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1 チンボラソ県持続的総合農村開発プロジェクト ベースライン調査結果の分析 2012 年 10 月 プロジェクトチーム作成 廣住清(チーフアドバイザー/持続的総合農村開発) 栗原敏昭(業務調整/参加型開発) 井上晴喜(営農) 岩瀬剛史(収入源創出/マーケティング)

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チンボラソ県持続的総合農村開発プロジェクト

ベースライン調査結果の分析

2012年 10月

プロジェクトチーム作成

廣住清(チーフアドバイザー/持続的総合農村開発)

栗原敏昭(業務調整/参加型開発)

井上晴喜(営農)

岩瀬剛史(収入源創出/マーケティング)

Page 2: ベースライン調査結果の分析 - JICA1 チンボラソ県持続的総合農村開発プロジェクト ベースライン調査結果の分析 2012年10月 プロジェクトチーム作成

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調査の概要

1. 実施期間: 2012年 6月~8月

2. 対象集落: プロジェクト対象 30集落(別添リスト)

3. 対象分野: 農牧生産、収入源創出、環境、保健、教育

4. 実施者 : Fundación Marco (現地 NGO組織)

5. 調査結果の概要

<農牧生産分野>

社会開発分野の調査結果報告から、対象集落の収入源において、農業従事者

の比率が 72%と高い割合を占めていることが判明しており、生計向上の達成に

向け農業生産性及び生産高の向上を図る必要があることから、本プロジェクト

では、農業分野の事業を支援の主軸とする。

また、特に農牧及び収入源創出の両分野における支援活動の効率性及び効果

の視点から、本ベースライン調査結果及び現地視察結果等を踏まえ、対象集落

(30)を 3つのグループに分類した。

対象集落の平均耕地面積は、約 1haであり、そこでは標高(平均標高 3,400

m)の高低にかかわらずジャガイモ、オオムギ、ソラマメを中心に栽培してい

る。その他、集落によっては、アンデス特有の根菜類(メジョコ、オカ等)や

トウモロコシ、小麦、キヌア、チョチョなども栽培されているが、作物の生育

期間は、6ヶ月から 8ヶ月(トウモロコシは 9ヶ月余)程度である。

収量(MT/ha)に関しては、ジャガイモ、ソラマメ、チョチョ、トウモロコシ

など、全国平均の半分以下であることから、当プロジェクトは、保証種子の導

入、適切な肥培管理および病害虫防除を行うことで生産性向上を図る栽培技術

を導入している。フェーズⅠで導入した「浸透溝」当のウォーターハーベスト

技術は、「3ちゃん農業」に頼る対象集落では重労働となるため、普及が遅れ

ている。そこで、効果的な栽培技術の導入に加え、傾斜地で使用可能な小型農

業機械の導入により農作業の効率化及び労働負荷の軽減化を図り、生産性向上

と農業従事者の持続的確保につなげることを目指している。

但し、集落は全て高冷地に立地していることから、霜害が不定期且つ予期し

ない時期に発生するため、収穫が皆無となる危険性を常に孕んでいる。一方、

ほぼ全ての農家において小型家畜(クイ、肉用鶏、産卵鶏等)の飼育を行って

いるが、これは、自家消費による栄養改善(たんぱく質の補給等)に寄与して

いる他、上記の霜害等非常時には、クイ等の(余剰)販売により収入を得てい

ることから、小動物は貴重な収入源創出の手段である。

従って、霜害に比較的強い作物等、栽培の多様化を行うことによるリスクの

分散、同時に輪作・混作による土壌保全の観点からも、単作から多角栽培、そ

して小家畜を飼育する有畜農業やアグロフォレストリーによる「複合農業」を

図ることが、家計の安定と向上に不可欠であると言えよう。

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<収入源創出>

対象集落における家庭の収入構成平均を見ると、収入の中心は農業(20%)

及び畜産(20%)である。一方、農業外収入は、出稼ぎ(22%)、日雇い労働

(10%)、国からの補助金(14%)で構成されている。

世帯別平均年収については、集落全体の平均は、2,900 ドルであり、その内、

農業収入(牧畜除く)の平均は、547ドルとなっている。農業収入が 400ドル

以下の集落は 12ヶ所におよぶが、これらの集落では平均耕地面積が少なく、灌

漑も整備されていないところが多い。他方、同 600ドル以上の集落(4ヶ所)

は、農業の機械化や農産物の付加価値化も行っているところである。また、生

産量に占める販売の比率における集落全体の平均は 43%となっている。

前項の通りグループ分けした対象集落について、発展段階別の支援アプロー

チを、1)自給量増加(サバイバルレベル)、2)換金作物生産性向上(持続的な商

業農家への変遷)、3)生産多様及びバリューチェーン化(付加価値型産業レベル)

に設定するともに、活動についても、販路開拓、付加価値化、経営改善、能力

開発に分類し、計画的に実施している。

なお、小農の自立的な生計向上にとっては、農業生産の向上及びその農産品

の継続的な販売が基本となり、上記カテゴリーの全ての集落に共通する課題で

あることからも、「組織化‐生産性向上‐流通改善」の一貫した包括的支援が重

要である。

<環境>

対象集落の全てにおいて傾斜地の圃場を有しており、土質も砂質が優勢である

ことから、浸食(水食、風食)にさらされている。しかし、土壌浸食対策(テ

ラス造成、雨水排水溝、防風林植林、等高線栽培等)を計画的に実施している

ところは少ないのが実情である。

従って、環境の視点から農業の持続化を達成するには、先ずは、上記の土壌

浸食対策を計画的に、且つ着実に実施していく必要がある。当プロジェクトで

は、傾斜地に適用できる小型農業機械を導入し、水土保全対策の強化と生産性

向上に向けた活動の計画・実施を主要な柱の一つとしている。

さらに廃棄物処理については、家庭ゴミや家畜の糞などの有機物を利用した

有機肥料作りとその施肥によるクリーンな農産品の生産も重要視している。

<社会開発分野(保健・教育等)>

集落の組合等の組織については、74%の住民が無所属であり、残り 26%の住

民はクリスチャン(Envangélico)協会や女性グループなどになどに属しており、

主に農業生産、商業、融資、農業資材、防犯、研修支援受入などを活動目的と

している。なお、集落組織には運営委員会(Directiva)が組織されている例は

46%存在し、共同事業(MINGA)の開催頻度では、多くの集落が月に 1~4回活動

している。

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これらのデータから、更なる組織活動への参加促進と組織運営に係る指導や

活動参加への啓発が有効であると言えよう。

保健分野に関しては、全体的に、世代に関係なく、不健康な状態にある住民

の多くは呼吸器系の疾患を患い、次いで下痢、皮膚疾患、寄生虫疾患と続く。

一方、家族計画や否認法の実践を行っていない住民は全体で 81%に上る。

また、集落住民の主要栄養摂取源は、ジャガイモ(全集落)、麦類(小麦、オオ

ムギ、燕麦等)、野菜であることから、たんぱく質(肉類)、カルシウム(乳製

品)などが不足がちである。

他方、集落の公的医療施設へのアクセスは、85%(保健省施設 71%、農民社

会保健施設 14%)と高く、さらに性教育の受講集落も 87%に上るが、上述の実

態に鑑み、集落住民のより効果的な健康維持のためには、保健サービスの量も

さることながら、その質の改善が求められる。

教育分野においては、対象集落人口は 4人に 1人が就学していない、または

初等教育を終了していないという調査結果が出ている。また、就学者の最終学

歴の平均は、小学校卒が 49.6%、中卒 23.1%、高卒以上が 2.8%となっている。

日常生活において文字を読む習慣のない人の 30集落平均は、39%であり、

非識字者が多いことを示している。

就学率と識字率に相関関係の傾向が存在することから、特に教育レベルの低

い集落における成人教育活動の有効性が認められる。この場合、特に識字研修

を行うだけでは年齢的に体得(血肉化)が難しいことから、同研修と平行また

は同時に住民の生活改善ニーズにあった教育活動(学校菜園による栄養改善や

予防保健、環境保全をテーマとした読み物の配布等)を行うことが有効であろ

う。

<まとめ>

各分野における調査結果により、本案件では、関係4分野(農業、環境、保

健、教育)の内、農業分野を主題として取り組む重要性が明らかになった。従

って、プロジェクト実施戦略では、「包括的支援」、「複合農業」、「持続的農業」、

「機械化農業」、「生活改善アプローチ」の5本柱を打ち出す。

しかしながら、農業分野の重視だけでは、プロジェクト目標である「生活の

質の改善」の達成にはつながらない。住民の生活が改善されるためには、保健、

教育、環境の各分野を農家の生活に有機的に結び付けた包括的な活動を行わな

ければならなく、ここに「生活改善アプローチ」及び、分野横断的な「包括的

支援」を行う必要性が認められる。

また、農業の持続的発展性確保においては、農業生産の持続性に直結する水

土保全を中心とした環境保全が必要であり、また、行政及び集落住民における

農村開発事業の持続性を担保するためには、集落住民の自主的参加や組織化の

推進、普及の仕組み作りが重要であることが、本調査結果からうかがわれる。

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ベースライン調査対象集落

(カントン) 区(パロキア) 集 落

アラウシ ティクサン

1 ラ・パシフィカ

2 ラ・メルセー

3 プエブロ・ビエッホ

グアモテ

パルミラ

4 アタポ・サンタ・クルス

5 アタポ・サンタ・エレーナ

6 サラチュパ

7 サン・フランシスコ・ビシュド

8 サン・パブロ・デ・ティピン

ラ・マトリス

9 チスマウテ・テラン

10 チスマウテ・アルト

11 サン・ロレンソ・テ・テラン

12 ハトゥン・バンバ

13 チスマウテ・ユラク・ルミ

コルタ

コルンベ

14 サン・マルティン・アルト

15 ラ・メルセー

16 コルンベ 1・2

17 コルンベ 3・4

18 カシャパンバ

19 サン・ベルナンド

ビージャ・ラ・

ウニオン

20 グアコナ・グランデ

21 カナル・グアコナ

22 エル・リリオ

23 ルミロマ

24 チャンカワン

25 ベジャビスタ

リオバンバ

カルピ 26 ルミクルス

リクト 27 セセル・サン・アントニオ

カーチャ

28 サン・ミゲル・デ・ケラ

29 リマ・パンバ

30 カチャ・チュジョ

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ベースライン調査対象 30集落マップ

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PMSKベースライン調査分析(営農分野)

- コミュニティ・プロジェクト参加集落の農業の現状と課題 –

井上晴喜(営農)

1.コミュニティプロジェクト参加集落の分類

コミュニティプロジェクト対象集落を、コミュニティプロジェクトを通じてシエラ地域の

小規模農家の生計を効率よく向上させるために必要と判断される項目を指標とし、ベース

ライン調査結果および各集落の現地視察結果等を反映させて三つに分類した。

2.コミュニティプロジェクト参加集落

コミュニティプロジェクト参加農家を表 1 に示した。なお、報告書作成時コミュニティ

プロジェクト参加が未定の 3集落およびベースライン調査に非協力で情報を得られなかっ

た集落は除外した。

表 1 コミュニティプロジェクト参加集落一覧

対象 26集落の標高は、最高が 13. Chismaute Yurac Rumiの 3,755 m、最低が Pueblo

Viejoの 2,742 mであり、平均が 3,376 mである。標高が 3,500 m以上の地域に 4集落、

3,400 m 以上の地域に 8集落が立地し、3,000 m以下に立地している集落は Pueblo Viejo

のみである。その Pueblo Viejo は周囲を 3,000 m の高地に囲まれた谷底に位置している。

三つに分類された集落の標高は最高で 3,600 – 3700 m、平均で約 3,400 mとほぼ等しく、

平均値の差異は小さく 100 m以内にとどまる。

コード 集落 郡(Cantón) 教区 (Parroquia) 標高 (m) 分類

10 Chismaute Alto Guamote La Matriz 3,619 A

5 Atapo Santa Elena Guamote Palmira 3,496 A

2 La Merced (Tixán) Alausi Tixán 3,472 A

16 Columbe lote 1 y 2 Colta Columbe 3,404 A

6 Sarachupa Guamote Palmira 3,329 A

26 Rumicruz Riobamba Calpi 3,271 A

24 Chancahuan Colta Villa La Unión 3,157 A

平均値 3,393

12 Jatunpamba Guamote La Matriz 3,750 B

11 San Lorenzo de Telan Guamote La Matriz 3,478 B

17 Columbe lote 3 y 4 Colta Columbe 3,460 B

14 San Martin Alto Colta Columbe 3,383 B

4 Atapo Santa Cruz Guamote Palmira 3,329 B

1 La Pacifica Alausi Tixán 3,312 B

18 Cashapamba Colta Columbe 3,292 B

8 San Pablo de Tipín Guamote Palmira 3,237 B

25 Bellavista Colta Villa La Unión 3,211 B

3 Pueblo Viejo Alausi Tixán 2,742 B

平均値 3,319

13 Chismaute Yurac Rumi Guamote La Matriz 3,755 C

23 Rumiloma Colta Sicalpa 3,550 C

22 El Lirio Colta Sicalpa 3,480 C

20 Guacona Grande Colta Sicalpa 3,477 C

9 Chismaute Telán Guamote La Matriz 3,465 C

21 Canal Guacona Colta Sicalpa 3,340 C

7 San Francisco Bishud Guamote Palmira 3,319 C

19 San Bernardo Colta Columbe 3,267 C

15 La Merced (Columbe) Colta Columbe 3,184 C

平均値 3,426

26 集落平均値 3,376

注:*

注:** ベースライン調査に非協力で情報なし。

報告書作成時コミュニティプロジェクトnheno参加が未定の集落

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3.気象

アンデス高地特有のパラモと呼ばれているアンデス地域特有の森林限界を超えた草原地帯

がシエラ中部地域では、3,500 ~ 4,500 m に認められる。パラモ地域は一般に年間平均

気温 3~10℃という厳しい気象条件で、濃霧が発生し湿潤ではあるが、日照時間が不定期

であり、チンボラソ県のパラモは乾燥パラモに分類されている(1, 2) 。このパラモ地帯

に 4集落が立地している (表-1)。

パラモ地帯に発生する濃霧等からもたらされる水が多い地域では、貯水地を設けて集水し、

パラモ地帯の下限付近に位置する集落まで水路を設けて灌漑用水の水源としている。その

ため、パラモの保全は地域の経済活動に不可欠である。

また、集落が立地する谷の開いた方向で集落の気象状況が異なり、湿潤ではあるがそれほ

ど低温にはならない集落 (Atapo Santa Elena)も存在している。

シエラ地域は「一日の内に四季が訪れる」と言われるほど日較差が大きい。そのため、気

温は日中に 22度前後まで上がるが、明け方に霜が降りる場合がある。この霜害は一年を

通じて発生する可能性があり、激しい場合にはジャガイモやソラマメが立枯する。

各気象項目が各集落で卓越する月を聞き取った結果に依れば (付図 1参照)、各集落間で

共通の気象事象は 8月前後に多く認められる強風である(Cashapamba では 8月以外の 2、5、

12月に強風が吹いている)。なお、強風は必ずしも 8月前後に吹くとは限らず、地域に依

っては常に一定方向の強い風が吹いているため、風下に向かって傾いでいる立木が多く認

められる集落が存在している(例えば Bellavista)。

最も熱い月、最も寒い月、乾燥する月は、多くの集落で 8月前後に認められる。この中に

は最も寒い月が最も熱い月と重なる集落が認められ、先に記した「一日の内に四季が訪れ

る」と言われるほど日較差 の場合と同様に月較差 が大きいことを示している。

なお、最も熱い月が 1月から 5 月の間に認められる集落 (Jatunpamba、Atapo Santa

Elena、Atapo Santa Cruz、La Pacifica、San Bernardo) も存在する。

雨の多い月は、8月以後 (10月から 12月頃まで) に認められる集落と 8月以前後 (1月

から 4月頃) の集落に分かれ、8月以前に認められる集落 (19集落)が 8月以後の集落 (7

集落)よりも多い。

霜害は、多くの集落で概ね 11月、12月に発生しているが、最も熱い月に認められる集落

も有り、被害の程度に差があるとは言え常に起こるものと理解している集落も多く存在す

る。

そのため、作付体系を考える場合には、常に各集落の気象事象、特に霜害の発生時期を考

慮することが不可欠である。

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4.営農状況

(1) 土地利用

農家の土地の利用状況を表 2に示した

表 2 農家の土地利用状況 (その 1)

対象 26集落 (以下対象集落) の平均農地面積は 1.32 ha、耕地面積は、1.06 ha、草地面

積は 0.27 haである(表 2 その1)。

農地面積の耕地および草地への配分には A集落と B集落間には差が認められないが、B集

落に比べて C集落では草地への配分が少なくなり、耕地への配分が高まる(表 2 その 2)。

表 2 農家の土地利用状況 (その 2)

分類 集落名 農地面積 草地面積 耕地面積

A 10 Chismaute Alto 100 19 81

A 5 Atapo Santa Elena 100 33 67

A 2 La Merced (Tixán) 100 40 60

A 16 Columbe lote 1 y 2 100 9 91

A 6 Sarachupa 100 19 81

A 26 Rumicruz 100 4 96

A 24 Chancahuan 100 2 98

平均値 100 20 80

B 12 Jatunpamba 100 12 88

B 11 San Lorenzo de Telan 100 36 64

B 17 Columbe lote 3 y 4 100 44 56

B 14 San Martin Alto 100 7 93

B 4 Atapo Santa Cruz 100 29 71

B 1 La Pacifica 100 8 92

B 18 Cashapamba 100 22 78

B 8 San Pablo de Tipín 100 12 88

B 25 Bellavista 100 6 94

B 3 La Merced (Tixán) 100 20 80

平均値 100 21 79

C 13 Chismaute Yurac Rumi 100 9 91

C 23 Rumiloma 100 14 86

C 22 El Lirio 100 3 97

C 20 Guacona Grande 100 25 75

C 9 Chismaute Telán 100 22 78

C 21 Canal Guacona 100 4 96

C 7 San Francisco Bishud 100 2 98

C 19 San Bernardo 100 19 81

C 15 La Merced (Columbe) 100 14 86

平均値 100 10 90

26 集落平均値 100 18 82

農地面積 耕地面積 草地面積

A 10 Chismaute Alto 0.81 0.66 0.15

A 5 Atapo Santa Elena 1.55 1.04 0.51

A 2 La Merced (Tixán) 1.51 0.91 0.60

A 16 Columbe lote 1 y 2 1.70 1.55 0.15

A 6 Sarachupa 2.08 1.69 0.40

A 26 Rumicruz 1.07 1.03 0.05

A 24 Chancahuan 0.53 0.53 0.01

平均値 1.32 1.06 0.27

B 12 Jatunpamba 0.99 0.87 0.11

B 11 San Lorenzo de Telan 1.12 0.72 0.40

B 17 Columbe lote 3 y 4 1.23 0.69 0.54

B 14 San Martin Alto 0.94 0.87 0.07

B 4 Atapo Santa Cruz 1.95 1.39 0.56

B 1 La Pacifica 1.51 1.39 0.12

B 18 Cashapamba 0.84 0.66 0.19

B 8 San Pablo de Tipín 1.51 1.32 0.19

B 25 Bellavista 0.35 0.33 0.02

B 3 La Merced (Tixán) 1.42 1.13 0.29

平均値 1.19 0.94 0.25

C 13 Chismaute Yurac Rumi 1.14 1.03 0.11

C 23 Rumiloma 0.81 0.70 0.12

C 22 El Lirio 0.93 0.90 0.03

C 20 Guacona Grande 0.78 0.59 0.19

C 9 Chismaute Telán 0.28 0.22 0.06

C 21 Canal Guacona 1.37 1.32 0.05

C 7 San Francisco Bishud 0.85 0.83 0.02

C 19 San Bernardo 0.66 0.54 0.12

C 15 La Merced (Columbe) 0.24 0.21 0.03

平均値 0.79 0.70 0.08

26 集落平均値 1.06 0.87 0.19

(ha/農家)分類 集落名

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一般に、牛を飼育する場合、配合飼料を与えず放牧で飼育すると草地面積が最低一頭当り

1 haが必要で有ると言われている。すなわち、農地が少なくなると、牛を飼育するだけ

の草地を確保することが出来ないため、牛の放牧での飼育を諦め、耕地への配分を多くし

ていると思われる。

(2) 集落で栽培されている作物

各集落では、平均 4.8作物を栽培し、少ない集落でもジャガイモ、オオムギ、ソラマメの

3作物は栽培している (表 3)。ベースライン調査には含まれなかったが、アンデス特有

の根菜類であるメジョコ (Melloco)、オカ (Oca)、マシュア(Mashua)も各地で栽培されて

いる。

主要な作物のジャガイモ、オオムギ、ソラマメは、標高の高低に係わらず栽培されている。

トウモロコシ、コムギは主に 3,460 m以下で栽培されている。しかし、トウモロコシは

3,200 m以下での栽培が適するとされていることから (INIAP)、牧草として栽培されてい

る可能性がある。キヌアは比較的標高が高い地域で栽培されているが、標高 3,200 m付近

でも栽培され、その適応性の広さを示している。一方、耐干性を備えたチョチョは

Guamote郡や Alausi郡の乾燥の強い地域 で栽培されている。なお、標高が 3,500 mを超

える集落 (Chismaute Alto、Chismaute Yurac Rumi) では霜害を避けるためにオオムギに

加えて耐霜性を備えた白ネギが栽培されている。

表 3 農家が栽培している作物

(3) 生育期間

各作物とも各分類集落間で生育期間に差は認められず、それらの生育期間 (月数) は 6ヶ

月間以上であり、中には 9ヶ月を超える作物も存在している。オオムギ、ジャガイモは、

生育期間が 9ヶ月を超えて栽培されている集落も認められるが、それの生育期間は、その

他作物に比べて約 6.7ヶ月と比較的短い作物であり、次いでコムギの 7.1ヶ月である。生

トウモロコシ コムギ オオムギ ジャガイモ ソラマメ チョチョ キヌアA 10 Chismaute Alto 3,619 9 36 91 82 5 5

A 5 Atapo Santa Elena 3,496 80 100 100 3

A 2 La Merced (Tixán) 3,472 56 63 63 25 6 5

A 16 Columbe lote 1 y 2 3,404 12 18 29 88 35 35 6

A 6 Sarachupa 3,329 33 22 44 78 56 44 6

A 26 Rumicruz 3,271 10 20 100 40 4

A 24 Chancahuan 3,157 67 17 67 17 17 5

平均値 3,393 26 19 48 77 56 35 15 4.9

B 12 Jatunpamba 3,750 63 94 75 3

B 11 San Lorenzo de Telan 3,478 18 9 45 100 64 9 6

B 17 Columbe lote 3 y 4 3,460 21 36 71 36 7 5

B 14 San Martin Alto 3,383 11 44 67 11 33 89 6

B 4 Atapo Santa Cruz 3,329 35 100 71 3

B 1 La Pacifica 3,312 10 15 95 30 80 40 6

B 18 Cashapamba 3,292 50 50 75 50 4

B 8 San Pablo de Tipín 3,237 13 25 75 25 25 38 13 7

B 25 Bellavista 3,211 67 100 50 3

B 3 La Merced (Tixán) 2,742 71 67 57 52 5 5 6

平均値 3,319 34 30 62 61 49 27 34 4.9

C 13 Chismaute Yurac Rumi 3,755 13 25 88 75 4

C 23 Rumiloma 3,550 13 88 100 88 25 5

C 22 El Lirio 3,480 82 64 36 9 4

C 20 Guacona Grande 3,477 33 100 50 3

C 9 Chismaute Telán 3,465 17 50 100 61 22 5

C 21 Canal Guacona 3,340 100 100 100 100 4

C 7 San Francisco Bishud 3,319 7 20 80 13 33 47 6

C 19 San Bernardo 3,267 6 6 18 59 47 6 6

C 15 La Merced (Columbe) 3,184 24 59 88 24 18 35 6

平均値 3,376 13 35 63 72 56 47 19 4.8

26 集落平均値 29 30 60 68 54 33 24 4.8

作物数分類 集落名当該作物を栽培している農家の割合(%)標高

(m)

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11

育期間が長い作物は、トウモロコシ、チョチョ、キヌアであり、9ヶ月を超える期間で栽

培している集落も多い。なお、トウモロコシが 9ヶ月を超えて栽培されているのは、(2)

農家が栽培している作物の項で述べた様に牧草として栽培し、収穫せずに圃場に放置して

いる可能性がある。

表 4 栽培されている作物の生育期間

(4) 栽培面積

主要 3作物について、A集落のソラマメを除けば、各作物とも A集落、B集落では 0.3-

0.6 haであるのに対して、C集落では 0.2-0.3 haと僅かに A集落、B集落よりも小さい

(表 5)。乾燥地域に多く栽培されているチョチョの栽培面積は、その地域で栽培されてい

る主要 3作物の栽培面積よりも大きく、旱魃に対して生産の安定を図るために積極的に栽

培されている。一方、キヌアは、Colta郡に属する 14集落から 25集落が属するでは海外

市場を対象に有機キヌアとして契約栽培されているため、その栽培面積は主要 3作物に匹

敵するか上回る面積で栽培されている。

灌漑水を利用した野菜栽培が盛んな Chancahuanでは、A集落に属する他の集落に比べて

主要 3作物の中で唯一のイネ科作物で野菜との輪作に組み込めるオオムギを除き、ジャガ

イモ、ソラマメの栽培面積が極めて小さい。

農家が所有している耕地面積を占める各作物の栽培面積の合計の割合を農家の作付け強度

として各分類集落間を比較すると、各分類集落とも 1を超え、耕地面積が少ない C集落が

最も大きく、次いで、B集落、A集落の順に小さな値を示す。すなわち。混作は、耕地面

積が少ない集落ほど盛んに行われていると判断される。

トウモロコシ コムギ オオムギ ジャガイモ ソラマメ チョチョ キヌア

A 10 Chismaute Alto > 8 7 6 8 > 8

A 5 Atapo Santa Elena > 8 7 > 8

A 2 La Merced (Tixán) 8 7 8 > 8 8

A 16 Columbe lote 1 y 2 > 8 7 7 8 6 > 8

A 6 Sarachupa 8 8 > 8 6 6 > 8

A 26 Rumicruz > 8 5 7 6

A 24 Chancahuan > 8 7 6 6 7

平均値 8.0 7.3 6.6 6.7 6.8 8.0

集落数(1) 4 0 2 0 1 2 2

B 12 Jatunpamba > 8 8 8

B 11 San Lorenzo de Telan 8 5 8 6 8 > 8

B 17 Columbe lote 3 y 4 8 7 8 7 6

B 14 San Martin Alto 8 7 7 6 8 8

B 4 Atapo Santa Cruz 7 8 8

B 1 La Pacifica 8 > 8 > 8 8 > 8 > 8

B 18 Cashapamba 8 6 6 7

B 8 San Pablo de Tipín 7 8 7 6 7 > 8 8

B 25 Bellavista 7 7 6

B 3 La Merced (Tixán) 7 6 6 6 8 8

平均値 7.6 6.8 6.9 6.8 7.7 8.0 7.3

集落数(1) 0 1 1 0 1 2 1

C 13 Chismaute Yurac Rumi 8 8 8 > 8

C 23 Rumiloma 7 6 6 7 > 8

C 22 El Lirio 6 > 8 7 > 8

C 20 Guacona Grande 7 5 8

C 9 Chismaute Telán > 8 > 8 7 7 > 8

C 21 Canal Guacona 7 6 6 7

C 7 San Francisco Bishud 8 8 8 7 8 > 8

C 19 San Bernardo 6 7 7 6 6 7

C 15 La Merced (Columbe) 7 7 7 7 > 8 8

平均値 7.0 7.3 6.9 6.5 7.1 7.5

集落数(1) 1 0 1 1 2 1 3

26 集落平均値 7.4 7.1 6.8 6.7 7.3 8.0 7.4

集落数(1) 5 1 4 1 4 5 6

集落数(1): 生育期間が9ヶ月以上の当該作物を栽培している集落数

分類 集落名(月数)

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12

表 5 個々の農家の栽培面積

(5) 収量

各作物の収量 (MT/ha) は、オオムギを除く作物の収量は、A集落が大きく、次いで C集

落、B集落の順であった (表 6)。これは、農業収入が多い A集落ではより生産性を高める

ための耕種的手段が行われ、耕地面積が小さく、C集落では混作を行い、土地生産性を高

めていることを反映していると思われる。一方、B集落では生産増に向けた耕種的手段の

改良が足踏みしているためと思われる。

トウモロコシ コムギ オオムギ ジャガイモ ソラマメ チョチョ キヌア 合計 作付強度 (1)

A 10 Chismaute Alto 0.21 0.38 0.33 0.25 0.05 1.22 1.85

A 5 Atapo Santa Elena 0.33 0.40 0.36 1.09 1.05

A 2 La Merced (Tixán) 0.36 0.39 0.50 0.23 0.50 1.98 2.17

A 16 Columbe lote 1 y 2 0.19 0.31 0.38 0.54 0.61 0.48 2.51 1.62

A 6 Sarachupa 0.39 0.15 0.37 0.32 2.00 0.79 4.02 2.38

A 26 Rumicruz 0.01 0.11 0.36 0.19 0.66 0.65

A 24 Chancahuan 0.15 0.03 0.31 0.06 0.06 0.60 1.14

平均値 0.19 0.16 0.32 0.34 0.56 0.51 0.34 1.73 1.55

B 12 Jatunpamba 0.17 0.37 0.16 0.70 0.81

B 11 San Lorenzo de Telan 0.13 0.20 0.17 0.45 0.18 0.05 1.18 1.64

B 17 Columbe lote 3 y 4 0.19 0.26 0.59 0.20 0.35 1.59 2.31

B 14 San Martin Alto 0.20 0.33 0.43 0.20 0.34 0.24 1.74 1.99

B 4 Atapo Santa Cruz 0.58 0.57 0.35 1.50 1.08

B 1 La Pacifica 0.50 0.40 0.56 0.43 0.55 0.43 2.87 2.06

B 18 Cashapamba 0.13 0.25 0.13 0.71 1.22 1.86

B 8 San Pablo de Tipín 0.17 0.56 0.56 0.10 0.36 1.35 0.11 3.20 2.42

B 25 Bellavista 0.14 0.26 0.15 0.56 1.70

B 3 La Merced (Tixán) 0.31 0.33 0.26 0.33 0.71 0.40 2.33 2.06

平均値 0.23 0.33 0.35 0.33 0.36 0.73 0.29 1.69 1.76

C 13 Chismaute Yurac Rumi 0.90 0.45 0.28 0.29 1.92 1.86

C 23 Rumiloma 0.05 0.28 0.22 0.23 0.34 1.12 1.61

C 22 El Lirio 0.16 0.39 0.26 0.05 0.87 0.96

C 20 Guacona Grande 0.60 0.15 0.22 0.97 1.65

C 9 Chismaute Telán 0.13 0.24 0.12 0.13 0.11 0.73 3.38

C 21 Canal Guacona 0.20 0.44 0.44 0.24 1.32 1.00

C 7 San Francisco Bishud 1.06 0.28 0.35 0.28 0.10 0.68 2.74 3.30

C 19 San Bernardo 0.25 0.40 0.10 0.14 0.26 0.60 1.75 3.24

C 15 La Merced (Columbe) 0.05 0.09 0.08 0.04 0.06 0.11 0.43 2.08

平均値 0.37 0.32 0.30 0.23 0.20 0.68 0.24 1.32 2.12

26 集落平均値 0.24 0.29 0.32 0.29 0.32 0.65 0.28 1.53 1.84

A 10 Chismaute Alto 17 31 27 20 4 100

A 5 Atapo Santa Elena 31 36 33 100

A 2 La Merced (Tixán) 18 20 25 12 25 100

A 16 Columbe lote 1 y 2 8 12 15 22 24 19 100

A 6 Sarachupa 10 4 9 8 50 20 100

A 26 Rumicruz 1 17 55 28 100

A 24 Chancahuan 24 5 51 10 10 100

平均値 11 9 19 20 33 29 20 100

B 12 Jatunpamba 24 53 23 100

B 11 San Lorenzo de Telan 11 17 14 38 15 4 100

B 17 Columbe lote 3 y 4 12 16 37 13 22 100

B 14 San Martin Alto 11 19 25 11 19 14 100

B 4 Atapo Santa Cruz 39 38 23 100

B 1 La Pacifica 17 14 20 15 19 15 100

B 18 Cashapamba 11 21 11 58 100

B 8 San Pablo de Tipín 5 17 17 3 11 42 3 100

B 25 Bellavista 26 47 27 100

B 3 La Merced (Tixán) 13 14 11 14 30 17 100

平均値 13 20 21 20 21 43 17 100

C 13 Chismaute Yurac Rumi 47 23 15 15 100

C 23 Rumiloma 4 25 20 20 30 100

C 22 El Lirio 19 46 30 6 100

C 20 Guacona Grande 62 15 22 100

C 9 Chismaute Telán 17 33 17 18 15 100

C 21 Canal Guacona 15 34 33 18 100

C 7 San Francisco Bishud 39 10 13 10 4 25 100

C 19 San Bernardo 14 23 6 8 15 34 100

C 15 La Merced (Columbe) 13 22 18 9 13 26 100

平均値 28 24 23 17 15 51 18 100

26 集落平均値 16 19 21 19 21 42 19 100

作付強度 (1):栽培面積/耕地面積

栽培面積 (m2/農家)

栽培面積の割合 ((%)

分類 集落名

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13

オオムギの収量は、分類集落間に差異は認められなかった。

チョチョは、生産適地である Sarachupaの収量が他の集落の収量を大きく上回っていた。

表 6 各作物の収量

コミュニティプロジェクト集落の収量をエクアドルおよび対照国としてアンデス地域を国

内に持つペルー、ボリビアを選び比較した (表 7)。

コミュニティプロジェクト集落の収量は、対照国に比べてジャガイモ、トウモロコシ、コ

ムギ、チョチョで小さく、ソラマメ、キヌアでほぼ等しいか上回り、オオムギではボリビ

アを上回るが、ペルーよりも小さい。

表 7コミュニティプロジェクト集落で栽培されている作物の収量と近隣国との比較

コミュニティプロジェクト集落で生産される作物の生産力は、キヌアの場合、海外市場を

対象に有機キヌアとして契約栽培するために耕種的手段の改良が行われた結果、対照国を

上回るまでになっている。一方、乾燥に適応したチョチョは Sarachupaで広く栽培されて

いるが、栽培方法が余りにも粗放なため、その収量が 1.2 MT/haとエクアドルやペルーに

比べて著しく劣っている。チョチョ栽培面積が Sarachupaとほぼ等しい San Francisco

Bishud、ほぼ倍のSan Pablo de Tipínの収量は Sarachupaよりも著しく小さく、これら 2

バレイショ トウモロコシ ソラマメ オオムギ キヌア コムギ チョチョ

コミュニティプロジェクト参加集落

3.27 1.36 1.37 1.05 1.16 0.88 0.56

エクアドル* 5.85 2.20 2.15 0.61 0.80 0.86 3.88

ペルー* 13.18 3.00 1.27 1.36 1.18 1.42 11.02

ボリビア* 5.41 2.82 1.04 0.79 0.59 1.31 -

南米* 15.88 3.84 1.00 2.33 0.83 2.03 10.25

*: FAO (2009)

(MT/ha)主要作物

トウモロコシ コムギ オオムギ ジャガイモ ソラマメ チョチョ キヌア

A 10 Chismaute Alto 0.67 0.50 3.03 0.53 2.85

A 5 Atapo Santa Elena 1.54 6.06 5.18

A 2 La Merced (Tixán) 1.44 6.62 2.81 0.89 0.05

A 16 Columbe lote 1 y 2 0.76 1.47 0.67 5.45 1.03 1.08

A 6 Sarachupa 1.21 2.42 1.40 3.73 0.48 1.20

A 26 Rumicruz 6.79 0.65 3.74 1.03

A 24 Chancahuan 0.98 1.58 0.62 2.38 1.58

平均値 2.08 1.82 0.97 4.43 1.81 1.04 1.33

B 12 Jatunpamba 2.74 3.12 3.09

B 11 San Lorenzo de Telan 1.80 0.48 0.80 2.25 1.09 0.95

B 17 Columbe lote 3 y 4 0.51 1.53 2.42 0.77 0.81

B 14 San Martin Alto 1.19 0.51 0.69 4.75 0.19 0.71

B 4 Atapo Santa Cruz 0.34 1.33 1.07

B 1 La Pacifica 0.33 0.40 0.50 0.65 0.51 0.27

B 18 Cashapamba 1.26 0.94 5.48 0.50

B 8 San Pablo de Tipín 0.84 0.68 0.57 1.66 0.69 0.26 2.24

B 25 Bellavista 1.08 1.02 1.37

B 3 La Merced (Tixán) 1.20 1.37 1.65 2.00 1.01 0.36

平均値 1.10 0.65 1.08 2.50 1.05 0.30 1.04

C 13 Chismaute Yurac Rumi 0.05 0.16 1.73 1.27

C 23 Rumiloma 0.95 0.81 2.20 1.55 0.78

C 22 El Lirio 1.86 1.93 1.01 0.95

C 20 Guacona Grande 0.75 1.59 0.51

C 9 Chismaute Telán 0.50 1.02 8.69 1.88 2.11

C 21 Canal Guacona 0.61 0.43 1.24 0.50

C 7 San Francisco Bishud 0.09 0.23 0.75 3.02 1.03 0.36

C 19 San Bernardo 0.95 0.71 0.32 1.36 0.60 0.48

C 15 La Merced (Columbe) 3.69 2.08 3.60 9.18 3.52 1.52

平均値 1.31 0.77 1.08 3.44 1.32 0.36 1.17

26 集落平均値 1.36 0.88 1.05 3.27 1.37 0.56 1.16

分類 集落名収量 (MT/ha)

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14

集落で栽培されているチョチョは、Sarachupaよりもより粗放な栽培がなされていると判

断される。すなわち、コミュニティプロジェクト集落で栽培されているチョチョの収量は、

耕種的手段の改良で増加する可能性が大きいと判断される。

(6) 収穫量

主要 3作物の農家当りの収穫量は、それら栽培面積に比例して A集落が多く、次いで B集

落であり、C集落が最も少ない。その他の作物の収穫量は、栽培面積の小さい C集落では

混作を行なって土地生産性を向上させているため、チョチョの収穫量が著しく多い

Sarachupaの値を除くと分類集落間に差は認められない。

収穫物の用途は、収穫量の違いを反映して収穫物を販売する割合は収穫の多い A集落で大

きく、収穫量の C集落で小さいことから、収穫物は先ず自家消費し、余剰収穫物を販売し

ていると判断される。一方、自家消費する割合が大きい C集落では、次期作の種子に用い

る割合も大きいことから、耕地面積が少ないため、先ず食料の自給に重点を置いていると

判断される。

表 8 作物の収穫量

(7) 大型家畜の飼育

農家が飼育している大型家畜の種類には、ヒツジとヤギを除き (農家の割合が A 集落で B、

C集落よりも多) 分類農家間で差は認められない (表 9)。

農家当りの飼育頭数は、乳牛、肉牛で 2頭以下、ヤギとヒツジで、3-5頭であり、これら

の家畜の飼育頭数は、A集落で多く、次いで C集落であり、B集落で少ない傾向が見られ

る。

ブタの飼育頭数は 2-3頭であり、分類農家間で差は認められない。

トウモロコシ コムギ オオムギ ジャガイモ ソラマメ チョチョ キヌア 販売 自家消費 種子

A 10 Chismaute Alto 0.14 0.19 0.99 0.13 0.14 53 37 10

A 5 Atapo Santa Elena 0.52 2.41 1.85 73 15 12

A 2 La Merced (Tixán) 0.52 2.57 1.40 0.20 0.02 82 11 7

A 16 Columbe lote 1 y 2 0.14 0.46 0.26 2.95 0.63 0.51 82 12 6

A 6 Sarachupa 0.48 0.36 0.52 1.19 0.96 0.95 68 24 8

A 26 Rumicruz 0.05 0.07 1.35 0.19 44 42 14

A 24 Chancahuan 0.14 0.05 0.19 0.14 0.10 59 35 6

平均値 0.19 0.29 0.32 1.66 0.75 0.58 0.23 66 25 9

B 12 Jatunpamba 0.46 1.17 0.51 55 29 16

B 11 San Lorenzo de Telan 0.24 0.10 0.13 1.01 0.20 0.05 42 48 10

B 17 Columbe lote 3 y 4 0.10 0.40 1.43 0.16 0.29 55 36 9

B 14 San Martin Alto 0.24 0.17 0.30 0.95 0.06 0.17 28 57 15

B 4 Atapo Santa Cruz 0.20 0.75 0.38 84 12 4

B 1 La Pacifica 0.17 0.16 0.28 0.28 0.28 0.12 41 36 23

B 18 Cashapamba 0.17 0.24 0.71 0.36 50 37 13

B 8 San Pablo de Tipín 0.14 0.38 0.32 0.17 0.24 0.35 0.24 24 63 13

C 25 Bellavista 0.15 0.27 0.21 37 53 10

B 3 La Merced (Tixán) 0.37 0.44 0.44 0.67 0.71 0.14 43 47 10

平均値 0.21 0.22 0.30 0.73 0.32 0.20 0.22 46 42 12

C 13 Chismaute Yurac Rumi 0.05 0.07 0.48 0.37 60 30 10

C 23 Rumiloma 0.05 0.23 0.49 0.35 0.26 35 49 16

C 22 El Lirio 0.31 0.76 0.26 0.05 16 62 22

C 20 Guacona Grande 0.45 0.24 0.11 14 69 17

C 9 Chismaute Telán 0.06 0.25 1.08 0.25 0.23 52 33 15

C 21 Canal Guacona 0.12 0.19 0.55 0.12 80 20

C 7 San Francisco Bishud 0.10 0.06 0.27 0.83 0.10 0.24 33 43 24

C 19 San Bernardo 0.24 0.29 0.03 0.19 0.15 0.29 18 66 16

C 15 La Merced (Columbe) 0.20 0.19 0.28 0.34 0.20 0.17 36 49 15

平均値 0.15 0.13 0.23 0.55 0.21 0.24 0.20 33 53 17

26 集落平均値 0.19 0.16 0.28 0.92 0.40 0.33 0.21 46 41 13

分類 集落名収穫量 (MT/農家) 収穫物の用途 (%)

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15

表 9 農家が飼育している大型家畜の種類と飼育している家畜毎の頭数

牛の肥育は、各分類集落とも準畜舎飼いが多い。A集落と C集落では畜舎飼いと放牧で飼

育される割合が等しいが、B集落では放牧が畜舎飼いよりも 3倍も多い (表 10)。

牛の血統は、在来品種の割合が A、B集落では 90 %、C集落で 98%ある。

平均搾乳量は、26集落の平均が 3.4リットル/頭/日、最大で Columbe lote 1 y 2の 6.3

リットル/頭/日であり、標高による差異は認められない。

エクアドル国の搾乳量は 10.37 リットル/頭/日、日本の搾乳量は 19.94リットル/頭/日

(FAO, 2009)であることから、シエラの搾乳量が少ないのは、血統および 3,000 mという

高地の影響を受けているためと思われる。

搾乳された牛乳は、約 50 %が販売され、自家消費が約 30 %であり、B集落では加工され

る割合が大きい。

エクアドルでは農家が搾乳した牛乳を販売先が毎日集めて回るため、農家は販売に手間を

掛ける必要が無い。

乳牛 肉牛 ウマ ブタ ヒツジとヤギ 乳牛 肉牛 ウマ ブタ ヒツジとヤギ

A 10 Chismaute Alto 15 22 22 41 2.4 3.0 1.0 1.1 6.0

A 5 Atapo Santa Elena 39 8 6 14 33 2.8 3.3 1.0 1.5 6.5

A 2 La Merced (Tixán) 14 40 46 2.1 1.6 1.5 2.4 4.3

A 16 Columbe lote 1 y 2 32 12 8 16 32 2.0 2.0 3.0 2.9 5.1

A 6 Sarachupa 38 12 26 24 1.5 1.0 1.0 5.3

A 26 Rumicruz 22 28 17 33 1.5 1.3 2.0 5.3

A 24 Chancahuan 15 20 20 45 1.0 1.7 1.0 3.3

平均値 25 17 7 22 36 1.9 2.0 1.6 1.7 5.1

B 12 Jatunpamba 24 14 24 38 1.5 1.6 1.6 1.4 5.5

B 11 San Lorenzo de Telan 29 7 7 25 32 1.7 1.0 1.0 1.5 3.5

B 17 Columbe lote 3 y 4 40 16 12 32 1.8 3.0 2.0 2.3 3.3

B 14 San Martin Alto 11 37 5 26 21 1.5 1.9 1.0 2.8 1.8

B 4 Atapo Santa Cruz 17 12 5 17 49 1.6 1.7 1.5 5.6

B 1 La Pacifica 18 23 35 24 2.0 3.5 5.1

B 18 Cashapamba 24 18 3 29 26 1.5 1.5 2.0 2.3

B 8 San Pablo de Tipín 44 12 6 13 25 1.3 1.8 1.6 5.0

C 25 Bellavista 33 50 17 1.0 1.3 1.0 3.5

B 3 La Merced (Tixán) 33 12 3 26 26 1.8 1.8 1.1 2.1

平均値 27 20 5 22 30 1.5 1.7 1.4 1.9 3.8

C 13 Chismaute Yurac Rumi 22 21 7 14 36 1.3 1.0 1.0 7.2

C 23 Rumiloma 19 25 19 37 1.5 2.3 2.2 4.0

C 22 El Lirio 35 18 12 35 2.3 2.0 2.3 2.7

C 20 Guacona Grande 27 20 33 20 2.0 2.0 4.0 1.5 6.2

C 9 Chismaute Telán 33 10 37 20 2.0 4.2 1.0 2.5 5.7

C 21 Canal Guacona 17 25 25 33 2.0 5.0

C 7 San Francisco Bishud 22 22 22 34 1.5 1.4 1.3 2.8

C 19 San Bernardo 37 10 37 16 1.3 1.3 1.5 2.2

C 15 La Merced (Columbe) 50 50 1.7 1.4 2.3 2.6

平均値 27 22 7 25 31 1.7 2.0 2.5 1.8 4.3

26 集落平均値 27 21 6 23 31 1.6 1.8 1.9 1.8 4.2

大型家畜飼育頭数 (頭数/農家)

分類 集落

大型家畜を飼育している農家の割合 (%)

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16

表 10 牛の飼育方法、血統、平均搾乳量および用途

(8) 小型家畜の飼育

農家は、小型家畜として飼育しているクイ、ウサギ、肉用鶏、産卵鶏の中でクイの占める

割合が極めて大きく、次いで肉用鶏と産卵鶏を合わせたニワトリで、ウサギを飼う農家は

少ない (表 11)。

農家の飼育頭数は、クイが最も多く、6 – 35頭と集落間の差が大きく、C集落で多い。次

いで A集落であり、B集落は少ない。

ニワトリの肥育数は、一部の集落を除き、肉用鶏が産卵鶏よりも多く、合わせて平均 10

羽であり、分類集落間で差が認められない。

ウサギは限られた集落で飼育されており、Rumicruzの 25羽を除けば平均 6羽が飼育され

ている。

自家消費される割合は牛乳や農作物が自家消費される場合よりも大きく、小型家畜の肥育

は肥育農家の栄養状態の維持・向上にとって重要である。

畜舎飼

い準畜舎飼い 放牧 在来種 改良種 販売 加工 自家消費

A 10 Chismaute Alto 0 85 15 100 0 2.1 62 18 20

A 5 Atapo Santa Elena 12 64 24 96 4 1.6 72 2 26

A 2 La Merced (Tixán) 17 53 30 83 17 3.1 43 9 48

A 16 Columbe lote 1 y 2 29 37 34 66 34 6.3 57 17 26

A 6 Sarachupa 45 50 5 95 5 45 0 55

A 26 Rumicruz 16 69 15 94 0 62 0 38

A 24 Chancahuan 17 58 25 100 0 56 9 35

平均値 19 59 21 91 9 2.6 57 8 35

B 12 Jatunpamba 32 56 12 88 12 5.1 40 22 38

B 11 San Lorenzo de Telan 0 6 94 81 19 3.7 33 47 20

B 17 Columbe lote 3 y 4 13 44 43 87 13 4.1 55 40 5

B 14 San Martin Alto 37 53 10 89 11 71 0 29

B 4 Atapo Santa Cruz 0 72 28 97 3 4.1 77 0 23

B 1 La Pacifica 6 48 46 97 3 1.9 76 0 24

B 18 Cashapamba 11 45 44 89 11 5.7 56 0 44

B 8 San Pablo de Tipín 12 19 69 100 0 2.3 42 23 35

C 25 Bellavista 0 41 59 100 0 2.5 37 9 54

B 3 La Merced (Tixán) 19 20 61 90 10 5.5 1 48 51

平均値 13 40 47 92 8 3.9 49 19 32

C 13 Chismaute Yurac Rumi 11 45 44 100 0 53 45 2

C 23 Rumiloma 0 80 20 93 7 2.3 50 0 50

C 22 El Lirio 21 68 11 100 0 1.5 21 5 74

C 20 Guacona Grande 43 7 50 93 7 2.5 84 2 14

C 9 Chismaute Telán 31 48 21 100 0 2.5 61 0 39

C 21 Canal Guacona 0 100 0 100 0 71 0 29

C 7 San Francisco Bishud 22 56 22 94 6 2.5 67 0 33

C 19 San Bernardo 30 53 17 100 0 5.1 61 15 24

C 15 La Merced (Columbe) 36 28 36 100 0 1.6 10 0 90

平均値 22 54 25 98 2 2.6 53 7 39

26 集落平均値 19 48 33 94 6 3.4 52 12 36

飼育方法 血統 用途

集落平均搾乳乳量

(リットル/頭/日)分類

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表 11農家が飼育している小型家畜の種類と飼育している家畜毎の頭数および用途

(9) 非常時の家計を維持するための収入源

農家に販売用の蓄え (主に長期貯蔵が可能な穀物)が無くなり、非常時に陥った家計を維

持するための収入を得る手段は、各分類集落とも先ずクイなどの小家畜の販売であり、次

いで家族の海岸地域や都市への出稼ぎ、地元での農作業等の日雇い労働で現金収入を得て

いる。また、この家族構成員の労働から得る現金収入に相当する割合で、既に独立した子

どもからの金銭支援を得ている。一方、正規あるいは非正規のクレジットに頼る割合は少

なく、物々交換を行う習慣のある集落も認められる。

クイ ウサギ 肉用鶏 採卵鶏 クイ ウナギ 肉用鶏 採卵鶏 販売 加工 自家消費

A 10 Chismaute Alto 69 19 12 7.8 4.6 1.6 21 79

A 5 Atapo Santa Elena 71 29 14.4 5.8 33 67

A 2 La Merced (Tixán) 50 30 20 8.5 3.6 3.5 15 85

A 16 Columbe lote 1 y 2 47 12 23 18 34.8 4.5 14.8 13.2 49 1 50

A 6 Sarachupa 53 18 29 21.4 3.5 2.5 37 63

A 26 Rumicruz 35 39 22 4 31.8 24.8 6.7 4.0 45 55

A 24 Chancahuan 56 33 11 7.0 3.3 1.0 26 74

平均値 54 26 24 18 17.9 14.7 6.1 4.5 32 1 68

B 12 Jatunpamba 80 5 15 9.3 4.0 3.3 99 1

B 11 San Lorenzo de Telan 59 18 23 10.4 2.3 2.0 29 13 58

B 17 Columbe lote 3 y 4 59 6 29 6 12.1 7.0 10.2 2.0 49 1 50

B 14 San Martin Alto 56 6 38 13.8 3.0 3.5 17 83

B 4 Atapo Santa Cruz 52 33 15 10.3 6.8 3.2 80 20

B 1 La Pacifica 50 25 25 5.6 5.3 2.5 9 91

B 18 Cashapamba 50 12 25 13 16.3 8.0 9.5 3.0 48 52

B 8 San Pablo de Tipín 53 13 7 27 16.3 10.0 10.0 8.3 85 15

B 25 Bellavista 67 11 11 11 11.8 5.0 5.0 3.0 15 85

B 3 La Merced (Tixán) 14 72 14 0 8.5 4.5 4.6 5.0 93 7

平均値 54 23 17 17 11.4 6.9 6.1 3.6 48 36 46

C 13 Chismaute Yurac Rumi 67 8 17 8 10.4 2.0 4.0 2.0 100

C 23 Rumiloma 80 10 10 27.4 7.0 3.0 20 80

C 22 El Lirio 82 9 9 44.4 4.0 4.0 14 10 76

C 20 Guacona Grande 60 10 10 20 43.6 10.0 3.0 3.0 48 52

C 9 Chismaute Telán 75 4 21 16.4 3.0 3.8 43 57

C 21 Canal Guacona 100 20.0 75 25

C 7 San Francisco Bishud 86 7 7 9.0 5.0 5.0 9 91

C 19 San Bernardo 54 17 29 8.6 5.0 7.0 17 3 80

C 15 La Merced (Columbe) 67 16 17 10.8 2.8 2.3 8 92

平均値 75 9 11 15 21.2 6.0 4.2 3.8 29 7 73

26 集落平均値 61 20 17 17 16.6 8.4 5.5 3.9 37 20 61

分類小家畜飼育頭数 (頭数/農家) 用途

集落小家畜を飼育している農家の割合 (%)

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18

表 22非常時の家計を維持するための収入源

農家に市場で販売するための蓄えが無くなり (品質の劣るため自家消費分としている食料

の蓄えはあるにしても)、家計が非常事態に陥った際に頼りとなるのは、クイ、ウサギ、

ニワトリ等の小家畜である。すなわち、コミュニティプロジェクトにおいて、各農家が小

家畜を飼育する有畜農業で複合農業を行い、当面はクイの飼育に重点を置き、家計の非常

時以外にも流通に乗せて恒常的に現金収入を得る手段の多様化を図ることは、農家の家計

の安定と向上に大きく寄与するころは明かであり、同時に若年層が出稼ぎのため集落に不

在なる機会を減らして、集落に活気を呼び戻すことも期待される。大いに進めるべきであ

る。

(10) 農業歴と気象との関係

各集落では生育期間が 6ヶ月間以上で、9ヶ月以上の作物も栽培されている。

一方、雨の多い月は、8月以後 (10月から 12月頃まで) に多い集落と 8月以前後 (1月

から 4月頃) に多い集落に分かれ、8月以前に多い集落 (19集落)が 8月以後に多い集落

(7 集落)よりも多い。

更に、各作物は不定期に襲う霜害により立枯の危機に晒されている。

コミュニティプロジェクト実施に際し、共同圃場における農作業 (ひいては各集落の農家

の農作業) に直接影響を与えると思われる雨量の多い月、および霜害の多い月に対応して、

播種と収穫をどの月に行っているのかを検討した (付図 2 参照)。

雨量の多い月と播種月は必ずしも一致していない。雨量の多い月と播種月が一致しない集

落では播種しても発芽が出来ないほどには乾燥が激しくないためと思われる。一方、雨量

の多い月と播種月が一致する集落では、播種した種子が発芽に必要な土壌水分が、雨量の

多い月の前後しか無いためと思われる。

収穫は、霜害の多い月を避ける様に行っている。更に、コムギ、オオムギでは、霜害を受

ける時期は受粉が行われる開花期のほぼ一ヶ月前から開花時だけである。コムギ、コムギ

クイ、ウサギ、ニワト

リなどの小家畜を販売国内出稼ぎ 日雇い労働

非正規な

クレジッ

正規の

クレジッ物々交換

家族間の

支援

A 10 Chismaute Alto 55 5 5 5 30

A 5 Atapo Santa Elena 70 20 10

A 2 La Merced (Tixán) 80 20

A 16 Columbe lote 1 y 2 82 18

A 6 Sarachupa 56 33 11

A 26 Rumicruz 50 40 10

A 24 Chancahuan 67 16 17

平均値 65.7 22.7 13.5 7.5 5.0 19.0

B 12 Jatunpamba 75 13 6 6

B 11 San Lorenzo de Telan 46 45 9

B 17 Columbe lote 3 y 4 57 7 36

B 14 San Martin Alto 89 11

B 4 Atapo Santa Cruz 100

B 1 La Pacifica 74 5 10 11

B 18 Cashapamba 100

B 8 San Pablo de Tipín 62 12 13 13

C 25 Bellavista 50 17 33

B 3 La Merced (Tixán) 45 30 10 10 5

平均値 69.8 19.0 11.0 9.0 6.5 19.2

C 13 Chismaute Yurac Rumi 100

C 23 Rumiloma 50 25 25

C 22 El Lirio 67 33

C 20 Guacona Grande 33 50 17

C 9 Chismaute Telán 71 23 6

C 21 Canal Guacona 50 50

C 7 San Francisco Bishud 60 27 13

C 19 San Bernardo 88 6 6

C 15 La Merced (Columbe) 53 23 18 6

平均値 64 30 6 18 21

26 集落の平均値 67 20 8 10 7 5 20

集落

非常時に生計を維持するための収入源

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の収穫に影響を及ぼす現象は、収穫時に雨に遭うと穂の状態のままで発芽してしまう「穂

発芽」であり、穂発芽が生じると、品質が落ち、飼料以外の用途がなくなるため、収穫時

に雨量が多い月を避ける様に播種されている。

以上のことから、一般に、コミュニティプロジェクトの集落では土壌の水分が発芽に必要

なレベルに達しない時期が無い集落では、作物の収穫時期前に霜害を避けることを前提に

播種を行っている様である。しかし、コミュニティプロジェクト対象集落を含むシエラ地

方の農家は、霜害が不定期にかつ予期しない時期に発生するため、収穫が皆無となる危険

性を常に負っている。

このことも、コミュニティプロジェクトでは小家畜 (当面はクイを対象)を飼育する有畜

農業で複合農業を図ることが、農家の家計の安定と向上に不可欠であることを示している。

参考文献

(1) Renata Lasso, Zonas de Altura y Páramos, Especuios de Vida y Desarrollo,

BioAndes, 2008

(2) Macarena Bustamante, Montserrat Albán y María Argüello, LOS PARAMOS DE

CHIMBORAZO,, BioAndes,ed: 2012

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PMSKベースライン調査分析(収入源創出分野)

岩瀬剛史(収入源創出/マーケティング)

1. 目的

本稿では、プロジェクト対象集落で実施されたベースライン調査(以下、本調査と記

す)の分析を行い、その上で、分析結果に基づく集落の分類(グループ化)、および、グ

ループごとの収入源創出戦略の策定、を行う。

2. ベースライン調査の概要

本調査は、対象集落(30 集落1)の農業、収入源創出、保健、教育、環境の各分野の現

状把握を目的に、以下の方法で実施された(調査方法の詳細は「ベースライン調査実施方

針」参照)。

表 1 ベースライン調査の概要

調査の目的 対象集落の農業、収入源創出、保健、教育、環境の各分野

の現状の把握

調査方法 調査票を用いたインタビュー形式

調査対象 1.各集落の住民(合計 352名、対象集落全体の 15%)

2. 各集落のリーダー(合計 30名)

調査実施者 Fundacion Marco (現地コンサルタント)

調査時間 一人あたり 1時間程度

調査期間 2012年 7月~8月

データの精

計算上の誤差 10%以内

(出所:筆者作成)

図 1 ベースライン調査の様子

(出所:筆者撮影)

3. 本稿の構成

本稿では、ベースライン調査の分析、分析結果に基づく集落の分類、グループごとの

収入源創出戦略の策定、を行う。

1当初、ベースライン調査は 30 集落を対象としていたが、Cachachuyo での住民の協力が得られなかったため、

最終的な調査集落は 29集落となった。

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第一のベースライン調査の分析は、各集落の収入源に関わる現状を把握することを目

的としている。そのため、分析に際しては、下記の項目の把握に重点を置く。

表 2 ベースライン調査の主要分析項目

目的 分析項目

1. 集落の概要の把握 人口、標高、主要農産物

2. 収入に関わる現状の把握 世帯ごとの平均年収、および、その構成

3. 農業に関わる現状の把握 世帯ごとの平均耕地面積、灌漑の普及率、

市場へのアクセス

(出典:筆者作成)

分析の後、収入源創出の観点から集落の分類(グループ化)を行う。分類は各集落を

分析項目ごとに 5 段階で評価し、その合計点から判断する。そして、合計点の上位 10 集

落ごとに、3つのグループに分類を行う。

集落の分類の後、グループごとの収入源創出のための基本戦略を策定する。

4. ベースライン調査の分析

4.1 一般情報

はじめに、各集落の概要を把握するために、人口、高度、主要農産物を分析する。

4.1.1 人口

プロジェクトの対象集落の総人口は、合計で 12,520 名2である。これは、県の人口(42

万人、2011年)の 3%、エクアドルの人口(1460万人、2011年)の 0.8%に該当する。

対象集落の平均人口は 450 名(60 世帯程度)である。ただし、集落間で人口格差は大

きく、

最も多い集落(Chisumaute Alto、1200名)と、最も少ない集落(Huacona Grande、100名)

では 10倍以上の差が生じている。

人口の少ない集落の多くは、都市(リオバンバ)の近くに位置している。具体的には、

リオバンバ郡では、300名を下回る集落が 75%に達する一方、都市から最も離れたアラウ

シ郡では 30%である。これは、都市に近い方が、出稼ぎが容易である故に、人口の流出

も進んでいるためである。

2 因みにチンボラソ県全体の人口は 42万人であり、プロジェクトは同県の全人口の 3%を対象としている。

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表 3 各集落の人口に関わる分析結果

対象集落(30集落)の住民の

合計 12,520名(県人口の 3%、同国人口の 0.09%)

集落の平均値 450名

最も人口の多い集落 Chismaute Alto(1200名)

最も人口の少ない集落 Huacona Grande (100名) (出所:筆者作成)

(出所:筆者作成)

図 2 集落別人口分布

4.1. 2 標高

プロジェクトの対象集落は標高 2600m~3,700m に位置している。全集落の平均標高は

3,372mであるが、これは、富士山の 8合目に値する高度である。

表 4 標高による集落の分類

標高 写真 該当する集落 主要作物

2600-3000m

1集落(Pueblo

Viejo) 小麦、野菜、馬鈴薯

3000-3500m

24集落

馬鈴薯、オオムギ、

チョチョ豆

0

200

400

600

800

1.000

1.200

1.400

平均:450名

最大:1.200名

最小:100名

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23

3500-3800m

5集落 ながねぎ、馬鈴薯、

キヌア

(出典:筆者作成)

(出所:筆者作成)

図 3 標高別集落分布

4.3 主要農産物3

プロジェクト地域で最も多く生産されている4のは馬鈴薯で、全体の 62%に達している。

その後、オオムギ(24%)、ソラマメ(4%)、小麦、キヌア(3%)が続いている。

表 5 主要農産物

主要農産物 写真 全体に占める比率、

特徴

主要生産地域

1. 馬鈴薯

62%

・主に自家消費用に

生産。集落では主に

付加価値の低いガブ

リエラ種が生産され

グアモテ郡全域、コ

ルタ郡の一部

Atapo Santa Cruz,

Atapo Santa Erena,

Rumicruz, Rumiloma

3 集落のリーダーに対し、各集落の主要農産物(一品目)の回答を求めた。

4主要農産物は、各集落で最も生産の多い農産物(一品目)を合計し、全集落の合計(29品目)に

占める比率を算出している。

2.700

2.900

3.100

3.300

3.500

3.700

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24

ている。

2. 大麦

24%

・灌漑を必要としな

いため、高地集落で

生産。自家消費用の

生産が中心

グアモテ郡全域

San Francisco de

Bishud,Columbe 1 y

2

3. ソラマメ

4%

・灌漑のない地域で

も生産が可能。主に

自家消費用に生産さ

れる

グアモテ郡、コルタ

郡、アラウシ郡の一

部。

Columbe 1 y 2,

Columbe 3 y 4

4. 小麦

3%

・低地集落での販売

用に生産されてい

る。灌漑が必要。

アラウシ郡、コルタ

郡の一部

Pueblo Viejo, La

Merced

(出所:筆者撮影)

5. 収入に関わる情報

5.1 平均年収

同地域の収入は、国内でも最も低く、対象集落の世帯年収(平均)は、同国の一人当

たり GDP(4,569ドル)の 63%の 2,900ドルに留まっている5。

ただし、集落間の収入格差は大きく、最も収入の高い集落(Columbe 1y2、6,200ドル)

と最も低い集落(Rumiloma、1,600ドル)では 3.5倍となっている。

収入別の集落の特徴を下表に示す。

5因みに、わが国の世帯年収(550 万円、2011 年)との比較では 4%である。

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25

表 6 世帯年収による集落の分類

世帯年収(平均) 写真 対象集落 特徴

2000ドル未満

(Rumiloma)

4集落

(全体の 13%)

・灌漑が存在しない

・一人当たり耕地面

積が少ない

・出稼ぎ比率が高

く、若年層が少ない

・農産物の生産量が

少なくほとんどが自

家消費用である

2000-4000ドル

(Columbe 3 y 4)

22集落

(75%)

・集落内の一部で灌

漑が存在する

・農牧業が中心であ

・時期によって出稼

ぎも行っている

4000ドル以上

3集落

(10%)

・集落の大部分に灌

漑が普及している

・幹線道路に近く、

市場へのアクセスに

恵まれている

・集落内で製粉・チ

ーズ製造等の農産物

加工による付加価値

化を実施している

(出所:筆者作成)

図 4 世帯別年間所得

(出所:筆者作成)

$ 0

$ 1.000

$ 2.000

$ 3.000

$ 4.000

$ 5.000

$ 6.000

$ 7.000

最大値:6,200ドル

最小値:1,600ドル

平均値:2,900ドル

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26

5.2 収入構成

収入源(世帯収入)は、農牧業(合計 40%)が中心であり、その後、出稼ぎ(22%)、

国からの補助金(14%)、日雇い労働(10%)が続く。

同地域では、伝統的に農業が主たる収入源であり、10 年前には収入の 50%以上が農業

で占められていたが6、集落の高齢化に伴い、近年では、労働負荷軽減のために、農業か

ら牧畜業への移管が進んでいる。そのため、農業収入は減少傾向にある。

特記事項として、近年は出稼ぎによる収入が急激に増加している。同地域の 20%以上

の集落では、出稼ぎによる収入が全収入の 40%以上に達しており、農牧業を上回る最大

の収入源となっている。これらの集落は、都市に出稼ぎに出たまま、集落に戻ってこない、

いわゆる、限界集落化が進んでおり、対象集落の一つ(Huacona Grande)では、人口が

100名まで減少している。(下記 BOX参照)

各収入の概要を下表に示す。

表 7 集落の収入構成

項目 写真 世帯収入に占める比

(全集落の平均)

内容

農業

20%

・多くの集落で収入源の柱

である。

・近年は若年層の出稼ぎに

よる高齢化が進み、減少傾

向にある。

牧畜業

20%

・集落の高齢化により農業

からの移管が進んでいる。

・集落によっては、加工も

実施されている。

出稼ぎ

22%

・かつては農業の副業とし

て行われていたが、近年は

多くの集落で主収入となっ

ている。

6チンボラソ県庁での聞き取りより。

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27

・出稼ぎ先の 99%は国内

大都市である。

・出稼ぎ労働者の多くは、

建設業や行商に携わってい

る。

補助金

14%

・低所得者を対象に提供さ

れている。

・支給額は 1 か月あたり

35ドルである。

・低所得の集落では収入の

中心となっている。

日雇労働

10%

・農業の副業として実施さ

れる。

・集落近隣での建設作業が

中心である。

・一日あたりの収入は 7‐

8ドル程度である。

(出所:筆者作成)

(出所:筆者作成)

図 5 収入源内訳

農業 20%

牧畜業 20%

その他 14%

日雇い労働 10%

出稼ぎ 22%

補助金 14%

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28

5.3 農業年収

5.2 農業収入

次に、本プロジェクトと最も関係の深い、各集落の農業収入を抽出する。

出稼ぎについて

かつては農業の副業として、一部期間のみ行われていたが、現在は 20%以上の集落で収

入の 40%を支える最大の収入源となっている。

出稼ぎ先は、99%が国内である。かつてはアメリカ、スペインなど、海外への出稼ぎも

多かった。海外への出稼ぎは、ほとんどが不正な手段によるもので、コヨーテと呼ばれる

密入国斡旋業者に謝礼を支払うことで実施されていた。しかし、近年は各国の規制の厳格

化、また、世界景気の低迷により、こうした海外への出稼ぎはほとんど行われていない。

特に、数年前にバスでの密入国を試みた数十人のエクアドル人がアメリカの国境で、国境

警察とのカーチェースの末に事故で死亡してからは、人々の海外への出稼ぎに対する意識

も大きく変わっている。

新たな出稼ぎ先として、近年人気が高いのは、国内最大の都市、グアヤキルである。同

氏は港湾都市として栄えており、同市で肉体労働に従事する集落の若者が多い。

出稼ぎの最大の問題は若年層の流出である。都市に出た若者は、そのまま戻らないこと

が多く、これらの集落では、高齢者および女性による、いわゆる 3ちゃん農業が中心とな

っている。また、人口流出による集落の消滅も発生している。

こうした状況の中、専門家が訪問したある集落では、老いた女性から、プロジェクトを

実施する事で、農業収入が向上し、村を出てしまった息子たちが帰ってきてくれるように

なって欲しいと涙ながらに訴えられている。

(出所:筆者作成)

図 6 全収入に出稼ぎの占める比率(%)

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前述の通り、農業が全収入に占める比率は年々減少しており、現在では 20%(550ドル

程度)である。

ただし、農業収入も集落間の格差が非常に激しいのが特徴的である。最も少ない集落

(Canal Huacona)ではゼロであるのに対し、逆に最も多い集落(Columbe 1 y 2)では

2,300ドルに達している。

農業収入が少ない(300 ドル以下)集落は、灌漑が存在せず、平均耕地面積も少ない。

また、傾斜地が多く、土壌浸食により土地が痩せているのも特徴的である。そのため、若

者も出稼ぎのため村を離れ、さらに農業生産が減少するという、いわゆる負のスパイラル

に嵌っている。こうした集落では、収入の中心は出稼ぎと国からの補助金が中心であり、

農業は自家消費のために行われている。こうした集落は全体の 31%(9集落)である。

反対に、農業収入が多い(1,000 ドル以上)集落は、平均耕地面積が広く、灌漑も存在

するなどの外部要因に加え、自らの努力により、トラクターや脱穀機の利用など、機械化

にも取り組んでいる。また、集落内に加工施設を構え、付加価値化も行われている。こう

した集落では、農業に携わる若者も多く、若いリーダーを中心に組織化も進められている。

しかし、こうした集落は全体的に見ると少なく、全体の 13%(4集落)である。

最も多くの集落は、農業収入が 300 ドル~700 ドル程度である。これらの集落は、農業

と牧畜業の兼業を行う事で収入を得ており、時期によって出稼ぎも行っている。いくつか

の集落では、土壌浸食を防止するための植林なども行われている。こうした集落は全体の

56%(16集落)である。

表 8 農業収入に基づく集落の分類

分類 農業収入 300 ドル以

農業収入 400-700 ド

農業収入 1000 ドル以

比率 31%(9集落) 56%(16集落) 13%(4集落)

特徴 ・灌漑存在せず

・傾斜地が多く、土

地が痩せている

・一定の耕地面積

・牧畜業との兼業が

中心

・生産の機械化が進む

・組織化も進んでいる

写真

(Canal Huacona) (ChismauteTelan)

(Columbe 1y2)

(出所:筆者作成)

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30

(出所:筆者作成)

図 7 世帯別農業所得

6. 収入に関わる指標

本項では、マーケティングに関わる現状を把握するため、販売比率、灌漑普及率、平

均耕地面積、集落から幹線道路までの距離、を分析する。

6.1 生産量に占める販売の比率

生産量に占める販売の比率は、前項で分析した農業収入と強い相関性を有する。

集落間格差が大きいのも同様であり、最も販売比率が低い集落(Canal Huacona)では、

ゼロであるのに対し、最も高い集落(Atapo Santa Cruz)では 83%となっている。

販売比率が高い(70%以上)集落は、馬鈴薯、大麦等の自家消費用の農産物に加え、人

参、ブロッコリなどの換金作物の生産にも取り組んでいる。また、支援団体(ERPE、

COPROBICH 等)の協力を受け、無農薬キヌアの生産など付加価値化も行っている。こうし

た集落は全体の 13%(4集落)である。

販売比率が低い(40%以下)集落は、自家消費用の農産物の生産が中心である。これら

の集落では、販売を意図しておらず自家消費の余剰分のみを市場に持ち込んでいる。こう

した集落は全体の 27%(11集落)となっている。

多くの集落では、販売比率が 40%~70%である。これらの集落では、販売を意図はし

ているものの、生産の積極的な多角化は行っておらず、換金作物を含む 2-3種類の農産物

を生産し、余剰分の販売を行っている。

$ 0,00

$ 500,00

$ 1.000,00

$ 1.500,00

$ 2.000,00

$ 2.500,00

最大値:2,300ドル

最小値: 0ドル

平均値: 547ドル

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31

表 9 販売比率に基づく集落の分類

分類 販売比率 40%以下 販売比率 40-70% 販売比率 70%以上

比率 27% 60% 13%

特徴 ・自家消費用の生産

が中心。

・換金作物の生産も

行われている。

・農産物の付加価値化

も行われている。

写真

(Canal Huacona)

(土地が痩せており

馬鈴薯の粒も小さ

い)

(ChismauteTelan)

(エンドウマメの栽

培)

(Columbe 1y2)

(無農薬キヌアの栽

培)

(出所:筆者撮影)

(出所:筆者作成)

図 8 生産に占める販売の比率 (%)

6.2 灌漑普及率

続いて、各集落における灌漑の普及率を分析する。普及率は、集落内に灌漑を保有し

ている住民の比率から計算する。

プロジェクト内の 37%の集落(11 集落)では全く灌漑が存在しない状況にある。これ

らの集落では、当然ながら農業生産性は低く、生産される農産物も馬鈴薯、豆類などの、

換金性の低い作物に限定されている。

反対に、灌漑に恵まれている(普及率 60%以上)集落は全体の 20%(6 集落)である。

同集落では、県や支援機関によって、過去に大々的な灌漑工事が行われている。これらの

集落では、野菜の生産等も行われている。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

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32

多くの集落では一部地域のみに、灌漑が存在している。こうした集落では、灌漑のあ

る地域での換金作物の栽培なども行われているが、同時に、水の分配を巡る集落内での対

立などの問題も発生している。

表 10 灌漑比率に基づく集落の分類

分類 灌漑比率 40%以下 灌漑比率 40-70% 灌漑比率 70%以上

比率 27% 60% 13%

写真

(Quera)

(ChismauteTelan)

(Atapo Santa Cruz)

(出所:筆者作成)

(出所:筆者作成)

図 9 灌漑普及率(%)

6.3 平均耕地面積

次に、集落の世帯あたり平均耕地面積を分析する。

耕地面積が広い(1.0Ha 以上)集落は、全体の 34%(10 集落)であり、最も広い集落

(Sarachupa)では 1.7Ha に達している。これらの集落では、労働の効率化のため、トラ

クターの使用などの機械化や、共同作業(ミンガ)による労働の分担も行われている。

他方、耕地面積が少ない(0.5Ha 未満)の集落は全体の 17%(5 集落)となっている。

このうち、灌漑を擁する地域では、効率化のために輪作なども一部で行われている。

なお、大部分の集落の平均耕地面積は 0.5~1.0Haである。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

5. A

TAP

O S

AN

TA E

LEN

A

27. C

ECEL

SA

N A

NTO

NIO

26. R

UM

ICR

UZ

4. A

TAP

O S

AN

TA C

RU

Z

2. L

A M

ERC

ED

6. S

AR

AC

HU

PA

8. S

AN

PA

BLO

DE

TIPI

N

12. J

ATU

NP

AM

BA

7. S

AN

FR

AN

CIS

CO

DE

BIS

HU

D

11. S

AN

LO

REN

ZO D

E TE

LAN

3. P

UE

BLO

VIE

JO

24

. CH

AN

CA

HU

AN

9. C

HIS

MA

UT

E T

ELA

N

17. C

OLU

MB

E 3

Y 4

16. C

OLU

MB

E 1

Y 2

19. S

AN

BER

NA

ND

O

25. B

ELLA

VIS

TA

10. C

HIS

MA

UTE

ALT

O

1. L

A P

AC

IFIC

A

13. C

HIS

MA

UTE

TYU

RA

KR

UM

I

14

. SA

N M

AR

TIN

ALT

O

15. L

A M

ERC

ED

18. C

ASH

AP

AM

BA

20. H

UA

CO

NA

GR

AN

DE

21. C

AN

AL

HU

AC

ON

A

22. L

IRIO

23. R

UM

ILO

MA

28. Q

UER

A

29. C

AC

HA

CH

UYO

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33

表 11 平均耕地面積に基づく集落の分類

耕地面積 0.5Ha以下 1.0Ha以上

比率 17%(5集落) 34%(10集落)

写真

La Merced

(馬鈴薯の収穫)

Atapo Santa Cruz

(共同作業の様子)

(出所:筆者作成)

表 12 平均耕地面積

全集落の平均値 0.8Ha

最も所有面積が広い集落 Sarachupa(1.7Ha)

最も所有面積が少ない集落 La Merced(0.2Ha)

最も多くの集落が分布する領域 0.5-1.0Ha (出所:筆者作成)

(出所:筆者作成)

図 10 平均耕地面積(Ha)

6.4 市場へのアクセス

続いて、集落から市場(マーケット)までのアクセスを把握する。

通常、集落から市場までは、通常、週 1度運行するバスを使用して移動している。

しかし、それ以外の日に市場へ行くためには、集落から幹線道路までの山道(未舗装

路)を超える必要がある。そのため、集落から幹線道路までの距離が近いほど、マーケッ

トへのアクセスが恵まれているといえる。

地域では 52%(15 集落)が比較的アクセスの恵まれている(幹線道路から 4km 以内)

距離にある。これらの集落では、悪路であることを鑑みても、徒歩で 1時間以内で幹線道

0,00,20,40,60,81,01,21,41,61,8

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路まで到達する事ができる。また、これらの集落には、仲買人によるトラックでの農産物

の買い付けも行われている。

他方、アクセスが悪い(幹線道路から 10km 以上)集落は 17%(5 集落)で、同集落で

は、幹線道路に出るまで、徒歩では 3時間以上を必要とする。これらの集落では、定期バ

ス以外

の移動手段がほとんどないため、販売は週 1度に制約されている。

表 13 市場へのアクセス

全集落の平均値 6.6km

最も幹線道路に近い集落 La Pacifica, La Merced(1km)

最も幹線道路から遠い集落 Cecel Antonio(25km)

最も多くの集落が分布する領域 2-5km

(出所:筆者作成)

表 14 市場へのアクセスに基づく集落の分類

幹線道路ま

での距離

4km以内 10km以上

比率 52%(15集落) 17%(5集落)

写真

(La Pacifica)

仲買人による買付

(San Pablo de

Tipin)

住民の移動の様子

(出所:筆者撮影)

(出所:筆者作成)

図 11 幹線道路からの距離

0,0

5,0

10,0

15,0

20,0

25,0

30,0

35,0

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7. 対象集落の分類

これまでの分析結果をもとに、収入源創出の観点から対象集落(29 集落)を 3 つのグ

ループ(付加価値産品生産集落、換金作物生産集落、サバイバル集落)に分類する。

7.1 分類の方法

集落の分類は、収入源と関わりの深い下記の項目を用いる。

表 15 集落分類の方法

項目 指標

1. プロジェクトへの参加経験 1.1) フェーズ 1への参加の有無

1.2) これまでの普及による活動の有無

2. 集落の外部要因

2.1) 標高(m)

2.2) 人口

2.3) 舗装路までの距離(km)

3. 収入 3.1) 平均世帯年収(US$)

3.2) 平均農業年収(US$)

4. 農業

4.1) 灌漑普及率(%)

4.2) 主要農産物(一品目)

4.3) 平均耕地面積(Ha)

4.4) 販売比率(%)

5. 付加価値化の実施

5.1) 脱穀機の使用

5.2) トラクターの使用

5.3) その他機器の使用

6. 組織化

6.1) リーダーの指導力

6.2) 住民の参加意欲

6.3) 共同基金の有無

(出所:筆者作成)

分類では、はじめに各指標に対し、5 段階の相対評価を行う。これにより、上位 6 集落

は 5の評価、次の 6集落が 4の評価となる。その後、項目の評価を行うため、項目を構成

する各指標の平均値を計算する。具体的には、農業に関わる項目の評価においては、灌漑

普及率、平均耕地面積、販売比率の各評価の合計を平均化することになる。その上で、各

集落の総合評価を行うために、各項目の合計の平均を計算する。こうして、計算した合計

に基づき集落の並べ替えを行い、上位 7集落を A集落(付加価値産品生産集落)、それに

続く 13 集落を B 集落(換金作物生産集落)、最下位の 10 集落7を C 集落(サバイバル集

落)と分類する。

7ベースライン調査が実施できなかった 1集落は、自動的にサバイバル集落に分類する。

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36

7.2 分類結果

上記の手法によって、対象集落の分類を行った。最終的な分析結果は以下の通りであ

る。

表 16 ベースライン調査の結果に基づくカテゴリー別の分類

分類 集落 写真

A集落

(付加価値産品生産集落)

アラウシ郡:1集落

グアモテ郡:2集落

コルタ郡:3集落

(Pueblo Viejo)

B集落

(換金作物生産集落)

アラウシ郡:2集落

グアモテ郡:7集落

コルタ郡:4集落

(Sarachupa)

C集落

(サバイバル集落)

グアモテ郡:1集落

コルタ郡:5集落

リオバンバ郡:4集落

(Huacona Grande)

(出所:筆者作成)

分類項目の変更

ベースライン調査を実施する前の段階では、仮説として、1) 農業年

収、および 2) 販売比率の二項目に基づく集落の分類を検討してい

た。しかし、調査を通じ、集落の実情を把握するためには、より多

面的な分析が必要であることが明らかなった。

そのため、分類項目は従来の二項目に加え、より包括的なものとし

た。

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37

表 17 ベースライン調査の結果に基づく対象集落の分類

(出所:筆者作成)

ORDEN 1° 2° 3° 4° 5° 6° 7° 8° 9° 10° 11° 12° 13° 14° 15° 16° 17° 18° 19° 20° 21° 22° 23° 24° 25° 26° 27° 28° 29° 30°

COMUNIDADES PUEBLO VIEJOATAPO SANTA

CRUZCASHAPAMBA

SAN MARTIN

ALTOCHANCAHUAN LA PACIFICA

SAN PABLO

DE TIPIN

ATAPO

SANTA

ELENA

SARACHUPACOLUMBE 1

Y 2LIRIO

COLUMBE 3

Y 4RUMICRUZ

CHISMAUTE

ALTOLA MERCED

SAN

LORENZO DE

TELAN

CHISMAUTE

TYURAKRUMI

CHISMAUTE

TELAN

JATUNPAMB

ALA MERCED

SAN

FRANCISCO

DE BISHUD

CECEL SAN

ANTONIO

SAN

BERNANDO

CANAL

HUACONARUMILOMA

HUACONA

GRANDEBELLAVISTA QUERA

CACHACHUY

OLIMAPAMBA

ARAUSI GUAMOTE COLTA COLTA COLTA ARAUSI GUAMOTE GUAMOTE GUAMOTE COLTA COLTA COLTA RIOBAMBA GUAMOTE ARAUSI GUAMOTE GUAMOTE GUAMOTE GUAMOTE COLTA GUAMOTE RIOBAMBA COLTA COLTA COLTA COLTA COLTA RIOBAMBA RIOBAMBA RIOBAMBA

EVALUACIÓN TOTAL DE

COMERCIALIZACIÓN 4,42 4,11 3,94 3,86 3,72 3,61 3,61 3,53 3,53 3,44 3,44 3,39 3,39 3,33 3,19 3,17 3,06 3,00 2,97 2,92 2,89 2,83 2,72 2,78 2,78 2,67 2,26 1,75 1,72 1,331. PARTICIPACIÓN EN

PROYECTO4 4 4 5 4 3 3 3 5 4 5 3 5 3 3 4 3 4 4 3 4 5 4 5 5 5 3 3 3 3

1.1 Participación en Fase 1 3 1 6 8 2 9 5 7 4

1.2 Comunidades sin

promotores1 4 3 8 5 2 6 7 9

2. CARACTERISTICA DE

COMUNIDAD5 4 4 3 4 4 3 2 3 3 3 5 2 3 4 3 3 2 2 5 4 3 3 3 2 2 5 1 4 1

2.1 Altura 5 3 4 3 5 4 4 1 3 2 2 2 4 1 2 2 1 2 1 5 3 5 4 3 1 2 4 1 5 1

2.2 Población 5 5 2 2 2 4 1 3 3 5 4 4 2 5 5 3 3 3 3 4 5 2 4 1 1 1 2 1 4 1

2.3 Distancia al Camino de

Primer Orden (km)5 3 5 4 5 5 1 1 3 3 4 4 1 1 5 3 2 2 2 4 3 1 2 5 4 3 4 1 2 2

3. INGRESO 3,5 3 5 3,5 4 3,5 3,5 3,5 3,5 5 2 4,5 4 4 2 4 2 2 2,5 3,5 2 4 3 2 1 3 1,5 3,5 1 1

3.1 Ingreso promedio anual

por familia3 2 5 4 3 3 3 2 5 5 2 4 5 3 1 4 2 1 3 4 1 4 4 3 1 5 2 5 1 1

3.2 Ingreso de agricultura

anual por familia4 4 5 3 5 4 4 5 2 5 2 5 3 5 3 4 2 3 2 3 3 4 2 1 1 1 1 2 1 1

4. AGRICULTURA 4 5 2 2 3 3 4 5 5 4 1 4 4 3 5 3 4 3 2 1 2 3 2 2 2 1 2 1 1 1

4.1 Existencia de Riego (%) 5 5 0 0 4 0 4 5 4 3 0 4 5 3 5 4 4 3 0 0 0 5 3 0 0 0 3 0 0 0

4.2 Producto PrincipalPAPA,

ZANAHORIA

PAPA,

ZANAHORIAPAPA CEBADA CEBADA

CHOCHO,

TRIGO, PAPA

CHOCHO,

CEBADACEBADA PAPA PAPA QUINUA MAIZ PAPA

TRIGO,

PAPA, PAPA QUINUA

CEBOLLA

BLANCA,

CEBOLLA

BLANCA, PAPA

CEBADA,

CHOCHOPAPA PAPA PAPA BLOCOLI PAPA PAPA PAPA CEBADA CEBADA

4.3 Promedio de superficie

cultivada has / productor 4 5 2 3 2 5 5 4 5 5 3 5 4 2 4 3 4 1 3 1 3 2 2 4 3 2 1 1 1 1

4.4 Porcentaje de Venta

(%)3 5 4 2 4 3 2 5 5 5 1 4 3 4 5 3 5 4 4 2 2 3 1 1 2 1 3 2 1 1

5. VALOR AGREGADO 5 4 5 5 3 5 5 4 3 2 4 2 1 3 4 3 3 3 4 4 3 1 2 2 2 2 1 1 1 1

5.1 Uso de Trillador

5.2 Lavar o/y Selección o/y

Empaque de producto

5.3 Uso de Molinos

5.4 Centro de Acopio

5.5 Quesero

7. ORGANIZACIÓN 5 5 4 5 4 4 4 4 2 2 5 2 4 4 2 2 3 4 3 1 3 1 2 3 5 3 1 1 1 1

7.1 Numero de socios en el

proyecto34 25 - 30 - - - 50 - 30 - - - - - 27 - 30 - - - 16 - - - -

7.2 Liderazgo del grupo B B A A A B A B A - B - B B C B - B A - A B - B - B

7.3 Motivación de los

participantes al proyectoA B A A A C A B A - B A B B C B - B A - A B - B - B

7.4 Existencia de Caja

Comunitaria

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38

8. グループごとの付加価値戦略

ベースライン調査の結果を基に、グループごとの付加価値戦略を策定する。

戦略策定を行うに際し、最初にグループごとの基本方針(基本戦略)を検討する。

サバイバル集落では、これまでの分析で示した通り、農産物の生産量が少ないことが収入

源創出のための最大の障壁となっている。特に、31%の集落(9集落)では農業収入は

300ドル以下に留まっている。このため、同カテゴリーの集落では、収入源創出のための

第一の戦略として「生産量の増加」が必要である。

第二のカテゴリーである換金作物栽培集落では、多くの集落で一定の生産量を有する(生

産量に占める販売の比率が 40~60%)ものの、依然として農業収入は 300ドル~700ドル

に留まり、住民の多くは出稼ぎなどの副業を余儀なくされている。農産物の生産があるに

もかかわらず、農業収入が向上しない最大の理由は、農産物の付加価値化が行われていな

いことにある。具体的には、同カテゴリーの多くの集落では、収穫した農産物をそのまま

の状態で、市場で販売しており、仲買人に安く買いたたかれている状況である。そのため、

同カテゴリーの集落に対し執るべき基本戦略は「農産物の付加価値化」とする。

付加価値産業レベルの集落では、多くの生産量(生産量に占める販売の比率は 70%以上)

を擁し、農業年収も 1,000ドルに達している。いくつかの集落では、地域に食品加工工場

も有し、付加価値化も行われている。これらの集落では、更に付加価値化を進めることが

重要であるが、それと同時に、農業外活動も含めた新たな収入源を獲得することも必要で

ある。そのため、同カテゴリーの集落への基本戦略は「生産の多様化」とする。

次に基本戦略を実現するための、活動を検討する。

基本戦略として、生産量の増加、農産物の付加価値化、生産の多様化、を挙げたが、これ

を実現するためには、市場のニーズを見据えた付加価値化の実現、および、販路の開拓、

各集落の農民の能力開発、および、組織の経営改善が必要である。そのため、基本戦略を

実現する活動は、これらの項目を満たすものである必要がある。

上記の内容を踏まえ、収入源創出を実現するための、カテゴリー別の基本戦略、および、

なすべき活動を表に纏める。

表 18 カテゴリー別の基本戦略

サバイバルレベル 換金作物栽培レベル 付加価値型産業レベル

基本戦略 生産量増加 付加価値化 生産多様化

活動

1. 販路開拓 1.1 フェリア等で

の小規模販売の実施

1.1 農産物ごとの付

加価値戦略

1.1 農産物ごとの付

加価値戦略

1.2 小動物(クイ)

の付加価値化

1.2 小動物(クイ)

の付加価値化

1.3 需要に基づく新

規農産物の生産

2. 付加価値化 1.1 洗浄、選別、

包装などの付加価値

2.1. 市場価格の変動

を利用した付加価値化

2.1 市場価格の変動を

利用した付加価値化

2.2 市場による取引

価格の差異を用いた付

加価値化

2.2 市場による取引

価格の差異を用いた付

加価値化

2.3 農産物ごとの付

加価値戦略

2.3 農産物ごとの付

加価値戦略

Page 39: ベースライン調査結果の分析 - JICA1 チンボラソ県持続的総合農村開発プロジェクト ベースライン調査結果の分析 2012年10月 プロジェクトチーム作成

39

2.4. 小動物(クイ)

の付加価値化

2.4 小動物(クイ)

の付加価値化

3. 経営改善 3.1 共同基金設立 3.1 共同基金設立 3.1 共同基金設立

3.2 共同販売実施 3.2 共同販売実施 3.2 共同販売実施

3.3 集落企業の設立

4. 能力開発 4.1 簿記 4.1 簿記 4.1 簿記

4.2 コスト分析 4.2 コスト分析

4.3 マーケティング 4.3 マーケティング

4.4 企業設立

(出所:筆者作成)

9. 今後の活動

本稿では、ベースライン調査の分析を行い、その上で、分析結果に基づく集落の分類、

グループごとの収入源創出戦略の策定、を行った。

今後は、これを具体化し、実際の活動につなげるために、市場調査、および集落への

訪問調査を通じた詳細活動の設計が必要である。

以上

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40

PMSKベースライン調査分析(環境分野)

廣住 清(チーフアドバイザー/持続的総合農村開発)

1. 自然環境分野におけるチンボラソ県の概観

県全体の 59%は、年間を通じて低温の“高地エクアドル気候”であり、降雨量は

年 1,500mm~2,000mmである。同 24%は、平均気温 12~20℃であり、降雨量 500㎜~

2,000mmの“半湿潤中間温度エクアドル気候”である。そして、残る 13%は、乾燥中

間温度エクアドル気候“及び“湿潤高温熱帯気候”に属する。

天然植生は県面積の約 55%を占めており、その内訳は、30.9%が植生パラモ、高

山湿潤性潅木 6.4%、高山常緑林 5.8%、その他で構成されている。

県土の 58%が 70%以上の急斜面であり、22%は 50%~70%の傾斜地で占められて

いる。特に傾斜地面積が大きい郡は、Guamote, Colta, Riobamba, Alausiである。

2.環境分野における対象 30集落の状況

1) 地勢(傾斜地)

対象集落の 3分の 2(19集落)において、集落全体に占める傾斜地面積が 5割を

超えており、その内の 8集落では、傾斜地が 7割以上となっている。中には、San

Bernardoや Huacona Grandeのようにほぼ集落全体(9割超)が斜面のところも存在

する。なお、傾斜地面積割合が小さい少数の集落における平均傾斜地割合は 35.6%

であり(Colta郡 La Meredの傾斜地面積 8%は除外)、平地に形成された集落は皆

無であることが明らかである。(下記「傾斜面積割合グラフ」参照)

図1.「傾斜面積割合グラフ」

2) 土壌浸食状況

土壌浸食が発生していると答えた農家の割合が 50%以上の集落は 9ヶ所、その内

70%を越えたところは 3集落であった。前述以外(50%以下)の農家の平均は 31%

であった。なお、この中には、土壌浸食は全く見られないと回答した Chancahuan 及

び Bellavistaの 2集落は含まない。多くの集落において土壌浸食が進行している理

由としては、前項の地勢(「対象集落の 3分の 2(19集落)において集落全体に占

La P

acif

ica

Pu

eblo

Vie

jo

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San

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San

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San

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3 y

4

San

Be

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Can

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Ru

milo

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Be

llavi

sta

Ce

cel S

an A

nto

nio

Cac

ha

Ch

uyo

30

92

42 16

58 43 47 67

46 23

50 56 61 62 41 30 33 50

10 8 14 35 47 45

23 68 81

35 62

70

8

58 84

42 57 53 33

54 77

50 44 39 38 59 70 67 50

90 92 86 65 53 55

77 32 19

65 38

TOPOGRAFIA PLANA PENDIENTE 赤=傾斜地面積割合

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41

める傾斜地面積が 5割を占めている」)に直接的に起因していること、そして以降

でも言及する土質さらには土壌浸食対策の状況に関係していると言えよう。

図 2.「土壌浸食割合グラフ」

3) 土質

対象集落の土質を砂質と粘質に大別した調査データ集計を見ると、11の集落では

土壌の 100%が砂質であり、それ以外の集落でも、40%近くが砂質であることがわ

かる。なお、Canal Huaconaの土壌は、例外的に 100%粘質である。地域別では、

Guamote 郡に砂質土壌が、Colta郡に粘質が優勢である。

0102030405060708090

100

25 12

33 18

40 56

43 37

78 80 90

44 25

44 35 25

50

25

57 67

50 37 43

0 0 11

80

25 38

75 88

67 82

60 44

57 63

22 20 10

56 75

56 65 75

50

75

43 33

50 63 57

100 100 89

20

75 62

EXISTE AREAS EROSIONADAS

SI NO NO SABE 緑色:土壌浸食発生

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42

図 3.「土質別割合グラフ」

4) 土壌浸食対策

傾斜地農業での主な土壌浸食対策として、テラス(漸次形成型緩やかな段差)、

雨水排出溝、在来種植林などが上げられる。これらの対策について調査した結果

(下記図参照)によれば、ほぼ全ての集落において在来種を植えて(維持して)い

るが、テラスや雨水排出溝を採用している農家は、それぞれ全体の 3割程度と少な

い状況にあることがわかる。なお、例外的ではあるが Bellavistaのように一切対策

を講じていない集落も存在する。

図 4.「土壌保全対策」

0102030405060708090

100

100

44 56 22 16

100 100 100 100 100 100

44

100 66

32 26 50 50 47 38

0 26

100 100 100

22 52

22 57

0

56 44 78 84

0 0 0 0 0 0

56

0 34

68 74 50 50 53 62

100 74

0 0 0

78 48

78 43

TIPO DE SUELO SUELTO PESADO

0

20

40

60

80

100

120

Obras de Conservación

TERRAZAS ZANJAS DE DESVIACION PLANTACIONES S NATIVAS NINGUNA

灰色:砂質土壌

青:テラス、 赤:雨水排出溝、 緑:在来種植林、 紫:無対策

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5) 廃棄物処理

廃棄物の処理状況については、別添の集計データ一覧表の「廃棄物処理」項目に

記載の通り、ほぼ全ての集落において、固形物は焼却、埋処理を行っており、液状廃

棄物は穴、圃場、谷、川に放棄しているのが実情である。唯一 Jatumpambaが、固形

物の一部を市政府のゴミ収集車が回収していると回答している。

3. 農業所得との相関関係

別添の「ベースライン調査のデータ一覧表:環境分野」を見る限りでは、農業所得

(基本情報)と環境分野の調査結果との相関関係は見出せない。換言すれば、当県の

高地山間部(平均標高 3,370m)に暮らす小農(平均耕地面積 0.82h)は、ほぼ一様に

過酷な諸条件(傾斜地、少降雨量、寒冷地、土壌浸食、過疎化等)で農業を営んでい

ることから、相関性が認められないとも考えられる。

しかしながら、対象集落に行きそこの現状を実際に観察すると、上記のデータに反

し、平地(台地)が優勢であり、黒土・粘質の土質、そして灌漑の整備されている圃

場の多い集落の方が、より活発に農業が営まれていることが感じ取れる。他方、デー

タ上の農業所得において、集落間で生産基盤整備の度合いの違いに大差なく低レベル

にとどまっていることは、栽培技術や収入源創出の方法が十分ではないことを意味し

ており、それらの技術や方法の導入が支援ニーズとなっている。

4. 持続的農業に向けて

1) 傾斜地においては、降雨時に土壌が侵食しやすく、加えて高地では強風により風

食が発生しやすく、特に砂質の土壌ではその影響が顕著である。従って、高地の傾

斜地での農業においては、雨水による土壌浸食を軽減するためには、先ずは雨水排

出溝およびテラスを造成するとともに、等高線栽培を適用することが必須である。

同時に風食対策として、圃場周辺、特に風上部位に防風林を植えることが効果的で

ある。

一部の圃場では、既に上記のような対策を講じているが、その効果は不十分であ

ることから、本プロジェクトを通して農民に対しより効果的な技術指導を計画し実

施する必要がある。また、防風林や生垣を植える場合には、生活改善(栄養源)及

び持続性(モチベーション)の観点からなるべく高地に適した果樹を導入すること

も検討する。

なお、上記のような土壌保全対策の作業は重労働であることから、溝堀や植林用

穴掘りに使うミニショベル、及び等高線栽培用整地のために高齢者でも婦人でも取

り扱い可能な軽量の小型耕運機を導入する計画である。

2) 廃棄物処理については、集落の生活様式により有害廃棄物(工業廃棄物、医療廃

棄物等)は一般的には発生せず、家庭ゴミ、農作物の不要な部分、家畜の糞などが

主要な廃棄物である。従って、固形・液体の分別よりも有機物と無機物に区別し、

有機廃棄物は有機肥料の原料として活用できるよう有機肥料の作成方法及び適用法

について指導していく必要がある。

また、家畜の頭数等条件が揃えば、将来的にバイオガスの回収と家庭内利用も計

画していく。

このようにして、単なる多角経営ではなく自前で生産可能な循環型の複合農業を

営む集落へと発展していくことを本プロジェクトの柱の一つとする。

以上

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44

PMSKベースライン調査分析(社会開発分野)

栗原敏昭(業務調整/参加型開発)

1. 郡別貧困率

下記表のとおり、リオバンバ郡以外の 3郡については住民のほとんど(87%~95%)が

貧困下に生活をしており、貧困削減・生活改善を活動目標とする当プロジェクトの支援ニ

ーズが高いことが伺える。

貧困率 絶対貧困率

アラウシ郡 87% 63%

グアモテ郡 95% 75%

コルタ郡 93% 64%

リオバンバ郡 46% 18%

(出展:Sistema Integrada de Indicadores Sociales del Ecuador 4.0)

2. 家計

対象集落の収入源に関しては、一般的に農業従事が 72%、次いで他地域への出稼ぎが

20%と、大半を占める。その他は公務員/企業雇用者(2%)などであり、同地域における

貧困削減に農業振興の強化が求められている。

家計困窮時の収入源においては、小家畜販売が 65%を占め、作物の販売時期以外には、

クイやウサギ飼育や養鶏などが重要な収入源となっていることがわかる。その他は、家族

の出稼ぎ(17%)、親戚・家族の協力(12%)、その他(融資など 6%)など。

対象住民の小規模金融への関しては、22%の住民にのみ利用経験が確認された。これら

のアクセス先の内訳は信用組合(52%)、商業銀行(34%)、集落農村金融(13%)となっ

ている。また、87%の住民には金融アクセスがなく、90%は自己資金のみで生活し 10%はイ

ンフォーマルな賃借(親戚など)に依存している。一部の集落(Pueblo Viejo, San

Lorenzo de Telan, Rumicruz等)にのみ金融アクセスが限られていることがわかる。

3. 集落組織

集落における組合等の組織については、74%の住民が無所属であり、残り 26%の住民は

クリスチャン(Evangélico)協会や女性グループなどに属しているのが一般的であり、主

に農業生産、商業、融資、農業資材、防犯、研修支援受入などを活動目的としている。

集落組織に対しては、64%の住民がメリットがあると感じており、19%の住民はメリット

を感じていない。また、組織は個人の生計に影響がないと感じている住民は 73%であり、

組織に対して意義・メリットを理解している住民は集落によってまちまちである。割合は

少ないが、組織に関してネガティブな印象を持っている住民も存在する。

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集落組織には運営委員会(Directiva)が組織されている例は 46%存在し、共同事業

(MINGA)開催頻度においては、多くの集落が月に 1~4回活動している(月 1回(34%)

月 2回(29%)、月 4回(28%)、隔月 1回(9%))。

これらのデータから、更なる組織活動への参加促進と組織運営にかかる指導や活動参加

への意義啓蒙が有効であると考える。

4. 保健

5歳以下の法定伝染病ワクチン接種率は 93%、1歳以下乳児の 73%が健康状態であること

が確認され、乳幼児にかかる健康に関しては劣悪な環境ではないことが判明した。ただし、

Atapo Sta Elena集落住民は予防接種が全く受けていない(0%)、また、San Pablo de

Tipin集落と Canal Huacona集落はそれぞれ 42%、50%の家庭の乳幼児が予防接種を受けて

いないことが判明した。

全体的に、どの世代においても、不健康な状態にある住民の大半は呼吸器系の疾患が大半

である。次いで、下痢、皮膚疾患、寄生虫疾患などが多い。また、高齢者ほど、骨や筋肉

系統の疾患が増える。乾燥した土地である上に砂上の土質から埃などが多く、呼吸器疾患

が多いことを考えるとウガイ啓蒙やマスク配布、湿気対策などの活動や、胃腸系疾患の多

い集落では飲料水や食品衛生管理などの改善活動も有効と思われる。

集落の医療アクセスは保健省施設が 71%の住民にアクセスが認められ、次いで SSC

(Seguro Social Campesino)が 14%、8%の住民には家庭医療のみ(医療アクセスがないこ

とを意味する)となっている。特に、San Pablo de Tipin集落、Rumicruz集落には保健

省の施設がない。

性教育の受講集落は 87%であり、13%が未受講である。しかしながら、家族計画や避妊

法の実践をしていない家計は全体で 81%に上り、全ての集落で 50%以上の非実践家庭であ

りそのうち半数の 15集落は 90%以上が非実践家庭であった。今回の調査では家族計画等

の非実践におけるネガティブなインパクト調査(貧困家庭の望まれない多産、シングルマ

ザー、若年出産におけるリスク、孤児割合等)は行われていないが、性教育・家族計画の

啓蒙活動も重要である。

集落住民の主要栄養摂取源は、馬鈴薯(全集落)、麦類(小麦、大麦、燕麦等)、野菜

が中心ということであり、たんぱく質(肉類)、カルシウム源(乳製品)などの不足が予

想される。(反面、消費の中心となっているこれらの作物生産は自給用や集落販売として

も重要ともいえる。)

5. 教育

調査対象の 30集落における就学率は総じて低く、未就学人口は平均 24.9%とおよそ 4

人に 1人は就学していない(か初等教育を修了していない)。就学者の最終学歴の平均は、

小学校卒が 49.6%、中卒 23.1%、高卒以上が 2.8%という結果となった。また、日常におい

て文字を読む習慣の全くない人の 30集落平均は 39%であり、大部分は非識字者である可

能性が高い。特に、Chanca Huan集落(未就学者率 57%、非読書者率 75%)と Bellavista

集落(未就学者率 52%、非読書者率 67%)と最も教育レベルが低いことが判明した。他方、

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Canal Huacona 集落(未就学者率 5%、非読書者率 0%)、Cachapamba 集落(未就学者率 5%、

非読書者率 0%)、San Martin Alto集落(未就学者率 12%、非読書者率 0%)の 3集落は、

調査集落の中で比較的高い教育レベルを示した。

研修に関しても参加意欲は総じて高く、全体平均の 83%の住民が受講意欲がある。これ

まで受講した分野は農業が多く(46%)、次いで、識字教育(22%)、環境教育(11%)、

農村開発(11%)、公衆衛生(8%)、情報機器(2%)となっている。

前述の集落が典型的であるが、他の集落においても就学率と識字率に相関関係がある傾

向が認められ、教育レベルの低い集落における成人教育活動の有効性が認められる。今回

の調査でもわかるとおり、特に成人教育に関しては識字研修を実践するだけではせっかく

覚えた文字をすぐに忘れてしまう可能性があるため、研修と平行もしくは同時に住民の生

活改善ニーズにあった教育活動(例えば農業生産や販売をテーマにした読み物を配布する

など)を行う必要があると考える。

以上