オマーンの石油・天然ガス産業の現況と展望 · (2)lng輸出入...
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
更新日:2013/12/27
調査部:濱田 秀明
オマーンの石油・天然ガス産業の現況と展望
(各社ホームページ、各種報道、他)
○オマーンは産油国として GCC に加盟するが、独自路線を堅持しつつ、日本にとっては、原油および
LNGの供給国の一つ。特にオマーン LNGは他に比べて最も低い価格で輸入されている。
○小規模ながら数多くの油ガス田が存在しており、重質油田には増進回収法(EOR)の導入が進められて
いる。さらに最近、大規模タイトガス田開発の契約が調印された。一方、新規にガス田の発見もなされ
るなど、多様な開発が進められている。
○同国は穏健かつ多方面と深いパイプを築く外交により、イランとアメリカとの仲介を果たしてきた。今
後、イランへの制裁緩和が進捗するならば、イランからの海底パイプラインを使った天然ガス輸入構想
も、さらに実現性を増してくる。
○垂直統合型のプロジェクト拡充に加え中部ドクム地域での大規模原油貯蔵・港湾施設整備プロジェク
トも予定されている。
○「アラブの春」による石油・天然ガス産業への影響を含め、オマーンについて俯瞰的に整理して今後
の展望を考察する。
1.石油・天然ガス開発と国の概観
(1)石油・天然ガスの埋蔵量・生産量
オマーンの確認埋蔵量は2012年末で原油は55億bbl、天然ガスは33.51Tcfであり、生産量は、
原油が922千b/d、天然ガスが265億m3/年である。(2013年6月版BP統計。)
同国の石油・ガス省のジャーシミー次官が本
年 8 月に国営メディアのインタビューに答えて
述べたところでは、オマーンの原始原油埋蔵量
は500億バレルと見込まれ、そのうち50億バレ
ルは生産可能な状態である。過去数年で、70億
から80億バレルの石油が生産されており、採掘
プログラムは順調に進展し、採掘技術は発展を
遂げている。
生産量は、2001年の960千b/dをピークに減
出典:各種資料を基にJOGMEC作成
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原油(b/d)
少が続き、2007年には715千b/dまで落ち込んだが、その後順調に回復し、2011年は891千b/d、
2012年8月には940千b/dの水準まで達した。
出典:BP Statistical Review of World Energy June 2012(原油にはコンデンセート含む)
(2) 石油・ガス開発の特徴
石油・ガス省によれば2009年までに135の油ガス田を確認。しかし油田の多くが老朽化に伴う
生産減退を起こしているが、これを回復させたのが、EOR の実施である。オマーンでの EOR に
は、水蒸気注入(熱攻法)、ガス注入(ミシブル攻法)、化学品注入(ケミカル攻法)などが実施さ
れている。しかし、同国では昨今1次エネルギー需要の高まっていることもあり、国内向けガスの
不足が深刻化している。このような事情もあることから、ガスの再圧入や天然ガスを熱源とした水
蒸気圧入によるEORの拡大は困難であり、化学物質やCO2などを注入する方法へのシフトが検
討されている。
天然ガスについては、国内への発電需要の他に、一定の産業が成長しており、石油化学、鉄鋼、
アルミ精錬などの産業に供給し、さらに中小企業へも供給することで産業育成を狙っている。これ
に加えて、LNGで海外へ輸出している。
国内での人口増加に加えて産業規模が成長していることから、国内向けガスが不足し始めている。
これへの対応のため、2011年より19.5億m3/年の天然ガスをカタールからパイプラインでUAE、
オマーンへ輸入している。さらには、イランからの海底パイプラインによるガス輸入も本年8月に
両国間で覚書が調印されている。
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ガス(十億㎥/年)
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オマーンにおいては、新たな入札によって鉱区開放を実施し、探鉱の成功によって生産量回復を
実現させる方針である。
2.日本とオマーンとの原油・LNG輸出入
(1)原油の輸出入
本年 1月から 10月までの製品を除いた我が国の原油の輸入量では、全体の 2.2%を占めてい
る。一方、オマーン側からみた原油輸出先では、石油・ガス省のデータによれば2012年中に中国
向けが全体の 50.1%を占めた。日本は第 2位となる 13.7%であり、他の輸出先を含めてみれば、
オマーンからの輸出原油の仕向地は、大半がアジア向けとなっている。視点を極東からに置き換え
てみれば、我が国の原油輸入割合ではオマーン原油は 2.2%を占めるにすぎないが輸入数量は前年
に比し倍増しており、中国にとっては第4位となる8.6%を占めている。
オマーン原油輸出先国別割合(2012年)
出典:オマーン石油・ガス省
国 名 数量(MBBls) 割合(%)
中 国 140.1 50.1
日 本 38.2 13.7
台 湾 33.4 11.9
シンガポール 19.9 7.1
タ イ 19.0 6.8
韓 国 10.9 3.9
ニュージーランド 6.0 2.1
インド 5.2 1.9
その他 7.1 2.5
合 計 279.8 100.0
中 国
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シンガポール
タ イ
韓 国
ニュージーランド
インド
その他
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日本の国別原油輸入割合(2013年1月~10月)
出典:通関統計
中国の国別原油輸入割合(2013年1月から9月)
出典:中国貿易統計
オマーンからの生産原油は、全量が、ミナ アル・ファハールのターミナルからAPI33.0°のオ
マーン原油として、積み出しされている。
(2)LNG輸出入
オマーンからのLNG輸出でみれば、極東3か国向けがほぼ全量を占めており、特に韓国が第1
国名 数量(千
b/d) 割合
サウジ 1,136 32.2%
UAE 799 22.6%
カタール 469 13.3%
クウェイト 265 7.5%
ロシア 241 6.8%
イラン 185 5.2%
他アジア 228 6.4%
オマーン 79 2.2%
その他 130 3.7%
合計 3532.065 100.0%
国名 数量(千
b/d) 割合
サウジアラビア 1,094 19.4%
アンゴラ 819 14.5%
ロシア 494 8.7%
オマーン 483 8.6%
他アフリカ諸国 473 8.4%
イラク 469 8.3%
他GCC 450 8.0%
イラン 428 7.6%
ベネズエラ 324 5.7%
南北米 241 4.3%
中央アジア 246 4.4%
他アジア 132 2.3%
合 計 5,653 100.0%
サウジ
UAE
カタール
クウェート
ロシア
イラン
他アジア
オマーン
その他
サウジアラビア
アンゴラ
ロシア
オマーン
他アフリカ諸国
イラク
他GCC
イラン
ベネズエラ
南北米
中央アジア
他アジア
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位を占めるが、日本も48.2%と大きな割合を占めている。
オマーンのLNG輸出先国別割合(2012年1月~12月)
単位:百万トン
出典:BP統計
日本のLNG輸入実績(2013年1月から10月)
単位:百万トン
出典:通関統計
国 名 数 量 割 合
日本 4.0 48.2%
韓国 4.2 50.9%
中国 0.1 0.9%
合 計 8.3 100.0%
国 名 数 量 シェア
オーストラリア 14.8 20.6%
カタール 13.3 18.4%
マレーシア 12.3 17.0%
ロシア 7.1 9.8%
インドネシア 5.0 6.9%
UAE 4.8 6.7%
ブルネイ 4.3 6.0%
オマーン 3.4 4.7%
ナイジェリア 3.0 4.2%
赤道ギニア 2.0 2.7%
その他 2.2 3.0%
合計 72.2 100.0%
日本韓国
中国
オーストラリア
カタール
マレーシア
ロシア
インドネシア
UAE
ブルネイ
オマーン
ナイジェリア
赤道ギニア
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出典:通関統計
韓国のLNG輸入実績(2013年1月から9月)
単位:百万トン
出典:韓国貿易統計
(3)オマーンLNGの価格について
国 名 数 量 シェア
カタール 11.4 34.9%
インドネシア 4.5 13.9%
オマーン 3.6 11.0%
マレーシア 3.3 10.2%
イエメン 3.0 9.3%
ナイジェリア 2.3 6.9%
ロシア 1.4 4.3%
その他アジア 1.3 3.8%
アフリカ 1.1 3.5%
欧州等 0.7 2.2%
合計 32.7 100.0%
カタール
インドネシア
オマーン
マレーシア
イエメン
ナイジェリア
ロシア
その他アジア
アフリカ
欧州等
平均:16.1$/mmbtu
オマーン:11.4/mmbtu
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出典:通関統計
通関統計によれば、国別の日本への LNG輸入価格について 2013年 1月から 10月までの価格
は上のグラフの通りであるが、全体の平均が 16.1 ドル/mmbtu であるのに対してオマーンからの
価格は 11.4 ドル/mmbtu と格別に安い。その理由に関しては、契約時に定めた基準単価そのもの
が高くは無かったことや、契約後に基準単価が推移したことに加えて、月によっては調達事業者の
営業努力によって安い価格でスポット調達したことで、平均価格が引下げの影響が出たという見方
もある。一方、オマーンLNGの最大輸出国となっている韓国へのLNG価格は 939.57ドル/mt
と、平均が772.17ドル/mtであるのに対して割高となっている。
平均:16.1$/mmbtu
オマーン:11.4/mmbtu
平均:772.17$/mt
オマーン:939.57/mt
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3.国内で石油・天然ガス開発の体制について
(1) オマーン石油・ガス省 (MOG)
2008年1月13日、組織改正が行われて現在の組織体制となった。
大臣:ムハンマド ビン・ハマド アッ・ロムヒー
略歴:1980~1986年、PDO勤務
スルターン・カブース大学(SQU)の石油工学学科教授
1997年、石油・ガス大臣に就任。
2003年4月、オマーン石油開発社(Petroleum Development Oman:
PDO)理事会議長に就任。
米国タルサ大学で修士号、イギリスのインペリアルカレッジで博士号を取得。
(2) オマーン石油Oman Oil Company S.A.O.C. (OOC)
1992 年に設立準備が開始され、1996 年にオマーン政府 100%所有の Closed Joint Stock
Company(SAOC)として設立。同国の経済開発プログラム「ビジョン2020」に沿って、戦略的投
資機会を選定して、外国の IOCとのJVを追及している。国内外の石油、天然ガスの探鉱開発の
分野に加えて、エネルギー・インフラ、海運、発電、石油化学、精製や金属鉱物資源などの分野
の投資機会を追及して、多様化を進めている。本年10月には、Khazzanタイトガス田の権益40%
をBPから取得した。
(2)-1. 役員構成
・ナーセル ビン・ハーミス アル・ジャーシミー 会長、石油・ガス省次官
・アハマド ビン・ハサン アッディーブ、商務産業省次官
・サーリム ビン・ハサン マッキー元国家評議会議員、元大使
・シェイク サーリム アブドッラー アッ・ラワス、元中央銀
行理事会メンバー
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(2)-2. 主な事業内容
同社の主たる事業内容は次の通りである。石油・ガス産業の上流から下流までのサプライチェー
ン全般にわたり関与を深めている。
・石油・天然ガスの探鉱・生産:Kazzan ガス田プロジェクト(40%)、Abraj エネルギー・サービ
ス(100%)、第 42鉱区(100%)、Karim小油田のサービス契約(25%)、Rima小油田のサービ
ス契約(25%)、オマーンガス社(20%)
・エネルギー・インフラ:Oiltanking Odfjell Terminals & Co. LLC (OOT)(25%)
・海運:Oman Shipping Co.(OSC)(20%)
・石油化学:サラーラ・メタノール(SMC)100%、Takamul インベストメント SAOC(90%)、
Oman India Fertilizer Co. (OMIFCO)(50%)
・精製・販売:Oman Oil Marketing Co. S.A.O.G (Oman Oil)(49%)、Oman Oil Refineries and
Petroleum Industries Company (ORPIC)(25%)
・金属:Sohar Aluminium Company (SAC)(40%)、Vale Oman Pelletizing Company(VOPC)
(30%。鉄鉱石ペレットを製造)
(3) オマーン石油開発社:Petroleum Development Oman (PDO)について
オマーンにおける石油開発は、同社の前身となるイラク石油会社(IPC)が、1937年に 75年の利
権契約を同国国王から得て事業をスタートさせた。第2次大戦の間の中断もあったため、実際に油
徴を発見したのは 1962年。さらに原油の初出荷は 1967年となった。オマーン政府が段階的に参
入してきたが、現在の権益保持者(カッコ内は権益比率)は、オマーン政府(60%)、シェル(34%)、
Total(4%)、パルテックス(2%)である。役員は 12 人で構成されており、議長を含めて 7 人
をオマーン政府が出している。
国内にはOIC含め約30社の石油・ガス開発が事業を行っており、その中でもPDO最古参かつ
最大手である。中心となって技術を主導してきたのはシェルである。2002 年時点では、オマーン
の原油生産の約 94%を PDO が生産していたが、10 年後の 2012 年では、70.6%に低下し、代わ
りにオキシデンタル石油、BPなど他社が比率を伸ばしている。
(3)-1. PDOの組織
最高意思決定機関として12人で構成される取締役会が置かれ、議長を含む7人はオマーン政府
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が、残り5人は、民間株主であるシェル、Total、パルテックスが出している。議長は、Drムハン
マド ビン・ハマド アッ・ロムヒー石油・ガス大臣。取締役会が示す事業方針に基づき経営目標を
実現させ業績を向上させるための日常的な執行機関として常務会(Managing Director
Committee: MDC)が設置されており、常務を議長とし、他の12人のメンバーにより構成される。
(3)-2. MDCメンバー
常務Managing Director: Raoul Restucci
技術Technical Director: Amran al Marhubi
財務Finance Director: Haifa al Khaifi
石油(北部)Oil Director (North): Abdusattar Murshidi
石油(南部)Oil Director (South): Suleman al Tobi
ガスGas Director: Abla Riyami
人事Human Resources Director: Mundhir al Barwani
経営Corporate Planning Director: Ibtisam al Riyami
探鉱Exploration Director: Intisar al Kindy
坑井技術Well Engineering Director: Khamis al Saadi
技術及び操業Engineering and Operations Director: Abdula al Shuely
石油工学Petroleum Engineering Director: Ali al Gheithy
インフラ Infrastructure Director: Sami al Lawatiya
(3)-3. PDO略史
同社の沿革はオマーンの石油・ガス開発事業全体に重なる部分が大きく、次に概略を記す。
1937年:サイイド ビン・タイムール国王(当時)は イラク石油会社(IPC)に 75年間の利権を付与。
同社は操業実施のために子会社「Petroleum Development (Oman and Dhofar) Ltd.」を設立し
た。これが現在の「オマーン石油開発社(PDO)」の前身となる
1951年:同国南部のドファール地方は鉱区放棄され、会社名はPetroleum Development (Oman)
となった。
1956年: 最初の試掘制は油徴を発見できず。
1957年: Dhofar-Cities Service社はドファールでの開発利権を獲得し、Marmul油田を発見した
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
が、商業ベースでの開発は不可と判断された。
1962年: さらに数本の試掘制を掘削し、Yibalで油徴を発見した。
1963年-64年Natih油田と Fahud油田を発見。産油国となる。
1966 年ファハドに発電所が建設される。海岸までのパイプラインが敷設される。Saih al Maleh
に産業地区が設置され、のちにはミナ アル・ファハル(ファハル港)となる。
1967年:オマーン産原油の初荷となる543,800バレルが出荷された。
1969年:ドファール地方が同社利権の部分に再度加わった。
1970年:カーブース国王即位。
1972年:原油生産が281,778バレル/日に達した。
1974年:オマーン政府が同社権益60%を取得した。
1975年-76年:オマーン中央部の油田から、生産が開始され、生産量は341千b/dに増大した。
1978 年:オマーン政府を代表して、同社は Yibal から海岸沿いのアル・グブラー脱塩造水・発電
所まで燃料供給のためのガス・パイプラインを建設した。
1980年:国王令によりPetroleum Development Omanの社名で有限会社として、ロゴと共に登
録される。
1981年:同社はMarmul油田からの生産が開始されて、南部からも原油生産が実現された。
1984年:新規ガス構造を発見するための探鉱計画を実施する協定を政府と結んだ。
1987年:平均産油量571千b/dを達成した。
1991年:同国中央部のSaih RawlおよびBarikで大型のガス埋蔵が発見された。
1995:石油生産量が803千b/dに達した。このうち南部の油田からの生産が半分以上を占めた。
1996年:スールのLNGプラントへ25年間、ガスを供給する契約を結んだ。
1998年:国内経済を活性化促進のために、地元請負業者イニシアチブを発効させた。
1999年:セイフ・ラウルの中央処理プラント(CPP)からカルハットのLNGプラントまでのガス・
パイプラインの試運転が開始された。.
2004年:新規の期間40年間の利権契約に株主各社が合意し、調印した。
2007年:建国40周年。北東Budour油田が発見された。また、Qarn Alam油田と Marmul油田
でのEOR作業を実施するための契約を結んだ。
2008 年:ガス事業を開始して 30 年目となり、同社の炭化水素エネルギー供給の約 4 割を占める
に至ったと発表。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2009 年:シハーブビンターリクアッサイイド国王顧問臨席の下、カティールのガスプラントの開
所式を執り行った。このプラントは国内市場に供給するため 20百万㎥/日のガスを処理できる。
2010年:南部Marmul油田でのEORポリマー・プロジェクトの試運転開始。今後複数年にわた
り8千b/dの生産量増加を見込む。
(4) その他:オマーンで事業を行っている石油・ガス会社
国際的な石油・ガス会社(IOC)では次の各社がオマーン国内に進出している。Daleel Petroleum 、
PTTEP Oman 、Hunt Oman、ラッスルヘイマ(UAE)石油、Mearsk Oman 、Reliance Industries、
Circle Oil Oman 、Oil X Company 、Epsilon Energy 、Harvest Oman 、ペトロナス 、Petrotel
Company など。
またガス会社としては、国内にガスを供給するためのオマーンガス(OGC。2000 年 9月 2 日設
立)があり 株主はオマーン政府(80%)、オマーン石油社(OOC、20%)である。
オマーンLNG(カルハットLNGは、本年9月1日にオマーンLNGに統合)がある。
4.主たる鉱区
南部拡大図
出典:各種資料を基にJOGMEC作成
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(1) 第6鉱区
オマーン陸上中央部に約 100 千㎢の広さで広がる鉱区であり、国全体の約7割の残存石油埋蔵
量が存在しており、2010年までに約120の中小油田群が発見されている。油の性状も油田ごとに
異なり、API15°から50°まで幅広く存在する。
オマーン石油・ガス省は2004年にPDOと期間40年の延長を行う契約に調印した。同時に10%
の鉱区放棄を行い、その後もさらに鉱区放棄を行った結果、油ガス田開発への新規参入が次々と実
現した。
油・ガス田名 開発企業
Mukhaizna オキシデンタル
KhazzanおよびMakarem BP
Abu Butabul オマーン石油(OOC)
Al Ghubar Harvest Natural Resources社
Habiba オキシデンタル
(2) 第61鉱区 MakaremおよびKhazzanガス田
現在、両ガス田の権益はBP(60%)、OOC(40%)が保有している。第61鉱区の面積は約2800㎢
であり、深度4000~5000mに4つのタイトガス構造が存在する。1996年にMakaremを発見し、
続いて2001年にKhazzanを発見した。開発権は2007年に2043年までとして発行された。元々
はPDOが第61鉱区の開発を担っていたが、従来型の開発方法にこだわっていたこともあり、2004
年の権益更改時に、鉱区放棄の対象となった。オマーン石油・ガス省は2006年の後半に入札を行
って、BP Exploration (Epsilon) Ltdが2007年に探鉱生産物分与契約 (ESPA) を結んだ。BPは
このタイトガス構造を商業ベースで探鉱・生産するため、これまでにBPは10億ドルを投じ、13
本の坑井を掘削して、埋蔵量評価を行っている。2010 年後半、試験的施設の段階であるが既にガ
スが産出している。これらのデータにより、BPは商業性があるとの判断を示していた。2012年、
BPは開発計画をオマーン石油・ガス省に提出して、産出ガスの買取価格についての交渉を行って
きた。
2013年10月、これまでBPが100%権益を保有していたが、Oman Oil Company(OOC)がBP
からKhazzanタイト・プロジェクトの権益40%を獲得した。
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一般的には、非在来型天然ガスの中でも、特にガスがたまっている地下の貯留層の浸透率が
0.1md未満の砂岩に含まれる天然ガスを指す。このガス田も浸透率が非常に低いことからタイトガ
スと位置づけられており、経済性を確保して開発するためには相当に高度な技術が求められる。
オマーンのガス需給の将来は、このタイトガス田の開発結果による面が大きく、生産目標を内輪
に見ても、達成できたならば、オマーンのガス生産は今よりも約30%増大することが期待される。
天然ガスの原始埋蔵量は100~150tcfであるが、この内の7~8tcfの回収を目指している。但し
成分にH2Sを含んでおり、例えばMakaremガス田では2~4%となる。一方、開発コストは計画
ベースで約5割増大し、初期段階でも必要掘削坑井数は250~300本が必要と見られており、採算
性もこれら坑井からの生産による。最終的には、1200 mmscfd (34 mcmd)のガスを処理できる施
設と、300-400本の坑井、 600 kmの送ガス・ギャザリング・システムを建設することが計画され
ている。但し、フラクチャリングのための水資源をどこから得るかは課題である。2017 年から生
産開始予定であり、2020年には、1000mmcfdのガスとコンデンセート25千b/dの生産が期待さ
れている。
このタイトガス開発には、従来型ガス田よりも、開発コストがかかることから、BPは石油・ガ
ス省と、生産ガスの買取価格に関して折衝を続けてきた。2013年1月7日、ダルウィーシュ財務
相は、産業用ガスの価格を今後、次の通り値上げしていくと発表した。
2012年:1.5ドル/MMBtu
2013年:2.0ドル/MMBtu
2014年:2.5ドル/MMBtu
2015年:3.0ドル/MMBtu
オマーンとBPは、この開発コストがかかるタイトガス構造を巡ってガス販売価格についての交
渉を数年にわたって続けてきたが、12月16日、ガス販売契約(GSA)に調印した。調印にあたって、
ムハンマド ビン・ハマド アッ・ロムヒージャーシミー石油・ガス大臣は「今後、数十年先までの
自国のエネルギー需要を見たし、国内の経済を発展させる計画において重要なステップである」と
述べた。またBPのボブ・ダドリーCEOは、「BPがタイトガス生産で数十年にわたって得た経験
を、このプロジェクトで生かすことが出来る」とした。開発費用は、これまでの試掘井の掘削や、
埋蔵量評価作業を含めて 160 億ドルと言われるが、総額では 200 億ドルを超えるであろうとの見
方もある。
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(3) その他の生産鉱区
・第60鉱区Abu Butabul:OOC100%。1998年発見。2011年発行、2041年に期限切れ。2014
年から生産開始。API50°と高く、2017年にはコンデンセート11千b/dおよびガス140mmcfd
の生産見込み。
・第7鉱区 Abu al Tabool:生産減退
・第3,第4鉱区:原油生産中
・第8鉱区 Bukha 契約地域:原油生産中
・第62鉱区 Habiba:原油生産中
・第15鉱区 Jebal Aswad契約地域:生産減退
・第53鉱区 Mukhaizna:10万b/d以上の原油生産
・第44鉱区 Shams契約地域:生産減退
・第9鉱区 Suneinah契約地域:原油生産中
・第5鉱区 Wadi Aswad契約地域:原油生産中
・第27鉱区 Wadi Aswad 契約地域:生産減退
(4) 最近の新規鉱区の開発権付与の動き
2012年9月、オマーン石油・ガス省(MOG)はハンガリーMOL社との間で、南部の第66鉱区の
探鉱・生産分与契約(EPSA)を締結した。11月、MOGは、新たに国内の7カ所の鉱区について探
鉱・生産分与契約(EPSA)の入札を発表した。うち第 18、第 41、第 59の 3鉱区が洋上、第 43A、
第 48、第 56、第 57の 4鉱区は陸上の鉱区である。入札締め切りは 2013年 4月末と設定した。
第 18 及び第 41 鉱区ではインドの Reliance が探鉱に着手したものの、思わしい結果が得られず
2011年に撤退している。また、第59鉱区は、これまで手付かずとなっていた鉱区である。
一方、石油・ガス省は、第51、第54、第55、第65の4つの陸上鉱区についても探鉱・生産分
与契約の入札を進めており、既に OIC 各社から提案書の提出を受けて審査を行っていた。同省は
10月にも、第 38鉱区でイギリスの Frontier社と、探鉱・生産分与契約を各々締結し、探鉱開発
の動きを加速させている。
2013年4月、MOGは南部の第39鉱区と第67鉱区のEPSAの対象として、アメリカのPetroTel
を選定した。契約期間は3年間で鉱区面積は13,379㎢。また、Yibalガス田のフェーズ3のEPC
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の入札も着手している。6月にはMOG高官が、陸上 5鉱区(第 51、第 54、第 55、第 58、第 65)
の入札に関して、開発企業の選定を終えて、企業側と最終交渉中であり、2013 年末までに最終決
定に持ち込む見込みについて明らかにした。
出典:各種資料よりJOGMEC作成
Msirah堆積盆地
第23鉱区Sawqirah Bay:18,937㎢(洋上)、第34鉱区Al Jaazir:11,477㎢(陸上)
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オマーン山地Foldbelt 堆積盆地
第18鉱区Batinah 海岸:18,267㎢(洋上)、第41鉱区: 23,800㎢(洋上)、第 43A鉱区:2,923
㎢(洋上)、第51鉱区Baqlah:17,892 ㎢(陸上)、第59鉱区Arabian Sea:35,145 ㎢(洋上)
ルブ アル・ハーリー堆積盆地(すべて陸上鉱区)
第45鉱区:883㎢、第48鉱区:2,995㎢、第55鉱区:7,564 ㎢、第56鉱区:5,809㎢、第57
鉱区: 2,281㎢、第58鉱区:2,264㎢、第65鉱区:1,181㎢、第66鉱区:4,899 ㎢
(5) 新規ガス田発見
本年3月、オマーン石油開発社(PDO)は、第6鉱区のマブルークで新たなガス埋蔵を発見したと
発表した。深度5000mにて埋蔵量2.9tcfのガスと1.15億バレルのコンデンセートを含み、面積は
約 60㎢。PDOは 2012年より掘削と評価作業を行ってきた。人口増加と国内産業の成長により、
国内のガス需要が増加して、ガス不足が起きているオマーンにとっては、ガス需給の逼迫を緩和さ
せる上で朗報となっている。
(6) EOR(Enhanced Oil Recoverery:増進回収法)について
一般的に、自然エネルギーが減退した、また経済的な原油回収率が低すぎる場合、油層にエネル
ギーを与えることによって生産量(回収率)を増加させる方法である。通常、付加するエネルギーは
水およびガスの圧入による。このプロセスは、原油生産を主に追加するための物理的な置換による
ものであり、二次回収法とも呼ばれる。さらにこの二次回収が経済的でなくなった場合、他の種類
のエネルギーを付加することで、油の回収率を向上させる。この場合、一次、二次回収の場合の自
然エネルギー、あるいは物理的な置換メカニズムを補う、あるいはそれらに代わるエネルギーを利
用するためのものである。そのために熱、圧入流体と油層流体の間の化学反応、原油の性状の改変
を加えることによって原油の回収を促進させるもの。
既存の油ガス田での生産に減退が起きているオマーンの油ガス田において、EOR は将来的な生
産計画量に重要な影響をもたらす。具体的には、PDOは第6鉱区の操業において、ミシブル攻法、
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水蒸気攻法、ポリマー攻法などを導入している。
・ミシブル攻法:油層内にガス(炭化水素ガス、炭酸ガス、窒素ガス、燃焼排ガス等)を圧入して、
原油と圧入ガス間の成分移動により回収率を向上させる増進回収技術。ミシブル状態とは、圧入
ガスと原油間の成分移動の結果、二層状態(気体-液体)から、完全に溶け合って界面のない一相状
態の流体に変化すること。ガスが油中へ溶解することによって、油の体積の膨張と粘性が低下す
る。圧入する流体の種類に応じて、炭酸ガス攻法、窒素ガス攻法や炭化水素ガスミシブル攻方法
などに分類される。油層圧力、温度条件によっては、圧入ガスが油層内の原油と接触しただけで、
ミシブル状態となる。
オマーンでは、Harweel油田群でこの技術が導入されており、40千b/dの生産が加わった。
・水蒸気攻法:重質・高粘性油層に、圧入性から水蒸気を圧入し、油層内原油の流動性を増加させ、
原油を生産性に押し出して回収する方法。原油の粘性低下に加えて、原油の体制膨張や、先行す
る揮発成分によるミシブルバンク形成といった効果に加えて、凝固水による水攻効果なども期待
できる。
具体的にはMukhaizna、Marmul、東部および西部Amal油田、Qarn Alant油田で導入され
ている。これにより、2018年までに東部および西部Amal油田で、23千b/dの生産量増加が見
込まれている。さらにQarn-Alam油田では、2015年までに40千b/dの生産量増加を見込んで
いる。
また油田に注入する水蒸気をソーラー熱により製造するソーラーEOR も本年前半から実施し
ている。この分野で有力なGlassPoint社の設計・施工により、日産平均50トンの水蒸気をソー
ラー熱によって製造している。
・ポリマー攻法:水溶性の高分子を圧入水に添加し、水の粘度を上げて油層に圧入し原油の採収率
を上げるケミカル攻法の一つである。次の二つの原理を応用して原油の回収率を増加させる 1.
界面活性剤(洗剤)溶液により、原油と水の間の界面張力を低下させて、毛細管圧により孔隙内に
閉じ込められている油を洗い出す。2. 易動度比を改善し、容積掃攻効率を改善する。即ち、マ
クロ的な置換効率の改善を図る。
水攻法に比べて、面積掃攻効率、垂直掃攻効率の面で優位であり、注入する化学品にはポリア
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クリルアミド、ポリサッカライドなどがある。
重質油が産出するMarmalで有効性を発揮している。
5.オマーンのLNGおよび天然ガスを利用した事業
(1) LNG事業
世界の流通の 3.4%を担っており、日本と韓国を中心に中国にも輸出されているが、全量がオマ
ーン東部のプラントから輸出されている。またこれらLNGプラントは、フォスターウィラーおよ
び千代田化工建設によって建設されている。
プロジェクト 売主 輸入国 買主 契約数量
(万トン)
供給
開始年
Oman LNG
(Train 1,
2)
Oman LNG
(オマーン政府 51%, Shell
30%, Total 5.54%, Korea LNG
5.0%, 三菱商事 2.77%, 三井物
産 2.77%, Patrex 2.0%, 伊藤忠
商事 0.92%)
日本
大阪ガス 66 2000
伊藤忠商事 77 2006
韓国 KOGAS 406 2000
Qalhat LNG
(Train 3)
Qalhat LNG
(オマーン政府 46.84%, Oman
LNG 36.8%, Gas Natural
Fenosa 7.36%, 三菱商事 3%,
伊藤忠商事 3%, 大阪ガス 3%)
日本、アメリカ 三菱商事、
東京電力 80 2006
日本 大阪ガス 80 2009
スペイン Gas Natural Fenosa 165 2006
出典:JOGMEC天然ガスリファレンス・ブック2012年
これらLNG施設向けの天然ガスは、Saih Nihaydaガス田、Saih Rawl/Barikガス田から供給
されている。
(2)天然ガスを利用したその他のプロジェクト
LNG 以外に天然ガスを利用した次のプロジェクトが進められている。一定程度、成長した産業
については、順次、燃料となる天然ガスの価格を引き上げていく方針を明らかにした。
2013-01-20日、 オマーン紙は、同国での産業用ガス値上げ問題について、中小企業は今般の価格
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
改定の対象とはならず、オマーン・インド肥料会社、オマーン・メタノール社、ソハール国際尿素・
化学薬品、ジンタル・シャディード鉄鋼、ソハール・アルミニウムの5社が対象となると報じた。
・発電
オマーン北部全域をカバーするMain Interconnected System(MIS)と、南部のサラーラ・シス
テムの二つのネットワークがあり、天然ガス火力発電によって国内 97%をカバーしている。それ
以外は郊外地域電力会社(Oman Rural Areas Electricity Co.)がディーゼル火力で供給している。
なお同社は米の Astonfield 社とドファール県の Al Mazyunah で太陽光発電の実験プラント
(303kw)を開始する契約に調印している。2014年央に開始予定。
オマーンでの発電需要の伸びは著しく、2000年には8.6十億kwhだったのが2010年には186
億kwhと10年間で倍増した。
日本企業としては、丸紅と中部電力が、オマーンで大規模火力発電事業の事業権を2011年7月
に取得している。政府系のカタール発電水道会社などと組んで、東部スールで出力200万kwのガ
ス複合火力発電所を建設し、2014年 4月に商業運転を始める計画を進めている。さらに日本の双
日と四国電力が参画する独立系発電事業ソハール 2 とバルカ 3 の商業運用が本年 4 月から開始さ
れており、各々、74.4万kwの発電容量を持ち、複合サイクルガスタービン(CCGT)を備えている。
双日と四国電力が各11%、GDF Suezが46%、残りをオマーンのエンジニアリング・グループの
Multitechが22%の権益を持つ。
・石油化学
ソハールにおいて、エチレンとプロピレンを、それぞれ年間 45 万トン生産する。BP が 49%、
OOCが11%を出資し、残り40%はオマーン証券取引所で一般公募する。2002年に生産開始した。
2012 年 12 月 05 日、オマーン石油社と韓国の「LG」社は、スハール工業港に石油化学工場を設
立することで合意した。事業規模は8億5000万ドルで、オマーン石油が株の7割、残りをLGが
保有する。
・化学肥料
スールにおいてインドのRashtriya Chemical and FertilisersとKrishak Bharati Cooperative
がそれぞれ 25%、OOCが 50%を出資したプラントで、尿素を日量 4,400トン、アンモニアを日
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
量3,500トンそれぞれ、生産している。
・還元製鉄所
ソハールにおいて、2003 年に稼働したプラントで天然ガス発電による電力を使用して年間 120
万トン規模の還元製鉄を製造している。また2012年9月、サラーラでGCC投資会合が開催され、
UAE、サウジアラビア、オマーン各国が 4 億ドルを拠出してドファール鉄鋼会社を設立すること
が発表された。
・アルミニュウム精錬所
Sohar Aluminium Smelter Company (Sasco)がソハールにおいて設立され、日量3,000万ガロ
ンの造水と、1,800MW の発電所を建設し、その電力で年間 24 万トンのアルミを精錬している。
2001年に稼働した。
6.その他関連産業
(1) アッ・ドクム(Al Duqm)複動産業地区
2012年6月9日、カーブ
ース国王は、「ドクム特別経
済地区庁」を設置する勅令を
出し、オマーン中央部のワス
タ州の沿岸に精製、石油貯蔵、
石油化学産業、物流基地など
を集積させた複合的な産業
地区を建設する構想を進め
た。敷地面積1,777㎢、海岸
線長さ80kmの特別区域に、当初はコンテナとバラ積貨物の港としてスタートさせ、同特別地区で
は、輸出入関税の免除、長期低額リース、外国資本による100%所有可能、最低資本投資制限なし
などの優遇措置を認めている。本年3月10日、ドクム港は商業活動を開始した。
港湾施設については、一度に 8 隻まで大型船舶の着岸可能にさせる 2,250mの商業埠頭を建設。
さらに1,000mの政府専用埠頭の建設も着工しており、完成後は、海軍、沿岸警備隊、高速フェリ
出典:ドクム特別経済地区庁HPより
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ーが利用できるようにする。加えて、410m級のドライドック2本と、2.8kmの修理エリアも整備
する計画である。操業については、アントワープ港湾からの支援を受けて進めていく方針である。
2015年には空港も開港させる計画。年間50万人が利用可能で4,000m級の滑走路により貨物ター
ミナルで年間50万トンを取り扱い可能とする。物流及び産業地区として合計365㎢を割り当てる。
2013 年 3 月 10 日、ドクム港にて、ターミナルの商業活動が開始するための開所式を行った。式
典においてDrアハマド ビン・ムハンマド アル・クタイシー運輸通信大臣は、ドクム港に数百万
のコンテナ処理能力を持たせ、周辺国の中でも主要な港湾と成長させる開発計画について語ってい
る。
石油関連では製油所の建設も計画されている。オマーン石油会社(OOC)は UAE のソブリン
ウェルスファンドの一つである国際石油投資社(IPIC)と協力して、230千b/dの原油処理能力を持
つ製油所を建設し、2017 年に操業開始予定である。加えてポリプロピレンや化成品の製造施設の
建設も検討している。
さらに、ドクム港に入港するすべての船舶に給油できるターミナル建設の計画もある。
OmanMaeketing 社(OOMCO)が、ドイツのOs Matrix Matine Holding GmBHと提携して、既
に 2010 年に海上バンカー燃料の免許を取得し、ソハール港での舶用油供給事業を進めており、
ドクム港でも多種の燃料を供給していく構想である。
また、巨大原油・石油製品の貯蔵所ターミナルも計画されている。昨年9月の段階で、・のジャ
ーシミー次官は、ドクム特別経済地区の南側70kmで、2億バレル規模の原油および石油製品の貯
蔵施設建設をで検討していることを明らかにした。オマーン石油会社(OOC)が、ダウンストリーム
の投資を行っているTakamul Investmentと共同して、Oman Tank Terminal社(OTTCO、株主
はOOC 90%、Takamol 10%)を設立して、パイプライン網が集まる中央部のサイフ・ニハイダか
らパイプラインを敷設する内容である。そのための覚書を OTTCO と石油・ガス省が本年 1 月に
結んた。既に北部のソハールには534万バレルの貯蔵施設があり、本件で2件目となる。
貯蔵原油の調達先としては、今後、生産が開始を見込まれる東アフリカからの出荷原油の流れも
考慮に入れておきたい。オマーンにとっては19世紀まで飛び地ともなっていたザンジバルなどウ
ガンダ西部では 2005年以降に油田発見が相次ぎ、ケニアでも 2012年以降に複数の有望構造が発
見されている。これら生産原油は、南スーダンからの生産原油と合わせてタンザニアまでパイプラ
インを敷設して出荷する「東アフリカパイプライン」構想も検討されている。2018 年には生産が
開始され、今のところは数十万バレルの生産が見込まれるに過ぎないが、2020 年には本格的に原
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油生産が軌道に乗る見込みでる。
オマーンは、中世には東部アフリカのザンジバル諸島に出先を築き貿易を行っていた。17 世紀
にはポルトガルを押し出して、19 世紀まで統治を行った実績もある。現在でも、両地域には商習
慣、言語などでの共通性が残り、自分たちの文化貿易圏であるとの意識がある。東アフリカから生
産される原油のトレード拠点として、ドクムを活用していく可能性は大いに考えられる。
なお、東アフリカからの原油生産に関しては、JOGMEC「石油・天然ガス資源情報」の「東ア
フリカ陸上(ウガンダ、ケニア、南スーダン)における石油開発と輸出パイプライン構想」2013年7
月25日付を参照ありたい。
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1307_out_g_eastafrica_onshore_r%2epdf&id=
4940
7. 石油開発部門でオマーンへ進出している日本企業
三井石油開発が、100%子会社であるMOECO International B.V.を事業会社として、その関係
会社であるMitsui E&P Middle East B.V(MEPME)を通じて、陸上鉱区の第9鉱区(権益比率
35%)、第27鉱区(同35%)の権益を保有して原油・天然ガスの生産事業を推進している。同鉱
区のオペレーターは残り65%の権益を保有するOccidental Omanである。さらにMEPME社は
第 3鉱区(20%)、第 4鉱区(20%)の権益を保有している。同鉱区のオペレーターは残り 50%
の権益を保有するCC Energy Development (レバノン)である。
第3鉱区、第4鉱区に関しては、2012年12月中旬、石油・ガス省は、スウェーデンのTethys
Oil(30%)、三井石油開発(20%)、レバノンのCC Energy Development(50%)によるコンソ
ーシアムが行なう開発計画を承認している。
8.その他
(1)イランからの天然ガス輸出構想の基盤と背景となる両国の関係について
イランから海底パイプラインを通じてオマーンへ天然ガスを輸出する構想に関しては、10 月の
「石油・天然ガス最新動向」で紹介したとおりであるが、その後もイランへの西側諸国からの制裁
は、ゆっくりとした歩みながら緩和の可能性が広がりつつある。この動きがさらに具体化していっ
た場合を念頭に、オマーンとイランとの関係に関して次のように考察する。
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
オマーンとイランとの経済的結びつきの基礎としては、両国の政治的関係が強固であることが挙
げられるが、そうした関係を形成した経緯の一つに、近代の治安協力がある。1964 年に、オマー
ン南部のドファール地方では暴動を契機に離反が起きた。これに対してはマスカットで 1970年 7
月に現カーブース国王が即位して政治改革を行う一方、1973年にイラン国軍から直接協力を得て、
さらに他のアラブ諸国からも支援を受けて鎮圧を行った。1975年12月には大攻勢によって軍事面
での勝利を宣言。1976 年にサウジアラビアの仲介で停戦協定を結び、イラン国軍は 1977 年にま
でに大部分が撤収した。
さらに近年では、オマーンとイランとの外交や安全保障面での動きに加え、貿易の拡大、直行便
開設などに加えて、アメリカとイランとの間でオマーンの仲介による逮捕者の解放実現など、両国
間関係を一層強化する事例が複数ある。
・<首脳外交・安全保障面。(肩書は当時のもの)>
2012年 1月 30日、イランのラヒーミー第 1副大統領はオマーンを訪れてカーブース国王と会
談した。4月7日、マスカットにおいて初となる「オマーン・イラン戦略対話委員会」が開催され
た。イランからはアラブ・アフリカ担当のフセイン アミール アブドッ・ラヒヤーン外務次官が代
表団を率い、「イランからオマーンへの天然ガス輸出計画の早期実施」、「両国間直行便の早期開
設」に加え本委員会の定期開催も話し合われた。さらに本委員会とは別に翌日にはオマーンのファ
ハド副首相とアラウィー外相がイランの外務次官と会談した。7月~8月には、イランのラヒーミ
ー第一副大統領とオマーンのファハド副首相の書簡を携えた外交官による議論がなされた。9月12
日、テヘランで第14回 合同経済委員会が開催され、オマーンのアリー ビン・マスウード商工大
臣とイランのサーリハ外務大臣が出席した。航空路線の拡大、フェリー便就航などについて協議さ
れたが、イランからオマーンへのガスの輸出問題についての発表はなかった。
原油とLNGタンカー航路として世界で最も重要視されるホルムズ海峡を、両国は挟んでいるが、
2013年 1月 20日から 5日間、イラン領海において両国海軍は捜索と救助のための合同訓練を実
施している。
要人同士の往来も 2013 年に入るとさらに活発化してくる。1 月 30 日、オマーンのアラウィー
外相はイランを訪問して、アフマディーネジャード大統領、サーレヒー外相、ジャリーリー国家安
全保障最高評議会(SNSC)書記と会談。3月10日には、イランのメフマーンパラスト外務報道官が
オマーンを訪問してアラウィー外相らと会談している。4月13日~17日、オマーンのマンスーリ
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ー諮問評議会議長がイランを訪問して大統領、外相、国会議長、SNSC書記ら要人と会談した。ア
ラウィー外相は5月9日、再びイランを訪問してサーレヒー外相と会談している。ラマダーン月終
了間際の8月4日には、オマーンのシハーブ国王顧問にアラウィー外相、イスマーイーリー投資促
進・輸出復興庁長官らが随行してテヘランを訪問し、ロウハーニー新大統領の就任宣誓式に出席し
た。
8月 25日からは 3日間の日程でオマーンのカーブース国王一行がイランを訪問した。ロウハー
ニー新大統領にとって初の外国首脳の訪問。1979年のイラン革命以降、2009年に続いて2回目の
カーブース国王の訪問となった。テヘランではハーメナイー最高指導者とも会談し、その内容は二
国間関係、経済・通商関係強化が議題となった。26 日、イランからオマーンに対し 2015 年から
25 年間天然ガスを輸出する覚書に調印した。また同日、カーブース国王は、ハーメネイ最高指導
者と会談し、両国関係に加えて当該地域に対する干渉、中東非大量破壊兵器宣言などを話し合った。
その後も 9 月 17 日、オマーンのバドル国防相がイランを訪問してロウハーニー大統領と会談し、
両国国防省間の軍事協力の枠組み作りに関する覚書も結んでいる。
10月22日には、在カナダのオマーン大使館がイランの利益代表部を務めることをイラン外務報
道官が発表した。イランはカナダとの外交関係を2012年に停止したが、最近の欧米との関係改善
に伴う措置。
12月10日、クウェイトでGCCサミットが開催され加盟各国首脳が集まったが、これに先立っ
て外相レベルなどの予備会議でサウジアラビアは、GCC の一体性を強め、名称も「連合」に変え
ることを提案。ところがオマーンがこれに強く反対し、脱退をちらつかせるに至り、当初賛同して
いたUAE も態度を保留した。結局、本会議では、この案は封じ込められた。元来、GCC はイラ
ン革命に呼応して結成された側面があり、GCC 団結強化は、イランへの対抗姿勢を強めて緊張を
生むという逆の顔が出てくるが、オマーンの働きかけで、そうした対立構造が生まれることも無か
った。
・<オマーンの仲介によるイラン・アメリカ双方国民の拘束者解放>
2011年 9月 21日、スパイ容疑によりイランで逮捕収監されていた米国人男性 2名が、オマー
ンの仲介によって釈放された。オマーンはテヘランに小型特別機を差し向け 2 名の保釈金 100 万
ドルを支払い、2人の身柄を引き取った。
一方、米国でも2007年から双子の娘を持つのイラン人女性シェヘルザード ミールゴリーハー
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ン(33 歳)氏は、イランへの暗視装置輸出に関与した疑いで、逮捕収監されていた。2011 年、オマ
ーンにある米国大使館は、「このイラン人女性の母親が、米国訪問のための査証を受領できるよう
同母親と面談する用意がある」と発表していたが、この面談後の7月29日、この家族に査証を発
給した。
その後もオマーンは同氏解放のための外交努力を続けた結果、ほぼ1年後となる2012年8月7
日、シャフルザード氏は釈放され、仲介したオマーンのマスカット空港に到着した。
イランは、駐オマーン大使が「同人の解放に関するオマーンの協力と支援は、文化・社会・人権分
野におけるオマーン・イラン関係の向上に加え、相互協力、道徳的コミットメントおよび拡大・発
展する両国関係によって行われた」と謝意を表した。
・<航空路とフェリーでの直行便開設>
この問題は、かねてから両国の経済合同委員会で協議されていた。オマーンの国営航空は、2012
年 9 月よりマスカットとテヘラン間の 1 日 1 便の直行便を就航させた。また、オマーンの国営フ
ェリー会社は、ムサンダム半島のハサブとイランのバンダル・アッバース港を結ぶ路線と、マスカ
ットあるいはソハールとイラン南部のチャーバハールを結ぶ路線の2線の就航を検討中。ハサブと
バンダル・アッバース間は、小型ボートが往来しているが、高速フェリーであれば1時間半に短縮
できる。マスカットとチャーバハールとの間は5時間で行ける。
・<エネルギー協力>
イランの洋上のフォロウズA・Bガス田を開発し、天然ガスによる発電で電力を供給するという
GTWがオマーンの他、UAE、クウェイト、バハレーン向けに 2012年 6月から開始されている。
フォロウズA・Bガス田の埋蔵量は 29tcfと見られておりイラン国営石油会社(NIOC)とイラン
発電所プロジェクト管理会社(MAPNA)が主導している。
(2)オマーンにおける「アラブの春」、反政府の動きと、同国油ガス産業への影響に関して。
2010年12月にチュニジアで、2011年1月にエジプトでと共和国制のアラブ諸国に端を発した
政変と治安問題は、ビジネス・リスクをもたらした。君主制のGCC産油国の中で政変に至った国
は無かったが、オマーンは反政府活動が起きた。その影響は、現在に至っても石油産業にも自国民
雇用の増大と外国人労働者への圧力、あるいは外国からの新規技術の導入要望などとして少なから
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27 / 33 Global Disclaimer(免責事項)
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ず及んでいる。オマーンでの動きについて、簡単に述べる。
・<はじまり>
2011年2月17日、首都マスカットで、200人が給与増大と生活コストの切り下げを求めたデモ
行進を行い、翌18日には、「緑の行進」と名付け、350人を動員して行った。19日には、北部の
ブレイミ州で、スクールバス運転手が、「給料増加、給料の遅配防止、夏期休暇期間の給与保証」
を要求し、生徒達の送迎を拒否する労働争議を開始した。自ら生徒を送迎した家庭もあったが、通
学に多大な影響を与えた。21 日にはブレイミ州のジャブリ知事宛に要求書を突き付け、知事は、
待遇の問題を教育省で取り上げることを約束し、運転手らに仕事を再開するよう求めた。続いて
22 日には、国内の作家や評論家など多数が、リビアの不安定な情勢に対し明確な姿勢を示すこと
を政府に促すため、オマーン外務省の前に集合して抗議活動を行った。
・<ソハールを中心に首都マスカットにデモが広がる>
26日には、反政府の集荷・デモが全国的に拡散し、特に北部のソハールでは、約 500名がショ
ッピングセンターの駐車場で政治改革を求めて参集。暴動に発展し、周辺交通を封鎖し、駐車車両
や警察署を放火。ソハール州知事や国家評議会議員の自宅を襲撃した。これに対して警察側は催涙
弾、ゴム弾を使用して鎮圧。犠牲者数名と負傷者12名が発生。ソハールはドバイとマスカットと
の中間に位置するが、両都市を結ぶ幹線道路上にある「グローブ・ラウンドアバウト」を暴徒は占
拠したが、27日未明には30名まで減った。同日夕刻、オマーン警察は死者2名、負傷者35名が
出たと発表した。同日、マスカットでは、近郊にある諮問評議会議事堂前で約 100 名が集まり、
ソハールでの市民への暴力停止を訴えた。マアワリ諮問評議会副議長、サアド諮問評議会副議長ら
が現場を訪れ、抗議者たちの要求をカーブース国王へ届ける約束をした。同日、カーブース国王は
政治制度の改革と労働者待遇改善のパッケージについて、勅令を出し、翌日、国営メディアを通じ
て発表された。その内容は、「国民向けに5万人の雇用を創出。人的資源省に登録している求職者
に対し、就職まで、毎月 150 リヤルを支給。次期諮問評議会議員から複数名の閣僚を選出。諮問
評議会の権限強化を目的とし、同議会からの提案を実施するため、諮問評議会の権限強化のため宮
内相を議長とする閣僚委員会を設立。検察の独立。諮問評議会と国家評議会の議員を国家会計検査
院に加えて同検査院の権限を強化する」などであった。さらに閣僚会議は、民間部門の最低月給を
200リヤルに上げる決定を行った。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
しかし、反政府側は28日にショッピングマーケットを放火・略奪、翌3月1日には160千b/d
の石油製品ターミナルがあるソハール港の入口を封鎖した。これに対して、ついに鎮圧のために陸
軍が出動した。
3月1日、カーブース国王は、検察権限の独立性拡大を決定。一方、反政府側は、ソハールでは
200から300名が、またマスカットでも 200名が抗議活動を行い、「選挙制度の導入」、「1991
年設置の諮問評議会への立法権付与」などの要求を出し、また2日には「報道の自由」、「長期に
就いている閣僚の更迭」を要求した。反面、国王を支持するデモが約2000人規模で行われた。
・<UAEによるオマーンへのスパイ活動問題が表面化し、クウェイトが調停を行う。>
オマーン内部で UAE からのスパイが摘発される一方で、突然に起きた一連の反政府活動には
UAE の策動との疑念が起きていた。2 日、アラウィー外務担当相がクウェイトを訪問して首脳た
ちと会談。オマーンでのUAEによるスパイ事件や、これがGCCに与える影響について協議。翌
3日、今度はクウェイトのサバーハ首長がアブダビに赴き、ハリーファアブダビ首長兼UAE大統
領と会談した。その後、ドバイのムハンマド首長兼UAE副大統領、アブダビのムハンマド皇太子
と共にオマーンを訪れカーブース国王と会談。さらに再び、アブダビに立ち寄って、この両国間の
仲介に当たった。
・<反政府活動の高まり>
3月 4日(金)、午後から反政府側は、ソハールのグローブ・ラウンドアバウトおよびミナ・ラウ
ンドアバウトを、2,000 人以上で占拠。さらにスワイヒラ・ラウンドアバウトを約 30 名の女性活
動家で占拠した。一方、マスカットの諮問評議会の議事堂前では、300人以上の抗議者が引き続き
抗議活動を継続。反政府側は、食料調達、講演企画、交通整理、清掃などの作業グループを組織し
た。講演では、抗議活動の方法を指導した。また、保健省前では、医師団体が職場環境改善を要求
して、座り込みを行い、彼らの代表者がサイーディー保健相と会談した。
反面、マスカットやダーヒリーヤ州では、数百人規模で、カーブース国王を支持するデモが起き
た。
南部のサラーラでは、反政府側の座込みは1週間が経過したが、参加者は増加。「自由広場」と
の愛称がある同州知事事務所前の広場には、反政府側が数千人を動員して金曜礼拝を行った。政府
側は 5 万人分の雇用創出や求職者に対する 150 リヤルの交付金、内閣改造などの決定が約束され
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
たが、活動は収まらず。但し、警察側の鎮圧もほとんどなされなかった。
・<大幅な内閣改造に踏み切るも、反政府側は労働争議を起こし、石油産業へも波及>
3月5日、カーブース国王は、王宮府長官、王宮室相、王宮府担当事務総長の3名を交代させた。
王宮府長官は治安を担当していた。残りの二人は反政府側が更迭を要求していた。
中部の石油地域Haimaでは、石油労働者が同地域への国家投資の増額を求めてストライキが開
始。対処のため石油省幹部が現地に行った。
3月7日、カーブース国王は、大規模な内閣改造を行った。国家経済省を廃止し、農業省と漁業
省を統合して農業漁業省とし、同時に国家経済相と内相を始め12名の閣僚を更迭し、10名を新た
に任命した。新内閣の閣僚の数は29名であり、全閣僚の3分の1以上が入れ替った。かねてから
反政府側は汚職や閣僚の長期留任について政治的に攻撃していた。この内閣改造を反政府側は、一
旦は歓迎するも、依然、抗議活動を継続すると宣言。翌 8 日には 150 名以上がマスカットの国営
TV局の前に集結し、より広範な報道の自由を要求した。さらに9日には、国営企業であるOman
Telecommunications Co.とオマーン石油開発社(PDO)の従業員数百人が、賃上げを要求して抗議
活動に合流した。さらに、13 日、同国国際銀行とオマーン投資・ファイナンス社の従業員が、賃
上げ等を求めてストライキを行った。同国最大の金融機関マスカット銀行は、ストライキを受けて、
賃上げに合意。国営航空でも労働争議が起きたが、会社側はストライキ回避のために妥協を行って
防いだ。
・<GCC諸国からの支援>
一方、これに先立つ5日、近隣GCC諸国は、リヤードでGCC財相会合が開催しバハレーンと
オマーンを他のGCC加盟4カ国が財政支援するということが協議され、住宅不足や失業に対して
経済支援を目的とした基金創設が検討された。10日には、GCC外相会合をリヤードで開催し、声
明の中で「GCC は外国からの内政攪乱には一致団結して断固たる態度で臨む」と強く述べる声明
を発表した。さらにUAE外相は、バハレーンとオマーンを支援するために200億ドルの基金を期
間10年間で設立すると述べた。
・<政治制度改革と公務員待遇改善>
3 月 13 日、カーブース国王は、民選の諮問評議会と、勅選の国家評議会からなる国会に立法及
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び監視権限を付与する勅令を発出した。また、同国王は、これに伴い憲法に相当する国家基本法改
正を検討する専門家委員会の設置を命じた。同委員会は30日以内に報告書を国王に提出する。現
在、立法権は国王と内閣にのみ属し、国会は助言するのみに留まっている。さらに同国王は、社会
保障を受けている家族の受給金を 100%増額すると共に、公務員の年金を 50%増額するよう命じ
た。さらに、同日、カーブース国王は、反政府側の要求にこたえる形で警察税関長官を交代させて
いる。これまでのマーリク ビン・スレイマーン マアマリー中将に代え、ハサン ビン・モフセン シ
ュライキー少将を中将に昇格させ、新しく警察税関長官に任命した。ソハールでの取り締まり方法
や、衝突に対して批判が起きていた。
・<警察との衝突と労働争議は継続>
2月27日に犠牲者1名を出した衝突以降、ソハールの中心部にあるEarth広場で、座り込みが
続けられた。3月27日、ソハールでのデモ隊は約30名になったが、住宅負債の帳消し、住宅供給
相と司法相の更迭などの要求に加えて、公務員に対してストライキを呼びかけた。4月1日、金曜
の集団礼拝後、再びソハールでは警察との衝突で死者1名、負傷者20名を出した。70名以上が逮
捕されたが、但し翌々日までに57名が釈放された。警察は厳戒態勢を敷き、予防的措置も取り、
翌週8日の金曜日に衝突は無し。しかし、マスカットで反政府側は座込みを継続。警察はかれらの
指導者を5月15日に検挙。またドファールでも多数の活動家の一斉検挙に踏み切った。それでも
デモは散発的に繰り返された。警察側は3月から5月にかけてデモ参加者数百名を逮捕したが、間
もなく釈放している。但し、主導した55名は裁判にかけ、6月28日に禁錮1カ月~1年の刑を下
している。
・<諮問評議会選挙>
夏期は、気象条件の厳しさから屋外活動が沈滞した。それでも 10 月 15 日投票の諮問評議会の
投票日が近付くにつれて、再び政治運動が活発化した。諮問行議会は定数84人、任期4年、閣僚
を喚問したり、社会経済問題に関しては議論可能だが、国防、国内治安、外交政策に関しては関与
不可。女性が投票・立候補する参政権はGCCで最初となる 1994年に付与されているが、そもそ
もオマーンでは政党の結成は禁止である。それでも、選挙には女性 77 名を含む約 1100 人が立候
補する動きを示し、有権者登録数も、前回の39万人に対して今回は約52万人と大きく増加した。
開票結果は、女性 1名に加えて年初の抗議デモに参加した活動家 3名が当選。投票率は前回 28%
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から大幅増となる76%となった。
10 月、カーブース国王は、同評議会に、法案の提出・改訂権限や閣僚の問責決議権を付与する
改革を行ったが、さらに、新議員たちは新会期の29日に、これまでの勅選に代え、議員の互選で
議長を、選出した。但し、法案を、最終的決定者である国王に提出するには、勅選議員からなる国
家評議会(上院)の承認が必要とされ、立法権は制限されたまま。
・<再び内閣改造>
反政府の動きが出てから 1年後となる 2012年 2月 29日、カーブース国王は、反政府側からの
要求に応じる形で、司法相、情報相、商工相、スポーツ相を交代させて、過去1年以内で2度目と
なる内閣改造を行った。反政府側は汚職疑惑を出して、司法相と情報相の罷免を求めていた。さら
に新たに人的資源省が設置された。
・<石油ガス産業では大規模ストライキ>
5月24日より、石油ガス業界の企業20社の労働者が、政府と民間部門との格差撤廃、生活状況
改善、労働時間短縮を要求する労働争議を起こした。PDO によれば原油生産にも影響は現れ、ま
た参加者が約 4000 名に達したとする報道も出た。これに対しては諮問評議会議員を中心にして、
労働者へ職場復帰を促す説得がなされて、次第に収束していった。
・<反政府運動鎮静化の揺れ戻し>
「アラブの春」に呼応した反政府運動は、政府側が処遇改善を約束して鎮静化したものの、1年
以上経過してにもかかわらず、約束事項の一部しか実現されていないため、再び運動が活発化した。
6月8日夜、政府は作家・詩人など反政府世論の中心的人物6人を一度に逮捕したが5月後半から
の逮捕者は合計10人に達した。
・<反政府側への裁判>
6月25日、初級裁判所で、6月初めに逮捕された作家など女性2名を含む36名の公判が開始さ
れ、このうち 3名が不敬罪、残りが集会・道路封鎖の罪で起訴された。8月 8日には、裁判所は、
反政府活動家12名の被告に対し共和政導入を違法に呼びかけた罪で有罪判決を下した。但し、彼
らは保釈金の支払いによって釈放された。但し、逮捕されたまま取り残された者もいた。翌年 2
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月に入ると、逮捕されて以来、裁判所が十分審理しないことに抗議した活動家 30名が、ハンガー
ストライキを行った。
・<政府側の約束>
2012年8月26日、政府は国民を対象に、次月より軍・公共部門で3.6万人、民間部門で2万人
の合計5.6万人の雇用を実施すると発表した。年が明けて早々、1月5日には、今年中に高速道路
の整備、鉄道の敷設など、220億ドル規模のインフラ開発プロジェクトを実施すると宣言した。さ
らに1月28日には、カーブース国王が、若年層国民を支援するため、「ラフド」基金を資本金約
182百万ドルで設立すると発表した。
・<労働争議と待遇改善>
近隣のカタールやドバイで外国人比率が8割を超えるのに比せばオマーンは低い。オマーンの国
家統計情報センターによれば、外国国籍者は全人口 385 万の内、168 万人(2013 年 7 月末)と半
分に満たない。これも近隣諸国に比べれば、国民教育によるせいか、オマーンの若年層は勤労意
識も高く、特定の職業を選択する傾向も強くない。それでも、失業率は UAE、カタールに比べ
て高く、特に若年層に偏りが見られる。こうしたことを背景に、反政府運動の中でも、労働条件
面における国民優遇措置を求める声が出ていた。これに従い諮問評議会は、本年2月9日、外国
人の雇用制限と国民の最低賃金を大幅に引き上げることに関する法案を可決した。民間部門での
国民労働者の最低賃金を 60%以上引き上げて、7 月以降月額 844 ドルとした。また、外国人労
働者数の総数を全人口の33%にまで引き下げていくとした。この直後となる2月12日、マスカ
ット空港で、給与や生活手当ての見直しを要求した国営航空の地上職員120名以上が労働争議を
起こした。
9月2日、外国人労働者の家族滞在査証の発給に必要とされる給与要件が、月額300リアル~
350リヤルから、月額600リヤルへ引き上げられた。(1リヤル=約268円)
新学期が 9月から始まったが、10月 1日、公立学校 1047校のうち 740校が参加する教員の
ストライキが3日間行われた。要求内容は給与・職場施設・授業プログラムなどの改善、教員組
合の結成など。カーブース国王は、11月12日、行政職公務員の給与体系や退職者の年金給付の
体系を一本化する勅令を発出した。
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・<2013 年前半、エジプトで、ムスリム同胞団を基盤とするモルシー政権が国民からの支持を失
い、オマーンでも反政府活動の動きが鎮静化していくに連れて、恩赦の施行がなされる。>
3月 4日、最高裁判所は、前年末に控訴審で王政転覆や道路封鎖の罪で 11名に下された判決
の内、8 名の有罪判決を破棄し、残り 3 名については上告を棄却した。さらに、18 日には、こ
の 8 名を保釈金 520 ドルで保釈することを決定した。加えて 21 日、カーブース国王は、2011
年の抗議行動により有罪判決を受けたり訴追されたりした活動家約 30名に対し恩赦を布告した。
一方、イスラーム保守派の活動家複数を治安当局は3月9日に逮捕した。オペラでクルアーン
が詠唱されたことに対し抗議を行っていた。
7月に入るとラマダーン月(7月 10日~8月 7日)に因みカーブース国王による恩赦が 14名に
対して 23日になされた。さらに 8月 6日にも、ラマダーン月後のイードルフィトル(断食明祭)
に因み、カーブース国王は、自国民 87名、外国籍 68名の合計 155人の受刑者を恩赦にした。
続いて10月13日、カーブース国王は、イードルフィトル(犠牲祭)に際して受刑者の内、自国民
99名と外国籍89名の、合わせて188名に恩赦を布告した。
・<まとめ、石油・天然ガス部門での影響>
石油・ガス省のジャーシミー次官は、8 月 14 日に国営メディアへのインタビューに答えて、昨
年石油部門で起こったストライキが生産活動に影響を及ぼしたことについて語っている。今後の対
策については、人的資源省からのフォローアップが実施されており、関係部局が企業の労働者に対
する義務を遵守しているかについて調査していると述べた。
オマーンの石油・天然ガスの上流部門で最大の雇用を抱えるのはオマーン石油開発社(PDO)であ
るが、近年の反政府運動の影響により、PDO はコントラクターを含めて多数を新規に雇用するこ
ととなった。また、外国人労働者に対しては、家族を含めたビザ発給料金の上昇など、負担が増大
する結果となっている。
以上