヶ月と短いことが外国人労働者支援団体から批判されていたが,3ヶ月に延長されたことである。ただし最大の争点であった事業場の移動回数3回という条項の変更はなかった

(図表6)。

3.雇用許可制導入の背景と推進力 この雇用許可制は,8年間にわたり,数度立法請願がなされたものの,中小企業協同組合中央会などの激しい反対により,立法化できなかった10。よう

送り出し機関(政府系機関)

受け入れ機関(雇用安定センター 韓国産業人力公団)

送り出し国韓国

MOU締結クォータ制(総量規制)

マッチング

使用者(中小企業)

登録韓国語試験事前教育

雇用契約

1年更新から3年へ

(フィリピン,モンゴル, スリランカ,ベトナム,タイ, インドネシアなど15ヶ国)

労働市場 テスト(求人努力)

雇用許可

労働者

図表5 雇用許可制の概要

出所:JCLU編[2010]21ページ,図12を元に加筆し作成した。

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6696)

やく雇用許可制が導入された背景として第一に挙げなければならないのが,産業研修制の問題点が非常に深刻だったということである。まず送り出し過程が民間機関やブローカーによって担われていたため不正が蔓延し,外国人労働者が負担しなければならない平均費用は3,509ドルと高額であった。そのため賃金の高い仕事を求めて不法労働者化(事業場離脱)が多発した。2002年では外国人労働者の8割が不法就労者であり,産業研修生に限定しても5割~6割が不法労働者化した。さらに賃金不払いは2001

年では36.8%の外国人労働者が経験し,人権侵害(暴力,差別,パスポート取り上げ)も横行した11。 第二に,少子高齢化による労働力不足である。韓国の合計特殊出生率は1.22人であり,世界最低水準である。他方,平均寿命も延び2050年には高齢者の割合が34.4%を占めると予想されている。さらには大学進学率が8割を超え,急速に高学歴化が進む中で,中小企業が担っている3D(3K)業種では慢性的な労働力不足が起きている。2002年当時の労働力不足率は9.36%であった12。特に,染色,皮革,縫製,金型などの業種では深刻である。中小企業が外国人労働者を雇用する理由は,韓国人労働者の求人困難が57.8%で最大の割合を占め,次に人件費節減(35.8%),人事管理の便利性(5.0%),労組問題の心配不用(1.5%)などの順序になっている13。これらの単純労働分野は韓国人労働者との競合関係が比較的弱いため,政府も外国人労働者の活用を進めている。

 続いて,なぜ韓国が雇用許可制を導入できたのか,その推進力について考えてみよう。まず金大中,盧武鉉大統領による「リベラル」政権が2期10年という長期にわたって続いたということの意義は大きい。これらの政権は基本的に人権重視の政権と考えられており,外国人労働者の人権に対する配慮も以前の政権に比べて大きく,それを政策として策定・実施するうえで大統領制というシステムは有効に機能したといえる。次に,政権,マスコミ,法曹界,市民団体における民主化運動世代(386世代14)のネットワークにより,市民運動がマスコミによって増幅され,国民運動となり,政策実施につながっていった。最後に,1997年の通貨危機以降,「日本に学べ」路線が弱くなり,グローバル・モデル指向が強くなっていたことも推進力として指摘できる。貿易・資本のグローバル化にとどまらず,ヒトの移動のグローバル化に関しても,受け入れ容認へと国民の意識が変化していたのである。

4.雇用許可制による外国人労働者の特徴 雇用許可制は,非専門就業ビザ(E-9)による一般雇用許可制(以下一般)と,在外同胞を対象とする訪問就業ビザ(H-2)による特例雇用許可制

(以下特例)に分けられる。まず人数を見ると,一般が23万5,836人,特例が31万1,040人の計54万6,876人であり,外国人労働者の75%を占めている(図表7)。性別は,一般:男性90%,女性10%,特例:男性50.7%,女性49.3%となっている。

図表6 雇用許可制改正のポイント

改 正 前 改 正 後

労働者の選抜方法 韓国語試験 韓国語試験+(任意)の資格要件の評価(産業人力公団)

労働契約の期間 1年単位の繰り返しの契約 3年(追加2年)在留期間の範囲内で,当事者間で決定する。

再雇用の要件 3年+1ヶ月出国+3年 3年+2年未満(出国前使用者の要求)

事業所の変更の理由 事業主の契約の解除,休業,廃業など

労働契約条件の違い,労働条件違反など不当な処遇と労働契約の維持が困難な場合は,追加する。休業,廃業や外国人労働者の責任ではない事由により,その事業場で労働を続けることができなくなったと認められる場合には,事業場の変更の回数に含まれないようにする。

事業所の変更時に求職活動を可能期間 2ヶ月 3ヶ月(業務上の災害,疾病,妊娠などの場合は,その事由がな

くなった日からの期間の計算)

外国人労働者の権益保護 外国人労働者の権益保護協議会の新設

委員会 外国人労働者雇用委員会 外国人労働者政策実務委員会

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6697)

 次に図表8で国籍別の人数を見ると,当初スタート時にはMOU締結国は6ヶ国であったが,その後数を増やし,現在15ヶ国となっている。一般の場合,最も多いのはベトナム(26.4%)であり,続いてタイ(14.3%),フィリピン(14.9%),インドネシア

(12.5%)の順となっている。ベトナム人は,韓国人と国民性が似ており,勤勉であるため企業の希望

600 ,000

500 ,000

400 ,000

300 ,000

200 ,000

100 ,000

0

2004 2005 2006 2007 2008 2009

特例雇用許可制

一般雇用許可制

図表7 外国人雇用許可制の推移(累積数,単位:人)

注:12月末基準出所:韓国雇用情報院(EPS)資料より作成。

図表8 外国人労働者(雇用許可制)の国家別雇用動向(単位:人,%)

2004 2005 2006 20072009

構成比 不法滞留者 不法滞在率就業者数累計 7,095 67,568 146,767 291,333 546,876一般雇用許可制 累計 3,167 34,822 63,802 97,489 235,836

小計 3,167 31,659 28,976 33,687 168,430 100.0 11,688 6.9ベトナム 704 8,619 5,712 11,507 44,473 26.4 2,997 6.7フィリピン 832 5,308 8,434 5,928 21,687 12.9 953 4.4タイ 558 5,964 6,746 5,798 24,119 14.3 2,009 8.3モンゴル 500 4,433 4,703 2,642 10,932 6.5 2,269 20.8インドネシア 359 4,361 1,215 4,343 21,119 12.5 1,523 7.2スリランカ 214 2,974 2,166 2,194 13,190 7.8 291 2.2中国 - - - 403 7,009 4.2 552 7.9ウズベキスタン - - - 275 7,024 4.2 480 6.8パキスタン - - - 365 4,262 2.5 64 1.5カンボジア - - - 198 5,067 3.0 406 8.0ネパール - - - 34 4,087 2.4 29 0.7ミャンマー - - - - 1,874 1.1 27 1.4キルギスタン - - - - 523 0.3 49 9.4バングラデシュ - - - - 2,996 1.8 39 1.3

特例雇用許可制

小計 3,928 28,814 50,223 110,879 308,024 100

韓国系中国 3,920 28,778 50,139 110,343 301,977 98.0韓国系ロシア 5 7 7 214 1,998 0.6CIS国家など 3 29 77 322 4,049 1.3

 出所:韓国雇用情報院EPS(外国人雇用管理電算システム)より作成。

が多く,クォータが増えているという15。特例の場合は,韓国系中国人(朝鮮族)98%が圧倒的に多い。 続いて,業種別では,一般は製造業が86.6%と大部分を占め,次いで建設業(7.6%)である。特例は韓国語が話せるためサービス業[飲食店,家事サービス,清掃]への就業が許可されており,36%と一番比率が高い。次いで,製造業(33%),建設業(29%)の順となっている(図表9)。 最後に,事業体規模別分布をみると,もともと労働力不足の中小企業に限定されているが,その中でも零細企業に集中している。一般は30人未満73%,特例の場合,飲食店などが多いため 30人未満が83%とほとんどであり,中でも5人未満が50.2%を占めている。

Ⅳ 雇用許可制の評価

 施行後5年を経過した雇用許可制を巡っては,労働部では,「中小企業の労働力不足や不法滞留が減少し,合法的フレームの中で制裁が可能になったため人権侵害が少なくなった」16と評価している。同様に産業人

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6698)

力公団でも「外国人労働者に対する人権保障,送り出しプロセスでの不正の減少など,ILOからもよくできた制度であると評価されている」17と自信を見せている。 これに対し「移住労働者差別撤廃と人権労働権実現のための共同行動」は2009年8月に共同会見を行い「雇用許可制は,移住労働者の権利を大幅に制限し,事業主の権限を保護するだけの偽善的な制度である」18と批判している。Amnesty International[2009]も「雇用許可制による機能強化にもかかわらず,数多くの移住労働者が法律上の権利がほとんどなく,人権侵害に対する補償を受けることができない。そのため人権侵害や不当な扱いという悪循環が続いている」19と指摘している。本節では文献や統計およびインタビュー調査をもとに,雇用許可制を評価し,その成果と問題点を明らかにする。

1.雇用許可制の評価基準 評価に当たっては,誰の立場から評価するか,そしてどのような評価基準を採用するのかが重要である。評価する立場が外国人労働者なのか使用者なのかでは,評価が180度異なる可能性がある。利害関係者としては,①外国人労働者,②使用者,③韓国人労働者,④送り出し国などを想定できるが,われわれは特定の立場に立脚せず,雇用許可制という「制度」「政策」評価として,韓国の経済・社会発展にとってプラスかどうかという「公益性」の見地から評価を試みたい。評価基準として採用するのは,大きく

分けて二つである。第一に,産業研修制の問題点(送り出しプロセスでの不正,不法外国人労働者化,人権侵害など)を解決しているか。第二に,雇用許可制の基本原則が守られているか。すなわち制度の骨格である均等待遇の原則(差別禁止)と労働市場補完性の原則(韓国人優先雇用の原則)が厳守されているかである。

2.産業研修制の問題点を解決しているか①   送り出しプロセスでの不正の防止

 産業研修生制度時代は民間組織・ブローカーによって運営されていたため,送り出しプロセスは不透明で不正が横行していた。送り出し費用は2001年調査によると産業研修生は3,500ドル,不法労働者4,872ドルと高額であり,1万ドル以上を支払った外国人労働者も10%存在していたといわれている。多くは借金をし,それを返済したうえで,貯蓄をしなければならないという初期条件であった。当時研修生と不法労働者の賃金格差は時給で研修生3,800ウォンに対し不法労働者4,700ウォンであったため,少しでも高い賃金を求めて不法労働者化した。 雇用許可制以後は送り出し国,受け入れ国ともに政府,公共機関が主体となり,クォータも外国人政策委員会が決定するので,民間機関,ブローカーが排除されることになった。さらに政府は不正を行った国に対してはクォータを削減・停止するなど対抗措置をとっている20。これにより概ね透明性が向上したということができる。調査によれば送り出しプ

図表9 外国人労働者(雇用許可制)の業種別雇用動向(単位:人,%)

2004 2005 2006 2007 2008 2009 構成比就業者数累計 7,095 67,568 146,767 291,333 492,311 546,876

一般雇用許可制

累計 3,167 34,826 63,802 97,489 172,513 235,836小計 3,167 31,659 28,976 33,687 75,024 49,757 100

製造業 3,124 31,115 28,182 30,181 65,871 43,075 86.6建設業 0 84 42 740 3,326 3,796 7.6農畜産業 43 419 700 2,298 4,482 1,708 3.4サービス業 0 41 52 48 48 32 0.1漁業 0 0 0 420 1,297 1,144 2.3

特例雇用許可制

累計 3,928 32,742 82,965 193,844 319,798 311,040小計 3,928 28,814 50,223 110,879 125,954 73,406 100

製造業 9,426 29,835 41,774 24,313 33.1建設業 2,514 18,072 20,804 24,850 24,926 21,308 29.0農畜産業 559 2,141 2,672 852 1.2サービス業 1,414 10,742 19,422 53,748 56,155 26,732 36.4漁業 0 0 12 305 427 171 0.2

出所:韓国雇用情報院(EPS:外国人雇用管理システム)より作成。

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6699)

ロセスが公正・普通という回答が7割を占めている。もちろん10%は公正でないと回答しているし,労働契約と労働条件が違うという回答も6割を占めており21,課題は残っている。 次に送り出し費用に関しては,2001年の3,500ドルから2009年には500~1,200ドルに激減している

(図表10)。他の中小企業研究院の調査でも2001年453万ウォンから2008年155万ウォンへと3割程度に低下している。国際比較でも,シンガポールは1万ドル,オーストラリア,アメリカ,ヨーロッパは1万5,000ドルから2万ドルかかるのに対し,韓国はその1割程度である22。初期費用が少ないため多くのお金を儲けることができるので,日本などに比べると人気が高く23,募集5万人に対し,40万人の希望者がいるという。 ただし費用については,市民団体の調査と乖離がある点に注意が必要である。外国人移住・労働運動協議会(2009年,533人対象)の調査では,送り出し費用の平均は2,634ドルであり,特にベトナム人6,105ドルと高くなっている。ベトナムでは公務員へのわいろがあるといわれている。また慶南外国人労働者相談所長の調査(2009年,400人対象)でも,平均233万ウォン(最低10万ウォン,最高1,500万ウォン)と産業人力公団の調査よりも高めである。またわいろを払ったと回答した者は37.1%に上っている。ただし雇用許可制以外の外国人労働者の場合平均593万ウォン(最低3万ウォン,最高3,000万ウォン)であり,送り出し費用が半分になったのは成果と言える24。 最も送り出し費用が高かったベトナムの海外就業

センター所長のPhan Van Minh氏は国家間の送り出し過程の透明性の向上,送り出し費用の削減,外国人労働者の安定的な地位などの点で,先進的な外国人労働者システムであると評価している25。 以上,基本的に送り出しプロセスでの不正は減少し,送り出し費用も低下していることは評価できる。ただし例外は一定程度存在するため,一層のモニタリングが必要であると考えられる。

3.産業研修制の問題点を解決しているか②   不法外国人労働者の削減

 産業研修生制度時代は外国人労働者の8割は不法労働者であり,産業研修生に限定しても5割が不法労働者化していた(2002年)。雇用許可制導入以降は不法労働者の総数に大きな変化はないが,割合は低下している。すなわち2004年8月の約18万人

(44.7%)から2010年3月には17万8,000人(15.1%)となっている(図表2)。これは雇用許可制の問題点というよりは,図表4より明らかなように,大多数は短期ビザで入国した者と雇用許可制以前からの蓄積である。一般雇用許可制(E-9)で入国した16万8,430人中,不法労働者化したのは1万1,688人

(6.9%)である。産業研修生の時代に5割だったことを考えれば大幅に改善されているといえる。事業場離脱率も2009年上半期3%と低水準である(図表11)。2ヶ月という求職期間における事業場変更の失敗によるケースも少数あるが,無断離脱したケースが大部分といえる。実際,外国人労働者の事業場変更の成功率は高く,2009年3月までの申請者13万1,416人のうち,変更成功者は91.7%,待機者は2.3%

図表10 国別の送出し費用(単位:ドル)

送出し費用 韓国語能力試験 健康診断費 事前教育費 旅券・ビザ 航空料 その他 非公式費用フィリピン 466 133 16 15 52 251 94

タイ 642 19 80 146 38 361 340

スリランカ 1,367 19 28 111 120 1,091 227

ベトナム 792 63 50 113 53 513 733 3,000モンゴル 617 19 40 116 50 392 400

カンボジア 1,027 29 83 119 159 637 165

パキスタン 1,114 24 41 84 298 667 278

ウズベキスタン 1,245 23 24 136 281 781 512

キスキス 699 37 36 96 50 480 76

バングラディシュ 743 30 44 187 51 431 429

ネパール 862 17 55 70 170 550 134

ミャンマー 1,050 66 400

 出所:韓国産業人力公団[2009]「一般外国人勤労者{E-9}モニタリング 2/4分期 結果報告」16ページ。

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6700)

であり,失敗(出国3%,不法滞在3%)は数%である26。 しかしここで注意が必要なのは,2010年から一転して不法労働者が急増していることである。2010年3月までに一般雇用許可制で入国した20万7,402人中,4万7,395人が不法労働者化(22.9%)した(図表4)。その原因として,近年クォータが削減されており,契約期間の終了時に再契約できなくなっていることが考えられる。

4.均等待遇の原則および外国人労働者の人権は守られているか 産業研修生時代は形式的には研修生であるため,最低賃金未満の賃金で長時間労働を行っていた。また労働者としての権利も保障されず,賃金不払いだけでなく,パスポート・外国人登録証の取り上げ,暴行といった人権侵害のケースも数多く報告されていた。雇用許可制になって,韓国人労働者との均等待遇の原則が形式的には認められているが,実態はどうなっているのであろうか。これはインタビュー先によって評価が分かれる点であった。 第一に,労働時間に関して言うと,依然として長時間労働である。1日12時間以上が41.3%を占め,うち13時間以上も9.7%を占めている。勤務形態も昼夜交替が39.8%を占め,肉体的に負担が多い労働条件である(図表12)。特に,農業,漁業では休日や休憩時間など勤労基準法が適用されないため長時間労働になっているという27。 ただし外国人労働者も低賃金に加えてウォンの下落のため,できるだけ長時間働くことを好み,外国人労働者を引き留めるため,不必要な残業をさせて手当を上乗せする事業者もいるという28。 第二に,賃金水準も低いレベルにとどまっている。法律的には最低賃金以上であるため,最低賃金すら保障されていなかった産業研修生に比べれば,相対的に改善しているとはいえる。しかし物価の上昇に比べれば最低賃金の引き上げは抑えられ,平均賃金と比べれば低水準のままである29。2010年の最低賃金は,時給4,110ウォン(約310円)であり,週44時間(月226時間)でも,92万8,860ウォン(約7万円)にしか過ぎない。これは韓国の平均賃金の5割弱である。現在256万6,000人の労働者が最低賃金の適用を受けているが,外国人労働者もこのワーキングプアの一角を担わされている。 国税庁によれば2008年の所得を申告した外国人労

働者34万4,583人の賃金総額は4兆5,383億ウォンである。1人当たりの平均年間賃金は1,317万ウォン

(約101万7,092円)で,前年の1,356万ウォンより39

万ウォン(2.9%)減少した。これは韓国人労働者下位10%の1,460万ウォンよりも143万ウォン低い30。さらに残業手当がつかないケースやこれまで慣例的に使用者負担だった宿泊費などが給与から控除されたりするケースが増えてきている。また多くは技能が高まっても最低賃金のままである。 この賃金格差について,政府系の報告書では,労働生産性の格差によるものであり,問題がないと評価している。すなわち韓国人労働者の労働生産性を100とした場合に,外国人労働者は82.8である31。このデータの根拠についてインタビューしたところ,100人程度の使用者に対する主観的なアンケート結果であった32。もちろん韓国語によるコミュニケーションの問題があることは事実だが,単純作業が中心であり,少なくとも3年間という契約期間を考慮するならば,韓国人に比べて2割も労働生産性が低いということは根拠が薄弱である。 また賃金格差よりも外国人労働者にとって深刻な

200 ,000180 ,000160 ,000

80 ,00060 ,000

0

2004 2005 2006 2007 2008 2009年1…

140 ,000120 ,000100 ,000

40 ,00020 ,000

6 .00

5 .00

4 .00

3 .00

2 .00

1 .00

0 .00

総人数離脱者

離脱率(右目盛り、%)

総人数離脱者離脱率(右目盛り、%)

図表11 一般雇用許可制の離脱者数と離脱率の推移

出所:『東亜』2009年8月22日。

図表12 外国人労働者の労働時間と勤務形態             (単位:人,%)

回答数 シェア 回答数 シェア8時間以下 32 9.4 昼間勤務 181 54.89時間 22 6.4 夜間勤務 14 4.110時間 51 15 昼夜交替 135 39.811時間 37 10.9 無回答 7 2.112時間 104 30.613時間以上 33 9.7無回答 58 17.1

 出所:外国人移住労働協議会編[2009]より作成。

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6701)

のは,2008年後半からのウォンの暴落である。2008

年1月の1ドル=950ウォンから,2009年2月には1ドル=1,500ウォンになったためドル建ての賃金は3割も目減りしてしまっている。これが残業時間を増やす誘因となっている。 続いて賃金不払いに関しては,産業研修生の時代

(2001年)には,賃金不払いを経験した労働者の割合が36.8%であったのに対し,2007年には9%に低下しており,改善がみられる33。ただし2008年以降の世界金融危機により,倒産が増加し,賃金不払いが増えている。 第三に,外国人労働者は3D業種で雇用されているため,韓国人労働者に比べ,産業災害の被害を受けやすくなっている。外国人労働者の産業災害率は2006年0.67%から2008年0.7%へと増加傾向にある。2007年から2009年の3年間で1万4,419人が被害を受け,内305人が死亡している。2009年は5,231人が被害を受け,2007年に比べ31.8%増加している34。 また産業災害補償保険に加入していないケースや使用者が保険料の引き上げを恐れて,公式的に届け出ず,個人的に治療を勧めるケースが多い。産業災害にあった人の35.2%は本人が治療費を負担しなければならなかったという35。 さらに中小企業が多いため安全衛生管理も不十分であり,法的に義務付けられている健康診断の受診率は27%,安全教育は26.8%と低水準である。これに対しAmnesty International[2009]は外国人労働者たちが,3D業種で危険な労働をしているにもかかわらず,十分な教育や安全装置を提供されておらず,「使い捨ての労働者」として扱われていると批判している36。 第四に,保険制度についても,使用者の費用節減のために,韓国人労働者に対しては義務である雇用保険が外国人労働者に対しては任意事項に変更されてしまっている。このため強制加入時期であった2005年末までは,雇用保険料を支払った外国人労働者が約4万2千人いたが,任意加入に変わった現在は4,100人に激減している。これにより失業給付を受けた外国人労働者は18人に過ぎないという37。その他,使用者に義務付けられていた賃金滞納保障保険や出国満期保険も任意加入へと変更されている。 第五に,人権侵害に関しては,産業研修制時代は研修生たちの離脱防止のために,通帳,パスポート,外国人登録証の取り上げ(会社保管)が頻繁に行われた。

 雇用許可制導入後は,通帳に関しては,産業人力公団が入国時に行われる2泊3日の教育課程で通帳を作って外国人労働者に渡しており,使用者が通帳を取り上げることはほとんどなくなったという38。パスポートや外国人登録証に関しては慶南地域の外国人労働者を対象とした調査によると,雇用許可制になり,その割合は2005年の47.9%から2009年には25.8%に低下しており,改善はしている(図表13)。しかし法律違反であるにも関わらず,依然として4分の1の外国人労働者の人権が侵害されていることは深刻な問題である。

0

10

20

30

40

50

60

2005 2007 2009

パスポート

外国人登録証

図表13 身分証の取り上げ(会社保管)    比率の推移(単位:%)

注:慶南地域の外国人労働者対象のアンケート調査。雇用許可制以外の外国人労働者も含んでいる。2007年192人,2008年126人,2009年400人対象。

出所:李チョルスン[2009]『2009移住労働者労働実態調査』より作成。

図表14 外国人労働者に対する暴行(単位:人,%)

暴 行 被 害 人 数 シェアある 46 11.5ない 304 76

無回答 50 12.5加害者社長 5 10.4管理者 12 25

韓国人労働者 26 54.2外国人労働者 1 2.1理由作業ミス 8 16.7韓国語が理解できないから 10 20.8外国人だから 18 37.5不明 3 6.3

出所:李チョルスン[2009]『2009移住労働者労働実態調査』を整理。

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6702)

 また同じ調査によれば,400人中46人(11.5%)の外国人労働者が職場内で暴行を受けている。加害者は韓国人労働者26人(54.2%),管理者12人(25%)であり,理由は「外国人だから」37.5%,「韓国語を理解できないから」20.8%,「作業ミスのため」16.7%の順である(図表14)。もちろんこの調査はアンケート対象者400人に産業研修生など198人を含んでいるため,雇用許可制の直接的評価に結び付けることはできないが,雇用許可制により入国した202名のうち,22名(11%)が暴行の被害にあっている点を考えると,雇用許可制になって人権侵害がなくなったと見ることはできない。 もちろん事業主の立場からの反論もある。チェナクミョン氏は,「雇用許可制施行5周年記念セミナー」で,コミュニティとNGO団体の影響で,雇用許可制に対する認識が高まり,外国人労働者は韓国人労働者との生産性による差別に敏感に反応し,毎年給与引き上げなどを要求している。賃金水準も変わらないし,食事や設備など使用側の思いやりに対する認知が不十分であると反論している39。 他方,特例雇用許可制によって入国し,飲食業などで働く韓国系中国人(朝鮮族)の女性たちは性暴行の危険にさらされている。彼女らは宿泊費と交通費を節約するため店で寝泊りするため,店主や男性従業員からのセクハラやレイプの被害を受けやすいといわれている。「在中同胞の家」のキム・ヘソン代表は「最近女性在中同胞33人にアンケート調査したところ,この内19人が性的暴力を経験したことがあると答えた」と述べている。また性暴力を避けようとして墜落死した事件も起きている40。 さらにあからさまな暴力は減ったとはいえ,意識の面では依然として排他的で,特に有色外国人に対しては差別意識があるように思える。2007年に国連人種差別撤廃委員会(CERD)は韓国に対し「単一民族を強調するのは人種差別的な行為になりうることから,政府が人種や他国から来た人への差別を根絶するため率先すべきだ」と勧告した。その後2009

年には「汚い,臭い」と言った韓国人を,インド人教授が侮辱罪で訴えた事件が話題を呼び,人種差別を規制する法律を制定すべきだという議論がなされ始めている41。 最後に,雇用許可制の改正を巡って大きな論点となったのが,事業場の移動制限の問題である。外国人労働者や支援団体は事業場の移動制限が3回までであり,かつ使用者の許可が必要であることによっ

て,外国人労働者の人権が著しく侵されていると主張し,その撤廃を求めている。確かに,世界金融危機以降の企業の経営難で解雇され,在留資格を失い,不法労働者化するケースが増えている。さらには入国時に結んだ労働契約と労働条件が違うケースが6割に達するという調査結果もある。その際,入国後3ヶ月以内に事業場変更を行う外国人労働者が22.7%にも上っている。3回ルールの下では,2回変更してしまうと,3回目の職場での労働条件が悪くても,不法労働者になりたくなければ,我慢せざるを得ない。そのため雇用許可制になっても産業研修制と同様の人権侵害が起こってしまうのである。

5.労働市場補完性の原則は守られているか 不法労働者を含めた外国人労働者総数は約78万人であるが,労働力人口からみると3%程度とそれほど大きな割合を占めていない。また一般雇用許可制と特例雇用許可制では影響が異なっている。まず一般雇用許可制による外国人労働者は約23万人と規模があまり大きくなく,労働力不足率が高い3D業種の製造業中心に就労していることに加え,事業所変更が3回に限定されているため韓国人労働者との競合は少ない。産業研修制当時(2002年),製造業の労働力不足率9.36%であったのに対し,雇用許可制導入以降は,2004年5.06%,2005年4.35%,2006年3.78%,2008年2.58%と減少しており,補完的役割を果たしているといえる42。 また2009年末の失業者数が88万9,000人(前年比15.5%増)であったにもかかわらず,3D業種での労働力不足が深刻で,ミスマッチ現象が起きている。中小企業中央会の調査(2010年2月,中小製造企業1,211社対象)によれば,増員する必要のある労働者数は1社当たり平均4人であり,内訳は外国人が2.7人,韓国人が1.3人と外国人の需要が韓国人を上回っている。全体で,外国人労働者の不足数は6万1,600人に上るとみられている43。外国人労働者を雇用している企業の80.4%が「韓国人の就業忌避や離職率の高さを考えると,外国人労働者枠を韓国人で補うことは不可能」と回答している。また別の使用者に対するアンケートでも89%が「外国人労働者は労働市場を補完している」と回答している。 他方,31万人いる特例雇用許可制では代替関係があるといわれている。韓国語を話せる韓国系外国人は,サービス業や建設業での就業が認められていることに加え,事業所変更が自由であるため,労働市

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6703)

場での代替現象が発生している。特にサービス業,建設業における韓国人労働者との競合が顕著に表れ,賃金水準の抑制など労働条件を低下させる一因ともなっている。建設業では,2004年下半期と2008

年上半期を比べると,韓国人の日雇い労働者の割合が40.1%から36.9%に低下したのとは対照的に,外国人労働者は5.2%から9.3%に上昇している44。インタビュー調査によれば,1990年代における建設業の日当は7~10万ウォンであったが,現在は10年前よりも少ない5~8万ウォンの日当である。この原因を韓国人は外国人労働者が増加したため賃金が減少したと批判しているという45。このため韓国人と韓国系外国人との間で摩擦が頻発している。 これに対して2009年から韓国系外国人の建設業への就職を規制し,就職の登録と教育を経て,就業証明書の取得を義務化する「建設就職登録制」を実施するとともに,建設業のクォータを6万5千人に縮小している46。 以上,一般雇用許可制においては労働市場補完性の原則は守られているが,特例雇用許可制については原則が侵されているといえよう。これの示唆するところは,人権団体が主張する事業場移動の自由化や労働許可制は,韓国人労働者との競合を生み,賃金や労働条件を引き下げる可能性があるということである。外国人労働者の人権と韓国人労働者の優先的雇用という2つの原則をいかに両立するのかが,残された重要な課題である。

Ⅴ 李明博政権の外国人労働者政策

 最後に,2008年以降の李明博政権の外国人労働者政策の特徴をまとめておこう。特徴としてまず世界金融危機に対応して韓国国内の外国人労働者を削減する方向性を出している点,次に,人権よりも国際競争力を重視し,単純労働者から専門職労働者へのシフトを図っている点,また単なる外国人労働者政策ではなく,結婚移民を含めた統合政策へと発展させている点である。

1.世界金融危機への対応 李明博政権は2008年以降の世界金融危機に対応する形で雇用許可制の第一原則,すなわち韓国人労働者優先の原則にのっとり,景気のバッファーとして外国人労働者の総数を減らす方向性を打ち出した47。外国人労働者政策委員会は,クォータを2008年の13

万2千人から,2009年には3万4千人へと例年の

25%に抑え,経済危機から回復を見せてきた2010年においても2万4千人に限定している。また2008年12月には外国人労働者の代わりに韓国人を雇用すれば,設備投資の50%補助や1人当り120万ウォンの支援をおこなうなど,韓国人労働者を優先する政策を実施した。 韓国国内が不景気になったことで外国人労働者のおかれた環境は悪化している。特に,これまで慣例的に使用者負担だった宿舎費と食費が賃金から差し引かれることにより,外国人労働者の受け取る金額は20~30万ウォン減少してしまった。これにより平均して最低賃金を下回る外国人労働者も出てきている48。 さらに2008年3月には「不法滞留対策5ヶ年計画」により不法滞在者を2012年までに半減する方針を打ち出し,「人間狩り」と揶揄されるような持続的で強力な取り締まりを実施した。強制退去者は2007年の1万8,462人から2008年には3万576人へと65%増加した。この出入国管理事務所の職員と警察による暴力的な取り締まりにより,多くのけが人が出ていると市民団体からの批判が強まっている(写真1)。インタビュー調査によれば,以前は取締まり期間が決められていたが,現在は一年中行われている。また以前は組織の仕事だったが,個人の歩合になって評価や昇進の対象になるため,みんな一生懸命取り締まりするようになった。特に今年は,G20の会議があるため,取り締まりが強くなった。まるで外国人労働者を犯罪者扱いしているようで,李明博政権の人権意識が現れているという49。

出所:「レイバーネット」2009年4月10日,原出所:ヂュンド日報映像ニュース。http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/issue/migrant/1239561317234Staff/view

写真1 出入国管理事務所摘発員による    女性外国人労働者への暴行

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6704)

2.外国人労働者政策から統合政策へ 李明博政権は単純労働者に関しては概ね雇用許可制によって解決済みという方針であり,今後は国際競争力という観点から専門職労働者に政策の力点が移っていくようである。 また外国人労働者政策から,より広い外国人政策がすすめられている。とくに①外国人処遇基本法

(2007年5月)や②多文化家族支援法(2008年3月)など統合政策へとシフトしている。外国人労働者だけでなく,より広く外国人との多文化共生を図っていくことは肯定的に評価できる。しかし他方で外国人労働者に対する政策的関心も支援も低下している点は問題であると考える。これまで考察してきたように,雇用許可制は産業研修制に比べれば,改善された制度であるが,人権の点からみても依然として課題が残る制度である。したがって引き続き政策的対応が求められる分野である。 インタビュー調査をしたほぼすべての団体で,李明博政権は外国人労働者政策に関心が弱いという声が聞かれた。たとえばソウル外国人労働者センターでは多文化共生の中,移住女性については積極的になったが,外国人労働者については政府の支援はそれほど増えておらず,軽視されている印象がある,政策の一貫性がないとコメントしている50。また外国人移住・労働運動協議会では,李明博政権以降,言論報道が保守的に変わり,未登録労働者(不法就労者)たちは犯罪者と誤解されて悪いイメージが上昇した。合法的労働者に対しても,すでに法的保障があるのに,これ以上何が必要なのかと言う態度であり,人間としてではなく労働者としてだけ見ているようであるとコメントしている51。 外国人労働者を支援している市民団体への補助金は「盧武鉉政権の遺産」とみなされて減額あるいは打ち切られているという。たとえば女性部は2009年10月「1366 移住女性緊急電話」事業を受託運営してきた移住女性人権センターに公文書を送り,契約解約を通知した。家庭暴力など緊急で差し迫った状況に置かれた移住女性に対し相談・支援するこの事業は2006年から移住女性人権センターなど民間団体が1年単位で契約を更新して受託運営してきた。ハン・グクヨム代表は「女性部では政府が直接運営するという意を表明しているが,長い間の経験とネットワークを持った民間団体を排除すればむしろ混乱だけを引き起こし効率は落ちるだろう」と述べている52。

 先述したように中東での建設に副社長として従事した李明博大統領は,韓国の海外出稼ぎが盛んな時期の主人公の一人であったといってもよい。韓国人は1977~80年だけで死傷者1万415人(うち死者443

人)を出す53という過酷な環境の中,家族や国のために働いた。現在「圧縮的国際労働力移動」で立場が逆転したが,単純労働者を「使い捨て」にするのではなく,もっと中東で学んだ経験を活かしていくことが求められている。この点で2007年にドイツ在住の韓国人たちが,自分たちの経験をもとに,韓国内の外国人労働者の処遇改善を求めていることは評価に値する54。

お わ り に

 韓国は,日本に先駆けて外国人研修生制度を廃止し,雇用許可制に移行した。この雇用許可制は依然として,低賃金・長時間労働,人権侵害などの問題点も残っているが,概ね成功していると評価できる。第一に,産業研修制の問題点を解決しているかという基準では,G2Gにしたことにより送り出しプロセスでの不正は防止され,透明性も向上している。また送り出し費用も低下した。さらに不法労働者数は変わっていないが,比率は低下するとともに,雇用許可制に起因する不法滞在は研修制度に比べ格段に少ない。 第二に,均等待遇の原則と人権が守られているかという基準では,賃金不払いなどは減少したものの,低賃金長時間労働,安全対策の不備などは変わらず,韓国人労働者と均等待遇とは言い難い。ただし身分証明書の取り上げ,暴行などあからさまな人権侵害は減っているし,市民団体による啓蒙活動もあり,賃金や労働条件に対する権利意識は高まっている。 第三に,労働市場補完性の原則が守られているかという基準からみると,一般雇用許可制では補完的であり,韓国人労働者との競合は起きていない。しかし特例雇用許可制では,建設業,サービス業を中心に代替現象が起き,賃金水準や労働条件へ否定的影響を与えている。 したがって,依然として問題点が多く,決してベストの政策であるとは評価できないが,以前の産業研修制や日本の外国人研修生・技能実習生制度に比べれば,改善された制度であるということができる。 次に,韓国における「圧縮的国際労働力移動」の中で,この雇用許可制はメルクマールとなりうる。すなわち1988年の送り出し国から受け入れ国への転換とい

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6705)

う画期に次いで,2004年の雇用許可制導入は,人権無視の不法労働者,研修生から,韓国人労働者とほぼ同等の権利を保障された合法的労働者への転換を意味している。50年という圧縮された期間の中で,韓国政府はスピーディに制度革新を進めるとともに,韓国社会も外国人との共生に向けて転換しつつある。この韓国の「圧縮的国際労働力移動」は国際的にみても特異なケースであり,開発経済学の観点からみても重要な論点を提供しており,今後のさらなる分析課題としたい。 最後に日本の外国人研修生・技能実習生制度について触れておこう。日本の外国人研修制度には,時給300円という低賃金,パスポート取り上げ,強制貯金,未払い賃金,人権侵害など様々な問題点があり,国際的にも「現代版奴隷制」と批判されてきた。国内外の批判を受けてようやく2010年7月に改正・出入国管理及び難民認定法が施行され,新しく「外国人技能実習制度」55が創設された。これにより外国人労働者に労働法が適用され,受け入れ企業に対する監督・支援機能が強化された点は評価される。しかし依然としてG2Gになっておらず,民間機関やブローカーの介在を許すシステムになっている。したがって外国人研修・技能実習生制度に代表される「日本モデル」を廃止し,

「韓国モデル」である雇用許可制を導入すべきであると考える。 さらに韓国は,雇用許可制にとどまらず,外国人参政権,統合政策など日本の一歩先を進んでいる。それは「私たちも人間です」とプラカードをあげて座り込んだ外国人労働者の声にきちんと向き合い,一緒に座り込んだ韓国の市民たちの力によるところが大きい。1970年代のまだ貧しかった自分たちの姿を重ね合わせ,共感と怒りを持って,外国人労働者とともに立ち上がった「市民力」にわれわれ日本人も学ぶべきではないだろうか。

謝   辞 本稿は福島県男女共生センター公募研究(「外国人研修・技能実習制度にかかわる男女平等の労働環境構築のための『アクションプラン』策定と派遣国の実態把握に関する国際比較・調査研究」)の研究成果の一部である。またインタビュー調査に応じてくださった皆様に対して改めて感謝の意を表したい。

参 考 文 献A.日本語文献天瀬光二[2006]「韓国,外国人労働者への新たなア

プローチ」『IMFJC』(283)。天瀬光二[2007]「韓国・台湾の事例から 特集 外国

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(2)。宣元錫[2007]「韓国の単純技能外国人労働者受け入

れ政策」。宣元錫[2007]「韓国の移住外国人と外国人政策の新

展開」『情報化・サービス化と外国人労働者に関する研究 Discussion Paper』(7)。

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総会資料集』。韓国産業人力公団[2009]『外国人雇用支援事業 構

成と創出ワークショップ』。韓国産業人力公団[2009]『外国人雇用支援事業 標

準プロセス業務指針』。韓国産業人力公団[2009]『一般外国人勤労者[E9]

モニタリング 2/4分期結果報告』。韓国産業人力公団[2009]『顧客(使用者)モニタリ

ング結果報告』。韓国法制研究院[2007]『外国人勤労者雇用制度の望

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外国人労働者政策における「日本モデル」から「韓国モデル」への転換 (6707)

1 韓国では外国人労働者の用語として,移民労働者(migrant worker),外国人勤労者(foreign worker),外国人力などの用語があるが,本稿では法律用語などを除き外国人労働者に統一して使用する。2 韓国では,市民団体を中心に「不法労働者」では

なく,「未登録労働者」と呼ぶ。入国管理法違反のレベルであり,労働法上の違反には当たらないという解釈である。この不法労働者(未登録労働者)は韓国に18万人近くおり,劣悪な労働環境,人権侵害など最も矛盾のしわ寄せを受けていると考えられるが,別稿の課題としたい。3 国連決議に基づき,日本に住む移住者の人権状況

を調査している「国連移住者の人権に関する特別報告者」であるホルス・ブスタマンテ氏は2010年「研修・技能実習制度は,往々にして研修生・技能実習生の心身の健康,身体的尊厳,表現・移動の自由などの権利侵害となるような条件の下,搾取的で安価な労働力を供給し,奴隷的状態にまで発展している場合さえある。このような制度を廃止し,雇用制度に変更すべきである。」と述べている。国連広報センタープレスリリース「移住者の人権に関する国連専門家,訪日調査を終了」,2010年3月31日付。

4 『ハンギョレ』2007年3月17日付。5 佐野孝治[2010]「韓国における女性外国人労働者

と支援団体の現状」福島県男女共生センター『外国人研修・技能実習制度にかかわる男女平等の労働環境構築のためのアクションプラン策定と派遣国の実態把握に関する国際比較・調査研究』参照。6 佐野孝治[1994]110ページ。7 李明博大統領も現代建設の副社長時代に中東進出

を進め,現代財閥の発展の契機となった。8 基本原則として,2つの原則のほかに,定住化防

止の原則(宣元錫[2006])や代替性の原則(チョンジョンフン[2009])などを挙げる研究者もいるが,本稿ではソルドンフン[2009]の整理によった。9 したがってドイツなどで採用されている外国人労

働者に対し労働許可を与える労働許可制とは異なっている。

10 移住労働者人権連帯[2005]9ページ。11 労働部・韓国技術教育大学校[2007]参照。12 中小企業庁[2003]ⅲページ。13 中小企業庁[2008]119ページ。14 1990年代に30代で,1980年代に学生運動に参加し,

1960年代生まれである民主化運動世代。

15 韓国外国人勤労者支援センターへのインタビューによる。

16 労働部外国人力政策課へのインタビューによる。17 産業人力公団へのインタビューによる。18 外国人移住・労働運動協議会へのインタビューに

よる。19 Amnesty International[2009]参照。20 雇用許可制で韓国に入国したと思っていたインド

ネシア人が,ブローカーを通じて入国したことが判明し,インドネシアのクォータが6ヶ月間禁止された。外国人移住・労働運動協議会へのインタビューによる。

21 たとえば海を見たこともないネパール人が養殖場で働く労働契約を結んだが,入国後漁船に乗せられたケースなどが報告されている。

22 産業人力公団へのインタビューによる。23 2009年1月に実施した福島県男女共生センター公

募研究にもとづくベトナム調査時にも,ベトナム人から同様の発言があった。

24 李チョルスン[2009]『2009移住労働者労働実態調査』参照。

25 労働部・韓国産業人力公団[2009]参照。26 労働部へのインタビューによれば,失敗するのは

特定国の労働者であるという。27 移住労働者労働組合へのインタビューによる。28 「京畿道・河南市にある鏡製造業者の場合,給料

が少ないと不満を言う外国人労働者を引き止めるため,必要のない夜勤などをさせるなどして手当てを上乗せしたが,今年に入り,何人かは労働条件のより良い業者に移ったという。夜勤や特別勤務手当てなどを含め,外国人の給料は月平均135万~150万ウォン(約10万7,600~12万円)だった。同社は同程度の給料ならば韓国人も採用できると考え求人を出したが,問い合わせすらなかったという。」NNA.ASIA,2010年2月23日付,http://news.nna.jp/。

29 2010年の引き上げ率は2.75%であり,1998年のアジア通貨危機の2.7%以来,最も低い水準である。

30 『聯合ニュース』2010年6月22日付。31 国家競争力委員会[2008]参照。32 労働部外国人力政策課へのインタビューによる。33 2006年では,賃金不払いの事業所は1,059ヶ所で,

1,841人の不払い賃金は40億5,400万ウォンに上った。1人当たり平均は220万ウォンで,30~40%が解決されていないと推定される。『聯合ニュース』2007年2月12日付。

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福島大学地域創造 第22巻 第1号 2010.9(6708)

34 産業安全保健研究院[2010]「国内外国人勤労者の労働安全衛生の実態調査」参照。

35 外国人移住・労動運動協議会へのインタビューによる。

36 たとえば有毒な化学薬品を扱う工場で,安全教育もなくマスクの支給もなかったため病気になったケースでも,使用者が発覚を恐れ,病院に連れて行かなかったことが報告されている。

37 ソウル外国人労働者センターへのインタビューによる。

38 産業人力公団へのインタビューによる。雇用許可制に批判的な移住労働者労働組合でも同様の見解であった。

39 労働部・韓国産業人力公団[2009]65ページ。40 『ハンギョレ』2008年12月9日付。41 『中央日報』2009年9月18日付。42 中小企業庁[2008]ⅲページ。43 NNA.ASIA,2010年2月23日付。 http://news.

nna.jp。44 国家競争力委員会[2008]参照。45 韓国外国人勤労者支援センターへのインタビュー

による。46 チェホン[2010]8ページ。47 政策の方向性とは異なり,中小企業では外国人よ

りも韓国人を先に解雇したという事例が多かったことが報道されている。『聯合ニュース』2010年4月2日付。

48 韓国移住女性人権センターへのインタビューによる。

49 韓国移住女性人権センターへのインタビューによる。

50 ソウル外国人労働者センターへのインタビューによる。

51 外国人移住・労働運動協議会へのインタビューによる。

52 『ハンギョレ』2008年12月6日付。53 佐野孝治[1994]113ページ。54 『聯合ニュース』2007年11月5日付。55 技能実習制度の特徴は以下のとおりである。「①

技能実習生は1年目から実習実施機関との雇用契約の下で技能実習を受けることとなり,労働関係法令の保護が及ぶようになった。②実習実施機関(企業単独型のみ)又は監理団体による,技能実習生に対する講習(日本語教育,技能実習生の法的保護に必要な講義など)の実施が義務とされた。③監理団体

による実習実施機関に対する指導,監督及び支援体制の強化が求められることになった」。JITCOウェブサイト http://www.jitco.or.jp/参照。

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