ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査 - osaka university...
TRANSCRIPT
.はじめに
近年ペットの高齢化が進み、癌や認知症にかかるペットの割合が増加しているといわれる
(アニコムホールディングス株式会社, 一般社団法人ペットフード協会,
)。これに伴い、ペットに安楽死処置を施すことを選択肢の一つとして考えなければな
らない状況に置かれる飼い主の数も、以前に比べて増加しているものと推測される。
( )に代表される欧米のペットの安楽死に関する研究では、安楽死選択が飼い主
のペットロス要因や獣医師のストレス要因になりうることが指摘されている。この一方で、
日本においては、その処置数をはじめ、安楽死選択に関する飼い主および獣医師の意識や、
それが両者に及ぼす影響等についての実証的な研究データは少なく、ペットの安楽死を取り
巻く現状を知ることは難しい。しかし、日本においても、安楽死選択によって飼い主と獣医
師の双方が受ける精神的負担は、決して軽いものではないであろうことは充分に予想され
る。両者の安楽死選択に関する意識や安楽死選択の際に直面する問題を究明し、お互いが納
.はじめに
.調査方法
. .調査対象者
. .調査票
. .回収率と回答者
.設問と回答分布
. .安楽死の処置経験の有無と年間処置件数
. .ケース別に見た安楽死選択の賛否
. .ケース別に見た飼い主への安楽死提示の有無
. .安楽死一般に関する意識
. .安楽死処置に関わる過程で感じるストレス
. .安楽死処置に関わる過程における飼い主への対応
. .安楽死に関するガイドライン作成の賛否
.おわりに
ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査設問と回答分布
杉 田 陽 出入 交 眞 巳
得した上で安楽死選択に臨めるような環境の構築を目指すことが、今必要とされているので
はないだろうか。このような観点から、今回は獣医師側の安楽死に関する意識や飼い主への
対応に焦点を置いた調査票を作成し、全国の臨床獣医師を対象にアンケート調査を実施し
た。本稿では、調査で用いた設問とその回答分布を提示していく。
.調査方法
. .調査対象者
今回の調査では、診療で日常的に飼い主と接しており、その飼い主のペット動物の安楽死
処置を行う立場になる可能性が高い点、ならびに個人の考えが動物病院の診療方針や経営方
針に反映される可能性が高い点を考慮し、小動物医療に携わっている開業獣医師を調査対象
者に選んだ。調査対象者の母集団は、 年 月(一部 月)現在で、 の タウン
ページに掲載されている全国の動物病院である )。政令指定都市、その他の市、郡部に分類
した全国 都道府県の各地域について、掲載されている動物病院数から標本数を比例配分し
た上で、無作為抽出した の動物病院に、 年 月に調査票を郵送した。
. .調査票
今回の調査で用いた調査票には、調査対象者である獣医師の基本属性に関する設問に加え
て、安楽死の処置経験の有無と年間処置件数、ケース別に見た安楽死選択の賛否、ケース別
に見た飼い主への安楽死提示の有無、安楽死一般に関する意識、安楽死処置に関わる過程で
感じるストレス、安楽死選択をめぐる飼い主とのコミュニケーション、安楽死処置に関わる
過程における飼い主への対応、安楽死に関するガイドライン作成の賛否といった設問を設け
た )。
. .回収率と回答者
調査対象者に送付した の調査票の内、 の調査票が回収された。宛先不明や該当者
死亡、閉院などが判明した調査対象者 人を除外した回収率は %である。回収された調
査票の回答者の内、 小動物医療に携わっている臨床獣医師 という条件にあてはまらない
人を分析対象者から除外した。よって、本稿の回答分布に関する分析に用いられている回
答者数は 人である。表 は回答者の性別及び年齢層を表している。
大阪商業大学論集 第 巻 第 号(通号 号)
)この内、重複掲載されている動物病院や開業動物病院でないとわかるもの、小動物医療を専門としていないと判断される動物病院は除外した。また、大学付属といった名称がついている動物病院や、特定の飼い主と接する機会が少ないと考えられる夜間救急動物病院も除外した。) 年 月から 月にかけて仮の調査票を用いた予備調査を行い、得られたデータの集計結果や回答者の意見を参考に設問や選択肢の内容を検討し、今回の調査票を作成した。
ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査(杉田・入交)
.設問と回答分布
ここでは、調査票に含まれる設問の内、安楽死の処置経験の有無と年間処置件数、ケース
別に見た安楽死選択の賛否、ケース別に見た飼い主への安楽死提示の有無、安楽死一般に関
する意識、安楽死処置に関わる過程で感じるストレス、安楽死処置に関わる過程における飼
い主への対応、安楽死に関するガイドライン作成の賛否の各設問について、その作成意図と
内容について説明を加えながら、それぞれの回答分布を順に提示していく ) )。ただし、今
回の調査で得られた回答分布の結果については、今後の研究においてより詳細に分析を行
い、その知見を発表していく予定であることから )、本稿で考察を加えることは控えてい
る。
. .安楽死の処置経験の有無と年間処置件数
獣医師の安楽死処置経験を尋ねる設問として、 問 あなたは、臨床獣医師になってか
ら、動物の安楽死を行った経験はありますか を調査票に設けた。この設問に はい と回
答した者にのみ、 問 あなたは、過去 年以内に、来院した動物の安楽死を行いました
か と尋ねており、さらにこれに はい と回答した者にのみ、 問 その件数はどのく
らいですか。過去 年以内に行った件数をお書き下さい と尋ねている。これにより、回答
者である各獣医師が行った安楽死の年間処置件数を導き出している。図 から図 はこれら
の設問の回答分布を示している ) )。
)紙面数の制約上、今回は安楽死選択をめぐる飼い主とのコミュニケーションに関する設問の説明及び回答分布は提示していない。)各設問の回答分布図に記載している合計回答者数は、分析対象者 人から無回答者や非該当者、ならびに判然としない回答をした者を除いた数である。)安楽死処置に関わる過程における飼い主への対応については、 年 月 日、ヒトと動物の関係学会第 回学術大会において、 安楽死処置をめぐる動物病院の飼主への対応に関する調査 と題した研究発表を行った。また、ケース別に見た安楽死選択の賛否については、 年 月 日、スウェーデンのストックホルムで開催される第 回人と動物の関係に関する国際会議( )において、
と題した研究発表を行う予定である。( 年 月 日現在))問 の回答者には、 小動物医療に携わると同時に、大動物や産業動物の医療に携わっている と回答した 人も含まれている。)問 では処置件数を実数で回答する形式になっているが(最小値 、最大値 、標準偏差 )、図では処置件数 件と 件、 件以上をそれぞれ つのカテゴリにまとめて表示している。
表 回答者の性別と年齢層
歳代 歳代 歳代 歳代 歳代 歳代 歳代 無回答 計男性女性無回答計
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図 問
図 問 図 問
図 問 図 問
ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査(杉田・入交)
図 問 図 問
図 問 図 問
図 問 図 問
. .ケース別に見た安楽死選択の賛否
安楽死選択の賛否を尋ねる設問として、 問 次の のような場合の動物について、
あなたは、安楽死させたほうがよいと思いますか、させるべきでないと思いますか を調査
票に設けた。この設問は、獣医師がどのような場合に安楽死選択を受け入れるのか、あるい
は拒否するのか、その判断基準を見る目的で作成したものであり、動物の状態や飼い主の意
思など、安楽死選択の決め手になると考えられる条件を変えて作成した 通りのケース項目
から構成されている )。各項目には、両端の と にのみ 安楽死させたほうがよい と
安楽死させるべきでない という言葉を配置した つの選択肢が与えられている。図 か
ら図 は各設問項目の回答分布を示している。
問 の設問項目の内容は次の通りである。 治療を施しても回復の見込みはなく、また
痛みや苦しみを緩和させることができない状態で、飼い主が安楽死を望んでいる場合 (図
)、 治療を施しても回復の見込みはなく、また痛みや苦しみを緩和させることができ
ない状態であるものの、飼い主が治療の継続を望んでいる場合 (図 )、 治療を施せば
回復する見込みはあるものの、回復後に動物の (生活の質)が著しく落ちることが予
想される場合 (図 )、 治療を施しても回復の見込みはないものの、飼い主は安楽死を
望んでいない。しかし、飼い主の (生活の質)が著しく落ち込んでいる場合 (図
)、 治療を施せば回復する見込みはあるものの、治療費の支払い能力がないという理
由で、飼い主が安楽死を望んでいる場合 (図 )、 治療を施せば回復する見込みはあ
り、飼い主は治療の継続を望んでいるものの、その飼い主に治療費の支払い能力がない場
合 (図 )、 転勤先や引越し先に連れて行けないという理由で、飼い主が安楽死を望ん
でいる場合 (図 )、 飼っているペットが産んだ子犬や子猫の安楽死を、飼い主が望ん
でいる場合 (図 )、 野良犬や野良猫が産んだ子犬や子猫の安楽死を、近所の住人が望
んでいる場合 (図 )、 入院または死亡した飼い主の飼っていたペットの安楽死を、親
族や近所の住人が望んでいる場合 (図 )。
. .ケース別に見た飼い主への安楽死提示の有無
飼い主への安楽死提示の有無に関する設問として、 問 次にあげる のような場合
に、あなたは、安楽死の選択肢があることを、あなたご自身から飼い主に提示しますか を
調査票に設けた。この設問は、特に治療の継続を望んでいる飼い主に対して、獣医師側から
安楽死選択を提示するのかどうか、その判断基準を見る目的で作成した。安楽死選択に関す
る獣医師自身の意見と比較する目的もあり、安楽死選択の賛否を尋ねた問 の設問項目か
ら、飼い主が治療の継続を望んでいる場合を中心に選んだ 通りのケース項目から構成され
ている。各項目には、両端の と にのみ 提示する と 提示しない という言葉を配置
した つの選択肢が与えられている。図 から図 は各設問項目の回答分布を示している。
大阪商業大学論集 第 巻 第 号(通号 号)
)この項目を作成するにあたっては、イギリスと日本の獣医師を対象に安楽死選択の賛否を調査した先行研究( )や、合衆国やオーストラリアの安楽死に関するガイドライン(
)、日本人獣医師が安楽死について言及した文献( 西山 下村)等を参考にしている。
ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査(杉田・入交)
図 問 図 問
図 問 図 問
図 問 図 問
問 の設問項目の内容は次の通りである。 治療を施しても回復の見込みはなく、また
痛みや苦しみを緩和させることができない状態であるものの、飼い主が治療の継続を望んで
いる場合 (図 )、 治療を施せば回復する見込みはあるものの、回復後に動物の
(生活の質)が著しく落ちることが予想される場合 (図 )、 治療を施しても回復の見
込みはないものの、飼い主は安楽死を望んでいない。しかし、飼い主の (生活の質)
が著しく落ち込んでいる場合 (図 )、 治療を施せば回復する見込みはあり、飼い主は
治療の継続を望んでいるものの、その飼い主に治療費の支払い能力がない場合 (図 )。
. .安楽死一般に関する意識
安楽死一般に関する意識を尋ねる設問として、 問 次の の意見について、あなた
は、どうお考えですか を調査票に設けた。この設問に含まれる 項目は、ある特定のテー
マに沿って内容を決定したものではなく、安楽死について獣医師がどのように考え、感じて
いるのかを多面的な設問内容によって捉えようと作成したものである。各項目には、 そう
思う 、 どちらかといえばそう思う 、 どちらかといえばそう思わない 、 そう思わない
の つの選択肢が与えられている。図 から図 は各設問項目の回答分布を示している。
問 の設問項目の内容は次の通りである。 獣医師のあいだで、ペットの安楽死選択と
いう考え方は受け入れられている (図 )、 一般の人々(飼い主)に、ペットの安楽死
選択という考え方は受け入れられている (図 )、 場合によっては、安楽死選択は飼い
主のことを考えた結果であり、やむをえない (図 )、 場合によっては、安楽死選択は
動物のことを考えた結果であり、やむをえない (図 )、 安楽死は診療の一環である
(図 )、 安楽死を施すかどうかの判断を下すのは難しい (図 )、 安楽死の施術
を苦痛に感じることがある (図 )、 飼い主は安楽死の現場に立ち会ったほうがよい
(図 )。
大阪商業大学論集 第 巻 第 号(通号 号)
図 問 図 問
ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査(杉田・入交)
図 問 図 問
図 問 図 問
図 問 図 問
. .安楽死処置に関わる過程で感じるストレス
安楽死処置に関わる過程で感じるストレスに関する設問として、 問 次の の安楽
死処置に関わる過程において、あなたは、どのくらいストレスを感じますか。ストレスレベ
ルを (全くない 最大級レベル)とした場合、一般的な状況を想定して、それぞれの
項目について、あてはまる数字に をつけてください と、 問 あなたは、安楽死処置の
後、次のような経験をしたことがありますか。あてはまるもの全てに をつけてください
を調査票に設けた。問 は、飼い主とのやり取りを含めた安楽死処置に関わる過程を時系列
で 項目に分類し、回答者が各項目過程で感じるストレスのレベルを から の 段階で主
観的に評価するようになっている。問 は、ストレスレベルそのものを測るというよりは、
( )の先行研究を参考に選択した 項目について、回答者が安
楽死処置後に経験したことがあるのか複数回答形式で回答する方法を取っている。図 から
図 は問 の各設問項目の回答分布を示しており、図 から図 は問 の各設問項目の回答
分布を示している )。
問 の設問項目の内容は次の通りである。 動物の状態が良くないと飼い主に告げると
き (図 )、 安楽死という選択肢があることを飼い主に提示するとき (図 )、 自
分はその動物を治せると思っているのに、飼い主が安楽死を決断したとき (図 )、 飼
い主が動物を安楽死させるために、約束の日時に来院したとき (図 )、 飼い主から動
物を受け取って前処置を始めるとき (図 )、 飼い主の前で、安楽死のための薬剤を注
入するとき (図 )、 動物の心臓が止まったかどうか確認するとき (図 )、 安楽
死処置が終わって飼い主に動物を返すとき (図 )、 飼い主を病院から送り出すとき
(図 )、 安楽死を施した後日、飼い主と話をするとき (図 )。
問 の設問項目の内容は次の通りである。 胸が締めつけられるように感じた (図
)、 泣いた (図 )、 一人になりたくなった (図 )、 よく眠れなかった
(図 )、 誰かを怒鳴りつけた (図 )、 お酒を飲みたくなった (図 )、 お
酒を飲んだ (図 )、 落ち込んだ (図 )、 怒りを感じた (図 )、 敗北感を
感じた (図 )、 ほっとした (図 )、 誰かとしゃべりたくなった (図 )。
大阪商業大学論集 第 巻 第 号(通号 号)
)問 の回答分布図については、全ての選択肢に回答していない 人を除いた人数を合計回答者数としている。
図 問 図 問
ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査(杉田・入交)
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. .安楽死処置に関わる過程における飼い主への対応
安楽死処置に関わる過程における飼い主への対応に関する設問として、 問 あなたの病
院では、安楽死を行う際に、次の の項目をどの程度行っていますか を調査票に設け
た。この設問は、飼い主がペットの安楽死を選択した場合に、その処置現場で獣医師側が飼
い主にどのような対応を取っているのかを見るために作成したものであるが、獣医師個人の
対応というよりは、動物病院全体の対応を測ろうとしている。このため、時系列で分類した
安楽死処置過程における飼い主への対応に関する 項目について )、回答者が勤務する動物
病院ではどの程度行っているのか、 常に行っている 、 時々行っている 、 たまに行って
いる 、 全く行っていない の つの選択肢で回答するようになっている。図 から図 は
各設問項目の回答分布を示している。
問 の設問項目の内容は次の通りである。 処置前に、飼い主に安楽死処置の流れを説
明する (図 )、 処置前に、飼い主に心の準備ができているか確認する (図 )、
飼い主に同意書を書かせる (図 )、 飼い主に心の準備ができていない場合、心の準備
ができるまで充分に時間を取る (図 )、 安楽死の現場に飼い主を立ち会わせる (図
)、 処置後に、飼い主がプライバシーを確保できる場所を提供する (図 )、 処
置後に、飼い主の精神的ケアを行う (図 )、 会計など、事務的な手続きはできるだけ
迅速に行う (図 )、 病院で用意しているペット用棺に遺体を納める (図 )、 飼
い主に葬儀社や動物霊園を紹介する (図 )、 飼い主にペットロス相談室など、悲嘆の
対処法に関する情報を提供する (図 )、 日が経過してから、飼い主にお悔やみカード
を送るなど、何かしらの連絡をとる (図 )。
)この項目を作成するにあたっては、 ( )、ピーターソン( )、( )等の先行研究を参考にしている。
図 問 図 問
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ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査(杉田・入交)
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ペットの安楽死に関する獣医師の意識調査(杉田・入交)
. .安楽死に関するガイドライン作成の賛否
安楽死に関するガイドライン作成の賛否に関する設問として、 問 あなたは、欧米の獣
医師会や日本中央競馬会( )が作成しているような、動物の安楽死に関するガイドライン
を獣医師会などで作るべきだと思いますか を調査票に設けた。この設問は、欧米では獣医
師会が制定する安楽死に関するガイドラインがあるのに対して、日本ではそれに相当するガ
イドラインがないことを受けて作成したものである。安楽死に関するガイドラインがある方
がよいのかどうか、安楽死処置を行う当事者である獣医師の意見を尋ねるため、 はい と
いいえ の選択肢に加えて、 わからない の選択肢を用意した。図 はこの設問の回答
分布を示している。
.おわりに
一般的にいうと、ペット動物の寿命は人間のそれよりも短い。飼い主とペットのよりよい
関係が注目される中、飼い主はペットと共にどう生きていくかを考えるだけでなく、その
ペットとどのような別れを迎えるのかも考えておく必要があるだろう。飼い主が迎えるペッ
トとの別れの一つの形として安楽死があり、獣医師はその処置を施すだけでなく、飼い主が
その選択をする過程に関わる立場にある。場合によっては、獣医師の意識や行動が飼い主の
安楽死選択に影響を及ぼす可能性があるかもしれない。このようなわけで、今回は臨床獣医
師を対象にアンケート調査を行い、獣医師側の意識や行動という観点から安楽死を取り巻く
現状の究明を試みた。
ペットの安楽死というテーマに特化し、さらに全国の臨床獣医師を対象に行った調査は、
おそらく日本ではこれが初めてではないかと思われる。しかしながら、この調査をもって安
楽死に関する獣医師の意識や行動が全て解明されるわけではない。今回の調査で得た回答か
ら導かれる知見を発表していくと同時に、今回の調査では結論に至らなかった点について補
足調査を行うこと、さらにペットの安楽死選択に関わるもう一方の当事者である、飼い主側
の意識や行動についても調査を行うことを今後の研究課題として挙げておきたい。
図 問
謝辞
本研究は科研費( )の助成を受けたものである。
この研究は、平成 年度・平成 年度大阪商業大学研究奨励助成費を受けて行ったものである。
本研究で用いた調査データは、 年の調査実施に携わった研究者(杉田陽出・入交眞巳・新島典
子・河辺純)のみが二次分析研究に使用することができる。本研究はその二次分析研究の一環であ
る。
引用文献
アニコムホールディングス株式会社 ペットも長寿化とともにがん発症率が増加 家庭どう
ぶつ白書[ ]
アニコムホールディングス株式会社 どうぶつ長寿時代 高齢犬の疾患傾向は人と似ている?
家庭どうぶつ白書[ ]
一般社団法人ペットフード協会 第 回(平成 年度)全国犬猫飼育率調査結果[ ]
西山ゆう子 アメリカ動物診療記 プライマリー医療と動物倫理 駒草出版
ニック下村 いつか向きあう安楽死とペット・ロス 文芸社
リンダ・ピーターソン あなたがペットの安楽死を決断するとき
大阪商業大学論集 第 巻 第 号(通号 号)