ニホンジカから尾瀬をまもる取り組み ·...

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-1- ニホンジカから尾瀬をまもる取り組み 群馬県環境森林部自然環境課 はじめに 尾瀬では、従来生息していなかったニホ ンジカ(以下「シカ」)により、尾瀬ヶ原 を中心に湿原の踏み荒らしやミズバショウ などの食害が深刻化しており、貴重な自然 景観や植物生態系に悪影響を及ぼしていま す。 尾瀬国立公園シカ管理方針 このため、環境省や群馬県など尾瀬に関係のある自治体などで構成する尾瀬 国立公園シカ対策協議会は、2009年3月「尾瀬国立公園シカ管理方針」を 策定しました。 管理方針では、尾瀬からのシカ排除を最終目標としたうえでシカによる生態 系への影響を低減することを当面の目標として設定し、環境省、関係県、関係市町 村及び研究機関の役割分担を明確化し捕獲等の対策に取り組むこととしました。 県の取り組み (1)捕獲 環境省がシカの季節移動ルートについ て調査したところ、シカは日光方面と尾 瀬の間を移動していることが分かりまし た。そこで、群馬県ほか関係機関で構成 する「 群馬県尾瀬地域生物多様性協議会」 では、環境省が行った調査結果を活用し、 平成 25 年度からシカの移動時期に合わせ て移動ルート上で捕獲を実施しています。 群馬県、片品村、東京電力 (株)、尾瀬山小屋組合、(公財)尾瀬保護財団の5団体で構成 ライトセンサスによる確認個体数の推移(環境省調査結果尾瀬ヶ原のシカ くくりわな設置の様子

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Page 1: ニホンジカから尾瀬をまもる取り組み · 尾瀬では、従来生息していなかったニホ ンジカ(以下「シカ」)により、尾瀬ヶ原 を中心に湿原の踏み荒らしやミズバショウ

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ニホンジカから尾瀬をまもる取り組み

群馬県環境森林部自然環境課

1 はじめに

尾瀬では、従来生息していなかったニホ

ンジカ(以下「シカ」)により、尾瀬ヶ原

を中心に湿原の踏み荒らしやミズバショウ

などの食害が深刻化しており、貴重な自然

景観や植物生態系に悪影響を及ぼしていま

す。

2 尾瀬国立公園シカ管理方針

このため、環境省や群馬県など尾瀬に関係のある自治体などで構成する尾瀬

国立公園シカ対策協議会は、2009年3月「尾瀬国立公園シカ管理方針」を

策定しました。

管理方針では、尾瀬からのシカ排除を最終目標としたうえでシカによる生態

系への影響を低減することを当面の目標として設定し、環境省、関係県、関係市町

村及び研究機関の役割分担を明確化し捕獲等の対策に取り組むこととしました。

3 県の取り組み

(1)捕獲

環境省がシカの季節移動ルートについ

て調査したところ、シカは日光方面と尾

瀬の間を移動していることが分かりまし

た。そこで、群馬県ほか関係機関で構成

する「*群馬県尾瀬地域生物多様性協議会」

では、環境省が行った調査結果を活用し、

平成25年度からシカの移動時期に合わせ

て移動ルート上で捕獲を実施しています。

*群馬県、片品村、東京電力 (株)、尾瀬山小屋組合、(公財)尾瀬保護財団の5団体で構成

ライトセンサスによる確認個体数の推移(環境省調査結果)

尾瀬ヶ原のシカ

くくりわな設置の様子

Page 2: ニホンジカから尾瀬をまもる取り組み · 尾瀬では、従来生息していなかったニホ ンジカ(以下「シカ」)により、尾瀬ヶ原 を中心に湿原の踏み荒らしやミズバショウ

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シカの捕獲実績(単位:頭)

(2)調査

わな捕獲によりシカの移動ルートが変わる可能性があることから、自動撮影カ

メラを設置し、シカの行動について調査を実施しました。

4 今後の取り組み

赤城山での捕獲事例などから、来年度はシカの移動ルートに変化が生じ、捕獲数

が減少することも予想されます。このため、協議会で一層の連携を図り、地元猟友

会等関係者の協力を得て捕獲を継続するとともに、対策の効果検証も行って行きま

す。

日光方面

シカの季節移動ルート(春季)

尾瀬ヶ原尾瀬沼

シカの季節移動ルート(秋~冬季)

春季 秋~冬季 合計 春季 秋~冬季 合計

国道401号沿 29 53 82 18 24 42 124丸沼周辺 44 22 66 133 34 167 233

73 75 148 151 58 209 357

H25年度 H26年度合計

捕獲場所(国道401号沿線)<捕獲>

・くくりわな設置 約110基

5/1~6/5 18頭

11/7~12/18 24頭

・銃器(巻き狩り)

12/20 0頭

<調査>

・自動撮影カメラ10台程度設置

捕獲場所(丸沼周辺)<捕獲>

・くくりわな設置 約60基

4/17~6/4 133頭

10/15~12/24 34頭

<調査>

・自動撮影カメラ10台程度設置