クロレラの光合成を調べよう · 10 解説:...

2
9 化学だいすきクラブだより 今月の実験 クロレラの光合成を調べよう 佐賀大学名誉教授 黒河伸二 楽しく実験・夏休み自由研究 二酸化炭素の水溶液にクロレラを入れて光をあてると、光合成が行われてさかんに酸素が出ます。こ の酸素を集めて、そのなかでは線香が炎をあげて燃えることを調べましょう。 用意するもの クロレラ液、炭酸水素ナトリウム(じゅうそう)、ジッパー付きポリエチレン袋(27 cm×28 cm)、プラスチックコップ、広口瓶 びん 、バケツ、線香 実験の手順: (1)プラスチックコップにクロレラ液(500 cm 3 を入れ、 炭酸水素ナトリウム(3 g)を加えて溶かします。 (2)この液をジッパー付きポリエチレン袋に入れ、空気を 追い出しながらジッパーを閉じます。 (3)ポリエチレン袋を日光の あたる所に置くか、OHP の台にのせて光を30分間 あてます。 (4)水を入れたバケツにポリエチ レン袋を沈めます。広口瓶を 水でいっぱいにし、逆さにし てポリエチレン袋の上に置き ます。 (5)ポリエチレン袋に針で穴をあ け、袋にたまっている酸素を 広口瓶に集めます。 (6)水の中で広口瓶にふたをして、瓶 をバケツの外に出します。

Upload: others

Post on 07-Nov-2019

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: クロレラの光合成を調べよう · 10 解説: クロレラは15-20億年前に地球上に現れ、地球大気のなりたちに重大な役割を果たした微細藻です。

9化学だいすきクラブだより

今月の実験

クロレラの光合成を調べよう佐賀大学名誉教授 黒河伸二

楽しく実験・夏休み自由研究

二酸化炭素の水溶液にクロレラを入れて光をあてると、光合成が行われてさかんに酸素が出ます。この酸素を集めて、そのなかでは線香が炎をあげて燃えることを調べましょう。

用意するものクロレラ液、炭酸水素ナトリウム(じゅうそう)、ジッパー付きポリエチレン袋(27 cm×28

cm)、プラスチックコップ、広口瓶びん

、バケツ、線香

実験の手順:(1)プラスチックコップにクロレラ液(500 cm3)*を入れ、

炭酸水素ナトリウム(3 g)を加えて溶かします。

(2)この液をジッパー付きポリエチレン袋に入れ、空気を追い出しながらジッパーを閉じます。

(3)ポリエチレン袋を日光のあたる所に置くか、OHPの台にのせて光を30分間あてます。

(4)水を入れたバケツにポリエチレン袋を沈めます。広口瓶を水でいっぱいにし、逆さにしてポリエチレン袋の上に置きます。

(5)ポリエチレン袋に針で穴をあけ、袋にたまっている酸素を広口瓶に集めます。

(6)水の中で広口瓶にふたをして、瓶をバケツの外に出します。

Page 2: クロレラの光合成を調べよう · 10 解説: クロレラは15-20億年前に地球上に現れ、地球大気のなりたちに重大な役割を果たした微細藻です。

化学だいすきクラブだより10

解説:クロレラは15-20億年前に地球上に現れ、地球大気のなりたちに重大な役割を果たした微細藻です。

世界中にある湖沼や水たまりなどに広く生息しており、細胞・葉緑体の形などから20-30種類が知られています。光合成用クロレラ(Chlorella vulgaris CK-22)は、単細胞で径が3-8 μmの球形で、浅緑色、淡水性の緑藻です(図1)。屋外池で光独立栄養培養されたものが光合成に適しています(図2)。クロレラは細胞の半分以上を葉緑体が占めていますので、光合成能はたいへん高いです。OHPを光源とした実験では、30分間で、同量の藻体あたり、オオカナダモ(光合成実験教材でも使われている)の190倍の気体発生が認められました。細胞の増殖も速く、1回に4分裂し、20時間ごとに分裂を繰り返すという独特の増殖方法です。栄養価も高く補助食品や医薬、魚類の餌、農業用などの用途が知られています。スピルナ(藍藻)とともに、宇宙旅行の酸素源と食用を兼ねる存在として注目をあびました。また、教材としての活用法については、化学と教育、50巻9号(2002)、理科の教育、53巻625号(2004)にもあります。

*クロレラ液は、クロレラ工業㈱(〒833-0056 福岡県筑後市久富1343 Tel.

0942-52-1261, Fax. 0942-51-7203)から市販され、1パック(3 dm3)で約2000円

です。クロレラ液は使うまで冷蔵庫に入れておきます。1週間以内であれば、

500 cm3のクロレラ液から30 cm3以上の気体が出ます。

図1 クロレラの細胞 図2 屋外池での人工培養

(7)広口瓶のふたを少し開け、中の気体に火のついた線香を入れると、線香は炎をあげて燃えます。

実験の注意:火を使う時は、火事にならないように注意しておうちの人といっしょにおこないましょう。

クロレラ液