アミノ酸関連化合物の 触媒作用を利用した 高光学純度タミフル … · 3 830...
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アミノ酸関連化合物の触媒作用を利用した
高光学純度タミフル合成中間体の新しい製造法
室蘭工業大学 大学院工学研究科 応用理化学系専攻
教授 中野 博人
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ー医薬品の素材ー
医薬品天然資源
合成品(人工的に作られた医薬品)
天然資源からの半合成品
バイオテクノロジーインターフェロン:動物体内タンパク質
半合成ペニシリン
合成医薬品:70%,天然医薬品30%
多くの医薬品
(植物の葉や根などから)
(抗ガン剤)
タミフルなど(抗インフルエンザ薬)
(抗生物質:抗菌剤)タキソールなど
(ウイルス性肝炎,抗ガン剤:遺伝子操作で細菌,培養細胞より)
(研究背景)
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830 品目
そのうち,合成医薬品 603品目-約73% を占める
そのうち,鏡像異性体を持つ医薬品
330 品目
世界で新しく上市された医薬品 (1983~2003年)
-互いに重ならない-
(光学活性医薬品)
(研究背景)
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鏡像異性体 (エナンチオマー)
鏡
実像 鏡像
有機化合物では炭素 C に「異なる 4 個の置換基」が結合すると
左手 右手
互いに重ね合わせることができない
ー光学活性医薬品とは?ー
光学活性 光学活性
*光学活性医薬品:鏡像異性体の一方だけを使用する
(研究背景)
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HNC N
O
OO
OH
催眠作用
NHCN
O
O O
OH
鏡
催奇作用
解熱鎮痛作用強い
CH
C
CHH
CCH3
CH3H
H3C
O
OH
CH
C
CH H
CCH3
H3CH
CH3
O
OH
鏡
解熱鎮痛作用弱い
(研究背景)
“生体のタンパク質と結合すると”
CH
C
CHH
CCH3
CH3H
H3C
O
OH
イブプロフェン
解熱鎮痛薬
ïs êƒ íYëf
HNC N
O
OO
O
サリドマイド
催眠薬
多発性骨髄腫薬ーガンの一種
H
ïs êƒ íYëf
サリドマイド事件
ー鏡像異性体をもつ医薬品 (光学活性医薬品)ー
鏡像異性体同士で薬効が異なる!!
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ーサリドマイド事件後ー
米国食品医薬品局(FAD)からの指針
鏡像異性体をもつ医薬品は,鏡像的に純粋にして市販すること,もしラセミ体で市販するならば不要の鏡像異性体が無害であることを証明すること。
純粋な鏡像異性体を得るための手法の開発が重要
★ 合成法の開発
(鏡像異性体の一方だけを得る方法: 不斉合成法 )
★ 分離法の開発
(鏡像異性体を分離する方法)
(研究背景)
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(研究背景)
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ー欠点ー
・ 金属触媒が高価
・ 残存する金属の除去が容易ではない
・ 天然資源の枯渇:レアーメタル
これらに替わる“有機分子触媒”が注目されている
現在の化学合成は“有機金属触媒”が主流
(研究背景)
工業生産レベルでの実用性に乏しい
しかし
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ー利点ー
(1) 空気や水の存在下でも実験が容易
(2) 有機金属触媒に比べて,安価
(3) 低毒性で環境負荷が小さい
(4) 生体触媒や有機金属触媒に比べ
化学的に安定
(5) 触媒の回収,再利用が簡便
(6) レアメタルの不足,高騰を
解決できる
“地球にやさしい環境調和型触媒”
(新技術)
“有機分子触媒”:有機化合物だけで触媒機能を示す
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タンパク質酵素
薬物
タンパク質は,薬物に水素結合や共有結合で結合し,その構造を変換したり,薬理活性を発現させる光学活性高分子触媒である
薬物
構造変換された薬物
or薬効発現
取り込み
ーどのような有機分子触媒を開発すればよいか?ー
(新技術)
タンパク質の触媒作用で
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(新技術)
生体内で触媒作用を示すタンパク質酵素を化学合成の有機分子触媒として使用できないか?
生体のタンパク質は高分子酵素であり,不安定なため取り扱いが容易ではない。
それでは,酵素タンパク質を構成するアミノ酸はどうか?
“タンパク質の働きは個々の “アミノ酸の機能” に依存する”
この機能を“有機分子触媒”として化学合成に活用する!!
しかし
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★ 自然界には約500種類のアミノ酸が発見されている(私たちのカラダのたんぱく質を構成しているのは20種類)
自然界はアミノ酸の宝庫
使用の利点★ 低分子★ 取り扱いやすい★ 修飾しやすい★ 大量に入手しやすい
アミノ酸関連不斉有機触媒へ誘導
(新技術)
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アミノ酸アミノ酸誘導体有機分子触媒
H2N OH
X PhPh
• CF3CO2H
様々な置換基
COOHH2N
X
(新技術)
独自に開発した触媒
特願:2009-220395
容易に誘導される
ー開発した触媒ー
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タミフル
N
CO2R1
H
O
chiral Isoquinuclidines
O
NR1O2C
HR2
R2
+
Ibogaine
NH
NMeO
Oseltamivir
O
NHCOCH3
NH2
COOEt
抗イ ンフ ルエンザ薬
抗アルコ ール中毒活性NH
N
MeOOC HO
N
N
H
OH
OAcMeO
COOMeR
R=Me : VinblastineR=CHO : Vincristine
抗ガン薬
NH
MeOOC O
H
H
OMe
Reserpine
NH
MeO
O
OMeOMe
MeO
抗高血圧薬
A : 1,2-ジヒドロピリジン類B : アクロレイ類
A B
様々な医薬品合成の製造に適応可能!!
様々な医薬品に誘導可能
(新技術)
H2N OH
PhPh
• CF3CO2H
光学活性イソキヌクリジン
最も
最近の例
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タミフル類縁化合物は光学活性体であり,効率的に低コストの社会ニーズを充たすに必要な量産技術はいまだ確立されていない
現在,タミフルが最も有効な薬
最近,タミフルに対する耐性菌を確認!!
新型インフルエンザが世界的に大流行
今後,タミフルが効かないこの耐性菌が世界的に猛威をふるうことが危惧される
耐性菌に有効な新しい薬の開発が最重要研究課題の一つ
社会生活や経済に大きな影響
しかし
(新技術) ー開発した触媒の応用の可能性の検証実例ー
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A B
C
触媒A or B
触媒
C
特願:2009-220395特願:2009-079482H. Nakano 等,Chemical Comunications, 2010, in press
Fukuyama 等,Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 5734
O
NRO2C
H
X
NCO2R CHO
+
光学活性イソキヌクリジン
80%99% ee
R: PhR: CH2Ph
X: HX: CO2Me
X
CH3CN-H2OHN O
PhPh
Ph• CF3CO2H
H2N OH
PhPh
• CF3CO2H
HN N
Bn PhPh
• HClMe
O
NBnO2C
HNCO2Bn CHO
+
光学活性イソキヌクリジン
H
28% 99% ee
MacMillan catalyst
85% >99% ee
CH3CN-H2O
A:
B:
C:
生体関連アミノ酸触媒
ー新技術の特徴・従来技術との比較ー
★新技術の利点:高収率,高光学純度
(新技術)
金属の混入なし
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★“有機分子触媒”を使用した例は?
MacMillan 触媒を使用した1例 のみ(Fukuyama等,Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 5734)
しかしながら
・ 化学収率は低い
・ 反応系中にポリマーの生成も伴うことから,
生成物の分離が容易ではない
・ 触媒が高価
ータミフル製造における従来技術の問題点と今後の展望ー
★“有機金属触媒”を使用した例:数例あり
・金属触媒が高価・残存する金属の除去の困難さ
・天然資源の枯渇:レアーメタル
(新技術)
● 上記欠点を克服した新技術の実用化の可能性は極めて高い!!
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ー実用化に向けた課題ー
アミノ酸有機分子触媒開発の今後の検討課題
1.使用スケール
2.反応スケール
3.基質適応性
4.反応適応性
★ 検討課題については、企業と共同で克服できると考えている。
(新技術)
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H2N OH
X PhPh
• CF3CO2H
● 触媒としての使用技術イソキヌクリジン誘導体合成の触媒として使用するだけではなく,他の光学活性合成中間体を製造するために使用可能
アミノ酸関連化合物
(新技術)
● 合成原料としての使用技術有機分子触媒の製造技術を生かして様々なアミノ酸関連化合物を合成して提供することが可能
ー我々が提供可能な技術ー
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1.新しい抗インフルエンザ治療薬
の化学合成への利用
2.他の医薬関連化合物の化学合
成への利用
3.アミノ酸含有化粧品開発への利用
4.健康食品開発への利用
5.動物飼料開発への利用
本技術の特徴は、“様々な光学活性有機化合物“を効率的に製造可能であることから、右記の用途が期待される。
想定される用途
想定される業界 1.医薬品、農薬メーカー
2.試薬などの化成品メーカー
3.健康食品メーカー利用者・対象としては、右記の関連企業や研究所などが挙げられる。
(新技術)
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ー企業への期待ー
企業と下記の共同研究を希望
・ 抗インフルエンザ治療薬の開発
・ 他の医薬関連化合物の開発
・ 化粧品関連化合物の開発
・ 健康食品の開発
有用有機化合物を開発中の企業、この分野への展開を
考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
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ー本技術に関する知的財産権ー
• 発明の名称 : 新規アミノアルコール誘導体塩,アミノアルコール誘導体塩構造をする不斉分子触媒及び該不斉分子触媒を用いた光学活性化合物製造方法
• 出願番号: 特願2009-220395• 出願人: 室蘭工業大学、東北大学
• 発明者: 中野博人、權 垠相、竹下光弘、松山春男
ー産学連携の経歴ー
2004-2008製薬会社と共同研究実施(抗ガン剤,抗血小板薬)
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お問い合わせ先
室蘭工業大学地域共同研究開発センター
産学官連携コーディネーター 准教授 朝日 秀定
TEL 0143-46 - 5865
FAX 0143-46 - 5879
e-mail aasan98@mmm.muroran-it.ac.jp