ksi住宅を支える構造...ksi 住宅の構法...

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共同住宅の構法には、ラーメン構造、壁式ラーメン構造、壁式構造などが用いられ ますが、KSI住宅は、100年の長寿命と住む人のライフスタイルや家族構成の変化に 合わせて、間取りや内装を自由に変えられるよう、インフィルに可変性を持たせてい ます。内装だけでなく、設備配管や電気配線を自由に変えられる可変性と建設コスト とのバランスを考えて、KSI住宅の構法を選択していきます。 KSI 住宅実験棟は、内装間仕切りの可変性に加え、住戸規模の可変性と設備配管や 外部サッシの自由度を高めるために、純ラーメン構造を採用しています。純ラーメン 構造は、柱と梁、床版だけで骨組みを構成した構造で、隣戸壁や外壁を後で設置する ようにした構造です。 KSI 住宅として内装の可変性を実現するためには、ラーメン構造以外に以下の技術 も大切です。 鉄筋コンクリートによる高耐久性躯体 大架構を実現するプレストレストコンクリート梁 小梁がなく優れた遮音性能を有する大型一枚床版 KSI 住宅を支える構造 -KSI 住宅実験棟- KSI 住宅(機構型スケルトンインフィル住宅)を構成するS(スケルトン:構造躯 体)と I(インフィル:内装・設備)では各々が異なった寿命をもっています。スケ ルトンは、100 年の長寿命を達成する必要があり、インフィルの可変性に追従 できることが要求されます。 インフィル ●住まい手のライフスタイルやラ イフステージの変化に応じて作 り替えることが可能 スケルトン ●100 年以上の長期耐久性を持つ ●インフィルの変化を可能とする ラーメン構造

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Page 1: KSI住宅を支える構造...KSI 住宅の構法 共同住宅の構法には、ラーメン構造、壁式ラーメン構造、壁式構造などが用いられ ますが、KSI 住宅は、100

■ KSI 住宅の構法

共同住宅の構法には、ラーメン構造、壁式ラーメン構造、壁式構造などが用いられ

ますが、KSI 住宅は、100 年の長寿命と住む人のライフスタイルや家族構成の変化に

合わせて、間取りや内装を自由に変えられるよう、インフィルに可変性を持たせてい

ます。内装だけでなく、設備配管や電気配線を自由に変えられる可変性と建設コスト

とのバランスを考えて、KSI 住宅の構法を選択していきます。

KSI 住宅実験棟は、内装間仕切りの可変性に加え、住戸規模の可変性と設備配管や

外部サッシの自由度を高めるために、純ラーメン構造を採用しています。純ラーメン

構造は、柱と梁、床版だけで骨組みを構成した構造で、隣戸壁や外壁を後で設置する

ようにした構造です。

KSI 住宅として内装の可変性を実現するためには、ラーメン構造以外に以下の技術

も大切です。

① 鉄筋コンクリートによる高耐久性躯体

② 大架構を実現するプレストレストコンクリート梁

③ 小梁がなく優れた遮音性能を有する大型一枚床版

KSI 住宅を支える構造-KSI 住宅実験棟-

KSI 住宅(機構型スケルトンインフィル住宅)を構成するS(スケルトン:構造躯

体)と I(インフィル:内装・設備)では各々が異なった寿命をもっています。スケ

ルトンは、100 年の長寿命を達成する必要があり、インフィルの可変性に追従

できることが要求されます。

概要

インフィル

●住まい手のライフスタイルやライフステージの変化に応じて作り替えることが可能

スケルトン

●100 年以上の長期耐久性を持つ●インフィルの変化を可能とする

ラーメン構造

Page 2: KSI住宅を支える構造...KSI 住宅の構法 共同住宅の構法には、ラーメン構造、壁式ラーメン構造、壁式構造などが用いられ ますが、KSI 住宅は、100

■ 鉄筋コンクリートの高耐久性躯体

KSI住宅のスケルトンは、100 年間使用できる高い耐久性をもった構造躯体シス

テムのために以下のような対策をしています。

■ 大スパンのフレーム

KSI住宅実験棟は、純ラーメン工法で、梁間方向に大スパンの梁を架けています。

通常の鉄筋コンクリート梁の場合、荷重と自重で梁の中央部がたわみ、梁の下面に引

張力によるひび割れが発生します。KSI住宅実験棟では、 PC鋼材のように引張力

に対して強い鋼材によって、あらかじめコンクリートに圧縮のストレスをかけること

により梁の下面に圧縮力を発生させ、梁のたわみとひび割れを減少させるプレストレ

ストコンクリート造による大スパン梁としています。

大スパン梁を採用することによる利点は、耐震壁がなくても大スパン架構が可能と

なり、規模可変などプランの自由度が増したり、水廻りの自由度を確保しつつ階高を

抑えることが可能となり、建設コストの低減につながります。

■ 大型一枚スラブ

KSI 住宅は、内装の変更を可能とするために、間取りに対して制約となる小梁や下

がり天井がないことが要求されます。小梁を設けずに床スラブの面積を大きくすると、

大きなたわみが発生し、ひび割れや振動による遮音性能の低下が生じます。大きなた

わみを防ぎ、遮音性能を向上させるには、面積に応じた床スラブの厚みを確保しなけ

ればなりませんが、すべてをコンクリートで作ると重量が増大し、その他の部材に対

しても負担が増すことになります。これを解消する ために、発泡スチロールや鋼製パ

イプなど(ボイド型枠という)をコンクリートに埋め込みスラブ面積を大型化する工

法を採用しています。

50t100t100t

100t

KSI 住宅では①柱・梁のかぶり厚さを5cm

(一般より1cm多い)②設計基準強度30N/mm2の

コンクリートを使用

③水セメント比55%

加重が作用すると梁はたわみます。梁の上面には圧縮力が、下面

には引張り力が作用しています。

梁の下部に挿入した緊張材を引張ってプレストレスをかけると、

梁に圧縮力が作用します。

緊張材には設計荷重による応力の一部または全部を打ち消すように、あらかじめ計画的に応力を与えます。

薄肉PC 板

場所打ちコンクリートスラブ上端筋

ボイドスラブの断面の一例

1.設計:①コンクリートのかぶり厚さを十分に大きくとる。 (特に外部に面する部分) ②強度の高いコンクリートを用いる。(30N/mm2以上) ③コンクリートを保護する効果の大きい仕上げ材を使用。 ④水セメント比の向上。2.施工:①設計寸法を保障する施工計画をたてる。 ②密実なコンクリートを打設する。 ③塩化物(イオン)の少ない砂利やセメントを用いる。3.維持管理:①定期点検の実施

②計画的な修繕の実施

PC 鋼材