新型コロナ感染症(covid-19)影響下におけ る大学生のメンタル ... · 2020. 9....

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新型コロナ感染症(COVID-19)影響下におけ る大学生のメンタルヘルスの現状と課題 兵庫県立大学 環境人間学部 臨床心理学研究室 3年生 金碇彩希 北村果林 城紀江 神生眞由 樽井瑛 毛利奈央 教授 井上靖子

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  • 新型コロナ感染症(COVID-19)影響下における大学生のメンタルヘルスの現状と課題

    兵庫県立大学 環境人間学部 臨床心理学研究室

    3年生 金碇彩希 北村果林 城紀江

    神生眞由 樽井瑛 毛利奈央

    教授 井上靖子

  • 問題と目的

    本研究は、新型コロナ感染症影響下における大学生の心身の状態、生活状況、人間関

    係、将来への不安、インターネットの使用状況等のメンタルヘルスの現状に関する質問紙調査

    をもとにして、そのメンタルヘルスの現状を明らかにし、大学生活を心身ともに充足して過ごすた

    めの課題を明らかにすることを目的としている。

    日本社会では、 Covid-19の感染拡大が懸念される中で、2020年4月16日から5月7日

    まで緊急事態宣言が発動され、大学への入構も制限された。5月7日からオンラインやオンデ

    マンドの講義が開始され、現在に至るまで継続されている。自宅待機による、通常とは異なる

    生活状況が続き、 Covid-19の感染不安、オンライン講義の継続により、心身共に様々なス

    トレスに晒されていると考えられる。今後も継続されるCovid-19による日常生活の急激な変

    化がもたらす、大学生のメンタルヘルスの現状と課題について検討していく。

  • 研究方法

    質問紙調査の対象は、兵庫県立大学環境人間学部1年生199名、3年生60名である。

    7月30日(木)の人間学(心身)および精神保健の講義時間内にWebexオンラインシステム

    による投票機能を用いて、実施した。

    質問項目は大矢ら(2018)の簡易版大学生メンタルヘルス尺度および、第一生命経済研

    究所(2020)、国立成育医療研究センター(2020)等の調査を参考にして、20問(身体症

    状5問、精神状態5問、オンライン講義に関する事柄と人間関係各2問、インターネット使用

    状況、将来への不安、家族関係、生活状況各1問、逆転項目2問)を作成し、4件法にて

    実施した。

  • 結果と分析

    ●身体症状について

    ・ 「運動不足を感じた」 「目にかすみや疲れを感じた」 「頭痛や肩こりがあった」「食生活に問題があった」 「夜熟睡できなかった」の全ての項目において、学年に関わらず、「ある」と答えた人の割合が過半数である50%を超えた

    ・ 特に「ある」と答えた人の割合が多かった項目は「運動不足を感じていた」、「目にかすみや疲れを感じることがあった」の2項目である

    ・ 「運動不足を感じていた」では90%、「目にかすみや疲れを感じることがあった」では80%の人が「ある」と答えた

    234

    210

    17

    40

    8

    9

    0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

    運動不足を感じた

    目にかすみや疲れを

    感じた

    ある(人) なし(人) 回答なし(人)

    90%

    81%

    ※調査結果は、1年生と3年生を合算して表記している。

  • ●インターネット使用に関して

    ・「気がつくとインターネットを長時間使用していた」 「WEBによる課題提出に対して疲れや苦痛を感じることがあった」 全ての項目において、学年に関わらず、「ある」と答えた人の割合が90%を超えた。

    240

    235

    12

    17

    7

    7

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    気づけば長時間インターネットを

    使用していた

    WEBによる課題提出に疲れや苦

    痛を感じた

    ある(人) ない(人) 回答なし(人)

    91%

    93%

  • ●精神状態について

    ・充実感や不安に関する項目は「ある」と答えた人の割合が80%と超えた。

    ・気分に関する項目(無気力・落ち込み)でも「ある」と答えた人の割合が70%~80%を超えた

    ・「生きることが嫌だ」と思う人は、1年生が20%で5人に1人、3年生が25%で4人に1人が感じている。

    88%

    85%

    80%

    70%

    21%

  • ⚫ 生活面について・昼夜逆転気味の人が、50%を超えた。・相談相手のいる人が全体で85%と高割合であった。・外出や人と接することに対して苦痛を感じている人は全体で27%と低割合であった。・明るい気分で過ごすようにしていた人は76%で、各自が精神安定に努めていることがわかった。・また、「自分の目標のための努力している」と答えたのは、1年生で52%、3年生で70%と約20%もの差があり、1年生のほうが目標を持ちづらくなっている。

    56%

    76%

  • 考察

    • インターネットの長時間の使用によって、特に目の疲れが生じている。今後、視力の低下も懸念される。また、運動不足に伴う、体調や気分の変化などの影響も懸念される。

    • 生きていく活力の低下(将来への不安、意欲低下や無気力、気分の落ち込み)がみられる。昼夜逆転になっている人が半数を超えている。特に大学1年生は初めての大学生活なのに、登校できず、充実感・満足感がなく、目標に向けて努力しづらくなっている。特に気になるのは、「『生きているのがいやだ』と感じることがあった」人が4人~5人に1人はいることである。うつ病やひきこもりなどのサインはないか今後、こうした人々に対して、SNSやメール相談などのインターネットを用いた心の相談の場の設置やメンタルケアの情報発信などの取り組みが必要であろう。

    • 一方で、1年生も3年生も85%に相談相手がおり、ソーシャルサポートがあることがわかった。現在、メールやインターネットで人と繋がれる点も関係しているだろう。また、特に3年生では、目標に向けて努力している学生が70%いることから、コロナ禍での生活は大変であるが、比較的健康的に前向きに努めている学生が多いと考えられる。しかしながら、この状況が長期化してしまうと、インターネットの使用による心身への影響、生きていく活力の低下の問題は、さらに大きくなる可能性があるため、今後も注視する必要がある。

  • 私たちからの提案 ~目と心に優しいおうち時間~

    • ネット使用時には、1時間に10分程度休憩を取る、使用し

    ていないときも休息をとる。適度な休憩

    • 1日1回15分の日光浴で散歩をする。散歩をすることで、

    運動不足を解消すると同時に、日光刺激で分泌されるメ

    ラトニンの作用で、良質な睡眠にできる。

    日光浴ウォーキング

    • 目のストレッチ(ぎゅっと5秒間目をつぶり、パッと開ける)

    • 肩や首などの筋肉をほぐし、寝る前に竹踏みなどの足の裏

    をマッサージする。

    筋肉ストレッチ

    今後の課題として、1.目の疲れと運動不足、2.不安や無気力、3.大学生活における充実感の回復などに対するメンタルヘルスの方法として次のような方法を提案する。

  • 参考文献

    • 大矢薫・長谷川裕・北村拓也・長谷川千種・押木利英子(2018) 「簡易版大学生用メンタルヘルス尺度の信頼性・妥当性の検討およびSOCとの関連」日本健康心理学会大会発表論文集. 31(0)p.43.

    • 第一生命経済研究所(2020)

    「新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査」

    http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/index.html (2020年7月18日取得)

    • 国立成育医療研究センター(2020) 「コロナ×子どもアンケート」 https://www.ncchd.go.jp/ (2020年7月18日取得)

    • Macaroni(2020) 管理栄養士が『日光浴』の効果について解説!やり方も注意点も一緒に知ろう」https://macaro-ni.jp/88909 (2020年8月16日取得)

    • NHK健康ch 「免疫機能を維持するために必要なビタミンDを摂取する方法【日光浴・食事】」https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1171.html (2020年8月16日取得)

    https://macaro-ni.jp/88909https://www.nhk.or.jp/kento/atc_1171.html