サービス事業者ハンズオン支援事例集 · 業務の改善....

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平成22年度地域新成長産業創出促進事業「ものづくりノウハウによるサービス産業イノベーション促進/付加価値向上運動展開調査事業」 平成232中国経済産業局 サービス事業者ハンズオン支援事例集 ~サービスの現場でもカイゼンは活きる!~

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Page 1: サービス事業者ハンズオン支援事例集 · 業務の改善. 顧客の要望や嗜好へ適応するため、サービスの提供方法を見直し、ムダな作業を洗

平成22年度地域新成長産業創出促進事業「ものづくりノウハウによるサービス産業イノベーション促進/付加価値向上運動展開調査事業」

平成23年2月

中国経済産業局

サービス事業者ハンズオン支援事例集

~サービスの現場でもカイゼンは活きる!~

Page 2: サービス事業者ハンズオン支援事例集 · 業務の改善. 顧客の要望や嗜好へ適応するため、サービスの提供方法を見直し、ムダな作業を洗

はじめに 我が国におけるサービス産業は、GDPにおいても雇用労働者数においても約7割を占める

ものの、製造業或いは他国のサービス産業と比べて生産性の伸び率が低いのが課題である。サ

ービス産業は労働集約的な産業であり、顧客満足と資源投入の効率性は長く二律背反であると

されてきた。 しかしながら近年、さまざまな業種の現場での事例調査と分析から、この二律背反は存在せ

ず、顧客満足と資源投入の効率は同時に追求できること、そしてこの追求に科学的・工学的ア

プローチが有効であるということが証明されてきている。 中国経済産業局、独立行政法人中小企業基盤整備機構中国支部、中国生産性本部、社団法人

中国地域ニュービジネス協議会では、上記の状況を踏まえて4者で運営合議体を設立し、平成

20 年度より中国地域におけるサービス産業生産性向上について、考え方の普及と取り組みの

推進を図ってきた。 この度、この3年間の活動の中から、運営合議体とともに生産性向上に取り組み、成果を上

げた企業について、その取り組み内容や手法、ノウハウについて広く紹介し、中国地域のサー

ビス事業者における生産性向上への取り組みを更に加速させることを目的として、本冊子を作

成した。 本冊子がサービス事業者の皆さまの気づきや生産性向上活動へのヒントとなれば幸いであ

る。

Page 3: サービス事業者ハンズオン支援事例集 · 業務の改善. 顧客の要望や嗜好へ適応するため、サービスの提供方法を見直し、ムダな作業を洗

目次 はじめに

1.サービス産業における生産性向上の必要性と方法論································ 1

(1)生産性向上の必要性························································ 1

(2)生産性向上、イノベーションの方法論········································ 2

2.中国地域サービス産業生産性向上運動による成果事例······························ 4

(1)3Sと業務手順の見直しで物流業務を効率化

服島運輸株式会社(鳥取県米子市)·········································· 4

(2)在庫管理の見直しで売上と利益を同時に拡大

株式会社ププレひまわり(広島県福山市)···································· 6

(3)ホテルのバックヤード業務を標準化・効率化

株式会社油谷湾温泉ホテル楊貴館(山口県長門市)···························· 8

(4)医師も含む全スタッフで患者の待ち時間を短縮

医療法人相川医院(山口県山口市)········································· 10

(5)ビジネスモデルの高付加価値化

アクト中食株式会社(広島県広島市)······································· 12

3.成果事例に見る取り組みのヒント··············································· 14

Page 4: サービス事業者ハンズオン支援事例集 · 業務の改善. 顧客の要望や嗜好へ適応するため、サービスの提供方法を見直し、ムダな作業を洗

1.サービス産業における生産性向上の必要性と方法論

(1)生産性向上の必要性

我が国では、産業構造のサービス経済化が進展しており、今日ではサービス産業(第3次産

業)は、我が国GDPの約7割を占めている。しかし、わが国のサービス産業は、製造業と比

べ、また他の先進諸国のサービス産業と比べても、生産性の伸び率が低いという課題を抱えて

いる。 一般に、サービスには、以下の 4 つの特徴があると言われている。 ①無形性(形がない) ②同時性(生産と消費が同時に進行する) ③消滅性(保存ができない)

④異質性(品質を標準化することが難しい) このような特徴を踏まえた上で生産性向上を考えると、製造業においては、産出物である製

品の価値は一定であり、その一定の品質を保ったまま投入資源量を小さくするため、改善活動

が活発に行われている。一方、サービス産業においては産出物はサービス自身であり、この価

値は顧客毎の判断により決まる。このように価値が絶対化されない産出物における生産性の向

上を図る場合には、プロセス改善による資源投入量の効率化とともに、付加価値の向上や新規

ジネスの創出を同時に生み出す「サービス・イノベーション」の土壌の形成が重要となる。 ビ

サービス産業における生産性の考え方(経済産業省)

従来から、サービス産業においては、「サービスのプロセスを改善して効率化すると、付加

価値や顧客満足度が犠牲になる」といった考え方が根強い。このように、効率化を追求すると

付加価値や顧客満足度が低下し、付加価値や顧客満足度を追求すると効率が低下するという

「二律背反」に陥ってしまうということである。 ところが、先進的な取り組みを行う企業や団体の事例分析から、サービス産業においては産

出物の価値を決めるのは顧客であるため、サービスを企業の価値基準で提供するのではなく、

顧客の要望や行動にサービスの内容や提供方法を適応させることにより、顧客の価値判断につ

ながらない資源投入を削減し、顧客に価値を感じてもらえる付加価値の向上や新規ビジネスの

創出を実現していることがわかってきた。 このように、効率性と顧客満足は両立するものであり、やはりサービス産業においても生産

性の向上は必要なのである。

生産性=効率の向上

付加価値の向上・新規ビジネスの創出

品質と信頼性(品質情報の提供)

人材育成など

製造管理ノウハウの適用

科学的・工学的アプローチ

-1-

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(2)生産性向上、イノベーションの方法論

サービス産業における生産性向上やイノベーションは、企業における日頃からの絶え

間ない改善活動の繰り返しの中から生み出されている。 独立行政法人産業技術総合研究所の内藤耕氏によると、生産性向上やイノベーション

に先進的に取り組んでいる企業や団体では、リアルタイムにサービスを受けている顧客

の要望や嗜好に適応させる「顧客適応」と、顧客の要望や嗜好の理解を通じて提供して

いるサービスの内容を常に見直し、サービスプロセスを変革してその提供方法の仕組み

を構築する「仕組み化」という2つの機能が働いているとされている。また、この「顧

客適応」と「仕組み化」の2つの機能は、さらに①現場の理解、②業務の改善、③連携

と協力、④価値の再評価、⑤プロセスの組み換えという5つの要素に分割され、それら

の組合せでサービス産業の生産性向上の方法論が構成されるとしている。

サービス産業の生産性向上の機能・要素・方法論

機能 要素 方法論 現場の理解 接客や会話時の気づき、アンケート、顧客の行動観察や計測、従業員が記す日報等

から得た顧客の要望や嗜好に関する情報と従業員の作業方法に関する情報を収集

し、サービスの提供現場を理解すること。 業務の改善 顧客の要望や嗜好へ適応するため、サービスの提供方法を見直し、ムダな作業を洗

い出し、ムリな作業を改善し、サービスの品質のムラが無くなる作業方法へ改善す

るとともに、その結果を評価と検証すること。

顧客適応

連携と協力 会議やメモ、情報システム等を使い、現場で入手した顧客や従業員に関する情報を

組織的に共有し、一人一人の顧客に適応された内容のサービスを提供できるよう、

従業員間でチームワークを強化すること。 価値の 再評価

提供するサービスの価値を再評価するとともに、そのサービスを求める顧客ターゲ

ットを明確化する。そして、それを経営理念として改めて再確認し、従業員と共有

すること。 仕組み化

プロセスの 組み換え

提供するサービス規模の拡大や内容の多様化に合わせ、継続的に顧客満足が得られ

るよう、サービス提供を支える仕組みを再構築するだけでなく、作業方法の標準化

やマニュアル化を行うこと。 (出典)「実例でよくわかる!サービス産業生産性向上入門」より作成

サービス産業生産性向上の方法論

(出典)「実例でよくわかる!サービス産業生産性向上入門」

-2-

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このような流れによりサービス内容の「顧客適応」と提供方法の「仕組み化」を進める

ことを通じて、以下のようにサービス・イノベーションを実現することができるのである。 ①現場作業の見直しでサービス品質の向上

サービスの提供作業のムリやムダを減らすことができれば、従業員の作業負担が軽

減される。これにより得られる余力や時間、費用で、本来やらなければならない顧客

満足を生む作業に、従業員はより多くの資源を投入できるようになり、提供されるサ

ービスの品質は向上する。 ②価値の再評価で顧客ターゲットの明確化 時代の変化についていくために、直面する様々な制約から、提供しているサービス

の価値を再評価し、顧客ターゲットを明確化するとともに、それに合わせてサービス

プロセスを再構築する。 ③作業手順化で顧客満足の向上 作業手順を決めることで、提供されるサービスの内容や品質のムラが解消される。

これにより、安定した顧客満足を継続的に得られるようになり、結果として固定客化

が進む。

-3-

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2.中国地域サービス産業生産性向上運動による成果事例

改善テーマ

物流センターの現場業務の効率化 取組のきっかけ 荷物の取扱量や種類が長年にわたって徐々に増えていったにもかかわ

らず、物流センター内では仕分、保管、ピッキングなどの業務の抜本的

な見直しが行われていなかった。 このため、理由は判然としないものの、物流センターの現場業務が非

効率であるという認識が社内に広まっていた。 課題1 3Sを通じた現場業務の見える化

課題2 仕分業務の効率化

課題3 ピッキング業務の効率化 ○整理・整頓・清掃が不十分で、汚れの染みついた場所もあった。 ○モノを置く場所や数量がルールとして明確化されていなかった。 ○整理・整頓・清掃に、組織的・継続的に取り組む体制がなかった。

○物流業務の道具、掃除道具、消火器などの置き場をペンキで明

示し、そこに置く数量も定めた。 ○汚れが染みついた床などはペンキを塗り直し、ホコリや汚れが

無い状態を保つことにした。これにより、荷物の汚れも防いだ。 ○現場の班を3Sのチームとして、顔写真入りの清掃チェックシ

ートを現場に掲示し、互いに別の班の清掃場所を5点評価して

いる。

○清掃状況を5点評価の数字で見える化し、チーム間で競い合う

ことにより継続的に向上していく仕組みができた。

服島運輸株式会社(鳥取県米子市)

3Sと業務手順の見直しで物流業務を効率化

≪取組Ⅰ≫ 3Sを通じた現場業務の効率化

分析

倉庫内清掃チェックリスト 満点 500点1月度

500

昼勤 1班 昼勤 2班 夜間 1班 夜間 2班

A氏 D氏 G氏 J氏

B氏 E氏 H氏 K氏

C氏 F氏 I氏 L氏

実践

成果

○○係長・○○主任 ○○課長・○○主任

50

250

200

150

100

450

400

350

300

-4-

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≪取組Ⅱ≫ 仕分業務の効率化

○仕分業務を撮影し、映像の再生と一時停止を繰り返し、各瞬間に

おける手待ちの従業員を見つけ出した。 ○従来、現物・伝票の照合業務と荷物のモップ掃除は2人で担当し

ていたが、これを1人で担当することとした。 ○ベルトコンベアーの川下で荷物を受け取りパレットに積み上げる

人数を、3人から2人に減らした。 ○仕分業務の人員を、6~7人から4人へ効率化できた。

○複数のフォークリフトが物流センター内の通路で鉢合わせになり、

すれ違ったり、道を譲ったりする際に、時間のロスがあった。 ○各フォークリフトの担当エリアを分けるゾーンピッキング方式へ

変更し、フォークリフトが鉢合わせにならないようにした。 ○フォークリフトの鉢合わせがなくなり、1人1時間当たりピッキ

ング数が、従来の 50~60ケースから現在は 90ケースに増加した。 ○これまでに習得した3S、仕分・ピッキング業務の見直しなどの

手法を活用し、平成 23 年春に物流センター全体のレイアウト改

善を実施する予定である。

分析 改善前 6~7人体制

実践

改善後 4人体制

成果

≪取組Ⅲ≫ ピッキング業務の効率化

分析

実践

成果

今後に向けて

従来、フォークリフトが鉢合わせになっていた 担当エリアを分け、鉢合わせを回避した 企業プロフィール

鳥取県米子市に本社を

有する地元大手の総合

物流企業。

本社:鳥取県米子市

和田町 600

代表者:服島 龍男

資本金:4,200 万円

従業員:223 人

-5-

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株式会社ププレひまわり(広島県福山市)

在庫管理の見直しで売上と利益を同時に拡大

改善テーマ

欠品を防ぎながら在庫を削減 取組のきっかけ ㈱ププレひまわりは、73 店舗(平成 22 年 2 月)を展開するなど、急

速に店舗網を拡大してきた。その一方で、店舗ごとに異なる売れ筋商品

への対応に苦慮したり、そのための在庫管理の手法にも店舗間で違いが

生じてくるなど、チェーンストアとしての強みが十分に発揮しきれず、

欠品や過剰在庫が生じる店舗もみられ始めていた。 課題 欠品を防ぎながら、在庫を削減する

○店舗で、売れ筋・死に筋商品に分けた在庫管理がされていなかった。

○今後の売れ筋・死に筋情報を本部が店舗に十分発信していなかった。 ○店舗の在庫情報と本部の売れ行き見通し情報を共有化することで、

売れ筋商品については欠品を防ぎ、死に筋情報については不良在庫

を防いだ。先ず 5 店舗でテスト的に実施した。

分析

実践

≪取組Ⅰ≫ 店舗・本部間での情報の共有化 実施体制

若手リーダーにより構

成される「次世代経営プ

ロジェクトチーム」にお

いて、在庫削減を 重要

テーマに掲げた。

これにより、次世代の幹

部となる人材の育成を

図った。

また、3カ月に1回、梶

原社長が本チームの会

議に参加することで、全

社的な推進力を確保し

た。

店    舗

現在の売れ筋在庫・死に筋在庫の確認

本    部

今後の売れ筋商品・死に筋商品の情報

教育システム

○店舗マネジメント と発注手法の教育 を計画的に実施

ノウハウ水平展開

○モデル店や優良店 のノウハウを 他店に水平展開

ITシステム

○在庫発注の手法を ITシステム として構築

≪在庫の適正発注を支える仕組み≫

 店舗の全職員が現状と見通しを踏まえて適正発注

 ○売れ筋商品については、欠品を防ぎ、売上を増やす ○死に筋商品については、不良在庫を低減し、利益を増やす

-6-

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○死に筋商品を明確に意識しながら発注と在庫管理を実施したた

め、次の「取組Ⅱ」と合わせて在庫量を大幅に削減することがで

きた。 ○売れ筋情報を活用したため、欠品数も従来よりやや少ない水準に

改善できた。 ○回転率が低いにも関わらず、品揃えの必要性から仕入れざるを得

ない商品が売れ残るケースがみられた。 ○回転率が低い商品については、在庫を倉庫に集約し、取引先への発

注も本部が一括して行う方式に転換した。 ○店舗における売れ残り在庫を低減できたため、上記の「取組Ⅰ」と

合わせて、在庫量を大幅に削減できた。 ○平成 23 年度は、モデル店における在庫削減と欠品抑制の手法を、

全店舗に水平展開する予定である。 ○また、従業員を対象とした発注方法等に関する教育、店舗マネージ

ャーを対象とする人材育成手法の教育を拡充するとともに、在庫削

減と欠品抑制の手法をITシステムとして社内に定着させることも

検討している。

成果

分析

実践

≪取組Ⅱ≫ 店舗在庫の集中管理

成果

今後に向けて

企業プロフィール

兵庫~広島県に 73 店舗

を展開する中堅ドラッ

グストア。

本社:広島県福山市

西新涯町 2-10-11

代表者:梶原 秀樹

資本金:4,600 万円

従業員:1,200 人

-7-

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株式会社油谷湾温泉ホテル楊貴館(山口県長門市)

ホテルのバックヤード業務を標準化・効率化

改善テーマ

サービス品質を維持して業務を効率化 取組のきっかけ ㈱油谷湾温泉ホテル楊貴館は、 大で 22 時間滞在(午後 2 時にチェ

ックインして翌日正午にチェックアウト)できるなど、ゆったりとした

癒しの空間を提供している。しかし、バックヤードでは、食事や客室清

掃などで長時間勤務や業務量の変動が大きいため、業務の効率化などの

対応が求められていた。 課題1 個々の業務の効率化

課題2 需要変動に柔軟に対応できる勤務シフト

≪取組Ⅰ≫ パントリーの動線分析とレイアウト改善

分析

○パントリーでの食器洗いについて動線分析を行ったところ、中央にあ

るステンレス製作業台などが、作業を妨げていることが判明した。

実践

○先ずステンレス製作業台を撤去し、さらに不要なモノを探した結果、

生花用冷蔵庫と食器棚も撤去した。

成果 ○ステンレス製作業台などを撤去

し、従業員や食器を載せた台車

が通りやすくなったことなどか

ら、作業時間を 1 日当たり 25~30 分短縮できた。

-8-

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○パントリーの食器洗いの作業時間を計測し、食器1枚を洗う標準時

間や手待ち時間の有無などを把握した。 ○手待ち時間を短縮するため、食洗機の

入口側のコンベアに並べる枚数を決め、

それを投入したら出口側に回って食器

を取り出すという標準作業を考案した。 ○食洗機の利用 1 回につき、作業時間

を約 6 秒短縮した。

○作業手順書が無いため、作業の手順が人によって異なり、

所要時間やサービス品質にバラツキがあった。 ○各グループのリーダーがKJ法などで課題を抽出した際、

作業手順書をつくりたいという意見が多数みられた。 ○作業の個人差はお茶替えの作業で顕著であったことから、

先ず、お茶替えの作業手順書を作成した。 ○作業の個人差がなくなり、多数の従業員で仕事を分担できるように

なった。 ○写真入りの作業手順書にしたことで仕事を教えやすくなり、指導時

間を約 15 分短縮できた。 ○従業員自身が動線分析、作業時間分析、作業手順書づくりなどに取

り組み、その手法や効果を徐々に習得しつつあり、今後、このよう

な改善活動を全部門で展開する予定である。

≪取組Ⅱ≫ 作業時間分析による業務改善

分析

≪取組Ⅲ≫ 作業手順書の作成

実践

成果

分析

実践

成果

今後に向けて

企業プロフィール

山口県長門市の油谷湾

の入江を一望できるリ

ゾートホテル。

本社:山口県長門市

油谷伊上

代表者:岡藤 智加子

資本金:7,500 万円

従業員:45 人 -9-

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医療法人相川医院(山口県山口市)

医師も含む全スタッフで患者の待ち時間を短縮

改善テーマ

患者の待ち時間の短縮 取組のきっかけ 医療法人相川医院では、平成 20 年度には、待ち時間が 1 時間半以上

に達する患者が半数以上を占めていた。 待ち時間の短縮は、患者満足度の向上にとって不可欠であることは勿

論、余分な人件費を抑制して収益性を改善させるうえでも重要な課題と

なっていた。 課題 待ち時間の短縮(患者満足度と収益性の向上につなげる)

≪取組Ⅰ≫ 標準作業時間の設定

分析 ○医師と理学療法士について作業時間を計測し

たところ、医師によって患者 1 人当たりの診

察時間に違いがあることが明らかとなった。 ○診察時間が長い医師は、自ら理学療法の処置

を施すなど、丁寧な診察を行うことがあった。 ○理学療法士に、若干の手待ちがみられた。

時刻 受付者数 ロビー 受付・会計 相談室 いるか 診察室前 n 1診察室 診察時間 移行時間

30 11

00 10 2 総師長

31人

30 8 2 2

1 9:50-9:51.5 1.5 0.5

38 総師長 2 9:52-9:54.5 2.5 0

40 36人 3 3 9:54-処置室-9:57.5 3.5

45 4 9:58.5-10:00 1.5

00 8 1 4 5 10:00.5-10:02 1.5 1

6 10:03-10:05 2 1

7 10:06-10:07 1 0

8 10:07-レ

9 10:09-10:

10:12-10:16 4 3.5

8:

9:

9:

9:

9:

9:

1

0.5

10:

ントゲン10:08-10:17 10 2

11 2 1

10

実践

○患者によってケース・バイ・ケースではあるが、原則として「患者 1人当たりの診察時間の“目安”を 3 分とする」ことを医師に了承して

もらい、それを実施した。 ○理学療法の処置などは、医師ではなく専門技術者に任せることとした。 成果

○医師による診察時間の違いが小さくなるとともに、2 名の医師ともに

3 分程度で十分な診察を終了することが多くなった。

-10-

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○看護師が、医師から点滴の指示を受けて、患者に点滴の注射

針を刺し終えるまでの作業時間と動線を調べたところ、手順

や作業時間に個人差があること、動線に無駄な動きがあるこ

となどが判明した。 ○看護師に自分の動線を確認させた後、 短となる動線や医療

器具のレイアウトなどを看護師自身に検討させた。この検討

内容を試行し、レイアウトの改善と動線の修正を行ったうえ

で、点滴の標準作業を作成した。 ○同様に、採血以外の検査(レントゲン、胃カメラ、胃透視)

も標準作業を設定した。 ○点滴作業の所要時間を 1 サイクル当たり 10 秒短縮できた。また、スタッ

フ自身が標準作業づくりを体験したことで、今後の業務改善の基盤が整

った。 ○「取組Ⅰ」、「取組Ⅱ」、待合室での番号札の設置、予約診療制度の活用な

どにより、患者の待ち時間は以下のように短縮された。

平成 21 年 12 月調査 平成 22 年 2 月調査 待ち時間

人数 構成比 人数 構成比

~30 分 15 人 4.5% 40 人 12.1%

31~60 分 60 人 17.9% 120 人 36.4%

61 分~90 分 160 人 47.8% 100 人 30.3%

91 分~ 100 人 29.9% 70 人 21.2%

合計 335 人 100.0% 330 人 100.0%

○所要時間を短縮し、収益性を向上させようとする考え方が、医師も

含めた全スタッフの間で定着したことから、業務改善の取組を一段

と加速させる予定である。 ○短縮された作業時間を活用し、在宅医療(往診)を拡充しており、

今後も収入の拡大に向けた取組を強化する。

分析

≪取組Ⅱ≫ 標準作業の設定

実践

成果

【標準化前の動線】

【標準化後の動線】

今後に向けて

法人プロフィール

山口県山口市で外科・整

形外科・内科・リハビリ

テーション科の医療を

提供。高齢者専用賃貸住

宅、訪問看護ステーショ

ン、訪問介護事業などの

事業も運営。

本社:山口県山口市

鋳銭司 5964-1

代表者:相川 文仁

資本金:13,000 万円

従業員:80 人

-11-

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アクト中食株式会社(広島県広島市)

ビジネスモデルの高付加価値化

改善テーマ

ビジネスモデルの高付加価値化 取組のきっかけ アクト中食㈱は、業務用食品スーパーを、直営店とFC店(契約先企

業による経営)として展開している。 近年、食品スーパー業界では競合が激化しており、同社においては、

新規出店によるスケールメリットと合わせて、立地特性に対応した高付

加価値化により個々の店舗の収益性も高めたいと考えていた。 課題 高付加価値なビジネスモデル

○新商品開発力の強化

○値入の適正化

既存のビジネスモデルの高付加価値化を図るため、モデル店を選定し、

外部環境や自社の特性などを踏まえた戦略の再検討を行っている。これ

らの取組のうち、新商品開発力の強化と値入の適正化を紹介する。 ○バイヤー1 人当たりの業務量が増加してきた影響から、バイヤーは、

食品メーカーや卸売業者の営業マンとオフィスで商談して商品開発を

済ませることが増えていた。 ○平成 22 年秋、バイヤーとは別に新商品開発の専担者を設置した。そ

の担当者は、業務用食品スーパーの役員に直属し、食品工場や農水産

物の産地などを訪問して経営トップと商談し、新商品を開発している。 ○新商品開発の専担者設置から間もないため、大きな成果が得られるの

はこれから先になる。新体制により、オリジナリティと価格競争力の

高い商品を、スピーディに開発することが期待される。

≪取組Ⅰ≫ 新商品開発力の強化

分析

実践

成果

実施体制

本事業に際し、「新規F

C店開発」、「既存FC店

支援」、「新商品開発」に

関する3つのプロジェ

クトチームを立ち上げ

た。これらのチームに

は、業務用食品スーパー

の経営陣が参加し、計画

策定、進捗管理、データ

の検証などを指揮して

いる。

-12-

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≪取組Ⅱ≫ 値入の適正化

分析

○商品や店舗によっては、値入率を店舗の担当者が「従来と同じ比率」、「自

社他店と同じ比率」で決めているケースがみられた。 ○このため、その値入率が適正水準であるかどうか判断できない商品もみ

られた。 実践 ○平成 22 年秋から、モデル店において、一部の商品の値入率を動かし、販

売点数とその商品全体の値入額の変化を調べた。

○値入率の決定に際しては、競合店の販売単価などを参考とした。 成果

○値入率を上げた商品において、販売点数も増えたケースが多数確認され

た。例えば、カレーでは、販売点数が減ったのは「辛口」のみで、商品

全体の値入額はいずれも増加した。

値入率 販売点数 値入額

カレー甘口

カレー中辛

カレー辛口

○このことから、モデル店では、値入率の改善の余地が大きいこと、販売

点数は値入率以外の販売促進によって決まるところも大きいことなどが

確認された。

今後に向けて

○平成 23 年春頃までモデル店でのトライアルを通じてビジネスモデルの

高付加価値化の手法を検討し、その後、全店舗に水平展開を図る予定で

ある。

企業プロフィール

業務用食品スーパーを、青

森県から沖縄県にいたる

エリアで 79 店舗展開して

いる。

本部:広島県広島市

南区宇品西 2-7-26

代表者:平岩 宏隆

資本金:7,000 万円

従業員:36 人

(パート除く)

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3.成果事例に見る取り組みのヒント

サービス産業における生産性の向上は、効率化やムダの排除だけで達成できるものではない。

それらとともに、サービス品質の向上やサービスイノベーションにも取り組むことが重要である。 これらは取り組みの観点、手法ともに分けて考える必要があり、それぞれの企業ステージや課題

の内容によって使い分けることが肝要である。 効率化やムダの排除などは、内部効率の向上を目指すもので効率視点であり、これには製造業

における生産性向上の取り組みにおいて見られる「悪さの見える化」と改善活動が応用できる。

一方、サービス品質の向上やサービスイノベーションは、付加価値の向上を目指すもので顧客視

点であり、「良さの見える化」によりビジネスモデルのブラッシュアップや従業員のモチベーショ

ンアップを図る。 いずれも、経営陣(特に経営者)の強い意欲、意思が存在し、そのリーダーシップのもと、現

場従業員を含むプロジェクトチームを設置し、同じ課題意識のもとで立場を越えて自由に発言・

提案できる土俵づくりが第一歩となる。 「悪さの見える化」では、「プロジェクトチーム編成」の後、「実態把握」を行い、問題の本質

を究明する。この「実態把握」では、作業時間のムダ、動きのムダなど、悪い部分を見える化す

ることがポイントになる。 この結果に基づいて、「改善目標の設定」を行い、「改善の試行」に取り組む。この試行を繰り

返すなかで、ベストプラクティスを見つけ出し、それを社内に定着させるための「仕組みづくり」

を行う。この仕組みとしては、作業手順書やスケジュール表などがある。 これらの取り組みが目に見える成果を上げた場合には、プロジェクトチーム構成員を始めとす

る関係者にとっての成功体験となり、次なる目標、活動に向かうモチベーションの向上が促され

る。

改善の試行

プロジ

ェクトチー

ム編成

改善目標の設定

モチベーション

リーダーシップ

作業時間分析動線分析レイアウト分析スキル分析

(個人を分析した後、 個人・組織間で比較)

標準時間標準作業3S・5Sレイアウト改善スキルアップ研修業務量平準化

作業手順書スケジュール表(予算実績管理)スキル習得表進捗管理表情報システム教育システム

実態把握 仕組づくり成功体験と

モチベー

ションのアップ

「良さの見える化」についても、全体の手順は、上記の「悪さの見える化」とほぼ同様である。 大きな違いがある点としては、「実態把握」においては、社内の問題を見つけるのではなく、顧

客や市場など社外の情報を集めたり、社内の模範的な従業員を見つけたりすることが求められる。 続く「新手法の考案」では、品揃え(商品の組み合わせ)、ビジネスモデル(経営資源の組み合

わせ)、笑顔・丁寧な接客(従業員の心)、熟練のノウハウ(従業員の技)などについて、従来よ

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りもプラスアルファするやり方を考案する。 その後は、「悪さの見える化」と同様で、「改善の試行」、「仕組づくり」を行い、成功体験が次

なる目標、活動に向かうモチベーションの向上を促す。

改善の試行

プロジ

ェクトチー

ム編成

モチベーション

リーダーシップ

顧客との会話顧客アンケート販売データ分析市場動向分析他社動向分析模範的な従業員

品揃え試行ビジネスモデル試行モチベーション施策ノウハウの伝授

ルール(作業手順書)情報システム教育システム人事システム

実態把握 仕組づくり

品揃えビジネスモデル笑顔・丁寧な接客熟練のノウハウ

新手法の考案成功体験と

モチベー

ションのアップ

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中国地域サービス産業生産性向上運動「運営合議体」

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<編集・発行・お問い合わせ先>中国経済産業局

産業部

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