リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針 -...
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リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針
平成6年1月18日
日本公認会計士協会
会計制度委員会
目 次
一 はじめに
二 ファイナンス・リース取引の判定基準
1.ファイナンス・リース取引に該当するリース取引
2.具体的な判定基準
三 ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理及び開示
1.所有権移転ファイナンス・リース取引
2.所有権移転外ファイナンス・リース取引
3.賃貸借処理を採用する場合の注記金額の算定方法
4.セール・アンド・リースバック取引
四 ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理及び開示
1.所有権移転ファイナンス・リース取引
2.所有権移転外ファイナンス・リース取引
3.賃貸借処理を採用する場合の注記金額の算定方法
4.セール・アンド・リースバック取引
五 オペレーティング・リース取引に係る注記
六 重要性の判断基準
1.借手における重要性の判断基準
2.貸手における重要性の判断基準
七 設 例
設例1 所有権移転外ファイナンス・リース取引
1.借手の会計処理
2.貸手の会計処理
3.中途解約の場合
4.リース料が前払い又は後払いとなる場合
5.貸手の見積残存価額のある場合
設例2 所有権移転ファイナンス・リース取引
1.借手の会計処理
2.貸手の会計処理
設例3 残価保証のある場合
1.借手の会計処理
2.貸手の会計処理
設例4 維持管理費用相当額を区分する場合
1.借手の会計処理
2.貸手の会計処理
設例5 セール・アンド・リースバック取引
1.借手の会計処理
2.貸手の会計処理
一 はじめに
平成5年6月17日付けをもって企業会計審議会第一部会から「リース取引に係る会計
基準に関する意見書」(以下「リース会計基準」という。)が公表され、我が国における
リース取引に係る会計処理及び開示について、その基本とするところが定められた。
リース会計基準によれば、リース取引とは、特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)
が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(以下「リース期間」という。)
にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」
という。)を貸手に支払う取引をいうとされている。また、リース取引は、ファイナンス・
リース取引とオペレーティング・リース取引の2種類に分けられ、このうち、ファイナン
ス・リース取引については、原則として通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行
うが、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められ
るもの以外の取引については、一定の注記を行うことを条件に通常の賃貸借取引に係る方
法に準じて会計処理を行うことができるとされている。
このリース会計基準を実務に適用する場合の具体的な指針については、その前文におい
て、「日本公認会計士協会が関係者と協議のうえ適切に措置する必要があると考える」と
されていることから、当協会では、その公表以来、鋭意検討を重ね、関係者と協議を行っ
てきた。このたび、当面必要と認められる実務上の指針について結論が得られたので、こ
れを「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」として公表することとした。
なお、本実務指針では、リース会計基準において用いられている以下のような表現を、
便宜上、次のように略称している。
・リース物件の所有権が借手に移転すると認められるファイナンス・リース取引:「所有
権移転ファイナンス・リース取引」
・リース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外のファイナンス・リース取
引:「所有権移転外ファイナンス・リース取引」
・通常の売買取引に係る方法に準ずる会計処理:「売買処理」
・通常の賃貸借取引に係る方法に準ずる会計処理:「賃貸借処理」
二 ファイナンス・リース取引の判定基準
1 ファイナンス・リース取引に該当するリース取引
リース会計基準では、ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間
の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取
引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもた
らされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴っ
て生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいうとしている。
(1)解約不能
リース会計基準では、解約不能のリース取引に関して、法的形式上は解約可能であると
しても、解約に際し相当の違約金(以下「規定損害金」という。)を支払わなければなら
ない等の理由から事実上解約不能と認められるリース取引を解約不能のリース取引に準ず
るリース取引として、解約不能のリース取引と同様に取り扱うものとしている。リース契
約上の条件により、このような取引に該当するものの例としては、次のようなものがある。
① 解約時に、未経過のリース期間に係るリース料のおおむね全額を、規定損害金として
支払うこととされているリース取引
② 解約時に、未経過のリース期間に係るリース料から、借手の負担に帰属しない未経過
のリース期間に係る利息等として、一定の算式により算出した額を差し引いたもののおお
むね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース取引
(2)フルペイアウト
リース会計基準では、「リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」
とは、当該リース物件を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべて
の経済的利益を享受することとしており、また、「リース物件の使用に伴って生じるコス
トを実質的に負担する」とは、当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳
腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担することとしている。
したがって、ファイナンス・リース取引とは解約不能とフルペイアウトを条件とするリ
ース取引であるということができる。
リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかは、これらの事項を十分に
考慮して判定する必要がある。
2 具体的な判定基準
(1)リース物件の所有権が借手に移転すると認められるリース取引
リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるリ
ース取引では、借手はリース物件からもたらされるすべての経済的利益を享受することが
でき、また、当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用等のすべてをリース料
として負担することになるので、当該リース取引はファイナンス・リース取引に該当する
こととなる。
リース契約上の条件により、リース物件の所有権が借手に移転すると認められるリース取
引の例としては、次のようなものがある。
① リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権が借
手に移転することとされているリース取引
② リース契約上、借手に対して、リース期間終了後又はリース期間の中途で、名目的価
額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利(以下
これらを「割安購入選択権」という。)が与えられており、その行使が確実に予想される
リース取引
③ リース物件が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたもので
あって、当該リース物件の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難で
あるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース
取引
(2)リース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外のリース取引
リース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外のリース取引がファイナン
ス・リース取引に該当するかどうかは、基本的にその経済的実態に基づいて判断すべきも
のであるが、次の①又は②の基準のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース
取引と判定するものとする。
① 解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金
で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(以下「見積現金購入価額」という。)
のおおむね90パーセント以上であること。
② 解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数のおおむね75パーセン
ト以上であること(ただし、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中
古市場の存在等を勘案すると、上記①の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが
明らかな場合を除く。)
上記①の基準の適用に当たっては、借手が再リースを行う意思が明らかな場合を除き、
再リースに係るリース期間(以下「再リース期間」という。)又はリース料は解約不能の
リース期間又はリース料総額に含めないものとする。上記①の基準を適用する場合のリー
ス料総額の現在価値は推定額であるが、当該現在価値がリース物件の見積現金購入価額の
おおむね90パーセント以上の場合は、借手は当該リース物件の取得価額相当額、維持管
理等の費用等のほとんどすべてのコストを負担することになり、したがって、ほとんどす
べての経済的利益を享受するものと推定できるので、当該リース取引はファイナンス・リ
ース取引と判定するものとする。
上記②の基準の適用に当たっては、借手が再リースを行う意思が明らかな場合を除き、
再リース期間は解約不能のリース期間に含めないものとし、また、リース物件の経済的耐
用年数は、物理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数によるも
のとする。上記②の基準に該当するリース取引は、通常、借手がリース物件からもたらさ
れるほとんどすべての経済的利益を享受することができ、したがって、ほとんどすべての
コストを負担するものと推定できるので、当該リース取引はファイナンス・リース取引と
判定するものとする。
ただし、例外的に、リース物件の内容により、リース期間が経済的耐用年数のおおむね
75パーセント以上であっても、借手がリース物件に係るほとんどすべてのコストを負担
しない場合もあるため、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中古市
場の存在等により、それが明らかな場合には上記①の基準のみにより判定を行うものとす
る。
(3)上記(2)①の判定に当たって留意すべき事項
① 維持管理費用相当額の取扱い
借手が負担するリース料の中には、通常の場合、リース物件の維持管理に伴う固定資産
税、保険料等の諸費用(以下「維持管理費用相当額」という。)が含まれる。維持管理費
用相当額は、これをリース料総額から控除するのが原則である。しかし、一般に、契約書
等で維持管理費用相当額が明示されない場合が多く、また、当該金額はリース物件の取得
価額相当額に比較して重要性が乏しい場合が少なくない。したがって、維持管理費用相当
額は、その金額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これをリース料総額か
ら控除しないことができる。
② 残価保証の取扱い
リース契約において、リース期間終了時に、リース物件の処分価額が契約上取り決めた
保証価額に満たない場合は、借手に対して、その不足額を貸手又は貸手の指定する第三者
に支払う義務が課せられることがある。このような条件を残価保証という。リース契約上
に残価保証の取決めがある場合は、残価保証額をリース料総額に含めるものとする。
③ 製造業者又は卸売業者の場合の取扱い
製品又は商品を販売することを主たる事業としている企業が、同時に貸手として同一製
品又は商品をリース取引の対象物件としている場合には、貸手の製作価額や現金購入価額
によらず、当該リース物件の借手に対する現金販売価額を用いるものとする。
④ 現在価値の算定に用いる割引率
貸手は、リース料総額(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)とリース期間終
了時に見積もられる残存価額で残価保証額以外の額(以下「見積残存価額」という。)の
合計額を年金現価の計算式に従って割り引いた現在価値が、当該リース物件の購入価額又
は借手に対する現金販売価額(以下これらを併せて「購入価額等」という。)と等しくな
るような利率(以下「貸手の計算利子率」という。)を用いるものとする。
借手が現在価値の算定のために用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当
該利率とし、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積もられる利率
とする。
三 ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理及び開示
リース会計基準では、ファイナンス・リース取引については、原則として売買処理を行
うこととしているので、借手はリース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務
として財務諸表に計上することになる。また、この場合における当該リース物件の取得価
額の算定方法は、原則としてリース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な
見積額を控除する方法によるものとされている。これを実務に適用する場合の会計処理及
び開示を具体的に示せば次のとおりである。
1 所有権移転ファイナンス・リース取引
(1)リース資産及びリース債務の計上価額
リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として財務諸表に計上する場
合の価額は次のとおりとする。
① 借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、当該価額による。
② 貸手の購入価額等が明らかでない場合は、リース料総額(割安購入選択権がある場合
は、その行使価額を含む。)を「二 ファイナンス・リース取引の判定基準」の「2 具
体的な判定基準」の(3)④に示した割引率で割り引いた現在価値と見積現金購入価額と
のいずれか低い額による。
リース資産の計上科目は、リース物件ごとに有形固定資産の属する各科目(例えば、機
械装置、工具器具備品、車両運搬具等)に含めるものとするが、一つのリース契約に含ま
れるリース物件の相当部分が一つの有形固定資産科目に属することが明らかな場合には、
他の科目に属するリース物件を併せて一つの有形固定資産科目に含めて計上することがで
きる。
(2)支払リース料の処理
リース料総額は利息相当額部分とリース債務の元本返済額部分とに区分計算し、前者は
支払利息として処理し、後者はリース債務の元本返済として処理する。全リース期間にわ
たる利息相当額の総額は、リース開始時におけるリース料総額とリース資産(リース債務)
の計上価額との差額になる。
(3)利息相当額の各期への配分
利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として利息法による。
利息法とは、各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて
算定する方法である。当該利率は、リース料総額(割安購入選択権がある場合は、その行
使金額を含む。)を年金現価の計算式に従って割り引いた現在価値が、リース開始時にお
けるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率として求められる。
(4)維持管理費用相当額の処理
維持管理費用相当額をリース料総額から区分して会計処理する場合は、リース料総額か
ら維持管理費用相当額の合理的見積額を差し引いた額を上記(2)によって処理し、維持
管理費用相当額は、その内容を示す科目で費用に計上することになる。
(5)リース資産の償却
自己の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却額を算定する。こ
の場合の耐用年数は、経済的使用可能予測期間とする。
2 所有権移転外ファイナンス・リース取引
(1)リース資産及びリース債務の計上価額
リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として財務諸表に計上する場
合の価額は次のとおりとする。
① 借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、リース料総額(残
価保証がある場合は、残価保証額を含む。)を「二 ファイナンス・リース取引の判定基
準」の「2 具体的な判定基準」の(3)④に示した割引率で割り引いた現在価値と貸手
の購入価額等とのいずれか低い額による。
② 貸手の購入価額等が明らかでない場合は、①に掲げる現在価値と見積現金購入価額と
のいずれか低い額による。
リース資産の計上科目は、リース物件ごとに有形固定資産の属する各科目(例えば、機
械装置、工具器具備品、車両運搬具等)に含めるものとするが、一つのリース契約に含ま
れるリース物件の相当部分が一つの有形固定資産科目に属することが明らかな場合には、
他の科目に属するリース物件を併せて一つの有形固定資産科目に含めて計上することがで
きる。
(2)支払リース料の処理
上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」の(2)と同様とする。
(3)利息相当額の各期への配分
上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」の(3)と同様とする。
(4)維持管理費用相当額の処理
上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」の(4)と同様とする。
(5)リース資産の償却
① リース期間を耐用年数とし、残存価額を零として減価償却費相当額を算定する。
② リース期間終了後の再リース期間をファイナンス・リース取引の判定においてリース
期間に含めている場合は、再リース期間を上記①の耐用年数に含めるものとする。また、
リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、当該残価保証額を残存価額とする。
③ 償却方法は、定額法、級数法、生産高比例法等の中から、企業の実態に応じたものを
選定する。
(6)リース期間終了時及び再リースの処理
リース期間の終了時においては、通常、リース資産の償却は完了し、リース債務も完済
しているので、リース物件を貸手に返却する処理を除き、特に会計処理を要しない。ただ
し、リース契約に残価保証の取決めがある場合は、貸手又は貸手の指定する第三者に支払
った不足額を支払額の確定時にリース資産売却損等として処理する。
再リース期間を耐用年数に含めない場合の再リース料は、発生時の費用として処理する。
(7)中途解約の処理
リース契約を中途解約した場合は、リース資産の未償却残高をリース資産除却損等として
処理する。貸手に対して中途解約による規定損害金を一時又は分割払いで支払う必要が生
じた場合は、リース債務未払残高(未払利息の額を含む。)と当該規定損害金の額との差
額を支払額の確定時に損益に計上する。
3 賃貸借処理を採用する場合の注記金額の算定方法
リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、所定の事項
を財務諸表に注記することにより賃貸借処理することができるものとしている。この場合
の注記に必要な金額の算定方法は、上記「2 所有権移転外ファイナンス・リース取引」
に準ずるものとする。
なお、「六 重要性の判断基準」に述べる重要性の原則の適用により、リース物件の取
得価額相当額及び未経過リース料期末残高相当額の算定に当たり、リース取引開始時に合
意されたリース料総額及び期末現在における未経過リース料から、これらに含まれている
利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法による場合は、リース資産とリース債務は
リース料総額に基づいて計上することになり、利息相当額に係る金額の算定は不要になる。
4 セール・アンド・リースバック取引
借手がその所有する物件を貸手に売却し、貸手から当該物件のリースを受ける取引をセ
ール・アンド・リースバック取引という。リースバック取引がファイナンス・リース取引
に該当するかどうかの判定は、「二 ファイナンス・リース取引の判定基準」に示したと
ころによる。ただし、この判定において、経済的耐用年数については、リースバック時に
おけるリース物件の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮して見積もった経済的使用可能予
測期間を用いるものとし、当該リース物件の見積現金購入価額については、実際売却価額
を用いるものとする。
リースバック取引がファイナンス・リース取引に該当し、これについて売買処理を行う
場合は、借手は、リースの対象となる物件の売却に伴う損益は長期前払費用又は長期前受
収益等として繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減して損
益に計上する。ただし、当該物件の売却損失が、当該物件の合理的な見積市場価額が帳簿
価額を下回ることにより生じたものであることが明らかな場合は、売却損を繰延処理せず
に売却時の損失として計上するものとする。
リースバック取引がファイナンス・リース取引に該当する場合の売買処理は、リースの
対象となる物件の売却損益に係る処理を除き、上記「1 所有権移転ファイナンス・リー
ス取引」又は「2 所有権移転外ファイナンス・リース取引」と同様とする。また、賃貸
借処理を行う場合の注記に必要な金額の算定方法は、繰延処理された売却損益を費用に計
上したリース料の割合に応じリース料に加減して損益に計上する会計処理を除き、上記「3
賃貸借処理を採用する場合の注記金額の算定方法」と同様とする。
なお、借手がその所有物件を貸手に売却して、貸手から当該物件のリースを受け、更に
同一物件をおおむね同一の条件で第三者にリースする場合がある。このような取引におい
て、第三者に対するリースがファイナンス・リース取引に該当し、かつ、その取引の実態
から判断して当該物件の売買損益が実現していると判断される場合は、その売買損益は繰
延処理せずに損益に計上することができる。
四 ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理及び開示
リース会計基準では、ファイナンス・リース取引について、原則として売買処理を行う
こととしているので、貸手はリース債権を財務諸表に計上することになる。また、この場
合における当該リース債権の計上価額の算定方法については別段の規定はないが、これに
ついては、借手の場合と同様に原則としてリース料総額からこれに含まれている利息相当
額の合理的な見積額を控除する方法によるものとする。これを実務に適用する場合の会計
処理及び開示を具体的に示せば次のとおりである。
1 所有権移転ファイナンス・リース取引
(1)リース債権の計上価額
リース債権を財務諸表に計上する場合の価額は、リース物件の購入価額等による。リー
ス物件を借手の使用に供するために支払った付随費用がある場合は、これを加算した額に
よる。
(2)受取リース料の処理
リース料総額(割安購入選択権がある場合は、その行使価額を含む。)からリース債権
の計上価額を控除した額が受取利息相当額となるが、これは売上総利益に相当するものと
なる。したがって、受取リース料は、損益計算書上、次のいずれかの方法により処理する
ことになる。
① リース物件の売上高と売上原価とに区分して処理する方法
受取リース料をリース物件の売上高として処理し、当該金額からこれに対応する売買益相
当額(利息相当額)を差し引いた額(元本回収額)をリース物件の売上原価として処理す
る。
② リース物件の売買益等として処理する方法
受取リース料を売買益相当額(利息相当額)部分とリース債権の元本回収部分とに区分計
算し、前者をリース物件の売買益等として処理し、後者をリース債権の元本回収額として
処理する。
(3)利息相当額の各期への配分
利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として利息法による。
この場合に用いる利率は、貸手の計算利子率とする。
(4)維持管理費用相当額の処理
リース開始時に、受取リース料に含まれる維持管理費用相当額をリース料総額から区分
して会計処理する場合は、これらの合理的見積額を差し引いた額を上記(2)によって処
理する。この場合、リース料回収額に含まれる維持管理費用相当額は、収益(その他の売
上高等)に計上するか、又は、貸手の固定資産税、保険料等の実際支払額の控除額として
処理する。
2 所有権移転外ファイナンス・リース取引
(1)リース債権の計上価額
上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」の(1)と同様とする。
(2)受取リース料の処理
リース料総額と見積残存価額の合計額からリース債権の計上価額を控除した額が受取利
息相当額となるが、これは売上総利益に相当するものとなる。
受取リース料の処理は、上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」の(2)と同
様とする。
(3)利息相当額の各期への配分
上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」の(3)と同様とする。
(4)維持管理費用相当額の処理
上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」の(4)と同様とする。
(5)リース期間終了時及び再リースの処理
リース期間の終了により、借手からリース物件の返却を受けた場合は、貸手は当該リー
ス物件を見積残存価額(残価保証額を含む。)でリース債権からその後の保有目的に応じ
貯蔵品・固定資産勘定等に振り替えるものとする。当該資産を処分した場合は、処分価額
と帳簿価額との差額を処分損益に計上する。ただし、リース契約上に残価保証の取決めが
ある場合は、借手から受け取るべき残価保証額はリース物件の処分損益に含めて処理する
ものとする。
再リースが行われた場合は、再リース料を収益に計上し、当該固定資産について、再リ
ース期間にわたり、減価償却を行うものとする。
(6)中途解約の処理
リース契約が中途解約された場合に受け取る規定損害金については、上記(2)に準じ
て処理するものとする。
3 賃貸借処理を採用する場合の注記金額の算定方法
リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、所定の事項
を財務諸表に注記することにより賃貸借処理を行うことができるものとしている。この場
合の注記に必要な金額の算定方法は、上記「2 所有権移転外ファイナンス・リース取引」
に準ずるものとする。
なお、「六 重要性の判断基準」に述べる重要性の原則の適用により、未経過リース料
期末残高相当額の算定に当たり、期末現在における未経過リース料及び見積残存価額の合
計額から、これに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法による場合
は、リース債権はリース料総額に基づいて計上することになり、利息相当額に係る金額の
算定は不要になる。
4 セール・アンド・リースバック取引
セール・アンド・リースバック取引におけるリース取引が、ファイナンス・リース取引
に該当するかどうかの判定は、「二 ファイナンス・リース取引の判定基準」に示したと
ころによる。ただし、この判定において、経済的耐用年数については、リースバック時に
おけるリース物件の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮して見積もった経済的使用可能予
測期間を用いるものとし、当該リース物件の借手の見積現金購入価額については、借手の
実際売却価額を用いるものとする。
当該リースバック取引がファイナンス・リース取引に該当する場合の会計処理及び注記
に必要な金額の算定方法は、上記「1 所有権移転ファイナンス・リース取引」から「3
賃貸借処理を採用する場合の注記金額の算定方法」までと同様とする。
五 オペレーティング・リース取引に係る注記
リース会計基準では、オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経
過リース料を、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、貸借対照表日後1年
を超えるリース期間に係るものとに区分して注記するものとしている。
解約不能のリース取引として取り扱われるものは、「二 ファイナンス・リース取引の
判定基準」の「1 ファイナンス・リース取引に該当するリース取引」の(1)と同様で
ある。
六 重要性の判断基準
リース会計基準では、同基準を実務に適用する場合の注記の省略と簡略化に関する重要
性の原則を定めているが、このほかに重要性に係る一般原則も適用されるので、これらを
含めて重要性の原則を適用する場合の判断基準は次のとおりとする。
1 借手における重要性の判断基準
(1)資産計上又は注記を省略できるファイナンス・リース取引
リース物件の資産計上又はリース取引に係る注記を省略できるファイナンス・リース取
引は、次の①又は②のいずれかに該当するものとする。
① 重要性の一般原則の適用により、減価償却資産のうち重要性の乏しいものは、購入時
に費用として処理する方法が採用されているので、ファイナンス・リース取引についても
リース物件の価額が少額なものについては、資産計上又は注記を省略することが認められ
る。その際の判断基準としては、リース料総額が用いられるが、リース料総額にはリース
物件の取得価額のほかに利息相当額が含まれているので、その基準値は当該企業が減価償
却資産の処理について採用している基準値より利息相当額だけ高めに設定することができ
る。また、この基準は、通常取引される単位ごとに適用されるので、リース契約に複数の
単位のリース物件が含まれる場合は、当該契約に含まれるリース物件の単位ごとに適用で
きることになる。
② リース会計基準では、ファイナンス・リース取引について賃貸借処理を行う場合にお
いて、リース期間が1年未満のリース取引及び企業の事業内容に照らして重要性の乏しい
リース取引でリース契約1件当たりの金額が少額な取引については、注記を省略すること
ができるものとしているが、リース契約1件当たりの金額が少額な取引とは、リース契約
1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額のリース料総額に占める割合が重要な場
合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円未満の取引をいうものと
する。ただし、一つのリース契約に科目の異なる有形固定資産が含まれている場合は、異
なる科目ごとに、その合計金額によることができるものとする。
なお、ファイナンス・リース取引について売買処理を行う場合において資産計上を省略
できる基準も同様とする。
(2)注記を省略できるオペレーティング・リース取引
オペレーティング・リース取引のうち、注記を省略できるものの例には、次のようなも
のがある。
① 個々のリース物件のリース料総額が、上記(1)①の基準に該当するリース取引
② リース開始時からのリース期間が1年未満のリース取引
③ 契約上数か月程度の事前予告をもって解約できるものと定められているリース契約
で、その予告した解約日以降のリース料の支払を要しないリース取引における事前予告期
間に係る部分
④ 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引でリース契約1件当たりのリー
ス料総額(維持管理費用相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理
的見積額を除くことができる。)が300万円未満のリース取引
⑤ 再リース取引(再リース期間を耐用年数に含める場合を除く。)
(3)賃貸借処理を採用する場合の注記の簡略化
リース会計基準では、ファイナンス・リース取引について賃貸借処理を行う場合におい
て、下記の算式により算出した割合に重要性が乏しい場合は、財務諸表に注記することと
なるリース物件の取得価額相当額及び未経過リース料期末残高相当額の算定に当たり、リ
ース取引開始時に合意されたリース料総額及び期末現在における未経過リース料から、こ
れらに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができるも
のとしている。
(未経過リース料の期末残高)/(未経過リース料の期末残高+有形固定資産の期末残高)
=重要性判断の基礎となる割合
上記算式の未経過リース料の期末残高には、次のようなリース取引に係るものは含まれ
ないものとする。
① 売買処理が行われているリース取引
② リース期間が1年未満のリース取引
③ 個々のリース物件のリース料総額が、上記(1).①の基準に該当するリース取引
④ 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引でリース契約1件当たりのリー
ス料総額(維持管理費用相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理
的見積額を除くことができる。)が300万円未満のリース取引
⑤ 利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によっているリース取引
上記算式により算出した割合に重要性が乏しい場合とは、当分の間、当該割合が10パ
ーセント未満の場合とする。
また、ソフトウェア等の有形固定資産以外のものをファイナンス・リース取引の対象と
する場合は、これらの資産が借手の賃借対照表に計上される場合の科目(無形固定資産・
長期前払費用等)の期末残高を上記算式中の有形固定資産の期末残高に加えて判定を行う
ものとする。
(4)重要性の乏しい有形固定資産科目に属するリース物件に係る注記の簡略化
上記(3)の算式による割合が10パーセント以上となる場合であっても、有形固定資
産に属する各科目(例えば、機械装置、工具器具備品、車両運搬具等)のうち当該企業の
生産・販売等の営業活動に照らして重要性が乏しいと認められる科目について、下記の算
式により算出した割合に重要性が乏しい場合は、当該科目に属するリース物件に係る注記
は上記(3)に記載した重要性の乏しい場合と同様とすることができる。
(当該科目に属するリース物件に係る未経過リース料の期末残高)/(当該科目に属する
リース物件に係る未経過リース料の期末残高+有形固定資産の期末残高)=重要性判断の
基礎となる割合
上記算式の未経過リース料の期末残高に含まれないものについては、上記(3)と同様
とする。
上記算式により算出した割合に重要性が乏しい場合とは、当分の間、当該割合が5パー
セント未満の場合とする。
(5)売買処理を行う場合の利息相当額の取扱い
所有権移転外ファイナンス・リース取引について売買処理を行う場合において、リース
取引開始時に合意されたリース料総額及び期末現在における未経過リース料から、これら
に含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができる基準
も、上記(3)及び(4)と同様((3)の①を除く。)とする。
2 貸手における重要性の判断基準(賃貸借処理による場合の注記の簡略化)
リース会計基準では、ファイナンス・リース取引について賃貸借処理を行う場合におい
て、下記の算式により算出した割合に重要性が乏しい場合は、財務諸表に注記することと
なる未経過リース料期末残高相当額の算定に当たり、期末現在における未経過リース料及
び見積残存価額の合計額から、これに含まれている利息相当額を控除しない方法によるこ
とができるものとしている。
(未経過リース料及び見積残存価額の合計額の期末残高)/(未経過リース料及び見積残
存価額の合計額の期末残高+営業債権の期末残高)=重要性判断の基礎となる割合
上記算式により算出した割合に重要性が乏しい場合とは、当分の間、当該割合が10パ
ーセント未満の場合とする。
上記の重要性の判断は、通常、リース業を専業とする企業について適用されることはな
いが、その他の事業を営む企業がファイナンス・リース取引を行っている場合に適用され
る。
七 設 例
以下では、本実務指針によりファイナンス・リース取引の会計処理又は注記金額の算定
を行う場合の設例を示すこととする。なお、各設例に示されている会計処理又は注記金額
の算定は、本実務指針に従って具体的な会計処理や開示の実務を行うための手掛かりを与
えるための例示であり、各企業のリース取引の実情等に応じ、以下に例示されていない会
計処理や注記金額の算定も適当と判断される場合があることに留意する必要がある。
設例1 所有権移転外ファイナンス・リース取引
前提条件
(1)所有権移転条項 なし
(2)割安購入選択権 なし
(3)解約不能のリース期間 5年
(4)借手の見積現金購入価額 48,000千円
(貸手のリース物件の購入価額はこれと等しいが、借手において当該価額は明らかでは
ない。)
(5)リース料
月額 1,000千円 支払は半年ごと(各半期の期末に支払う。)
リース料総額 60,000千円
(6)リース物件(機械装置)の経済的耐用年数 8年
(7)借手の減価償却方法 定額法
(8)借手の追加借入利子率 年8%
ただし、借手は貸手の計算利子率を知り得ない。
(9)貸手の見積残存価額は0である。
(10)決算日 3月31日
Ⅰ 借手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
① 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、またその他の所有権移転に係る契約上の
条件もないため、所有権移転ファイナンス・リース取引には該当しない。
② 現在価値による判定
貸手の計算利子率を知り得ないので、借手の追加借入利子率年8%を用いてリース料総額
を現在価値に割り引くと、
数式:ファイナンス・リース取引の現在価値
現在価値48,665千円/見積現金購入価額48,000千円=101%>90%
③ 経済的耐用年数による判定
リース期間5年/経済的耐用年数8年=62.5%<75%
したがって、②によりこのリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当す
る。
(2)会計処理
リース料総額の現在価値より借手の見積現金購入価額の方が低い額であるため、48,
000千円がリース資産及びリース債務の計上価額となる。この場合に、利息相当額の算
定に必要な利子率の計算は次のとおりである。
数式:ファイナンス・リース取引の会計処理
リース債務の返済スケジュールは、〔表1-1〕に示すとおりである。
〔表1-1〕
表:[表1-1]
(注)適用利率年8.555%
例えば、×1年9月30日返済合計の内訳と期末元本の計算は次のとおりである。
利息分 48,000千円×8.555%×1/2=2,053千円
元本分 6,000千円-2,053千円=3,947千円
期末元本 48,000千円-3,947千円=44,053千円
表:会計処理
※訂正 「(注)減価償却費は、期間を耐用年数とし、・・・」 →
「(注)減価償却費は、リース期間を耐用年数とし、・・・」
(3)賃貸借処理を採用する場合の注記
所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃貸借処理を採用する場合の×2年3
月31日現在の財務諸表に係る注記事項は、次のようになる。
ファイナンス・リース取引に係る注記
表:ファイナンス・リース取引に係る注記
※訂正 a.の 期末残高相当額 38,000千円 → 38,400千円
c.の 支払リース料 12,000千円
減価償却費相当額 9,600千円
支払利息相当額 3,937千円
なお、本設例では利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によっているが、「六 重
要性の判断基準」に示した判断基準を適用した結果、当該見積額を控除しない方法を採用
し、かつ減価償却費相当額の算定方法に定額法を採用している場合には、リース物件の取
得価額相当額はリース開始時のリース料総額と一致し、リース物件の期末残高相当額は未
経過リース料期末残高相当額と一致する。同様に、当期の支払リース料は減価償却費相当
額と一致する。この場合には、次のような注記の様式によることができる。
ファイナンス・リース取引に係る注記
表:ファイナンス・リース取引に係る注記
2 貸手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
① 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、またその他の所有権移転に係る契約上の
条件もないため、所有権移転ファイナンス・リース取引には該当しない。
② 現在価値による判定
リース料総額を現在価値に割り引く利率は、リース料総額と見積残存価額の合計額の現
在価値がリース物件の購入価額と等しくなる貸手の計算利子率であるが、見積残存価額が
0であり、購入価額が48,000千円であることから年8.555%となる(〔表1-
1〕で元本と利息を区分する際に使用した利率と同一である。)。リース物件の見積残存
価額が0であるため、リース料総額を年8.555%で割り引いた現在価値48,000
千円は、貸手の購入価額48,000千円と等しい。
現在価値48,000千円/購入価額48,000千円=100%>90%
③ 経済的耐用年数による判定
リース期間5年/経済的耐用年数8年=62.5%<75%
したがって、②によりこのリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当
する。
(2)会計処理
リース債権の回収スケジュールは、〔表1-1〕と同じである。
第1法(リース物件の売上高と売上原価とに区分して処理する方法)
表:第1法(リース物件の売上高と売上原価とに区分して処理する方法)
表:第2法(リース物件の売買益等として処理する方法)
※訂正 ①×1年9月30日(第1回回収日・中間決算日)の「リース物件売買益 2,053千円」
を貸方にする。
②×2年3月31日(第2回回収日・決算日)の貸方に「リース物件売買益 1,884千
円」を追加する。
3 中途解約の場合
前提条件
(1)×4年3月31日に、リース契約が中途解約された。これに伴い、借手は貸手に対
し規定損害金23,000千円を支払うことになった。
(2)その他の条件は、1及び2と同一とする。
表:(1)借手の会計処理
表:(2)貸手の会計処理
4 リース料が前払い又は後払いとなる場合
(1)ファイナンス・リース取引の判定
前払いの場合(当半期分を前半期末に支払う)及び後払いの場合(当半期分を翌半期首
に支払う)について、借手の追加借入利子率年8%を用いて現在価値によるファイナンス・
リース取引の判定を行うと次のようになる(ただし、月末と月初の1日の差は計算上無視
する。)。
① 前払いの場合
数式:前払いの場合
② 後払いの場合
数式:後払いの場合
これらの場合は、リース料総額の現在価値が借手の見積現金購入価額(48,000千
円)又は貸手の購入価額(48,000千円)の90%以上であるため、所有権移転外フ
ァイナンス・リース取引に該当する。
(2)借手の会計処理
リース料の支払が前払いとなる場合及び後払いとなる場合のリース債務の返済スケジュ
ールは、それぞれ〔表1-2〕及び〔表1-3〕に示されている。
〔表1-2〕
表:[表1-2]
〔表1-3〕
表:[表1-3]
(注)適用利率年8.555%
表:①前払いの場合
表:②後払いの場合
※訂正 ①(注)48,000千円×1/5×1/2=4,800千円 の次に以下の仕訳を追加する。
X1年10月1日(第1回支払日)
(借)リース債務 3,947千円 (貸)現金預金 6,000千円
未払利息 2,053千円
②「元本返済額3,947千円は既に経過・・・」 → 「元本返済額3,947千円を加
算した48,000千円であるが、この3,947千円は既に経過・・・」
(3)貸手の会計処理
表:①前払いの場合
※訂正 (借)債権 48,000千円 → (借)リース債権 48,000千円
(貸)債権 3,755千円 → (貸)リース債権 3,755千円
表:②後払いの場合
※訂正 X1年4月1日(開始日) → X1年4月1日(リース開始日)
(貸)債権 3,947千円 → (貸)リース債権 3,947千円
5 貸手の見積残存価額のある場合
前提条件
(1)借手の見積現金購入価額 50,000千円
(貸手のリース物件の購入価額はこれと等しいが、借手において当該価額は明らかではな
い。)
(2)貸手の見積残存価額 4,000千円
(借手による残価保証はない。)
(3)その他の条件は、1及び2と同一とする。
(1)借手のファイナンス・リース取引の判定
借手の追加借入利子率年8%を用いてリース料総額を現在価値に割り引くと、
数式:利子率8%のリース料の現在価値
現在価値48,665千円/見積現金購入価額50,000千円=97.3%>90%
したがって、このリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する。
この場合、借手の見積現金購入価額よりリース料総額の現在価値の方が低い額であるた
め、48,665千円がリース資産及びリース債務の計上価額となる。借手は追加借入利
子率年8%を適用利率としてリース債務の返済スケジュールを作成し、1と同様な会計処
理を行うことになる。
(2)貸手のファイナンス・リース取引の判定
貸手の計算利子率は次のように算定される。
数式:貸手のファイナンス・リース取引の判定式
※訂正 6,000 + 6,000 + ・・・
(1+0.0904×1/2) (1+0.0904×1/2) →
6,000 + 6,000 + ・・・
(1+0.0904×1/2) (1+0.0904×1/2)2
現在価値47,429千円/購入価額50,000千円=94.9%>90%
したがって、このリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する。
この場合、貸手はリース物件の購入価額50,000千円で、リース債権を計上する。
貸手は計算利子率年9.04%を適用利率としてリース債権の回収スケジュールを作成し、
2と同様な会計処理を行うことになる。
設例2 所有権移転ファイナンス・リース取引
前提条件
(1)リース期間終了時に借手がリース物件(機械装置)を割安価額1,000千円で購
入できる選択権が付与されている。借手はこの有利な購入選択権の行使を予定している。
(2)解約不能のリース期間 5年
(3)借手の見積現金購入価額 48,000千円
(貸手のリース物件の購入価額はこれと等しいが、借手において当該価額は明らかで
はない。)
(4)リース料
月額 1,000千円 支払は半年ごと(各半期の期末に支払う。)
リース料総額 60,000千円
(5)リース物件の経済的耐用年数 8年
(6)借手の減価償却方法 定額法 残存価額10%
(7)借手の追加借入利子率 年8%
ただし、貸手の計算利子率は借手にとって知り得ない。
(8)決算日 3月31日
1 借手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
前提条件(1)により借手は割安購入選択権を有し、その行使が契約時において確実に予
想されるリース取引に該当する。したがって、本設例のリース取引は所有権移転ファイナ
ンス・リース取引に該当する。
(2)会計処理
リース料総額(割安購入選択権の行使価額を含む。)61,000千円を借手の追加借
入利子率年8%で現在価値に割り引くと、
数式:会計処理のための算式
※訂正 6,000 + 6,000 + ・・・
(1+r×1/2) (1+r×1/2) →
6,000 + 6,000 + ・・・
(1+r×1/2) (1+r×1/2)2
リース債務の返済スケジュールは、〔表2〕に示されている。
〔表2〕
表:[表2]
(注)適用利率年9.101%
表:会計処理
※ 訂正 X1年9月30日(第1回支払日・中間決算日)の
(借)減価償却費 → (借)減価償却費 2,700千円
2 貸手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
前提条件(1)により借手は割安購入選択権を有し、その行使が契約時において確実に
予想されるリース取引に該当する。したがって、本設例のリース取引は所有権移転ファイ
ナンス・リース取引に該当する。
(2)会計処理
リース債権の回収スケジュールは、〔表2〕と同じである。
表:会計処理
設例3 残価保証のある場合
前提条件
(1)リース契約にはリース期間終了時に借手がリース物件の処分価額を5,000千円
まで保証する条項(残価保証)が付されている。
(2)解約不能のリース期間 5年
(3)借手の見積現金購入価額 53,000千円
(貸手のリース物件の購入価額はこれと等しいが、借手において当該価額は明らかでは
ない。)
(4)リース料
月額 1,000千円 支払は半年ごと(当半期分を期首に前払い。)
リース料総額 60,000千円
(5)リース物件の経済的耐用年数 6年
(6)リース期間終了後にリース物件は2,000千円で処分された。
(7)借手の減価償却方法 定額法
(8)借手の追加借入利子率 8%
ただし、貸手の計算利子率は借手にとって知り得ない。
(9)決算日 3月31日
1 借手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
① 現在価値による判定
貸手の計算利子率を知り得ないので、借手の追加借入利子率年8%を用いてリース料総
額(残価保証額を含む。)を現在価値に割り引くと、
数式:現在価値の計算
現在価値53,990千円/見積現金購入価額53,000千円=102%>90%
② 経済的耐用年数による判定
リース期間5年/経済的耐用年数6年=83%>75%
したがって、①と②のいずれによってもこのリース取引は所有権移転外ファイナンス・
リース取引に該当する。
(2)会計処理
リース料総額の現在価値より見積現金購入価額の方が低い額であるため、リース資産及
びリース債務の計上価額は53,000千円となる。
この場合に、利息相当額の算定に必要な利子率の計算は次のとおりである。
数式:利息計算
リース債務の返済スケジュールは、〔表3〕のとおりである。
〔表3〕
表:[表3]
(注)適用利率年8.853%
表:会計処理
2 貸手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
① 現在価値による判定
貸手の適用利率年8.853%を用いてリース料総額(残価保証額を含む。)を現在価
値に割り引くと53,000千円となる。
現在価値53,000千円/購入価額53,000千円=100%>90%
② 経済的耐用年数による判定
リース期間5年/経済的耐用年数6年=83%>75%
したがって、①と②のいずれによってもこのリース取引は所有権移転外ファイナンス・
リース取引に該当する。
(2)会計処理
リース債権の回収スケジュールは〔表3〕と同じである。
表:会計処理
設例4 維持管理費用相当額を区分する場合
前提条件
(1)所有権移転条項 なし
(2)割安購入選択権 なし
(3)解約不能のリース期間 5年
(4)借手の見積現金購入価額 48,000千円
(貸手のリース物件の購入価額はこれと等しいが、借手において当該価額は明らかで
はない。)
(5)リース料
月額 1,100千円 支払は半年ごと(各半期の期末に支払う。)
リース料総額 66,000千円
(6)上記(5)に含まれる維持管理費用相当額は月額100千円である。これはリース
資産に係る固定資産税、保険料等であり、借手に明示されている。
(7)リース物件(機械装置)の経済的耐用年数 8年
(8)借手の減価償却方法 定額法
(9)借手の追加借入利子率 年8%
(10)貸手の計算利子率 年8.555%
(ただし、借手はこれを知り得ない。)
(11)決算日 3月31日
1 借手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
① 現在価値による判定
貸手の計算利子率を知り得ないので、借手の追加借入利子率年8%を用いてリース料総
額の現在価値を求める。ただし、ここでは維持管理費用相当額が支払リース料に占める割
合(9%=100千円×60ヵ月/66,000千円)が重要性があるものと判断して、
判定に当たり支払リース料から維持管理費用相当額を控除して現在価値を計算する。
数式:現在価値の計算
現在価値48,665千円/見積現金購入価額48,000千円=101%>90%
② 経済的耐用年数による判定
リース期間5年/経済的耐用年数8年=62.5%<75%
したがって、①によりこのリース取引は、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該
当する。
(2)会計処理
リース料総額(維持管理費用相当額を除く。)の現在価値より借手の見積現金購入価額
の方が低い額であるため、48,000千円がリース資産及びリース債務の計上価額とな
る。借手は、リース料の支払に伴い、支払利息、維持管理費用相当額及びリース債務元本
の返済を会計処理する。利息相当額の算定に必要な利子率の計算は次のとおりである。
数式:利息計算
※訂正 48,000 → 48,000千円
この場合のリース債務の返済スケジュールは、〔表4〕に示すとおりである。
〔表4〕
表:[表4]
(注) 適用年利率年8.555%
表:会計処理
※ 訂正 X2年3月31日(第2回支払日・決算日)の「(借)リース廣務 4,116千円」 →
「(借)リース債務 4,116千円」
2 貸手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
① 現在価値による判定
貸手の計算利子率は、年8.555%であり、〔表4〕で元本と利息を区分する際に使用
した利率と同一となる。
数式:利息計算
※訂正 48,000 → 48,000千円
現在価値48,000千円/購入価額48,000千円=100%>90%
② 経済的耐用年数による判定
リース期間5年/経済的耐用年数8年=62.5%<75%
したがって、①によりこのリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当す
る。
(2)会計処理
リース債権の回収スケジュールは、〔表4〕と同じである(なお、貸手の支払った維持
管理費用相当額はその他の売上原価として計上されているものとする。)。
表:第1法(維持管理費用相当額を収益に計上する方法)
表:第2法(維持管理費用相当額をその実際支払額の控除額として処理する方法)
設例5 セール・アンド・リースバック取引
前提条件
(1)A社(借手)は、(2)に示す自社所有の工場機械設備を、新規の設備投資の資金
を得る目的で、(3)に示す条件により、B社(貸手)に売却するとともに、その全部を
リースバックした。
(2)対象資産の内容
① 取得年月日 ×0年4月1日
② 取得価額 180,000千円
③ 自己(A社)の固定資産の減価償却
償却方法 定額法、 取得時の経済的耐用年数 6年、 残存価額 10%
④ ×1年4月1日の簿価
180,000千円-180,000千円×0.9×1/6=153,000千円
(3)セール・アンド・リースバック取引の条件
① 契 約 日 ×1年4月1日
② 売却価額 170,000千円
固定資産売却益 170,000-153,000((2)の④と同じ)=17,00
0千円
③ 解約不能のリース期間 ×1年4月1日から5年間
④ リース料は毎年1回4月1日に均等払い(×1年4月1日を初回とする。)
年額リース科 40,769千円(注)
リース料総額 203,845千円
⑤ 貸手の計算利子率は10%であり、借手はこれを知り得る。
⑥ 資産の所有権はリース期間終了日(×6年3月31日)に無償でA社に移転される。
⑦ リースバック時以後の経済的耐用年数は5年である。
(4)決算日はA社、B社ともに3月31日である。
(注)年額リース料は、期初払年金現価を求める公式で現在価値P=170,000(売
却価額)、期間n=5、貸手の計算利子率r=10%として年金額Xについて解けば求め
られる。
数式:年間リース料の計算式
1 借手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
本設例では、条件(3)⑥により、リース期間終了時に所有権が借手に移転すると認め
られるので、売買処理を要する所有権移転ファイナンス・リース取引に該当する。
(2)会計処理
A社(借手)は、資産売却の処理をした上で、実際売却価額170,000千円でリー
ス資産及びリース債務を計上する。資産売却益17,000千円は、長期前受収益に計上
される。以後は、リース資産及び長期前受収益の償却と、〔表5〕に示されるようにリー
ス債務の元本の返済、支払利息の会計処理を行う。
〔表5〕
表:[表5]
表:会計処理
2 貸手の会計処理
(1)ファイナンス・リース取引の判定
この設例は、条件(3)⑥により、リース期間終了時に所有権が借手に移転すると認め
られるので、売買処理を要する所有権移転ファイナンス・リース取引に該当する。
(2)会計処理
B社(貸手)にとっては、セール・アンド・リースバック取引の会計処理は通常のリー
ス取引と同様である。B社は実際売却(購入)価額170,000千円でリース債権に計
上する。
B社のリース債権回収スケジュールは、「表5」と同じである。
表:会計処理
以 上