東京大学アイソトープ総合センター植物によるriの吸収・移動・代謝...

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東京大学アイソ トープ総合センター VOL.7NO . 11976.6 電離放射線の "むだづ か い〟 田 一坂 日告 かねがね考えていることであるが、どうも我が国では電離放射線の "むだづ か い〟が さ れ て い る と確 信 を もつ に 至 っ た 。 こ れ に つ い て一 筆 す る こ とに す る。 こ ん な こ と を証 拠 もな しに広 言 ?す る と忽 ち に して袋 叩 きに あ い そ うだ が 、実 を い う と 根 拠 とな る は っ き り した数 字 は もっ て い な い。 あ くまで も印 象 で あ るO こ ん な態 度 で よ そ の領分にまで口出しをすると大変なことになるので,首を突っこんでいる臨床医学につい て だ け の こ とに す る。 しか し他 の領 域 に つ い て も想像 を這 し く して 考 え て も ら うこ とは読 者 の 自由 で あ る。 さて "む だづ か い〟 とい う内容 に は直 接 的 の もの と間接 的 の もの とが あ る。 い う まで も ないが電離放射線は生物学的には人体に害作用 しか与えないので、使 うか らにはそれによ る利益 との引 き換えになる。医療で使用するときには病気をなおすのに役に立つ結果が得 られ る こ と との 取 引 で あ る。始 め か ら役 立 た な い様 な使 い方 をす るの が 第- の 無 駄 で あ るO X線写真 とは名ばか りで診断の役に立たないものが通用 している様なことがあればこの例 とな る。 第 二 の む だ は 、 Ⅹ線 や ラ ジ オ ア イ ソ トー プ を使 っ た検 査 な どで 、 そ の 中 に 有 益 な 情報が示されているのに、それを利用できないで捨ててしまっているような無駄である。 この二つは電離放射線 を医療に使 う人が、結局は医師 ということになるが、充分に訓練 を 受 け て い な か っ た り、 そ れが 不 足 で あ っ た りす る ため に お こ る。 わ が 国 で は 文 明 国 とい わ れている国の中で、医師であれば誰でも放射線を勝手に使用できる数少い国の一つである ことに原因の一部があるのかも知れない。 次 は 間 接 的 な む だ使 い で あ る。 これ は何 で も ち ょ っ と良 さ そ うだ と宣 伝 さ れ る と、皆 が 同じことをしたがる国民性に原因がある疑がある。癌の治療に使われる高エネルギー放射 線の治療装置なども例外ではない。 どこにでも設置できるので、治療の対象 となろ患者数 の地域的な分布 とは関係 な く置かれ、全体 としてみると利用度の悪 い配置になっているな どがこれである。貧弱なⅩ線診断装置がどこにでもあるというのもこれである。数だけは 多 い が 粗 悪 な装 置 を並 べ た て て い る文 明 国 とい う誇 りを受 け て も仕 方 が な いO 間接 的 な む だづかいは経済的の無駄であることも重要であるが、それにも増して電離放射線の直接的 なむだ使 いの背景 となっているので無視できない。 さて、ではどうしたら良いのかであるが、相当思い切ったことをしないとなおすことは

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  • 東京大学アイソトープ総合センター

    VOL.7NO.11976.6

    電離放射線の "むだづか い〟田 一坂 日告

    かねがね考 えてい るこ とであるが、 どうも我が国では電離放射線の "むだづかい〟が さ

    れてい る と確信 をもつ に至 った。これにつ いて一筆す るこ とにす る。

    こんなこ とを証拠 もな しに広言 ?す ると忽 ちに して袋 叩 きにあいそ うだが 、実 をい うと

    根拠 となるはっ きりした数字 は もっていない。 あ くまで も印象であるO こんな態度でよそ

    の領分 に まで 口出 しをす る と大変 なこ とになるので,首 を突っこんでいる臨床医学 につ い

    てだけの こ とにす る。 しか し他 の領域 につ いて も想像 を這 し くして考 えて もらうこ とは読

    者 の 自由であ る。

    さて "むだづ かい〟 とい う内容 には直接的の もの と間接的の もの とが ある。 い うまで も

    ないが電離放射線は生物学的には人体 に害作用 しか与 えないので、使 うか らにはそれによ

    る利益 との引 き換 えになる。医療 で使用す る ときには病気 をなおすのに役 に立つ結果が得

    られ るこ ととの取引である。始めか ら役 立たない様 な使 い方 をす るのが第- の無駄であるO

    X線写真 とは名ばか りで診断の役 に立たない ものが通用 している様 なこ とが あれば この例

    とな る。 第二 のむだは、Ⅹ線や ラジオアイソ トープ を使 った検査 な どで、その中に有益 な

    情報が示 されているのに、それ を利用で きないで捨てて しまっているような無駄である。

    この二つ は電離放射線 を医療 に使 う人が、結局 は医師 とい うこ とにな るが、充分 に訓練 を

    受 けていなか った り、それが 不 足であった りす るため におこる。 わが国では文 明国 といわ

    れている国の中で、医師であれば誰 で も放射線 を勝手 に使用で きる数 少い国の一つである

    こ とに原因の一部が あるのか も知れない。

    次は間接的 なむだ使 いである。 これは何 で もちょっ と良 さそ うだ と宣伝 され ると、皆が

    同 じこ とをしたが る国民性 に原因がある疑がある。癌の治療 に使 われ る高エ ネルギー放射

    線の治療装 置な ども例外ではない。 どこにで も設置で きるので、治療 の対 象 となろ患者数

    の地域 的な分布 とは関係 な く置かれ、全体 としてみ ると利用度の悪 い配置になっているな

    どが これである。貧弱なⅩ線診断装 置が どこにで もあるとい うの もこれであ る。数 だけは

    多いが粗悪 な装 置を並べ たてている文 明国 とい う誇 りを受けて も仕方が ないO 間接 的なむ

    だづ か いは経済的の無駄であるこ とも重要 であるが、それに も増 して電離放射線の直接的

    なむ だ使 いの背景 となっ てい るので無視 で きない。

    さて、では どうした ら良 いのかであるが 、相 当思 い切 ったこ とをしない となおす こ とは

  • 2

    出来そ うもない。残念 なが ら簡単に ききめの現れ るような特効薬は持合せ ていない。 いや

    それは医学教育が悪 いの じゃ ないか 、と、野次 をいいたい人が 多 くいそ うであ る。 これでは

    火の粉 は我が身に降 りかか る始末になって しまう。摘頭 言はこの位 でやめに しよう。 あま

    りかん しゃ くを起 して も良いこ とはない。頭 を冷や して皆 さん と一緒に考 え るこ とに した

    いo (附属病 院放射線科)

    共 同利用の お知 らせ昭和51年度共同利用計画

    第 Ⅰ期 昭和51年 4月12日~7月16日

    第 ⅠⅠ期 9月13日~12月17日

    第III期 昭和52年 1月10日~3月18日

    昭和51年度第 Ⅰ期共 同利用許可一覧

    学 部 責 任 者 氏 名

    医 学 部 鈴 木 庄 亮

    〝 本 庶 佑

    病 院 岡 野 一 年

    〝 村 中 正 治

    IJ 谷 村 勇 一

    〝 宮 本 昭 正

    〝 溝 口 昌 子

    工 学 部 堂 山 昌 男

    〝 氏 平 祐 輔

    〝 田 畑 米 穂

    理 学 部 野 津 憲` 治

    〝 川 島 誠 一 郎

    〝 富 永 健

    LHHu

    ■いu

    hHu

    I/

    /

    /

    谷 次 夫

    藤 和 郎

    谷 順 一

    藤 七 郎

    中 高 光

    (利用 申込 〆切 6月末 日)

    (利用 申込 〆切11月末 日)

    石汗 究 題 目

    夜光時計製造工場 におけ る放射線管理

    RNAの ヨー ドイヒ

    副 甲状腺 ホルモ ンの生合成 に関す る研 究

    ヒスチ ジン ・デ カルボキシラーゼ活性 の研究

    薬物の体 内挙動 の検討

    ヒスタ ミンの測定

    リンパ球培養 を利用 した遅延型ア レル ギーの研究

    陽電子消滅 による金属の研究

    メスバ ウアー効果 の分析化学-の応用

    有機化合物 中での陽電子消滅

    放射化分析 の研究

    ラッ ト正常黄体細 胞 と黄体腫細胞の ホルモ ン受容体

    に関す る研究

    (丑メスバ ウア一分うと法 による無機化合物の研究

    (参ラ ジオガスクpマ トグラフ法 によるフルオロカー

    ボン類 の放射化学 的研究

    核酸 の光化学研 究

    RNAの構造 と生合成

    熱蛍光線量計 に よる環境 お よび個 人被曝線量の測定

    研究

    40Ar-39Ar法 に よる岩石年代 測定

    水産動物卵 の発生 の研究

    天然試料 中の天然放射性元素の分布 に関す る研究

    生体試料の微量分析

    プロプラスチ ドの機能

    鉱物結 晶中のFe及 びSnイオ ン分布

  • VOL.7NO.11976.6

    理 学 部 池 田 幸 雄

    〝 安 楽 泰 宏

    〝 藤 伊 正

    農 学 部 茅 野 充 男

    〝 河 本 啓

    〝 本 好 茂 -

    〝 横 田 孝 雄

    〝 石 田 行 知

    教 養 学 部

    薬 学 部

    //

    生 産 石汗

    応 微 研・

    原 子 核 石汗

    物 性 研

    //

    RIセ ンター

    メスバ ウア-分光法 に よるガラス中のFe2+/Fe3+

    比 の決定

    生体 膜 におけ るエ ネル ギー転換

    藻類 におけ るエチ レンの合成

    植物 に よるRIの吸収 ・移動 ・代謝

    胎盤 と下垂体 におけ るホル モ ンの合成 とその泌乳 開

    始 に及 ぼす影響

    家畜 の血 中VB12濃度 につ いて

    ジベ レリンA9・メチルエ ステル の純度 測定

    モル モ ッ ト盲腸紐 におけ るCaの動 態

    イオ ン結 晶中の陽電子 消滅

    ラ ジオイム ノア ッセ イ

    蛋 白質 のPrebioticSyntlleSisの研 究

    p-- イ ドロキ シ安 息香酸 類 の薬動 学 的研 究

    オー トグラフ イーの感度 に関す る研 究

    14C化合・物 の生合成

    54Mnの微 弱放射能 測定

    希 ガ スの微 量成分分析

    63Ni密 封 線源 の漏洩検査

    植物種 子 の放射化分析

    ア イソ トー プ総合 セ ンター 日誌

    昭和51年 4月12日 昭和51年度 第 Ⅰ期 共 同利用開始

    共 同利用 ガイダ ンス実施

    ◎RI教育 訓練 の実施

    昭和51年 4月13-16日

    工 学部 工 業化 学科 4年生 (工 業分析化学 コー ス)

    〝 6月 8, 9日,15, 16日

    工 学部 原子 力工 学科 3年生

    [コ委 員会 だよ り

    ○ セ ンターニ ュー ス編集委 員会 (第23回)

    3月16日(火 )開催 、議事 次の とお り

    1.次期委 員- の引継事項

    2.その他

    ○ セ ンター ニ ュー ス編集委 員会 (第24回)

    4月26日(月)開催 、議事 次の とお り

    1.委 員長選 出

    2.Vol.7、N0.1の企 画

    3.その他

    ○ セ ンターニ ュー ス編集委 員会新 委 員名 簿

    委 員

    代 谷 次夫

    ◎佐 藤 乙丸

    鈴 木 良実

    中村 保典

    斎 藤 信房

    塩 川 照雄

    理 学部

    生産 技術研 究所

    工 学部

    セ ンター

    セ ンター

    セ ンター

    幹事

    大 日方京子 セ ンター ◎ は委 員長

    く任期 51年 3月 1日~52年 2月28日〉

    3

  • 4 VOL.7NO.11976.6

    ラジオガスクロマ トグラフィーにおけるフローセJH乃功率岸 川 テ ル 子

    ラジオガス クロマ トグラフ装 置はガス クロマ トグラフ装置で分離 した放射性物質 を連 続

    的に放射線検 出器 に流入 し放射能 を測定す る様組立て ら

    れた装 置であ る。 ガス クロマ トグラフ装置内は化合物 の

    気相分離 に適 した温度 を保持す るが 、放射線検 出器部分

    を化合物の気体 温度 に保持す るこ とが困難 である場合が

    多い。その場合 はガス クロマ トグラフ装置 と検 出器の間に

    分解炉 を設け、その炉 を放射性 化合物が通過す る際 に低

    分子の気体分子 に変 化 させ検 出器 に導入す る方法 をとる。

    本セ ンターの検 出器 は図 1に示 すプラスチ ックの容器

    にア ン トラセ ンの結 晶粉末 を充填 し、左右両面に光電管

    を配置 したシンチ レー シ ョン検 出器 である. プ ラスチ ッ

    クの容器の一方の 口か ら分解炉で生成 した気体が流入 し

    U字型管 を気体が通過す る間に放射能が計数 さけし各勺

    図 1 フローセル

    ,:::I"..":.:盛

    .

    .,

    ラジオガス クロマ トグラフ全体 としての検 出効率 はフローセル 自体の効率 と分解炉にお

    け る標識化合物 の気体- の転化率 に よ り決 まるが 、100%気体状 に分解 した場合最終的には

    フローセルの効率 に等 し くな る。 またフローセル 自体の効率 はセルの容積 (ア ン トラセン

    の容積 )お よび型状 に よって変 るこ とは勿論 であるが 、今回本セ ンターの ラジオガスクロ

    マ トグラフ装 置に付随 しているフローセルの効率 を検討 した結果 を述べ る。 フローセルの

    外寸法 は液体 シンチレー ション検 出器 に用 い られている20mEのバ イアルに等 しいため 、先ず

    液体 シンチ レー ター に よる効率 を調べ ると表 1に示す如 く20mEバ イアル中で 4Cに対 し90%、

    シンチレーター

    CH

    431

    表 1 各種 セル を用 いた時の検 出器の効率

    トルエン系液体 アントラセン結晶粉末

    20

    10

    Ei山

    W凡

    W且m=∬且

    E5度

    11mEフローセル 5mE7ローセル lmEフローセル

    h-4.6cmめ-0.4cm h-4.6cm軽0.8cm h-4.6cm軽 1.2cm

    フロー フロー フロー

    ① 17

    ② 6 ② 2 ② 1

    註(9 14C02は流路 においてNaH14co310pl(84550dpm/5ilmol.)に 10N H2SO4

    0.05mEを添加 して発生 させ た.

    ② 〔3H〕n-フアンは森 川らの方法 〔Radioisotopes,10,302(1961)〕に よった。24000dpm/mE

    ③ ,④ 〔14C〕 トリフェニル メタン,〔3H〕トリフェニル メタンを少量 の トルエ ン に溶解 し、ア ントラセ ンを含 む20mEのバ イアルに注入 し蓋 をして激 しく振塗 した後 、蓋 を除去 し風乾 した。⑨ は4750dpm (彰は4940dpmを含 む

    ⑤ 〔14C〕トリフ ェニル メタ ン103-105dpm

    ⑥ 〔3H〕ト')フ ェニル メタ ン103-105dpmをppo4g,DMPOPOP0.2g/Toluene l且の組成 の シンチ レー ター10m射こ溶解 したO

  • VOL.7NO.11976.6

    3H に対 し50%である。即 ち検 出器のセルの位 置 と光電面の配置に関 しては効率 の良いカ

    ウンター と云 える。 同一のバ イアル中において放射性物質 をア ン トラセ ン結 晶粉末に密着

    させ た場合 には、14Cに対 して 40%、3Hに対 して 5% と 3H の検 出効率 の低下が著 しい。

    実際 にラジオガス クロマ トグラフ ィー に使用す る場合のセルの効率 はキャ リヤー ガス流速

    が一定の時の仝計数のdpmに対す る百分率 として表わ している.20mE/minの流速で、11mE

    のフローセルにおけ る効率 は14CO之に対 して17%、〔3H 〕n-ブ タンに対 して 6%である。

    表 1に〔3H〕n-ブタン1mEを20mE/minの流速 で流 した場合 の、 3種 の大 中小 の フローセル

    におけ る効率 を示 す。3種 のセルは高 さが同一 であり、空間の管 の径 が異 るものである。容

    積夫 々1mE、5mEお よび11mEであ り、夫 々の効率 は 1%、2%、6%であったO夫 々のセル

    の効率 対容積比 は必ず しも一定 でなく、5mE以上 の場合 がほぼ容積 に比例す る傾向 にある。

    流速が変 れば当然計数 も変 るので測定 に当っては一定の流速 を保つべ きであるO ガスク

    ロマ トグラフ ィーの利用 目的上 、流速の変化 を免れない場合が 多いが 、表 2に流速変化に

    伴 う効率 の変化 を示す020mE/min~40mE/minの流速においては、20mR/minに 換 算 す る

    と効率 は一定であったo Lか し40mE/minが限度であると思 う.それ以上 の流速は測定誤差

    の増大 を招 くであろ う。計数時の流速が一定 であれば、流入気体容積が変化 した場合 も一

    定の効率 が得 られ た(表 3)O 多成分 を含む試料 を取扱 う場合 には特 に計数時の流速 を一

    定に保つ よう手段 を施すべ きである。

    表 2 流速変化 による効率 の変化 ※

    流速 (Ⅹ) 効 率

    20mE/min

    30mE/min

    40mE/min

    4

    4

    4

    00

    0

    ±±

    ±

    3

    5

    2

    5

    5

    6

    (-計数/ぞ ×豊 )

    表 3 流入気体容積変化 による効率 の変化

    流入気容量※ 効 率 /mjZ・

    ※〔3H〕-n-ブ タ ン 1mA-13000dpmを流 したO

    β~m1

    2

    3

    4

    5.7±0.4

    5.3±0.4

    5.5±0.4

    5.2±0.4

    ※〔3H]-n-ブ タン1mA-13000dpmを用 いたO

    以上の事 を考慮し現在流速 を20-30mE/minに保 ち、11mEのフローセル を用いて測定 を行

    っている。今一つ大 きな問題 は効率 の よ り高 いフローセルの考案 と分解触媒の検討であろ

    う。

    [コ人事消息

    ○人事異動

    併任

    講師 (非常助 )宮地 重遠 (応 )

    氏平 祐輔 (工 )

    佐藤 組 (理 )

    (期間 4月 1日~9月30日)

    採用

    技官 遠藤 正志 (4月 1日付 )

    辞職

    技術補佐員 山下 忍 (3月31日付 )

    (アイソ トープ総合セ ンター)

    5

  • 6

    「ガ ンマ線測定法」 の講習会 を顧 て佐 藤 純

    アイソ トープ総合 セ ンター では、毎年学 内の RI取扱者 に対 して 2種類 の講習会 を実施

    しているO-つ は、全 くの初心者 に対す る 「入門 コー ス」であ り、 もう一つは、ある程度

    RIの取扱 い を経験 したことのある経験者 (主 として大学院学生) を対象 とした 「専 門 コ

    ー ス」 であ る。 「専 門 コー ス」 と称 して も、広 い研 究分野で利用 され る実験技術 に関す る

    ものであれば、む しろ一般的で、やや基礎 的な事柄 が対象 となる。 この専 門 コー スでは、

    一つの メニ ュー として 「液体 シンチ レー シ ョン測定法」があ り、これはすでに 2回行 われ

    てい る。

    昨年12月17日か ら 3日間にわたって行 われ た 「ガンマ線測定法」 に関す る講習会 は、専

    門 コースの二つ めの メニュー であ る。 内容 は、 「ガ ンマ線 を測定 して定量分析 を行 う際の

    基礎 的技術 の修得」 という点 に焦点が合せ られた。

    第 1日目が講義 で、 2日目、 3日目が実験 で あった。 第 1日目には、 「測定法概論」(岡

    野真治博士 :理研 ) と 「放射化分析」 (野崎正博士 :理研 )の 2つの講義が行 われた。

    実験 は、一つの教材 に より、比較的 多 くの技術 の修得がで きて、 しか もあま り複雑 にな

    らない ような もの として、海水中のNaとKとを放射化分析す るとい うテーマで行 われた。

    海水 を蒸発 して得 られ る蒸発残 壇 を熱 中性子 によ り放射化す ると24Na、42K、82Brな ど

    のガンマ線放射核種 が生成す るが、42Kのガンマ線は、大量に生成す る24Naのガンマ線に

    か くされて、照射音斉試料 のガンマ線 をい きな り測っただけでは観測す るこ とはで きない。

    また、両者 の半減期がほぼ同 じであるので、照射時間の調節や 、一方の壊変 を待 って他方

    を測定す る とい う方法 を採用す るこ とので きない場合 がある。 この ような場合 は、化学分

    離が測定に必要不可 欠の操作 である。 この講習会では、イオン交換法に よ りNaとKを分離

    して夫々の ガンマ線 を別々に測定す るこ とが試み られた。

    測定器には、 もっ とも標準的な検 出器 である3〟×3〝少のNaI(Tl)を検 出器 とす るシンチ

    レー シ ョンスペ ク トロメー タを主 として用い、スペ ク トルの観察お よびNaとKを定量 し、

    文献値 と比較す るこ ととした。 また、近年広 く用 い られているゲルマニウム (リチウム)

    半導体検 出器 を用 いて同 じ試料のガンマ線 スペ ク トルの観察が行 われた。

    カスケー ドのガ ンマ線 を用 いる同時計数法-は、ガンマ線測定の一つの特長であ る。今 回

    は、24Naの 2本の ガ ンマ線の一方 をゲー トとして行 い、スペ ク トルの変化 を観察す るだけ

    に とどまった。

    講習会では、約20名が講義 を聞 き、その うち 4名が実験 に参加 した。 この実験 は、操作

    が 1日で終 了す る比較的簡単 な ものであって、実験結果の解析 と考察は 3日目に行 った。

    定量値 は、は じめ て行 う実験 としては上 出来の部類 であった。 講習会は、すべ て予定通 り

    に無事 終了 し、短期 間ではあったが所期の成果 をあげ るこ とが出来た と思 われ る。

    この メニ ューは、今 回が最初 の試みではあったが 、この試み を踏み台 として よ りよい も

    の を作 り上 げ るため に も、各方面 、各研 究分 野の方々の積極的な協 力が望 まれ る。 また、

    短期 間の うちに一 層の効果 を上 げ るため には、例 えば、スライ ドや ビデオな どを完備 した

    り、ハ ン ドブ ックな どを作成す るな どの努 力が なされなければな らない と思 われ る。

    (理学部化学教室 )

  • VOL.7NO.11976.6

    物性研 究所共通放射 線実験室本 田 雅 律

    所 内におけ る放射性物質 の取扱 いは密封線源に関 しては各研究室内に管理 区域 を定めて

    管理 してお り、中性子 、ガンマ線、エ ックス線、ベ ー タ線等の線源 として最高 100mCiに

    達 す る252Cf,57Co,63Ni,147p m ,241A m 等 はそれぞれ 目的に応 じて各研究室内で使用 しているO

    このほか 中性子 回折実験 、SOR施設関係 に付随す るものは別扱 い となっている。非密封線

    源 に関 しては本共通実験室内でのみ取扱 うこととし、 また60Co照射実験 も本屋 よ り離れた

    場所で特別の設備 を施 して行 ってい る。運営 は本田 (委員長 )、大野、神前各所員及び堀江

    助手で構成 され る所 内共通放射線実験室委員会が行 なっている。現在 当室の担 当は堀江絹

    子助手 、森 多美子技官の 2名である。

    非密封線源用の施設 はいわゆるB棟 と称す る 2階建 の建物 内の低 温液化室 とサ イクロ ト

    ロン室にはさまれた位 置にあ り、建坪 約100m2(1階40m2, 2階60m2)の規模 で∴1日最大

    使用数 量は第 2群 で0.2mCiとなっている。1階は出入 口、測定室、汚染検査室 (含洗面所 )

    貯蔵庫 よ りなってお り2階に化学実験室 、準備室 (管理室 )を置いている。すべて第 1種

    管理区域に指定 してあ り、管理室 (居住区)が 2階にあるこ とは将来改善 を要す るもの と

    見 られている.化学実験室には大小 2面のフー ド、 グロー ブボ ックス 2台、天蓋式排気系

    付小実験 台 4台、シ リコニ ッ ト電気炉 1台が設備 されてお り、かな りせ まい空間 となって

    い るO これ ら実験室の排水は電気炉 の冷却水 を除 いてすべ て 5m3 2ヶの貯留槽 に一旦貯 え

    られる.排気は現在の実験の性質上 ガス状放射能が発生す る心配はほ と-ん どないが、専用フ

    ィル ター を通 して外気 に流 している. フー ドの 1つは特 に排気管の途 中で水洗源 を行 う装

    置 をと りつけ化学的に活性気体は トラップで きるように設計 されている。 しか し排気全般

    につ いては特 にモニ タ リングは行 っていない。使用ずみの放射性廃棄物 は可能 な限 り固形

    化 し所定の ドラム缶に分類 、一時保 管の上外部処理機関に委託 してい る。貯蔵庫は鋼装 鉛

    内張 りの金庫ーのほか50cm四方高 さ1.5mの空間 を区分 して使用 している。その一部 を10cm鉛

    煉瓦で囲んで漏洩線量 を許容 限界にお さえてはいるが、この種 の設備 としては最 も原始的

    とい わなけれ.ばな らない。

    測定装置は低 レベ ルガン マ線測定用に設計 された100ccGe(Li)半導体検 出器のほか井戸

    型1.3/4"¢×2''NaI(Tl)をセ ンター検 出器 とし径2'わ井戸つ き5"〆×5"NaI(Tl)を保護カウン

    ター とす るガ ンマーガ ンマ反同時全吸収 型のガンマ線検 出器 、 別に小 型結 晶のほか51'45×

    5〝NaI(I)検 出器がある。 またQガスフロー 型ベー タ線測定器 (Qガスフロー円筒型GMカ

    ウンター を保護計数管 とし、0.2cpm/6cm2程度の 自然計数 )、アルファ線 及びエ ックス線周

    半導体検 出器等があ り、必要 に応 じて厚 さ10cm以上の鉛煉瓦で遮.蔽 されている。 これ らの

    検 出箸別こ対応 して波高分析器 としてNuclearDatalO24チャネル(100MHzADCつ き)分

    析器、NA工年 (日本原子 力事業)4096チャネル (300MHz相 当ADCつ き)分析器 、Nuclear

    Data 512チャネル(5MHz.)分析器矛 作動 させ ている。 プ リンター としては、 Hewlett-

    Packard20行/秒 及び10行/秒 を組合せ ている。 その他 シングルチャネ ル分析器 2台ベー タ

    ー線等用 同時回路 3台、大小高圧発生機 (6KV, 3KV, 1.5KV) 6台、各種 増 巾器等々

    のほかサーベ イメー ター (GM型 3,シンチ レー シ ョンカウンター型 1),- ンドフ ッ トモ

    ニ タ- 1等が用意 されている。

    密封線源施設 としての60Co照射室は現在約700Ciの レベ ルであるが最大2000Ciを収容可能

    な設計 であ り線量増量が可能 である。60Co線源 はガンマ線漏洩防止の ため地下防空壕 を改

    7

  • 8

    修 して格納 してお り、 コン トロール室、照射室は重 コンクリー トで遮蔽 されているO また

    低 温照射実験が行 なえるよう設計 されてお り、液体窒素 、液体- リウム温度での実験が行 わ

    れてい るのが特長 であろ う。

    次に これ らの施設で最近行 われている実験につ いて述べ る。 本所 は全国共同利用研究所

    であるため に設備 の許容す る限 り外来研究員 (施設利用等) を受入れてお り実験内容が 多

    彩 にわたっている。 このため管理上 の問題点 も少 くない。

    非密封放射性物質の取扱 い実験 は大別 して線源の作成 、 トレーサー実験 、放射化分斬 で

    ある。物性研究のための線源 として特殊形態の試料の作 製が種 々試み られている。 た とえ

    ば Co単結 晶の放射 化に よる60Co線源の調製、54Mnを含むMn(NH。)2(SO4)2 6H20 単

    結 晶の作成 、 電気炉内におけ る金試料内での無担体 54Mnの拡散 、 同 じくSrTiO3結 晶内

    へ の 57Coの拡散 に よる線源の作成 な どがあげ られ る。またメスバ ウ7-実験用 57Co-Fe

    線源の調製が行 われている。 この場合最 も間葛 となることは非密封線源 よ り密封線源を調

    製 し室 外に持 出 して物 性 測定にかけ る場合 に実 験 者が十分 な配慮 を払わない と汚染のお

    それが あ り何 回かの苦 い経験 を- て来ている。ト レーサー実験 としては、94M0-95Nbを利

    用す る Mo-Nbの化学分臥 137Cs,134Csな どを用 いた希 土類元素、アノL75リ金属 の舟観 考

    放射化学分離 の実験 が行 われ た。 放射化分析実験としては 日本原子 力研 (東妻毎村)や 立大 原

    研 を利用す る中性子放射化法 によ りウラン,希土類,アルカ リ金属,甲M nな どの試料分離,ガ

    ンマ線測定が行 われている。 陽子 、重陽子 、アルファ粒子等加速器 (理研 、核研 、医科研等 )

    を利用す る生成核の無担体分離に よる窒化ホウ素中の10Be、コバル ト標的中の59Niのほか

    Cr中の53Mn,Mo中の92Nb試料等の調製 も行 われている。 また核 反応 (核分裂やアルファ壊

    餐 )に伴 う反跳核種 の挙動 、た とえば固体表面に対 す る注入、化学的エ ッチ ングによる溶

    出な どの実験が行 われている。 いずれ も主 としてGe(Li)検 出器 によって測定 を高感度に

    行 うこ とが必要 となっている。

    密封線源 によ る実験60Co照射に より包接 化合物 中に生 じる化学種の検討や 、KF,LiI結晶中

    に生ず る色 中心 の作成 、モール塩, シュウ酸第 2鉄の放射線効果が研究 されている。 また

    241Am 線源 を利用す る特性 エ ック ス線に よるヨウ素な どの非破壊定量分析 も行 われてい

    る。

    本実験室の歴 史は研究所設立 (昭和32年 )後麻布 キャンパ スに移った当初 にか さのぼ る

    ものであ り、その後設備 の小規模 な改善 は行 われて釆 たが本質的な面で現状に沿わない幾

    多の問題点が指摘 されて いる。既述の よ うに管理室 (居住区)が第 1種管理 区域のほぼ 中

    心 にあ り管理上不都 合 で\あるほか 、高温加熱 を行 な う物理的実験 と酸の蒸気等の発生す る

    化学実験が同一-室内で行 われている等 、部屋数 、面積共にせ ます ぎるきらいがある.貯蔵

    能 力及び貯留槽 の規模 も小 さ く、近 い将来少 くとも1日最大使用数 量 1mG の レベ ルに引上

    げ る計画 を持 っている。 また非密封線源 を物性 測定機暑削こ導入 して諸測定 を行 うこ とが望

    まれ るのであ るが現在本屋 にある測定機器 を受 入れ るこ とは不可能 であり、この研究上 に与

    えている障害 を除去す るこ とも計画 されているO その一例 として放射性物質 を含む固体試

    料 の質量分析実験 を可能 にす るこ と、放射性音容液の原子吸光法 に よる測定 を可能 にす るこ

    と等 さ しあたっての課題である。前者のため には 5mX6m程度の部 屋 を新設 した上 、機

    械の全体 を永久的に移転せ ねばな らない とい う困難があ り長 い間の懸案事項 となっている。

    部局セ ンター としての規模には 自ら制約が あるため 、アイソ トープ総合セ ンターに依存

    しなければな らない実験 も少 くない。最近 はmCiレベ ル以上の取扱 いにつ いて極 力総合セ

  • VOL.7NO.11976.6

    ンタ-の利用 を申請 し実現 させ ている。 た とえば10mCi以上の60Coを含む中性子照射 Mo

    金属 の化学操作や mCiレベ ルの119m snの メスバ ウアー線源の作成等がある。しか し測定装置

    の持込み までは可能 でないため これ も制約 されている といえよ う.将来は第 1種管理 区域

    内で精密 な物性 測定 、高圧実験 、低 温実験 等 々が可能 になるこ とを切望す るものである。

    RobertK.Togasaki博士講演会

    去 る 1月13日、米国Indiana大学植物科学教室準教授 、東 ヶ崎清博士の講演会 が、博士 の

    ご専 門の光合成 をは じめ、学 内外の関連分野の研究者 を集 めてセ ンター講義室 で行 なわれ、

    講演 が 日本語 で行 なわれたこ ともあって、熱気の こもった実質的 な質疑討論 が続 いた。講薄

    内容 は以下 の通 りである。

    ChlamydomonasreinI一ardi は単細胞の緑藻で、独立栄養 で も従属栄養 で も培養 で き、

    かつ半数体生物 で生殖法が簡単 なため光合成の遺伝生化学的研究 に有利 な材料 であ る。以

    上 の特色 を活かす ため に、光合成能 力 を欠 く多種類の変異株 の効率 よ く回収 で きる方法 を

    開発 した。

    Clllamydomonasreinhardiの野生株 を、酢酸ナ トリウム を含む有機寒天培地 で育 てた場

    合 、 コロニーの形成 は耳此酸 で阻害 され る。 この阻害 は、明所 では暗所 よ りも低 濃度 の枇酸

    に よってひきおこされ る。野生株 と同 じ条件 で育 てた光合成能 を欠 く変異株 4種類の コロ

    ニー形成 は、明所 では野生株 よ りも高濃度の枇酸 を与 えない と阻害 されなか った. しか し

    野生株 を光合成阻害剤 であ るDCMU(10~5M)存在下 で育 てた場合 、明所 において枇酸 に

    対 す る抵抗性 が高 まった。以上 の事実 か ら、 コロニー形成 は、光合成 によって枇酸 による

    阻害 を受 け易 くな ると考 え られ るO従 って紫外線処理 後の野生株 を高濃度の枕酸 を含 む有

    機培地 で高濃度 で育 てた時、生存 コロニー中、光合成不能株の比率 が高め られ ると推定 さ

    れ る。

    以上 の方法 を用 いて、現在迄 に100株以上 の光合成不能殊 が分離 された。その うち、51株

    が、光合成電子伝達能 と光 リン酸化能 を測定す るこ とによって、次の ように類別 された。光

    化学系 ⅠⅠの酸化側 に障害の ある変異株 が 3、系 ⅠⅠ自体 に故障のある変異体 が12、光化学系

    ⅠとⅠⅠの中間 に障害のある変 異株 が 6、光 リン酸化機能 に障害のある変異株 が 2、電子伝

    達能 と光 リン酸化能 を持 ちなが ら、尚かつ、光合成不能 の株 が28見出 されてい る。 これ ら

    の変 異株 は、一つの例 外 (liplO-2) を除いてすべ てメンデル型遺伝 を示 し、lip10-2

    は、典型的 な非 メ ンデル型遺伝 を示 す。尚、lip10-2は、光 リン酸化機能 に障害 がある変

    異株 である。以上 の事実 は、葉緑体 内のDNAに所在す る遺伝子 と光合成機能 との関連 を

    調 べ る手 がか りとなる と考 え られ る。

    叉 、Purdue大学 のW CramerとP.Horton両博士 との協 同研究 に よって、低 温 (液体窒

    秦 )吸収 スペ ク トル と差 スペ ク トル とその四次微分 が調べ られ、C-550,Cytochrome-

    559Lp.Cytochrome-559Hp.Cytochrome-553.Cytochrome-563につ いて、野生株

    と異 な る数種類の変異株 が見出 された。

    更 に光合成電子伝達能 と光 リン酸化能 を充分 に持つ に もかかわ らず、生体 での光合成能

    を欠 く変異株 は、炭素代謝系 に障害 があるもの と思われ る。 しか し、現在適 当な解析法が

    ないので、前照射実験の技術 を応用 して、 この問題 を研究 して行 きたい。

    9

  • 10

    東京大学アイソ トープ総合 センターニュース

    目 次

    電 醒 放 射 線 の "む だづ か い "

    共 同利 用 の お知 らせ

    ア イ ソ トー プ総 合 セ ンター 日誌

    田 :坂 口告・- ---・--- 1

    ラ ジ オ ガ ス ク ロマ トグ ラ フ イ- にお け るフ ロー セ ル の効 率

    岸 川 テ ル子--- ・- - - 4

    「ガ ンマ線 測 定 法 lの講 習 会 を顧 て

    物 性 研 究 所 共 通放 射 線 実 験 室

    RobertK.Togasaki博 士 講 演 会

    佐 藤 純 ・-- - - - - 6

    本 EEl 雅 孝建--・・- ・・- - ・7

    なお、博士 はIndiana大学 のsabbatical休 暇 を利用 して、昨年暮 れ に来 日され、東大応用

    散生物研究所 の客 員教授 として 8月半 ば まで滞在 され る。現在 、RIセ ンターで、奥様 か ら

    グレイムがつ か ない範囲 内で、毎 日遅 くまで研 究 に専 念 されてい る。 とか く平板 で単調 に

    なりが ちな 日々の実験題材 が、博士 にかか る と、生命 を与 え られ たかの如 く見 えて くるの

    が不 思議 であ る. (文責 、ア イソ トープ総合 セ ンター中村保典 )

    (編集後記)

    立教大学原子力研究所 の廃棄物保 管問題や病 院 におけ る60co針 の紛失事 故 な

    どが報道 され 、全学 的 には Ⅹ線装 置等 を含む放射 線発生装 置の 自己点検が行 な

    われ た。

    早 い もので、ニ ュー スの表紙の色 も主 な ものは一巡 して しまい、 この巻 か ら

    第 1巻 と同 じ色 に戻 るこ とに しました。 これ を機会に新 しい企画 を---と編集

    委員一 同智恵 を絞 ってい る次 第ですが、 さ しあた り第 1号 は従来 と同 じ形式 で

    編集 しま した。

    セ ンターの業務 内容 も固 ま り、一定の スケ ジュー ルで運営 され るようになっ

    てい ますので 、そろそろ共同利用研 究者 どう しのアイ ソ トープ技術 の交流が行

    われて もよいのではないで しょうか。 このニ ュー スが その伸 だち とな るこ とを

    願 って止み ませ ん。(佐藤)

    東京大学アイソ トープ総合センターニュース Vol・7・No・1 1976年 6月15日発行 編集発行人 塩川照雄〒113東京都文京区弥生 2丁目11番16号 東京大学 アイソ トープ総合 センター・電代表 (812)2111 内線2881

  • 東京大学アイソ トープ総合センター

    VOL.7NO.21976.9

    放 射 能 今」土日

    大 野 和 郎

    放射能今昔 と云 って も昔 と今 で別 に放射能がかわろ うはず もないが、齢50オ を越 した私

    に とっては、変 った とい うのが実感 である。 まず値段 の点では、戦前は 1キュ リーのRaが

    約30,000ドル と大変高価 で、例 えば医療用 として も東京、名古屋 と云 った大都市の趣 く限

    られた大病 院で使用 されたにす ぎない。 ところが現在 では60coは 1キュリーがわずか30セ

    ン ト程度 で医療用 として も非常に普及 している。30,000ドル と云 えば昔 ではひ と財産 で、

    この貴重 品が紛失 しようなど とい うことは夢 に も考 えられなかったが 、今では、60coを粗

    末 に扱 って、放射線取扱 いの法規 で叱 られ る所が あるようである。量的にみればその最 た

    る ものは原子炉 (小 さい ものでRa数百 トンに相 当)又は原子力発電 、原子爆弾であるが 、

    これは此 処で数行で述べ るにはあ まりに も大 きな問題 なので割愛す る0

    次 には、放射性 同位 元素 の寿命 である。寿命は原子核 の奥深 くで決 まる現象 なので 、こ

    れは原子核 ごとに決 まってい ると教 えられた。 ところが 、7Be、85sr、89zr、99Tc、

    125Teと云 った放射能核 の寿命は、その原子核 の まわ りの環境 で寿命が変わる。例 えば

    Be。0(CH3COO)6とBeF2との中にある7Beの寿命は約1/2000だけ違 っている。 寿命の変化 は骨伝導状態 と超伝導状態 で も、又誘電体が強誘電体 になって も変わることが NbとSr

    で報 告 されている。将来は物性実験 のひ とつの手がか りとなろ う。

    ガ ンマ線に注 目してみ ると、 これは電磁波でエネル ギーの低 い所 ではⅩ線 と同 じであ る。

    た 違ゞ う点はガ ンマ線は核 の中か ら放 出 され るし、Ⅹ線は原子か ら放 出される点にある。

    さて、一例 を57C。か ら放 出され る14.4keVのガンマ線に とると、波長 は約 1Åで あるが、ガンマ線 を放 出す るア ンテナ役 をつ とめ る原子核 は10-4Å と、その波長 に比べ ていち じる

    し く小 さい。 したが って電波の放 出効率 も著 しく悪 い。 このため、電磁波はなかなか減衰

    がお こらずその振動数 は10~13・程度の 「ボケ」しかな い. この517coを一定の速度 Vで動かす

    とその方向に ドップラー効果 に よって振動数 人はV/Cだけ変わるov-1cm/secとす ると、

    10-10となる。このガジマ線の振動数 は有効数字で1013ヶ タまで きめ られ るが 、ふたつの場

    合有効数字が1010ヶ タ目で振動数が違 うことになる。ある見方 をすれば、線源 を動かす こ

    とに よって全 く別 のガンマ線源 を作 りだ した とも云 えよ う。

    例 を 1マ イクロキュ リーの54Mnに とろ う。 この54Mnは 1秒 に0.835MeVの ガ ンマ線 を

    3.7×104個だけ四方八方に放 出 している。 さてこれ を磁 界中に置 き温度 をだんだん下げて

  • 2

    ゆ く。温度 を絶対温度 で千分 の一度 にす ると磁 界の方向には ガンマ線は殆 ど放 出されな く

    なって しまう。 これはガンマ線 を放 出す る54Mn原子核 の向 きをそろえようとす る磁界の力

    が熟 じょう乱に うち勝 ったため で古典的に云 えば電波 を放 出す るア ンテナの向 きが そろっ

    ・たために指 向性 がで きたこ とに相 当す る。実現はそんなにむずか しいこ とで はな く、私の

    研究室 ではこの現象 を利用 して千分の-程度 の温度測定等 を行 っている。

    今昔 の感 は まだ まだあ るが紙面の都合 で別の機会にゆず らせ て もらう。 (物性研究所 )

    液体 シンチ レーシ ョンカウンター用

    自動測定試料調製装置の

    特性 と最適条件 につ いて

    (packard …Automatic Sample OxidizerModel305")

    高 岡 彩 子

    1.は じめに

    液体 シンチ レー シ ョンカウンター用 自動測定試料調製装置は、シンチ レー ターに とけな

    い試料 の処理 、あるいは二重標識試料 の核種分別等 を目的 とした装置であ る。

    当セ ンター の装置につ いては、既 に本誌 2(2),1971.で紹介済みで あるが、現在 までの

    間に構造上若干 の改良 を行 ったので、その特性 ・最適条 件 につ いて検討 を加 えたことを、

    ここに報告す る。

    2.原理及び装置の構成

    この装置の原理 は、試料 を燃焼す るこ とに よって酸化 し、3Hは3H20、14Cは14C02 と

    して分別 して捕集す ることにある。

    装置の構成はFig.1に示 した。

    03Hについて

    バ スケ ッ ト (Fig 1-(丑)内においた試料 は、装置 を閉鎖系に したのちにフラスコ内で

    燃焼 させ るO発生 した水蒸気は02ガスに伴 なわれてコンデ ンサー (-② )の中を通 る間に

    凝縮 され 、3H用バイアル (-③ )に集め られ る。他 の系か らシンチレー ターが注入された

    後、N2ガスでパー ジ (purge)され、3Hについての操作 は終了す る。

    014Cにつ いて

    一方CO2ガスは、水蒸気 と共に コンデ ンサー 、3H用バイアルを通 って、エ タノールア ミ

    ンを充てん した カラム (-④ )に導かれ る。エ タノールア ミンはC02 と炭酸塩 を形成 した

    のち、14C用バ イアル (-⑤ )に集め られ る。 カラムはメタノール及びシ ンチ レーターで洗

    浄 され、これ らの溶媒 はその まま 14C用バ イアル に加 え られ る。最後にN2ガスでパー ジさ

    れ、14Cにつ いての操作 は終 了す る。

    3.実 験

    ① 炉紙 の大 きさを変 えて系統的に重 さを変化 させ たペ レッ ト (pellet)に、3H及び14C

    で 標識 した n_hexadecane (The Radiochemi calCenter:標準試料 ) を一定量ずつ吸収

  • VOL.7NO.21976.9

    SOLV【NT

    02+ N2+

    'FROMPRESSURIZEOSOURCE

    Fig.1F一ow Diagram ofMode一305 SampleOxidizer

    させ た。 このペ レ ッ トを本装 置 を用 いて燃焼 させ 、液体 シンチレー ションカウンター

    (PackardTRLCARB 3380)で測定 した。

    (診 また同様 に、重 さを系統 的に変化 させ た生体試料 (にわ とりの肝臓)に、3H及び14Cで

    標 識 した n-hexadecane を一定量ずつ吸収 させ た. この試料 に助燃剤 としてセルロース

    パ ウダー を加 え、燃焼 させ 、液体 シンチ レー シ ョンカウンター で測定 した.なお、セル ロ

    ー スパウダーは、試料 の重 さに対 して無視 で きる様 な範 囲で添加 した0

    ③ (9(さで使用 した n-hexadecaneを、直接 シンチレー ターに加 えて液体 シンチレー シ ョ

    ンカウンターで測定 した。 この時得 られた計数 と、TheRadiochemicalCenter 表示の

    放射能値 からクエ ンチ ングの較正値 (外部標準線源法 )を検定 した 。

    なお、使用 した n-hexadecane の放射能は、3H:3.5×104dpm、14C:2.1×104dpm

    であ る。

    3

  • 4

    4.結果及び考察

    結果 をFig.2-Fig.7に示 した。

    なお、測定値 には、それ ぞれ、バ ックグラウン ドの補正 及び クエ ンチ ングの補正 (外部

    標準線源法 ) を行 った。

    ○回収率 につ いて

    ① 試 料の重 さを変 えた場合 の回収率 の変動 をFig.2に示す。これに よる と、重 さが0.05

    -0.8g位 の試料 につ いて、回収率 の変化 はほとんど見出せなか った。試料がip一紙の場合の

    回収率 は95± 2%O生体試料の場合 は94± 4%回収 され、 それぞれ一定値 を示 した。

    ② Fig.3は、同 じ く14Cの回収率 の変動 を示 した もので ある。これに よる と重 さが 0.5g

    を越 える様 な試料 につ いては回収率 の低下がみ られ るが、試料が0.05-0.5g までの場合 、

    炉紙 につ いて は96± 2%、生体試料 については97± 1%回収 され、一定値 を示 した。

    ○混入率 につ いて

    ③試料 中の3Hが どの位 14C用バ イアルに混入す るか を測定 したのが、Fig.4である。 縦軸

    は 加 えた3Hと14C用バ イアルに混入 して きた3Hの比である。これによると、炉紙の場合、3H

    が 1- 2%見 出され る。生体試料 の場合混入率 は もう少 し高 くなり、 2- 3%見出され 、

    またバ ラツキ も大 きい。 どち らも、試料が重 くなるほ ど混入率 が高 くな る傾 向にある。

    (参 Fig.5は、試料 中の14Cが どの位3H用バ イアルに混入す るか を測定 した もので、縦軸 は

    加 えた14Cと3H用バ イア ルに混入 して きた14Cの比である。 0.05-0.8g位 までの間では、

    重 さに関係な く約 1%見 出 され る。

    ○残存率 につ いて

    ⑤ Fig.6は、装置 内の3H残存率 を示 したもので、これはほぼ 1%以 内におさまる。又、試

    料が重 くなる ほ ど残存率 は小 さ くなる傾 向にある。

    ⑥ Fig.7は、同 じ く14C装置 内の残存率 を示 した もので、ほぼ0.5%以内にお さまる。

    ○ダブル ラベル時の最適条件 につ いて

    ⑦ ダブル ラベ ルの時、3Hが14Cに、あるいは14Cが3Hに及ぼす影響 について示 した ものが

    Fig.8である。 これはFig.2- 7及び3H、14Cの シンチレーターに対する計数効率

    (Table2) を参考 に して算 出 した ものである。横軸 は3Hと14Cの放射能の比、縦軸 は3H

    用 (あるいは14C用 )バ イアルの計数値 に対す る同バ イアル内3H (あるいは14C)の計数値

    の割合 である。 Fig.8に よる と、3H/14C比が 1-10位の範囲にあれば、3H、14C相互の、

    混入に よる影響 は士 1%以 内にお さえるこ とができる。3H/14C比が この範囲 よ りも大きい、

    あるいは小 さい場合 には、3H、14C相互の混入率 を考慮す る必要が ある。

    Recovery

    I

    ㌻rT .T l ●「

    ノJL _X_X

    Recovery

    ・L-y・Xパ / A「 ・-、 ^

    50

    ● 5戸紙

    × 生体試料

    ーのついた×の試料は、回収 された3H20量が

    多かった為 に、カクテルが二層に分離 したの

    で、あ とか らジオキサ ン系シンチレー ター を

    1mEずつ加 え、均一系にしてか ら測定 した。

    0 0.2 0.4 0.6 0.8gSample size

    Fig・2 3H Recovery

    0 0.2 0.4 0.6

    Fig.3 14c Recovery

    0.8gSamp一e size

  • VOL.7NO.21976.9

    3H in 14C vial

    %

    5

    4

    3

    2

    14C in3H vial

    o o.2 0.4 0.6 0.8 g 0SampLe size

    Fig.4 3H Separation

    Memory Memory

    0.2 0.4 0.6 0.8g

    Sample size

    Fig.5 14c separation

    0 0.2 0.4 0.6 0.8 g 0 0.2 0.4 0.6

    Sample size

    Fig.6 3H Memory

    同バイアル内 3H(or14C)の計数値

    3H用 (or14C用)バイアルの計数値

    Fig.7 14c Memory

    3H用バイアル 14C用ノヾイアノレ

    0.8 g

    Sample size

    0.I l 10 [003H/14C比(A/LO) (I/I ) (JO/l) (TOO/I)

    Fig.8 ダブル ラベル時の最適条件

    5

  • 6

    これ らの結 果か ら、最適条件 として次の事 が言え る。

    Table l 最 適 条 件

    3Hの場合 14Cの場合 ダブルラベ ルの場合

    重量 (折紙の場合 ) 0.05-0.8g 0.05-0-.5g 0.05-0.5g(生体試料 の場合 ) 0.05-0.5g*1 0.05-0.5g 0.05-0.5g

    *1 カクテルの状態に注意すれば、0.8gまで可能である。*2 前記 した様に、3H、 14C相互の混入率が±1%以内におさまる範囲を選んだ。

    最後に参考 として、それぞれの シンチ レー ター を用 いた時の3H及び14Cの計数効率 を

    Table 2に示す。 ただ し、燃や し方や試料 の種類 、重量等 に よって クエ ンチングの程度

    が 違 って くるので、Table2は一応の 目安 である。

    Table 2

    シンチ レー ター の種類 3Hの効率 14Cの効率

    3H用 (ジオキサ ン系 シンチ レー ター15mE)*3 35%` 89%

    14C用 (トルエ ン系 シンチ レー ター 7mE*4 6% 66%

    *3 ジオキサ ン系シ ンチレーター組成 *4 トルエン系シンチレーター組成

    Naphtalene 100.0gPPO 5.0gDimethylPOPOP 0.3gDio又a,ne 720mEToluene 135mEMethano1 45mE

    PPO 15.OgBis-MSB 15.0g1.0ginToluene 1A

    (アイソ トープ総合センター )

    セ ン ター に 滞 在 し て

    RobertK.Togasaki

    今年度の初 め以来 、約 7ヶ月程 、当 RIセ シターの宮地先生 の生物研究 グループの方々

    と共 同研究 させ て頂 きましたが、帰米 を間近 かに して、 "何か感想 を書 く様 に" との中村

    保典 さんの御 言葉 に従 って、思 い当ることを二つ三つかかせ て頂 きます。

    RIセ ン ター と同様 な施 設のない大学か ら来た私 には、非常 に有意義 な期間で した。第

    - に RIセ ンターの諸設備 と、その管理は、非常に良い水準 にあ り、私が春以来訪れた 日

    本の諸研究所 (民間 と大学 をふ くむ)の内で、 3指 の内に入 る と思 います。第二に、RI

    に関す る諸技術 の専 門家 が、身近かにお られて、その助 力がす ぐ得 られ るのは、私 に とっ

    ては新 らし く、有益 な体験 で した。第三 に、 RIセ ンター を利用す る人々 とそのプロジェ

    ク トの幅、例 えば、水素細菌 の炭素代謝か ら、稲 に よる重金属の取 りこみにわ たる広 さは

    共同利用の成果 として非常 に印象的で した。

    次 に米国の諸研究施設 と比較 して、 RIセ ンター をふ くめて、私が見せ て頂 いた 日本の

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    研究所につ いての感想 を、二つ三つ述べ させ て頂 きます。先づ米国に比較 して、研究所全

    体 の共同のStock Room制度 が、充分 に発達 してお らず、各研究室 で常用す る多 くの薬品、.

    器具類が個別に外部へ発注 されているこ とに気付 きま した。 これはたび重 さなる と、研究

    者 の貴重 な時間 とエ ネル ギーのか な りなロスになると思 われ ます。又、常用す る薬 品その

    他 を一括大量購 入で きれば、単価 も下 り、研究費の よ り効率 的 な使用 につなが る と思 い ます.

    次に、若 し研究所の 目的が研究の遂行 にあるな らば、研 究者 の時間 とエネルギーが研究以

    外の 目的にさかれ ることを最少限に食い とめ るべ きであ ると思 われ ますが 、 日本の場合は、

    長 い年 月 と多額の国費で養成 されて来た有能 な研究者の時間が 、研究に直結 したSecretaria

    Serviceがないために、かな り無駄使 い されている様 に見 えます。 た とえば、有能 な研究者

    が、あま り上手 でない タイ ピングに多 くの時間 をかけ論文 をか いているのは、適材適所 と

    は言 え-ないのではないで しょうか ? この視点か ら見て、 日本各地の研究所 では殆 ん ど見

    られな い程 の支持 を研究者 に与 えて皆のモデルになって いるRIセン ターで、 さらに研究

    と実務 の支持 におけ る新 らしい試みが 出来れば、これ も貴重 なモテリレケー スになるのでは

    ないかな ?な どと想像 してお ります。以上 、御言葉 に甘 えて勝手 なことを書 きま したが、

    ここで改めて、今 回の来 日期間中のセ ンターの皆様 の御協 力 を感謝 して この短文 を終 らせ

    て頂 きた く思 い ますO (米国 Indiana大学植物科学教室準教授 )

    前号で も述べ た ように、博士 はSabbatical休暇 を利用 して、応用微生物研究

    所の客員教授 として今年 1月か ら8月半ば まで滞在 され、その間主 として当

    セン ター で研 究に専 念 され ました。来 日当初、必ず しも日本語が 自由 とは思

    われなか った博士が 、上記のような立派な 日本語 の原稿 をお書 きにな りまし

    た。原文の ままで掲載 します。

    昭和51年度放射線取扱者研修 の終 了に当って

    塩 川 照 雄

    事務局主催の職員研修 の一環である放射線

    取扱者研イ摩 (企画 ・実施 はアイ ソ トープ総合

    セ ンター と共催 )が 7月19-23日の 5日間

    (本 年 は技術職員向けの Aコー スのみ)、受講

    者 19名で実施 され ま した。

    担 当講師お よび受講者 を始め関係者 の皆様

    の熱意 と努力に よ り、無事 終了 しま したこと

    は誠に喜 ば しいこ とと思 い ますが、一二問題

    点 を挙げて皆様 の理解 と協 力 をいただ き、今

    後 よ り効果的な実のある研修 を実施 して行 き

    たい と考 えてい ます。

    まず、この研修 内容 は、アイソ トー プを取扱い始めて非常 に 日が浅 い者 、または今か ら

    ア イソ トープ を取扱 い始め る者等 を対象 とした初心者技術職 員 コー ス (Aコー ス) と、ア

    イソ トープにかかわる事務 手続 きを担 当している事務職 員 コー ス (Bコー ス) とに分れ、

    午前 中に ABコー ス共通の講義 を、午後には実験 ま たは演習 をコー ス別 に行 うよう企画 さ

    7

  • 8

    れています。

    昭和48年度 に初めてこの研修が実施 された とき、初心者向 (事務職員は別 )の企画に も

    かか わ らず、可成 りの経験者が受 講 され ました。関係者一 同の反省事項 として、次年度 は

    部局 との連絡 を密 に して、で きるだけ初心者の方々に 多数受講 していただ くように努力 し

    たつ も りですが、昭和49年度 もや は り経験者の受講者が 多 く、その後の努 力 も空 し く、本

    年度 は受講者 における経験者 と初心者 の比率 は約 3対 1になって しまいま した。

    先 に も述べ ま した とお り、 この研修 はあ くまで も初心者 を対象 として企画 されています。

    受講者 に経験者が殖 え、初心者が減 ることは、講師お よび実習指導担 当者が的 をしぼ りき

    れず、講義 ・実習 ともに不安定要素 を増 し、延 いては、一番 この研修 を必要 としている初

    心受 講者の方々に影響 を及ぼす面 も少なか らず あるもの と思われます0

    将来は経験者の専 門教育 として各種 測定法の講習 を行 う必要があるこ とは よ くわか り、

    その努 力 もいた しますが 、各部局 の関係者皆様 には、前記の実状 をご理解 いただ き、是非

    とも初心者 の方々が すべ てこの研修 に参加 して下 さるよ うご協 力の程 、お願 い申し上 げる

    次第です。 (アイソ トープ総合センター )

    R l サ ブ セ ンタ ー 便り

    理学部 におけ るアイソ トープの使用

    脇 田 宏

    東京大学 では昭和L26年 に設置 された放射性 同位元素総合研究室 の施設が手狭にな ()、設

    備 も老朽化 し、次第に設置 当初の学 内研究者の共同利用施設 としての役割 を果す ことがで

    きな くな って きた。 そこで規模 の大 きなア イソ トープ総合 セ ンター設置の計画が放射性 同

    位元素委 員会 において審議 され 、具体化 され ようとした とき、放射性 同位元素等による放

    射線障害 の防止に関す る法律 (昭和32年 )が定め られ、実施 されることになった。 この法

    規制 に よれば大学の場合 、学内各部局が放射性 同位元素等 を使用す る事業所 として科学技

    術庁長官の承認 を得 なければ、放射性 同位元素 、放射線発生装置の使用がで きな くなるの

    で、アイソ トープ総合 セ_ンタ-設置の計画に先立 って各部局 に小規模 のサブセ ン ター を順

    次に整備 し、法令 に則 った放射性 同位元素等の管理 体制 を ととのえるこ とになった。 この

    サ ブ セ ンターは既設 の施 設設備 を改修 した り、新設す る建物内に部局 の共用施設 を設けて

    整備 したが 、 またい くつ かの部局 では独立 したサブセ ンター を新設 しようとした。

    理学部放射性 同位 元素研 究室は この第 1号 であ り、昭和35年度の予算 で昭和36年 3月に

    建物が完成 され 、翌年度か ら順次 内部設備が整備 され、今 日を迎 えたのである。 この よう

    な経過 で設置 された施設であるため、一般 にRI理学部サブセ ンター と通称 されているの

    であ る。 その後、昭和46年 に理学部 2号館の共用施設 をサブセンター分室 に、また理学部

    3号館 に も共用施設 を設け、これ もサブセ ンターの分室 とし、学部 内の共用施設 を一元化

    して現在 に至 っている。

    現在 の理学部放射性 同位元素取扱施設 (管理 区域 )は、次の通 りである。

    1)理学部放射性 同位元素研究室 (理学部サブセ ンター ).赤 レンガ造 りの化学教室 中庭

    に位 置 し、 この中に、理 学部放射線管理室 も置かれ ている。

    2)理学部 2号館分室。赤 門そばの動植物学教室 を中心 とした施設。

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    3)理学部 3号館分室。 旧浅野邸 キャンパ スにある生物化学教室102号室。

    4)理学部 1号館13号呈。226Ra-Be86mCiを格納。

    5)理学部 1号館40号室。加 速装置使用量。

    6)理学部 4号館1520A室。57coメスバ ウアー線源。

    7)理学部化学館250号室。57co線源。

    8)理学部化学館148号室。元素分析室。

    理学部 の放射線取扱者 の数 は、Ⅹ線発生装置 な どの使 用者 を含め る と・約 250名であるが、

    非密封 RIを取扱 って いるのは、その半数以下 である。非密封 RIの使用は、お もに前記

    3施 設、 RIサブセン ター(261m2)、 2号館分室 (55m2)、 3号館分室 (43m2)、に限 られて

    いる(化学館148号室は現在無使用 )0

    理学部 RI施 設の特徴 は、サブセ ンター を中心 とし、小規模 な分室 をRI使用頻度 の高

    い学科 に設けて、研究上 の便宜 をはか る と共に、放射線の安全取扱い を徹底 していること

    であ る。

    理学部 の放射線管理体制 につ いて大要 をのべ ると、学部長 の下に、委員長以下放射線取

    扱主任者 を含む数名の委員か らな る 「理学部放射線管理委員会」があ り、放射線施設の運

    営 を含め た RI使用者の放射線障害防止に関す る事項全般が審議 され る。 この委員会 は、

    昭和50年10月に第 1回が開か れ、比較的歴 史は浅 いが、この委員会の前身に、 「理学部ア

    イソ トー プ等に関す る委員会」があ った。この委員会は、理学部 の放射性 同位元素等の使用

    が承認 され、サブセ ンターが完成 した昭和36年 の11月に 第 1回の会議が開催 されてか ら、

    新委員会に引 きつがれ るまでに、39回の活動が行 なわれて いた。 この時代の管理体制 とし

    て注 目すべ きこ とは学部内 の各学科 、教室、研究室の放射性 同位 元素 等の使用の詳細 を放

    射線取扱主任者が実地 に把握す るこ とが 困難なため、使用す る研究室 に この ことに関す る

    研究室責任者 を選任 して、学部長 、放射線取扱主任者 、研究室責任者に よる管理 のライン

    を形づ くり、一方 、関係 各教室か ら選 出された委員で構成 されもアイソ トープ等に関す る

    委員会が学部長の下 に放射線取扱主任者 を中心 とす る放射線管理 の スタッフ として機能 し/

    た こ とで あろ う。

    現在 は新委員会の下に放射線管理室が設け られていて、末端 の RI使用者 との連絡 は、

    研究室毎 に定め られた放射線担当者 ・責任者 を通 じて、緊密 に とられている。管理室 は、

    学部 内の RIの購入 ・使用 ・保管 ・廃棄 ・汚染検査 ・放射線測定 な どの業務 を行 なってい

    るが 、これ らにつ いては、他 のサブセンター と全 く変わ りが ないであろ うO

    ここでは、理学部が 用 いている放射性 同位元素使用 ・保管記録 を紹介 しよう。 これは、

    使用者が RIを購入 してか ら、保管 ・使用後 、廃棄す るまでの歴史 をすべて記録 で きるよ

    うに作成 した用紙 である。

    記録紙 (実際は B4判 )を次頁に示した。上部 左側 には、 RIにつ いて核種 、物質名、

    入庫量、入庫年 月 日、貯蔵庫番号 、化学的形状 、物理的 形状 、放射線の種類 、半減期 を記

    入す るよ うになってい る。上部右側 には、所属教室 ・研究室、研究室責任者氏名。印、整

    理番号 、放射線取扱主任者氏名 ・印の記入欄が ある。整理番号 は、購 入 申込時に付け る番

    号 である。

    この上部は、三枚一組 にな ってお り、カー ボン紙 を入れて、入庫時 に記入す る。 1枚 目

    は、サブセンターが保管 し、 2枚 目は使用者の研究室責任者が保管す る。下面に使用 ・保

    管記諒部 を含む 3枚 目は使用者が保管す るoそ して、使 用者 は、 RIを最初に開封す ると

    きか ら、使用の度毎に、年 月 日、出庫量、使用方法 、廃棄 その他 を記入 して、 これ を研究

    9

  • 10

    室責任者が 確認す る。従 って、 RIが配達 さ

    れ て、貯蔵 庫 にお さまった ときか ら、保管 の

    記録 が始 ま り、使用 の度毎 に使用 ・廃棄 の状

    況が記録 されてゆ くので ある。

    年度末 に、保管量が 0となった記録紙は そ

    の まま、 また、使用が継続 して いる記録紙 は

    その コピー を回収 し、番号順 に綴 じ、サブセ

    ンター の管至里室 で保管す る。 このよ うに して

    購 入 したRI毎に番号が 付せ られ、 1枚 の記

    録紙が 作成 され るわけで、放射線管理室 は、

    氏Iの保管量 ・使用状況 を比較的容易に把握

    す るこ とがで きる。

    (理学部放射性 同位元素研究室 )

    講 演 会 要 旨

    放 射 性 桐 位 元 兼 任 用 ・傑 甘 妃 * ■■

    ● I?/'TJ77稚l

    tlrIdlt一■▼■ JLALlrLKNLIl暮rzt1.JII六川

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    放射性 同位元素使用 ・保管記銀様式

    カ リフォルニア大 Yuan T.Lee教授

    "MolecularBeam ChemistryM

    去 る 6月23日午後 3時 よ り、アイソ トー プ総合 セン ター講義室において、センター及び

    工学部物理工学科共催に よる上記講演会が行 なわれた。斎藤信房セ ンター長の紹介、挨拶

    のあ と大要以下の様 な講演が あった。そのあ と約40分の非常に活発な質問 ・討論が行 なわ

    れ、 さ らには別室 に移 って約 1時間以上 にわたる懇談が行 なわれた。 まさにLee教授の研

    究の質 の高 さ と、 日本の研究者の この分野に対す る関心の強 さを示 した一幕であった。

    (講 演 要 旨)

    化学 反応の素過程 を直接的に解明 しよ うとい うこ とは、化学者 に とっての夢 であった。

    MolecularBeamの方法 を用 いるこ とに よって、これが現実的に可能 になって きて いる。

    た とえば理論 的に もよく研究 されてい る3原子系の反応の一例 として

    F +D2 - FD+D

    の反応 を考 えてみ る.熱解離叉は放電 に よって得 られ る原子線 ビームに超音速 ジェッ トに

    よって出て来 る分子線 ビーム を交叉衝突 させ る。超音速膨張に よって分子 は急速に冷却 し

    速度分布 は十分 に一 様 にな り、また振動分布 も基底状撃 になる. こ うした速度一定、振動

    基底状態 にある分子線 と原子線 を直角に交叉 させ ると力学的因果律すなわちエネル ギー保

    存則 と、運動 量保存則 とか ら衝突過程 につ いての知 見が得 られ る。生成物 、D叉は FDを

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    電離 、質量分析 し速度分析 を行 な う。 この測定器 を回転 させ るこ とに よ りFD又は Dの生

    成後散 乱す る角 度 と速度分布 を測定す るこ とが で きる。 この結果 か ら生成分子 の振動状 態

    の知 見 も得 られ る。 こ うして化学 反応素過程 に対す るよ り直接 的 な知 見が得 られ るよ うに

    な った。

    F+H2、F+ Ⅰ2、F+ C2H2C12 ではいずれ も30Kcal/molの発熱 量 をもつ 発熱反応 で

    はあるが 、途 中に反応 中間体が 存在 しない(F+H2)、存在す る(F+C2H2C12)、存在 す る

    が 、結合 エ ネル ギー は小 さい(F+Ⅰ2)の こ とな どが こうした 反応機構 の解析 か らわか る。また、

    F2 +Ⅰ2→ 2IF

    と云 う4原子置換 反応機構 には以前か ら二つ の説が あ った。 その 第- は、 4原子 が同時 に

    組 みか わ る機構 、 その第二 は 、 ラジカル連鎖 反応機構 で あ る。 この ラジ カル機 構 の 中では

    F12が安 定 で あ るか どうかが一つ の鍵 で ある。 こ うした意味 でF+Ⅰ2 の衝 突過程 での安 定

    な中間体 の存在 が確 認 され 、第二 の反応機構が 結論づ け られた。

    こ うした一連 の実験 につ ゞいて最近 では酸素 化合 物 な どの反応 を計 画 して い る。酸素 化

    合物 は電子 状態 が縮退 して いて ポテ ンシャルエ ネル ギー 曲面が複雑 であ るO分子 線に レー

    ザー光 をあて、 あ る状 態 (振動 もきめた )-励 起 させ 、 これ と原子 又は分子 ビー ム を衝 突

    させ るこ とを考 えて い る。 (文責 、工学部 物理工学科 渡部 力)

    ●共 同利用の お知 らせ

    第 ⅠⅠ期共 同利用 許可一 覧 (9月13日~12月17日)

    所属部局 責 任 者 氏名

    医 学 部 村 上 正 孝

    nHu

    庶 佑

    野 一 年

    中 正 治

    村 勇 一

    本 昭 正

    口 昌 子

    男昌

    祐 輔

    米 穂

    治憲津野部学哩

    島 誠 一 郎

    rHurHUu■HHu

    研 究 題 目

    夜光 時計 製造工場 におけ る放 射線管理

    RNAの ヨー ド化

    副 甲状線 ホル モ ンの生合成 に 関す る研 究

    ヒスチ ジン ・デ カル ボキシラーゼ 活性 の研 究

    薬物 の体 内挙 動の検討

    ヒス タ ミンの測定

    リンパ球 を利用 した遅延型 ア レル ギー の石汗究

    陽電子消滅 に よる金属 の研 究

    メスバ ウアー効果 の分析化学へ の応用

    有機化合 物 中での陽電子消滅

    放 射化分 析 の研 究

    ラ ッ トの新生黄体細 胞 と黄体腫 細 胞 の ホル モン受容

    体 に関す る研 究

    ① メスバ ウア-分光法 に よる無機 化学反応 の研 究

    (参メスバ ウア-分光法 の考古学 的応用 に関す る研 究

    (9ラ ジオガス クロマ トグラフ法 に よるフル オロ カー

    ボン類 の放射化 学的研 究

    核 酸 の光 化学研 究

    RNAの構 造 と生合 成

    熱蛍光線量計による環境および個 人被曝線量の測定研究

    ll

  • 12

    所属 部局 責 任者 氏名

    理 学 部 小 嶋 稔

    //////////

    部〃学

    岡 一 郎

    藤 和 郎

    谷 順 一

    中 高 光

    田 幸 雄

    伊 正

    野 充 男

    本 署

    〝 本 好 茂 -〝 石 田 行 知

    教 養 学 部 藤 原 邦 男

    薬 学 部 吉 岡 正 則

    〝 花 野 学

    応 微 研 宮 地 重 遠

    RIセ ンター 小 泉 好 延

    以上 第 Ⅰ期 よ り継 続

    病 院 江 藤 澄 哉

    工 学 部 北 沢 宏 一

    〝 早 助之L辛■1mHl薬 学 部 名 取 俊 二

    物 性 研 本 田 雅 健

    理 学 部 藤 井 直 之

    以上 第 ⅠⅠ期 よ り新 規

    研 究 題 目

    40Ar-39Arに よる岩石 の年代測定

    チ タノマ グ- マ タイ トの メスバ ウアー スペ ク トル

    天然試料 中の天然放射性 元素 の分布 に関す る研究

    蚕 の放 射化分析

    鉱物結 晶中のFe及 びSnイオ ン分布

    メスバ ウ7- に よるガ ラス鉱物 中の鉄 の酸化状態 の

    測定

    藻類 におけ るエ チ レンの合 成

    植物 に よる RIの吸収 利用

    胎盤 お よび下垂体 にお け るホル モ ンの合 成 とその 泌

    乳 開始 にお よぼす影響

    血 中VB12の動 態につ いて

    モルモ ッ ト盲腸紐 におけ るCa動態

    イオ ン結 晶中の陽電子消滅

    イム ノア ッセ イ

    p-ヒ ドロキシ安 息香酸誘導体 の生体 内挙動

    14C化合物 の生合成

    植物種子 の放射化分析

    甲状 線下垂体 系 ホル モ ン分 泌機序 、特 にAdenylate-

    cyclase-cAMP系 につ いて

    固体 内拡散 の研 究

    高分子 電解 質 の輸率 i則走

    細胞 の分化 ・癌 化に関す る研 究

    ニ オブの長半減期核種 につ いて

    岩石 中のV、Th、Kの定量

    ●人 事 消 息

    ○人 事異動

    運営 委 員会 委員

    分 院 亘理 勉 委員転任 (6月15日付 )に よ り後任 は木暮 喬 委 員 (6月16日付 )

    昇 任

    庶 務 掛庶務 主任 田辺 尚征 (6月16日付 )

    転 出

    物 性研 総務課 共 同利用掛長 高見檀 男 (6月16日付 )

    ●委員会だ よ り

    ○運 営委 員会 (第20回)

    6月14日 (月)開催 、議事 次 の とお り

    (報告事 項 )

    1.昭和50年度会計報告

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    2.昭和52年度概算要求につ いて

    3.昭和51年度 第 Ⅰ期共同利用につ いて

    4.その他

    (協議事項 )

    1.昭和51年度予算配分 (第 1次 )につ いて

    2.昭和51年度教育訓練につ いて

    3.セン ター長 ・運営委員の発令 日変更等 について

    4.次期 セ ンター長選 出

    5.その他

    ○運営委員会

    7月19日 (月)開催 、議事次の とお り

    1.放射性 同位 元素委 員会報告

    2.部門主任 (後期 )につ いて

    3.昭和51年度 第ⅠⅠ期共同利用につ いて

    4.その他

    ○センターニュー ス編集委員会 (第25回)

    6月 1日 (火)開催、議事次の とお り

    1.VOL.7,N0. 1の準備状況

    2.VOL.7.N0. 2の企画

    3.その他

    ○セ ンターニ ュース編集委員会 (第26回)

    8月 3日 (火)開催 、議事次の とお り

    1.VOL.7.N0. 2の準備 状況

    2.VOL.7.N0. 3の企画

    3.その他

    ● アイソ トープ総合セ ンター日誌

    昭和51年 6月23日 Yuan T.Lee教授 (カ リホルエア大学 )の講演会 「Moleculor Beam

    Chemistry」 を実施 (工学部物理工学科 と共催 )

    6月30日 本郷消 防署立 入検査

    7月16日 東京電子専門学校診療放射線科 、セ ンター を見学

    第 Ⅰ期共 同利用終了

    7月19日~23日 「放射線取扱者研修」第 3回実施 され る。

    13

  • 14

    東京大学アイソ トープ総合セ ンターニュース

    目 次

    放射能今昔 大 野 和 郎 ---・---1

    液体 シンチ レー シ ョン カウン ター用 自動 測定試料調 製装 置 の

    特性 と最適 条件 につ い て 高 岡 彩 子 =-・-・-- 2

    セ ンター に滞在 して RobertK.Togasaki--・-・・・,・・6

    昭和51年度放射線取扱者研修 の終了に当って

    塩 川 照 雄 ---・--- 7

    R lサ ブセ ンター便 り

    理 学部 におけ るア イ ソ トー プの使用 脇 田 宏 -・- --- 8

    講 演 会 要 旨

    カ リフォルニ ア大 YuanT.Lee教授

    `̀MolecularBeam Chemistry''

    共 同利用 のお知 らせ

    人事 消 息

    委 員会 だ よ り

    ア イソ トー プ総合 セ ン タ一 日

    (編集後記)

    さる消息通によれば、センターの存在評価が ぐん と高 まるのが この夏季 とか。

    共同利用の方々 とセンターで一 日を過 ごし、帰 りがけ、玄関 を一歩踏み出して初

    めて夕立の到来に気づ くとい うようなことが よくあ ります。漸 く当RIセンター

    の存在 も東大人の意識に定着す るようにな り、超遠心機 な どの新たな設備に関す

    る問合せが不意に飛びこんで くることも最近では珍 しくな くな りました.職員が

    多忙であることは、人的交流が約束 されていないセンターに とってはそれ 自体大

    いに歓迎すべ きこ とでしょう.センターニュースを編集 して、センター もい よい

    よ成長期 に入ったことを痛感 します.セ ンター設立に投入された尽力にペ イする

    ためには、各部門が独 自の主張 を持 ってい くことが必要条件であるように思いま

    す。センターが単に場所の供給に とどまらないために も、この ニュースが、何 ら

    かの役割 を果すことを期待 します。 (中村保典 )

    東京大学アイソ トープ総合センターニュース Vol.7.No.2 1976年 9月15日発行 編集発行人 塩川照雄

    〒113東京都文京区弥生 2丁目11番16号 東京大学アイソ トープ総合センター ・電代表 (812)2111 内線2881

  • 東京大学アイソ トープ総合センター

    VOL.7 特集号 1976.ll.25

    25 年 の 軌 跡斎 藤 信 房

    昭和20年代の中ごろは RIを使用す る研∴究者に とっては忘 れ ることので きない時期 であ

    る。昭和25年 4月に原子炉 で製造 された RIが米国か ら日本に始めて到着 し、翌26年 5月

    には 日本放射性 同位元素協会が設立 され, また 9月には我が国で始め て全国の RI研究者

    技術者 を対象 とす る講習会が東京大学 で開かれ, さらに昭和27年 には科学研∴究所サ イ クロ

    トロンが再建 された。戦後の 日本の原子力研究が RIの研究 と利用に よって幕 を開けたの

    が このころであったわけである。

    東京大学 アイソ トープ総合 セ ンターの前身であ る放射性 同位元素総合研究室が東大医学

    部付属病院の地下室 に新 設 され披露 されたのは昭和26年 8月14日であったが, この実験室

    は きっそ く上記の RI講習会におけ る実習の場所 として使用 された。その ころ,われわれ

    は戦後の復興 と科学技術 の再建 に最大限の努 力をしていた時代であ ったので、RI講習会 も、

    日本放射性 同位元素協会主催,総理府科学技術行政協議会(STAC),文部 省大学学術局後

    援 とい う見事 な協 力体制 で行 われた。 また これ と平行 して 日本放射性 同位元素協会総会 と

    記念講演会が医学部本館三階大講堂 で行われた。私 も講習会の講師陣の末席 を汚 したが、

    各地か ら集 まった受講者の熱心 な態度 と、やや薄暗 くひや りとした地下実験室の感触は今

    も鮮かに記憶 している。 その後東大 内の RI利用者に よって活用 されたこの実験室 も RI

    使用量の急激な増大 とともにその狭 さが問題 とな り、また当初はモダンであった内部設備

    も次第に老朽化 したので,東大 RI共同利用施設の将来計画が関係者の間で熱心に討議 さ

    れ るようになった.東大 RI委員会 の要望 に基いて,東京大学ア イソ トー プ総合センター

    の概算要求が本部か ら文部 省に提 出 されたのは昭和38年 であった。それか ら昭和45年度 に

    セ ンターの設置が認め られ るまでの約 7年 間に関係者の払 った努 力は まこ とに涙 ぐましい

    ものがあ り, とくに当時 RI委員会の委員長 であ られた宮川正 、島村修両教授 の御苦労 は

    察す るに余 りあるものであったo

    今 までの25年 間、東大の全学 RI共同利用施設が順調 な発展 をして きたのは、申す まで

    もな く、STAC、文部 省、科学技術庁 、大学本部 、RI委員会 、アイソ トープ総合セ ンター

    運営委員会 、共同利用に参加 した研究者 な どの御指導御援助 と現在の 日本ア イソ トープ協

    会 な どの直接 間接の協 力に よるもので厚 く感謝 したい。 またこの機会に RI共同利用施設

    に勤務 し、これらの施 設 を守 って黙々 と働 いて くれた "supporting group''の人々一 人-

  • 2

    人に心 か らのお礼 を言いたい。 これ らの人々は大学紛争 で病 院地下 の実験室が封鎖 され疎

    開 を余儀 な くされた時で さえ見事 に任務 を果 して くれたのである。 多 くの職 員の うちで10

    年以上 にわた って在籍 し献身的に働 いて下 さった、堀江絹子 さん (現在物性研究所助手 )

    と中村愛子 さん (現 セ ンター業務掛長 )の御二人の功績は と くに大 きい と思 う。 またセ ン

    ター設立準備 の中核 となって仕事 をして下 さったのは森川尚威博士 (現セ ンター助教授 )

    であ り、同博士の努 力 を高 く評価 したい。

    官制上の裏付けのなか った放射性 同位元素総合研究室 をア ングラ劇場にた とえれば現在

    のアイソ トー プ総合セ ンターは公認の中劇場 といったところであろ う0RIの研究 と利用の

    発展 とともにやがて東京大学に大劇場級のセ ンターが出現 し、華麗な RI利用劇 を舞台で

    演 じて くれ る 日を待望 す る。その 日が実現 した とき、私 は どこかで心か らの拍手 を送 るこ

    とに しよう。 (ア イソ トープ総合 セ ンター長 )

    東京大学放射性 同位元素総合研 究室

    な らび'にアイソ トープ総合 セ ンター沿革

    年 表

    年 月 事 項

    昭和24.ll ll米国原子力委員会、 日本へのアイソ トープの供与 を許可〕

    24.12 〔科学技術行政協議会(STAC)、アイソ トープの輸入申請の審査な どの

    ために放射性 同位元素部会の設置 を決め る (25年 1月、最初の輸入申

    請 を審査 )〕

    25.4 原子炉で作 られたアイソ トープ、 日本に初めて到着 〔(American

    PhilosophicalSocietyよ り仁科芳雄博士 に寄贈 )〕

    東京大学理学部化学教室木村健二郎教授の もとで確認 され (125Sb)使

    用者に配分 されたo

    この年文部 省科学研究費に よる 「人工放射性 同位元素の応用に関す る

    研究」の総合研究班結成o

    25.12.22 東京大学放射性 同位元素研究委員会 (以下研究委員会 と称す )発足o

    第1回研究委員会が開かれ、委員長に木村健二郎教授 (理学部 )が就任 し、

    4分科会の組織 と、全学的な放射性同位元素研究室の新設 を申 し合せ たo

    26.5 〔日本放射性 同位 元素協会(後に 日本アイソ トー プ協会 と改称 )設立〕

    26.8.14I わが国で初のアイソ トー プ専用実験室 として、東京大学放射性同位元

    素総合研究室 (ア イソ トープ総合セ ンターの前身)が新設 .披露 されたo

    以後 、放射性 同位元素総合研究室 (以下総合研究室 と称す )は、研究

    委員会委員長が組織す る運営委員会の管理 の もとに、学内共同利用の

  • VOL.7 特集号 1976.ll.25

    年 月 事 項

    昭和26. 8 総合研究室専従職 員 2名が勤務 につ くo

    RⅠの教育訓練実施 に備 え、山崎文 男(科学研究所 )、吉川春寿(東京

    大学医学部 )両氏が、 日本放射性 同位元素協会の依頼に よ り、米国

    Oak Ridge,ⅠnstituteofNuclear Studies,BasicRadioisotope

    Technics Course.に派遣 され,帰国o

    第 8回研究委員会 で帰朝報告が行 われた○

    26. 9 アイソ トープの取扱 いに関す る、わが国で初めての講習会 (第 1回放

    射性 同位元素講習会)が 、 日本放射性 同位元素協会 の主催 に よ り総合

    研究室 で行 われ、全国か ら24名が受講 したo

    26.10 アイソ トープ取扱 いに関す る、学内者 を対象 とす る講習会が実施 され

    21名が受講 したo

    RⅠNEWS発行 (以後28年 2月まで 7回発行 )

    27 〔科学研究所サ イ クロ トロン再建 〕

    27.6 第 1回 RⅠ談話会 「RⅠと健康管理」(講師 :江藤秀雄 、寛 弘毅両氏)

    28. 1 宗宮尚行教授 (工学部 )研究委員会委員長就任

    28.10 放射線障害への関心が高 ま り、 日本放射性 同位元素協会 と協 力 し、総

    合研究室に血液検査の専任技術員 を置いて検査体制 を設けた○

    29 〔重量喜至芸≡芸葱 孟孟表芸五福吉芸芸笠 力研究所設立〕

    30.12 放射線障害防護小委員会が、秦28回研究委員会 で組織 され、健康管理 .

    環痩測定 .廃棄物処理 な どの実態調査 と対策 を検討 したo

    (委員長 中泉正徳教授 )

    31.2 吉川春寿教授 (医学部 )研究委員会委員長就任

    31 〔芸子芸書芸言苦言 卜 冒芸芸冨芸発足〕総合研究室に AEC レポー トの寄贈 を受 ける○

    (芸霊芝霊宝ch=ごLb=.G;Ila&yFIBO*rD霊宝 主警≡芸 男名竿)

    32 〔芸三富IRbRg這 lp器 芋成、放射J干生同位元素等による放射線障害の防〕

    33. 5 斎藤信房教授 (理学部 )研究委員会委員長就任

    34.8 科学技術庁原子力局担当官が総合研究室視察

    (続 いて11月に東大本郷構 内 RⅠ施 設 を巡視 )

    35.3 放射線障害防止法施行 に伴 い、総合研究室改修工事実施o

    35.7 .14 総合研究室が、放射線障害防止法に基づ く、便府施設 として承認 を受

    35.10 東京大学放射性 同位元素委員会 (以下 RI委員会 とい う)発足

    第 1回 RI委員会 で斎藤信房教授 (理学部 )が委員長に就任。これ以

    後 、総合研究室 は RI委員会委員長が組織す る運営委員会 の もとに運

    営 された。

    なお RI研究委員会は発展的に解消

    3

  • 4

    年 月 辛 .項

    昭和 36.1 〔学生保健診療所 (現保健 センター )が 、放射線取扱者の血液検査実施〕

    36.5 宮川 正教授 (医学部 )RⅠ委員会委員長就任

    RⅠ委員会 に RⅠ大セ ンター小委員会設置

    38.6 RⅠ大セ シターは、正式名称 を 「アイソ トープ総合セ ンター」と定め 、設

    立 をRⅠ委員会 よ り概算要求○(以後昭和45年 に設置が認め られるまで、

    毎年 内容 に検討 を重ね概算要求 )

    総合研 究�