スペイン料理~パエリア~ -...

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Good memories of your school days) 21 岩井翔希 私のお勧めの料理 (6) スペイン料理~パエリア~ 今回紹介する料理はスペイン料理です。一 口にスペイン料理といっても、スペイン (1) 地形的・歴史的に、いくつかの小国に分裂し ていた時期があったため、料理にも地方色が でています。カスティーリャ、カタルーニャ、 ガリシア、バスクなど枚挙に暇がありません。 スペイン料理の主要食品としては、パン、米、 豆、豚肉、トマト、干しダラ、ワインがあり、 そして、オリーブ油は必要不可欠な食品です。 山地の多いスペインですが、南に地中海、北 にビスケー湾と海岸線に恵まれていることも あり、海の幸に頼る食生活が発達しています。 くわえて、胡椒・にんにく・サフラン・唐辛子、 その他多くの香草・スパイスが多用され、そ の組み合わせは非常に多くバラエティに富み、 味わいもまたエキゾチックなものです。スペイ ン人は、日本人が考えるよりも郷土愛が強く、 自分の出身地を誇りに思って生きている人が 多いです。 15世紀末にコロンブスによる新大陸発見は、 南米産のトマトやジャガイモ、トウモロコシな どをヨーロッパにもたらします。一方の、ポル トガル・リスボンを出港したガマは、インド航 路を経て、胡椒・シナモン・グローブなどの 香辛料を運びました。新大陸発見により伝播さ れたジャガイモ、トマトなどの栽培植物はヨー ロッパの料理に必須なものとなりました。 スペイン人の生活は1日5食と昼寝付きとい われます。1度目と2度目の食事は軽く、3度目 の昼食に重きを置くお国柄から、前菜、主菜、 デザートというフルコースで、さらにじっく りと時間をかけます。その後、シエスタ(昼 寝)という習慣により、1~2時間ほど昼寝など してゆっくり過ごします。 スペイン人にとっ て非常に欠かかせない存在として、バルがあ ります。居酒屋であり、カフェであり、そして、 食堂やコンビニでもあるバルは日常生活の延 長線上にあると言えるでしょう。しかし、日 本ではタパス(tapas)、ピンチョス(pinchos)、 ビールやワインなどといった軽食を提供する 居酒屋風な店が多いのが現実です。スペイン 人にとっての主食はパンであるので、主食の パンがない日本のバルは、本場のスペイン人 からしたら不思議でなりません。日本ではこ 石橋光瑠 うした一過性のブームによって、スペイン食 文化の神髄や背景をきちんと理解できていな いことが多いです。 今回、私が紹介する料理はパエリア (2) です。 パエリア(paella)の発祥はスペイン北東部の バレンシアです。モーロ人によって9世紀に伝 えられたと言われています。本来「パエリア」 はバレンシア語でフライパンを意味します。バ レンシア地方以外に、この調理器具を用いた 料理法が伝わるうちに、器具そのものよりも 料理の名称として浸透していったのではない かと言われます。 一般に私たちが想像するスペイン式の炊き 込みご飯と呼ばれるパエリアは、エビやムー ル貝、アスパラガスといった彩りが鮮やかな ものですが、本場のバレンシアのものは鶏肉、 ウサギの肉、豆類といったものがほとんどで す。中には、コメの代わりにフィデウア(fideua) というパスタのようなものを代用している家 庭もあります。 日本での代表的なパエリア はミックス・パエリアと呼ばれるものです。各 家庭では、日常よりも親戚一同が集まった際に 調理するのがパエリアなのです。スペインを旅 行した際に、私たちは第一に、レストランなど でパエリアを頼むかもしれませんが、料金も高 く、量も多いため注意を払う必要があります。 こうしたことなどから、私たち日本人には 依然としてスペイン料理への誤解があります。 闘牛やフラメンコなども、パエリア同様、日本 人がイメージするものと異なっています。実 際のスペインは、多様性に溢れ、それぞれの 民族が誇りを持って生きていることを理解し て頂きたいです。 参考文献 (1)地球の歩き方編集室 著作編集 『地球の歩き方スペイン』 (ダイヤモンド社) 290.9||Chik||1-20   資料ID : 611641 (2)真田昭彦 著 『スペイン料理』(辻学園調理・製菓専門学校) 596.23||Man     資料ID:519377 いしばし ひかる(スペイン語学科3年次生)

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Page 1: スペイン料理~パエリア~ - KUFSパエリア(paella)の発祥はスペイン北東部の バレンシアです。モーロ人によって9世紀に伝 えられたと言われています。本来「パエリア」

学生と図書館

(Good memories of your school days)

21

岩井翔希

私のお勧めの料理 (6)

スペイン料理~パエリア~

 今回紹介する料理はスペイン料理です。一口にスペイン料理といっても、スペイン(1) は地形的・歴史的に、いくつかの小国に分裂していた時期があったため、料理にも地方色がでています。カスティーリャ、カタルーニャ、ガリシア、バスクなど枚挙に暇がありません。 スペイン料理の主要食品としては、パン、米、豆、豚肉、トマト、干しダラ、ワインがあり、そして、オリーブ油は必要不可欠な食品です。山地の多いスペインですが、南に地中海、北にビスケー湾と海岸線に恵まれていることもあり、海の幸に頼る食生活が発達しています。くわえて、胡椒・にんにく・サフラン・唐辛子、その他多くの香草・スパイスが多用され、その組み合わせは非常に多くバラエティに富み、味わいもまたエキゾチックなものです。スペイン人は、日本人が考えるよりも郷土愛が強く、自分の出身地を誇りに思って生きている人が多いです。 15世紀末にコロンブスによる新大陸発見は、南米産のトマトやジャガイモ、トウモロコシなどをヨーロッパにもたらします。一方の、ポルトガル・リスボンを出港したガマは、インド航路を経て、胡椒・シナモン・グローブなどの香辛料を運びました。新大陸発見により伝播されたジャガイモ、トマトなどの栽培植物はヨーロッパの料理に必須なものとなりました。 スペイン人の生活は1日5食と昼寝付きといわれます。1度目と2度目の食事は軽く、3度目の昼食に重きを置くお国柄から、前菜、主菜、デザートというフルコースで、さらにじっくりと時間をかけます。その後、シエスタ(昼寝)という習慣により、1~2時間ほど昼寝などしてゆっくり過ごします。 スペイン人にとって非常に欠かかせない存在として、バルがあります。居酒屋であり、カフェであり、そして、食堂やコンビニでもあるバルは日常生活の延長線上にあると言えるでしょう。しかし、日本ではタパス(tapas)、ピンチョス(pinchos)、ビールやワインなどといった軽食を提供する居酒屋風な店が多いのが現実です。スペイン人にとっての主食はパンであるので、主食のパンがない日本のバルは、本場のスペイン人からしたら不思議でなりません。日本ではこ

石橋光瑠

うした一過性のブームによって、スペイン食文化の神髄や背景をきちんと理解できていないことが多いです。 今回、私が紹介する料理はパエリア(2) です。パエリア(paella)の発祥はスペイン北東部のバレンシアです。モーロ人によって9世紀に伝えられたと言われています。本来「パエリア」はバレンシア語でフライパンを意味します。バレンシア地方以外に、この調理器具を用いた料理法が伝わるうちに、器具そのものよりも料理の名称として浸透していったのではないかと言われます。 一般に私たちが想像するスペイン式の炊き込みご飯と呼ばれるパエリアは、エビやムール貝、アスパラガスといった彩りが鮮やかなものですが、本場のバレンシアのものは鶏肉、ウサギの肉、豆類といったものがほとんどです。中には、コメの代わりにフィデウア(fi deua)というパスタのようなものを代用している家庭もあります。 日本での代表的なパエリアはミックス・パエリアと呼ばれるものです。各家庭では、日常よりも親戚一同が集まった際に調理するのがパエリアなのです。スペインを旅行した際に、私たちは第一に、レストランなどでパエリアを頼むかもしれませんが、料金も高く、量も多いため注意を払う必要があります。 こうしたことなどから、私たち日本人には依然としてスペイン料理への誤解があります。闘牛やフラメンコなども、パエリア同様、日本人がイメージするものと異なっています。実際のスペインは、多様性に溢れ、それぞれの民族が誇りを持って生きていることを理解して頂きたいです。

参考文献(1) 地球の歩き方編集室 著作編集

『地球の歩き方スペイン』(ダイヤモンド社)290.9||Chik||1-20  資料ID : 611641

(2) 真田昭彦 著『スペイン料理』(辻学園調理・製菓専門学校)596.23||Man    資料ID:519377

いしばし ひかる(スペイン語学科3年次生)