ミレニアム開発目標進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の...

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© Victor Diaz Kintanar/UNDP Picture This ミレニアム開発目標 Millennium Development Goals ( MDGs )

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Page 1: ミレニアム開発目標進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の

© Victor Diaz Kintanar/UNDP Picture This

ミレニアム開発目標

Millennium Development Goals (MDGs)

Page 2: ミレニアム開発目標進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の

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今日われわれが直面する主たる課題は、グローバリゼーションが世界のすべての人々にとって前向きな力となるように確保することである。

We believe that the central challenge we face today is to ensure that globalization becomes a positive force for all the world's people.

国連ミレニアム宣言

2000年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連ミレニアム・サミットに参加した147の国家元首を含む189の国連加盟国代表が、21世紀の国際社会の目標として、より安全で豊かな世界づくりへの協力を約束する「国連ミレニアム宣言」を採択しました。この宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットでの開発目標をまとめたものが「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」です。MDGsは国際社会の支援を必要とする課題に対して2015年までに達成するという期限付きの8つの目標、21のターゲット、60の指標を掲げています。

ミレニアム開発目標(MDGs)とは

国際社会の共通目標としてミレニアム開発目標(MDGs)が設定されて以降、世界の国 と々人々はその達成に向けて取り組んできました。世界的に見ると、1日1.25ドル未満で生活する人々の割合が半減し、小学校で男女の就学率がほぼ同数になり、マラリアによる死亡者数が約3分の1減少するなど、既に多くの分野で進捗がありました。一方、サハラ以南アフリカでは多くの目標で進捗が遅れています。また、都市部と農村部の格差や貧富の格差が拡大するなど、課題も多く残っています。

国連は、これまで著しい進捗を遂げた目標の成功体験を踏まえ、行動を加速化するため、国際社会に対して、保健、教育、エネルギー、衛生設備への投資拡大、女性や女子のエンパワーメント、最も脆弱な人々への焦点、援助コミットメントの継続、政府から草の根のグループまでの活動の再活性化を呼びかけています。

2014年、国連総会議長主催のMDGs特別イベントが開催され、2015年の達成期限に向けてコミットメントを新たにしMDGs進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の開発目標)*を採択することになっています。

*ポスト2015開発アジェンダの詳細については、5ページをご覧ください。

ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)極度の貧困と飢餓の撲滅Eradicate extreme poverty and hungerターゲット1‒A2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させるターゲット1‒B女性、若者を含むすべての人々の、完全かつ生産的な雇用、ディーセント・ワーク(適切な雇用)を達成するターゲット1‒C2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる

普遍的な初等教育の達成Achieve universal primary educationターゲット2‒A2015年までにすべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする

ジェンダー平等の推進と女性の地位向上Promote gender equality and empower womenターゲット3‒A2005年までに可能な限り、初等・中等教育で男女格差を解消し、2015年までにすべての教育レベルで男女格差を解消する

乳幼児死亡率の削減Reduce child mortalityターゲット4‒A2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1にまで引き下げる

妊産婦の健康状態の改善Improve maternal healthターゲット5‒A2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に引き下げるターゲット5‒B2015年までにリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の完全普及を達成する

HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止Combat HIV/AIDS, malaria and other diseasesターゲット6‒A2015年までにHIV/エイズのまん延を阻止し、その後、減少させる

ターゲット6‒B2010年までに必要とするすべての人がHIV/エイズの治療を受けられるようにするターゲット6‒C2015年までにマラリアやその他の主要な疾病の発生を阻止し、その後、発生率を下げる

環境の持続可能性を確保Ensure environmental sustainabilityターゲット7‒A持続可能な開発の原則を国家政策やプログラムに反映させ、環境資源の損失を阻止し、回復を図るターゲット7‒B2010年までに生物多様性の損失を確実に減少させ、その後も継続的に減少させるターゲット7‒C2015年までに安全な飲料水と衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減するターゲット7‒D2020年までに少なくとも1億人のスラム居住者の生活を大きく改善する

開発のためのグローバルなパートナーシップの推進Develop a global partnership for developmentターゲット8‒A開放的で、ルールに基づく、予測可能でかつ差別的でない貿易と金融システムを構築するターゲット8‒B後発開発途上国(LDCs)の特別なニーズに取り組むターゲット8‒C内陸開発途上国と小島嶼開発途上国(太平洋・西インド諸島・インド洋などにある、領土が狭く、低地の島国)の特別なニーズに取り組むターゲット8‒D国内および国際的措置を通じて途上国の債務問題に包括的に取り組み、債務を長期的に持続可能なものとするターゲット8‒E製薬会社と協力して、途上国で人々が安価で必要不可欠な医薬品を入手できるようにするターゲット8‒F民間セクターと協力して、特に情報・通信での新技術による利益が得られるようにする

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*最新のターゲットや指標はウェブサイトUnited Nations site for the MDG Indicators(http://mdgs.un.org/unsd/mdg/Default.aspx)でご確認いただけます。2000年9月、国連ミレニアム・サミットに出席した各国の首脳ら(当時) ©UN Photo/Terry Deglau 2010年9月、ニューヨーク国連本部でのMDGs首脳会合の様子

©UN Photo/Eskinder Debebe

Page 3: ミレニアム開発目標進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の

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今日われわれが直面する主たる課題は、グローバリゼーションが世界のすべての人々にとって前向きな力となるように確保することである。

We believe that the central challenge we face today is to ensure that globalization becomes a positive force for all the world's people.

国連ミレニアム宣言

2000年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連ミレニアム・サミットに参加した147の国家元首を含む189の国連加盟国代表が、21世紀の国際社会の目標として、より安全で豊かな世界づくりへの協力を約束する「国連ミレニアム宣言」を採択しました。この宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットでの開発目標をまとめたものが「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」です。MDGsは国際社会の支援を必要とする課題に対して2015年までに達成するという期限付きの8つの目標、21のターゲット、60の指標を掲げています。

ミレニアム開発目標(MDGs)とは

国際社会の共通目標としてミレニアム開発目標(MDGs)が設定されて以降、世界の国 と々人々はその達成に向けて取り組んできました。世界的に見ると、1日1.25ドル未満で生活する人々の割合が半減し、小学校で男女の就学率がほぼ同数になり、マラリアによる死亡者数が約3分の1減少するなど、既に多くの分野で進捗がありました。一方、サハラ以南アフリカでは多くの目標で進捗が遅れています。また、都市部と農村部の格差や貧富の格差が拡大するなど、課題も多く残っています。

国連は、これまで著しい進捗を遂げた目標の成功体験を踏まえ、行動を加速化するため、国際社会に対して、保健、教育、エネルギー、衛生設備への投資拡大、女性や女子のエンパワーメント、最も脆弱な人々への焦点、援助コミットメントの継続、政府から草の根のグループまでの活動の再活性化を呼びかけています。

2014年、国連総会議長主催のMDGs特別イベントが開催され、2015年の達成期限に向けてコミットメントを新たにしMDGs進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の開発目標)*を採択することになっています。

*ポスト2015開発アジェンダの詳細については、5ページをご覧ください。

ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)極度の貧困と飢餓の撲滅Eradicate extreme poverty and hungerターゲット1‒A2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させるターゲット1‒B女性、若者を含むすべての人々の、完全かつ生産的な雇用、ディーセント・ワーク(適切な雇用)を達成するターゲット1‒C2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる

普遍的な初等教育の達成Achieve universal primary educationターゲット2‒A2015年までにすべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする

ジェンダー平等の推進と女性の地位向上Promote gender equality and empower womenターゲット3‒A2005年までに可能な限り、初等・中等教育で男女格差を解消し、2015年までにすべての教育レベルで男女格差を解消する

乳幼児死亡率の削減Reduce child mortalityターゲット4‒A2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1にまで引き下げる

妊産婦の健康状態の改善Improve maternal healthターゲット5‒A2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に引き下げるターゲット5‒B2015年までにリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の完全普及を達成する

HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止Combat HIV/AIDS, malaria and other diseasesターゲット6‒A2015年までにHIV/エイズのまん延を阻止し、その後、減少させる

ターゲット6‒B2010年までに必要とするすべての人がHIV/エイズの治療を受けられるようにするターゲット6‒C2015年までにマラリアやその他の主要な疾病の発生を阻止し、その後、発生率を下げる

環境の持続可能性を確保Ensure environmental sustainabilityターゲット7‒A持続可能な開発の原則を国家政策やプログラムに反映させ、環境資源の損失を阻止し、回復を図るターゲット7‒B2010年までに生物多様性の損失を確実に減少させ、その後も継続的に減少させるターゲット7‒C2015年までに安全な飲料水と衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減するターゲット7‒D2020年までに少なくとも1億人のスラム居住者の生活を大きく改善する

開発のためのグローバルなパートナーシップの推進Develop a global partnership for developmentターゲット8‒A開放的で、ルールに基づく、予測可能でかつ差別的でない貿易と金融システムを構築するターゲット8‒B後発開発途上国(LDCs)の特別なニーズに取り組むターゲット8‒C内陸開発途上国と小島嶼開発途上国(太平洋・西インド諸島・インド洋などにある、領土が狭く、低地の島国)の特別なニーズに取り組むターゲット8‒D国内および国際的措置を通じて途上国の債務問題に包括的に取り組み、債務を長期的に持続可能なものとするターゲット8‒E製薬会社と協力して、途上国で人々が安価で必要不可欠な医薬品を入手できるようにするターゲット8‒F民間セクターと協力して、特に情報・通信での新技術による利益が得られるようにする

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*最新のターゲットや指標はウェブサイトUnited Nations site for the MDG Indicators(http://mdgs.un.org/unsd/mdg/Default.aspx)でご確認いただけます。2000年9月、国連ミレニアム・サミットに出席した各国の首脳ら(当時) ©UN Photo/Terry Deglau 2010年9月、ニューヨーク国連本部でのMDGs首脳会合の様子

©UN Photo/Eskinder Debebe

Page 4: ミレニアム開発目標進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の

ポスト2015 開発アジェンダに向けた取り組み

MDGs達成に向けたUNDPの取り組み

ポスト2015 開発アジェンダに向けた取り組み

※1 国連システムとは、国連憲章が定める6つの主要機関:総会、事務局、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所に加えて、国連総会の補助機関や専門機関を含みます。

2011年には全国の6都市9会場でMDGs写真展を開催しました。東京会場ではUNDPの紺野美沙子親善大使によるMDGs達成に向けての講演会なども行われました。

2014年3月にスイスで開催された「第11回貧困との闘い」。世界からスター選手と、2万1000人のファンが集いました。 ©KEYSTONE/Peter Klaunzer

2011年に日本政府が主催し、UNDPなどが共催したMDGsフォローアップ会合であいさつをするヘレン・クラークUNDP総裁。本会合には110か国以上の代表、国際機関、NGO、民間セクターの代表者など計300人以上が参加しました。

2013年9月発刊の『進捗の加速、成果の維持』。MAFが導入国でどのように機能しているかを検証している。

2012年12月にケニアで開催されたポスト2015開発アジェンダに関するアフリカン・ユース・カンファレンス

©UN HABITAT Youth programme

2012年5月に東京でUNDP等が主催した、「成長と雇用」に関するテーマ別協議会。世界各国から約80人の有識者が参加しました。

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ミレニアム開発目標(MDGs)の達成には、各国政府だけでなく、国際機関、民間セクター、財団、教育・研究機関、非政府組織(NGOs)を含む市民社会、市民一人ひとりによる貢献が必要です。国連システム※1のグローバルな開発機関として、177の開発途上国・地域で活動をする国連開発計画(UNDP)は、国連事務総長の要請を受け、MDGsの「キャンペーン・マネジャー」兼「スコア・キーパー」(モニタリング)を務めています。UNDPは、MDGs達成のために、世界中でMDGsへの関心を高め、各国政府に対して専門的な知見に基づくプロジェクト支援を行い、各国における進捗状況をモニターするなど、MDGs達成に向けて多様な取り組みをしています。主な活動は以下の通りです。

国連では現在、MDGsの達成期限である2015年以降の開発目標「ポスト2015開発アジェンダ」の策定を進めております。2015年9月の国連総会首脳級サミットで合意文書が採択され、2016年1月から次の15年間のグローバルな目標となる予定です。

ポスト2015開発アジェンダ策定においては、MDGsとその教訓、新たな課題などを踏まえた上で、多くの意見を吸い上げながら協議を行っております。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が設置したポスト2015開発アジェンダに関する国連システム・タスクチームは国連・経済社会局(UNDESA)とUNDPが共同議長を務め、全ての国際機関から支援を得ております。加盟国、市民社会、教育・研究機関、民間企業を含む様々なステークホルダーとの協議を通し、ポスト2015開発アジェンダに向けて国連全体でのビジョンと道筋を策定し、報告書『私たちが望む未来の実現に向けて(Realizing the Future We Want for All)』をまとめました。

UNDPは国連開発グループ(UNDG)の他の国連機関と協働して、世界各国で約100の国別・テーマ別協議会の開催支援も行いました。この協議結果は、国連が実施し、世界から約520万人の一般市民が参加するグローバルな調査「MY World」等の結果とともに報告書『100万人の声:私たちが望む未来(A Million Voices: The World We Want)』にまとめられました。そのほか、潘基文事務総長が2012年に設置した、世界の有識者27人で構成されるポスト2015開発アジェンダのハイレベル・パネルでも協議が行われ、2013年5月に報告書『新たなグローバル・パートナーシップ(A New Global Partnership)』が事務総長に提出されました。これら一連の取り組みや報告書はいずれも、ポスト2015開発アジェンダ策定のための協議に役立てられております。

国連持続可能な開発会議(リオ+20)での合意に基づく持続可能な開発目標(SDGs)の策定を担う政府間作業部会とも連携を取っております。同作業部会は2014年7月、人々の生活を改善し、将来世代のために地球を守ることを目的に、経済的、社会的、環境的側面から取り組む17の目標と169のターゲット案を国連総会に提出しました。潘基文事務総長はこれらを受け、同年12月に統合報告書を発表しています。

ポストMDGs開発アジェンダ策定に参加してみよう!オンライン上で、ポスト2015に必要と思われる目標を選択方式で投票できる「MY World」(http://bit.ly/myworldjp) および、ポスト2015開発アジェンダに関する情報を紹介し、オンライン上で意見、提言できるプラットフォーム「私たちが望む未来2015」は、誰もが参加できます。

包括的な開発 各国政府と協力し、MDGsの達成に向けた国家プログラムを実施

UNDPはMDGsを達成するために各国政府と協力して、社会的弱者の参加機会を拡大し、生活を向上できるような包括的開発プログラムを支援しています。安全な水や教育へのアクセスなど社会インフラの整備を進めると共に、貧困対策、雇用戦略、セイフティネット構築などの政策策定において社会のあらゆる層が恩恵を受けられるように、専門的な見地から助言をしております。

各国の対応力の強化 危機予防と復興、気候変動、経済危機の影響分析と対策を考慮し、各国のMDGs達成に向けた進捗が後退しないように支援

UNDPの支援は、危機予防と復興、気候変動、経済危機の影響分析と対策などの分野において各国政府がMDGsの進捗を最大限に持続できるように考慮されています。自然災害などの外的ショックに直面した国で、政府機関と人々がその危機に対応できるように能力強化をしています。

アドボカシー MDGsとその重要性が世界中で認識されるよう、啓発キャンペーンを通じて貢献

UNDPはMDGsが世界中で認識されるよう、啓発キャンペーンを実施しています。例えば、UNDP主催のサッカー・チャリティー試合「貧困との闘い(Match Against Poverty)」は、UNDP親善大使のロナウド選手とジダン選手が中心となり、2003年からスペイン、ギリシャなど世界各地で計11回開催されています。貧困をはじめ世界の課題への意識を高めると共に、収益金はMDGs達成や災害復興のために使われています。

各国のMDGsの進捗状況を包括的に評価し、2015年の達成期限に向けた戦略の策定・実施を支援戦略策定と評価

UNDPは、MDGs達成に向けた進捗状況を評価・分析し、各国政府や国際社会に対し、MDGs達成に欠かせない戦略・政策提言をしています。UNDPは、各国のMDGs進捗に影響を及ぼしている原因を特定し、解決することでMDGs進捗を加速させるツール「MDG加速フレームワーク(MAF)」を開発しました。MAFは特に社会的に弱い人々のニーズを重視し、不均等な進捗の主要因である「不平等」に対する政府の取り組みを支援しています。2010年に10か国で試験導入後、これまでに50か国以上でMAFに基づくプロジェクトを実施しています。その成果は報告書『進捗の加速、成果の維持(Accelerating Progress, Sustaining Results )』をご覧ください。

また、UNDPはMDGs達成のための資金調達など、先進国からのアプローチが円滑に進んでいるかをモニターするMDGs ギャップ・タスクフォースの共同議長を2007年から務め、国際社会全体で取り組むべき事項を協議し、毎年、『MDG Gap Task Force Report 』を発刊しています。

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ポスト2015 開発アジェンダに向けた取り組み

MDGs達成に向けたUNDPの取り組み

ポスト2015 開発アジェンダに向けた取り組み

※1 国連システムとは、国連憲章が定める6つの主要機関:総会、事務局、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所に加えて、国連総会の補助機関や専門機関を含みます。

2011年には全国の6都市9会場でMDGs写真展を開催しました。東京会場ではUNDPの紺野美沙子親善大使によるMDGs達成に向けての講演会なども行われました。

2014年3月にスイスで開催された「第11回貧困との闘い」。世界からスター選手と、2万1000人のファンが集いました。 ©KEYSTONE/Peter Klaunzer

2011年に日本政府が主催し、UNDPなどが共催したMDGsフォローアップ会合であいさつをするヘレン・クラークUNDP総裁。本会合には110か国以上の代表、国際機関、NGO、民間セクターの代表者など計300人以上が参加しました。

2013年9月発刊の『進捗の加速、成果の維持』。MAFが導入国でどのように機能しているかを検証している。

2012年12月にケニアで開催されたポスト2015開発アジェンダに関するアフリカン・ユース・カンファレンス

©UN HABITAT Youth programme

2012年5月に東京でUNDP等が主催した、「成長と雇用」に関するテーマ別協議会。世界各国から約80人の有識者が参加しました。

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ミレニアム開発目標(MDGs)の達成には、各国政府だけでなく、国際機関、民間セクター、財団、教育・研究機関、非政府組織(NGOs)を含む市民社会、市民一人ひとりによる貢献が必要です。国連システム※1のグローバルな開発機関として、177の開発途上国・地域で活動をする国連開発計画(UNDP)は、国連事務総長の要請を受け、MDGsの「キャンペーン・マネジャー」兼「スコア・キーパー」(モニタリング)を務めています。UNDPは、MDGs達成のために、世界中でMDGsへの関心を高め、各国政府に対して専門的な知見に基づくプロジェクト支援を行い、各国における進捗状況をモニターするなど、MDGs達成に向けて多様な取り組みをしています。主な活動は以下の通りです。

国連では現在、MDGsの達成期限である2015年以降の開発目標「ポスト2015開発アジェンダ」の策定を進めております。2015年9月の国連総会首脳級サミットで合意文書が採択され、2016年1月から次の15年間のグローバルな目標となる予定です。

ポスト2015開発アジェンダ策定においては、MDGsとその教訓、新たな課題などを踏まえた上で、多くの意見を吸い上げながら協議を行っております。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が設置したポスト2015開発アジェンダに関する国連システム・タスクチームは国連・経済社会局(UNDESA)とUNDPが共同議長を務め、全ての国際機関から支援を得ております。加盟国、市民社会、教育・研究機関、民間企業を含む様々なステークホルダーとの協議を通し、ポスト2015開発アジェンダに向けて国連全体でのビジョンと道筋を策定し、報告書『私たちが望む未来の実現に向けて(Realizing the Future We Want for All)』をまとめました。

UNDPは国連開発グループ(UNDG)の他の国連機関と協働して、世界各国で約100の国別・テーマ別協議会の開催支援も行いました。この協議結果は、国連が実施し、世界から約520万人の一般市民が参加するグローバルな調査「MY World」等の結果とともに報告書『100万人の声:私たちが望む未来(A Million Voices: The World We Want)』にまとめられました。そのほか、潘基文事務総長が2012年に設置した、世界の有識者27人で構成されるポスト2015開発アジェンダのハイレベル・パネルでも協議が行われ、2013年5月に報告書『新たなグローバル・パートナーシップ(A New Global Partnership)』が事務総長に提出されました。これら一連の取り組みや報告書はいずれも、ポスト2015開発アジェンダ策定のための協議に役立てられております。

国連持続可能な開発会議(リオ+20)での合意に基づく持続可能な開発目標(SDGs)の策定を担う政府間作業部会とも連携を取っております。同作業部会は2014年7月、人々の生活を改善し、将来世代のために地球を守ることを目的に、経済的、社会的、環境的側面から取り組む17の目標と169のターゲット案を国連総会に提出しました。潘基文事務総長はこれらを受け、同年12月に統合報告書を発表しています。

ポストMDGs開発アジェンダ策定に参加してみよう!オンライン上で、ポスト2015に必要と思われる目標を選択方式で投票できる「MY World」(http://bit.ly/myworldjp) および、ポスト2015開発アジェンダに関する情報を紹介し、オンライン上で意見、提言できるプラットフォーム「私たちが望む未来2015」は、誰もが参加できます。

包括的な開発 各国政府と協力し、MDGsの達成に向けた国家プログラムを実施

UNDPはMDGsを達成するために各国政府と協力して、社会的弱者の参加機会を拡大し、生活を向上できるような包括的開発プログラムを支援しています。安全な水や教育へのアクセスなど社会インフラの整備を進めると共に、貧困対策、雇用戦略、セイフティネット構築などの政策策定において社会のあらゆる層が恩恵を受けられるように、専門的な見地から助言をしております。

各国の対応力の強化 危機予防と復興、気候変動、経済危機の影響分析と対策を考慮し、各国のMDGs達成に向けた進捗が後退しないように支援

UNDPの支援は、危機予防と復興、気候変動、経済危機の影響分析と対策などの分野において各国政府がMDGsの進捗を最大限に持続できるように考慮されています。自然災害などの外的ショックに直面した国で、政府機関と人々がその危機に対応できるように能力強化をしています。

アドボカシー MDGsとその重要性が世界中で認識されるよう、啓発キャンペーンを通じて貢献

UNDPはMDGsが世界中で認識されるよう、啓発キャンペーンを実施しています。例えば、UNDP主催のサッカー・チャリティー試合「貧困との闘い(Match Against Poverty)」は、UNDP親善大使のロナウド選手とジダン選手が中心となり、2003年からスペイン、ギリシャなど世界各地で計11回開催されています。貧困をはじめ世界の課題への意識を高めると共に、収益金はMDGs達成や災害復興のために使われています。

各国のMDGsの進捗状況を包括的に評価し、2015年の達成期限に向けた戦略の策定・実施を支援戦略策定と評価

UNDPは、MDGs達成に向けた進捗状況を評価・分析し、各国政府や国際社会に対し、MDGs達成に欠かせない戦略・政策提言をしています。UNDPは、各国のMDGs進捗に影響を及ぼしている原因を特定し、解決することでMDGs進捗を加速させるツール「MDG加速フレームワーク(MAF)」を開発しました。MAFは特に社会的に弱い人々のニーズを重視し、不均等な進捗の主要因である「不平等」に対する政府の取り組みを支援しています。2010年に10か国で試験導入後、これまでに50か国以上でMAFに基づくプロジェクトを実施しています。その成果は報告書『進捗の加速、成果の維持(Accelerating Progress, Sustaining Results )』をご覧ください。

また、UNDPはMDGs達成のための資金調達など、先進国からのアプローチが円滑に進んでいるかをモニターするMDGs ギャップ・タスクフォースの共同議長を2007年から務め、国際社会全体で取り組むべき事項を協議し、毎年、『MDG Gap Task Force Report 』を発刊しています。

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MDGs達成に向けた進捗

2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる

1日1.25米ドル未満で生活する人々の割合

ターゲット1-A2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする

初等・中等教育への就学率

ターゲット2-A2005年までに、可能な限り初等・中等教育で男女格差の解消を達成し、2015年までにすべての教育レベルで男女格差を解消する

初等教育機関に入学する男児に対する女児の比率(男児を1とした時の女児の人数)

ターゲット3-A2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1にまで引き下げる

開発途上地域で極度の貧困状態(1日1.25ドル未満で生活)にある人々の割合は1990年の47%から2010年には22%へと低下し、「2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる」というターゲットは達成されました。この間、極度の貧困状態で暮らす人々は7億人減少したことになります。しかし、大幅な進展は見られたものの、依然12 億人が極度の貧困状態で

生活をしています。極度の貧困状態の人々のうち、3分の1がインド、3分の2がインド・中国・ナイジェリア・バングラデシュ・コンゴ民主共和国の5か国に住んでいます。また、世界では5歳未満の7人に1人が低体重であり、4人に1人が発育不全です。貧困問題は今後も継続して積極的に取り組む必要があります。

初等教育を受けられない世界の児童数は、2000年の1億人から2012年には5800万人へと約半減しました。開発途上地域全体では、初等教育の就学率は2000年の79.8%から2012年の90.5%へと大幅に改善しました。しかし、同地域で最終学年までに25%以上が学校を離れるという退学率、紛争の影響で通学できない、障がい児への配慮不足など課題も残っています。このままのペースでは「2015

年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」という目標達成は厳しい状況です。

初等教育レベルにおけるジェンダーの平等には大きな進展がみられましたが、サハラ以南アフリカ、オセアニア、南アジアは遅れを取っています。また、教育レベルが高くなるほど男女間不平等は大きくなります。就業においても、女性のパートタイム雇用の割合は男性の2倍以上となっています。2014年、世界の議会に占める女性の割合は平均21.8%程度で、5か国ではいまだ女性議員がいません。女

性のエンパワーメントは国際社会でも注目を集めていますが、依然として様々な側面からの取り組みが必要です。

世界的に5歳未満児の死亡率は1990年の出生児1000人当たり90人から、2012年には48人へとほぼ半減しました。目覚ましい進捗を見せていますが、2011年に死亡したと推定される5歳未満児660万人の大半は予防可能な病気(マラリア・肺炎・下痢など)によるものでした。地域間格差も残り、同年に死亡した5歳未満児の80%はサハラ以南アフリカと南アジアに住んでいます。サハラ以南アフ

リカでは10人に1人が、南アジアでは17人に1人が5 歳を迎える前に死亡しています。現在の達成速度では、目標4が全世界で達成されるのは2028年と言われています。

出生児10万人当たりの妊産婦の死亡者数は、1990年の380人から2013年の210人へと、23年間で45%低下しました。しかし、この数値は2015年までの達成目標からは依然としてかけ離れています。妊産婦死亡率は国家間でも国内でも、富める者と貧しい者との格差が最も大きい保健指標の1つです。開発途上地域では、出産時に熟練医療従事者が立ち会うケースは1990年の56%から2012年に

は68%に上昇したものの、依然約4000万人が十分なケアがないまま出産しています。うち3200万人は農村地域での出産でした。また、妊産婦の約半数しか、推奨される最低4回の妊婦健診を受けていません。目標を達成するには、女性と子どもに対する施策および強力な政治的支援が必要となります。

世界全体でHIVの新たな感染者数(15~ 49歳)は減り続け、2001年から2012年の間に44%減少しました。しかし推定230万人(全年齢を含む)が新たにHIVに感染し、160万人がHIV/エイズに関連して亡くなりました。新たなHIV感染者のうち70%(160万人)はサハラ以南アフリカの人々です。若者に対するHIV/エイズ感染予防法の教育は充分ではないため、性教育などの普及にもより力を入れて

いかなければなりません。マラリアによる死亡率は2000年から2012年の間に、世界全体で42%低下しました。この間に、推定330万人がマラリアによる死を回避しました。

1990年以降、23億人以上が改善された水源にアクセスできるようになり、「2015年までに、安全な飲料水と衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する」というターゲットは達成されました。しかし、2012年時点で依然7億4800万人が改善された水源にアクセスできずにいます。二酸化炭素排出量は1990年からほぼ毎年増加し、1990年と比べて48.9%増加しました。世界で気候変動の

影響が及ぶ中で、森林、生物種、漁業資源の損失が続き、地球の資源基盤に深刻な劣化がみられることも指摘されています。一方、オゾン層破壊物質を発生させる消費が、2013年には1986年と比較して98%以上減少しています。

2013年の先進国からの政府開発援助(ODA)総額は過去最高の1348億ドルでした。これはドナーの国民総所得(GNI)全体の0.3%に相当します。ODAをGNIの0.7%にするという目標を2012年時点で達成しているのは、デンマーク、ルクセンブルクなど5か国のみです。ODAを増額させ、有効に活用するには各国政府において開発途上国支援の必要性に対する意識向上に加え、市民社会、民間企業も巻き込んだ幅広

いパートナーシップが求められています。開発途上国と後発開発途上国(LDCs)の先進国市場へのアクセスは、過去15年間で拡大してきました。開発途上国から先進国への輸出(石油と武器を除く)で、非課税の割合は1996年の54%から2012年には84%になりました。他方で、ODAが過去最高額であるにも関わらず、最貧国への援助は減少傾向で、中進国に貸付などの形で援助が流れていることも指摘されています。

5歳未満児の死亡数(1000人あたり)

ターゲット4-A

2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に引き下げる

妊産婦の死亡数(出生児10万人あたり)

ターゲット5-A2015年までにHIV/エイズの蔓延を阻止し、その後、減少させる

HIV発生率(15歳から49歳の100人あたりの年間新規HIV感染者数の推定値)

ターゲット6-A 2015年までに、安全な飲料水と衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する

改善された水源を利用する人々の割合

ターゲット7-C後発開発途上国(LDCs)の特殊なニーズに取り組む

ドナー国の国民総所得(GNI)に占める政府開発援助(ODA)の割合

ターゲット8-B

極度の貧困と飢餓の撲滅

妊産婦の健康状態の改善

普遍的な初等教育の達成 ジェンダー平等の推進と女性の地位向上

環境の持続可能性を確保

乳幼児死亡率の削減

開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

出典:The Millennium Development Goals Report 2014

出典:The Millennium Development Goals Report 2014

対開発途上地域

対後発開発途上国(LDCs)

出典:The Millennium Development Goals Report 2014

サブサハラ以南アフリカ

開発途上地域

先進地域

HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止

出典:The Millennium Development Goals Report 2014 出典:The Millennium Development Goals Report 2014

出典:The Millennium Development Goals Report 2014 出典:The Millennium Development Goals Report 2014 出典:The Millennium Development Goals Report 2014

先進地域

開発途上地域

サブサハラ以南アフリカ

開発途上地域

サブサハラ以南アフリカ

サブサハラ以南アフリカ

開発途上地域

先進地域

サブサハラ以南アフリカ

開発途上地域

先進地域

開発途上地域

サブサハラ以南アフリカ

先進地域

ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限が近づく中、グローバル経済・金融危機の影響にもかかわらず、多くの分野で進捗が見られています。各国政府、国際社会、市民社会、民間セクターが本格的な取り組みを続ければ、いくつかの重要目標は2015年までに達成されるでしょう。とはいえ、十分な進捗が見られているとは言い難い項目も多くあります。とりわけ最も遅れが目立つ地域では、進捗を一気に加速

0%10%20%30%40%50%60%70%

2010年2005年1999年1990年40%50%60%70%80%90%

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2012年2005年2000年1991年

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2013年2000年1990年0.0%0.1%0.2%0.3%0.4%0.5%0.6%0.7%

2012年2001年

し、最大限の前進をするため、一層の取り組みが求められています。国際社会は、これまでの実績を誇りにしつつ、現在の勢いをさらに強め、2015年までにできるだけ多くの目標を達成し、すべての人にとっての前進を実現する必要があります。

開発途上地域

サブサハラ以南アフリカ

先進地域

0.75人

0.80人

0.85人

0.90人

0.95人

1人

2012年2000年1991年0人

20人40人60人80人

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2012年1990年0%

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2012年2002年1990年

56.5% 57.9%52.3% 48.4%

46.7%36.5%

26.9% 22.0%

96.3% 97.1% 96.2% 96.4% 0.99人 0.99人 0.99人

0.87人

0.91人0.97人

0.84人0.85人

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87.7% 90.5%

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230人16人

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Page 7: ミレニアム開発目標進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の

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MDGs達成に向けた進捗

2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる

1日1.25米ドル未満で生活する人々の割合

ターゲット1-A2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする

初等・中等教育への就学率

ターゲット2-A2005年までに、可能な限り初等・中等教育で男女格差の解消を達成し、2015年までにすべての教育レベルで男女格差を解消する

初等教育機関に入学する男児に対する女児の比率(男児を1とした時の女児の人数)

ターゲット3-A2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1にまで引き下げる

開発途上地域で極度の貧困状態(1日1.25ドル未満で生活)にある人々の割合は1990年の47%から2010年には22%へと低下し、「2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる」というターゲットは達成されました。この間、極度の貧困状態で暮らす人々は7億人減少したことになります。しかし、大幅な進展は見られたものの、依然12 億人が極度の貧困状態で

生活をしています。極度の貧困状態の人々のうち、3分の1がインド、3分の2がインド・中国・ナイジェリア・バングラデシュ・コンゴ民主共和国の5か国に住んでいます。また、世界では5歳未満の7人に1人が低体重であり、4人に1人が発育不全です。貧困問題は今後も継続して積極的に取り組む必要があります。

初等教育を受けられない世界の児童数は、2000年の1億人から2012年には5800万人へと約半減しました。開発途上地域全体では、初等教育の就学率は2000年の79.8%から2012年の90.5%へと大幅に改善しました。しかし、同地域で最終学年までに25%以上が学校を離れるという退学率、紛争の影響で通学できない、障がい児への配慮不足など課題も残っています。このままのペースでは「2015

年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」という目標達成は厳しい状況です。

初等教育レベルにおけるジェンダーの平等には大きな進展がみられましたが、サハラ以南アフリカ、オセアニア、南アジアは遅れを取っています。また、教育レベルが高くなるほど男女間不平等は大きくなります。就業においても、女性のパートタイム雇用の割合は男性の2倍以上となっています。2014年、世界の議会に占める女性の割合は平均21.8%程度で、5か国ではいまだ女性議員がいません。女

性のエンパワーメントは国際社会でも注目を集めていますが、依然として様々な側面からの取り組みが必要です。

世界的に5歳未満児の死亡率は1990年の出生児1000人当たり90人から、2012年には48人へとほぼ半減しました。目覚ましい進捗を見せていますが、2011年に死亡したと推定される5歳未満児660万人の大半は予防可能な病気(マラリア・肺炎・下痢など)によるものでした。地域間格差も残り、同年に死亡した5歳未満児の80%はサハラ以南アフリカと南アジアに住んでいます。サハラ以南アフ

リカでは10人に1人が、南アジアでは17人に1人が5 歳を迎える前に死亡しています。現在の達成速度では、目標4が全世界で達成されるのは2028年と言われています。

出生児10万人当たりの妊産婦の死亡者数は、1990年の380人から2013年の210人へと、23年間で45%低下しました。しかし、この数値は2015年までの達成目標からは依然としてかけ離れています。妊産婦死亡率は国家間でも国内でも、富める者と貧しい者との格差が最も大きい保健指標の1つです。開発途上地域では、出産時に熟練医療従事者が立ち会うケースは1990年の56%から2012年に

は68%に上昇したものの、依然約4000万人が十分なケアがないまま出産しています。うち3200万人は農村地域での出産でした。また、妊産婦の約半数しか、推奨される最低4回の妊婦健診を受けていません。目標を達成するには、女性と子どもに対する施策および強力な政治的支援が必要となります。

世界全体でHIVの新たな感染者数(15~ 49歳)は減り続け、2001年から2012年の間に44%減少しました。しかし推定230万人(全年齢を含む)が新たにHIVに感染し、160万人がHIV/エイズに関連して亡くなりました。新たなHIV感染者のうち70%(160万人)はサハラ以南アフリカの人々です。若者に対するHIV/エイズ感染予防法の教育は充分ではないため、性教育などの普及にもより力を入れて

いかなければなりません。マラリアによる死亡率は2000年から2012年の間に、世界全体で42%低下しました。この間に、推定330万人がマラリアによる死を回避しました。

1990年以降、23億人以上が改善された水源にアクセスできるようになり、「2015年までに、安全な飲料水と衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する」というターゲットは達成されました。しかし、2012年時点で依然7億4800万人が改善された水源にアクセスできずにいます。二酸化炭素排出量は1990年からほぼ毎年増加し、1990年と比べて48.9%増加しました。世界で気候変動の

影響が及ぶ中で、森林、生物種、漁業資源の損失が続き、地球の資源基盤に深刻な劣化がみられることも指摘されています。一方、オゾン層破壊物質を発生させる消費が、2013年には1986年と比較して98%以上減少しています。

2013年の先進国からの政府開発援助(ODA)総額は過去最高の1348億ドルでした。これはドナーの国民総所得(GNI)全体の0.3%に相当します。ODAをGNIの0.7%にするという目標を2012年時点で達成しているのは、デンマーク、ルクセンブルクなど5か国のみです。ODAを増額させ、有効に活用するには各国政府において開発途上国支援の必要性に対する意識向上に加え、市民社会、民間企業も巻き込んだ幅広

いパートナーシップが求められています。開発途上国と後発開発途上国(LDCs)の先進国市場へのアクセスは、過去15年間で拡大してきました。開発途上国から先進国への輸出(石油と武器を除く)で、非課税の割合は1996年の54%から2012年には84%になりました。他方で、ODAが過去最高額であるにも関わらず、最貧国への援助は減少傾向で、中進国に貸付などの形で援助が流れていることも指摘されています。

5歳未満児の死亡数(1000人あたり)

ターゲット4-A

2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に引き下げる

妊産婦の死亡数(出生児10万人あたり)

ターゲット5-A2015年までにHIV/エイズの蔓延を阻止し、その後、減少させる

HIV発生率(15歳から49歳の100人あたりの年間新規HIV感染者数の推定値)

ターゲット6-A 2015年までに、安全な飲料水と衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する

改善された水源を利用する人々の割合

ターゲット7-C後発開発途上国(LDCs)の特殊なニーズに取り組む

ドナー国の国民総所得(GNI)に占める政府開発援助(ODA)の割合

ターゲット8-B

極度の貧困と飢餓の撲滅

妊産婦の健康状態の改善

普遍的な初等教育の達成 ジェンダー平等の推進と女性の地位向上

環境の持続可能性を確保

乳幼児死亡率の削減

開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

出典:The Millennium Development Goals Report 2014

出典:The Millennium Development Goals Report 2014

対開発途上地域

対後発開発途上国(LDCs)

出典:The Millennium Development Goals Report 2014

サブサハラ以南アフリカ

開発途上地域

先進地域

HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止

出典:The Millennium Development Goals Report 2014 出典:The Millennium Development Goals Report 2014

出典:The Millennium Development Goals Report 2014 出典:The Millennium Development Goals Report 2014 出典:The Millennium Development Goals Report 2014

先進地域

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サブサハラ以南アフリカ

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開発途上地域

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サブサハラ以南アフリカ

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先進地域

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サブサハラ以南アフリカ

先進地域

ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限が近づく中、グローバル経済・金融危機の影響にもかかわらず、多くの分野で進捗が見られています。各国政府、国際社会、市民社会、民間セクターが本格的な取り組みを続ければ、いくつかの重要目標は2015年までに達成されるでしょう。とはいえ、十分な進捗が見られているとは言い難い項目も多くあります。とりわけ最も遅れが目立つ地域では、進捗を一気に加速

0%10%20%30%40%50%60%70%

2010年2005年1999年1990年40%50%60%70%80%90%

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2012年2001年

し、最大限の前進をするため、一層の取り組みが求められています。国際社会は、これまでの実績を誇りにしつつ、現在の勢いをさらに強め、2015年までにできるだけ多くの目標を達成し、すべての人にとっての前進を実現する必要があります。

開発途上地域

サブサハラ以南アフリカ

先進地域

0.75人

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2012年2000年1991年0人

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56.5% 57.9%52.3% 48.4%

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96.3% 97.1% 96.2% 96.4% 0.99人 0.99人 0.99人

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Page 8: ミレニアム開発目標進捗を加速することを確認しました。2015年9月には首脳級サミットを開催して「ポスト2015開発アジェンダ」(2015年以降の

国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所住所:〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-53-70 UNハウス8Fウェブサイト:www.jp.undp.org :https://www.facebook.com/UndpTokyo :https://twitter.com/UNDP_Tokyo

学ぶ・知る・考える絵本 「アフリカの村から~エリナの物語~」(日本語)UNDPがNGOと協力して、MDGsへの理解を深めてもらおうと作成した絵本です。マラウィに住む10歳の少女・エリナとその家族の生活を通して、水、教育、貧困、インフラ整備などで開発途上国が抱える問題が理解できるようにつくられています。子どもから大人まで、興味や知識レベルに合わせて、楽しみながら学べる開発教育の教材です。

▶UNDP駐日代表事務所のウェブサイト(http://www.undp.or.jp/mdgsafrica/)からダウンロードできます。

ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けての世界の取り組みや状況を学ぶための出版物、写真、動画などが多数あります。ウェブサイトから閲覧、ダウンロードできる代表的な刊行物を以下に紹介します。ほかにも国連開発計画(UNDP)の公式ウェブサイトや公式YouTubeチャンネルなどでも、MDGs達成に向けた成功事例、動画、写真などを紹介しています。

©UNDP 2014年12月 表紙の写真は、UNDP等が2010年にMDGsをテーマに開催したPicture This 写真コンテストの受賞作品です。

写真左は、Victor Diaz Kintanarさん(フィリピン出身)、右上はMaria Ciernaさん(スロバキア出身)、右下はPablo La Rosaさん(ウルグアイ出身)の撮影です。

MDGsについてもっと学びたい方のために

子ども・一般向け

一般向け

国連が毎年発表する公式のMDGsモニタリング・レポート。MDGs達成に向けた各国の進捗データを小地域・地域ごとに集計し、テキスト、図、グラフを用いながら時系列で示しています。2014年版は、MDGsの達成期限である2015年までに最も行動が必要な分野に焦点を当てています。

▶国連のウェブサイト(http://bit.ly/MDGsreport2014)からダウンロードできます。国別のデータ等は、国連・統計部のウェブサイト(http://mdgs.un.org)からご覧いただけます。

国連ミレニアム開発目標報告2014(2014年7月発刊、英語)

A Million Voices: The World We Want(100万人の声:私たちが望む世界) (2013年9月発刊、英語)MDGsの後継となる「ポスト2015開発アジェンダ」の枠組みづくりに向け、世界中の誰もが参加できるオンライン&オフライン調査「MY World」、開発途上国における国別協議会、テーマ別協議会等を通じて寄せられた100万人の声をまとめたレポート。人々がMDGsをどう捉え、かつ2015年以降のグローバルな開発課題や地球の未来をどのように認識しているか、統計、事例、個人の声を通して紹介しています。UNDP総裁が議長を務める国連開発グループ(UNDG)が取りまとめました。

▶The World We Wantのウェブサイト(http://www.worldwewant2015.org/millionvoices)からダウンロードできます。

UNDP駐日代表事務所ウェブサイト(日本語)ミレニアム開発目標(MDGs) についての説明や、MDGs達成に向けて政府、市民社会、民間企業などを巻き込んだ取り組みについて紹介しています。また、2015年以降の開発目標「ポスト2015開発アジェンダ」の解説もしています。

▶UNDP駐日代表事務所のウェブサイト・MDGsページ(http://bit.ly/undptokyoMDGs)