ミクロ経済学(第11回)...
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経済学Aミクロ経済学(第11回)
情報の非対称、不確実性
明治大学総合数理学部
2017年6月29日
大塚忠義1
市場
価格と数量が定義される任意の空間
完全市場:完全競争完全雇用、税・手数料、規制の不存在情報の対称
情報の非対称が市場メカニズムに与える影響は大きく、かつ定量が困難
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情報の非対称Lemon problemレモン問題:逆選択問題× ミルクスキミング ○ チェリーピッキング
情報を持っている供給者有利需要者にとって効用の低下、価値の下落市場の機能低下悪貨は良貨を駆逐する
中国人の海外における爆買いとは何だ?
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情報の非対称(2)Lemon problemレモン問題:逆選択問題
複雑、不確実な財・サービスで発生
金融、証券、保険、流通& 労働
情報の充足が困難、高価な場合:次善の選択
企業によるlemon の振り分け方法を考える
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不完全情報の解消手法(1)
-需要者が追加の費用により情報を取得コンサルタント、仲介業者、間接金融格付け会社、社債の発行
-供給者へのインセンティブ仲介者が運営する市場への参加中古車、不動産
-規制情報公開義務、消費者保護活動金融機関への規制
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不完全情報の解消手法(2)
-商品・サービスの標準化-シグナリングブランド供給者へのインセンティブチェーン店、フランチャイズによる商品・サービスの標準化広告・宣伝学歴社会
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不完全情報の解消手法(3)
-逆選択対応
自己選択メカニズム・・需要者が財・サービス・対価を選択する(割引システム)
例えば、保険
ノンスモーカー、優良体保険自動車保険、区分料率
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不確実情報の解消手法
-金融商品情報開示義務、注意喚起義務
-労働市場非正規労働者シグナルとしての教育年功給、退職金ボーナス
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エージェンシー問題(1)
雇用者と労働者の関係雇用者(プリンシパル)の目的≠
労働者(エージェンシー)の目的
ティッシュ配りのアルバイト年金事務所の職員株主と経営者:経営学の中心監査等の監督報酬設計:ストックオプション
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エージェンシー問題(2)
経営学の主要な課題
“もしドラ”の主要な課題
エージェントに目標(プリンシパルの意図)を達成するため動いてもらうには、どうする
・報酬?・名誉?・目標の共有化?
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リスクの定義(1)
結果が不確実な状況:その1
リスク=結果の期待値または確率
人はいつ死ぬか、地震はいつ来るか不明! しかし、死亡率、発生確率は存在する
結果が確実な状況、確率=1:
明日も太陽は昇る11
リスクの定義(2)
結果が不確実な状況:その2
リスク=結果の期待値周りの変動性また標準偏差、分散
「株式投資は預金よりもリスクが高い」株に投資すると大儲けすることもあるが損することもある。預金に比べると変動性が大きい
収益性:株>預金、変動性:株>預金=リスクを取って高収益を狙う
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確率とは(1)
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確率( probability)とは、ある現象が起こる度合い、ある事象が現れる割合
対象となる現象、事象は、結果があらかじめ定まっていないもの
「起こる度合い」「現れる割合」は偶然性を含まない一意に定まった数値であり、発生の度合いを示す指標
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確率とは(2)
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ある現象が起きる度合いを0から1までの数値で表した尺度
結果が不確実・不確定な現象を確率を使って解釈することができる
将来ある事象が(偶然に)発生する度合(可能性)を偶然性を含まない数値で表現したもの
純粋リスク
結果の期待値(統計学での結果の平均値)をリスクと称する
• 死亡率
• 交通事故率
• 大地震の発生確率
コイン投げの場合、1/2
主に保険が扱うリスク
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経済的リスク(1)
分散・標準偏差(統計学での期待値周りの変動性)をリスクと称する
• 株式投資
• 新規事業・海外進出
• 競馬・宝くじ
経済的リスクは、さらに価格リスクと信用リスクに分類される
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経済的リスク(2)
価格リスク
価格変動リスク:株、石油、人件費
外国為替リスク:円ドルレート
金利リスク:金利上昇
信用リスク
取引の相手方の倒産等
決済リスク:代金の受取
貸倒れリスク:貸付金の回収
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ロス・ファイナンス(1)
経済学でリスクマネジメントと同義
リスクが発現する前に行うことに意味がある
リスクが発現した後にお金を貸してくれる人はいない、いても借入条件は最悪
何かをするなら事前に。。。
リスクが発現し損失が出たらお金を貸すという契約を事前に結ぶ!?
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ロス・ファイナンス(2)
-リスクを保有?自己資本からみてどの程度のリスクを保有できるか?リスクの発現は倒産につながるか?⇒自己資本の充実・・資本コストの増大
- リスクを移転
保険に加入?デリバティブによってヘッジ?保険料、掛け金、手数料etc.の負担
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金融工学
リスク、ボラティリティ、相関の考えをもとに最適の株式投資を行うための理論として始まる
株が博打から数学的理論へ
ハリー・マーコビッツ: 1990年、『ポート
フォリオ理論』によりノーベル経済学賞を受賞
オプション・プライシング
⇒証券化商品へと発展20
リスク回避
人間は目の前に損失の可能性があるときは、利益の現象よりリスクの回避を優先する
リスク中立な価格、給付反対給付の原則に基づく価格より高い費用を支払ってもリスクの回避を優先する
この差額をリスクプレミアムという
問題はどの程度までリスクプレミアムを支払うことを許容するか
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行動経済学
金融工学に心理学の視点をいれて経済行動を説明する
アニマルスピリット:リスクに対して、人は原始の生存本能に基づき行動する傾向がある
つまり、人は金融工学理論にあるように合理的な投資判断をするわけではなく、損失を嫌がる本能が合理的な行動にゆがみを与える
カーネマン:2002年、『プロスペクト理論』によりノーベル経済学賞を受賞
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期待効用原理
不確実性を持つ対象の選択では、期待値の大小ではなく、「効用」の期待値の大小によって選好が決まる保険購入の際の判断要因は、十分な情報によって既知となる純保険料の大小ではなく保険購入によって得ることができる効用の大小によって選好が決まる
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期待効用関数
E(u(x)):効用の期待値効用関数u(x)>0
一般に、E(u(x))>E(X)顧客が選考し、購入の判断を行う価格
営業保険料= E(u(x))=E(X)+L
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Question?
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