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カドミウムの排水規制強化と対応策 (一社)日本表面処理機材工業会 環境対策委員会 矢後 正幸 2014/6/13 1

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カドミウムの排水規制強化と対応策

(一社)日本表面処理機材工業会

環境対策委員会 矢後 正幸

2014/6/13 1

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本日の内容

• 主なカドミウム規制関係法令と基準

• カドミウム金属とは • 何故、RoHS指令物質カドミウムが100ppm なのか? • カドミウムの毒性 • 水質環境基準健康項目とは • 排水規制と業界の対応 • 改正水質汚濁防止法について

• 厳しい上乗せ排水基準 • 有害物質に係る基準(特定地下浸透水) • 何故カドミウム排水処理が難しいか • カドミウムの排水処理方法 • まとめと今後の対応策

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法令・基準名 規制対象物質 基準値

環境基本法・環境基準

カドミウム 0.01mg/L以下 → 0.003mg/L以下

(平成23年10月27日) 河川・湖沼水等

水質汚濁防止法・排水基準 カドミウム及び その化合物

0.1mg/L以下→0.03mg/L 審議中 工場排水等

土壌汚染対策法・ 土壌環境基準

カドミウム 検液1Lにつき0.01mg以下

土壌

農用地 米 米1kgにつき0.4mg未満

食品規格(米に対する基準) カドミウム 0.4 ppm

RoHS指令

カドミウム

非含有

電気電子機器 (最大許容濃度として0.01wt%)

主なカドミウム規制関係法令と基準

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食品衛生法8)(例)

カドミウム

75μg/g以下

おもちゃの塗膜 0.7μg/cm2

ガラス製の器具又は容器包装(材質別規格)

玩具の安全性(EN71-3)

カドミウム 75mg/kg → 17mg/kg ヨーロッパ基準

玩具

労働安全衛生法 カドミウム及び その化合物

カドミウムとして 0.05mg/m3 作業環境評価基準

廃棄物の処理および清掃に関する法律

カドミウム又はその化合物

検液1Lにつき0.3mg以下

試料につき0.1mg/kg以下等

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カドミウム金属とは 鋼に対する抜群の防錆力、優れた加工性

• 米国(8,500tonの60%消費し、めっきが70%で

あった。電気製品、航空機部品、洗濯機・冷凍機・部品、船舶・計測器など)

• 防錆力(海水に対して優れ、航空機・船舶など亜鉛めっきの3倍)

• 加工性(めっき被膜が柔らかい)

• ハンダ加工性(210~220℃→145℃Pb-Sn-Cd)

• 水素脆性(めっき電流効率85~95%、亜鉛75~85%)

• めっき作業性(めっき速度1A・Hr/d㎡で24μm)

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何故、RoHS指令6物質中の カドミウムが 100 ppm なのか? • RoHS指令の第4条により附属書II 制限物質および均質材料当たりで許容される最大許容重量比濃度(wt%) • 鉛 (0.1%) • 水銀 (0.1%) • カドミウム (0.01%) • 六価クロム (0.1%) • ポリ臭素化ビフェニル (0.1%) • ポリ臭素化ジフェニルエーテル (0.1%)

• 前文第5文節: 「カドミウムによる環境汚染と戦うための共同体行動計画に関する1988年1月25日の理事会決議(OJC30, 4.2.1988, p.1.)」は、欧州委員会に遅滞なくそのような計画に関する特別措置の策定を遂行することを求めている。人の健康もまた保護されなければならないことから、それ故に特にカドミウムの使用を制限し代替の研究を促進する総合的な戦略が実施すべきである。決議は、カドミウムの使用は適当な代替が存在しない場合に制限さるべきであることを強調している」 → 100 ppm

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カドミウムの毒性

• 「イタイイタイ病」 (富山県神通川流域地方に多発(骨がもろくなり身体中が痛くなる))

が鉱山排水に含まれるカドミウムが原因と判明(昭和43年1968年)

• 腎臓の機能障害 低濃度のCdが体内に取り組まれ、尿細管に作用して

タンパク質、アミノ酸、カルシウム、リンなどが体外に排出される。骨の成分のカルシウム、リンの不足による骨軟化症となる。

• 厚生省は、1969年(昭和44年)に飲料水中のカドミウムの水質基準を、0.01mg/Lを設け、1978年(昭和53年)に水質基準を省令により、正式にカドミウムの水質基準が「0.01mg/L以下であること」が定められた。

• 中国カドミウム汚染米(土壌汚染)2011年の報道 年産2億トンの10%がカドミウム汚染米の可能性(湖南省)中国有数の非鉄金属の産地、鉱山廃水の影響性

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水質環境基準健康項目とは 公共用水域の水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準及び

地下水の水質汚濁に係る環境基準

カドミウム • 新たな基準 0.003 mg/L以下

• 現行の基準値 0.01 mg/L以下

備考 基準値は年間平均値とする。

• 施行期日 平成23年10月27日

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水質基準の評価値 = 耐容一日摂取量×平均体重×水道水の寄与率

一日に飲用する水の量

= 0.003 mg/L

● 日本では、平均体重 : 50Kg

● 水道の寄与率:カドミウム全体の摂取量のうち水道水から取り込まれる割合 : 10%

● 一日に飲用する水の量 : 2L

カドミウム水質基準の改正 2010年4月1日より水道水中のカドミウムの水質基準 0.01 mg/L以下 強化 → 0.003 mg/L以下に改正

0.001 mg/Kg体重/日 ×50㎏×0.10(10%)

2L

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排水規制と業界の対応

排水規制 • 昭和42年公害対策基本法制定 • 昭和45年水質汚濁防止法改正カドミウム水質基準を0.1ppmと定められる

• 鉱山石炭局名「カドミウムめっきの操業ついて」要望 「完全なカドミウム排水処理施設を設置するか、カドミウムめっきの操業を中止するかの態度を早急に決定のうえ、万全の措置をとられたい」

• 平成26年カドミウム水質基準を 0.03ppmが勧告され審議中

電気めっき業界の対応

• 昭和41年毒物及び劇物取締法対策

• 昭和45年全鍍連 カドミウムめっきの中止宣言

• 数社を残し殆どの工場はカドミウムめっきを廃止した。 2866事業所

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改正水質汚濁防止法について • 1970年(昭和45年)12月25日公布、1971年(昭和46年)6月24日施行

公共用水域の水質汚濁の防止に関する法律。

• 2011年(平成23年)8月30日に改正 • 排出水の測定結果の未記録等に対する罰則の創設

これまでも特定事業場 ※ の排出水の汚染状態について測定の義務

排水基準項目を年1回以上の頻度で測定義務

(法第14条第1項及び第2項、同施行規則第9条)

改正法では、測定結果の未記録、虚位の記録又は未保存に対して罰則

(報告及び検査)第22条第1項及び第2項、(罰則)第33条第3項

※ 別表三十三: 別表第一第六十五号に掲げる施設であつて、伸線業又はみがき帯鋼、みがき

棒鋼若しくは亜鉛鉄板の製造業の用に供するもの (六十五 酸又はアルカリによる表面処

理施設)

下水道法で届出(法第 12 条の 3)の対象となる特定施設も水質汚濁防止法施行令第 1 条(別表第 1)の特定施設が適用

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厳しい上乗せ排水基準

• カドミウムの排水基準について上乗せ排水基準を設定する35自治体のうち、新たな環境基準の10倍値よりも厳しい値を設定しているのは20自治体

• 大阪府は、上乗せ条例や大阪府生活環境保全条例に基づき、上水道水源地域に排水するすべての特定事業場及び届出事業場に対し、環境基準並みの排水基準を適用 平成25年3月

上乗せ条例 生活環境保全条例

特定事業場 届出事業場

上水道水源地域 0.003mg/L 0.003mg/L

上水道水源以外の地域

(法の基準を適用) 法の排水基準値と同じ 2014/6/13 12

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有害物質に係る基準(特定地下浸透水)

• 特定地下浸透水とは、有害物質を製造、使用、処理する特定施設(有害物質使用特定施設)に係わる水を、地下に浸透する水のこと(非意図的に浸透してしまう場合を含む)。

• 水質汚濁防止法施行規則第六条の二の規定に基づく環境大臣が定める検定方法

平成元年 環告39号 改定 平成24年 環告87号

総項目 29

項 目 特定地下浸透水基準

(mg/L)

カドミウム及びその化合物 カドミウムとして

カドミウムとして 0.001

シアン化合物 シアンとして 0.1 有機燐化合物 (パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン及びEPNに限る)

0.1

鉛及びその化合物 鉛として 0.005

六価クロム化合物 六価クロムとして 0.04

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何故カドミウム排水処理が難しいか 0.1ppm→0.03ppm

• キレート化合物の混入

• 濃厚廃液混入

• 排水処理装置のメンテナンス

• 使用薬品の組成

• その他

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カドミウム-EDTA結合の分解試験 香川県環境保険研究センター所報 第8号(2009) P.114

処理条件の違いによる処理効率試験結果 香川県環境保険研究センター所報 第8号(2009) P.116

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カドミウムの排水処理方法

• 凝集沈殿法

• 炭酸カドミウム沈殿法

• イオン交換法

• キレート樹脂法

• 電解浮上法

• 高分子重金属捕集剤

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凝集沈殿法 • 初期のシアン化カドミウムめっきの排水処理フロー 0.1 mg/L には対応できない。

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炭酸カドミウム沈殿法

• 中和沈殿後の排水に、重炭酸ナトリウムを添加し、十分反応させ完全な炭酸カドミウムの沈殿を作り、1μm程度ろ紙で精密ろ過する。

イオン交換法

• イオン交換樹脂を用い、酸性浴で有れば陽イオン交換樹脂、シアン浴あれば陰イオン交換樹脂でカドミウムを吸着させる。一般的には、中和沈殿処理後の排水を陽イオン交換樹脂でカドミウムを吸着させるが、樹脂再生時のカドミウム回収と洗浄等で難点がある。

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組成 Pb2+ Cd2+ 界面活性剤 pH

原排水 12.8 0.6 5 6

処理水 0.1> 0.01> - 6~7

キレート樹脂吸着法

• 高分子タイプの液体重金属捕集剤で、めっき工場や金属加工工場などの排水に含まれる重金属を補足する。ジチオカルバミン酸基、チオール基などを有し、pH5~9の中性領域で使用される。

• 重金属選択性は、次の通りである。

Hg2+>Ag+>Cu2+>Pb2+>Cd2+>Zn2+>Ni2+>Co2+>Fe3+>Mn2+

【 除去例 】

添加量 30 mL/L 高分子凝集剤添加量 1mL/L、pH 6 (単位: mg/L)

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電解浮上法

• 凝集沈殿法処理水を、pH8~10の範囲で、アルミニウム陽極とステンレス鋼板の陰極を用い、0.5~1.A/d㎡の電流密度で電解する。

• 陽極から溶解生成される水酸化アルミニウムに吸着され、浮上させて、次工程の電解槽で電解に発生する酸素や水素の気泡にて浮上させ機械的に除去する。

• 三井金属エンジニアリング株式会社にて1971年に開発された MEF電解浮上装置で、めっき工場の排水処理にて採用されている。

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まとめと今後の対応策 新カドミウム排水基準0.03mg/L遵守を目指して

• カドミウム排水基準値について 環境基準が強化され新基準値0.03mg/Lを審議中

• 暫定排水基準値について 各業種の排水濃度実態や排水処理技術等の動向等より、4業種が暫定排水基準の設定を要望、審議中。

溶融めっき業(溶融亜鉛めっきを行うものに限る)(暫定基準値:0.1mg/L)

• 現状の把握 自主的な環境影響調査(自主アセス)

めっき業の取組例や、全鍍連H17自主取組~H25超過事業者数の推移

• 排水処理方法の確立

• カドミウムフリー原料 2014/6/13 21