トンネル制御への知識工学の応用と ... - hitachi ·...
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特集 産業分野におけるエキスパートシステム ∪.D,C,〔る81.32.0る‥159.95〕‥る24.191.944-52:る81・533・58′13る
トンネル制御への知識工学の応用と効果App■icationoftheKnowledgeEngineer■ngtORoadTunnelControlandltsEffects
地域社会を結ぶ幹線道路綱として,大量の自動車交通需要を充足する高速道
路の役割は大きい。高速道路整備事業の順調な進捗(ちょく)によって,日本列
島を貫く縦貫道がほぼ完了して,近年は横断道の建設にその重心が移りつつあ
る。一方,山岳部の道路延長の増加に伴い,道路トンネルの数量も増加し,長
大化する傾向にある。道路トンネルに要求される課題としては,ドライバーに
対する安全確保と経済的な換気運転が挙げられる。このニーズはトンネルの長
大化すなわちトンネル設備の大規模化とともに,さらに弓重くなり,長大トンネ
ルでは安全確保と経済的な換気運転の双方を実現するための手段として,より
高度な制御機能が求められるようになってきた。
これにこたえて,知識工学を応用したトンネル換気制御システムを開発した。
知識工学的手法とファジィ制御手法を複合することによって,柔軟で高信頼度
な実時間制御エキスパートシステムを実現している。本システムは1988年3月
稼動開始以来,高い制御性とそれによる動力費用低減の稼動実績を得ている。
n 緒 言
自動車利用の増大に伴い,自動車用トンネルの建設が各地
で進められている。これらのトンネルでは,利用者の安全で
快適な環境を確保するために,トンネル内の空気の換気が必
須(す)である。機械換気の場合は,換気装置を適正に動作さ
せるために換気制御が必要とされるが,この換気制御の目的
は,必要かつ十分な換気風量を交通状況に応じた最小の消費
電力で供給することにある。特に,長大トンネルでの換気効
率の追求は,ランニングコストの低減に結びつき重要である。
従来の換気制御方式は,定量的な演算手法によって一定時間
先の交通量を予測し,この予測結果に基づいて換気すべき風
量を決定するものであった。しかし,トンネル内での汚染現
象に関する不確定性,特に乱流拡散効果,車両からの汚染物
質排出量の的確な計測の困難性を考えると,必ずしも定量的
制御が適切とは言いがたい。このようなトンネル内の空気汚
染現象の不確定性に対処するために,知識工学を応用したト
ンネル換気制御システムを開発した。
本稿では,知識工学応用換気制御システムの構成とその論
理構造を説明し,実稼動中の九州自動車道福智山トンネル
(3,600m),金剛山トンネル(2,200m)での稼動実績をもとに
知識工学応用の効果を述べる。
長滝清敬*
小辻 親**
八尋正和***
佐藤良幸***
大久保和敏****
井上春樹*****
∬如叩0打〃(郡Jαゐ才
C/zZゐ〟ざゐオ瓜)由わ才
止血α如z〟 n7ぁざγO
y∂ざゐわw々~j如上∂
肋z〝わざゐ才 0点〝∂ロ
肋γ打点才J〃∂〝e
凶 トンネル換気制御エキスパートシステム
2.1換気制御の概要と使命
トンネル換気制御システムの概要を図1に示す。トンネル
内には,汚染された空気の流れを出口に向かって加速するジ
ェットファン,およびトンネルの途中で汚染濃度が許容値を
超えないようにばい煙を除去する集じん機が設けられる。ト
ンネル内の汚染度はⅤⅠ(煙霧透過率)計,CO(一酸化炭素)計に
よって測定され,交通流計により大型車台数,小型車台数,
速度が測定される。
換気制御は,これらのセンサ情報により,排ガスによる汚
染発生量,車のピストン効果,またトンネル内の汚染度合い
を予測し,この汚染度合いに応じて集じん機ジェットフアン
に対し最適な換気分担量を指令するものである。換気制御の
使命は,汚染濃度が許容値を超えないこと,かつ動力費用が
ミニマムとなるような運転制御を行うことにある。従来は,
これを定量的な数式モデルによる制御方式で対応していたが,
トンネル内空気の乱流現象,車両からの汚染発生など,正確
につかめない不確定要素が多いため,電力消費ミニマムとな
る最適制御の実現が困難であった。その解決策として,不確
定要素が多いプロセスという点に着目して,知識工学を応用
した換気制御システムを開発した。
*日本道路公団止Jム建設局 **トⅠ本道柊公川手納棺理局 ***日_、ンニ製作所大ふか工場 ****Lト丁仁彗望作所機竜一■i様本部*****
Hlチエンシニアリング株式会社
25
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726 日立評論 VOし.了INo.8(1989-8)
制御使命
・制御目標値(温:4認諾以下)●動力費用の低減
T‾‾‾‾‾‾「
1
11
空気の流れを加速 l
ジェットフアン
敬し /
ばい煙除去
集じん機
Jコ
‾「
ll
匂ア
夏蚕お換気設備へ
あ′
V一三J////
CO計
∨値,CO億を測定しトンネル
る。
集Lん機,ジェットフアンに対し
最適な換気分担量を指令する。
H旧IC-V90/25
交通流計
交通涜を測定L汚染発生量
ピストン効果を予測する∩
注:略語説明 Vl(煙霧透過率),CO(一酸化炭素)
図lトンネル換気制御システムの概要 トンネル内の汚染濃度が許容値を超えないように,ジェットファンと集じ
ん機によって換気を行っている。
2.2 開発課題
開発課題を図2に示す。トンネル内の空気汚染現象の非線
形性,さらに乱流現象や汚染負荷量の正確な把握の困難さと
いった不確定性に対処するために,定性的推論を取り込んだ。
今回,知識工学をオンライン制御に初めて適用するという
点での不安解消策として,従来の定量形制御モデルを組み込
み,複合推論形のエキスパートシステムを構成した。
また,知識処理システムには高い保守性,成長性が要求さ
れるが,これに対してはEWS(EngineeringWorkStation)を
活用して,制御論理・知識を容易に検証し更新できるように
した。
課 題
非線形・不確定なプロセスに
対する高品質な制御の実現
対 応
定性的推論モデルによる制御
論理の構築
知識工学導入に対する不安解
消(Alをオンライン制御へ初め
て適用) 従来形定量モデルの組み込み
保守性・成長性の高いシステ 制御論理の検証・更新機能の
ムの構築 充実
注:略語説明 Al(Artlficiallnte川gence:人工知能)
図2 開発課題 トンネル内の空気汚染現象の非線形性に対処する
ため,定性的推論モデルを導入した。
26
2.3 制御エキスパートシステムの論理構造
制御論理め全体構造を図3に示す。
制御の品質の決定要因はその論理構造にあるが,ここでは
トンネル内の汚染発生の予測,最適な操作手段の選択といっ
たプロセスを採った。
その特長は,次のとおりである。
(1)汚染発生が不確実な要因によって定まることから,種々
の予測モデルを並行的に演算して,予測モデルの演算結果の
うち最適なものを状況に応じて選択採用できる構造とした。
(2)これらの汚染の予測モデルの一つとして,不確定な現象
の記述をできるだけ的確に行うために,現象に対する定性的
な知見を集約した,いわゆる定性的推論モデルを導入した。
(3)予見ファジィ制御の論理構造を基礎に置くトンネル換気
制御の論理を開発した。予見ファジィ制御は,種々な操作実
の仮定のもとに制御対象の将来状態を予測し,この中から最
適な操作案を選択することを基本としている。このために,
非線形現象への適合度が高い制御論理と言える。換気分担量
決定での予見ファジィ制御の概念を図4に示す。
これらの制御論理の記述は,制御用計算機HIDICのための
知識処理システム構築用ツールEUREKA-Ⅱ(Electronic
UnderstandingandReasoningbyKnowledgeActivation-
Ⅱ)を用いた。このような知識処理言語によって制御論理を記
述することは,さまぎまな知識を容易に計算機に組み込むこ
とができるという利点がある。
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入力データ
交 通 量
自 然 風
機械換気力
汚染度合い
(Vl,CO)
推論処理
斉家
蚤垂漸形
′予各壊
普奉幣磯
EUREKA一ⅠⅠ
プラント(プロセス)
出力データ
制御指令
●ジェットフアン
台数
●集じん磯風量
注:略語説明 EUREKA一ⅠⅠ(ElectronicUnderstandingand Reaso川ng by
KnowledgeActivation一ⅠⅠ:知識処理システム構築支援ツール)
図3 制御論理構造図 複合推論形の論理構造にして,中間推論結
果を見れるなど可視性を高め,信頼度の高い構成にLてある。
1.0
CO
1.0
0.0
Vl
竺]100(%)0.0
C†
50
満足度
1.0
0.0
トンネル制御への知識工学の応用と効果 727
2.4 ハードウェア構成
本システムのハードウェ、ア構成を図5に示す。実時間制御
実行系として,HIDIC一V90/25を適用し,これに知識処理シス
テム構築および実行ツール,EUREKA-Ⅱを組み込んで,換
気の自動制御を行わせている。一方,知識の検証・向上用に
はEWS ES-330を適用し,制御実行系とド∑Networkで接続
し,知識の変更・更新を容易に行える構成とした。EWSには
シミュレータを組み込み,新たな知識を追加する場合や変更
する場合に,実測データ入力を用いたシミュレーションによ
って検証した上で,実行系の知識を更新するようにして信頼
度を高めてある。
2.5 シミュレーションと実稼動システムでの運転結果
制御エキスパートシステムは,既存知識の洗練(成長),新
しく発見された知識の追加を容易に行えることが必要である。
これによって,より高度で信頼性の高いシステムに近づいて
ゆ〈。また,稼動後でも,実際の制御がどのように行われて
いるかをミクロ的,マクロ的に知ることが重要である。特に,
1.0
消費電力量
0.0し
0
1.Ol
VG
100 (ppm)
//////\\\ご\/
/
最適解
/
/
ノ
/
/
\
\
\\
\ \
\ \
\
\
換気機切換過渡電力量
集じん磯操作風量
ヽ
\ \
\
\
\
\
\
\\\\\ \
\ \
0
10
0.0
汚染分布
0.0
一5 -4 -3 -2 -1 0 +1 +2 +3 +4 +5
500 1,000
二之「
100 200
VG
ジェットフアン操作台数
注:略語説明VG(大変良い),M(普通),Cf(快適である),L(大きい),S(小さい),G(良い)
図4 換気分担量決定ファジィ推論の概念図 見通しの良さを示すVl値や消費電力量など,複数の条件が同時に良好となるように,換気機の
操作量をファジィ推論で決めている。
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728 日立評論 〉OL.了1No.8(1989-8)
集じん機
芳;夢
ジェットファン
(7
トラフィック
カウンタ
∨信十
CO計
S〕PERRO+
卜∑ネットワーク
トーステーション
回
V90/25制御実行系
田
卜一ステーション
知識ベースローディング
[コ≦⊆≡≡≡享亮
ES-330
知識開発系
注:略語説明 SUPERROL(遠方監視制御装置)
図5 ハードウエア構成図 実時間制御実行系とLて制御用計算機=■D■C-V90′・25を,知識開発系としてEWS(Engineer-ing Wo「k Statio=)ES-330を適用して,知識の変更・更新を容易にLている「.
本システムのように星夜稼動の実時間エキスパートシステム
では,稼動後の運転実績を解析することが重要であり,供用
開始後もその解析結果に基づく新たな知識を容易に反映でき
るような柔軟なシステムであることが必要である。
本システムでは,知識開発時には,EWSを用いてシミュレ
ーションを主体に知識の獲得・検証を行い,また稼動後も実
制御結果など必要な情報を収集して解析を行えるようにして
ある。シミュレーション画面例を図6に示す。EWSが持つマ
ルチウインドウ,マルチビュー機能によってトレンドグラフ
の拡大・縮小が行え,シミュレーション結果の解析を容易に
2S
図6 シミュレーション画面例
EWS(ES-330)のマルチウイン
ドウ機能により,知識ベースの開
発・検証が容易に行える。
している。
2.5.1検証手段
今回の知識工学応用制御モデルの効果性を確認するために,
従来の定量形制御モデルとの制御結果比較を行った。トンネ
ル換気制御システムの稼動実績の評価を定量的に行うことは
困難である。それは交通流推移,自然状況がまったく同じ状
態で再現しないからであり,したがって同一条件で二つのモ
デルを動作させることが,実質的に不可能であるからである。
今臥 システムの効果検証については,上記問題を踏まえ下
記方法で実施した。
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(1)シミュレーション
知識工学モデルと定量形制御モデルに,それぞれ同一の実
測交通量データを入力として与え,シミュレーションを行い
制御結果を比較した。
(2)実稼動システムでの運転
1988年3月31日開通の九州自動車道福智山トンネル,およ
び金剛山トンネルで,知識工学モデルによる換気運転を開始
した。そして,効果検証のために7月23日から29日までの7
日間は,定量形制御モデルによって換気運転を行った。
ここでは,福智山上りトンネルの運転結果を例に,知識工
学モデルの効果性を紹介する。なお,比較データとしては,
知識工学モデルによる運転期間の中から,定量形制御モデル
の運転日と交通量推移が類似している7日間(6月18日,19
日,20日,24日,7月11日,15日,8月1日)を選択した。
2.5.2 汚染予測の精度
図7は,知識工学モデルの制御性能を評価するために,汚
染予測の精度を比較したもので,実稼動システムでのⅤⅠの予
測値と実測値の相関を示している。定量形制御モデルはばら
つきが大きいのに対して,知識工学モデルの場合は相関関係
が高く,予測精度が高いことがわかる。予測精度の高さによ
って,換気磯を的確に運転制御できるようになる。
2.5.3 シミュレーションによる制御結果と評価
(1)交通量
図8は,入力として与えた交通量推移であり,現地での実
測データを使用した。
(2)ⅤⅠ値の結果
ⅤⅠ値の推移を図9に示す。知識工学モデルは,Ⅴ柑標値域
40~70%内で安定しており,交通量増減の影響があまり見ら
100
彗†些1
芸 50
吐こ=>
暮■
相関係数=0.779
●●.!:
r;u
0 50
〉l実測値(%)
(a)知識工学モデル
図7 実稼動システムでのVl予測~実測相関図
高いことがわかる。
100
トンネル制御への知識工学の応用と効果 7.29
れない。これに対して定量形制御モデルは,午前7時から9
暗までの交通量の急激な立ち上がりに追従できずに,ⅤⅠ許容
下限値をしばしば下回ってしまっている。また,ⅤⅠ振幅も大
であり不安定である。
(3)換気機運転結果
換気機の運転結果を図tOに示す。定量形制御モデルによる
結果は,交通量の変動に追従して起動・停止を頻繁に繰-)返
している。それに対して知識工学モデルの場合は,換気機の
起動頻度を考慮して総合的な判断を行っているので運転がス
ムーズである。
2.5.4 実稼動システムでの運転結果と評価
(1)ⅤⅠ低推移と換気機運転の比較
前述したように,実稼動システムではまった〈同一の条件
下で,二つのモデルを動作させることが不可能なため,条件
が類似した日を選んで比較した。すなわち交通量,平均速度
のパターンがほぼ同一で,自然風,天候なども近似している
6月24日(知識工学モデル)と7月26日(定量形制御モデル)の
制御結果を比較した。
(a)交通量
おのおのの日の交通量の推移を国‖に示す。
(b)ⅤⅠ値の推移結果
ⅤⅠ値の推移結果を図12に示す。ⅤⅠ値が許容値を超えない
ことを第一の制御目標としているため,両者ともⅤⅠ許容値
下限値以上を維持しており良好である。知識工学モデルの
ほうは,定量形制御モデルに比べてⅤⅠ値が安定しているの
がわかる。
(c)換気機運転結果
換気機の運転結果を図13に示す。定量形制御モデルの場
100
堅
彗 50
禁
吐>
√‥・..-‖.′・.‥
‥・㌧Lギ=-‥毒】‥詩-J--シ
ー.一‥r+引≡1.∴川中-㍉㌔∴∵・:
●
l・川㍗.れ.‖.‥【訂穿誉‥守‖-.hTt
∫.÷【‥●1L一望川毎…発≡…≡1.一‖だ・.
「
.・【いl貞.‡TJ-H-‖≡…叩M-】琵琶-.1.・
:-‥●モ∴.〓だ川汽川-引慧蓋‖琶ほ‥-・.
.J●・ノ「l貞一川≡芳琵-T.I.
‥-.・.√■∵.…でリー一存■
.-
:-r∵㌧・.イ.子.‥芳
一
■●一一_一●
-
●
●
■
相関係数=0.176
50
Vl実測値(%)
(b)▼定量形制御モデル
100
知識工学モデルのほうがVl予測値と実測値の相関が高く,予測精度が
29
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730 日立評論 VOし.71No.8(柑89-8)
0
0
0
5
(吹の\和)岬照桝
、型車台数
大型車台数
′・-+
区 間:九州自動車道
若宮IC-八幡IC
期 間:昭和59年の
年間平均データ
交通量:27,051台/日
2 4 6 8 10 12
時 刻 吉
注:略語説明IC(インターチェンジ)
図8 シミュレーションに使用Lた交通量データ 交通量の変動が大き〈,午前7時~9時
の間が急激に増加している。
ハリ
O
O
O
n)
0
0
0
∩ブ
OU
7
6
5
4
(訳)一>
2 4 6 8 10 12
時 刻 g
(a)知識工学モデル
図9 シミュレーションによるVl値の結果
している。
100
0
5
(巾)東和八トトエヽ・Hへ
05
(訳)輩ヾ+蛾
r2 4 6 8 10 12
時 刻 r
(a)知識工学モデル
注:-運転中ジェットファン台軌--
¶集じん機2風量
集じん機1風量,
30
0
0
0
0
0
0
0
0
9
8
7
6
5
4
(訳‥二
>
2 4 6 8 10 12
時 刻 亡
(b)定量形制御モデル
知識工学モデルは,Vl目標値域40~70%内で安定
00
0
5
(巾)載和人トト+>Hへ
05
(訳)単ヾ]蛾
川l
▲山
t】
F
Ll
llしIl
P
=貞畏
l
門,】I
とl
■節
+
1
≦:附…■′J・j,
l
l】L■
J
しr
l l
l
\/
2 4 6 8 10 12
時 刻 己
(b)定量形制御モデル
注:一運転中ジェットファン台数,廿-一集じん機1風量,
一集じん機2風量
図川 シミュレーションによる換気機運転結果 知識工学モデルは,換気機の起動・停止が少なくスム
ーズに運転されている。
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合,8時以降の交通量の変動に追従して,換気機の切り替
え動作を頻繁に繰り返している。それに対して知識工学モ
デルの場合は,前もって換気機の運転を行うなど,長期予
測も勘案した人間の思考に近い形の総合的判断によってい
るので,必要最少限の適切な運転となっている。その結果,
前述のようにⅤⅠ値も安定しており,また消費電力量も大き
く低減している。
(2)ⅤⅠ値の度数分布
制御目標項目であるⅤⅠ実測値の度数分布を図14に示す。こ
れは制御システムの性能を示すもので,許容値を超えない範
囲で経済運転を行うという意味で,ⅤⅠの許容値(40%)に近い
範囲の分布が大きいほど制御性能が優れていると言える。定
量形制御モデルの場合は,ⅤⅠ値60%近傍の比較的高い値に大
きく分布している。これに対し知識工学モデルの場合は,ⅤⅠ
(6月24日)
交通量:7,727台/日
大型車混入率:39.8%100
空
匝50
せト
ノ、型車台数
4 8 12 16
時 刻 亡
(a)知識工学モデル
図l】実稼動システムでの交通量推移
(6月24日)
100
90
0
0
∩)
0
0
8
7
6
5
4
(訳)一>
30
20
10
20
トンネル制御への知識工学の応用と効果 731
値50~60%に分布が広がっており,許容値近くでの経済運転
を図っていることがうかがえる。この結果,次に示すように
消費電力量が大きく低減している。
(3)消費電力量比較
経済性を評価するための目安として,車両1台,トンネル
1km当たりに要するEO(電力量)(kWh/台・km)を比較した。
知識工学モデルと定量形制御モデルのEQは次のようになる。
EQ(知識工学モデル)
=9漣〔伯(kWh)/6万2,888(台)・3.588(km)
=0.0434kWh/台・km
E¢(定量形制御モデル)
=1万3,700(kWh)/6万4,246(台)・3.588(km)
=0.0594kWh/台・km
知識工学モデルは,定量形制御モデルに対し約26・9%の省
(7月26日)
交通量:8,979台/日
大型車混入率:35.1%100
重厚50
一帆
0
大型車台数
小型車台数
\
0 4 8 12 16 20
時 刻舌
(b)定量形制御モデル
交通量推移が類イ以Lている日を選んだ。
100
90
(7月26日)
平均値=61.7%
標準偏差=7.0%
‾0 4 8 12 16 20
時 刻 ~
(a)知識工学モデル
図12 実稼動システムでのVl値の結果
0
0
0
0
0
8
7
6
5
4
(訳)一>
30
20
10
平均値=62.3%
標準偏差=8.3%
0 4 8 12 16 20
時 刻 g
(b)定量形制御モデル
知識工学モデルのほうがVl値が安定している。
31
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732 日立評論 VOL.71No.8(1989-8)
100
0
5
(巾)意中八トト+>Hへ
0
(訳)輩ヾ+蛾5
(6月24日)
消費電力量=1,800(kWh)
注:一運転中ジェットファン台数
一集じん機1風量
‾集じん機2風量
8 12 16 20
時 刻 g
(a)知識工学モデル
図13 実稼動システムでの換気機運転結果
運転となっている。
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50
40
表30
意
軸 20
10
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知識工学モデル
んd′′/
0(巾)嶽和人トトエヽ一Hへ
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(訳)撃ヾ]琳
(7月26日)
消費電力量=2,300(kWh)
注:-運転中ジェットフアン台数
一集じん機1風量
一集じん機2風量
U 4 8 12 16 20
時 刻 己
(b)定量形制御モデル
知識工学モデルは,長期予測を勘案Lた総合的判断によって,必要最少限の
定量形制御モデル
′′ lI
_亡ゝl亡==]
80 90 10010 20 30 40 50 60 70
Vl値(%)
図14 Vl値の度数分布 知識工学モデルは,許容値40%近くに分布
が広がっており,経済運転を図っていることがうかがえる。
エネルギーが達成されている。
日 結 言
道路分野でのエキスパートシステムとして,トンネル換気
制御システムへの応用例を紹介した。
トンネル内の汚染現象の不確定性に対する頑強性をねらい
として,■知識工学とファジィ理論を導入したトンネル換気制
御システムを開発した。知識工学応用の制御モデルと従来の
定量形制御モデルに対して,シミュレーション比較実験を行
い,換気機運転の柔軟性など知識工学応用の効果を確認した。
また,供用中の九州自動車道福智山トンネルで,両制御モデ
ルによる実稼動実験を行い,その解析結果によって適切な換
32
気運転指令,安定したⅤⅠ値推移,省エネルギー効果を検証す
ることができた。
最近の知識処理技術・ネットワーク技術の進展と道路分野で
の合理化のニーズとがあいまって,今後,さらに機能の高度化
が要求されていくものと思われる。これらのニーズにこたえるた
め,知識工学,ファジィ理論,ニューロネットなどの新技術に取
り組み,より高度なエキスパートシステムを開発していきたい。
参考文献
1)社団法人日本道路協会:道路トンネル技術基準(換気編)・同解
説(昭60-12)
2)J・deKleer,etal∴QualitativePhysicsBased。。C。。_
fluences,ArtificialIntelligence.24.1(19朗)
3)K・D・Forbus=Qualitative Process Theory Artificial
Intelligence.24.1(1984)
4)古川,外ニメンタルモデルと知識表現,共立出版(昭61)
5)宮本:Fuzzy制御とその応用,計測と制札Vol.25,N。.5(昭
61)
6)小林:多目的意志決定一理論と応用-ⅤⅠ,システムと制御,
Vol.31,No.4(昭62)
7)船橋・外:知識処理システムとその構築支援ツール,日立評論,
70,5,547~554(昭63-5)
8)八尋,外:高速道路集中監視制御システム,日立評論,70,5,
489~494(昭63-5)
9)ファジィ制御の実用本格化一自律ロボや自動車などが先駆,日
経メカニかレ,1988.7.11,28~36(昭63-7)
10)寺内,外:トンネル換気制御における知識工学の導入,日本道
路公団技術情執 第93号,30~36(昭63-7)
11)長滝,外:トンネル換気制御への知識工学の応用と効果,電気
学会,TER-88-27(昭63-12)
12)′J、辻,外:トンネル換気制御における知識工学の応用と効果,
日本道路公団技術情報,第98号,(平元一7)