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用語解説
フェーズドアレイ超音波探傷法エネルギア総合研究所 発電・材料担当 松村 栄郎
フェーズドアレイUTの実施例
ボイラ配管溶接部に発生するクリープ損傷現象を再現するため,実機配管と同サイズの配管を用いて行った内圧クリープ試験において,配管溶接部内部の損傷状況をフェーズドアレイUTで探傷した。 図3に示すように,溶接部断面の3箇所に欠陥を示す指示エコーが検出された。
指示エコーが検出された位置で試験体を切断し,溶接部断面の損傷状況を観察した。図4に示すように,指示エコーが検出された位置にクリープ損傷によると推測される割れが生じており,フェーズドアレイUT による探傷の有効性が示された。
ま と め
フェーズドアレイUTは,探傷結果を定量的に評価するには経験が必要となる面もあるが,構造物内部の欠陥を検査するために大変有効な手法と考えられるため,今後の適用拡大が期待される。
【参考文献】(1) 木谷,林“フェイズドアレイ探傷法の現場への適用例”検
査技術,2011.7(2) 電中研ニュースNo.404,2004.12(3) 小林“最新の余寿命診断技術”火力原子力発電,Vol.53
No.7,2002.7
2
指示エコー①
指示エコー②
指示エコー③
図3 フェーズドアレイによる断面像
溶接部
割れ①
割れ②
割れ③
図4 試験体断面(割れ発生位置)
3
フェーズドアレイ超音波探傷法(以下,フェーズドアレイUT)は,超音波探傷法の1つであり,非破壊検査への導入が進んでいる。探傷結果を画像で評価するため,従来の超音波探傷法に比べて欠陥の位置や大きさ,形状を推定しやすく,損傷状況の全体像をイメージしやすいというメリットがある(1)。
フェーズドアレイUTの概要
通常の超音波プローブは1つの振動子(圧電素子)で構成されるが,フェーズドアレイUTのプローブは多数の振動子により構成される。図2に示すように,個々の振動子が超音波を送受信するタイミングを独立に制御し,合成された超音波波面を形成することにより超音波ビームの制御を行う。超音波の入射方向や焦点距離を自由に変えて探傷できるため,フェーズドアレイUTは,従来の超音波探傷法では探傷が困難だった狭隘部への適用や,火力発電所ボイラ大径管に発生するクリープ損傷箇所の特定に有効である(3)。
フェーズドアレイプローブ
溶接部
超音波
:探傷領域 :欠陥図1 フェーズドアレイUT(2)
1
遅延時間の設定
合成波面
超音波入射方向
超音波伝ぱイメージ
複数の圧電素子
遅
早
図2 フェーズドアレイUTの概要(3)
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