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グラファイトの構造と電子状態 2008620近藤 剛弘 γραφειν

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  • グラファイトの構造と電子状態

    2008年6月20日 近藤 剛弘

    γραφειν

  • 目次

    (1)ベンゼン分子の構造と電子状態

    (2)グラフェンの電子状態

    (3)グラファイトの構造をめぐる解釈の経緯

    目的

    研究に用いているグラファイトに関しての理解を深める

    特にグラファイトのSTM像の解釈をめぐる経緯を理解する

    (4)グラファイトのSTM像をめぐる解釈の経緯我々のSTM像との比較

  • (1)ベンゼン分子の構造と電子状態

  • ベンゼン分子の構造と電子状態

    Csp2混成軌道の重なり

    C2pz軌道Csp2とH1sの重なり

    Csp2とH1sの重なりによるσ軌道

    Csp2の重なりによるσ軌道

    C2pzの重なりによるπ軌道

    ベンゼンはこの2つの極限構造の共鳴混成体である

    非局在化π軌道 ベンゼンの炭素間の結合距離:1.39Å典型的なC-Cの結合距離:1.54Å典型的なC=Cの結合距離:1.34Å

    H. Hart et al., Organic Chemistry,(1999) Houghton Mifflin Company

    C:2s22px12py1

    C:2s12px12py12pz1

    つC2つと結合残りつの2Pは 結合

    3個のsp2混成と2pz1

    昇位

    ベンゼンのπは非局在化して安定!

  • 4b1u 22 0

    1a2g 20 0

    軌道名 E(eV) 電子数 分子軌道

    5e1u 16 0, 0

    5e2g 15.6 0, 0

    4e2g 12.4 0, 0

    3b1u 11.8 0

    4e1u 10.3 0, 0

    4a1g 8.7 0

    1b2g 7.3 0

    1e2u 3.3 0, 0

    C2pの重なりによるπ軌道

    (LUMO+5)

    (LUMO+4)

    (LUMO+3)

    (LUMO+2)

    (LUMO+1)

    (LUMO)

    軌道名 E(eV) 電子数 分子軌道反結合性軌道 (非占有状態)

    結合性軌道 (占有状態)ベンゼン分子の電子状態

    1e1g -2.6 2, 2(HOMO)

    3e2g -4.9 2, 2

    (HOMO-1)

    1a2u -5.4 2(HOMO-2)

    3e1u -6.8 2, 2(HOMO-3)

    1b2u -7.3 2(HOMO-4)

    2b1u -8.2 2

    (HOMO-5)

    3a1g -9.7 2

    2e2g -11.5 2, 2

    2a1g -17.5 2, 2

    1b1u -262 2

    1e2g -262.16 2, 2

    1e1u -262.17 2, 2

    1a1g -262.18 2

    パッケージソフトで簡単に計算可能

  • E=α+2β

    E=α+β

    E=α-β

    E=α-2β

    α-Eα-E

    α-Eα-E

    α-Eα-E

    Eπ=2(α+2β)+4(α+β)=6α+8β非局在化エネルギー:(6α+8β)ー3(2α+2β)=2β≒-150kJ/mol

    = 0

    000β

    β000β

    00β

    β

    000β

    β

    000

    β

    00

    β

    β

    ベンゼン分子のC2pzの重なりによる6個のπ軌道のエネルギー

    ヒュッケル永年行列式

    ATKINS,Physical Chemistry

    AHAdクーロン積分(占めた電子のエネルギー)

    AHBd共鳴積分(波動関数の重なりにより生じる)

    d

    dHE

    *

    *

    BCAC BA ABの極性結合

    0

    ACE 0

    BCE

    2原子分子は解けるが多原子分子は煩雑

    ヒュッケル近似

    1.全ての重なり積分を02.隣接しない原子間の

    共鳴積分を03.残り全ての共鳴積分を

    βと等しいとする

    πについてのみ考える

    そこで すると

    計算すると

    ベンゼンのπは非局在化して安定!

  • (2)グラフェンの電子状態

  • C2pzの重なりによるn個のπ軌道のエネルギー

    ではグラフェンの積み重ねであるグラファイトはどうなっているのか?

    伝導帯(上部)と価電子帯(下部)が、K点で接しており、ゼロギャップ半導体と呼ばれている

    B. Partoens and F. M. Peeters, Phys. Rev. B 74 (2006) 075404.

    πバンドのみプロット

    グラフェンの電子状態

    バンド構造の形成

    Tight binding近似(電子は強く束縛されていて、隣り合う軌道へ自由に移動できないという近似)がよくあうと知られている(P.R. Wallace, Phys. Rev. 71, 622 (1947))で計算されたバンド図

  • (3)グラファイトの構造をめぐる解釈の経緯

  • グラファイトの構造(XRD計測から提案されてきた構造モデル)

    Hexagonal crystal structure

    W. Hull, Phys. Rev. 10 (1917) 661.

    C. D. Zeinalipour-Yazdi, Taylor & Francis Group LLC (2008).

    O.Hassel and H. Mark, Phys. Z. 18 (1924) 291.J. D. Bernal. Proc. R. Soc. London Ser A 106 (1924) 749.

    自然のグラファイトと副産物のKishグラファイトをどちらも3500℃処理したφ0.1mmのパウダーを計測

    a1=a2=2.47Å,c=6.8Å

    (各層が平行ではない)

    Hexagonal crystal structure

    大多数のHexagonal structureの積層欠陥として存在するのが↓

    Rhombohedral crystal structure

    ABA’B・・・

    ABAB・・・

    a=b=c=3.635Å,α=β=γ=39.49°

    H. Lipson and A. R .Stokes, Proc. Roy. Soc. A. 181 (1942) 101.

    ではなぜ大多数がHexagonal structureか?

    自然のグラファイトと副産物のKishグラファイト

    はじめに提案された2つの構造モデル

    Rhombohedral crystal structure

    P. Debye and P. Scherrer, Phys. Z. 18 (1917) 291.

    a=b=c=3.63Åα=β=γ=40.44°

    圧縮処理した自然のグラファイト

    ABCABC・・・

    その後、検証されて改定されたモデル

    Rhombohedral crystal structureは?

    ABCABC・・・

    (菱面体晶)

    (六方晶)

    D46b-P63/mmc

    a1=a2=2.45Å,c=6.82Å

    (現在一般的に用いられている構造)

  • ・Hexagonalに偏った([10-10]の系列の方向に)圧力をかけたとき

    Hexagonal crystal structure の方が熱力学的に安定Rhombohedral crystal structureの生成が見られるのは

    ・パウダー化したとき

    → 圧力かけた場合は1300度に加熱するとHexagonalに戻るF. Laves and Y. Baskin, Zeit. Krist. 107 (1956) 337.

    グラファイトの構造(XRD計測から提案されてきた構造モデル)

    XRD論争中の時期に電子線回折で新たなピーク

    J. Hoerni and J. Weigle, Nature 164 (1946) 752.

    π電子が1重や2重結合のアレンジを変えている為と解釈

    同じ頃、HOPGが出回るようになる

    斜方晶(orthorhombic)構造と結論J.S. Lukesh and L. Pauling, Amer. Min. 35 (1950) 125.

    L. Pauling, Proc. N. A. S. 56 (1966) 1646.

    ABAB・・・

    a=2.409Å, b=4.339Å,c=6.708Å

    Quinoid structure

    実験による3.44~3.354Åのばらつきを説明!

    layer間のVdWがより強くなる!計算すると距離:3.354Å

    (orthorhombic) D232b-2b-Fmmma=2.456Å, b=4.254Å, c=6.696Å

    否定する結果の報告は無い?

  • (4)グラファイトのSTM像をめぐる解釈の経緯

  • 波動関数は指数関数的に減少するが、0にはならない → トンネル電流が流れる

    Scanning Tunneling Microscope(STM)の原理

    トンネル電流は探針と試料表面との距離zの増加に対して指数関数的に減少する

    距離一定モード(フィードバック弱め)

    トンネル電流一定モード(フィードバック強め)バイアス電圧

  • サンプルバイアス正 サンプルバイアス負

    探針試料表面

    非占有状態占有状態

    E fμ

    E fν

    バイアス電圧バイアス電圧

    (μ準位からν準位への一電子のトンネルを考える)

    STM原理(Tersoff とHamann によるSTM理論)

    探針μのμ状態の電子(エネルギーEμ)が試料表面νのν状態(エネルギーEν)に遷移するとする。

    理論計算でSTM像を計算する際にも用いられている基本理論

    探針

    試料表面

    試料表面

    トンネル電流

    探針

    J. Tersoff and D. R. Hamann, Phys. Rev. B 31 (1985) 805.

    実際は温度で決まるフェルミ分布をしている

  • A. Selloni et al.,Phys. Rev. B 31 (1985) 2602.

    局所状態密度は表面のサイトによって異なり、それぞれTip-Sample間距離に依存している

    以上の要素(表面電子状態とTip-Sample間距離)によりSTM像の凹凸はエネルギー依存する

    グラファイトのSTM像に関する理論計算

    A. Selloni et al., Phys. Rev. B 31 (1985) 2602., Phys. Rev. B 34 (1985) 7406

    βサイトがαサイトより高いことを予測

  • グラファイトのSTM像に関する理論計算

    局所状態密度はバイアス電圧とTip-Sample間距離で変わる

    A. Selloni et al., Phys. Rev. B 31 (1985) 2602.

    局所状態密度は表面の各軌道(電子状態)のエネルギー状態に対応する

  • -100 mV 1 nA 3 nm -117 mV 1.63 nA 3 nm

    -120 mV 3.41 nA 1 nm

    -115 mV 1.59 nA 3 nm

    -115 mV 1.59 nA 3 nm-110 mV 1.6 nA 1.5 nm

    HOPG(劈開後アニール無し)

    我々が計測したグラファイトのSTM像

    輝点3つの像とハニカム像の共存

  • 080528004c

    -118 mV 1.66 nA 1 nm

    080528004t

    -118 mV 1.66 nA 1 nm

    我々が計測したグラファイトのSTM像

    080528201c

    -110 mV 1.6 nA 1.5 nm

    080528201t

    -110 mV 1.6 nA 1.5 nm

    HOPG(劈開後アニール無し)

    080528204c

    -204 mV 1.66 nA 1.5 nm

    080527 110 c

    -124 mV 2.11 nA 1 nm

    「輝点3つ」「ハニカム」「団子状態」が見られる

  • 080527 110 t

    -124 mV 2.11 nA 1 nm

    080528203c

    -202 mV 1.67 nA 1.5 nm

    080528203t

    -202 mV 1.67 nA 1.5 nm

    080528204t

    -204 mV 1.66 nA 1.55 nm

    080528205t

    -204 mV 1.7 nA 5 nm

    080528010t

    -114 mV 1.58 nA 1.5 nm

    HOPG(劈開後アニール無し)

    我々が計測したグラファイトのSTM像

    「輝点3つ」「ハニカム」「団子状態」が見られる

  • 080528101c

    -117 mV 1.63 nA 3 nm

    080528101t

    -117 mV 1.63 nA 3 nm

    080528200c

    -115 mV 1.59 nA 3 nm

    080528200t

    -115 mV 1.59 nA 3 nm

    080528001c

    -105 mV 1.61 nA 4 nm

    080527 004 t

    -114 mV 2.08 nA 3 nm

    「輝点3つ」「ハニカム」「団子状態」が見られる

    HOPG(劈開後アニール無し)

    我々が計測したグラファイトのSTM像

  • 935

    930

    925

    920

    915

    x10-

    12

    8006004002000

    x10-12

    HOPG(劈開後アニール無し)

    我々が計測したグラファイトのSTM像

    1x10-11m

    0.1 ~ 0.2Å程度の凹凸振幅

    0.94

    0.92

    0.90

    0.88

    0.86

    Hei

    ght [

    nm]

    1.00.80.60.40.20.0

    Position [nm]

    2x10-11m

  • Sang-II Park and C. F. Quate, Appl. Phys. Lett. 48 (1986) 112

    大きな凹凸振幅(~1Å)を示したグラファイトのSTM像に関する報告

    HOPGのSTM像における凹凸振幅:0.8Å Efでの電子状態を考慮した計算(文献手に入らず)を引用

    A-C間での凹凸1ÅになるAはBよりも0.15Å高くなる

    STMで横方向空間分解能が予想されていた2Å以内を達成できることを報告

  • G. Binnig, H. Fuchs, Ch. Gerber, H. Rohrer, E. Stoll, and E. Tosatti, Europhys. Lett. 1 (1986) 31.

    大きな凹凸振幅(~2.5Å)を示したグラファイトのSTM像に関する報告

    2.5Åの凹凸を示すことがあることを報告(文中のみ)STMで横方向空間分解能が予想されていた2Å以内を達成できることを報告

  • G. Boato, P. Cantini, and R. Tatarek, Phys. Rev. Lett. 40 (1978) 887.

    He原子線散乱で観るグラファイトの凹凸振幅は~0.21Å(これでもかなり大きな凹凸振幅!)

    Probing 3 - 4Å above the surface

    LiF(001)[100] : 0.5ÅPt(111) : 0.01Å と比べると

    比較的局在化した相互作用ポテンシャル

    He散乱で観るグラファイトの凹凸振幅

    STMで観る凹凸振幅はHe散乱の場合よりも一桁大きい!

  • J. Tersoff, Phys. Rev. Lett. 28 (1986) 440.

    Total charge density

    EfでのLDOS

    対応するSTM

    (局所電子状態密度)

    ・一つの波動関数だけを観ており、nodeがあると大きな凹凸になる(STMの空間分解能が良いように見えてしまう)

    ・Effective work functionを考えなければグラファイトは3Åの凹凸振幅になる

    ・Tip-Sample距離依存はサイトにより違いがでる

    グラファイトSTM像における大きな凹凸振幅に関する解釈(1)

    (1)ゼロギャップ半導体であるために一つの波動関数のみ観ているためと結論

    πstate node

    ポイント:「グラフェンを考える」

  • グラファイトSTM像における大きな凹凸振幅に関する解釈(2)

    8Åと記載されているが0.8Åの間違いと思われる

    J. M. Soler, A. M. Baro, N. García and H. Rohrer, Phys. Rev. Lett. 57 (1986) 444 .

    (2)グラファイトの弾性変形のためと結論

    探針の圧力によるグラファイトの弾性変形で凹凸振幅が大きくなる

  • グラファイトSTM像における大きな凹凸振幅に関する解釈(3)

    (3)ゴミを介したグラファイトの弾性変形と電子状態で統一

    大気中だと24Åの凹凸振幅もある

    ゴミを介すことで原子分解能と大きな凹凸両方を実現していると主張

    H. J. Mamin, E. Ganz, D. W. Abraham, R. E. Thomson, and J. Clarke, Phys. Rev. B 37 (1986) 9015.

    弾性変形は一回のScanの際に一定で影響なし

    真空中できれいなTipだと0.9Å

  • グラファイトSTM像における大きな凹凸振幅に関する解釈(4)

    (4)ゼロギャップ半導体であるために一つの波動関数のみ観ており(解釈1と同じ)、室温でのスキャンの際に試料と探針それぞれの格子振動の影響で緩和される

    C. R. Leavens, Phys. Rev. B 38 (1988) 2169.

    格子位置の変位量の増加に伴い凹凸振幅が減少(スムージング効果)

    有限の凹凸振幅

  • 現在も支持されているグラファイトのSTM像解釈

    C. D. Zeinalipour-Yazdi, Taylor & Francis Group LLC (2008).

    D. Tománek, S. G. Louie, H. J. Mamin, D. W. Abraham, R. E. Thomson, E. Ganz, and J. Clarke, Phys. Rev B 35 (1987) 7790.

    実験結果計算結果

    D. Tománek and S. G. Louie, Phys. Rev. B 37 (1988) 8327.

    Hexagonal structure Rhombohedral structure

    Rhombohedral structure

    Hexagonal structure

    βサイトの電子状態がEf付近に集中している為

  • Tománekを支持しTersoffに疑問を投げかけた報告

    K. H. Lee, M. Causa and S. S. Park, J. Phys. Chem. B 102 (1998) 6020.

    Ab Initio Periodic Hartree-Fock Calculation

    Tománek同様にβサイトが見える

    Tip-Surface距離にあまり依存しない

    0.5V

    4V

    バイアス

    バイアス

    1ÅTip-Surface 距離

    4ÅTip-Surface 距離

    バイアスに応じた変化が実験と同じ

  • TománekとTersoffを取り持つ計算と解釈

    ハバードモデル計算(下記4点を考慮)(1)αサイトとβサイトの電子が隣のサイト及び隣のセルのサイトに移れる(2)同じサイトに移ったら反発する(3)隣のサイトに移っても反発する(4)電子と隣のサイトのカーボンのコアとは引き合う

    LDOSに差ができる領域(Tip-Surface距離依存もあり)

    LDOSに差はないがαサイトにスピンアップβサイトにスピンダウンが多い領域

    電子ー電子間相互作用によるPhase DiagramにSTM像は依存しているはず

    αとβのLDOSに差ができない金属的領域

  • 様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(1)

    様々なSTM像の出現はMultiple-tipによって起きていると結論

    実験 計算

    針先端が1つの場合のイメージと仮定

    1つのコンポーネントのPhaseがπ/2ずれた場合

    3つのフーリエコンポーネント

    1つのコンポーネントのPhaseがπずれた場合

    2つのコンポーネントのみの場合

    1つのコンポーネントのみの場合

    M. A. Mizes, S. park, W. A. Harrison, Phys. Rev. B 36 (1987) 4491.

    「団子状態」

    「ハニカム」

    「輝三つ」

    「楕円気味」

    「楕円気味」

    Multiple-tip

  • T. R. Albrecht, H. A. Mizes, J. Nogami, Sang-il Park, and C. F. Quate, Appl. Phys. Lett. 52 (1988) 362.

    グレイン境界でモアレパターンが見えるときはmultiple tipである(∵全く同じグレインがイメージされるため)

    様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(1)

    Multiple-tip

  • T. R. Albrecht, H. A. Mizes, J. Nogami, Sang-il Park, and C. F. Quate, Appl. Phys. Lett. 52 (1988) 362.

    グレイン境界でモアレパターンが見えるときはmultiple tipである(境界挟んだ両サイドの像の重ね合わせ)

    (a) (b)

    (c) (d)(a)と(c)の重ね合わせ(Multiple像と似ている)

    グレインの近くに√3周期の構造ができている

    様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(1)

    Multiple-tip

    (本質的な電子状態変調と結論)

  • G. Binnig, H. Fuchs, Ch. Gerber, H. Rohrer, E. Stoll, and E. Tosatti, Europhys. Lett. 1 (1986) 31.

    非対称なtip形状に起因する楕円形状

    様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(2)

    asymmetric-tip

  • 様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(3)

    STMに寄与するTipの電子状態の違い

    マルチTipなどを考えずともSTM像のバイアス依存を説明!!

    -1eV

    0eV

    Tip

    Tipは全電子状態 Tipは一部の電子状態

    ハニカムトライアングル

    楕円体

    全電子状態Tip

    0.1eVのみTip

    実験との比較

    STS

    K. kobayashi, M. Tsukada, J. Vac. Sci. Technol. A. 8 (1990) 170.

  • 様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(4)

    レイヤー間の重なり具合(理想的なABABからのずれ)

    スキャンの最中のTip-Surface相互作用

    レイヤーのずれが補正される

    スキャン中に像が変化

    P. J. Ouseph, T. Poothackanal, G. Mathew, Phys. Lett. A 205 (1995) 65. (PDFのSTM像は真っ黒)

    最後はclosepacked hexagonal symmetryになる

    レイヤーのずれがハニカム構造などを生み出している

  • 様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(5)

    ハニカムに見えるのはグレイン境界やdislocationなど欠陥の付近でレイヤー間の重なりが悪いところと解釈

    J. I. Paredes, A. M. Alnso, and J. M. D. Tascon, Carbon, 39 (2001) 473.

    レイヤー間の重なり具合

  • 様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(5)

    レイヤー間の重なり具合

    IとIIIで3輝点ケースとハニカムケース

    同じ画像で異なる構造領域を初めて計測

    Tipのせいで見え方が異なるのではない

    下地層とのズレの違いで起きていると解釈(Tomanek支持)

    J. I. Paredes, A. M. Alnso, and J. M. D. Tascon, Carbon, 600 (2006) 729.

  • 様々な見え方をするグラファイトのSTM像に関する解釈(6)

    W-Tipの傾いた5dz2 like stateの影響(Tsukada論文を引用)

    S. Hembacher, F. J. Giessibl, J. Mannhart, and C. F. Quate, PNAS 100 (2003) 12539.

    STM AFM

    実験

    計算

    ここについて説明無しですから

  • 新しいグラファイトSTM観察像解釈(1)

    何の分光学的根拠も無くαサイトβサイトで解釈するのは疑わしいとして。。。

    まずHRTEMで確かに六員環を確認 STMコントラストを反転してみた!

    なんと六員環になる。。。

    F. Atamny, O. Spillecke and R. Schlogl, Phys. Chem. Chem. Phys, 1 (1999) 4113.

    電子状態と原子のhardnessのコンボリューションと解釈

  • 新しいグラファイトSTM観察像解釈(1)

    F. Atamny, O. Spillecke and R. Schlogl, Phys. Chem. Chem. Phys, 1 (1999) 4113.

    電子状態と原子のhardnessのコンボリューションと解釈

    周りの3つを合わせた寄与周りの6つを合わせた寄与

    これらのうちHardnessが高いβサイトの寄与が大きいhollowサイトがSTMで観察されている

    よって反転したSTM像がハニカム像となる

    βサイトのがHrdness高いことの根拠:JPC98(1994)7602(downloadできず未確認)

  • 新しいグラファイトSTM観察像解釈(1)

    電子状態と原子のhardnessのコンボリューションと解釈

    良いTipの場合ハニカム見える駄目なTipの場合反転すればハニカム見える

    F. Atamny, O. Spillecke and R. Schlogl, Phys. Chem. Chem. Phys, 1 (1999) 4113.

    良いTipだとαサイトとβサイトに違いは無い

    欠陥がちゃんと欠陥として出てくる!

  • C. D. Zeinalipour-Yazdi, D. P. Pullman, Chem. Phys. 348 (2008) 233.

    新しいグラファイトSTM観察像解釈(2)

    Quinoid structure

    C=Cのπ結合を見ていると解釈

    (*楕円体になるのはスキャン方向の問題でないことも確認している)

  • Quinoid structure

    O.Hassel and H. Mark, Phys. Z. 18 (1917) 291.

    Hexagonal crystal structure

    ABAB・・・

    自然のグラファイトと副産物のKishグラファイト

    D46b-P63/mmc

    a1=a2=2.45Å,c=6.82Å

    (これまで主に使用していた構造)

    L. Pauling, Proc. N. A. S. 56 (1966) 1646.

    ABAB・・・

    a=2.409Å, b=4.339Å,c=6.708Å

    Quinoid structure(orthorhombic)

    D232b-2b-Fmmm

    a=2.456Å, b=4.254Å, c=6.696Å

    新しいグラファイトSTM観察像解釈(2)

    根本を考え直す

    この構造を基にTipを球対称(s電子)としてTersoff-HamannでSTM像シュミレーション

    実験と計算を比較する

    C. D. Zeinalipour-Yazdi, D. P. Pullman, Chem. Phys. 348 (2008) 233.

  • C. D. Zeinalipour-Yazdi, D. P. Pullman, Chem. Phys. 348 (2008) 233.

    -0.1V -0.7V

    実験

    計算

    Quinoid structure

    サンプルバイアス サンプルバイアス

    新しいグラファイトSTM観察像解釈(2)

    エチレンのようなπ軌道Highest occupied crystal orbital (HOCO)

    C=C間に局在するπ軌道を見ている(下の層や針の影響は関係ない)

  • 新しいグラファイトSTM観察像解釈(2)

    Pt(111)上の単原子層グラファイト

    下地のグラファイト層がないのに3つの輝点しかみえていない

    Quinoid structureを過去の文献と照合

    Quinoid structureならば説明可能

    J. Tersoff, Phys. Rev. Lett. 28 (1986) 440.

    Total charge density

    EfでのLDOS

    対応するSTM

    (局所電子状態密度)

    πstate node

    T. A. Land, T. Michely, R. J. Behm, J. C. Hemminger, G. Comsa, Surf. Sci. 264 (1992) 261.

    Tersoffのグラフェン計算とも一致!

  • (補足)グラファイトのSTM像

    J. Schneir, R. Sonnenfeld, P. K. Hansma, and J. Tersoff, Phys. Rev. B 34 (1986) 4979.

    水の中で計測するグラファイトは広い範囲で平坦!

  • まとめ: 現在も支持されているグラファイトのSTM像解釈

    C. D. Zeinalipour-Yazdi, Taylor & Francis Group LLC (2008).

    D. Tománek, S. G. Louie, H. J. Mamin, D. W. Abraham, R. E. Thomson, E. Ganz, and J. Clarke, Phys. Rev B 35 (1987) 7790.

    実験結果計算結果

    D. Tománek and S. G. Louie, Phys. Rev. B 37 (1988) 8327.

    Hexagonal structure Rhombohedral structure

    Rhombohedral structure

    Hexagonal structure

    βサイトの電子状態がEf付近に集中している為

    STMで観測される輝点はβ炭素である