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アビジン金ナノ粒子を用いた 分子間相互作用の赤外分光分析 生命情報工学第 2 講座 吉田敏研究室 竹森慶之助

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アビジン金ナノ粒子を用いた分子間相互作用の赤外分光分析

生命情報工学第2講座

吉田敏研究室 竹森慶之助

緒言 streptavidin結合型金ナノ粒子

(gold-avidin)は、近年バイオテクノロジー分野においてその利用価値に注目を集めている。

gold-avidinの赤外スペクトルは、金ナノ粒子(コロイド;上図)表面の赤外吸収増強効果のために、金との結合部位周辺にあるavidin蛋白分子が非常に高感度に測定することができる 。

表面増強赤外分光(Surface-Enhanced Infrared Absorpotion Spectroscopy; SEIRAS)

•赤外光と金属微粒子および吸着分子の相互作用により、吸着分子の吸収が飛躍的に増大•金属結合部位のみが選択的にスペクトルを測定できる(金属から離れた部位の増強効果は急激に減少するため)

実験の目的

高感度高選択的な赤外分光分析にgold-avidinを利用するための基礎的研究として、10nmサイズのgold-avidinとbiotinの結合した様々な物質(biotin-oligo-dT、-IgM、-protein L)とを反応させ、gold-avidinの赤外吸収にどのような変化が起こるかを調べた。

実験方法及びgold-avidinの赤外吸光スペクトル

gold-avidin(原液18.0

μl/ml)の250倍希釈および、混合する希釈試料を作成

当量ずつ混合してサンプルを作成

1時間反応

サンプル0.3μlをFTIRに載せ、ドライヤーで乾燥

4cm-1分解能64回積算で、赤外吸光スペクトルを測定

1サンプルあたり2回測定

上記の操作を3回行う再現性の観測

absorbance/wavenumber(cm-1)

gold-avidinと反応させた試料の種類 biotin-oligo-dT

streptavidin1分子あたり4分子のbiotinと結合できる(約1285Da)

-IgM

5個のサブユニットから構成された巨大な免疫グロブリン(約900kDa)

molar ratio=4~6 moles biotin/mol IgM

-protein L

全てのIgクラスでの結合が認められる免疫グロブリン結合型タンパク質(約95kDa)

molar ratio=7moles biotin/mol protein L

結果①gold-avidinと結合させたbiotin-dT量とピーク比との相関関係

gold-avidin1モルあたりbiotin-dTが1~6モル結合するにつれ、ピーク比は上昇あるいは低下を繰り返す

gold-avidin binding biotin-dT

0

1

23

4

5

6

3

3.2

3.4

3.6

3.8

4

4.2

4.4

0 1 2 3 4 5 6 7

biotin-dT/gold-avidin(mol比)

ピー

ク比

(3350cm

-1/2880cm

-1)

◎streptavidin1モルにbiotin1モルが結合すると、biotin結合物質が立体障害となり、他のavidin-biotinの結合を阻害する

結果②gold-avidinと結合させたIgM量とピーク比との相関関係

⇒biotin結合物質の分子量の大きさに由来

biotin-dTとは異なり、最初にピーク比が低下

gold-avidin binding Anti Ms IgM Ig

01 2

46

810

2

2.5

3

3.5

4

4.5

0 2 4 6 8 10

Anti Ms IgM Ig/gold-avidin(mol比)

ピー

ク比

(3350cm

-1/2940cm

-1)

◎biotin結合物質そのものが巨大である場合、最初からavidin-biotin

結合を阻害するようにbiotin結合物質が働く 。

結果③gold-avidinと結合させたprotein L量とピーク比との相関関係

gold-avidin binding protein L(mol比0~1)

0.01 0.0250.05

0.075

0.1

0.25

0.5

0.75

1

2

2.2

2.4

2.6

2.8

3

3.2

3.4

3.6

0.01 0.1 1

protein L/gold-avidin(mol比)

ピー

ク比

(3350cm

-1/2940cm

-1)

0

ピーク比の変動の

振幅およびバラつき度が大きい

なぜスペクトルが不安定なのか??

結果③補足実験

反応後、一定時間内におけるピーク比の変化を測定

gold-avidinのピーク比の時間変化

37 20

25

31

37

39

45

49 5457

60

3

7

2632

3539 42 45 48

5256

2810 15

201714

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

0 10 20 30 40 50 60 70

調製後経過時間(min)

ピー

ク比

(3350cm

-1/2940cm

-1)

prptein L/gold-avidin=0.5(mol比)

prptein L/gold-avidin=0(mol比)

biotinの結合している時の方が、バラつき度が大きい

◎biotinのgold-avidinとの結合により、gold-avidin結合or金コロイドが不安定化し、avidinの赤外スペクトル自体が不安定化

結論 分子量の大きいbiotin結合物質物質がgold-avidin

と結合すると、gold-avidin結合or金コロイド自体を不安定化させている可能性

biotin1分子がstreptavidin1分子に結合した時、結合した分子自体が立体障害となり、他のavidin-biotin結合への阻害剤として働く可能性

biotin結合物質が大きい場合、その大きさ自身が立体障害となってavidin-biotin結合を阻害する可能性