スペイン語 - kansai-u.ac.jp · スペインはまた芸術の国。 ......
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スペイン語 Español
1.4億人!のことば、スペイン語
スペイン語は名前のとおりヨーロッパの大国、スペインの言語です。でもそれは、スペイン人だ
けのものではありません。世界には4億人を超える母語話者がいます。国の人口が13億人を超える
中国語を別にすれば、世界でもっとも多い母国語としての使用者の数を誇ります。
スペイン語を公用語とする国としては、スペインのほか、メキシコ、アルゼンチン、ペルー、コ
ロンビア、チリ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラ
グア、コスタリカ、パナマ、ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイなど、
ラテンアメリカ諸国の大半を挙げることができ、その数は20ヶ国以上に及びます。
アメリカ合衆国でも、4,000万人以上がヒスパニックと呼ばれるスペイン語系の住人です。彼ら
の動向は大統領選挙の行方を左右するようにすらなっており、そのため、公的な場でもスペイン語
が英語と併記されるなど、その存在感が増しています。
なお、スペイン語はアラビア語、英語、中国語、フランス語、ロシア語とともに国連の6つの公
■地中海の町、ミハスの白い家並
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用語のひとつとなっています。そのほか、多くの国際機関での相互理解や様々な国際協力の場に不
可欠な言語として、国際政治と経済におけるスペイン語の有用性は増すばかりです。
2.スペイン語は覚えやすい!
さて、ここでスペイン語講座の開講です。
スペイン語を耳にしたことがありますか。いいや、知らないよという人でも、明るくにぎやかな
ことばというイメージをお持ちでしょう。スペイン語はとても発音しやすいことばです。
ほとんどローマ字と同じように読めます。母音は5つ。むずかしい発音記号とは無縁です。
たとえば、朝のあいさつは“Bブエノス・
uenos dディーアス
í a s.”。お昼には“Bブエナス・
uenas tタ ル デ ス
ardes.”。そして「おやすみな
さい」が“Bブエナス・
uenas nノーチェス
oches.”。ね、おぼえやすいでしょう?
発音がわかりやすいので、単語もすぐに頭にはいります。わたしたちの身の回りにもスペイン語
の単語を、容易に見つけることができます。たとえば、ピリッと辛い sサ ル サ
alsa とは、スペイン語で「ソ
ース」のことです。楽器の cカ ス タ ニ ェ タ
astañeta はもともと「小さな栗カスタニャ
」の意味ですが、おなじみのカスタ
ネット。英語と共通する語彙もたくさんあり、cクルトゥラ
ultura(文化)やsス ィ ス テ マ
istema(制度)のような辞書い
らずの語も少なくありません。
英語とちょっと違うのは、動詞の語尾のかたちが変わること。たとえば、vビ ビ ル
ivir「生きる」。
Vビ ボ
ivo. は「わたしが生きる」ですが、Vive.とすれば、「彼は生きている」になります。語尾のちが
いで、誰がそれをやったか分かるなんて、おもしろいでしょう!?
少しだけ堅い話をすれば、スペイン語はイタリア語、フランス語、ポルトガル語(話者人口世界
7位)、ルーマニア語など、ラテン語に起源を持つことばの仲間です。このため、スペイン語を通
じてより多くの言語へ近づくことが可能です。特にポルトガル語やイタリア語とはよく似ており、
ネイティブ同士であれば、それぞれのことばで話して意思疎通ができてしまうこともあるそうです。
■ おいしい焼きたてのパン。甘い物好きにはたまりません。
■ゆかいな雑貨屋さんのショーケース。
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3. 多様な産業と広がる経済圏
スペインといえば、オリーブやヒマワリを生産する農業国のイメージがあるかもしれません。し
かし国も力を入れる観光をはじめ、機械、化学、畜産、水産、食品、医療機器など多様な産業が経
済を支えます。特にファッションでの躍進は目覚ましく、ZARA、シビラ、カンペールといったカ
ジュアルな衣料から、ロエベ、ヤンコ、カレラ・イ・カレラなどの格式あるブランドまで幅広く日
本に紹介されています。バレンシアの陶器工房リヤドロは、近年、雛人形も作りはじめました。食
料品では、オリーブオイルや魚介類の缶詰・瓶詰、ハムやチーズなど、バラエティ豊かに輸入され
ています。お酒も気軽なテーブルワインからリオハのような最高品質のものまですべてが入手可能
です。世界的な再編がつづく自動車業界でもVWグループのSEAT(日本未輸入)が健闘していま
すし、ちょっと変わったところではバイクメーカーのGASGASがあります。
ラテンアメリカの国々も巨大な経済圏を構成
しています。メキシコ、チリ、ペルーとはすで
にFTAを結んでいますが、日本との関係はい
っそう緊密化するでしょう。こうした需要の高
まりに比して日本におけるスペイン語の知識を
もつ人口の少なさは、今後解決されなくてはな
らない課題です。スペイン語は将来のキャリア
にとっても心強い武器となるはずです。
4.情熱の文化
スペインと言えば、まずはフラメンコと闘牛。確かに、それもこの国の一面です。でも、ほかに
もすてきな魅力にあふれています。まずは音楽。スペインはギターの生まれ故郷。ロドリーゴ「ア
ランフェス」やターレガ「アルハンブラの思い出」は、誰もがどこかで聴いたはず。ファリャ「恋
は魔術師」も艶やかな名曲です。フアネスやシャキーラらの熱いラテン系のリズムも魅惑的。サル
サ、メレンゲ、ルンバ、マンボ、タンゴ……、いっしょに情熱的なダンスのステップを踏みましょ
う!
スペインはまた芸術の国。ピカソやダリ、ベラスケスやゴヤといった画家たちが迎えてくれます。
首都マドリードのプラド美術館はルーブルやエルミタージュとともに世界三大美術館の一つ。バル
セロナの「サグラダ・ファミリア」は、カタルーニャの建築家アントニ・ガウディが120年以上前
に建築を始めたもので、あと20年で完成の予定。壮大なロマンを感じさせる世界遺産です。
■首都マドリードには歴史と新奇なものが共存する
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一方、ラテンアメリカに目を向けると、メキ
シコの太陽の神殿やチェチェンイツァー、ペル
ーでは空中都市マチュピチュ(左写真)やナス
カの地上絵など、アステカ、マヤ、インカとい
った過去の文明の神秘に触れられます。希少動
物たちの棲息地ガラパゴス、世界最大となるイ
グアスの滝など、多数の世界遺産が皆さんが訪
れるのを待っています。
5.おいしさ自慢
最近ちょっと上等なレストランで出されるイベリコ豚をためしてみればわかるように、スペイン
の食べ物は至高の美味。ムール貝など魚介がたっぷり、サフランの香りゆたかな米料理パエーリャ
や、バケットにエビやアンチョビーなどの料理を載せた流行のおつまみピンチョス、タパス・バー
の定番ハモン・セラーノ(スペイン風生ハム)やトルティーリャ(スペイン風オムレツ)など、ご
ちそうばかり。満腹したら、スペイン風居酒屋Bバ ル
ARでワイン片手に歌い、朝まで騒ぎ明かします。
ラテンアメリカも美食の宝庫。薄焼きのトウモロコシ・パン、トルティージャに牛肉などを包ん
だメキシコのタコス、新鮮な魚介類をマリネしたペルーのセビーチェ、アルゼンチンの肉詰めパイ、
エンパナーダなど。こちらも、スペイン人と同様においしいものに目がありません。ワインやビー
ルのほかのお酒の種類も豊富で、ちょっと強烈なラムやテキーラといったスピリッツも好まれます。
スペイン語をおぼえて、世界を旅しませんか?きっと、かけがえのない体験になるはずです。
6.不滅の<無敵艦隊>、スペイン代表
Lリ ガ ・
IGA Eエ ス パ ニ ョ ラ
SPAÑOLAとは、スペイン・リーグのこと。セリエA(伊)やブンデスリーガ(独)と
■古代ローマの水道橋。高さは30メートル。(セゴビア) ■不思議なデザインのグエル公園(バルセロナ)
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ともに欧州最高のプレーを誇ります。レアル・マドリードやバルセロナにセビージャやバレンシア
を加えて、リーガのチームはUEFAチャンピオンズリーグの常連です。<無敵艦隊>と呼ばれる、
スペイン代表も強力。ダビド・ビジャら多くのタレントを擁するチームは、赤いユニフォームに身
をつつみ、ヨーロッパ・南米の強豪チームと渡り合います。2010年FIFAワールドカップ南アフリ
カ大会では堂々の優勝!文字通り世界一のサッカー王国の栄冠を手にしました。なお、同じくスペ
イン語圏の国であるアルゼンチンやウルグアイは、2度の優勝を果たしています。
サッカーのほか、水泳、ゴルフ、テニス、モータースポーツ、バスケットボールなど、多くの一
流選手がスポーツ界に出ています。生涯グランドスラムの偉業を達成した男子テニスの王者ラファ
エル・ナダル。自動車レースの最高峰F1では、年間チャンピオン2度獲得のフェルナンド・アロ
ンソをはじめ4人のパイロットがスペイン、メキシコ、ベネズエラから参戦します。ブエルタ・ア・
エスパーニャは、約200名の選手たちが山の険しいスペイン国内を3,000キロ以上にわたって競う、ツ
ール・ド・フランスと並んで著名な自転車レース。いまやスペインは欧州随一のスポーツ王国です。
また日本球界で活躍するカブレラ、ラミレスらの出身地ラテンアメリカには、ベネズエラ、ドミ
ニカ共和国、キューバなど、野球の強豪が目白押し。大勢のメジャーリーガーを輩出しています。
7.授業のあらまし
A.千里山キャンパス(法・文・経済・商・社会・政策創造の各学部)
入学年度にスペイン語Ⅰa, b、スペイン語Ⅱa, bを履修。前者では共通教科書を用い、読む、書く、
話すという基礎力を身につけるために初級文法をまなびます。スペイン語Ⅱは、担当教員によって
内容が異なり、簡単な会話や講読や作文を行っています。次年度は、スペイン語Ⅲa, b、スペイン
語Ⅳa, bに進みます。スペイン語Ⅲでは、より複雑な文法を習得し、中級講読を行います。文化、
政治、社会など、さまざまなテーマの文章を通じてスペイン語圏の国々を身近にします。スペイン
語Ⅳでも、文学、歴史、時事問題について知識を深めながら、実践的な表現を身につけます。なお
■レアル・マドリードの本拠地、サンティアゴ・ベルナベウ・スタジアム(左)と、試合の1コマ。
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スペイン語ⅢとⅣには、ネイティヴ教員と日本人教員がペアで担当するコミュニケーション・クラ
スがあります。スムースな日常会話の能力を得ることが目標です。さらに深く学びたい人には、3
年時以降に自由科目、スペイン語Ⅴとスペイン語Ⅵが設けられており、上級講読を行っています。
B.高槻キャンパス(総合情報学部)
総合情報学部では、スペイン語を主選択または副選択の外国語科目として選べます。
主選択:より実践的なスペイン語を身につけるチャンスです。ぜひチャレンジしてください。
1年次は週3クラス、スペイン語Ⅰa, b(基礎文法)、スペイン語Ⅱa, b(応用)、スペイン語Ⅲ
a, bを履修。Ⅲクラスではネイティヴ教員による初級コミュニケーションをまなびます。
2年次はスペイン語Ⅳa, b、スペイン語Ⅴa, bを履修。Ⅳクラスでは、文化や歴史、時事問題や
地域研究を取り上げ、スペインおよびラテンアメリカ地域への理解を深めます。Ⅴクラスは、外国
人講師担当の中級コミュニケーション。視聴覚教材を用いて、スペイン語での発信能力を高めます。
3年次履修のスペイン語Ⅵa, bは、上級講読のクラス。正確に読む力を身につけます。語彙を増
やし、日常でよく使われる表現をおぼえて、スペイン語をさらに身近なものにしましょう。
副選択:1年次にスペイン語Ⅶを履修します。基礎的な文法の習得を目標としていますが、応用練
習や初級講読も行います。2年次にはスペイン語Ⅷa, bを履修。スペイン語を通じて、スペインと
ラテンアメリカ諸国の事情をまなびます。3年次・4年次にはスペイン語A・B・C・D(自由科目)
を設置。履修者の到達レヴェルに合わせた授業を行いますので、ぜひ学習を継続してください。
図A.千里山キャンパスでのスペイン語履修のイメージ
1回生 2回生
スペイン語Ⅰ(文法学習) スペイン語Ⅲ(文法学習・中級講読)
または + スペイン語Ⅲ(コミュニケーション・定員制) *1
→ +
スペイン語Ⅱ(応用学習) スペイン語Ⅳ(中級講読)
または スペイン語Ⅳ(コミュニケーション・定員制) *1
+ 3回生・4回生
スペイン語Ⅴ(中級会話、もしくは上級講読) *2 スペイン語Ⅵ(上級講読)*2
*1:コミュニケーション・クラスはⅢとⅣをセットで履修。 *2:(Ⅴ、Ⅵのいずれか、あるいは双方を履修)
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C.検定試験認定クラス
上記に加え、スペイン語技能検定やDELE(検定試験については後述)の一定以上の級取得者を
対象とした検定試験認定クラスがあります。詳細は授業支援センターに問い合わせてください。
なお高槻ミューズキャンパスと堺キャンパスでは、スペイン語のクラスが開講されません。千里
山キャンパスに足を運ぶことで、同キャンパスの他学部と同様の履修が可能となります。
8.辞書案内
辞書は外国語学習に欠かせない大切な道具です。かならず購入し、教室に持参してください。お
薦めのものを下に紹介します。なお、電子辞書は便利ですが、ことばの上達のためには書籍のかた
ちの辞書を一冊、ぜひ手元に置きましょう。
◇西和辞典(スペイン語から日本語を調べる):まずは宮城昇他編『現代スペイン語辞典 改訂版』
(白水社、1999年)が挙げられます。初心者にも使いやすく、在学中、不自由を感じないはずです。
収録語数は減りますが、持ち運びやすいコンサイスの辞書に鼓直他編『プログレッシブスペイン語
辞典 第2版』(小学館、1999年)があります。他方、収録語数が最多なのは、高垣敏博監修『西
和中辞典 第2版』(小学館、2007年)です。新聞や小説をよむとき、手元におきたい一冊です。
◇和西辞典(日本語からスペイン語を調べる):学習当初は必要としません。必要を感じたら購
入してください。有本紀明他編『和西辞典 改訂版』(白水社、2000年)。上田博人他編『クラウン
和西辞典』(三省堂、2004年)などがあります。
9.自分で学びたい
学内のスペイン語研究部では、検定試験の対策を練ったり、留学を志したりと活動が盛んです。
図B.高槻キャンパスでのスペイン語履修のイメージ○主選択 1回生 2回生
スペイン語Ⅰ(文法学習) スペイン語Ⅳ(中級講読)
スペイン語Ⅱ(応用学習) → スペイン語Ⅴ(中級コミュニケーション)
スペイン語Ⅲ(初級コミュニケーション)+ 3回生→ スペイン語Ⅵ(上級講読)
○副選択
1回生 スペイン語Ⅶ(文法学習) → 2回生 スペイン語Ⅷ(中級講読)
3回生・4回生 スペイン語A(自由科目) スペイン語B(自由科目)
スペイン語C(自由科目) スペイン語D(自由科目)
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熱心な先輩たちの丁寧な指導を受けながら仲間と勉強することで、楽しくことばが身につきます。
ところで、自宅での勉強にはどのような手段があるでしょうか。インターネットの会話教室や
PCソフトもありますが、昔ながらの効果的な独習方法として、ラジオやテレビの講座と自習書を
挙げておきます。NHK・Eテレの『テレビでスペイン語』では、文法説明といっしょに文化紹介
が楽しめます。2011年度は、木曜日 午後11:25~11:50に本放送、再放送は翌週の木曜日の午後1:
30~1:55の放映でした。本格的なリスニングやリーディングの勉強にはラジオが好適です。『ま
いにちスペイン語』は午前8:00~8:15の時間帯(月~金。2011年度)にNHK第2放送(828kHz
大阪)で流れています。午後2:45~3:00の再放送もあります。午前11:45から12:00(月~金)
の『アンコールまいにちスペイン語』は、上級編です(放送時間は変更の場合あり。番組表で確認
を)。時間にしばられたくない人は、インターネットのストリーミングも利用できます。
入門書にはたくさんの種類があり、それぞれ特徴があります。ここでは福嶌教隆『くらべて学ぶ
スペイン語』(朝日出版社)を紹介しておきますが、書店で相性のよいものを探してみましょう。
スペイン語をまなんだら、もっとたくさんのことを知りたくなるはず。東谷穎人『はじめてのス
ペイン語』(講談社現代新書)と、福嶌教孝『スペイン語の贈り物』(現代書館)はスペイン語につ
いての楽しい読み物。西川喬『わかるスペイン語文法』(同学社)は、頼りになる解説書です。
10.検定試験と留学制度
スペイン語の検定試験には、毎年2回おこな
われる日本スペイン協会主催のスペイン語技能
検定(1級~6級)、通称スペ検と、サラマン
カ大学が主催するスペイン教育文化スポーツ省
公認のスペイン語検定DELE(Diplomas de
Español como Lengua Extranjera(入門~最上
級)があります。
夏にはスペイン語の語学セミナーがサンティ
アゴ・デ・コンポステラ大学(スペイン)で催されます。ホームステイや寮で1ヶ月のスペイン生
活を体験しませんか。またサンティアゴ・デ・コンポステラ(上写真)のほか、メキシコのモレロ
ス州立自治大学、エクアドルのグアヤキル大学など協定校への交換留学制度があります(詳細は国
際部に問い合わせのこと)。学外では、メキシコ政府の派遣留学生制度、マドリード大学、サラマ
ンカ大学、バルセロナ大学などが用意する外国人向けのコースもあります。1年次を終えた時点で
はまだ難しいかと思いますが、ぜひ大学4年間の目標としてください。 (文と写真:平田渡・鼓宗)