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事例 1 (平成22年)
モデル事業との初めての接触
2014 医療安全ワークショップ 九州厚生局 2
福岡赤十字病院における 医療事故への対応
福岡赤十字病院 院長
寺坂禮治
2014 医療安全ワークショップ 九州厚生局
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再発防止への提言安心安全な医療の実施には患者と医療従事者との信頼関係が
重要で、そのためには病状、治療、転帰の予想など全てにわたっての医療者の説明と患者の理解に基づいた同意と自己決定(インフォームドコンセント)が基本である。
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【医療の現状と限界について】
現在の医療の不完全、不確実性の故に、「患者の期待」を全て叶える事が出来ない場合があることを社会は認識する必要がある。
現実の医療水準、医療の限界、医療資源の限界を理解し現実的な医療サービスの提供の限界を理解しなければならない。
【インフォームドコンセントについて】
I. 医療従事者に向けてII. 患者に向けてIII. インフォームドコンセントに関する一般的提言
症例) 80歳代(死亡時)男 表在性膀胱がん C型肝炎
14年前
2年前 死
亡
抗がん剤膀胱注入療法&TUR-BT
再発放射線治療
9ヶ月前
再発がんワクチン療法
1年前
再発膀胱全摘考慮
5ヶ月前
膀胱全摘 癌再発T.C.施設へ
3ヶ月前
当院当院 他院 他院
解剖結果:癌局所再発及び遠隔転移(肺、肝等) 死因:腫瘍死
医学的評価治療方針の選択と実施に関して
全経過を通じ、重大な不合理性、著しい問題点はない。インフォームドコンセントに関して
患者と主治医との信頼関係は十分保たれていた。放射線治療選択時に、他にとりうる治療オプションとして膀胱全摘に関するインフォームドコンセントは十分な記録が残されていないために不足していた可能性が否定できない。
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親族の希望でモデル事業へ
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診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業への疑問!
「腫瘍死 病死」であるのに何故「診療行為に関連した死亡」として取り上げたのか。
「診療行為に関連した死亡の調査分析」なのになぜ診療録記載に言及。
「モデル事業」が「診療録記載不備」をなぜ患者家族に伝えるのか。
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【インフォームドコンセントについて】
I. 医療従事者に向けて放射線治療が選択された際、他の治療法として膀胱全摘の適応につて家族へのインフォームドコンセントの実施が十分であったか。この件に関する検証のためにも提供した情報や同意書が記録、保管されていることが不可欠である。
II. 患者に向けて患者側も提供された情報を正しくかつ善意と積極性をもって理解すべきである。納得できる治療を自己決定に基づいて受けるという医療本来の目的を達成するためには、患者および家族はインフォームドコンセントに関わる不明な点があれば、医療者に積極的に質問を投げかけるべきである。
III. インフォームドコンセントに関する一般的提言本事例では、①当事者が判断するに足る説明、②当事者が理解できる説明と知識の提供、③判断する為の時間的猶予、④疑問と撤回を表明する機会と雰囲気提供 などの工夫により患者とのより緊密な信頼関係が気づけたであろう。とはいえ、時間的制約、情報格差が厳然としてある現状でのインフォームドコンセントの成立に関する問題の解決には、医療界と国民との合意に向けた更なる真摯なな努力が必要である。
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患者への影響レベル
レベル0
レベル1
レベル3a
レベル2
レベル3b
レベル4a
レベル4b
レベル5
その他
死亡
永続的
永続的
一過性
一過性
一過性
なし
軽度
中等度
高度
経度~中等度
中等度~高度
影響レベル(報告時)
障害の持続性
障害の程度
内容
エラーや医薬品・医療用具の不具合が見られたが、患者には実施されなかった。
患者への実害はなかった。
処置や治療は行わなかった。
簡単な処置や治療を要した。
濃厚な処置や治療を要した。
永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題は伴わない。
永続的な障害や後遺症がり、有意な機能障害や美容上の問題を伴う。
死亡
その後 多発する医療紛争
① クレームのためのクレーム (排除)(責任者を出せ、誠意を示せ 等々)
② ( グレイゾーン ) (謝罪、補償?)
③ 事故、想定外の負の事象、患者死亡
(謝罪、事故調査、 再発予防、補償)
患者の救済 管理者の謝罪と説明 職員の保護 原因調査
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事故対応に対する不満と医療不信・警察への届け出
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診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業
を再認識。
消極的、帰納的な判断ではあるが、
当事者を信頼してもらえないならば第3者に調査を依頼するしかない。
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患者・家族の医療に対する不信感
・「③ 事故、想定外の負の事象、患者死亡」時の説明に対する患者・家族の、病院・医療に対する不信感。
・当院での病理解剖を拒絶。
警察への届け出に対する拒否反応
・警察届け出事例において、医学を修めていない人との事故収拾のための会話はきわめて困難。
・警察案件として馴染まない(説明、理解、同意、納得 捜査)
・「異状死」の解釈。 「異常」ではなく「異状」。「状態」が異なるーー視診、触診上の異常(外表異状)医学的に説明しがたい外表異状
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入院後経過 )
5月28日 不明熱で入院 WBC / CRP 17,000 / 13.3
6月13日 成人スティル病(膠原病内科) ステロイド治療開始
6月18日 誤嚥性肺炎 人工呼吸(ICU) ステロイド治療2回目
6月20日 FDP Ddimer上昇 DIC疑い
6月21日 抗TNF-α薬投与 炎症反応改善 意識状態改善
6月22日 人工呼吸離脱 WBC/CRP 42,000/4.1 AST/ALT 270/729 BUN/Cr 71.2/0.9 TP/Alb 4.4/1.7K 3.7~3.5mEq/L
主治医はICU・CCU医師指示票に、『 K<3.5mEq/Lで アスパラカリウム注20mEq div/hr (CVライン) 』と指示。アスパラカリウム注(10mEq/10ml) 2管 X 6回分 を処方。
症例 ) 86歳女性
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事例 2
アスパラカリウム静脈注射事例
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6月24日 頭部MRI・CT で広範囲新鮮脳梗塞6月25日 JCS 300
スティル病遷延 呼吸不全 肺炎 DIC サイトメガロウイルス感染症 気管切開
7月25日 敗血症性ショック にて死亡。 剖検得られず。
(病院の対応 )
5/28 6/13 6/18 6/22 6/23 7/5 7/10 7/25
入院 成人スティル病 人工呼吸 人工呼吸離脱 カリウム静注 14:43 死亡ステロイド治療開始
院長より心停止の原因はカリウムの誤投与法によるものであったことを家族に説明し謝罪を表明
16:30
22:00
院内事故調査委員会実行当事者の保護対策
多数回の患者状態説明
拡大事故調査委員会
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事故経過 )
6月23日 呼名に開眼 上下肢動なし JCS I-2~3 HR 80/min BP 160/60mmHgRR 23/min SpO2 95% O2 カニューレ 3L/min
14:00 Kチェック 2.9mEq/L 担当看護師(A)はアスパラカリウム10ml 2管 (20mEq) を準備。
隣室担当の看護師(B)にダブルチェックを依頼。この時(A)は別室に呼ばれたため、対面でのダブルチェックは出来なかった。(B)は一人でチェック、(A)に戻そうとしたが、(A)が呼ばれた患者が重症であったため戻れなかったためと、注射の指示が14時であったため、30分を過ぎていた。この時、自分が注射しようと考えた。
(B)は、点滴台でアスパラカリウム注2管をシリンジに引いたのちベッドサイドに行き、
CVラインの三方コックから1分ほどで静注した。主治医と思われる医師は同室にいたがダブルチェックや静注確認の会話はなかった。
静注前の患者の状態: 傾眠傾向 JCS I-2 HR 50/min BP 160/50
14:43 アスパラカリウム2管静注 14:57 自己心拍再開14:45 QRS増幅 → 心停止 15:10 気管内挿管 JCS 300 縮瞳14:46 心肺蘇生開始
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拡大事故調査委員会 7月 5日 7月10日
1) アスパラカリウム注射と心肺停止の因果関係2) アスパラカリウムを注射した看護師(B)の過失について
① 指示票の記載が不十分であること② 注射指示簿が不備であること③ ICU記録が不備であること④ 注射計画が不十分であること⑤ ダブル・チェックシステムが機能していないこと⑥ ハイリスク薬の管理が不十分であること⑦ カリウム製剤原液使用が制限されていなかったこと
3) アスパラカリウムのダブルチェックを依頼した看護師(A)の責任について4) アスパラカリウム注射の指示を出した主治医の監督責任について5) ハイリスク薬の管理における薬剤部の責任について6) 組織風土について7) 再発予防策について
① 薬剤投与プロセスにおける情報伝達エラー防止のためのシステム整備② ハイリスク薬管理法の改善③ チーム医療のためのコミュニケーション力の向上
8) 患者家族に対する対応について9) 患者が死亡した場合のアスパラカリウム注射が死亡に及ぼした影響について10)警察への通報について
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院内事故調査委員会(事故発生当日夜)
出席者 : 院長、管理者、当事者はじめ関係者計12名
事故経過の詳細な確認 主治医、当事者へのヒアリング
原因分析 RCA コミュニケーションエラー ( システム・エラー )
再発防止策の検討 アスパラカリウムの廃薬医師のカリウム補正指示の改善集中治療センターでのカリウム注の管理変更
調査内容を文書にまとめモデル事業への参画を確認( → 後日、モデル事業に文書送付 )
当事者の保護対策
翌日の早朝連絡会にて事故発生のアナウンスと「ほう・れん・そう」の徹底を指示
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剖検について : 死因究明には必須であるとの認識が必要
剖検
事故・患者死亡 院内調査 第3者による調査分析
死因の推定
最も真実に近い死因 =死因究明
死因に基づいた原因検索 再発防止策
臨床所見剖検所見
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事故発生 全力で救命処置患者関係者への説明(治療経過、過失?)死亡の場合は剖検の受諾依頼警察への届け出は「異状」時のみ
院内事故調査事故調査報告書作成
患者関係者へ事故調査結果の説明第3者への事故調査依頼の検討
院内調査報告の提出第3者による「診療行為に関連した死因究明調査」依頼
患者関係者への結果の説明当事者側の対応について説明
事故後の処置と説明は頻回に
剖検の実施は非常に大切 ( 後述 )
患者関係者が警察に連絡をとることを妨げることはできない
出来るだけ早い時期に作成する
小規模医療機関においてはサポートが必要
(検討中)
当事者側の説明に対する患者側の納得度を推量し、必要な場合、第三者による調査を提示する
福岡赤十字病院における事故対応の流れ統括指示: 院長
医療安全室長
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To Err is Human.・ 臨床現場における重大な有害事象発生時には、管理者または
安全管理責任者による評価を行い、必要と判断された場合には
謝罪(共感)と説明、院内事故調査は出来るだけ速やかに行う。
・ 患者死亡の場合には真実追求のために剖検を強く勧める。
・ 状況判断により、第3者を交えた事故の徹底的な調査も行い、
有害事象発生の原因分析を行う。
・再発防止対策を確定し、一連の作業と結果について患者家族に説明する。
・ これら一連の合議の主目的は、同様事象の再発防止策の確立にある。
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剖検は、患者の死に報いることのできる最後の施療、加療。
患者の死に対し最も真実に近い死因を究明し、患者関係者に
明示することは医師の科学者としての正しい行為。
医療をサービスと考えるならば、剖検は亡くなった患者に
対する究極の医療サービス最終章。
CT、MRI等の所見はあくまでも間接所見。死線期から死後の
変化についての知見も少なく、剖検所見の価値は今も昔も
変わらない。
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