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グローバル製品開発のマネジメント: デンソーの事例を中心に 金熙珍(KIM, Heejin) 1

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グローバル製品開発のマネジメント:デンソーの事例を中心に

金熙珍(KIM, Heejin)

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章 もとになった論文及び学会報告

第1章 書き下ろし

第2章 書き下ろし

第3章 ・金熙珍(2012)「新興国市場におけるドミナント・ロジック:インド市場でのLGとSonyの事例から」『ものづくり経営研究センター(MMRC)・ディスカッションペーパー』407、pp.1-23.

・新宅純二郎・天野倫文・朴英元・金熙珍(2010)‘LG電子の現地化戦略の展開プロセス’「我が国機械産業の新興国・BOP市場戦略」第9章、日本機械輸出組合、pp.124-158. (を参考し、大幅に加筆・修正)

第4章 ・金熙珍(2009) 「多国籍企業のグローバルR&D:製品特性による開発立地の収斂」東京大学経済学研究科 修士論文、pp.1-60.

・ 金熙珍(2010)「現地拠点の設立経緯と製品開発機能のグローバル展開:デンソーの伊・韓・米拠点の事例から」『国際ビジネス研究』Vol.2, No.1, pp1-13.

第5章 ・金熙珍(2012)「現地開発機能形成の決定要因:デンソーの6拠点の事例から」『国際ビジネス研究』第4巻第1号、pp.63-79.

第6章 ・金熙珍(2013)「 新興国向け製品開発:デンソーにおける本社組織の対応」国際ビジネス研究学会第73回関東部会、早稲田大学、東京

・Heejin KIM(2013). Product development for emerging market: Denso’s challenge for changing headquarter organization, GERPISA International Colloquium、Paris、France.

第7章 ・Heejin KIM (2013). Inpatriation: A Review of Three Research Streams, Annals of Business Administrative Science, 12, pp.327-343.

・Heejin KIM (2013). Local Engineers as Knowledge Liaison: How Denso India Succeed in Developing Wiper-System for Tata Nano, Annals of Business Administrative Science, 12, pp.45-62.

・Heejin KIM(2013). Impatriation of engineers: how they connect Headquarter and local subsidiary? ABAS Conference 2013 Spring, Kojima Conference Room, University of Tokyo

第8章 書き下ろし 2

国際経営論におけるグローバル製品開発:問題の所在

第1章

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第1節 研究の背景と概要

*本研究の目的は、日系多国籍企業における‘グローバル製品開発’ の現状と課題、及びマネジメント方法を探ることである。

(1)国際経営論とR&Dのグローバル化

・国際経営論は主に販売や生産活動の海外直接投資を対象としてきた。

・不思議な現象であったR&Dのグローバル化の研究はその現象の理解にウエイトが置かれてきた。→ グローバルR&Dマネジメントへの理解が不足

(2)本研究の目的

①グローバル製品開発戦略の類型を提示する。

②本社と現地拠点の製品開発分業の在り方を理解する。

③本社と現地拠点間の製品開発協業のマネジメントの課題と方法を提示する。

(3)本研究の範囲

①研究(R)ではなく、開発(D)、②欧米企業ではなく日本企業、③外国企業の日本国内における開発ではなく、日本企業の現地開発、に絞った実証研究を行う。

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第2節 日本企業における「製品開発のグローバル化への取り組み」

(1)グローバル市場の変化

・本研究の時代的な背景:2007年の米国発世界金融危機による日本企業の製品開発のグローバル化の動き

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企業名 報道内容 出所

東芝 ・商品企画や開発面でも現地化を進める。(中国山東省)

・新興国向けの洗濯機や冷蔵庫などの白物家電を現地で開発する体制に切り替える。これまでは主に日本で開発していたが、中国とタイの研究開発拠点を大幅に増強し、商品企画を担当するマーケティングセンターも新設する。現地の需要に合った製品を迅速に投入し、販売拡大を目指す。

日経産業新聞 2010/5/14 日経新聞 2010/11/25

クラリオン ・カーナビ開発を中国に移管;まず新興国向け、技術者も3倍に

・アモイ(福建省)の拠点にカーナビの開発機能を順次移す。現在190人(内日本人14人)いる技術者を2012年までに600人に増やす。2015年までには1000人体制にすることを検討中。

日経新聞 2010/8/13

富士フィルム ・インドやブラジルなど新興国への日本からの社員派遣を拡充する。年内に製品開発部門から10人程度の技術者を派遣する計画。現地のニーズを吸い上げて新興国向け製品開発や投資判断を加速化する。

日経新聞 2010/8/7

デンソー ・2012年ブラジルに研究開発拠点を設けると発表。日本が担っていた南米向けの製品や技術の開発機能を現地に移し、低コスト技術を磨く。 ・インドにもやく30億円を投じて研究開発拠点を設ける。

日経新聞 2010/11/12

日立製作所 ・インドや中国など新興国での研究開発機能を相次ぎ拡充する。 ・2012年度までにインドに新拠点を設けるほか、中国の研究人員を200人に倍増させる。電力、情報システムなどの開発力を高め社会インフラの受注拡大を狙う。

日経新聞 2010/9/18

トヨタ ・世界で開発を完全現地化。まず米で新型車:異なる市場ニーズ、素早く対応 日経新聞 2012/4/6

カルソニックカンセイ

・インドのエンジニアリング会社L&T IESと提携をしたカルソニックカンセイは、インド南部の

チェンナイにエンジニアリング・センターを設立し、既存製品を現地仕様に変える業務を進めていく。

日経新聞 2013/3/8

開発を現地化させる日本企業の動き

(2)製品開発活動の現地化

第3節 分析対象と方法、構成

(2節)近年、多くの日本企業が長い間本国に集中させてきた製品開発機能の一部をグローバル化させようとしている。

Main Research Questions

・製品開発機能をグローバル化させていく中で、本社と現地拠点間の機能の配置及び調整はどのように行われているのだろうか。

・そのプロセスにおいて、どのような課題が生じやすく、そうした諸課題に対応するためのマネジメント方法は何か。

(1)分析対象と方法

・2008年から2013年にかけた日系・韓国系企業のケース・スタディ

・特に、デンソーの本社と6ヵ国の現地拠点間の製品開発分業を深層事例分析

・第3章の開発戦略類型には14回のインタビュー調査、デンソーの深層事例分析には22回のインタビュー調査からデータ収集

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面会日 場所 所属(役職) 面会者人数

2008.4.14 韓国DNPE 役員(社長、副社長),技術企画チーム 3

2008.4.14 韓国DNPS 経営部門総括、電機技術チーム、経営企画チーム、購買チーム 5

2008.5.15 韓国DNPE 技術企画チーム、工場長 2

2008.5.15 韓国DNPS 技術研究所役員、技術研究所パワートレーン技術チーム、 2

2008.5.26 日本本社 技術管理部、技術企画部、営業部 3

2008.8.7 日本本社 技術管理部、技術企画部、営業企画部 3

2009.3.4 日本本社 調達部 1

2009.8.12 インド(DII) 役員(社長、副社長) 2

2009.8.17 タイ(T/C) 役員(副社長) 1

2009.8.19 シンガポール 役員(副社長) 2

2010.9.1 中国(北京) 役員(副総経理)、営業企画本部、人事総務本部、経営企画部 5

2011.2.7 インド(T/C) R&Dセンター、役員 2

2011.2.7 インド(Haryana) 役員(社長) 2

2011.8.30 中国(上海) 役員(G.M.), 事業開発本部 2

2011.9.19 インド(T/C) 役員 1

2012.1.24 日本本社 DP-EM室 3

2012.8.8 インドネシア 役員(社長)、製造、企画、調達 5

2012.11.8 日本本社 DP-IA室 3

2012.11.29 韓国DNPE 役員(副社長)、経営本部 2

2013.1.28 インド(DSEC) 役員(Director) 1

2013.2.6 日本本社 人事部、熱交換器開発部、冷却機器技術部 3

2013.3.19 日本(大安製作所) 点火製造部、生産技術部 5

Interview List

第3節 分析対象と方法、構成(続き)

①分析対象:なぜデンソーを事例研究の対象にしたのか。

・代表的な日系多国籍企業の1社

・日系多国籍企業の中でも製品開発のグローバル化に最も積極的に取り組んでいる企業の1社

・自動車産業の事例を取り上げることの意義:現地化製品が必要と認識されてきた食品や日用消費財といった限られた領域(Keegan, 1969; Takeuchi and Porter, 1986)から議論を拡大できる可能性、日本の代表産業としての自動車産業の意義

②分析方法:主には1社の複数拠点分析

・企業間の比較分析の困難性

・本社ー現地拠点間関係を分析することの必要性

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第1章 問題の所在

第2章 文献レビュー

第5章

新たな開発立地の設立:デンソーの印・中・タイ拠点における開発機能の形

第6章

本社内部における調整の必要性:デンソーの本社における

DP-EMの事例

第8章 結び グローバル製品開発のマネジメント

第4章

従来の開発立地と製品設計:デンソーの米・韓・伊拠点の

事例から

第3章 4つのグローバル製品開発戦略:7社の事例から

第7章

知識をつなげる人材育成:逆駐在員制

<配置> <調整>

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*本研究の構成

文献レビュー

第2章

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第1節 国際経営論におけるグローバルR&D論の発展 (1)伝統的な多国籍企業論 (2)海外子会社の能力とイノベーションに関する議論の台頭 (3)グローバルR&Dに関する議論の形成

第2節 グローバルR&Dの 「類型」及び「配置」に関する研究

(1)類型:海外R&D拠点の多様性 (2)配置:海外R&D拠点の立地要因

第3節 グローバルR&Dの 「調整」に関する研究

(1)国際経営論の観点 (2)知識マネジメント論の観点

(3)コミュニケーション及びグローバル・チームの観点

第4節 本研究の位置付け (1)既存研究の貢献 (2)既存研究の発展方向 (3)本研究の位置付け

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*第2章の流れ

・R&D機能の配置:R&Dのどのような機能と役割をどこに置くのかに関する議論

・R&D機能の調整:グローバルに分散されたR&D機能をどのように取りまとめながらその目的を達成するのかに関する議論

第1節 国際経営論における グローバルR&D論の発展

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1960年代

~1980年代

•本国拠点の優位性活用。主に海外生産、販売が多国籍企業論の中心となる。

• Ownership Advantage(Hymer, 1960)

•製品ライフサイクル論(Vernon, 1966;1971)

• Flying Geese Model

1990年代

•現地子会社の特殊な能力とイノベーションに注目が集まる。

• Bartlett and Ghoshal(1989)やBirkinshawの様々な研究(Nobel and Birkinshaw,1998) が海外子会社の能力発展やイノベーションについて論じる。

• COE(Birkinshaw, 1996)

2000年代以降

•製品開発のグローバル化が活発になる。

•北欧系企業を中心にGlobal R&D関連研究が急増

•グローバルR&Dの動向及び目的が主な焦点(Wortmann, 1990; Garybadze and Reger, 1999; Cheng and Bolon, 1993; Kuemmerle, 1999)

第2節 グローバルR&D拠点の 「類型」及び「配置」に関する研究

(1)類型:海外R&D拠点の多様性

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研究 分類

Ronstadt(1977) Transfer Technology Units(TTU), Indigenous Technology Units(ITU), Global Product Unit (GPU), Corporate Technology Units(CTU)

Pearce(1989) Support Laboratory(SL), Locally Integrated R&D Laboratory(LIL), International Independent Laboratory((IIL)

Hakanson and Nobel (1993)

Market Oriented Units, Production Support Units, Research Units, Politically Motivated Units, Multi-motive Units

Kuemmerle (1997) Home-base exploiting sites, Home-base augmenting sites

Nobel and Birkinshaw(1998)

Local Adaptor, International Adaptor, International Creator

Gassmann and Zedtwitz (1999)

Ethnocentric centralized, Geocentric centralized, Polycentric decentralized, R&D hub model, Integrated R&d network

第2節 グローバルR&D拠点の 「類型」及び「配置」に関する研究(続き)

(2)配置:海外R&D拠点の立地要因

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R&D活動の立地に影響する要因

説明変数 実証研究の例

①ホスト国要因

知財権強化度 Kumar(2001), Ito and Wakasugi (2007)

サイズ (市場規模、GDP)

Hakanson(1992), Kumar(1996, 2001), Shimizutani and Todo (2008)

距離(東京まで) Shimizutani and Todo (2008)

技術水準(R&D集約度) Hakanson(1992)、Kumar(1996, 2001)、Almeida and Phene(2004), Ito and Wakasugi (2007), Shimizutani and Todo (2008)

R&D人的資源の量とコスト Kumar(2001), Ito and Wakasugi (2007), Shimizutani and Todo (2008)

政府の規制 Taggart(1991)

貿易障壁の低さ Kumar(2001)

②本社要因

サイズ Odagiri and Yasuda (1996), Belderbos and Rene (2001)

R&D集約度 Zejan (1990), Le Bas and Sierra (2002), Odagiri and Yasuda (1996), Hakanson and Nobel(1993), Rene (2001)

国際化度 (生産、販売)

Hakanson and Nobel(1993)

③海外拠点要因

買収拠点 Hakanson(1992), Hakanson and Nobel(1993), Belderbos and Rene (2001)

輸出率 Zejan (1990), Ito and Wakasugi (2007)

現地市場販売率 Odagiri and Yasuda (1996)

歴史(拠点の年齢) Zejan (1990), Odagiri and Yasuda (1996), Hakanson and Nobel(1993)

R&D集約度 Odagiri and Yasuda (1996)

第3節 グローバルR&D拠点の 「調整」に関する研究

(1)国際経営論の視点 ・従来の国際経営論においても本社・子会社間関係の調整(マネジメント)は、公式・非公式メカニズムを用いたコントロール及びコーディネーションを中心に研究されてきた((Hedlund, 1980, 1984; Martinez and Jarillo, 1989, 1991; Doz and Prahalad, 1984; Ghoshal and Nohria, 1989; Ghoshal and Bartlett, 1990; Nohria and Ghoshal, 1997; Birkinshaw, 1997)。 *代表的な研究 ・Nobel and Birkinshaw(1998)は、 彼らが分類した3種類の海外R&D拠点(local adaptor, international adaptor, international creator)を中心に,それぞれの類型における本社のコントロール・パターン(中央化、公式化、社会化)とコミュニケーション・システム(垂直的、横展開的、外部的)を調べた。分析の結果、海外R&D拠点の類型が持つ特性によって、異なったコントロール・パターンとコミュニケーション・システムがマネジメントに使われていることを明らかにした。 ・Reger(1999)は、18社の日系・西欧系企業(電気電子、化学、機械)における約100名にインタビュー調査を行い、グローバルR&Dを行う上でその活動を調整するにはどういったメカニズム(公式、ハイブリッド、非公式メカニズム、内部市場)が適切なのかを調査した。その結果、海外R&D拠点が直面している課題(R&Dと企業戦略との統合やR&Dと事業部との統合など)によって異なる調整メカニズムが使われていることと、日本の企業とヨーロッパの企業はその調整メカニズムにおいて著しい違いを見せていることを指摘している。 ・Asakawa(2001)は、ヨーロッパに研究拠点を置いた日系企業5社(Canon, Sharp, Eisai, Yamanouchi, Kobe Steel)の事例分析を通じて、海外研究拠点の役割が時間とともに変化し、Starter →Innovator→Contributorに進化していくことを示した。さらに、それぞれの段階において、必要となる自立権と本社との内部情報連携が異なってくることを明らかにしている。 ・Luo(2006)は、3つの環境要因(政府の規制、市場の不確実性、産業発展)と4つの組織要因(研究より開発にかかわる程度、現地市場での経験、独資進出より合弁進出、地域対応拠点)と海外R&D拠点の自立権の程度との間の相関を探った。結論として、環境要因よりは組織要因のほうが自立権の程度により強い影響を与えることを示している。

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第3節 グローバルR&D拠点の 「調整」に関する研究

(2)知識マネジメント論の視点

:R&Dといった機能の特殊性により注目し、知識マネジメント論の視点から多国籍企業グループの知識移転を取り扱った研究も多数存在する。 *代表的な研究 ・Lord and Ranft(2000)は、海外新市場に関する知識が様々な企業の事業部間にどのような場合、どの程度移転できるかという「知識移転に影響する決定要因の分析」を行った。分析結果は、まず、知識属性要因に関しては、新市場知識が暗黙的であるほど、企業グループの内部移転が難しくなる。また、公式・非公式組織構造が知識移転に及ぼす影響に関しては、地域本社がある場合、中央集権度が高い場合、事業部間のインセンティブシステムが連携されている場合に、知識が内部移転される傾向がみられた。 ・Subramaniam and Venkatraman(2001) は、複数の海外市場・顧客のニーズを反映した超国籍新製品(transnational new products)を開発するために、海外市場に関する暗黙知をどのように組織内で移転できるかに焦点を当てている。その結果、まずは、海外市場の知識の暗黙性が高いほど、リッチな方法(メールや電話ではなく、対面式など)での知識移転を行った方が超国籍新製品開発に有効であることを明らかにしている。さらに、そのリッチな方法の具体例として、クロス・ナショナル・チームの活用、海外駐在経験者の開発チームへの参加、開発プロジェクト・チームと海外マネージャーの頻繁のコミュニケーションが超国籍新製品開発に有効であることも統計的に検証している ・Birkinshaw, Nobel, and Ridderstrale(2002)は、2つの知識特性(観察可能性、システムに埋め込まれた程度=system embeddedness)が海外R&D組織の特性(自立権、ユニット間の統合)にどのような影響を及ぼすのかを検討している。 ・Kurokawa, Iwata and Roberts(2007) は、知識ベース・ビューからアメリカにおける日系企業のグローバルな知識の流れを検討することを目的にし、戦略・組織的要因が、知識の流れと蓄積、最終的には現地拠点のパフォーマンスにどのような影響を及ぼすのかについて検討している。 ・Song, Asakawa, and Chu(2011)は、1990年代中半から後半にかけて、ヨーロッパにおける日系企業のR&Dラボに対するインタビューとアンケート調査、及びU.S.特許データーを用いた分析で、研究目的の海外ラボは当地域の研究コミュニティに埋め込まれた方が高い成果に繋がることを明らかにしている。

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第3節 グローバルR&D拠点の 「調整」に関する研究

(3)コミュニケーション及びグローバル・チームの視点

:特にグローバルに分散された開発組織及びチームの間のコミュニケーションに絞った議論 *代表的な研究 ・Moenaert, Caeldries, Lievens, and Wauters(2000)は、国際的製品開発チームのコミュニケーション・フローをテーマに、新製品を効率的に開発・試作・発売するため必要とされるプロジェクト・チームのコミュニケーション能力は何かといった問題意識のもとで、ヨーロッパ系多国籍企業4社の事例を検討し、企業とチーム能力を区分した上で、それぞれにおいて効果的なコミュニケーションのための要件を検討している。 ・Govindarajan and Gupta(2001)は、コミュニケーションの要素を含め、効果的なグローバル・チームの在り方を探った。彼らは、グローバル・チームが抱える最大の課題として、多様性をオープンに発揮できる構成員間の信頼構築とコミュニケーション、文化的障壁の緩和を取り上げている。そこで、効果的なグローバル・チームを構築するためには、1)チームの目標やアゼンダーが明確化されること、2)チーム・メンバーの多様性の確保、最適なサイズとリーダシップ、3)コミュニケーションの壁を克服し、信頼を構築する努力といったチームプロセスのマネジメント、の3要件が重要であると指摘する。 ・Ambos and Schlegelmilch(2004)は、海外R&Dネットワークでのチームの活用を強調している。ここでいうチームとは、世界的に分散されているR&Dユニットに属する個人研究者の研究成果を統合し、まとめるような役割を果たす小規模の社内組織と定義されている。R&D活動が世界的に分散されるにつれて、海外のR&Dユニットの役割と責任もそれぞれ異なるようになり、地理的に散らばっている知識をうまく調整・統合するのは企業の成功に欠かせない。ドイツの多国籍企業49社を調べた結果、彼らは世界中で行われるようになった研究プロジェクトを調整・統合する手段としてチームを活用している企業が増えていることを明らかにした。

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(参考)日本における国際R&D研究

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■90年代の研究は、主にバブル期に欧米に設けられたResearch Centerをその対象としている。 -榊原、(1995):日系・米系企業の海外における研究開発組織の人材マネジメント -浅川(2001a,b):主に国際経営論の観点から、海外R&D拠点の自律性と本国からの統制、内部情報共有などを中心に議論している。(研究拠点が中心) -岩田、(1994、2007):電機・自動車・化学・医薬品産業におけるR&D国際化の進展状況とプロセス -高橋(1996、2000)、中原(1998、2001)、林(1989、1997), Odagiri and Yasuda(1996) ,Iwasa and Odagiri(2004)

■2000年代後半からは、アジア・新興国における設計・開発現地化の議論が増えつつある。 -椙山(2009)は、現地知識活用に注目し、開発機能の移転プロセスを議論 -中川・大木・天野(2011):東アジアにおける日系企業の研究開発活動を検討し、日系企業の本社中心的特性を指摘。 -清(2011):日本的生産・開発方式の現地化の移転が可能かという問題意識から、その実態と問題点、課題について検討している。 ー元橋(2012):中国における欧・米・日系企業のR&D戦略を特許データを用いて分析し、日本企業が現地におけるオープンイノベーションに消極的であることを指摘している。

第4節 本研究の位置づけ (1)既存研究の貢献 ①同分野の既存研究は、R&D機能のグローバル化といった現象の背景、動向、及び目的を綿密に探ることで、本国に集中させることが当然視されていたR&D機能をなぜ現地拠点に設けるのかといった疑問について様々な角度からの答えを提供している。

②海外R&D拠点にはどのような種類(目的)のものがあり、それはどの国(地域)に立地される傾向があるのか、といった‘グローバルR&D配置の全体図’について多くの知識が生み出されている。

③本社・子会社関係という多国籍企業の特性と、知識を取り扱うR&Dという機能の特性の両要素が、グローバルR&Dマネジメントの複雑性をより増加させることが、多くの既存研究からうかがえる。

(2)既存研究の発展方向 ①既存研究の多くは既に海外に配置されたR&D拠点を対象に分析しているため、アウトプットとしての現象はつかめているものの、そこに至るプロセスについては殆ど取り扱っていない。

②本社・子会社関係という多国籍企業の特性と、知識を取り扱うR&Dという機能の特性をそれぞれ取り扱っている研究は多いものの、両方を同時に取り入れて検討している研究は少ない。

③グローバルR&Dの動向、立地、調整いずれのテーマにおいても、特許件数やR&D支出といった定量的なデータを用いたマクロ分析が主流になっており、R&D機能をグローバル展開させる企業内部のミクロ分析を行った研究は殆ど見られない。 20

第4節 本研究の位置づけ(つづき)

(3)本研究の位置づけ

本研究は、既存研究の検討から得られた上記のような問題意識をもとに、長らく本国に製品開発機能を集中させてきた日系多国籍企業が、開発機能をグローバル化させていくプロセスとマネジメント課題に注目し分析を行う。

①結果としてみられる現象ではなく、開発グローバル化のプロセスに焦点を当てて事例分析を行う。 :主な事例研究の対象として取り上げるデンソーにおいて、戦略的に製品開発機能をグローバル化させる以前と以降の状況、開発現地化を進めるプロセスおよび現地拠点における開発機能の形成に影響する要因に注目し、深層事例分析を行っていく。

②多国籍企業の製品開発現地化といった組織特性と機能特性の両方を十分に考慮したうえで事例分析を行う。 :開発現地化のプロセスおよび課題の分析を、本社と現地拠点両方の組織内部を観察しながら進めていく。

③既存研究がマクロ的な視点で議論してきたR&D機能の配置と調整といったテーマを、よりミクロ的な観点から分析していく。

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4つのグローバル製品開発戦略:7社の事例から

第3章

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第1節 フレームワークの概要と分析対象

第2節 「本国・標準化」

戦略

第3章 「本国・現地化」

戦略 (1)現代自動車 (2)ソニー (3)パナソニック

第4節 「海外・標準化」

戦略 (4)アルプス 電気

第5節 「海外・現地化」

戦略 (5)LG電子 (6)アルパイン (7)ホンダ

第6節 発見事項のまとめとディスカッション

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*第3章の流れ

・本章まず、製品開発の立地と製品設計の選択の組み合わせからなる4つのグローバル製品開発戦略を紹介する。 ・企業がどのような場合どのような開発戦略をとっているのかについて7社の事例を取り上げ

ながら説明した上で、多国籍企業はこの4つの開発戦略を場合によって使い分けていることを示す。

第1節 フレームワークの概要と分析対象

• 企業のグローバル製品開発戦略は、製品設計と開発立地との2つの軸で表せる。

―製品設計:グローバル市場に向けてどのような設計思想で製品開発を行うか

―開発立地:その開発作業をどこで行うか

1.製品設計:標準化と現地化

-標準化:異なる複数の海外市場向けに同一なスペックのモデルを開発し供給するといった考え方 (Buzzell, 1968; Levitt, 1983; Samiee and Roth, 1992)。

-現地化(現地適応):各海外市場の使用環境や顧客ニーズに合わせて設計変更を加えることでより現地市場における製品競争力を高めようとする製品戦略のこと (Keegan, 1969; Hill and Still, 1984; Douglas and Wind, 1987; Jain, 1989)。

*製品設計の標準化と現地化を区分する最も重要な違い:‘現地市場ニーズを取り入れるための設計変更を加えるか否か’

2.開発立地:本国と海外 -製品開発のリソースを本社本国に集中させるか、重要な海外市場を中心に現地開発拠点を設けるかの選択である。

-開発立地を分ける最も大きな違い:‘現地拠点に開発機能を設け、現地で進める開発作業があるか否か’

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開発立地

製品設計

標準化

現地化

海外 本国

Ⅰ.本国・標準化

Ⅱ.本国・現地化

Ⅲ.海外・標準化

Ⅳ.海外・現地化

(例) ALPS (Korea) Bosch (India, Japan) LG (China)

(例) Hyundai Motors Sony Panasonic Denso Samsung

(例) Alpine (China) Ajinomoto (China) LG (India, Thailand) Honda (India) Delphi(India)

(例) 日本企業の従来のやり方

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図 製品開発戦略の4類型

製品開発戦略の4類型 Ⅰ.本国・標準化: 製品開発に必要とされるリソースを本国本社に集中させた上で、同一スペックの製品でグローバル市場対応を図る開発戦略である。Prahalad and Doz(1987)やBartlett and Ghoshal(1989)がグローバル戦略と名付けた多国籍企業のアプローチであり、代表的な例として日本企業が取り上げられることが多い。

Ⅱ.本国・現地化: 本国本社に開発リソースを集中させたまま、本社にて海外市場ニーズに合わせた製品の設計変更作業を行うといった開発戦略のことを指す。本社が持つ製品開発組織及びプロセスが持つ競争優位を、その立地を移さずに主要海外市場向け製品の開発を試みるアプローチである。

Ⅲ.海外・標準化: 本国以外の現地拠点に開発機能を設け、グローバル市場向け標準製品の特定モデルおよび部品の開発を担わせる開発戦略である。製品の付加価値は落ちてきたが開発工数はかかるような開発作業、或いは、地域特殊的な開発知識が活用できるような開発作業の分業が可能になるアプローチと言える。

Ⅳ.海外・現地化: 本国以外の現地拠点に開発機能を設け、現地市場ニーズを製品に取り入れるための開発作業をその地で進める開発戦略である。以前には、食品や洗剤などの日用消費財といった一部製品類のみに必要と考えられていたが、最近は 主要海外市場でその製品範囲が広がっている傾向が観察されている。

⇒ *既存研究の多くは、欧米系企業のサンプルを基に、類型Ⅳの海外・現地化のみを前提にした上でその立地やマネジメントについて議論する傾向が強い。

*本章では、主に日本・韓国企業のインタビュー調査から得られたデータから、既存研究で二分的に議論されていた多国籍企業の製品開発戦略をより拡張されたフレームワーク上で議論し、各企業や製品が持つ特性によってグローバル製品開発戦略がいかに異なってくるのかを検討する。 26

面会日 社名 所属(役職) 面会者人数

2009.11.23 LG Electronics Thailand General Manager, Plant Director, etc. 5

2010.8.25 アルパイン電子大連研究開

発センター

役員、管理部長 2

2010.8.30 北京現代工場 総経理、生産副本部長、生産管理部長、事業企

画部長

4

2010.9.20 Sony India Pvt. Ltd. Managing Director 1

2011.2.8 Hyundai Motors India Senior Director/Sales & Marketing Division 1

2011.2.8 Honda Motorcycle & Scooter India Pvt. Ltd.

Managing Director, Advisor-Sales and Marketing, Vice President-Purchase

3

2011.2.15 LG Electronics India Pvt. Ltd.(Pune Plant)

General Manager, Deputy Manager 2

2011.8.24 松下電器(中国)有限公司 中国生活研究中心

所長、副所長 2

2011.8.25 Panasonic R&D Center Suzhou

Co., Ltd. CFO,各部門の所長 5

2011.12.22 Sony India, Pvt. Ltd. Managing Director 1

2012.1.5 Panasonic India Pvt. Ltd. Managing Director, Divisional Managing Director,

Manager-HR

3

2012.1.6 Panasonic AVC Networks India Co. Ltd.

Managing Director, Whole Time Director, Company Secretary & CFO

3

2012.11.30 ALPS Korea 企画チーム長、技術管理部長など 4

2013.3.12 ALPS Korea 社長、技術部長、戦略チーム長など 7

Interview List

27

第2節 「本社・標準化」戦略

• かつての日本企業に最も一般的とされてきたアプローチ : グローバル効率の追求

-Prahalad and Doz (1987):“多様な産業分野における日系企業の成功は、多くの多国籍企業が競争している、本来は現地適応的な産業を選んだうえで、その産業をグローバルに統合されたビジネスに変えてしまう彼らの能力に起因する。数多い例がある。日本企業が自動車産業、ボールベアリング産業、テレビ産業に進出してくる前からビジネスをやっていた伝統的な多国籍企業(GM, SKF, Philips)は、現地市場対応をベースにしていた。それら多国籍企業は、油断しているところを襲われてしまったのである。エチレンオキシドや自動車、エレベータ産業でみられるように、日本企業がゲームのルールを変えてしまうと、他社の自由度は制限されてしまうこととなった。”(pp. 30.) -Bartlett and Ghoshal(1989)が取り上げている3社の日本企業(Kao, Matsushita, NEC)の事例でも、製品の標準化、生産の合理化、意思決定の集権化を日本企業の特徴として取り上げている。例えば、Matsushitaの場合、1980年代まで現地拠点は製品の面で非常に日本本社に依存的であった。なぜなら、90%以上の生産が日本に集中されていたことと、全ての技術と新製品開発能力が本社に集中されていたことがその理由である。 -Takeuchi and Porter(1986):キャノンのパーソナル・プリンターやカメラの事例を通じてキャノンのグローバル標準化戦略の効率性とそれを達成するために開発チームやマーケティング部門がどのように活躍したのかを詳述している。

28

第3節 「本社・現地化」戦略

(1)現代自動車(中国・インド)

・世界市場向けの製品開発機能を韓国北部の南洋(ナンヤン)研究所に集中した上で、グローバルモデル及び中国やインド向けモデルを開発 ・中国向け悦動(Uedong)、インド向けSantro,i10などの開発事例 (2)ソニー・インディア ・インド市場におけるソニーの逆転(2010年)は小型モデルを増やし、NX500といった現地モデルを投入したのが一因 ・現地駐在員が本社開発に提案の上、本社開発を行うアプローチ (3)パナソニック(中国・インド)

・家電の場合、中国とインド市場の「生活研究センター」という商品企画組織を設け現地顧客のニーズを把握・解釈

・家電の開発・設計にかかわるエンジニアリング機能は日本に集中させ、現地の生活研究センターと連携し開発対応(中国向けスリム冷蔵庫、殺菌機能付き洗濯機、インド向けエアコンCubeなどの開発事例)

29

第4節 「海外・標準化」戦略

(1)LG電子(中国) ・中国の瀋陽に1996年進出し、CRT(ブラウン管)テレビの開発拠点として100名規模のエンジニアがグローバル市場向けのCRTテレビを開発している。 (2)ボッシュ(インド、日本)

・インド拠点に世界向けコモンレール・システムのポンプ開発を、日本拠点に世界向けABS(Antilock Brake System)開発を任せている。また、モーター類の開発は中国拠点に集中させている。 (3)アルプス(韓国) ・設立26年のアルプス・コリアは着実に開発能力を育成してきた拠点 ・日本から一部製品(スイッチ類の約7割)グローバル製品開発を任せられるようにまで成長

30

第5節 「海外・現地化」戦略 (1)LG電子(インド、タイ)

・LGは、インド進出直後からR&D組織を設け、デザインや機能の修正(Modification)を積極的に進めることによって、製品の差別化を図った。

・生産部門の中にTVと白物家電の2つの開発部を設け、デザインと機能修正のための設計作業を行う。設計修正作業に関わるエンジニアの数は増え続け、2005年時点にはNoida工場に145名、Pune工場に67名規模になっていた(LGPune工場におけるOne Door冷蔵庫の開発事例)

・タイ拠点:60名規模のエンジニアを保有。インドネシア市場向け低消費電力エアコンの開発事例( insight製品と呼ばれる現地化製品開発の取り組み)

(2)アルパイン電子(中国)

・ ‘アルパイン電子大連研究開発センター’は、車載用音響機器、通信機器の設計・開発・試作・評価の一貫開発業務を行う目的で2003年設立(2010年当時389名のエンジニア保有)

・ 2000年代の中半から中国及び新興国向け製品開発作業に着手し、オーディオ2タイプ、ヴィジュアル2タイプ、ナビゲーション2タイプのフラットフォームを開発

(3)ホンダ2輪(インド)

・インド独特のニーズおよび地場メーカーとの激しいコスト競争の中で部品現地調達の必要性などから、HMSIには小規模ながら2003年ごろから開発機能を設けた。

・約50名のエンジニアが配属され、樹脂部品やヘッドライト、ハンドル、シートなどエンジンやフレーム以外の部分を現地調達部品及び現地での使用状況に合わせて設計変更。

・ 開発機能の拡充計画:2011年5月、HMSIの敷地内に4階建ての開発センターの工事を始め、2012年からはエンジニアの規模も約100名に増やした上で、本格的な開発作業をインドで進めていく計画。 31

第6節 事例のまとめとディスカッション (1)事例のまとめ ・本国・標準化戦略を採っていた日本企業の動きが多様化:開発立地と製品設計の多様化 ・ Ghoshal(1987)の議論に比べて検討すると、現地化が必要とされている産業が拡大:巨大新興国市場の台頭

(2)ディスカッション

①各開発戦略の選択は、企業の戦略的な選択に関わるものであり、産業や製品によって違うものではない。 ② 1社の多国籍企業においても、複数の開発戦略を同時に活用している。

③現地化製品の開発の際に、本国・現地化と海外・現地化といった二通りのアプローチがあるが、どのような場合どの戦略を選択するのだろうか。

32

戦略類型 選択状況 課題

Ⅱ本社・現地化 ・迅速な現地市場ニーズへの対応

・現地ニーズを本国開発に繋げること

Ⅲ海外・標準化 ・現地拠点に相当の製品開発経験とノウハウが蓄積 ・国(地域)の比較優位性

・現地エンジニアの育成

Ⅳ海外・現地化 ・巨大で異質な現地市場へ戦略的重要性を置く場合

・現地開発機能の育成、開発プロセスにおける本社技術蓄積との連携

従来の開発立地と製品設計: デンソーの米・韓・伊拠点の事例

第4章

33

本章の目的

Research Question ・日本自動車産業が持つ製品開発組織・プロセスの特性( Clark and Fujimoto, 1991; Imai, Nonaka, and Takeuchi, 1985; Krishnan, Einger and Whitney, 1997)を考慮した場合、その機能のグローバル化はどのように進められるのだろうか。

-本章では、デンソーにおける本社と現地拠点の間の開発分業が何を基準に形成されてきたのかに焦点を当てる。(どのような本社・現地拠点間の開発分業で世界市場に対応してきたのか)

-デンソーが製品開発のグローバル化に本格的に取り組む前から開発機能を有していたイタリア、韓国、アメリカ拠点の事例を分析することで、既存の開発立地と製品設計の拠点間配置は何によって決められていたのかを探る。

34

第1節 デンソーの概要

35

社名 株式会社デンソー DENSO CORPORATION

設立 1949年12月16日

資本金 1,874億円

売上高 連結:3兆5、809億円・単独2兆2,768億円

従業員 連結:132,276人・単独:38,385人

連結子会社数 183社(日本62、北米28、欧州34、豪亜53、南米その他6)

* 株式会社 デンソーの概要

* デンソーの主要製品 * 製品における可変部分と不変部分のイメージ

標準志向品・カスタム志向品の例

36

Alternator

Starter Motor

Compressor

Meter Cluster

標準志向品 カスタム志向品

製品名(類)

ECU, Inverter, Converter, Power Control Unit, Relay, Sensor, Fuel Injector, Fuel Pump, Fuel Filter, Stick Coil, Spark Plug, Common Rail, Starter, Alternators, Cooling system components, Compressors, Condenser, steering wheel system, lighting control system, Airbag sensors, Brake control etc.

HVAC Unit Components(Air conditioning unit), Instrument Clusters, Windshield wiper system

*デンソーにおける分類のあり方

意図される開発分業のあり方

37

①承認図取引

現地顧客 現地拠点

日本本社

②生産・納入

標準部品の供給

日本本社

現地顧客

①図面

②装着設計

③生産・納入 現地拠点

*標準志向品の場合 *カスタム志向品の場合

・可能な限り、標準志向品でのグローバル対応を目指す。

・標準志向品の場合:日本本社で集中開発の上、現地拠点に完成された図面を出す。現地拠点は必要に応じて現地顧客の製品向けに装着設計作業を加える分業が求められる。

・カスタム志向品の場合:現地顧客製品への高い適合性が求められる製品の場合、現地拠点が開発の主体となり出図権限を持つ。

38

事例で取り上げる3拠点の概要

✔T/Cと量産拠点内の開発組織:大きな業務内容の差はない ✔本国本社で培われた要素技術と基本製品設計をもとに、現地材料・部品・顧客に合わせた開発・設計活動を行う現地組織として、比較可能

韓国 (DNPE)

米国 (T/C)

イタリア (DTS)

設立 1976 (Changwon)

1985 (Detroit)

1999 (Torino)

設立形態 合弁 独資 買収

ターゲット顧客 HMC, GM Daewoo,

Ssangyong, Renault

Samsung

GM, Ford, Chrysler,

Toyota Fiat

主要製品 メーター、ワイパーECU

熱製品、メーター、エンジン制御

熱製品、エンジン制御

最終販売先 輸出中心 国内販売 国内販売

エンジニア 約100(2010) 約500(2008) 約60(2008)

(出所:「デンソー会社案内」及びインタビュー調査)

39

*標準志向品(A社)の場合 *カスタム志向品(B社のHVAC)の場合

Fiat B社

日本本社

A社 Fiat

①承認図取引

②生産・納入

①承認図取引

②生産・納入

標準部品の供給

買収拠点の場合、標準志向製品をいかに本社へ集中させるかが主な課題となる。

第2節 イタリア拠点の開発分業

40

*標準志向品(C社)の場合 *カスタム志向品(D社のメータ)の場合

日本本社

現代 自動車

D社

日本本社

現代 自動車

C社

2.デンソーブランド製品の場合

①図面

②装着設計・生産・納入

C社 現代 自動車

1.オリジナル製品の場合

①承認図取引

②生産・納入

①承認図取引

②生産・納入

標準部品の供給

M&A拠点の場合、標準志向品の製品開発を調整する必要性が生じる。C社では、標準志向品開発の本社集約が進められている。

第3節 韓国拠点の開発分業

韓国拠点(DNPS)の長期売上計画

41

7,000

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

3,794

新規製品(合弁後導入)

2010

2,000

3,000

2015

4,000

3,000

5,000

(億W)

1948 1968 2003 2005

5

1969

6

2000

1,324

2001

2,273

3,015 671

140

2,875

2004

3,587 267

3,320 3,123

設立 技提 合弁

4,067

2006

990

3,077

4,288

2007

1,283

3,005

42

標準品はDNJP(日本本社)が、カスタム品は現地拠点がそれぞれ開発を担当しているという、本社の意図通りの分業形態となっている。

*標準志向品の場合 *カスタム志向品(メータ)の場合

日本本社

E社 (設計拠点)

F社 (生産拠点)

Big3

①図面

②装着設計

③生産・納入

Big3

E社 (設計拠点)

F社 (生産拠点)

①承認図取引

②図面

③生産・納入

日本本社

標準部品の供給

第4節 アメリカ拠点の開発分業

第5節 事例の総括とディスカッション

現地拠点 設立年度 設立形態 製品特性 開発の主体

A社(伊) 1975年 100%買収(1999年) 標準志向製品 現地拠点

B社(伊) 1986年 100%買収(2001年) カスタム志向品 現地拠点

C社(韓) 1948年 技術提携(1969年)

→資本参加(40%、2001年)

→子会社化(73%、2008年)

標準志向製品 現地拠点・

日本本社

D社(韓) 1976年 折半出資の合弁会社新設(1976年)

→マジョリティ獲得(51%、2001年)

カスタム志向品 現地拠点

E社(米) 1988年 100%単独出資新設 標準志向製品 日本本社

カスタム志向品 現地拠点

E社(米) 1985年 100%単独出資新設 (開発機能無し)

43

(1)事例の総括

①M&Aによる現地拠点であるA,B,C,D社の場合、標準志向製品の開発を行うAとC社で本社方針とのずれが生じている。→ M&Aによる現地拠点においては、現地で行ってきた標準志向製品の製品開発機能をいかに本社へ移管させていくかが課題となる。

②E社のように独資進出した現地拠点の場合はカスタム志向製品の開発機能を本社から現地へ移管することが課題となる。

*現地拠点の設立形態(経緯)の違いによって、開発機能のグローバル展開における課題が異なることを、本研究の事例分析から指摘できる。

(2)ディスカッション

①従来におけるデンソーのグローバル製品戦略は、「本社・標準化」をベースとした消極的な現地化(カスタム志向設計)であったと言える:

「仕方なしの現地開発」

②しかし、その「仕方なしの現地開発」も、合理化を図る本社の計画通りには形成されなかった:現地拠点の設立経緯といった要因によって、開発分業の在り方に拠点別のバラつきがみられる。

⇒本研究の背景及び出発点として、その後の変化を検討(5章~7章)

44

第5節 事例の総括とディスカッション(つづき)

新たな開発拠点の設立:デンソーの印・中・タイ拠点における開発機能の形成

第5章

45

46

インド (T/C)

中国 (T/C)

タイ (T/C)

韓国 (DNPE)

米国 (T/C)

イタリア (DTS)

設立 2011 (Delhi)

2009 (Shanghai)

2008 (Bangkok)

1976 (Changwon)

1985 (Detroit)

1999 (Torino)

設立形態 独資 独資 独資 合弁 独資 買収

ターゲッ ト顧客

M/Suzuki,

Toyota,

Honda, Tata,

M&M, HMC

Toyota,

Suzuki,

Honda,

HMC

Toyota HMC, GM

Daewoo,

Ssangyong,

Renault

Samsung

GM, Ford,

Chrysler,

Toyota

Fiat

主要製品 メーター、センサ類、エンジン制御

熱製品、エンジン制御、カーナビ

熱製品、エンジン制御

メーター、ワイパーECU

熱製品、メーター、エンジン制御

熱製品、エンジン制御

最終販売先 国内販売 国内販売 輸出中心 輸出中心 国内販売 国内販売

エンジニア 約50(2011) 約180(2011) 61(2009) 約100(2010) 約500(2008) 約60(2008)

(出所:「デンソー会社案内」及びインタビュー調査)

*本章の目的 ・2007年以降デンソーが新たに立ち上げた現地開発拠点における開発機能の形成について検討:インド、中国、タイの開発拠点の設立と開発機能形成に影響を与える要因を考察する。

ー 新興国市場でのビジネス拡大を主な狙いとしたこの3ヵ所の現地開発拠点では、どのように開発機能が形成されてきたのであろうか。 - 各拠点間の機能形成に差がみられるのであれば、その理由は何か。

*3ヵ国拠点の概要

・2010年5月に上海市にT/Cを設立

・上海市のT/Cを2013年6月に郊外に移転・拡充する。人員を現在の2倍(500名)に増員、大型検査装置を導入するなど2013年度までに72億円の投資を計画している。

・2008年テクニカルセンターを設立(アジア地域本部にあたるDenso International Asiaの中)

・材料実験設備を充実させ、現地調達のための材料評価を可能にする。

・2010年9月にエアコン設計会社を設立(デンソー74%、Subros26%)

・2011年末にT/C設立。投資額は約30億円(2015年まで70名規模)

・2012年7月にT/C設立(DNBR:デンソーブラジル・ミリターダ). 南米向けのカーエアコンやパワートレーン機器関連製品を開発することが目的で、車両実験風洞などの試験装置を備え、開発リードタイム短縮を図る。

・90年代後半からの現代自動車グループの急成長を受け、一層現地開発機能を充実し、2011年には100名規模のエンジニアを抱える。

・2013年1月に京畿道 に新R&Dセンター設立(約35億円投資)

デンソーの「製品開発のグローバル化」 は2010年前後から本格化

47

48

研究 分類法

経済産業省 「海外投資統計総覧」 (1994)

・現地情報の収集、分析 ・販売活動のサポート ・現地生産活動のサポート ・製品、コンセプトのデザイン ・現地向け輸出製品の修正、改良 ・現地向け現地生産製品の開発 ・国際製品の開発

榊原(1995) 1.技術偵察 2.技術修正 3.技術移転 (4.新製品開発 5.研究開発)

清(2011) ①現地におけるデザイン開発、テストコース設置など ②現地生産の開始、図面の現地化、部品調達率の向上 ③設備の現地化、次第に日本開発から現地での設備開発へ ④人の現地化、開発・購買・生産技術・生産管理・品質 ⑤試験研究・テスト・評価の現地化、設備投資 ⑥現地でのモデル開発、開発部隊の拡大 ⑦現地でのプラットフォーム開発

中川、大木、天野(2011) (現地側活動) ①基礎研究及び先行技術開発:直近の新規製品・工程の開発には結びつかないような研究開発活動 ②製品開発:新製品を生み出すための設計・試作・評価などの活動

③工程開発:生産ラインの全体及び各工程の設備や治具などを設計し、量産試作をしながら商業生産を立ち上げるまでの一連の活動 ④改善活動:量産に近い活動だが、エンジニアが主体となるため、ごく初歩的な研究開発活動の一部として含める。

本研究(金、2012) (既存研究+現地調査)

1.現地生産環境対応:①生産対応設計、②調達対応設計 2.現地顧客対応:③顧客調査、④商品企画、⑤試作、⑥アプリ設計、⑦創造的対応、⑧フラットフォーム設計 3.評価・検査機能:⑨(材料)部品評価、⑩完成品評価

第1節 現地開発機能の定義と分類 既存研究における「現地拠点の開発機能」

現地 開発機能

詳細内容

① 生産 サポート

・工機(型・設備・治具の設計や製作)とTIE(内製の工数低減)機能が社内製造競争力のため備えられる。

② 現地調達 対応設計

・現地材料及び部品調達率を上げるために、設計と品質保証(外注指導)機能が備えられる。

③ 調査・情報 収集機能

・市場や顧客特性、使い方などに関するサーベイや聞き取り調査が実施される。

④ 商品企画・ 提案

・市場や顧客調査を基に新製品の大まかな筋道を示す。 ・車両メーカーに、現地で必要となる新たな機能を提案する。

⑤ 試作機能 ・開発リードタイムの短縮を目的に、クレイモデルなどで試作品を作る機能。(本社への依頼は所要時間が長くなるため)

⑥ 装着対応 設計変更 (受動的設計変更)

・本国の基本設計製品を、現地における顧客の車両に 搭載するために設計変更作業を行うこと。 主に、接続部のみの変更であり、 アプリケーション設計という用語が使われる場合も多い。 (図1のⓒ部分のみ設計変更)

⑦ 創造的 設計対応 (能動的設計対応)

・現地材料、顧客の嗜好や使い方、生産条件などを踏まえ、現地市場におけるコスト競争力及び製品魅力度を高めるために、創造的な工夫が行われること。(図1のⓒとⓑ部分の設計変更)

⑧ フラットフォーム設計 (開発の現地完結)

・現地で本社同様のプラットフォーム設計能力を備え、現地で全ての技術的検証を終え、図面を出す権限まで持つ。 ・商品の安全性を現地責任のもとで検証できる能力を備えられた段階であり、設備のみならず人の知識と経験の蓄積が求められる。 (図1のⓐ、ⓑ、ⓒ部分の設計変更)

⑨ 部品・材料 評価機能

・振動対応・温度対応などを検査・評価する各種設備を現地に備え、現地で手に入る材料及び部品を直接検査・評価する機能。(評価基準は本社作成のものに従う)

⑩ 完成品 評価機能

・完成品の車両搭載検査・評価ができる各種設備を現地に備え、現地で開発した製品を直接検査・評価する機能。(評価基準は本社作成のものに従う)

49

ⓒ装着部

ⓐプラットフォーム

ⓑ本体

図1製品構成のイメージ図

*現地開発機能の詳細内容分類

既存研究:①「立地要因」&②海外R&D拠点の役割進化

50

R&D活動の立地に影響する要因

説明変数 実証研究の例

①ホスト国 要因

知財権強化度 Kumar(2001), Ito and Wakasugi (2007)

サイズ (市場規模、GDP)

Hakanson(1992), Kumar(1996, 2001), Shimizutani and Todo (2008)

距離(東京まで) Shimizutani and Todo (2008)

技術水準(R&D集約度)

Hakanson(1992)、Kumar(1996, 2001)、Almeida and Phene(2004), Ito and Wakasugi (2007), Shimizutani and Todo (2008)

R&D人的資源の量とコスト

Kumar(2001), Ito and Wakasugi (2007), Shimizutani and Todo (2008)

政府の規制 Taggart(1991)

貿易障壁の低さ Kumar(2001)

②本社要因

サイズ Odagiri and Yasuda (1996), Belderbos and Rene (2001)

R&D集約度

Zejan (1990), Le Bas and Sierra (2002), Odagiri and Yasuda (1996), Hakanson and Nobel(1993), Rene (2001)

国際化度 (生産、販売)

Hakanson and Nobel(1993)

③海外拠点要因

買収拠点 Hakanson(1992), Hakanson and Nobel(1993), Belderbos and Rene (2001)

輸出率 Zejan (1990), Ito and Wakasugi (2007)

現地市場販売率 Odagiri and Yasuda (1996)

歴史(拠点の年齢) Zejan (1990), Odagiri and Yasuda (1996), Hakanson and Nobel(1993)

R&D集約度 Odagiri and Yasuda (1996)

・ホスト国の市場規模が大きく、R&D人的資源の量が豊富でコストが安い場合、・現地拠点の歴史が長く、現地市場での販売率が高い場合、 「現地開発機能」が形成される傾向が見られる。

①立地要因が、その後の機能形成まで説明できるのだろうか?

・既存研究の共通した結論:海外R&D拠点はそれぞれ異なった役割を持っており、その役割は発展段階をたどる((Ronstadt, 1977; Hakanson and Nobel, 1993; Pearce and Papanastassiou, 1996; Nobel and Birkinshaw, 1998; Asakawa, 2001; Cantwell and Mudambi, 2005)。

既存研究では、拠点別にみられる発展段階の差については説明していない。

②現地拠点の機能形成の差に影響する要因は何か?

TTU(Transfer Technology Unit)

ITU(Indigenous Technology

Unit)

GTU(Global Technology

Unit)

CTU(Corporate Technology

Unit)

Local Adaptor International Adaptor

Global Creator

(ex) Ronstadt(1977)

(ex) Nobel and Birkinshaw(1998)

現地 開発機能

インド (T/C)

中国 (T/C)

タイ (T/C)

韓国 (DNPE)

米国 (T/C)

イタリア (DTS)

① 生産サポート 〇 〇 〇 〇 〇 〇

② 現地調達対応設計 〇 〇 〇 〇 〇 〇

③ 調査・情報収集機能 〇 〇 〇 〇 〇 〇

④ 商品企画・提案 〇 〇 〇 〇 〇 〇

⑤ 試作機能 〇 〇 〇 〇 〇 〇

⑥ 装着対応設計変更 〇 〇 〇 〇 〇 〇

⑦ 創造的設計対応 〇 〇 〇 〇

⑧ フラットフォーム設計 〇 〇 〇

⑨ 部品・材料評価機能 △ 〇 〇 〇 〇

⑩ 完成品評価機能 △ 〇 〇 〇

*△は現在導入中で、導入完了の明確な計画を持っている機能の場合つけられた。

デンソー6拠点の現地開発機能

51 ⇒拠点別差がみられる。

インド (T/C)

中国 (T/C)

タイ (T/C)

韓国 (DNPE)

米国 (T/C)

イタリア (DTS)

説明力

開発機能形成程度 8 6 7 10 10 10

ホスト国の市場規模 (自動車生産台数)

3,536,78

3 18,264,6

67 1,644,51

3 4,271,94

1 7,761,44

3 857,359 ✕

エンジニアの数とコスト(月・$)

112,000 681$

351,537 609$

n.a. 588$

67,000 1,658$

137,437 6147$

n.a. ✕

海外拠点の歴史 1993 独資

2003 独資

2008 独資

1976 合弁

1985 独資

1999 買収

販売先 (国内・輸出)

国内 国内 輸出中心 輸出中心 国内 国内 ✕

[i] http://oica.net/category/production-statistics/ (2010年) [ii] Engineering, computer science, information technology degrees awarded in 2004 (出所: Gereffi and Wadhwa、2005) [iii] JETRO(2011) 『アジア・オセアニア主要都市/地域の投資関連コスト比較』

現地開発拠点の立地要因と機能形成程度

52

⇒立地要因では、拠点間でみられる機能形成程度の差が説明できない。

インド (T/C)

中国 (T/C)

タイ (T/C)

韓国 (DNPE)

米国 (T/C)

イタリア (DTS)

説明力

開発機能形成程度

8 6 7 10 10 10

① 製品特性

カスタム志向・標準志

カスタム志向・標準志

カスタム志向・標準志

カスタム志向

カスタム志向・標準志

カスタム志向・標準志

② 市場 特性

成長 成長 成熟 成熟 成熟 成熟 ✕

③ 競争 構造

流動的 流動的 安定的 安定的 安定的 安定的 ✕

④ 顧客 特性

既存・ 新規

既存 既存 新規 新規・ 既存

新規 ○

*事例からの4変数と各拠点の機能形成程度

53

変数 区分

製品特性 標準志向製品:標準化した設計でグローバル対応を図る製品

カスタム志向製品:各車両デザインに合わせた設計変更が必要な製品

市場特性 成長市場

成熟市場

競争構造 流動的:プレーヤー間のシェア奪いの激しさが比較的高い

安定的:プレーヤー間のシェア奪いの激しさが比較的低い

顧客特性 既存顧客中心:日系メーカー中心の取引

新規顧客開拓:地場メーカーやその他の外資系メーカー向け拡販努力

*環境要因(コンテキスト)の違いを中心に、拠点別開発機能形成程度を検討

(1)事例の総括

第5節 事例の総括とディスカッション

第5節 事例の総括とディスカッション(つづき)

(2)ディスカッション

・本章の理論的な貢献

①既存研究は海外R&D拠点の役割が進化する傾向及び可能性を提示するだけであったのに対して、本研究はどのような状況の下で開発機能形成が促進されるのかを明らかにした。それによって、既存研究における海外R&D拠点の発展段階論をより詳細な分析で補い、発展させている。

②既存研究における海外R&D拠点の立地要因を整理した上で、開発拠点の立地要因と発展要因(機能形成程度)を事例分析から検討した。その結果、既存研究の立地要因は、開発拠点の発展について説明することができないことを明らかにした。→海外R&D拠点の立地の原理と発展(機能形成)の原理とが異なる可能性

・実務的な示唆点

①現地拠点に開発機能を設ける動機及び目的が、現地顧客への販売拡大でない限り、現地開発機能は発展し難い。

②現地開発機能の育成のためには、従来の現地生産の時とは違う本社側の調整やマネジメント方法が必要となる。

54

本社内部における調整の必要性:デンソー本社におけるDP-EMの事例

第6章

55

本章の目的

56

【第4章と第5章からの考察】

・数十年間本国本社に製品開発機能を集中させてきた企業の場合、海外市場に開発拠点の建物を立て、評価設備を完備し、エンジニアを雇い、教育していくだけで現地開発機能が育つとは考えにくい。

・モノを作る生産活動とは違って、知識を創り出す開発活動の特性を考えると、本国本社に蓄積されてきた技術・知識・ノウハウとの連携がより重要になると考えられる

・本国本社との効果的な連携なしには、資金力のある地場企業が優秀なエンジニアを雇用し設けた他の開発センターと差別化され難いだろう。

【第6章と第7章で取り組む課題】

・グローバル製品開発の‘調整’、つまり本社と現地開発拠点の間の連携のあり方について考察 ・第6章では本社と現地開発拠点間の連携をスムーズに進めていくために、本社組織内部においてはどのような変化と調整が必要なのかについて検討する。 ・第7章では、その両者の知識をつなげる人材育成の在り方を逆駐在員制度という手がかりから模索する。

本社(本社→海外拠点) 海外拠点(海外拠点→本社,他拠点) 知識移転 ・Cantwell(1993, 1995)

・Kogut and Zander(1993) ・Chini (2004)

・Reverse Knowledge Transferの諸議論(Frost and Zhou, 2005; Ambos, Ambos and Schlegelmilch, 2006) ・海外市場知識の移転(Lord and Ranft, 2000; Subramaniam and Venkatraman, 2001)

コントロール及び コミュニケーション

・Martinez and Jarillo(1991) ・Birkinshaw and Hood(2001) ・Nohria and Ghoshal(1994) ・Nobel and Birkinshaw (1998) ・Reger(1999)

・Ghoshal, Korine, Szulanski(1994)

内部の組織要因

? ・Ghoshal and Bartlett (1988) ・Birkinshaw and Hood(2001) ・Almeida and Phene (2004) ・Luo(2006) ・Mudambi, Mudanbi, and Navarra(2007) ・Pearce and Papanastassiou (1996)

内部の変化・発展

・Rondstadt(1978) ・Nobel and Birkinshaw (1998) ・Asakawa (2001) ・Cantwell and Mudambi(2005)

国際経営論のコンテキストとグローバルR&Dの議論

57

第1節 既存研究の検討

58

(出所:デンソー(株)ホームページ)

■きっかけ:約60年ぶりの赤字

■DP-EM(2009.7~2012.6) 3年間の社長直轄プロジェクト ・問題意識:日本自動車メーカーとの取引関係に最適化されてきた組織体質 →これでは、新興国市場で欧米メーカーとの競争で勝てない。 ・専任メンバー13名、兼任メンバー約20名

第2節 DP-EMの立ち上げ (Denso Project for Emerging Markets)

59

ベンチマーク ① • 中国20車種、インド10車種、ブラジルを含め数十車種の主要部品(23)を対象

• 市場動向及び各車両メーカーの部品全体の傾向を把握⇒広範囲の学習

• その成果ややり方などを各地のT/Cにフィードバック

市場調査 ② • 中国、アセアン3(Indonesia, Thai, Singapore)、インド、ブラジルの市場調査

• アンケートは内部作成、調査実施は外注(アンケート、街頭、グループインタビューなど)

商品企画と製品開発の管理 ③ • 集められたデータから、企画の前段階で見直せる技術要素を徹底検討

• 各事業部に依頼し、製品開発。プロセスや成果の管理

④ 受注獲得

•新製品展示会(@中国)、デモカー

•現地顧客への営業訪問にも参加

第3節 DP-EMの主要活動

【成果①】低コスト製品(対象:全23製品)の開発

60 (出所:デンソー2013年第2半期決算発表プレゼンテーション資料)

■低コスト製品の採用状況

第4節 DP-EMの意義と成果

(例)64スターターの事例(中国・ブラジル向け)

従来品

64スターター

背景 ・製品の小型軽量化

・小型車の需要が急増している新興国市場向けの製品開発の必要性

開発過程 ・製品構造のシンプル化、部品数の節減、設備、加工工程の見直し ・P型コンミ16工程→5工程(エンドフレームの無切削化など) ・加工面積9300㎡→1500㎡、ラインのサイクルタイム6秒→4秒

・駆動部のクラッチとピニオンを分離し、ピニオンだけでリングギアにかみ合わせる「ピニオンシフト構造」を開発 ・材料変更:銅線→アルミ線 ・部品もLCCが使えるように工夫した上で設計

成果 ・従来比約40%の軽量化を実現した1.9kのスターター開発(4輪車用世界最軽量) ・約30%のコスト節減

61

(例)熱交換器の事例(インド向け)

(左上)ラジエーター、(右上)ヒーターコア、(左下)コンデンサー、(右下)エバポレーター

背景 ・従来の熱交換器は極寒・極暑など世界のあらゆる環境で使用する前提で、熱交換器ごとに種類がことなる高精度な材料や部品が使われていた。

開発過程 ・インドの使用環境やニーズを調査して仕様を適正化 ・現地で調達可能な汎用材の使用を前提に製品開発

・各製品を構成するチューブとフィンなどの材料・部品を大幅に共通化

・生産面においても、成形機を工夫するなどで、4つの熱交換器を1本のラインで生産可能に

成果 ・材料種類を従来比7割以上削減 ・部品種類を従来比約4割削減

62

【成果②】新興国市場の徹底学習

63

Before After

・新興国市場は、安かろう悪かろうの世界だろう。

・ビジネスのリスクも大きそう。

・ものが安い理由が分かった。

・デンソーが競争するべきセグメントが分かった。

・中国市場対応の製品開発で、他の新興国への展開も検討するようになった。

・新興国市場対応の必要性を実感し、組織内にその認識を広めつつある。

第4節 DP-EMの意義と成果(つづき)

【成果③】本社エンジニアの発想変革

64

「エンジニアの視野を変える、発想のソースを変える試み」

第4節 DP-EMの意義と成果(つづき)

【成果④】コミュニケーション・チャンネルの構築

65

■DP-EMの前(2009年以前)

■ DP-EMの間(2009年~2012年)

■ DP-EM終了後(2012年6月以降)

①現地顧客

①現地顧客

①現地顧客

②現地営業 ③現地T/C ④本社 事業部

②現地営業

②現地営業

③現地T/C

③現地T/C

④本社 事業部

④本社 事業部

DP-EM

【現地顧客から本社事業部までの情報の流れ】

第4節 DP-EMの意義と成果(つづき)

第5節 事例の総括とディスカッション

(1)事例の総括

・本事例は、本社組織内部の変化なしには、本社と現地開発拠点の間における調整の際に3つのボトルネックが生じ得ることを示唆する。 ①本社側の新興国市場に関する無知 ②カーメーカーの要求条件に合わせて製品開発をしてきた従来のルーチン

③不明確な窓口やコミュニケーション・チャンネルから起因する情報の流れの断絶 (2)ディスカッション ・本章で取り上げたDP-EMの事例からは、製品開発のグローバル化を進める際に、本社組織内部の変化が必要であることを指摘した。

・上記の3つのボトルネックで述べたように、長期間製品開発機能を本社で行ってきた企業が現地拠点に開発機能を設けたとしても、本社組織内部の変化なしには効果的に機能しない可能性が高い。

・②のボトルネックはデンソーの従来における製品開発のルーチンといった業界特殊的、または企業特殊的な要素と言えるが、①と③のボトルネックにおいては、他産業においても言える要因と考える。

66

知識をつなげる人材育成 :逆駐在員制度

第7章

67

本章の目的

• 本章では、第6章に続き、本社と現地開発拠点の間の連携

のあり方を考察し、特にその両者の知識をつなげる人材育成について検討する。

• 販売・生産の海外展開と開発機能のグローバル化の違い:双方向の知識疎通の重要性

• 本社・現地拠点間の双方向の効果的な知識疎通に影響する諸要因の一つとして、本章では‘逆駐在員制度’の事例から議論

68

69

①日本企業における実態調査(1980年代後半~) ・逆駐在制度の実施状況(安室、1988;白木、1994;吉原、1996;中村、2005):日本企業の海外子会社におけるヒトの現地化議論の中で一部言及 ・根本(1999):トレーニーと逆駐在員の職能別類型化、日本企業と外資企業の比較を通じて、職能による逆駐在期間や人数の違い、海外子会社の管理者育成を目的とする日本企業の特性などを明らかにしている。 ・有村(2009):ヒトの現地化を促進させるもっともよい解決方法は、逆駐在制度であるが、同制度が注目されて20年以上が経過していても、企業のなかでそれほど活性化していないことを指摘する。

②欧米企業の新興国市場対策(1990年代後半~) ・アジア市場の浮上でglobal staffingの多様性が主張され始める(Scullion et al., 2007)。 ・Harveyを中心とする研究が代表的(Harvey, 1997; Harvey and Buckley, 1997; Harvey et al., 1999; 2000; 2005など):海外派遣員(expatriate)の限界、現地人材の強みがより力を発揮する状況への変化などを理由に逆駐在の

有効性を主張する。彼らは、逆駐在員の選定、トレーニング、モチベーション、評価システム、キャリアパス、成功要因などを分析した。 ・Collingsを中心とする研究はglobal staffing により戦略的観点を取り入れ、多様化することを主張する(Collings et all, 1997; Scullion et all, 2007; Collings et al., 2008; 2009; 2010)。

③多国籍企業の知識移転メディア(2000年代~) ・イノベーションと組織学習を促進させるメディアとしての逆駐在制度(古沢、2008;Collings et al., 2009;2010) ・代表的な研究はReiche(2006;2008;2011):どのような要件の下でより逆駐在員のboundary-spanning役割や知識移転が促進されるのかについて実証研究。 ・ドイツにおける実証研究から、逆駐在の主目的はbilateral knowledge transferであること、本社や本国への適応

過程は出身国によって異なっていること、個人個人の動機に差がみられること、逆駐在員の知識移転における重要性や価値が本社スタッフからは過少評価される傾向があることを示している。

第1節 逆駐在制度に関する既存研究:3つの流れ

Tata Nanoの10万ルピー車開発プロジェクト ・2輪ユーザーをターゲットに、徹底的なコストダウンでインドの庶民が買えるような価格を実現しようと、2005年Tata Motorsが開発開始。 ・排気量624ccの水冷2気筒エンジンを搭載したRR(後部エンジン、後輪駆動)の4人乗り、4ドア自動車である。 ・2009年7月から納車開始。約25万円、30万円、35万円の3タイプが用意されている。

Nano用ワイパーシステム受注への挑戦 ・デンソーインドの顧客は、マルチスズキ、ヤマハ、ホンダ、スズキ(2輪)、トヨタなど日系メーカーに集中していた。 ・2006年からNanoの開発プロセスに加わり、地場メーカーの部品受注に初めて成功した。 ・既存のワイパーシステム(写真・上)に比べ、約3~4割のコストダウンを実現。(写真・下)

なぜ、受注できたのか ・Tata Motors側は、“デンソーのみが、Nanoが追求する4つの側面(環境、安全、便利、コスト)全てを満足させたから”と言う。 ・それを可能にした要因として、デンソーが10年以上かけて育成してきた

現地人エンジニアの存在と、彼らが中心となって進めた製品開発で割り切った発想が製品に反映でき、顧客対応もスムーズにできたことなどが取り上げられる。

70

第2節 デンソーインドの事例:現地人エンジニア主導の製品開発

製品開発に必要とされる知識

71

知識の種類

市場知識 技術知識

形式知

暗黙知

知識の属性

・仕様書 ・図面

・市場報告書 ・顧客サーベイ

・個人のノウハウ ・熟練、巧み

・顧客の価値基準

・文化的、宗教的習慣及び生活様式

・知識の類型(types of knowledge) ①技術知識(Pearce and Papanastassiou, 1996; Almeida and Phene, 2004) ②市場知識(Subramaniam, Rosenthal, and Hatten, 1998; Lord and Ranft, 2000) ・知識の属性(dimensions of knowledge) ―製品開発における暗黙知の重要性(Nonaka, 1994; Leonard and Sensiper, 1998; Madhavan and Grover, 1998; Lord and Ranft,2000; Subramaniam and Venkatraman, 2001; Lagerstrom and Andersson, 2003)

“*成功的な製品開発のためには、4種類の知識が全て必要→本社と現地拠点の双方向の知識連携が必要

72

デンソーインドのプロジェクト・チーム

・開発3名+管理1名のインド人エンジニ

アで構成

Tata Motors

日本側の サポート

(アスモのエンジニア2名)

・Tata Motorsの設計基準とコスト感覚、インドの市場環境、使われ方などを最優先に検討 「割り切り(適正化)活動」 ・本社からの技術的提案を導入 一本ワイパーの開発で大幅なコスト削減を実現

日本研修経験のあるインド人エンジニアがコミュニケーション

インド人エンジニア同士でやり取り

“当初、タタ・モーターズ側のインド人エンジニアたちは、既存のワイパー・システムからこれもあれもとってしまえと、モーターとハンドルだけで十分といった提案をしてきました。つまり、ワイパーは動きさえすればいいといった考え方で、いわば「素うどん」のような状態に例えることが出来ます。しかし、デンソー側が性能安定性の観点などから検討を行い、ここだけは付けようということで、いくつかの機能を追加するようになりました。素うどんにかまぼことほうれん草を載せるような感じですね。機能や部品の追加によってもちろんコストはその分高くなりますが、技術的な面を説明しながら説得していき、タタ・モーターズの理解を得ることが出来たのです。”(2009年8月のインタビューから)

現地人エンジニア中心の‘割り切り活動’

ワイパー面積の割り切り

73

“インドは、雨が降る季節が短く、集中されています。雨季にはスコールが1時間ぐらい降る感じで、インドやヨー

ロッパなど頻繁に雨が降る地域とは違った発想が要求されます。インドの国内法規は厳守しつつ、厳しく降雨している際には、運転を控えるということを前提に、払拭面積については抑制する提案がなされました。” (2009年8月のインタビューから)

①本来の2本ワイパーの払拭面積 ②DNIN開発の一本ワイパーの払拭面積

・顧客のコスト要求への対応 -インド人エンジニアで構成された開発チームから部品の省略・変更に関するアイデアが次々と出される。 -減らしてもいいもの、省いてもいいもの、より安いものに代替してもいいものを彼らの目線から提案。

-例えば、ワイパーリング、ベアリング、ラバーキャップといった様々な部品の必要性や使い方がインドという国の環境とタタ・モーターズのナノといった顧客特性を踏まえた上で見直された。

74

現地における エンジニアリング・ニーズ

①社内的ニーズ ②顧客対応ニーズ

・現地における生産設備や機能を強化 ・90年代のビジネス拡大期に強化された。

・顧客の現地調達増加―>アプリケーション設計要望が出る。 ・現地での迅速な技術サポートが必要。

現地エンジニアリング機能強化・エンジニア育成

・年2名のインド人エンジニアが1年間日本で研修を受ける制度を実施 ・現在約30名の日本研修経験者が蓄積されている。 ・求められる役割 -日本で学んだことの実践 -日本で学んだことの会社内への展開(同僚教育) -日本のものづくり考え方の展開 -日本語や人脈を使った日本側とのコミュニケーション(窓口役)

デンソーインドにおける現地人エンジニアの育成

知識の種類

市場知識 技術知識

形式知

暗黙知

知識の属性

・既存の仕様書

・ベースとなるワイパーシステムの図面

・他社のワイパーシステムの実物やパンフレット

・(ワイパーに関する顧客サーベイの結果)

・ワイパー開発を続けてきたエンジニアのノウハウ

・ワイパーとガラス曲面や多部品との調整にかかわる経験の蓄積

・Tataの価値基準:コストと性能のバランス

・インド人のワイパーの性能に対する期待感、使い方に関する考え方

Nanoのワイパーシステム開発に必要とされる知識

75

知識リエゾンとしての現地エンジニア

76

Local Engineers

Japan HQ Local

Customers

Technological knowledge

Market knowledge

・本社研修を通じて、技術的暗黙知の獲得

・製品開発を現地人エンジニアに主導させることで、市場暗黙知の観察と解釈をより的確に製品に反映させる仕組みを構築

77

第3節 米国人エンジニアの本社駐在

(1)熱交換器開発部門のA氏の事例

①逆駐在の背景とミッション

・2004年DIAMに入社し、大型建機用のラジエーター開発

・2011年10月から本社駐在:本社のエンジニアとプロジェクト・チームを組んで米国向け製品開発

・開発プロジェクトの中で、本社エンジニアとDIAMのスタッフの間でニーズ及びコミュニケーションをつなげる役割

DIAM

部長(J)

室長(J)

課長(J)

新人(J)

課長(A)

新人(A)

DNJP

北米向け製品Aの開発プロジェクト

(1)熱交換器開発部門のA氏の事例(つづき)

②知識移転

・デンソーはグローバル顧客を満足させる製品を持っていない。

-パワートレイン用の熱交換器の例

・ピックアップトラックなどにおいて、米国市場向け製品開発と顧客拡大の余地が大きい。

・そのため、日本駐在を通じて詳細開発のプロセスを学び、それをDIAMに持ち帰りたい。

・DIAMの熱交換器R&D部門:2名→8名

③コミュニケーション・チャンネル

・現地顧客情報の収集

-日本にはない海外顧客のニーズ

-A氏がDIAMに依頼し、取り寄せているが大変

-本社の日本人エンジニアにとってはもっと難しいだろう。

・本社内部の意思決定プロセス

-グローバルトレンドや競合他社の開発動向から提案してきても聞いてもらえなかった。

-コンセンサス⇒意思決定⇒行動

・意思決定権と60年間の技術蓄積がある本社と繋がらずには、海外拠点での開発は成長しない。

・日本人とのコミュニケーション方法も分かった。

78

(2)冷却機器部門のB氏の事例

79

①逆駐在の背景とミッション

・2005年にDIAMに入社し、ホンダ向けCRFM module設計を7年間やってきた。

・本社駐在4ヶ月目:現在開発中のホンダの1車種向け(デンソー供給)製品のうち、B氏が経験してない製品の設計を習うため。→DIAMで開発できる製品種類の拡大

・例の車種は、今年の中旬に、Honda Japan+Denso Japan 開発⇒Honda U.S. +Denso U.S.(DIAM)開発へ移管される。

②知識移転

・本社駐在を通じて、既に手掛けてきた製品の詳細設計知識を獲得、今まで経験したことのない製品の設計知識を得る。

→本社への設計依存を減らしていく。

・本社における1年間ぐらいのトレーニングで、コンデンサー、リザーブ・タンク、モーター、トランスミッションなどの現地設計を可能にする。

・世界各地で販売できる、日本開発モデルのノウハウを身に着けたい。

(2)冷却機器部門のB氏の事例(つづき)

80

③コミュニケーション・チャンネル

・DIAMと本社コミュニケーションの必要性

-日本で設計された製品を米国でホンダU.S.が開発した車両に搭載する場合、現地でtechnical evaluationのやりとり

Denso Japan

Denso U.S.

Honda Japan

Honda U.S. Q

Q

A

A

・従来の問題点 ―日本ではdesign review meeting, status updating meetingが頻繁に行われている。 -しかし、米国には共有されない。(問い合せたら、それに関する答えのみ)

-米国側は開発スケジュールに合わせて生産準備を進める必要があるため、情報共有がないと非常に困る。 -設計変更に関することを顧客から聞くことも。 ⇒これをぜひ改善していきたい。

*エンジニアの逆駐在がもたらす双方向の知識疎通効果

81

本社 現地拠点

①Outbound effect

本社の知識・ノウハウを身につけて現地に運ぶ。

②Inbound effect

現地顧客のニーズやグローバルな動向を本社組織内に波及させる。

③‘コミュニケーションの問題の所在’が分かるのと同時に、解決意欲が強い→コミュニケーション・チャンネル構築に役立つ。

逆駐在のミッション 知識移転 コミュニケーション A氏 ・米国市場向け製品の開発プロジェ

クトを進める。 ・本社の詳細設計と技術能力を習得する。

・米国市場のニーズを把握、本社へ伝える。 ・本社における詳細設計プロセスとノウハウをE社へ移転する。

・現地顧客―E社―A氏―本社の流れの中で、窓口役を務める。 ・本社内部でコンセンサスを形成し、意思決定に参加できる。

B氏 ・現地での設計対応が可能な製品範囲を拡大する。

・本社で習った知識・ノウハウをE社に持ち帰り、E社の開発能力を向上させる。

・本社の情報が随時にE社に伝わらず、困ることが多かったので、その問題を改善したい。

* A氏とB氏のインタビュー内容のまとめ

第4節 事例の総括とディスカッション

(1)事例の総括

・本章では、本社と現地開発拠点の間における双方向の知識疎通の重要性及びその双方向の知識を繋げるリエゾンとして逆駐在員の有効性を検討した。

・デンソーインドと本社駐在中の米国人エンジニアの事例を通じて、本社がもつ技術知識と現地人エンジニアが持つ市場知識、特に暗黙知的な部分の両方が現地顧客向けの製品開発には必要であることと、その両方の知識を繋げる逆駐在員の役割を紹介した。 (2)ディスカッション

本章の文献レビュー、事例分析から以下の2つの命題を導き出すことができる→今後の更なる研究課題となる。

①現地開発機能を発展させるには本社と現地開発拠点間における双方向の知識疎通が必要である。

②本社と現地開発拠点の双方向を繋げる知識リエゾンとして逆駐在員の役割が有効である。

82

結び :グローバル製品開発のマネジメント

第8章

83

第1節 発見事項のまとめ

84

第2章 ・文献レビュー:同分野における既存研究が厚い研究基盤を築いてきたものの、主にマクロデータを用いた現象の把握に偏っているところから、より実践的な研究による発展の可能性を示した。

・本研究は製品開発機能に分析対象を絞った上で、長らく本社に開発機能を集中させていた多国籍企業がその機能を現地化させていくプロセスや課題についてミクロ的な視点から事例分析を行う。

第3章

第4章

・企業が取り得る「グローバル製品開発戦略」の類型にはどのようなものがあるのかを、開発立地(本社・海外)と製品設計(標準化・現地化)の選択から4類型に分類した。 ・7社の事例研究から、グローバル製品戦略には産業別の差がそれほど見られないこと、また1社の多国籍企業も複数の開発戦略を市場や製品に合わせて併用していることを提示した。

・デンソーの海外拠点の中で従来から製品開発機能を持っていたイタリア、韓国、米国拠点と本社の間の開発分業の在り方を探った。 ・各拠点の設立経緯(買収、合弁、独資)によって本社との開発分業の在り方も、今後の課題も異なってくる。

第5章 ・デンソーが2007年以降新設したインド、中国、タイにおける開発機能形成:‘現地顧客への販売拡大努力の有無’が影響している。

第6章 ・DP-EMの事例から、長年間本国本社に製品開発機能を集中させてきた多国籍企業の場合、本社組織内部の変化なしには、本社と現地開発拠点の間における活動の調整に様々なボトルネックが生じうることを指摘した。

第7章 ・逆駐在に関する既存研究レビュー、デンソーインドの事例、逆駐在中のアメリカ人エンジニアの事例を検討

・現地開発機能を発展させるためには本社の現地拠点間における双方向の知識疎通が必要であること、そしてこの双方向の知識を繋げるリエゾンとして現地人エンジニアの本社逆駐在は有効性を持つことについて議論した。

第2節 製品開発戦略の4類型とデンソーの事例

85

開発立地

製品設計

標準化

現地化

海外 本国

Ⅰ.本国・標準化

Ⅱ.本国・現地化

Ⅲ.海外・標準化

Ⅳ.海外・現地化

*従来の標準志向製品の開発(第4章)

*DP-EM開発の23製品(第6章)

*韓国のDNPE社における最近の動向

*インド拠点における事例(第7章)

(1)デンソーにおける開発戦略の使い分け

開発立地

製品設計

標準化

現地化

海外 本国

Ⅰ.本国・標準化

Ⅱ.本国・現地化

Ⅲ.海外・標準化

Ⅳ.海外・現地化

86

(2)グローバル製品開発戦略の進化経路

・①が第6章のDP-EMの事例から考えられる。 ・②及び③の移動は、現地拠点の開発能力の形成程度にかかわる。

開発立地

製品設計

標準化

現地化

海外 本国

Ⅰ.本国・標準化

Ⅱ.本国・現地化

Ⅲ.海外・標準化

Ⅳ.海外・現地化

87

開発立地

製品設計

標準化

現地化

海外 本国

Ⅰ.本国・標準化

Ⅱ.本国・現地化

Ⅲ.海外・標準化

Ⅳ.海外・現地化

* 進出経緯による進化経路の違い

・グローバル製品開発戦略の進化経路は、独資で設立した海外拠点でみられるものである(第4章のアメリカ拠点の事例)。

・合弁や買収で獲得した海外拠点の場合には、ⅢとⅣの選択肢が当初から備わっている可能性も高い(第4章のイタリア、韓国拠点の事例)。

第3節 現地生産の現地開発:マネジメントの違い

88

*従来の国際経営論は主に販売と生産を対象に議論を展開 ・Johanson and Vahle(1977)は企業の国際化プロセスを4段階、Vernon(1966)のPLC理論やDunning (1981)の折衷理論:企業活動の国際展開を説明する諸論理が想定していたのも販売及び生産といった活動であった。

*日本企業が蓄積してきた生産システムにおける優位性はどのように海外工場に移転されるかを巡った議論 例)・吉原・林・安室(1988):生産設備、生産管理、組織風土の3つの要因に分けて日本的生産システムの海外移転を検討 ・安保他(1991):アメリカにおける日本企業の実態調査を行い、日本的経営・生産システムの現地移転に焦点を当てていわゆるハイブリッド論を提示 ・曺(1993):‘段階的な技術移転’という論理で海外拠点への技術移転を説明

*現地開発のマネジメントでは、何が違ってくるだろうか。 ・知識移転の方向性と密度:

-現地生産のマネジメントにおいて、知識は本社から現地拠点へ主に流れ、現地にある程度のルーチンが形成されるとその頻度や密度は減少していくだろう。 ―一方、現地開発のマネジメントにおいては、本研究で示しているように知識を両方向疎通する必要性が高く、その知識疎通は反復的で日常的に行われるものと考えられる。

・企業が海外展開していくプロセスを①販売機能、②生産機能、③開発機能の順であるとしたら、本社との連携の必要性は①から③になるにつれて強くなっていく可能性がある。

第4節 本研究の意義と今後の研究課題

(1)本研究の学術的意義 ①従来のグローバルR&D論が既にR&Dを分散させている企業を対象にしてきたことに対して、本研究はこれからR&Dをグローバル化させようとしている企業の状況と課題に関する視点を加えたことである。

②現地開発のマネジメントにおける本社・現地拠点間連携の必要性を提示した研究(Almeida and Phene, 2004;椙山、2009)及び資源再配分の必要性を論じている新興国市場戦略に関する議論(新宅・天野、2009;天野、2010;臼井・内田、2013)に、より具体的な方策や研究テーマを事例研究から提示したことである。

(2)本研究の実務的意義 現地開発機能を育成しようとする企業に、以下の2点のアプローチが提案できる。

①本社組織内部の変化の必要性(第6章)

②逆駐在員制度の有効性(第7章)

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第4節 本研究の意義と今後の研究課題

(3)デンソー事例の特殊性:一般化可能性の検討 ・デンソーの事例は日本の自動車産業、特に自動車サプライヤー・システムの特徴(藤本他、1997)から考えた場合、明らかにそれなりの特殊性を持つ。

・しかし、既存市場・顧客’から‘新規市場・顧客’へ事業を拡大するため、本国本社に集中させていた製品開発をグローバル化させようとする多くの産業及び企業に適用可能な議論であると考える。

・特に、他産業より国内サプライヤー・システムにより埋め込まれた特性を持つ自動車サプライヤーが製品開発を現地化させていくプロセス及び課題を検討することが、他産業へ様々な示唆を与えられる可能性も高い。

(4)今後の研究課題 ①本研究の第3章で取り上げたグローバル製品開発戦略の類型をより洗練されたフレームワークとして発展させていくべきである。

②より広い産業における製品開発のグローバル化の実態及び課題を探っていくべきである。

③本稿で指摘している本社組織内部の変化や逆駐在員制度以外に、グローバル製品開発のマネジメントに必要な様々な方策を検討していくべきである。

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参考文献

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