プログラムおよび抄録 - naro.affrc.go.jp · つくば国際ワークショップ...

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つくば国際ワークショップ クローニングおよび それに関連する研究の現状と展望 2001 10 1518 文部科学省研究交流センター 日本国茨城県つくば市 農林水産省(MAFF) 農林水産技術会議事務局(AFFRC国立畜産草地研究所(NILGS国立農業生物資源研究所(NIAS日本畜産技術協会(JLTA後援:つくば科学万博'85 記念財団 藤平工業(株)

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つくば国際ワークショップ クローニングおよび

それに関連する研究の現状と展望

2001 年 10 月 15-18 日 文部科学省研究交流センター

日本国茨城県つくば市

ププロロググララムムおおよよびび抄抄録録

農林水産省(MAFF)

農林水産技術会議事務局(AFFRC)

国立畜産草地研究所(NILGS)

国立農業生物資源研究所(NIAS)

日本畜産技術協会(JLTA)

後援:つくば科学万博'85 記念財団

藤平工業(株)

つくば国際ワークショップ クローニングおよびそれに関連する研究の現状と展望 開催日:2001 年 10 月 15-18 日 開催地:文部科学省研究交流センター、茨城県つくば市 プログラムスケジュール 10 月 15 日(月)

13:30- 受付 15:00-15:30 開会セッション 議長:豊田裕

入谷明 開会のことば 「家畜における生産技術の歴史的背景――人工授

精から体細胞クローニング」 金川弘司 開会講演

「クローニング:新世紀のバイオテクノロジー」 15:30- 開会講演 議長:入谷明、金川弘司 15:30-16:20 イアン・ウィルムート 「クローン胚の発生に影響を与える因子」 16:20-17:05 角田幸雄 「ほ乳類におけるドナー細胞のタイプとクローニ

ング効率」 17:05-17:50 キース H.S.キャンベル 「形質転換と核移植、遺伝子付加およびノックアウ

トの進歩」 18:00- 歓迎レセプション

10 月 16 日(火)

8:00-8:30 受付、モーニングコーヒー 8:30- 口頭発表 1 議長:イアン・ウィルムート、居在家義昭 8:30-9:00 高橋清也 「日本における家畜クローニングの現状」 9:00-9:30 チェーザレ・ガリ 「ウシの異なる細胞タイプを使った核移植成功率

に関するマイクロインジェクション(圧電)と細胞

融合の比較」 9:30-9:50 コーヒーブレーク 9:50- 口頭発表 2 議長:ローレイン E.ヤング、高橋清也 9:50-10:20 久保正法 「核移植によりつくられたクローン牛にみられる

疾病の病理」 10:20-10:50 橋爪一善 「移植と体細胞クローンレシピエントウシにおけ

る胎盤発達」 10:50-11:15 松崎正敏 「クローン牛の内分泌」 11:15-11:35 コーヒーブレーク 11:35- 口頭発表 3 議長:河野友宏、若山照彦 11:35-12:05 ローレイン E.ヤング 「胚テクノロジーにより誘発される後成的変化;出

産前死亡および巨大児症候群に対する表現型上の

解釈」

1

12:05-12:35 ヨンマン・ハン 「動物クローニングの障害:不完全再プログラミン

グ」 12:35-13:35 ランチ 13:35- 口頭発表 4 議長:キース H.S.キャンベル、今井裕 13:35-14:05 ポール・ヒッテル 「ウシおよびブタの核移植中の rRNA 遺伝子の再

プログラミング」 14:05-14:35 ハイナー・ニーマン 「ドナー細胞と核移植由来の胚の細胞学的および

分子的特徴」 14:35-15:05 グザビエ・ヴィニョン 「除核されたほ乳類成熟卵母細胞への移植によっ

ておこる核のリモデリング」 15:05- コーヒーブレーク 15:30-16:30 ポスター発表 1 16:30- 口頭発表 5 議長:角田幸雄、グザビエ・ヴィニョン 16:30-17:00 平尾雄二 「LT 系統マウスにおける卵巣奇形癌発生:細胞全

能性(全組織再生能力)の基礎マウスモデルに関す

る未解決な疑問」 17:00-17:30 若山照彦 「核移植によって作られたクローンマウスと胚性

幹(ES)細胞」 17:30-18:00 河野友宏 「遺伝子標的胚性幹細胞由来のクローンマウス」 19:00- 晩餐会

10 月 17 日(水)

8:30-9:00 受付:モーニングコーヒー 9:00- 口頭発表 6 議長:佐藤英明、アンソニーW.S.チャン 9:00-9:30 メイサム・ミタリポーヴァ 「プリコンパクティング胚に由来するウシ胚細胞

株の多能性」 9:30-10:00 中辻憲夫 「ほ乳類胚細胞と胚性幹細胞の発生学的研究と操

作」 10:00-10:30 野瀬俊明 「胚性幹細胞から生殖細胞への in vitro での分化」 10:30-11:00 コーヒーブレーク 11:00- 口頭発表 7 議長:アンドラス・ディニーズ、宮野隆 11:00-11:30 佐藤英明 「rdw ラットおよび正常ラットにおける卵胞血管

形成促進による卵胞発達および排卵の改善」 11:30-12:00 星宏良 「ウシ前卵胞の in vitro での成長と発達」 12:00-12:30 葛西孫三郎 「ほ乳類卵母細胞の凍結保存」 12:30-13:30 ランチ 13:30- 口頭発表 8 議長:ジョセフ・フルカ・ジュニア、シオヤヤスオ 13:30-14:00 菊地和弘 「MPF は in vitro 成熟ブタ卵母細胞の老化を調節す

る」 14:00-14:30 ジャン・モトリック 「核移植後のほ乳類卵母細胞の活性化およびドナ

ー核の細胞周期同調が発生能に及ぼす影響」 14:30-15:00 ファンジェン・スン 「ほ乳類卵の受精時における精子誘発カルシウム

振動」

2

15:00-15:30 ウェイホア・ワン 「偏光顕微鏡およびその実用的使用による生きた

ほ乳類卵母細胞の紡錐体の観察」 15:30-16:30 コーヒーブレーク:ポスター発表 2 16:30- 口頭発表 9 議長:ジャン・モトリック、菊地和弘 16:30-17:00 大西彰 「ブタのクローニング」 17:00-17:30 アンドラス・ディニーズ 「ヒツジおよびブタにおける体細胞核移植:ロスリ

ン研究所の挑戦と最近の進歩」 17:30-18:00 吉岡耕治 「化学組成が明確な培地におけるブタ接合子の培

養」 10 月 18 日(木)

8:30-9:00 受付:モーニングコーヒー 9:00- 口頭発表 10 ハイナー・ニーマン、クリストファー・G.グルッペ

ン 9:00-9:30 長嶋比呂志 「トランスジェニックブタの効率的作製のための

新戦略」 9:30-10:00 今井裕 「生物医学・農学研究のためのトランスジェニック

ミニブタの作製」 10:00-11:00 コーヒーブレーク 11:00- 口頭発表 11 議長:内藤充、ウェイホア・ワン 11:00-11:30 アンソニーW.S.チャン 「遺伝的に修飾されたヒト以外の霊長類;ヒトの疾

病モデル」 11:30-12:00 ジョセフ・フルカ・ジュニア 「ほ乳類卵母細胞における核置換」 12:00-12:30 ヘレン M.サング 「鳥類における核移植開発へのチャレンジ」 12:30- 閉会セッション

永井卓 閉会のことば 口頭発表: 開会セッション:10 月 15 日(月)15:00-15:30 開会のことば/「家畜における生産技術の歴史的背景――人工授精から体細胞クローニング」 入谷明 ·······················································································································································11 開会のことば/「クローニング:新世紀のバイオテクノロジー」 金川弘司 ···················································································································································12 開会講演:10 月 15 日(月)15:30-17:50 「クローン胚の発生に影響を与える因子」 イアン・ウィルムート、アンドラス・ディニーズ、 ローレイン・ヤング、ティモシー・キング、ポール・デソーサ···························································13 「ほ乳類におけるドナー細胞のタイプとクローニング効率」 角田幸雄 ···················································································································································14 「形質転換と核移植、遺伝子付加およびノックアウトの進歩」 キース H.S.キャンベル ·····························································································································15

3

口頭発表 1:10 月 16 日(火)8:30-9:30 「日本における家畜クローニングの現状」 高橋清也、赤木悟史、足立憲隆、大越勝弘、松田純一、窪田力、徳永智之、居在家義昭··················16 「ウシの異なる細胞タイプを使った核移植成功率に関するマイクロインジェクション(圧電)と

細胞融合の比較」 チェーザレ・ガリ、イリーナ・ラグティーナ、ジョヴァンナ・ラザーリ············································17 口頭発表 2:10 月 16 日(火)9:50-11:15 「核移植によりつくられたクローン牛にみられる疾病の病理」 久保正法 ···················································································································································19 「移植と体細胞クローンレシピエントウシにおける胎盤発達」 橋爪一善、石渡広子、木崎景一郎、ヤマダオサム、今井敬、高橋透、オスマン V.パテル、 赤木悟史、志水学、高橋清也、辻本豪三、轟木淳一、居在家義昭 ·······················································20 「クローン牛の内分泌」 松崎正敏 ···················································································································································21 口頭発表 3:10 月 16 日(火)11:35-12:35 「胚テクノロジーにより誘発される後成的変化;出産前死亡および巨大児症候群に対する表現型

上の解釈」 ローレイン・ヤング、ケネス・フェルナンデス、ナタリー・ビュージーン、ハンナ・フェアバーン、ジョン・ガードナー、ジェニファー・バーガー、トム・マクヴォイ、ジョン・ロビンソン、 イアン・ウィルムート、ケヴィン・シンクレア ····················································································22 「動物クローニングの障害:不完全再プログラミング」 ヨンマン・ハン、ヨンクック・カン、トクボン・クー、キュンカン・リー ········································23 口頭発表 4:10 月 16 日(火)13:35-15:05 「ウシおよびブタの核移植中の rRNA 遺伝子の再プログラミング」 ポール・ヒッテル、ジョセフ・ラウレンチク、アンドラス・ディニエス、イアン・ウィルムート ···24 「ドナー細胞と核移植由来の胚の細胞学的および分子的特徴」 ハイナー・ニーマン、ウィルフリート・キューズ、アンドレア・ルーカスハーン、 ヨセフ W.カーンワス、クリスティン・レンジキ ···················································································26 「除核されたほ乳類成熟卵母細胞への移植によっておこる核のリモデリング」 ジャンポール・ルナール、グザビエ・ヴィニョン·················································································28 口頭発表 5:10 月 16 日(火)16:30-18:00 「LT 系統マウスにおける卵巣奇形癌発生:細胞全能性(全組織再生能力)の基礎マウスモデルに

関する未解決な疑問」 平尾雄二、マリア M.ヴィヴェイロス、カレン・ウィグルスワース、ジョン J.エピッグ ····················29 「核移植によって作られたクローンマウスと胚性幹(ES)細胞」 若山照彦 ···················································································································································30 「遺伝子標的胚性幹細胞由来のクローンマウス」 河野友宏、小野由紀子、木元慎吾、下澤律浩、伊藤守 ·········································································31

4

口頭発表 6:10 月 17 日(水)9:00-10:30 「プリコンパクティング胚に由来するウシ胚細胞株の多能性」 メイサム・ミタリポーヴァ······················································································································32 「ほ乳類胚細胞と胚性幹細胞の発生学的研究と操作」 中辻憲夫 ···················································································································································33 「胚性幹細胞から生殖細胞への in vitro での分化」 野瀬俊明 ···················································································································································34 口頭発表 7:10 月 17 日(水)11:00-12:30 「rdw ラットおよび正常ラットにおける卵胞血管形成促進による卵胞発達および排卵の改善」 佐藤英明、江金益·····································································································································35 「ウシ前卵胞の in vitro での成長と発達」 星宏良、伊藤丈洋、甲地優志、阿部宏之、千代豊·················································································36 「ほ乳類卵母細胞の凍結保存」 葛西孫三郎、枝重圭祐 ·····························································································································37 口頭発表 8:10 月 17 日(水)13:30-15:30 「MPF は in vitro 成熟ブタ卵母細胞の老化を調節する」 菊地和弘、内藤邦彦、野口純子、金子浩之、東條英昭 ·········································································38 「核移植後のほ乳類卵母細胞の活性化およびドナー核の細胞周期同調が発生能に及ぼす影響」 ジャン・モトリック、ラミロ・アリベリオ、ヴァレリ・ザクハルトチェンコ、 ミオドラグ・ストイコヴィッチ、ミハル・クベルカ、アクハルト・ヴォルフ ····································39 「ほ乳類卵の受精時における精子誘発カルシウム振動」 ファンジェン・スン、ティエシャン・タン、ジエンボー・ドン、シウイン・ホアン ·························41 「偏光顕微鏡およびその実用的使用による生きたほ乳類卵母細胞の紡錐体の観察」 ウェイホア・ワン、デイヴィッドL.キーフェ ·······················································································42 口頭発表 9:10 月 17 日(水)16:30-18:00 「ブタのクローニング」 大西彰 ·······················································································································································43 「ヒツジおよびブタにおける体細胞核移植:ロスリン研究所の挑戦と最近の進歩」 アンドラス・ディニーズ、イアン・ウィルムート、ジョン・クラーク、クリス・デニング、 サラ・バール、ティモシー・キング、ポール・デスーザ······································································44 「化学組成が明確な培地におけるブタ接合子の培養」 吉岡耕治、鈴木千恵、タナカアツシ、イドリス M-K アナス、岩村祥吉··············································45

5

口頭発表 10:10 月 18 日(木)9:00-10:00 「トランスジェニックブタの効率的作製のための新戦略」 長嶋比呂志、若生直浩、落合崇、黒目麻由子、アライヨシカズ、栗原隆、藤村達也、 高萩陽一、岡部勝、村上博······················································································································46 「生物医学・農学研究のためのトランスジェニックミニブタの作製」 今井裕、ウチダマサキ、シマツヨシキ、ホシノヨウイチロウ、池田穣衛、ニキレイコ······················48 口頭発表 11:10 月 18 日(木)11:00-12:30 「遺伝的に修飾されたヒト以外の霊長類;ヒトの疾病モデル」 アンソニーW.S.チャン······························································································································49 「ほ乳類卵母細胞における核置換」 ジョセフ・フルカ・ジュニア、パスカリノ・ロイ、ヘレナ・フルカ ···················································50 「鳥類における核移植開発へのチャレンジ」 ヘレン M.サング ·······································································································································51 閉会セッション:10 月 18 日(木)12:30- 閉会のことば 永井卓 ·······················································································································································52 ポスター: ポスター発表 1:10 月 16 日(火)15:30-16:30 16-01「ウシ乳腺上皮細胞株(BMEC)を使用した核移植胚の発生能」 赤木悟史、高橋清也、大越勝久、竹之内敬人、志水学、下司雅也、足立憲隆、淵本大一郎、 居在家義昭、麻生久 ·································································································································54 16-02「電気パルスで活性化されたブタ卵母細胞の in vitro での発生:成熟培養期の効果」 インジョン・ビン、リメイ・チェ、平尾雄二、竹之内直樹、桑山正成、永井卓·································55 16-03「in vitro で成熟させた時間と 6-ジメチルアミノプリンのブタ卵母細胞活性化に対する影響」 淵之上康平、若井拓哉、佐伯和美、川原学、木村幸一、佐々田比呂志、佐藤英明 ·····························56 16-04「培養液中のアスコルビン酸がウシ胚の in vitro での発生および冷凍保存後の生存力におよ

ぼす影響」 張山綾子、堂地修、家田荘子、今井敬、小山久一·················································································57 16-05「性成熟前および成獣ブタから回収した卵母細胞の in vitro での成熟能と発生能」 池田幸司、高橋芳幸 ·································································································································58 16-06「死んだ動物の組織の細胞培養と外来遺伝子の動物細胞への導入」 カタヤマケイ、藤原昇 ·····························································································································59

6

16-07「ブタ卵母細胞中における精子侵入から前核形成にいたるまでの脂肪滴の推移」 菊地和弘、ハンス・エクウォール、ペイサン・ティエンサイ、カワイヤスヒロ、 ヘリベルト・ロドリゲスマルティネス ···································································································60 16-08「ブタ核移植胚の核リモデリングおよび発生に対する卵母細胞活性化の時期の影響」 黒目麻由子、若生直浩、落合崇、栗原隆、藤村達也、高萩陽一、村上博、長嶋比呂志······················61 16-09「体細胞レシピエント細胞質として in vivo、in vitro で成熟させた卵母細胞を使って作製した

ブタ再建胚発生」 ガブサン・リー、サンフアン・ヒュン、ヘス・キム、テーヨン・キム、ソヒョン・リー、 ビョンチュル・オー、ジョンイム・パク、ジョンムク・リム、ウンソン・リー、スンクン・カン、 ビョンチュン・リー、ウースク・ファン································································································62 16-10「バキュロウイルス・昆虫細胞発現システムにおいて発現される組換えブタ透明帯糖蛋白質

の精子結合活性」 中野實、米沢直人、勝又敏行 ··················································································································63 16-11「細胞内および細胞外 2 価陽イオンのブタ卵母細胞の単為発生的活性化におよぼす影響」 岡田幸之助、原山洋、三宅正史 ··············································································································64 16-12「ウシ卵丘細胞を使った核移植によって作製されたガラス化した胚盤胞から誕生する生きた

産子」 斎藤則夫、金山佳奈子、的場理子、橋矢田豊、小林修司······································································65 16-13「体細胞クローンウシの胎盤の組織病理学的観察」 佐藤真澄、窪田力、田中省吾、鬼塚剛 ···································································································66 16-14「初期卵胞由来ウシ卵母細胞のコラーゲンゲル培養―無血清培地におけるヒポキサンチンの

効果」 千本正一郎、宮野隆 ·································································································································67 16-15「ウシ細胞およびマウス細胞における血清非存在状態に対するミトコンドリアの反応」 武田久美子、赤木悟史、高橋清也、大西彰、花田博文、カール A.ピンカート····································68 16-16「体細胞核移植および in vitro での受精によって作製されたウシ単個胚におけるテロメラー

ゼ、テロメラーゼ逆転写酵素 mRNA 発現の量的分析」 馬越純子、窪田力、轟木淳一、吉田光敏································································································69 16-17「体細胞核移植をおこなったウシの出産後生存率はドナーとして G0 期細胞を用いた方が

G1 期細胞を用いた場合よりも高くなる」 デビッド・ウェルズ、アンドリア・ミラー、ジャン・オリバー、フロー・タッカー、 ジャックィ・フォーサイス、マーティン・バーグ、ケイティ・コックレム、 ビョルン・オーバック、ロビン・タービット ························································································70 16-18「卵胞液中のヒアルロニダーゼ分析」 シャオピン・ウェン、マーティン・ラック、チョンスァン・ウ、ターチン・リン、 スンチョン・クオ·····································································································································72 16-19「NCSU-37 または M-199 中で成熟させたブタ卵母細胞の in vivo、in vitro での単為発生」 ヤマグチリョウ、和田朝子、岡恵美奈、紫野正雄、柏崎直巳 ······························································73 16-20「円形精子細胞核を注入したウサギ卵母細胞の受精と正常度」 細井美彦、スズキチクサ、加藤博巳、松本和也、佐伯和弘、入谷明 ···················································74

7

16-21「異種移植によるウシ胎児卵巣内の卵胞発生および卵母細胞成熟」 ホソエミサ、野口純子、菊地和弘、金子浩之、徳永智之······································································75 ポスター発表 2:10 月 17 日(水)15:30-16:30 17-01「雌鳥由来体細胞を用いたニワトリのキメラ作成」 有富静、藤原昇 ········································································································································77 17-02「細胞質内注入(ICI)によるウシ核移植における活性化処理の胚盤胞発生に対する影響」 浅田正嗣、イクミサチコ、福井豊···········································································································78 17-03「体細胞クローンの胎児および胎盤の病変と臨床所見」 パスカル・シャバット=パルメ、クリストフ・リシャール、イヴァン・ハイマン、 ファラ・ケスリ、ミッシェル・ギロモ、ナタリー・コルドニエ、ル・ブリス・ダニエル、 ジャンポール・ルナール··························································································································79 17-04「電気的に活性化した IVM ブタ卵母細胞の単為発生に及ぼす 6-ジメチルアミノプリン、サ

イトカラシン B、シクロヘキシミドの影響」 クリストファーG.グルーペン、ステファン M.マキルファトリック、 サイモン・マドックス、マーク B.ノットル ···························································································80 17-05「ウシ未成熟卵母細胞は in vitro で減数分裂停止中に発生能を獲得する」 橋本周、南直治郎、高倉良、今井裕 ·······································································································81 17-06「雌ウシ同一個体より採取したレシピエント卵母細胞およびドナー細胞を用いた核移植」 金山佳奈子、小林修司、的場理子、橋谷田豊、米内美晴、斉藤則夫 ···················································82 17-07「In vitro で成熟させたブタ卵母細胞における活性化誘導のための化学的刺激の評価」 川原学、淵之上康平、若井拓哉、木村晃一、佐々田比呂志、佐藤英明 ···············································83 17-08「緑色蛍光蛋白遺伝子を導入した胎児線維芽細胞を用いて再構築したブタ胚の発生」 デヨン・キム、ソヒュン・リー、ビョンチュル・オー、ヒェスー・キム、ガプサン・リー、 サンファン・ヒュン、ジョンイム・パク、ユンソン・リー、ジョンモク・リム、 スンケン・カン、ビョンチュン・リー、ウースク・ファン ··································································84 17-09「G1/S 期ドナー細胞および活性化したレシピエント細胞質から再構築されたウシ核移植胚

の発生改善」 黒坂哲、長尾恭光、南直治郎、山田雅保、今井裕·················································································85 17-10「マウス遺伝子発現再プログラミングにおける DNA 複製第 1 期の調節的役割」 セルゲイ・メドヴェデフ、徳永智之、リチャード M.シュルツ、永井卓、ナタリア・ボサック、 居在家義昭······················································································································································ 86 17-11「腹腔内視鏡卵胞吸引により採取した in vivo 成熟卵母細胞を用いたヤギ体細胞核移植」 大越勝弘、高橋清也、小山眞一郎、赤木悟史、足立憲隆、古沢軌、藤本純一郎、徳永智之 ··············87 17-12「ウシクローン胚の ICM に由来する細胞株単離の試み」 ジョンイム・パク、キョンヒー・ジャン、スンクィン・カン、ウースク・ファン ·····························88

8

17-13「動物組織凍結保存に有効な凍害保護剤」 猿渡敬志、藤原昇·····································································································································89 17-14「トランスジェニック細胞を用いて再構築したウシ胚における遺伝子発現」 澤井健、森安悟、平山博樹、陰山聡一、南橋昭、岡部勝、伊川正人、尾上貞雄·································90 17-15「ブタ卵子細胞周期調節因子の正常な動態に必要な核の条件に関する研究:減数分裂期にお

ける MPF および MAP キナーゼ活性」 杉浦幸二、内藤邦彦、成岡春奈、東條英昭 ····························································································91 17-16「ブタにおける単為生殖 2 倍体の発生に対するアミノ酸の効果」 ングウィエン・ヴァン・スアン、三宅征史 ····························································································92 17-17「核移植によって作製した黒毛和種ウシの分娩状況およびテロメア長」 浦河真美、宇留野勝好、イデタアツシ、千代豊、星宏良、澤田登起彦、青柳敬人 ·····························93 17-18「クローン牛の特徴」 山田豊、坂口実、角川博哉、岸昌生、高倉良 ························································································94 17-19「培養ニワトリ胚盤葉細胞の胚盤葉キメラ生殖細胞系再構成能について」 松原悠子、廣田あずさ、傍島英雄、大西彰、鏡味裕、田上貴寛、春海隆、櫻井通陽、 佐野晶子、内藤充·····································································································································95 講演者、議長、ポスター発表者リスト ······················································································96

9

口口頭頭発発表表::

10

オープニングセッション 開会講演 家畜における生産技術の歴史的背景 ―人工授精から体細胞クローニング― 入谷明 1 1日本学士院会員。近畿大学生物理工学部教授・学部長、〒649-6493、和歌山 本ワークショップの開催にあたり、われわれ、日本の聴衆は、外国から招かれた素晴らしい講演

者の方々に心からの歓迎を申し上げる。過去 50 年の体細胞クローニングにいたる動物生物工学

の急速な発展を見ると、本ワークショップの開催はこれらの技術のさらなる発展を促進するため

に時宜を得たものであると私は考える。主催者の皆さん、会長のヨコウチ博士、また総合司会の

永井博士には心よりお礼申しあげたい。 1950 年頃にポルゲらによって精子の深冷凍結の成功が報告されて以来、その技術はウシの人工授

精(AI)に有効に利用されてきた。寒冷生物学の進歩にしたがって、胚凍結も 1972 年に成功し

た(ウィッティンガム、レイボ、マズール)。配偶子凍結も胚移植(ET)の使用の広い普及に貢献

した。ウシにおける胚移植に関する初期の研究(スギエとハフェズ)と国際胚移植協会(IETS)の設立は、ET およびそれに関連する技術の使用の世界的広がりを大きく加速した。精子受精能

獲得現象の発見(オースティンとチャン)以来、体外受精(IVF)がさまざまなほ乳類で成功し

てきた。ウシやブタのような大型の家畜における IVF が初めて報告されたのは 1977~1978 年(入谷ら)で、初めての IVF による子ウシが誕生したのは 1982 年のことであった(ブラケットら)。

大型家畜における IVF技術はこれらの種において従来どおりの遺伝子の産子および遺伝子導入を

施した産子の生産に貢献してきた。 約 20 年前、分割球の分離により同一の動物が生産された(ウィラッドセンら)。以後クローニン

グは、桑実胚あるいは未分化胚のマイクロブレードによる分割(ウツミと入谷)、胚細胞核移植

(スミスとウィルムート)、体細胞核移植(ウィルムート)によって達成されてきた。体細胞核

移植による動物のクローニング効率がさらに向上すると、倫理的、法律的側面が考慮されるよう

になってきた。この技術は動物の繁殖、絶滅の危機に瀕している動物の保存、および薬学や臨床

面への応用のための有用なツールとなるであろう。 参考文献 1. ウィッティンガム、D.G.、リーボ、S.P.、マズール、P.(1972):『サイエンス』178、411-414 2. オースティン、C.R.(1951):『オーストラリアン・ジャーナル・オブ・リサーチ』34、581-589 3. チャン、M.C.(1951):『ネイチャー』168、697-698 4. 入谷、A.、丹羽、K.、今井、H.(1978):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファ

ーティリティ』1978、54、379-383 5. 入谷、A.、丹羽、K.(1977):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファーティリテ

ィ』50、119-121 6. ブラケット、B.G.、ブスケ、D.、ボイス、M.L.、ドナウィック、W.J.、エヴァンス、J.F.、ドレッ

セル、M.A.(1982):『バイオロジカル・リプロダクション』27、147-158 7. ウィラッドセン、S.M. (1979):『ネイチャー』277、298-300 8. スミス、L.C.、ウィルムート、I. (1989):『バイオロジカル・リプロダクション』40、1027-1035 9. ウツミ、K、入谷、A. (1990):『家畜繁殖学』33、341 10. ウィルムート、I.シュニーケ、A.E.、マクファー、J.、カインド、A.J.、キャンベル、K.H.(1997):

『ネイチャー』385、810-813

11

開会講演 クローニング:新世紀のバイオテクノロジー 金川弘司 1 1北海道獣医学協会(北海道大学名誉教授)、〒063-0804、札幌 共同研究者ならびに参加者諸氏の皆さま、「クローニングおよびそれに関連する研究の現状と展

望」に関するシンポジウムへようこそ。私がこの分野に携わるようになってから 30 年あまりが

過ぎた。1970 年初頭、私は北米で、10 年間にわたる胚移植に関する基礎ならびに応用研究を始

めた。これらの経験により、私は 1975 年の「国際胚移植協会」の設立に関わることとなった。

当時は、生きた生物体をクローニングする技術などつまらぬ夢と考えられていた。 1997 年にイギリスで体細胞クローニングが初めて報告されて以来、クローニング研究は急速に進

歩した。日本では、約 600 頭の胚クローン牛が今日までに生産されており、そのうちの多くがす

でに市場に出回っている。さらに 200 頭の体細胞クローン牛が実験用に生産されている。 クローニング研究が進む一方、人工授精(AI)、胚細胞移植(ET)、体外受精(IVF)および関連

技術も多大な貢献をした。私は日本におけるこれらの技術の歴史と発展について述べるとともに、

北米における胚移植の商業的応用についても触れてみたい。 クローニングが 21 世紀の生物工学研究の最前線になることは疑いなく、この分野の研究者が大

きな貢献と躍進をすることができる。しかしながら、科学者としてわれわれは、研究を倫理的に

行うという、社会全般に対する大いなる責任を負っていることを忘れてはならない。われわれの

研究にとって動物は欠くべからざる要素であるという見方をしてくれたとしても、この責任を回

避してよいということにはならない。 生命科学におけるさらなる前進のためには、基礎研究および応用研究が非常に重要であるとして

も、自由で開かれた情報交換と一般大衆の支持と理解なくしては、このような研究の継続は不可

能である。 参考文献 1. カーマイケル、R.A.(1980):『家畜繁殖学』13、3-11

12

開会レクチャー クローン胚の発生に影響を与える因子 イアン・ウィルムート 1、アンドラス・ディニーズ 2、ローレイン・ヤング 1、ティモシー・

キング 1、ポール・デソーサ 1 1ロスリン研究所、遺伝子発現・発生科、ロスリン EH9 25PS、スコットランド、イギリス ヒツジ、ウシ、マウス、ブタ、ヤギの 5 種類の動物種の体細胞から産子が作り出されている。し

かしながら、経験を積んだ研究者が多大な努力をはらってきたにもかかわらず、少なくとも 5 種

類の動物種、すなわちラット、ウサギ、アカゲザル、ネコ、およびイヌからは産子はできていな

い。動物種とドナー細胞のタイプによってわずかな差がみられるものの、一般に、ほ乳類におけ

るクローニングはいまだに非常に効率が低く、生きた子として誕生できるのは再構築された胚の

うち 0-4%のみである。全体的効率の低さは、発達のあらゆる時期における個体死が蓄積された結

果である。最も死ぬ率の高い時期である胚盤胞にまで生き残る胚の比率は、細胞のタイプや動物

種によっても違うが、通常 10-50%でしかない。しかし、あらゆる時期において、正常な胚よりも

クローン胚では出生前および周産期の死が起こる確率が高い。特筆すべき例外として挙げられる

のは、ブタの例のみであろう。ブタを使った初期の実験では生きた状態で生まれたすべての子ブ

タが生き残った。いくつかの因子がクローン胚の発達に影響を与える。たとえば、細胞周期調整

法、卵母細胞活性化の方法と時期、細胞を誘導する発達時期における細胞のタイプなどである。 効率の低さおよび死のパターンは、いくつかの遺伝子の不適切な発現の結果であると判断されて

いる。そのような発現の致命的な影響は異なる時期にあらわれる。不適切な発現の原因となる遺

伝子発現調節の分化途上でのエラーについてはまだよくわかっていない。しかしながら、最近の

2 つの論文により、いくつかのケースではメチル化におけるエラーが関与していることが示唆さ

れている。IGF2r 調節要素のメチル化の変化がヒツジ胚培養後の胎児の体重増加に関係している

ことが発見された(ヤングら、2001)。また、クローン牛胚盤胞は異常なほど多様なメチル化が

起こっていることがわかっており、いくつかの例ではメチル化のパターンが正常な胚盤胞よりも、

ドナー細胞組織のパターンに類似していることがあることもわかった(ヨンクック・カンら、

2001)。 クローニング効率の向上は、初期発達を調節する分子メカニズムをより深く理解し、その知識を

生かして新しい戦略を開発し、核移植により適した環境を創出することによって成しとげられる

だろう。 参考文献 1. ヤング、L.E.、フェルナンデス、K.、マケヴォイ、T.G.、バターウィズ、S.C.、グティエレス、C.G.、

キャロラン、C.、ブロードベント、P.J.、ロビンソン、J.J.、ウィルムート、I.、シンクレア、K.D.(2001):『ネイチャー・ジェネティックス』27、153-154

2. カン、Y.K.、パーク、J.S.、チョイ、Y.H.、チュン、A.S.、リー、K.K.、ハン、Y.M.(2001):『ネ

イチャー・ジェネティックス』28、173-177

13

ほ乳類におけるドナー細胞のタイプとクローニング効率 角田幸雄 1 1近畿大学農学部家畜繁殖学研究室、〒631-8505、奈良 さまざまな組織に由来する体細胞の核移植により、クローン動物が作られている。しかしながら、

ほ乳類のクローニングに最も効率のよい細胞のタイプおよび細胞の起源が何かは明らかにされ

ていない。さまざまな組織に由来するドナー細胞を受け入れたウシ、マウス、ウサギ、およびブ

タの卵母細胞の in vitro の発生能には、ドナー細胞間で大きな差はなかった。ウシの実験では、成

体、新生ウシ、ウシ胎児の核を移植された 3 種の卵母細胞間にも、あるいは雄と雌の核を移植さ

れた卵母細胞間にも、胚盤胞まで成長する比率に違いはなかった。マウスの実験では、異なる細

胞系からの ES 細胞を受け取った卵母細胞の発生能は、体細胞のものよりも高かった。これまで

のところ、さまざまな組織に由来する体細胞を注入された除核卵母細胞を胚移植して、33 頭のク

ローン牛が誕生したが、分娩時、あるいは分娩後に 17 頭が死亡した。ドナー細胞の起源と正常

なクローン牛の生産効率の関係を正確に比較することは、データが限られているため困難である

が、われわれはなんらかの関係があると考えている。本シンポジウムでは、私の研究室における

ほ乳類クローニングの最近のデータを示すつもりである。 参考文献 1. 加藤、A.、谷、T.、ソトマル、Y.、クロカワ、K.、ドグチ、H.、角田、Y.(1998):『サイエンス』

282、2095-2098 2. 角田、Y.、加藤、Y.(1998):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファーティリテ

ィ』113、181-184 3. 加藤、Y.、薮内、A.、モトスギ、N.、カトウ、J.、角田、Y.(1999):『バイオロジカル・リプロダ

クション』61、1110-1114 4. 加藤、Y.、ライドアウト、W.M.3 世、ヒルトン、K.、バートン、S.C.、角田、Y.、スラニ、M.A.

(1999):『デヴェロップメント』126、1823-1832 5. 加藤、Y.、谷、T.、角田、Y.(2000):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファー

ティリティ』120、231-237 6. イン、X.J.、加藤、Y.、角田、Y.(2000):『畜産繁殖学』54、1469-1476 7. 谷、T.、加藤、Y.、角田、Y.(2001):『バイオロジカル・リプロダクション』64、324-330 8. 薮内、A.ら(2000):『ジャーナル・オブ・イクスペリメンタル・ズーオロジー』289、208-212 9. アマノ、T.、加藤、Y.、角田、Y.(2001):『リプロダクション』12、729-733

14

形質転換と核移植、遺伝子付加およびノックアウトの進歩 キース H.S.キャンベル 1 1ノッティンガム大学生物科学部動物生理学科、サットン・ボニントン、ローボロー、レスターシャー、

LE12 5RD、イギリス 大型動物種における体細胞核移植のためのテクニックの開発により家畜の正確な遺伝子修飾へ

の道が開かれた。初期の研究でウシおよびヒツジの培養細胞集団のトランスフェクションおよび

選択による無作為遺伝子付加の可能性が示された 1,2。さらに最近、標的遺伝子欠失および標的遺

伝子挿入が報告された 3,4。培養された体細胞で遺伝子操作を行える可能性は、対象となる遺伝子

の転写レベル、ターゲット構造、細胞集団における相同遺伝子組み替えの頻度、細胞の選択をし

て培養する技術、細胞の寿命および核移植胚発生促進の効率など、さまざまな因子に依存してい

る。本論文では体細胞核移植による遺伝子導入、特に標的遺伝子ノックアウトおよび遺伝子付加

の進歩および諸問題について総説する。加えて転写の組織特異的調節への道について、さらに技

術応用の可能性についても述べる。 参考文献 1. シニーケ、A.E.、カインド、A.J.、リッチー、W.A.、マイコック、K.、スコット、A.R.、リッチー、

M.、ウィルムート、I.、コールマン、A.、キャンベル、K.H.(1997):『サイエンス』278、2130-2133 2. シベリ、J.B.、スタイス、S.L.、ゴルーケ、P.J.、ケイン、J.J.、ジェリー、J.、ブラックウェル、

C.、ポンスデリオン、F.A.、ロブル、J.M.(1998):『サイエンス』280、156-158 3. マクリース、K.J.、ハウクロフト、J.、キャンベル、K.H.S.、コールマン、A.、シニーケ、A.E.、

カインド、A.J.(2000):『ネイチャー』405、1066-1069 4. デニング、C.、バール、S.、エインスリー、A.、ブラッケン、J.、デニーズ、A.、フレッチャー、

J.、キング、T.、リッチー、M.、リッチー、W.A.、ロロ、M.、デソーサ、P.、トラバース、A.、ウィルムート、I.、クラーク、A.J.(2000):『ネイチャー・バイオテクノロジー』19、559-562

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口頭発表 1 日本における家畜クローニングの現状 高橋清也 1、赤木悟史 1、足立憲隆 1、大越勝弘 2、松田純一 3、窪田力 4、徳永智之 2、居在家

義昭 2 1畜産草地研究所家畜育種繁殖部、〒305-0901、茨城県稲敷郡茎崎町池の台 2;2農業生物資源研究所発

生生物学部、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;3化血研、〒869-1268、熊本;4鹿児島県肉用

牛改良研究所、〒899-8212、鹿児島県大隈 家畜における体細胞核移植(SCNT)の研究は諸外国だけでなく日本においても活発になってい

る。日本の農林水産省(MAFF)および農林水産技術会議(AFFRC)は家畜の体細胞クローニン

グに関する共同研究プロジェクトをいくつか推進している。1998 年に初めて成獣の体細胞クロー

ン牛が生まれてから 2001 年 3 月までに 200 頭以上のクローン牛が実験的に誕生している 1。ウシ

の体細胞クローニングの研究は食肉および乳製品生産のためのクローン牛を大量に生産するた

めに始められた。しかしながら、まだその安全性が保証されていないため、クローン牛の製品は

まだ市場に出回っていない。厚生労働省はクローン動物の食品としての安全性の評価を担当して

いる。体細胞クローン牛の誕生以来、それらのウシの身体的成長および生理学的機能と繁殖能力

に関する研究がおこなわれてきた。クローン牛において、成長速度、血液の生化学的パラメータ、

精子の性質および人工授精後の受精率には顕著な異常はみられない。本発表ではまず日本におけ

るクローン牛の生産の現状およびそれに関連する諸問題について述べる。 また、われわれの研究室では、過去数年間、ヤギおよびウサギのクローニングおよび遺伝子導入

の研究を行ってきており、2000 年には体細胞クローン山羊が誕生した。しかしながら、このクロ

ーン山羊は 16 日齢で突然死亡した。病理学的検査でこのヤギのいくつかの器官で異所性造血が

観察されたものの、この異常の原因は明らかにされていない。体細胞クローンウサギはまだ誕生

していない。ウサギの SNCT 胚と正常胚の割球凝集により、キメラ胎児および胎盤を得ることに

は成功したが、誕生には至っていない。 参考文献 1. 加藤、A.、谷、T.、ソトマル、Y.、クロカワ、K.、ドグチ、H.、角田、Y.(1998):『サイエンス』

282、2095-2098

16

ウシの異なる細胞タイプを使った核移植成功率に関するマイクロインジェクション(圧電)と細

胞融合の比較 チェーザレ・ガリ1、イリーナ・ラグティーナ 1、ジョヴァンナ・ラザーリ 1 1動物繁殖技術協会(株)、繁殖工学研究所、ヴィア・ポルチェラスコ 7f、26100 クレモナ、イタリア 核移植により成熟したウシをクローニングすることは、いまだに予測不可能で効率の悪い方法で

ある。特にその目的が生きた生存能力のある子供を生産することである場合はそうである。成否

の鍵を握る多くの要素のなかでも、核の起源、核移植に使われる方法、再構築した胚の活性化が

最も重要である。 本研究において、われわれは除核された卵母細胞に核を移植する方法のうち最も一般的な 2 つの

方法、すなわち、細胞融合(CF)および圧電マイクロインジェクション(PEM)により得られた

結果を比較した。 CF プロトコール 1 では、膜融合と間接核移植を行うために中等度から大型の無傷の生存能力のあ

る細胞が必要である。核のマイクロインジェクションは amphybia における核移植のために開発

され、最近圧電マニピュレータの助けを借りて完成した 2,3。PEM では、膜の破れたできれば小型

の細胞か、または、生存能力のない細胞からでもいいので単離した核が必要になる。これらの理

由から、どちらの方法もほ乳類の核移植で有用な使い道がある。 核の起源;顆粒膜細胞および線維芽細胞は静止期を誘導するために培養し、リンパ球は使用直前

に解凍する。殺したドナーの卵巣から採取した卵母細胞 3 は in vitro で 16 時間成熟させ、除核し

さらに成熟させた。極体が出たら直ちに卵母細胞を除核した。胚は成熟後 21-23 時間までに CFまたは PME により再構築された。細胞融合では 1 kVolt/cm、30μ秒のパルスが使われ、PEM 細

胞膜は反復ピペット操作により破断され、注入しやすくするために 12%PVP 溶液に移された。操

作された卵母細胞はイオノマイシン(5μM、6 分間)および 6DMP(1.9 mM、5 時間)、または

シクロヘキシミド(CHX、10μg/ml、5 時間)で再構築したあと 1-4 時間活性化された。活性化

のあと、胚は 16 mg/ml の FAF BSA、グルタミン、EAA および NEAA を添加した SOF の微小滴

内で培養された。7 日目(核移植時:0 日目)、胚の発達を評価し、胚は新鮮な状態で移植または

凍結された。

表 CF および PEM により異なる細胞タイプから再構築された卵母細胞の発達

細胞タイプ 方法 (活性化)

検体の数 融合または成

功、注入(%)

分割した数 (%)

胚盤胞 D+7(%)

リンパ球 PEM (DMAP) 353 338 (95.6) a 289 (85.5) c 54 (16.0) f リンパ球 PEM (CHX) 234 224 (95.7) a 134 (59.8) d 24 (10.7) g 顆粒膜細胞 CF (DMAP) 253 177 (70.0) b 164 (92.7) c 70 (39.5) h 顆粒膜細胞 PEM (DMAP) 273 250 (91.6) a 189 (75.6) d 46 (18.4) f 成熟線維芽細胞 CF (DMAP) 227 139 (61.2) b 123 (88.5) c 89 (64.0) i 成熟線維芽細胞 CF (CHX) 192 117 (61.0) b 79 (67.5) dc 44 (37.6) h 成熟線維芽細胞 PEM (CHX) 722 696 (96.4) a 459 (65.9) c 78 (11.2) g

カイ二乗 p<0.05

17

リンパ球の CF のデータが示されていないのは、それが技術的に不可能であるからである。一般

に、CF よりも PEM のほうが再構築の成功率が高いが、CF で再構築された卵母細胞のほうがは

るかに多く 7 日目に胚盤胞に成長する。さらに、どちらのシステムにおていも、CHX よびも6

DMAP で活性化したのちのほうが胚を得やすい。 CF または PEM により同じ耳の線維芽細胞系から得られた 47 個の胚がレシピエントに移植され

た(1 胚/1 レシピエント)。CF、PME のどちらからも生きた子が誕生した。CF(6DMAP)では、

10個体が妊娠したが(妊娠率 50%)、出産には至らなかった。CF(CHX)では 3個体が妊娠し(21.4%)、

1 頭が出産した。PEM(CHX)では、7 頭が妊娠し(54.8%)4 頭が出産した。 結論として、CF よりも PEM のほうがより多くの胚を作り出せることは、ウシ卵母細胞がマイク

ロインジェクションに対する耐性が低いことを示している(ウシでは ICSI の効率が低いことも証

明された)が、PEM で得られた胚は正常な子の発育を助ける生存能力を持つ。 参考文献 1. キャンベル、K.H.S.、マクワール、J.、リッチー、W.A.、ウィルムート、I.(1996):『ネイチャー』

380、64-66 2. ワカヤマ、T.、ペリー、A.C.F.、ズコッティ、M.、ジョンソン、K.R.、ヤナギマチ、R.(1998):『ネ

イチャー』394、396-374 3. ガリー、C.、デューチ、R.、ムーア、R.M.、ラザリ、G.(1999):『クローニング』1、161-170

18

口頭発表 2 核移植によりつくられたクローン牛にみられる疾病の病理 久保正法 1 1動物衛生研究所疫学研究部病性鑑定室、〒305-0856、茨城県つくば市観音台 3-1-5 1999 年 4 月より、101 個のウシからの検体を組織病理学的に検査した。そのうち 22 頭は予定通

りに殺され、42 頭は流産または死産、9 頭は出産直後に死亡、5 頭は出産後 5 日以内に死亡、10頭は 6 日以上生存したウシであった。甲状腺コロイドの欠如あるいは減少が 17 例にみられた。

体重 50 kg 以上の大きな胎児が 12 例でみられた。11 例で、胎盤に大型病変がみられた。11 例で

免疫不全がみられ、それらのウシではリンパ組織の形成不全があった。6 例で筋肉の異常が見ら

れ、5 例で臍帯に、3 例で股関節に異常が見られた。肺胞蛋白症が 2 例で見られた。 出産直後に死亡した 9 頭の子ウシのうち、5 頭は体重が 50 kg 以上あり、1 頭は 40-50 kg、もう 1頭は 30-40 kg であり、残り 2 頭については不明であった。 体重が 50 kg 以上の 12 頭の子ウシのうち、3 例は流産または死産であった。5 頭は上述のように

出産直後に死亡し、2 頭は 1 日以内に、1 頭は 3 日目に、もう 1 頭は 22 日目に死亡した。これら

の子ウシにみられた主な病変としては、9 例で肝臓の結合組織の過形成が観察されている。甲状

腺コロイド欠如が 2 例に、大きさが不規則な甲状腺濾胞が 2 例に見られた。2 例で免疫不全が見

られた。 甲状腺異常が認められた 16 頭のうち、12 例で甲状腺コロイドの欠如が、4 例で甲状腺濾胞の大

きさの不規則性が、1 例で甲状腺腫が見られた。12 頭が流産または死産となったが、胎児の日齢

は 146 日から 256 日であった。体重 50 kg 以上の 3 頭が出産直後に死亡し、もう 1 頭は 0 日目に

死亡し、羊水の吸入および筋肉の異常が認められた。 免疫不全のあった 11 頭のうち、1 頭は流産し、6 頭は 10 日以内に死亡し、2 頭は 10 から 30 日の

間に死亡し、2 頭は 1 か月以上生存した。6 例は線維芽細胞の核を移植したものであった。 胎盤異常がみられた 11 例には、4 組(8 頭)の双生児が含まれていた。7 頭は卵丘細胞の核を移

植したものであり、他の 4 頭の核は線維芽細胞の核であった。5 例でカルシウム沈着が、1 例で

線維形成が見られた。

19

移植と体細胞クローンレシピエントウシにおける胎盤発達 橋爪一善 1、石渡広子 1、木崎景一郎 1、ヤマダオサム 1、今井敬 1、高橋透 1、オスマン V.パテル 1、赤木悟史 2、志水学 3、高橋清也 2、辻本豪三 4、轟木淳一 5、居在家義昭 1 1農業生物資源研究所発生生物部、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;2畜産草地研究所家畜育

種繁殖部、〒305-0901、茨城県稲敷郡茎崎町池の台 2;3農業技術研究機構東北農業研究センター、〒

020-0198、岩手;4国立小児病院、〒154-8509、東京;5鹿児島県肉用牛改良研究所、〒899-8212、鹿児

島県大隈 ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどの家畜において、体細胞クローン動物生産の成功が報告されてい

るにもかかわらず、妊娠失敗率は高い。非常に早期の胚の死亡が報告されているが、胎児の死亡

は妊娠期間のあらゆる時期にもひきつづき起こることがわかっている。いくつかその原因が考え

られるが、正常な妊娠中に起こる相互作用の全体像はまだ明確にされてはいない。クローン動物

の出産率が低いのは、おそらく胎盤の異常や発達不良によるものである可能性がある。ウシでは、

胎児栄養膜が小丘とよばれる子宮内膜の特定の部位に付着し、ある特殊な細胞がこの領域の上皮

細胞と融合する。母方の組織と胎児組織からなるこの複合体を placentome という。Placentome の

数は体細胞核移植(SNT)レシピエント牛では、妊娠 30、60、90 日、とくに 30 日において少な

く、SNT レシピエントの胎児発育遅延が示唆される。子宮内膜の再構築が移植と胎盤形成に不可

欠であることはよく知られている。加えて、母体-胎児間の情報交換も妊娠の成功に重要な因子の

ひとつであるのかもしれない。SNT レシピエントは絨毛膜絨毛の数が少ないだけでなく、小丘の

発達も不十分であった。しかし、妊娠 90 日以後、SNT レシピエントでは小丘は標準程度まで発

達したのだが、胎児の死亡や死産は起こりやすくなった。肉眼的観察により形態およびサイズの

点で placentome の発達に異常があることが明らかになった。ステロイドホルモン、胎盤特異的蛋

白質、サイトカインなどの多数の因子が、体液の分散および遺伝的背景に依存して移植および胎

盤形成の調節に関与している可能性がある。SNT レシピエントでは絨毛膜絨毛および小丘中隔の

組織学的異常がみられた。とくに興味深いのは、SNT レシピエントと人工授精ウシとのあいだに

placentome における遺伝子および蛋白質発現(とくに胎盤性ラクトゲン(PL)と妊娠関連糖蛋白

質(PAG))にわずかな違いがみられたことであった。栄養膜細胞、とくに 2 核細胞は、PL と PAGの両者を産生する。2 核細胞はウシ胎盤における融合と血管形成に中心的な役割を果たす。これ

らのデータは妊娠 30 日における栄養膜形成発達の遅延を強く支持するものである。要約すると、

これらの発見は PL や PAG などの胎盤特異的な蛋白質が SNT レシピエント牛における胎盤機能

の指標となりえるもののひとつであることを示唆している。本研究は開放的融合研究推進制度、

科学技術庁、生物系特定産業技術研究推進機構、および農林水産省により資金援助を受けている。

20

クローン牛の内分泌 松崎正敏 1 1九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部、〒861-1192、熊本県西合志 過体重の子ウシ、あるいは自発分娩の欠如、長期在胎、周産期死亡率の上昇などの周産期異常が

クローン牛の妊娠と関連して頻繁に観察される。これらの問題は、家畜生産分野におけるクロー

ニング技術の応用を制限している。正常な妊娠経過においては、出産予定日に近づくにつれ血中

グルココルチコイド濃度が上昇する(フォウデンら、1998)。この分娩直前のコルチゾールの上

昇は、分娩後期に子宮外の生活にそなえるためにいくつかの胎児器官の成熟を促進し、この時期

における胎児の成長を抑え、分娩開始を誘発すると考えられている。インスリン様成長因子(IGF)システムは発生的に調節されており、正常な成長に不可欠である。IGF 遺伝子の発現は妊娠後期

にコルチゾールにより直接調節され、その時期に、出産前コルチゾール上昇が IGF 作用の胎児モ

ード(パラクリン/自己分泌)から成熟モード(内分泌)への移行を誘発する。私は IGF システ

ムや視床下部-下垂体-副腎軸などの分泌機能の正常な成熟変化が妨げられることが、クローン牛

の妊娠にからむ過成長または周産期異常の原因の少なくとも一端は担っていると考える。この問

題に対処するために、クローン牛および正常ウシの分娩時の内分泌状態を比較した。 出産直後のクローン黒和牛 13 頭および同年齢のコントロール牛 7 頭から静脈穿刺により血液サ

ンプルを採取した。ラジオイムノアッセイにより血漿ホルモン濃度を測定し、ウェスタンリガン

ドブロット法により IGF 結合蛋白質(IGFBP)を半定量分析した。クローン牛は 5 頭が帝王切開

による出産、8 頭は経膣分娩による出産であった。一方、すべてのコントロール牛は自然経膣分

娩であった。クローン牛 1 頭が誕生時に死亡し、4 頭が 1 週齢以前に死亡した。クローン牛の出

生時体重は 25-56 kg であり、平均は 42 kg であった。コントロール牛の平均出生時体重は 31 kgであり、これはクローン牛よりも軽かった(P<0.01)。血漿 IGF-I 濃度はコントロールよりもクロ

ーン牛のほうが低かった(P<0.01)。クローン牛はコントロールに比較して血漿コルチゾール濃度

が極端に低かった(34±11 対 111±6 ng/ml)(P<0.001)。副腎皮質刺激ホルモンの血漿レベルはク

ローンとコントロールで違いがなかった。血漿 IGFBP プロフィールでは顕著な差がみられた。ク

ローン牛は、コントロールに比較して IGFBP-1(P<0.05)および IGFBP-2(P<0.001)の相対量が

大きかったが、両グループ間において IGFBP-3 および IGFBP-4 の相対量に違いはなかった。 クローン牛およびコントロール牛の間に、内分泌の特徴の差が見られたことにより、クローン牛

では出産前に十分なコルチゾール上昇がみられないために、後妊娠期中の IGF 作用の成熟モード

への転換の失敗につながるのではないかということが示唆される。内分泌システムの不適切な発

生的変化は、過体重産子の誕生あるいはクローン動物生産に随伴する周産期異常に、部分的に関

与している可能性がある。 参考文献 1. フォウデン、A.L.、リー、J.、フォアヘッド、A.J.(1998):『栄養学会議会報』57、113-122

21

口頭発表 3 胚テクノロジーにより誘発される後成的変化;出産前死亡および巨大児症候群に対する表現型上

の解釈 ローレイン・ヤング 1,2、ケネス・フェルナンデス 1、ナタリー・ビュージーン 1、ハンナ・フ

ェアバーン 1、ジョン・ガードナー、ジェニファー・バーガー1、トム・マクヴォイ 3、ジョン・

ロビンソン 3、イアン・ウィルムート 1、ケヴィン・シンクレア 3 1ロスリン研究所、遺伝子発現・発生科、ロスリン、ミッドロジアン EH25 9P、スコットランド、イ

ギリス;2 現住所:ノッティンガム大学人間発達学部、クイーンズ医療センター、ノッティンガム、

NG72UH、イギリス;3 スコットランド農業大学、クレイブストーン・エステイト、バックスバーン、

アバディーン AB21 9YA、スコットランド、イギリス ウシおよびヒツジの胚の発達は、in vitro 胚培養や核移植などの胚テクノロジー操作中に異常が起

こる。その結果生まれた産子は過体重であったり、さまざまな器官の、生理学的、胎盤性、骨格

性欠陥をもつことがあり、しばしば流産、死産にいたる。われわれはこれらの欠陥が移植前後に

誘発された後成的変化に起因するかどうかを、DNA メチル化の過程に焦点をあてて調べている。

ゲノム単位の大きな異常が起こるかどうかを調べるために、われわれは抗メチルシトシン抗体を

使ったヒツジ胚の全組織標本免疫染色技術および、反復性要素や単遺伝子座といったゲノムの特

異的要素を分析するために単胚メチル化感受性 PCR 法を開発した。われわれの研究成果を考えら

れる胚の早期死亡の原因として述べる。 胎児欠陥に関しては、われわれはすでに巨大産子表現型と 1 個のインプリントされた遺伝子 Igf2rの後成的変化とに結び付けている 1。しかしながら、われわれは他のインプリントされた遺伝子

についても研究中である。これらの遺伝子は成長異常および観察されている他の表現型のいずれ

にも関係している可能性がある。発現分析のために、われわれは単胚における数個のインプリン

トされた遺伝子の転写レベルの再現性のある測定を可能にするテクニックの改良をおこなって

おり、われわれの最新の結果を発表する。加えて、どの遺伝子がヒツジの初期発生中にインプリ

ントされるかを調べるために、in vivo 由来のヒツジ胚および胎児を使って単為生殖および 2 倍体

の研究も利用している。これは将来の研究のための遺伝子候補の選択に役立つであろう。 参考文献 1. ヤング、L.E.、フェルナンデス、K.、マクヴォイ、T.G.、バターウィズ、S.C.、グティエレス、C.G.、

キャロラン、C.、ブロードベント、P.J.、ロビンソン、J.J.、ウィルムート、I.、シンクレア、K.D.(2001):『ネイチャー・ジェネティックス』27、153-154

22

動物クローニングの障害:不完全再プログラミング ヨンマン・ハン 1、ヨンクック・カン 1、トクボン・クー1、キュンカン・リー1 1韓国生物科学・生物工学研究所、動物発生生物工学研究室、ユソン、テジョン 305-600、韓国 核移植ドナーとして体細胞を使ったクローニングは、ヒツジ、ウシ、マウス、ヤギ、ブタなどさ

まざまな動物で成功しているが、現在までのところ核移植(NT)胚の発生能は非常に低く、体細

胞の核を移植されて再構築された胚のうち、生きた産子が生まれるのは 1%に満たない。さらに、

核移植では、in vitro 発生の低下、流産率の上昇、周産期死亡率の増加など発生学的障害が生じる

率が高くなることが示されている。これらの発生学的障害を明らかにするために、われわれはま

ず NT 胚の発生能を調べた。さらに NT 胚盤胞と、体外受精(IVF)胚で細胞数を比較した。胚盤

胞形成は、ほ乳類における初期胚発生の最初の分化過程であり、このとき異なる 2 つの細胞系、

すなわち内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)ができる。一般に、ICM 細胞はすべての胚組織

になり、胚外膜の一部にもなる。TE 細胞は主に胎児の胎盤を形成する。どちらの細胞系も胚お

よび胎児の生存には絶対不可欠である。われわれはウシの NT 胚盤胞は IVF 胚よりも TE 細胞の

平均数が少ないことを発見した。しかし、NT 胚の胚盤胞期までの in vitro 発生率は、IVF 胚のそ

れと同等であった。第 2 に、われわれはクローニング系にみられる異常はおそらくドナーDNAの後成的再プログラミングが不完全であるためであろうという仮説を立てた。初期の胚発生中に

おこるゲノム単位の脱メチル化は、後の発生で重要となる多能性幹細胞形成の必要条件であるの

かもしれない。本研究では、ウシ NT 胚の様々なゲノム領域で異常なメチル化パターンを見つけ

だすことができた。NT 胚盤胞では、全体的なゲノムのメチル化状態がドナー細胞に酷似してい

た。このようなパターンは in vitro あるいは in vivo でつくられた正常な胚とは非常に異なるもの

である。結果として、われわれの研究結果から、NT 胚の発生異常は、胚盤胞の形成が十分でな

いこと、またドナーゲノム DNA の後成的再プログラミングが不完全であることが原因ではない

かと示唆される。

23

口頭発表 4 ウシおよびブタの核移植中の rRNA 遺伝子の再プログラミング ポール・ヒッテル 1、ジョセフ・ラウレンチク 2,3、アンドラス・ディニエス 4、イアン・ウィ

ルムート 4 1王立獣医農業大学解剖生理学部、1870 フレデリクスバーグ C、デンマーク;2コンスタンチン・ザ・

フィロソファー大学、3 畜産繁殖研究所、ニトラ、スロバキア;4 ロスリン研究所、遺伝子発現・発生

科、ロスリン、ミッドロジアン EH25 9P、スコットランド、イギリス ブタ 1 およびウシ 2 において、核小体を合成する原線維顆粒リボソームは、それぞれ受精後の第 3または第 4 細胞周期中に起こる主要なゲノム活性化と関連して形成される。われわれの研究の目

的は、核移植によって再構築されたウシおよびブタの胚において核の超微細構造および蛋白質配

分によって可視化された rRNA の再プログラミングを評価することであった。 再構築されたウシ胚は、in vitro で成熟させて除核した卵母細胞に、血清非存在下の顆粒膜細胞の

核を移植することによって作製し、20 分間 3H ウリジン中でインキュベートし、オートラジオグ

ラフィーおよび透過型電子顕微鏡用(N=18)、あるいは免疫細胞化学および共焦点走査顕微鏡用

(N=427)に処理した。胚は、さまざまな核蛋白質に対する抗体で標識した。核蛋白質とは、rRNA遺伝子転写にとって重要となるトポイソメラーゼ I、RNA ポリメラーゼ I、UBF(upstream binding factor)や、初期 rRNA プロセシングにとって重要なフィブリラリン、および後期 rRNA プロセシ

ングに必要なヌクレオリンとヌクレオホスミンである。第 1 細胞周期(1 細胞胚)中は、オート

ラジオグラフィー標識は検知されず、不活性化状態の核小体が観察された。RNA ポリメラーゼ I、フィブリラリン、UBF、ヌクレオリンの標識は核実体に限局していた。第 2 細胞周期(2 細胞胚)

中は、オートラジオグラフィー標識は同じく検知されず、胚は核小体不活性化のさまざまな形態

を見せた。RNA ポリメラーゼ I およびフィブリラリンの標識のみが残存していた。第 3 細胞周期

(4 細胞胚)中、および第 4 細胞周期(暫定的に 8 細胞胚)中は、オートラジオグラフィー標識

を示す胚もあり、原線維顆粒核小体の再形成と関連していた。RNA ポリメラーゼ I およびフィブ

リラリンの標識はいくつかの胚で残存していたが、みられない胚もあり、ヌクレオホスミンおよ

びヌクレオリンの標識が現れた。第 5 細胞周期(暫定的に 16 細胞胚)中は、すべての胚がオー

トラジオグラフィー標識と原線維顆粒核小体を示した。ほとんどすべての胚が UBF を除くすべ

ての蛋白質の標識を示したが、UBF は半分以上の胚でみられなかった。結論として、ウシ核移植

胚における原線維顆粒核小体の再形成は第 3 細胞周期中に早くも始まり、RNA ポリメラーゼ I および、とくに UBF の核小体への配分は遅延、または欠如すると考えられる。 ブタ胚は単為生殖または in vivo または in vitro で成熟させた除核卵母細胞へ血清非存在下の胎児

線維芽細胞の核を移植することにより作製した。単為生殖(N=265)および核移植胚(N=277)は UBF および RNA ポリメラーゼⅠに対する抗体で標識し、共焦点走査顕微鏡観察用に処理した。

両タイプの胚のなかで、かなりの比率の割球が無核であり、ごく少数は多核であった。単為生殖

胚の約半数が、第 1 および第 2 細胞周期中に、UBF および RNA ポリメラーゼⅠの核実体への局

在化をみせた。第 3 周期中、局在化された蛋白質はなかったが、第 4 周期中にはいくつかの割球

で両蛋白質の核実体への局在化を示した。核移植胚では蛋白質の実体への局在化はみられなかっ

た。結論として、ブタ単為生殖胚、とくに核移植胚では蛋白質の核小体への配分の障害がみられ

る。

24

参考文献 1. ヒッテル、P.、ラウレンチク、J.、ローゼンクランツ、C.、ラス、D.、ニーマン、H.、オックス、

R.L.、シェランダー、K.(2000):in vivo で発生させた移植前のブタ胚にみられる核小体蛋白質と超

微細構造。『バイオロジカル・リプロダクション』63、1848-1856 2. ランレンチク、J.、トムゼン、P.D.、ヘイシュミット、A.、エイヴェリ、B.、グリーヴ、T.、オッ

クス、R.L. ヒッテル、P.(2000):in vitro で作製した移植前のウシ胚にみられる核小体蛋白質と核

の超微細構造。『バイオロジカル・リプロダクション』62、1024-1032

25

ドナー細胞と核移植由来の胚の細胞学的および分子的特徴 ハイナー・ニーマン 1、ウィルフリート・キューズ 1、アンドレア・ルーカスハーン 1、ヨセ

フ W.カーンワス 1、クリスティン・レンジキ 1 1畜産動物行動学研究所、生物工学科、マリエンゼー、ノイツタット 31535、ドイツ われわれはブタの初期胎児線維芽細胞において、血清欠如によりアポトーシス経路を介する細胞

死が起こるか否かについて調べ、高分子量 DNA への切断あるいは 1 本鎖への断裂は血清濃度と

暴露時間に依存し、血清を含まない培養液中で 5 日培養した細胞の約 40%に影響があらわれるこ

とを解明した。Bax と Bak(アポトーシス関連 Bcl-2 遺伝子群)は血清欠乏によって昂進させら

れた。しかしながら、アポトーシスに特徴的なヌクレオソーム間 DNA 断裂は検知されなかった。

観察された異常なアポトーシスの形態から、クロマチン構造の変化は核移植により逆行可能であ

り、血清欠乏により体細胞核移植の成功率が上昇する可能性があることが示唆される。 われわれは再構成されたウシ胚盤胞において、核移植による修飾がどの程度 mRNA 発現パターン

に影響を与えるかを調べた。活性化前、または活性化と同時の細胞融合により核移植誘導胚盤胞

がつくられ、そのなかには熱ショック蛋白質(Hsp)の mRNA は検知されなかった。しかし、Hsp mRNA は in vitro で作製された(IVP)コントロール胚には存在した。G0 または G1ドナー細胞ま

たは 5/6 または 8 継代のドナー細胞を使用することにより、DNA メチルトランスフェラーゼ

(DNMT-1)の相対的転写量が減じ、コントロール胚に比較して Mash-2 の相対量が増えた。加え

て、インターフェロンτの転写は、G1 ドナー細胞からの NT 由来胚盤胞では、IVP コントロール

および G0細胞から構築されたものよりも顕著に上昇していた。これらの発見は、NT 胚において、

ストレス順応、栄養膜機能、DNA メチル化に関与する遺伝子の発現パターンの顕著な変化を示唆

している。 今回の実験では、ウシ胎児線維芽細胞および成熟ウシ線維芽細胞をドナー細胞とした場合、卵割

がおこる率および胚盤胞になる率は同様であった(それぞれ、70%対 76.3%、23.5%対 26.2%)。

胎児ドナー細胞を使った 13 個の移植再構成胚のうち、4 個が妊娠に至り(31%)、そのうちのす

べてが帝王切開によって生きた産子として誕生した。産子の平均体重は 68.4 kg であった。成獣

の線維芽細胞を使った 16 個の再構成胚は 16 頭のレシピエントに移植され、7 個が初期妊娠に至

った(43.7%)。現在までのところ、1 頭の生きた産子が誕生し、その体重は正常範囲の 43 kg で

あった。遺伝子発現解析により、胎児由来の再構成胚と成獣由来の再構成胚の胚盤胞期を比較す

ると、顕著な差がみられ、成獣ドナー細胞に由来する方は桑実胚および胚盤胞において XIST の

発現が増加していた。この XIST 発現上昇は、成獣細胞由来の再構成胚を、in vitro で作製された

胚、in vivo で生まれた胚、単為発生胚と比較した場合も明らかであった。 総合すると、これらのデータからドナー細胞の起源およびその処理は、NT 再構成胚の遺伝子発

現パターンに多大な影響を与えうることが示される。短時間の血清欠乏により誘発される“緩や

かなクロマチン構成”の仮説によりさらなる研究が期待される。 これらの研究はドイツ教育科学研究技術省(BMBF)およびドイツ研究会議(SFB 265; Ni 256/12-2)により研究資金援助を受けた。

26

参考文献 1. W.A.キューズ、M.アンガー、J.W.カーンワス、D.ポール、J.モトリック、H.ニーマン (2000) :『バ

イオロジカル・リプロダクション』62、412-419 2. C.レンジキ、D.ウェルズ、D.ハーマン、A.ミラー、J.オリバー、R.ターヴィット、H.ニーマン

(2001) :『バイオロジカル・リプロダクション』65、323-331

27

除核されたほ乳類成熟卵母細胞への移植によっておこる核のリモデリング ジャンポール・ルナール 1、グザビエ・ヴィニョン 1 1INRA(国立農業研究所)、発生生物学・生物工学部門、78350、ジョイ・オン・ジョサ、フランス 除核された成熟卵母細胞への核移植により、数種のほ乳類で生きた産子がすでに誕生している。

しかしながら、発生の抑制が起こるために、このテクニックの効率はいまだに低い。ウシを使っ

たわれわれの実験結果から、核の起源が、胚から胎児、そして成獣へと移るにつれ、胎児後期お

よび新生児死亡率が上昇することが示された。この死亡率上昇は核移植胎児の発生に対する長期

にわたる影響に起因する可能性がある。われわれはマウスにおいて、多能性胚細胞の起源など、

細胞のタイプにより、同じような長期の有害作用が起こるという証拠を得た。どちらの種でも、

核移植に使用される核の出所とは無関係に、生体外培養された再構成胚から、高い成功率で胚盤

胞がえられたが、これらの胚盤胞にはしばしば発達遅延が見られ、栄養芽細胞に比較して内部細

胞塊の量が少なかった。これは胚の最初の分化時にすでに発生の抑制が起こっていることを示し

ている。核移植直後あるいはその後の初期にみられる細胞レベル、分子レベルのイベントは、こ

れら 2 つの動物種間では非常に異なるようである。マウスのクローン胚が順調に発生するために

はレシピエント細胞質に凝縮状態のクロマチンを長時間暴露する必要がある。一方、ウシで使わ

れている効率のよい方法では、除核した卵母細胞へドナー核を導入したあと、ドナー核の早期ク

ロマチンの凝縮はおこらないようである。したがって、これらの高分子レベルの事象は、再構築

胚のそのあとの発生の能力を変化させる唯一の因子ではない。最近のデータから新たな仮説を引

き出すことが可能であり、それについて発表するつもりである。

28

口頭発表 5 LT 系統マウスにおける卵巣奇形癌発生:細胞全能性(全組織再生能力)の基礎マウスモデルに

関する未解決な疑問 平尾雄二 1、マリア M.ヴィヴェイロス 2、カレン・ウィグルスワース 2、ジョン J.エピッグ 2 1 東北農業試験場、東北農研センター畜産草地部、〒020-0198、岩手県盛岡市下厨川;2 ジャクソン研

究所、バーハーバー、メイン州 04609、米国 LT/Svおよび近親の系統の雌では、単為発生により活性化された卵母細胞から卵巣奇形腫が発生

する確率が高い。このユニークな奇形腫発生マウスモデルは発生学的研究および遺伝学的研究に

広く用いられているが、LT 卵母細胞が自発的に活性化する理由は明確に理解されてはいない。こ

れらの卵母細胞は減数分裂による成熟中、核分裂後期Ⅰが遅れて始まり、したがって、核分裂中

期Ⅰ(MI)に長くとどまることになる。後期Ⅰの開始が遅れ、やがて中期Ⅱ(MⅡ)に進行する

が、しばしばそのあと自発的活性化が起こり間期にはいる。減数分裂のこの特別な時期に活性化

が起こる結果、単為発生胚は 2 倍体になる。最近の研究で、蛋白質キナーゼ(PKC)が LT 卵母

細胞の後期Ⅰへの移行を遅らせる調節メカニズムに関与していることを示唆する証拠が現れ始

めている。卵母細胞成熟中に PKC 活性の調節ができなくなると、重要な MⅠから MⅡへの移動

が障害され、減数分裂から早期に離脱することになる。われわれは LT マウスにおいて奇形腫形

成を促進する初期減数分裂欠陥に関係する事象についての新しい理解について述べる。

29

核移植によって作られたクローンマウスと胚性幹(ES)細胞 若山照彦 1 1アドバンスト・セル・テクノロジー、1 イノヴェイション通り、ウスター、マサチューセッツ州 01605、米国 核移植(nt)によるほ乳類のクローニングをさらに深く理解することは、モデルとなる生物がいな

いために阻まれてきた。マウスは、われわれがその生物学をよく把握していることから非常に優

れたモデルの候補であるが、成体の体細胞からのマウスのクローニングは容易でないことが証明

されている。われわれは、最近、piezo-actuated(圧作動)核移植によりクローンマウスを作製する

新しい方法を開発した。マウスは、卵丘細胞、尾由来細胞(大部分の細胞が線維芽細胞)、成体

/胎児の雄および雌、何代も継代培養された胚性幹細胞(ES)系からクローニングされている。

現在 ES 細胞は体細胞から nt により作られたクローン胚に由来している(ntES 細胞)。ntES 細胞

は、胚盤胞注入によりキメラが作製されたのち、配偶子形成を含む分化の能力を完全に示す。雑

種株の成体体細胞からのクローニングにおける満期産率は、やはり必然的に低くなり、妊娠に至

った再構築された卵母細胞のうち約 2%でしかない。核ドナーとして近交系を使った場合には、

クローニングの成功率は 129 株を除けば極端に低い(0-0.3%)。すべてのクローンマウスに異常な

胎盤がみられ、しばしば株依存的頻度により未知の原因で周産期に死亡する。しかし、成熟に至

るまで生き延びたクローンマウスは、正常な繁殖能力を示し、6 回反復の再クローンマウスも健

康なマウスであった。クローニング現象の原因を考えるうえで、技術的限界、核“再プログラミ

ング”、体細胞突然変異、ゲノム・インプリンティング、細胞周期不適合による影響を原因因子

として区別すべきである。 参考文献 1. 若山 T.、ペリー、A.C.F.、ズコッティ、M.、ジョンソン、K.R.、柳町、R. (1998):『ネイチャー』

394、369-374 2. 若山 T.、柳町、R. (1999):『ネイチャー・ジェネティックス』22、127-128 3. 若山、T.、ロドリゲス、I.、ペリー、A.C.F.、柳町、R.、モンベアーツ、P.(1999):『プロシーディ

ングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・USA』96、14984-14989 4. 若山、T.、シンカイ、Y.、タマシロ、K.L.、ニイダ、H.、ブランチャード、D.C.、ブランチャード、

R.J.、オグラ、A.、タネムラ、K.、タチバナ、M.、ペリー、A.C.、コルガン、D.F.、モンベアーツ、

P.、柳町、R.(2000):『ネイチャー』407、318-319. 5. 若山、T.、タテノ、H.、モンベアーツ、P.、柳町、R.(2000):『ネイチャー・ジェネティックス』

24、108-109 6. 若山、T.、柳町、R.(2001):『モレキュラー・リプロダクション・アンド・デヴェロップメント』

58、376-383 7. 若山、T.、タバー、V.、ロドリゲス、I.、ペリー、A.C.、ステューダー、L.、モンベアーツ、P.(2001):

『サイエンス』292、740-743 8. 若山、T.、柳町、R.(2001):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファーティリティ』

122、49-60

30

遺伝子標的胚性幹細胞由来のクローンマウス 河野友宏 1、小野由紀子 1、木元慎吾 1、下澤律浩 2、伊藤守 2 1東京農業大学バイオサイエンス学科、〒115-8502、東京都世田谷区;2実験動物中央研究所、〒216-0001、神奈川県川崎市 分化した体細胞からクローン個体を作出することが、現在ほ乳類で可能となった。これまでの研

究で未受精卵には分化した細胞の DNA を再プログラミングする能力があることが明らかにされ

たが、これがどのようなメカニズムで起こるかは解明されていない。われわれは連続核移植シス

テムにより核分裂中期で停止した胚性割球を用いてマウスをクローニングする方法を開発した。

このシステムでは、まず 1 個の核を未受精卵に移植し、その結果できた前核を再び除核した受精

卵に移植する。今回われわれは受精卵の細胞質が、胎児線維芽細胞および胚性幹細胞をドナー細

胞として使ったクローンマウス作製に有効であるかどうかを調べた。胎児線維芽細胞をドナー細

胞として使った場合には、再構築された卵母細胞の胚盤胞期への発達は、連続核移植の場合も、

単回核移植の場合も同等であった(それぞれ 31%、37%)。5 頭の生きた子(2%)が連続核移植

により得られ、そのうちの 2 頭は正常に成長し、成熟した。単回核移植によるクローンの作製か

らは、健康な産子は誕生しなかった。ES 細胞をドナー細胞として使った場合、胚盤胞数と移植の

数の比は、連続核移植により作製された卵母細胞のほうが単回核移植で作製されたものよりも有

意に大きかった。産子が生まれる確率はどちらのグループも同程度であった(3.2%対 3.7%)が、

出産後の死亡は単回核移植によって作製された子にのみ観察された。里親である母マウスが授乳

を拒否した 1 例を除き、連続核移植による 10 頭すべての子が正常に成長した。これらの結果か

ら、受精卵の細胞質にはクローン胚を満期産まで発達させる活性があることが示唆される。しか

し、さらに厳密な研究がその活性の特質を明確にするために必要とされる。 参考文献 1. ウィルムート、I.シュニーケ、A.E.、マクファー、J.、カインド、A.J.、キャンベル、K.H.S.(1997):

『ネイチャー』385、810-813 2. 若山 T.、ペリー、A.C.、ズコッティ、M.、ジョンソン、K.R.、柳町、R. (1998):『ネイチャー』394、

369-374 3. クウォン、O.Y.、河野、T.(1996):『プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・

サイエンス・オブ・USA』93、13010-13013 4. 小野、Y.、下澤、N.、伊藤、M.、河野、T. (2001):『バイオロジカル・リプロダクション』64、44-50

31

口頭発表 6 プリコンパクティング胚に由来するウシ胚細胞株の多能性 メイサム・ミタリポーヴァ 1 1ブラサジェン社、私書箱 48027、アセンズ、ジョージア州 30604、米国 われわれはここに8-16細胞プリコンパクティング胚由来のウシ多能性胚細胞株3系列が作られた

ことを報告する。2 細胞株は 10 代継代培養され、自発的分化が起こった。1 細胞株(Z2)は継続

的に 3 年間培養され続け、未分化のままである。これらの細胞は細胞表面マーカーを発現させる。

他の動物種では、ステージ特異的胚抗体 SSEA-1、-3、-4 および c-Kit 受容体などのマーカーが胚

性幹(ES)細胞および胚性生殖(EG)細胞を特徴づけるために日常的に使われてきた。支持細

胞層が欠如すると、これらの細胞はさまざまなタイプの細胞に分化し胚様体(EB)を形成した。

長期間培養すると、EB は特定の細胞表面マーカーで特徴付けられる 3 つの胚細胞層(中胚葉、

外胚葉、内胚葉)の誘導体に分化した。われわれの結果は Z2 細胞株は多能性であり、胚性幹細

胞に似ていることを示している。われわれの知る限りでは、これは 150 代以上培養され続けてい

ながら多能性を持ちつづけている初めてのウシ胚細胞株である。

32

ほ乳類胚細胞と胚性幹細胞の発生学的研究と操作 中辻憲夫 1 1京都大学再生医科学研究所発生分化研究分野、〒606-8507、京都 胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚性幹細胞(ES)細胞株および始原生殖細胞(PGC)に由来する

胚性生殖(EG)細胞株など、ヒト多能性幹細胞株の樹立により、それらの細胞の再生医学におけ

る大いなる可能性が示されてきた。長年にわたり、マウス多能性幹細胞株は細胞分化の研究およ

びマウスにおける遺伝子機能を調べるための遺伝子ターゲッティングの重要なツールとなって

きた。遺伝子ターゲッティングの手順は非常に安定した ES 細胞株が入手できるかどうかにかか

っており、現在のところそのような株は 129 およびその他のいくつかの実験用マウス株に限られ

ている。われわれは多くの ES 細胞株を C57BL/6、MSM、SWN など数種の近交系マウス株から

樹立してきた。後者 2 種の株はそれぞれ日本と韓国の野生マウスに由来し、それらは頻繁に異常

な行動を見せる通常の実験用マウス株とは異なる野生タイプの行動表現型を示す。したがって、

そのような ES 細胞株は遺伝子標的マウスモデルにおける脳機能研究に有用であろう。これら ES細胞株からは、生殖細胞系伝達を示すキメラマウスができる。 また、われわれは培養マウス生殖細胞の発生の研究もおこなってきた。胎児から単離された PGCは増殖が制限されており、培養液中で自律増殖障害が起こった。増殖シグナルのコンビネーショ

ンにより EG 細胞コロニーの形成をひきおこした。減数分裂特異的蛋白質に対する抗体を使用す

ると、支持細胞層上で単細胞に分散されて培養されている PGC は雌生殖腺に達する以前でも以

後でも自律的に減数分裂に入る 1。胎児精巣から性交後 12日より前に単離されていれば、雄のPGCですら同条件において減数分裂に移行した。このような培養システムを用い、われわれは LIF お

よびその受容体 gp130 からのシグナルは、培養 PGC の減数分裂への移行を強力に阻止すること

を発見した。したがって、LEF/gp130 シグナルは、おそらく幹細胞を未分化の状態に維持するこ

と、PGC の成長/生存、および減数分裂への移行の阻止に複合的に関与している。 最近、われわれはカニクイザルの胚盤胞から数種の ES 細胞株を樹立した 2。それらはいくつかの

幹細胞マーカーを発現する幹細胞コロニーとして培養することができる。また、それらを免疫不

全 SCID マウスに移植すると多くのタイプの組織を含む奇形腫ができ、その多能性を証明した。

このような霊長類 ES 細胞株はさまざまな機能をもつ細胞の生産のための前臨床研究および疾病

モデルのサルへの細胞移植に役立つ貴重なツールとなる。 参考文献 1. チュマ、S.、中辻、N.(2001):『デヴェロップメンタル・バイオロジー』229、468-479 2. スエモリ、H ら(2001):投稿中

33

胚性幹細胞から生殖細胞への in vitro での分化 野瀬俊明 1 1三菱化学生命科学研究所、〒194-8511、東京都町田市南大谷 11 胚性幹(ES)細胞はホスト胚盤胞に移植されるとあらゆる細胞系列に分化する能力をもち、また

in vitro でさまざまな体細胞系列を生み出すことができる。ES 細胞がホスト胚の生殖細胞系列に

なりうることから、理論的には ES 細胞から in vitro で生殖細胞を作ることも可能である。われわ

れは以前の研究でマウス vasa ホモログ(Mvh)遺伝子は、性腺のコロニー形成ののちに生殖細胞

に特異的に発現することを示した。Mvh は生殖細胞系統の細胞の鑑別に特異的なマーカーとなる。

In vitro で生殖細胞が作られるのを可視化するために、われわれは GFP または lacZ が内因性 Mvh遺伝子座から発現する ES 細胞株を樹立した。ES 細胞が胚葉体に分化する間に、Mvh 陽性生殖細

胞が現れた。生殖細胞は骨形態形成蛋白質 4(BMP4)による直接的誘発によって出現しうる。移

植実験では、ES 細胞由来生殖細胞は再構築された精巣細管の生殖細胞部分となることが示され、

in vivo において生殖細胞として発生能があることを証明している。このシステムにより生殖細胞

形成を研究するためのはじめての in vitro 分化法が提供され、ほ乳類の生殖能力に影響を与える因

子を明らかにするための新たな実験的パラダイムが提供される。

34

口頭発表 7 rdw ラットおよび正常ラットにおける卵胞血管形成促進による卵胞発達および排卵の改善 佐藤英明 1、江金益 1 1東北大学大学院農学研究科動物生殖学教室、〒981-8555、仙台市 本研究の目的は、(i)未成熟段階における卵胞血管形成促進による卵胞の発生と排卵、(ii)不妊甲状

腺機能低下 rdw ラットおよび正常ラットにおいて約 30 日の間隔をあけた 3 回連続排卵誘導され

た場合の個々のラットの総排卵数を調べることであった。ラットは以前に解説された方法で、未

成熟段階でゴナドトロピン(10 IU eCG およびhCG)やチロキシン(T4、10μg/体重 100 g)を

投与または投与せずに処理し 1、そのあと、以前に解説された方法で T4(最終濃度 20μg/体重

100 g)を飲料水に混ぜた 2。さらに、後続のすべての処理において、発情後期および発情前期に

それぞれ 30 iu eCG および 30 iu hCG を投与した。卵胞発生はヘマトキシリンエオジン染色で観察

した 3。卵胞血管形成は光学走査顕微鏡および透過電子顕微鏡で観察した。血管形成因子のmRNA発現も RT-PCR により解析した。われわれの研究結果から、未成熟 rdw ラットにおいては、T4 処

理により卵胞の微小血管の発生および血管内皮成長因子のような血管形成因子の mRNA 発現が

促進され、eCG が存在しない場合には 101-400μm、eCG が存在する時には 500 μm 以上の健康

な卵胞の数が顕著に増加することが示された。これにより最初のゴナドトロピン処理において、

T4 およびゴナドトロピンで処理されたラット(85±5)ではゴナドトロピンのみで処理されたラ

ット(1-5±1-2)に比較して有意に多く排卵が見られた。T4 およびゴナドトロピンで処理された

rdw ラットでは最初の 3 回の処理で回収された総卵数は、ゴナドトロピンのみで処理された正常

ラットよりも有意に多かった(p<0.05)。また、T4 処理により、最初の 3 回処理を受けた正常ラ

ットの総排卵数は、ゴナドトロピンのみで処理した正常ラットの排卵数よりも多くなった。これ

らの結果により、卵胞微小血管を改善することによって卵胞発生および排卵が改善されることは

クローニングのような繁殖を補助する技術として重要である可能性が示唆される。この研究は

「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」により資金援助を受けた。 参考文献 1. 江、J.Y.、三好、K.、梅津、M. 佐藤、E.(1999):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アン

ド・ファーティリティ』116、19-24 2. 江、J.Y.、梅津、M. 佐藤、E.(2000):『バイオロジカル・リプロダクション』63、1637-1641 3. 江、J.Y.、梅津、M. 佐藤、E.(2000) :『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファ

ーティリティ』119、193-199

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ウシ前卵胞の in vitro での成長と発達 星宏良 1、伊藤丈洋 1、甲地優志 1、阿部宏之 1、千代豊 1 1機能性ペプチド研究所、〒990-0823、山形 ウシは前卵胞に何千個もの未成熟卵母細胞を含んでいる。多数の未成熟卵母細胞は胚移植、遺伝

子導入、絶滅危惧種の保存、遺伝的材料の卵母細胞バンクなどへの応用に役立つ可能性がある。

実験の最初のパートでわれわれはウシの初期前卵胞(直径 30μm から 70μm)の効率のよい単離

法の決定および卵胞の長期生存と発達の維持のための培養システムの開発についての研究をお

こなった 1。格子装置を使った機械的方法によって卵巣から無傷の卵胞を単離する場合、1 卵巣あ

たりの回収平均数(157)は、コラーゲン処理により単離された場合の回収数(26)よりも有意に多か

った。30 日間培養したのち、ウシ卵巣間葉細胞(BOM)およびウシ胎児皮膚線維芽細胞(FBF)と共生培養したときの生きた卵胞の率は、共生培養しなかった場合、あるいはウシ顆粒膜細胞

(BGC)と共生培養した場合に比べて、有意に高かった。研究の後半では、インスリン成長因子

ファミリー(インスリン、IGF-Ⅰ、IGF-Ⅱ)および FSH の、後期前卵胞の成長と発達(平均直径

218±12.4μm)に対する影響を調べた。卵胞は顕微鏡下手術によりウシ卵巣より切除し、0.15%のタイプⅠコラーゲンゲルに包埋して無血清培地で培養した。卵胞をコントロール培地で培養し

たときには、腔は形成されず徐々に卵胞直径が減少していき、卵母細胞の直径は培養 9 日後も変

化しなかった。インスリン、IGF-Ⅰ、FSH はそれぞれ独立に卵胞および卵母細胞の成長を促進し、

腔の形成を促がした。インスリンはエストラジオール(E2)生産を増強させたが、FSH は増強さ

せなかった。インスリンによる E2 生産は FSH の存在により強く刺激された。インスリンおよび

IGF-Ⅰ受容体の遺伝子発現は、単離された卵胞でも培養された卵胞でも、IGF-Ⅱ受容体よりも顕

著であった。ウシ前卵胞の in vitro での発達および成長が成功すれば、卵胞形成の複雑なメカニズ

ムの理解ならびに高い遺伝的価値をもつ動物系統を多数生産するために役立つであろう。 参考文献 1. 伊藤、T.、星、H.(2000):『インヴィトロ・セル・デヴェロップメント・バイオロジー』36、

235-240

36

ほ乳類卵母細胞の凍結保存 葛西孫三郎 1、枝重圭祐 1 1高知大学農学部生物資源科学科、〒783-8502、高知県南国市 細胞を生きた状態で長期間保存するためには、ガラス転移温度以下の温度で保存しなければなら

ない。そのためには通常、液体窒素中で保存する必要がある。細胞を処理し冷却する間、および

生理的溶液中で保存細胞を回復させる間、細胞は低温損傷、凍結防止剤の毒性、濃縮塩による損

傷、細胞外氷による物理的損傷、破砕によるダメージ、細胞内氷の形成および成長、浸透圧によ

る膨張や収縮など、さまざま因子により損傷を受ける可能性がある 1。各タイプの細胞に最適な

凍結保存法を見つけ出すためには、細胞が損傷を受けやすいメカニズムを理解することが重要で

ある。卵母細胞は凍結保存に対して胚よりも感受性が高いことは知られている 2。したがって、

卵母細胞はいくつかの因子による損傷をより受けやすいと言える。核分裂中期Ⅱのマウスの卵母

細胞を用いて、卵母細胞の低温生物学的特徴を調べた。エチレングリコールやグリセロールなど

浸透してくる凍結防止剤に対する卵母細胞の浸透性は、8 細胞期の桑実胚よりも低かった。しか

しながら、1 細胞期胚の浸透性とは同等であった。一方、卵母細胞は 1 細胞期胚よりも浸透圧に

よる膨張に対する耐性が非常に低かった 3。したがって、卵母細胞の凍結保存を成功させるには、

凍結防止剤毒性を抑えるために冷却の前に少しずつ凍結防止剤を添加していき、浸透圧による過

膨張を防ぐために加温後の凍結防止剤除去の最初の段階において高濃度の糖を使うことが重要

である。マウス卵母細胞がエチレングリコールベースのガラス化溶液である EFS40 中でガラス化

されるとき、卵母細胞を低濃度のエチレングリコール溶液で前処理し、加温後、卵母細胞を 1.5 Mのショ糖/PB1 媒体で希釈すると生存率が大きく改善される。しかし、卵母細胞は 1 細胞胚より

も浸透圧による収縮にも耐性が低いため 4、卵母細胞の初期膨張を防いだ後は、ショ糖の濃度を

下げることが望ましい。卵母細胞凍結保存のもうひとつの可能性のある戦略は、細胞膜の透過性

を人工的に増大させることであろう。これはあるタイプのアクアポリン(水だけでなく凍結防止

剤も卵母細胞にとりこむ水チャネル)のcRNA を注入することにより可能になるかもしれない 5。

実際、アクアポリン 3 のcRNA を注入されたマウス卵母細胞は、水とグリセロールの透過性がど

ちらも顕著に上昇した。これらの卵母細胞は無傷の卵母細胞内にほとんど浸透しないグリセロー

ルベースの溶液中でガラス化のあと生存した。一方、水を注入された卵母細胞を溶液中でガラス

化した場合、生存したものはなかった。 参考文献 1. 葛西、M.(1996):『アニマル・リプロダクション・サイエンス』42、67-75 2. ショー、J.M.、オランラトナカイ、A.、トロウソン、A.O.(2000):『セリオジェノロジー』53、59-72 3. ペドロ、P.B.、ジュー、S.E.、マキノ、N.、サクライ、T.、枝重、K.、葛西、M.(1997):『クライオ

バイオロジー』35、150-158 4. ペドロ、P.B.、サクライ、T.、枝重、K.、葛西、M.、(1997) :『ジャーナル・オブ・ママリアン・

オヴァ・リサーチ』14、66-71 5. 枝重、K.、サカモト、M.、葛西、M.(2000):『クライオバイオロジー』40、171-175

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口頭発表 8 MPF は in vitro 成熟ブタ卵母細胞の老化を調節する 菊地和弘 1、内藤邦彦 2、野口純子 1、金子浩之 1、東條英昭 2 1農業生物資源研究所分化機構研究チーム、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;2東京大学大学

院農学生命科学研究科応用遺伝学講座、〒113-8657、東京都文京区 成熟卵母細胞操作中の卵母細胞老化の制御は、核移植後のクローニングなど、最近の繁殖技術に

有益である。われわれは、ブタ加齢卵母細胞の活性能の増強は成熟/M 期促進因子(MPF)の活

性低下と緊密な関係があること 1、ブタ加齢卵母細胞には MPF が多量に含まれるが触媒サブユニ

ット p34cdc2(いわゆる前 MPF)のリン酸化により不活性化され、MPF 活性が低くなっているこ

と 2 を示した。最近の研究で、MPF 活性と老化現象の関係を調べるために、われわれはブタ卵母

細胞をバナジン酸塩とカフェインとともにインキュベートした 3。バナジン酸塩とカフェインは

リン酸化状態および MPF の活性に影響を与える。次に卵母細胞活性化能および無糸分裂を調べ

た。48 時間成熟させた卵母細胞を 500μM バナジン酸塩とともに 1 時間インキュベートすると

p34cdc2 のリン酸化が上昇し、ヒストン H1 キナーゼ(H1k)活性の低下は老化卵母細胞と同様であ

る。カルシウムイオノホア A23187 処理後のそれらの単為発生活性化および無糸分裂率は、コン

トロール卵母細胞に比較して顕著に増大した。一方、老化卵母細胞(60 時間成熟)を 5 mM カフ

ェインで 10 時間処理すると p32cdc2のリン酸化レベルが減少し、H1k 活性が上昇した。これらの

卵母細胞は未処理の老化卵母細胞(70 時間成熟)に比較してきわめて低い単為発生活性化率を示

し、無糸分裂率も低かった。結果から、MPF 活性は卵母細胞老化の重要なメカニズムであり、こ

れらの化合物を使った p34cdc2 のリン酸化を介する MPF 活性の制御により in vitro での卵母細胞の

老化を操作できる可能性があることを示唆している。 参考文献 1. 菊地、K.、居在家、Y.、野口、J.、フルカワ、T.、ダーン、F.P.、内藤、K.、トヨダ、Y.(1995):

『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファーティリティ』105、325-330 2. 菊地、K.、内藤、K.、野口、J.、シマダ、A.、金子、H.、ヤマシタ、M.、東條、H.、トヨダ、Y. (1999):

『ザイゴウト』7:173-179 3. 菊地、K.、内藤、K.、野口、J.、シマダ、A.、金子、H.、ヤマシタ、M.、アオキ、F.、東條、H.、

トヨダ、Y. (2000):『バイオロジカル・リプロダクション』63、715-722

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核移植後のほ乳類卵母細胞の活性化およびドナー核の細胞周期同調が発生能に及ぼす影響 ジャン・モトリック 1、ラミロ・アルベリオ 2、ヴァレリ・ザクハルトチェンコ 2、ミオドラ

グ・ストイコヴィッチ 2、ミハル・クベルカ 1、アクハルト・ヴォルフ 1 1 チェコ・アカデミー・オブ・サイエンス、動物生理遺伝学研究所、リベホフ、チェコ;2 ミュンヘン

大学分子動物繁殖遺伝学教室、オーバーシュライスハイム、ドイツ 正常な受精に非常に近く、実験的方法によりウシ卵母細胞を活性化して 1 倍体卵母細胞を得るこ

とは、細胞質内精子注入および核移植のための基本である。そこでわれわれは、1 倍体活性化卵

母細胞を作製する目的で、ブチロラクトンⅠおよびボヘミン(単独またはイオノマイシンと組み

合わせて)が若い成熟ほ乳類卵母細胞を活性化できるかどうかを調べた。さらに、前核形成後の

DNA 合成のパターンに対する影響、ならびに活性化プロセス中のヒストン H1 キナーゼと MAPキナーゼ活性の変化も調べた。ボヘミンの結果から、中期Ⅱのウシ卵母細胞における CDK の特

異的阻害は、用量依存的に(それぞれ 25、50、100μM)単為発生を誘発することが示された(単

独ではそれぞれ 3%、30%、50%、イオノマイシンとの併用では 30%、70%、87.5%であった)。ボ

ヘミンの存在下で Ca2+流入を誘発すると、1 倍体前核が観察された(97%)が、減数分裂の進行

なく前核が形成されるのはボヘミンを単独で使用した場合であった。ボヘミン活性化卵母細胞は

活性後 6-7 時間(hpa)で DNA 合成を開始し、S 期における高度な同調性が 8 hpa で活発に DNAを合成している単為発生細胞の 85%で認められた。ボヘミン、ブチロラクトンⅠ活性化卵母細胞

でヒストン H1 キナーゼの低下が観察された。MBP キナーゼの活性はヒストン H1 キナーゼより

も遅く減少し、イノマイシン-ボヘミン処理後 4 時間が経過しても少なくとも半分程度の活性が

検知された。そのあと MBP キナーゼ活性は減少し、6-8 hpa で最低レベルに達した。今回のデー

タは cdk キナーゼ(ブチロラクトンⅠ、ボヘミン)は単独または、Ca2+イオノホアとの併用でマ

ウス、ブタ、ウシの中期Ⅱ卵母細胞を活性化することができることを示している。活性化により

第 2 極体を排除し、1 倍体前核(このなかで DNA 合成が同調して始まる)の形成が可能になるた

め、cdk キナーゼの阻害剤を核移植テクニックにうまく組み込むことができる。 M 期同調ウシ胚盤胞を使って、核移植(NT)後の発生能に対する核-細胞質協調の影響を調べた。

異なる発生段階の胚の割球を可逆的に M 期細胞周期に同調させるノコダゾールとベノミルの効

果を評価した。ノコダゾールは可逆的にウシ胚を実験したいくつかの段階で停止させ、桑実胚お

よび緻密桑実胚において M 期を高率に誘導した。それとは対照的に、ベノミルはノコダゾールよ

りも M 期の同調に有効ではなかった。未成熟クロマチン凝縮が融合後 1 時間(hpf)に多く見ら

れた。中期板(1-3hpf)の改造が次に観察され、時間とともに(3-7hpf)組織化された構造を獲得

した。4-9hpf では後期-終期構造が多く見られた。3-4hpf および 6-7hpf で活性化された約 50%の胚

には活性化から 5 時間後に極体様構造が見られた。これは融合直後に活性化された胚では観察さ

れなかった。3-4hpf に活性化された卵母細胞は 6-7hpf に活性化されたものよりも有意に活性化率

が低かった。しかし、最初の卵割を始める能力は後者のほうが有意に低かった。融合直後に活性

化された再構成胚は、活性化率は 6-7hpf に活性化されたものと違いがなかったが、卵割率は高か

った。DNA 合成は融合直後に活性化された胚のほうが、3-4hpf に活性化され極体様構造がみられ

る胚よりも有意に高率に見られた。これらのデータから、ウシの M 期ドナー細胞は NT 後正しく

リモデルされず、正常な胚発生を誘発できないことが示される。クロマチン構造および DNA 合

成に関するわれわれの観察から、発生の失敗は NT 後の有糸分裂核のクロマチンリモデリングが

適切におこなわれないためと考えられ、そのために正常な胚発生を起こすことができない染色体

異常が起こるのではないかと示唆される。

39

参考文献 1. アルベリオ、R.、クベルカ、M.、ザクハルチェンコ、V.、ハドゥッヒ、M.、ウルフ、E.、モトリ

ック、J.(2000):『モレキュラー・リプロダクション・アンド・デヴェロップメント』55、422-432 2. アルベリオ、R.、モトリック、J.、ストイコヴィッチ、M.、ウルフ、E.、ザハルチェンコ (2000) :

『モレキュラー・リプロダクション・アンド・デヴェロップメント』57、37-47 3. クベルカ、M.、モトリック、J.、シュルツ、R.M.、パヴロック、A.(2000):『バイオロジカル・リ

プロダクション』62、292-302

40

ほ乳類卵の受精時における精子誘発カルシウム振動 ファンジェン・スン 1、ティエシャン・タン 1、ジエンボー・ドン 1、シウイン・ホアン 1 1中国科学アカデミー発生生物学研究所、北京 100080、中国 核移植された卵も含めた卵の胚発生の開始には、細胞内遊離カルシウム濃度の一過性の上昇が必

要である 1, 2。研究したすべてのほ乳類において、受精時に、精子が一連のカルシウム振動を誘発

することにより卵を活性化するという普遍的現象がみられる。この現象は前核が形成される前に

数時間持続する。これらの振動は、生殖細胞膜の融合後、卵内に拡散する精子由来の蛋白質因子

により誘発されるという証拠がある。この蛋白質因子の正体とその作用の正確な機序はこれまで

のところ解明されていない。本報告では、この蛋白質因子の同定とそれがほ乳類の卵の細胞内貯

蔵庫からカルシウムを放出させる機序についての研究成果について述べる。われわれは、精子蛋

白質因子は精子特異的であり、精子蛋白質因子のほ乳類の卵におけるカルシウム振動誘発作用は

脊椎動物にでは動物種特異的でないことを示す。この因子は InsP3 受容体媒介メカニズムにより

細胞内貯蔵庫からのカルシウム放出を誘発するが、卵の細胞質ゾルに顕微注入したときにのみ機

能する。精子因子は、分裂中期の卵、成熟過程にある卵母細胞、単為発生により活性化された卵

でカルシウム振動を誘発することができるが、接合子では誘発できない。精子因子により誘発さ

れたカルシウム振動はほ乳類の卵でただ一度だけ機能する母親由来の機構により媒介されると

いう証拠を示す。この機構は単為発生活性化ではなく精子由来蛋白質因子により不活性化される。

すなわち、われわれの研究は、受精時のほ乳類の卵におけるカルシウム振動の秩序だった連続反

応に影響を与える 2 つの必要不可欠な要素は、カルシウム放出を誘発させる生理学的刺激として

の役割を持つ精子由来蛋白質因子と、振動が持続できるかどうかを決定する母親由来の機構であ

ることを実証するものである。 参考文献 1. スン、F.Z.、ムーア、R.M. (1995):『カレント・トピックス・イン・デヴェロップメンタル・バイ

オロジー』30、147-176 2. タン、T.S.、ドン、J.B.、ホアン、X.Y.、スン、F.Z. (2000):『デヴェロップメント』127、1141-1150

41

偏光顕微鏡およびその実用的使用による生きたほ乳類卵母細胞の紡錐体の観察 ウェイホア・ワン 1、デイヴィッド L.キーフェ 1 1IVF 研究所、生殖医学不妊部門、ロードアイランド婦人小児病院、ブラウン大学医学部、プロヴィデ

ンス、RI;ニューイングランド医科センター、タフツ大学医学部、ボストン、マサチューセッツ州、

米国 未受精中期Ⅱ卵母細胞において、減数分裂紡錘体は正常な染色体配列および減数分裂中の母方の

染色体の分離に不可欠である。紡錘体の安定は、体外卵母細胞操作(体外受精、細胞質内精子注

入(ICSI)、および核移植など)中の正常な減数分裂に重要である。減数分裂紡錘体を映し出す従

来の方法は、固定と透過電子顕微鏡、または免疫蛍光染色と蛍光顕微鏡に依存しており、したが

って紡錘体の動態の研究には限られた価値しかなかった。われわれは新しい方向非依存性偏光光

学顕微鏡である LC ポルスコープ 1 を用いて、生きたほ乳類卵母細胞における複屈折紡錘体を観

察した。これまでのところハムスター2,3、マウス 3,4、ウシ 3、ヒト 5、ラットなど、これまで調べ

たすべてのほ乳類で生きた卵母細胞の紡錘体をポルスコープで映し出すことが可能であった。大

部分の中期Ⅱ卵母細胞では最初の極体によって正確に紡錘体の位置を予測することはできなか

った 2,5。卵母細胞を紡錘体が注入針に対して 90 度の角度に位置するよう回転してから ICSI を行

うことができた。この技術は最初の極体を注入針に対して回転させる従来法に勝る。従来法では

いくつかの卵母細胞で注入中に紡錘体を損傷することがあり、そのために異常な受精を誘発して

しまう。ヒトの研究で、ICSI 後に、紡錘体のある卵母細胞では紡錘体のない卵母細胞よりも受精

率および胚発生率が高くなることが示された。これは紡錘体の位置を監視しながら ICSI を行うこ

とがより安全であり、卵母細胞に紡錘体が存在することが卵母細胞の質の予測に役立つというこ

とを示している。ヒト卵母細胞の紡錘体は、わずかな変化にも、たとえば低温のみならず、高温

にも非常に敏感である。37℃に温度を維持することは正常な紡錘体機能にとって非常に重要であ

る。温度の変動に対する紡錘体の感受性は種特異的であるようである。マウス卵母細胞の紡錘体

は室温でも安定しているが、室温では減数分裂は停止する。新しい加温システムにより厳格な温

度制御を行なったところ、ヒト卵母細胞で ICSI 後、紡錘体を安定させることができ、受精および

妊娠率が上昇した。染色体は通常紡錘体線維と関係しているため、紡錘体を撮像することにより

間接的に染色体の位置を示すことができる。ポルスコープ下で紡錘体を除去することにより、マ

ウスの卵母細胞において 100%の除核効率を達成することができる。ポルスコープによる除核は

盲目的除核あるいは染色体の蛍光染色とその後の卵母細胞の蛍光顕微鏡への露出などの従来法

の欠点を克服する。紡錘体のポルスコープ撮像では、紡錘体を長時間生きている状態で持続的に

観察することが可能であるため、紡錘体動態の観察あるいは環境的変化の紡錘体への影響の研究

にも有用である。 参考文献 1. オルデンバーグ、R.(1999):『メソッズ・セル・バイオロジー』61、175-208 2. ワン、W.H.、カオ、S.R.、メン、L.、キーフェ、D.L. (1999):『バイオロジカル・リプロダクショ

ン』増刊 60、180 3. シルヴァ、C.P.、コミネニ、K.、オルデンバーグ、R.、キーフェ、D.L. (1999):『ファーティリテ

ィ・アンド・ステリリティ』71、719-721 4. ルイ、L.、オルデンバーグ、R.、トリマーチ、J.R.、キーフェ、D.L. (2000):『ネイチャー・バイ

オテクノロジー』18、223-225 5. ワン、W.H.、メン、L.、ハケット、R.J.、キーフェ、D.L. (2000):『バイオロジカル・リプロダク

ション』増刊 62、191 6. ワン、W.H.、メン、L.、ハケット、R.J.、オルデンバーグ、R.、キーフェ、D.L. (2001):『ファー

ティリティ・アンド・ステリリティ』75、348-353

42

口頭発表 9 ブタのクローニング 大西彰 1 1農業生物資源研究所発生生物学研究チーム、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2 ヒツジ、ウシ、マウスにおいて体細胞移植によって、多くの生きたクローン動物が誕生している。

ブタでは長い間、核移植の成功は難しく、除核卵母細胞を使った 4 細胞胚の割球の電気的融合に

よって誕生した子ブタが一例報告されているのみであった。体細胞核移植の動物繁殖への応用も

重要であろう。加えて、遺伝的修飾を組み合わせたブタクローニングは、ブタの臓器のサイズが

ヒトの臓器に最も近いと考えられていることから異種移植への応用も期待される。PPL セラピュ

ーティックスは体細胞移植によるブタクローニングの成功を報道機関にはじめて発表した。彼ら

の発表後、われわれの論文を含めた 3 編の論文 1-3 が連続して発表された。 これらの 3 編の論文はブタクローニングの異なる方法を実証している。核移植の方法は 2 つのタ

イプに分類することができる。すなわち、典型的な電気融合と圧作動マイクロインジェクション

である。マイクロインジェクションは細胞核の細胞質への導入と卵母細胞発生の活性化の 2 つの

ステップに分けることができる。対照的に、電気融合では核の卵母細胞への融合と活性化が同時

に起こる傾向にある。移植された核を除核された卵母細胞の細胞質中の成熟促進因子に暴露させ

ることがゲノム再プログラミングに不可欠であるなら、マイクロインジェクションが核移植に適

している。実際、ブタは体細胞核を除核された卵母細胞へマイクロインジェクションすることに

よってクローニングされうることを我々は示した。 クローン動物は頻繁に出産前あるいは出産直後に死亡する。胎盤および出生時体重の増加も多く

のケースで観察される。しかし、現在のところクローンブタの異常については報告がないようで

ある。クローンブタが同様の異常を示すか否かについてはさらなる研究が必要である。 参考文献 1. 大西、A.、イワモト、M.、アキタ、T.、ミカワ、S.、タケダ、K.、アワタ、T.、ハナダ、H.、ペリ

ー、A.C.F.(2000):『サイエンス』289、1189-1190 2. ポレジャエヴァ、I.A.、チェン、S.H.、ヴォート、T.D.、ペイジ、R.L.、ムリンズ、J.、ボール、

S.、ダイ、Y.、ブーン、J.、ウォーカー、S.、エヤレス、D.L.、コールマン、A.、キャンベル、K.H.S.(2000):『ネイチャー』407、86-90

3. ベットハウザー、J.、フォースバーグ、E.、オーゲンステイン、M.、チャイルズ、L.、エイラー

トセン、K.、エノス、J.、フォーサイス、T.、ゴルーケ、P.、ジャーゲラ、G.、コッパング、R.、レスメイスター、T.、マローン、K.、メル、G.、ミシカ、P.、ペイス、M.、プフェスター=ゲンス

コウ、M.、ストレルチェンコ、N.、ヴェルカー、G.、ワット、S.、トンプソン、S.、ビショップ、

M.(2000):『ネイチャー・バイオテクノロジー』18、1055-1059

43

ヒツジおよびブタにおける体細胞核移植:ロスリン研究所の挑戦と最近の進歩 アンドラス・ディニーズ 1、イアン・ウィルムート 1、ジョン・クラーク 1、クリス・デニン

グ 1、サラ・バール 1、ティモシー・キング 1、ポール・デスーザ 1 1ロスリン研究所、遺伝子発現・発生科、ロスリン EH9 25PS、スコットランド、イギリス 体細胞核移植により、生物薬剤および研究的応用のための実験動物および家畜の遺伝的修飾の分

野に新しい機会が提供される。この技術の可能性を広げるために、われわれは動物クローニング

効率の向上のための研究を行っている。ロスリン研究所のヒツジおよびブタのクローニングに関

する最近の進歩には、卵母細胞ドナーの品種の影響、培養システムの影響、遺伝子欠失技術の応

用に関する新たな知見などがある。方法と材料の詳細はすでに論文で発表されている 1-4。ブタク

ローニングに進歩がみられたのは主に、超音波スキャンによる卵母細胞の排卵年齢の正確な制御

とクローン胚とともに単為発生的に活性化させた胚を同時移植することによる妊娠維持法の改

善でためあると考えている。胎児線維芽細胞を使った核移植により健康なクローン子ブタが誕生

した。ヒツジに関するわれわれの研究結果から、レシピエント卵母細胞の遺伝的起源が、胎児線

維芽細胞核移植ヒツジ胚の in vitro での胚盤胞までの発生に影響を与えることが示された。生体外

培養および一時的レシピエント体内で胚盤胞期まで生体内培養させた場合のどちらにおいても、

最終レシピエントに胚移植が行われたあと、子ヒツジが誕生した。培養された胎児線維芽細胞か

ら PRP 遺伝子を削除し、引き続いて核移植を行った結果、生きた子ヒツジが誕生したが、治療不

可能な呼吸器疾患のために出産後 12 日で安楽死させた。大型家畜クローニング技術の効率の低

さがこの技術の全面的な商品化への道を妨げている。体細胞再プログラミング過程の技術的改善

とよりよい理解のためのわれわれの努力が、やがて胚と胎児の死亡率を減少させることにつなが

るであろう。In vitro で作られた卵母細胞および in vitro の培養システムは、コストの削減および

実験に必要な動物の数の減少に役立つ。核移植の前に発生能を有する胚を選択できれば、動物保

護の面においても経済的観点からも非常に有益であろう。 本プロジェクトはゲロン・バイオメッドにより資金援助を受けた。 参考文献 1. ウィルムート、I.シュニーケ、A.E.、マクファー、J.、カインド、A.J.、キャンベル、K.H.S.(1997):

『ネイチャー』385、810-813 2. デニーズ、A.、キング、T.、ウィルムート、I.、デスーザ、P.A.(2001):『セリオジェノロジー』55、

264 3. デニング、C.、バール、S.、エインスリー、A.、ブラッケン、J.、デニーズ、A.、フレッチャー、

J.、キング、T.、リッチー、M.、リッチー、W.A.、ロロ、M.、デスーザ、P.、トラバース、A.、ウィルムート、I.、クラーク、A.J.(2000):『ネイチャー・バイオテクノロジー』19、559-562

4. デスーザ、P.、キング、T、ジュー、J.、アーチボールド、A.、ディニーズ、A.、ドブリンスキー、

J.R.、ウィルムート、I.(印刷中)『リプロダクション増刊』

44

化学組成が明確な培地におけるブタ接合子の培養 吉岡耕治 1、鈴木千恵 1、タナカアツシ 1、イドリス M-K アナス 1、岩村祥吉 1 1動物衛生研究所生産病研究部臨床繁殖研究室、〒305-0856、茨城県つくば市観音台 3-1-5 家畜の移植前の胚の in vitro での培養システムは、妊娠初期の胚の生理学的研究および胚移植、遺

伝子導入およびクローニングなどの家畜生殖制御に重要な役割を果たす。ブタ胚は in vitro で接合

子から胚盤胞にまで発生させることができるが、培養したブタ胚移植後の妊娠率および平均腹子

サイズは低いようである。したがって、ブタ接合子の培養条件はいまだに大きな進歩を遂げてい

ないといえる。化学組成が明確な培地は、無機化合物、エネルギー基質、ホルモン、サイトカイ

ン、ビタミンなどの物質が移植前の胚の発達にどのような物理的作用をおよぼすかを分析するの

に有用である。なぜなら、このような方法をとれば血清や市販品の血清アルブミンなどに混在し

ている未知の因子を排除できるからである。このような培地は胚の成長を最適状態にし、移植後

に生存する胚の数を最大限にするための強力な道具として使用することもできる。しかし、これ

までのところ、化学組成が明確な培地で培養され、レシピエントに移植された胚からは子ブタは

まだ 1 頭も誕生していない。 われわれは、ブタ卵管液の組成をベースにアミノ酸を添加してブタ接合子を in vitro で培養するた

めの新しい培地(ブタ接合子培地:PZM)を開発した。ブタ接合子の in vitro での発生にこの培

地が適しているかどうかを in vivo あるいは in vitro(NCSU-23 培地)コントロールと比較して調

査した。加えて、レシピエント雌ブタに移植した後の、化学組成が明確な PZM で培養した胚の

in vivo 生存能力も調べた。 ブタ単細胞接合子は 2 日目(0 日目=hCG 注入)に eCG および hCG で刺激された雌ブタから回

収された。BSA を 3 mg/ml 含む PZM(PZM3)中で培養され、6 日目に胚盤胞に発達できた接合

子、および8日目に孵化胚盤胞期にまで達した接合子の割合はNCSU-23よりも高かった(P<0.05)。PZM-3 で培養された 8 日目の胚の内部細胞塊(ICM)の平均細胞数および総細胞数は NCSU-23で培養されたものよりも有意に多かった(P<0.05)。PZM-3 による培養では、5%CO2:5%O2:90%N2

中のほうが、5%CO2 の空気中よりも胚発生が改善された。PZM-3、または BSA のかわりに PZM-3にポリビニルアルコール 3 mg/ml を添加した PZM-4 で培養した 6 日目の桑実胚/胚盤胞 ICM お

よび総細胞数も、NCSU-23 で培養したものよりも多かった(P<0.05)。一方、それらは in vivo で

発達させたものよりも少なかった(P<0.05)。しかしながら、PZM-3、PZM-4、in vivo で培養した

胚では、ICM の総細胞数に対する割合に差はみられなかった。PZM-4(99 個の胚)または in vivo(100 個)で発達させた 6 日目の胚をそれぞれ 6 頭のレシピエントに移植したところ、5 頭が妊

娠し、どちらの処置のものも出産に至った。In vitro および in vivo 発生胚からそれぞれ 33 頭、42頭の子ブタが誕生した。両者間で、生まれた子ブタの数(総数、生存数、腹子の数)および体重

に有意な差はみられなかった。 この研究結果により、われわれが新しく開発した PZM がブタ接合子の in vitro での発生に有効で

あることが実証された。われわれはまたブタ接合子は化学組成が明確な培地(PZM-4)中でうま

く発生することができ、培養された 6 日目の胚は満期産にいたる能力をもつことも示した。われ

われの培養培地は、ブタの in vitro での生産システムのための、そして遺伝子導入およびクローニ

ングにおける胚操作技術のための基礎的培地として有用であると考えられる。

45

口頭発表 10 トランスジェニックブタの効率的作製のための新戦略 長嶋比呂志 1、若生直浩 1、落合崇 1、黒目麻由子 1、アライヨシカズ 1、栗原隆 2、藤村達也 3、

高萩陽一 3、岡部勝 4、村上博 3 1明治大学生殖工学研究室、〒214-8571、川崎市多摩区東三田 1-1-1;2大阪大学医学部大学院バイオメ

ディカル教育センター臓器移植学科、〒565-0871、吹田市山田丘 2-2;3日本ハム中央研究所 300-2646、つくば市緑ヶ丘 3-3;4大阪大学遺伝情報実験施設、〒565-0871、吹田市山田丘 3-1 農業、生物医学研究における需要が急速に高まっているにもかかわらず、トランスジェニックブ

タの生産は、これまでのところ、in vivo でつくられた接合子に前核 DNA をマイクロインジェク

ションすることによってしか成功していない。そこで、われわれは、in vitro での卵母細胞の成熟、

細胞質内精子注入(ICSI)、核移植などの繁殖技術を用いて、トランスジェニック動物をより効率

的かつ経済的に作製する新たな戦略の開発を行ってきた。 1.IVM ブタ卵母細胞の発生能:IVM 卵母細胞をトランスジェニックブタの作製に使うことを目

的として、われわれは in vitro および in vivo で単為発生させた IVM 卵母細胞の発生能を調べた。

改良 NCSU23 中で成熟させた卵母細胞は単 DC パルス(150 V/mm、100μ秒)により電気的に活

性化し、その後、7.5μg/ml サイトカラシン B で 3-4 時間処理した 1。活性化された卵母細胞を 7日間培養するか、またはレシピエント雌ブタの卵管に移植した。9 頭中 4 頭のレシピエントで 167個の単為発生卵母細胞から、総数で 45 個(26.9%)の原節期胎児を得た。活性化した卵母細胞を

7 日間培養すると 40-60%が胚盤胞に成長した。この結果は、IVM 卵母細胞はトランスジェニック

ブタ作製のための可能性ある材料源となりうることを明確に示している。 2.細胞質内精子注入による IVM 卵母細胞への遺伝子移植:BTS で凍結保存されていたブタ精子

を 2×105 の濃度に希釈し、EGFP DNA(2.5ng/μl)とともに 5 分間インキュベートした。単離さ

れた精子頭部を、ピエゾミクロマニピュレーターを使用して IVM 卵母細胞にマイクロインジェ

クションし、その後、電気的活性化を行った。精子注入卵母細胞は NCSU23 中で 6 日間培養した。

101 個の精子注入卵母細胞のうち、21 個(20.8%)が胚盤胞に発達し、そのなかの 6 個(28.6%)は GFPを発現した。前核状態の単為発生卵母細胞(n=120)に DNA を注入した場合、得られた 32 個の胚盤

胞のうちの 12 個(37.5%)において GFP 発現が観察された。これらのデータはトランスジェニック

ブタ胚は凍結保存 DNA 結合精子の IVM 卵母細胞への ICSI により作製可能であることを実証す

るものである。 3.体細胞の核移植:IVM 卵母細胞は既述の方法で除核した 3。核ドナーとして、IVM 卵母細胞

から回収した卵丘細胞と胎児線維芽細胞を使用した。ドナー細胞の核を除核した IVM 卵母細胞

にピエゾマニピュレーターを使用して注入した 4。再構築された胚のいくつかを固定、染色して

核再建を調べた。再構築された胚の発生能を調べるために、核移植後 2-2.5 時間あるいは 3.5-4 時

間電気刺激により活性化させ、7 日間 NSCU23 中で培養した。卵丘細胞、胎児線維芽細胞によっ

て再構築された胚のそれぞれ 84%と 93%において未熟染色体の凝縮が観察された(核移植後 3 時

間)。再構築された胚の胚盤胞形成率はドナー細胞のタイプや核移植から活性化までの間隔に関

係なく、5-11%の範囲にあった。これらの結果から、核再建は体細胞核の IVM ブタ卵母細胞への

細胞質内注入後効率的に誘発される可能性があることが実証された。IVM 卵母細胞と培養体細胞

によって再構成された核移植胚は in vitro で胚盤胞に発達する能力をもつことが示された。

46

参考文献 1. フナハシ、H.、デイ、B.N.(1993):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファーティ

リティ』98、179-185 2. パーセル、V.G.、ジョンソン、L.A. (1975):『ジャーナル・オブ・アニマル・サイエンス』40、99-102 3. ナガシマ、H.、アッシュマン、R.J.、ノットル、M.B. (1997):『モレキュラー・リプロダクション・

アンド・デヴェロップメント』48、339-343 4. 若山、T.、ペリー、A.F.C.、ズコッティ、M.、ジョンソン、K.R.、柳町、R. (1998):『ネイチャー』

394、369-374

47

生物医学・農学研究のためのトランスジェニックミニブタの作製 今井裕 1、ウチダマサキ 2、シマツヨシキ 2、ホシノヨウイチロウ 1、池田穣衛 3、 ニキレイコ 2 1京都大学大学院農学研究科動物生殖生理学研究室、〒606-8502、京都市北白川;2 CSK リサーチパー

ク、〒392-0016、長野県諏訪;3東海大学総合医学研究所分子医学医療研究センター分子神経科学部門、

〒259-1193、伊勢原市望星台 ミニブタは家畜ブタよりも、サイズが小さいこと、厳格な環境制御のもとで繁殖することが可能

であること、その生理がヒトの生理に似ている可能性があることなどの理由から、生物医学的、

農学的研究に多くの点で向いている。われわれはハンチントン病の候補遺伝子を導入したトラン

スジェニックミニブタを作出する方法を説明する。ミニブタゲノムライブラリから単離されたハ

ンチントン遺伝子をラットのニューロン特異的エノラーゼのプロモーター領域に融合させ、でき

た遺伝子を受精卵に注入した。総数 402 個の卵が 23 頭のミニブタレシピエントに移植された。

レシピエントのうち 16 頭が妊娠し、65 頭の子ブタが分娩された。65 頭の子ブタのうち、3 頭は

流産による胎児であり、5 頭が PCR およびサザン解析でトランスジェニックであることが判明し

た。遺伝子導入率は 1.24%であった。トランスジェニック個体の表原型は現在調査中である。

48

口頭発表 11 遺伝的に修飾されたヒト以外の霊長類;ヒトの疾病モデル アンソニーW.S.チャン 1 1オレゴン衛生科学大学、オレゴン地区霊長類研究センター、ビーバートン、オレゴン州 97006、米国 ヒト疾患の動物モデルは疾患の病理を理解し、効果的な薬物療法を開発するための重要な道具で

ある。しかしながら、同様の症状なくして、動物モデルがいかに患者の代わりをつとめることが

できようか。ヒト疾患の模倣とならないモデルは安全性評価に適するだけで、患者に対する投薬

および治療法の有効性を正確に評価することはできない。マウスのような動物モデルによって、

科学者たちは人間の生理学および疾病について多くを学び、それによって患者のための治療法を

開発してきた。しかし、マウスはヒト疾患の最良なモデルではないという事実も認識されている。

ヒトとマウスの違いには、寿命の差、脳の複雑性、そして生殖機能などがある。ヒトとヒト以外

の霊長類(NHP)のあいだには高い生理学的遺伝的類似性があるため、NHP はヒトの疾患の最良

のモデルのひとつであると考えられている。遺伝子導入技術は生物医学の分野で動物モデルの新

時代を開いた。これによって適切な動物モデルの開発が加速し、疾病をより深く理解し、患者に

さらに適した薬物療法が開発された。動物の数が限られていることと倫理的配慮から、効率的な

遺伝子導入法はトランスジェニック NHP 作製において非常に重要な因子である。トランスジェ

ニック動物作製には 4 種類の遺伝子移入法が主に使われている。すなわち、1.前核のマイクロイ

ンジェクション、2.レトロウイルス感染、3.核移植、4.精子媒介遺伝子移入である。トランスジェ

ニック NHP は成熟卵母細胞に VSV-G 偽型レトロウイルスベクターを感染させることによって作

製してきたが、レトロウイルスベクターシステムの欠点を克服し、最良の遺伝子導入システムを

開発するために他の遺伝子移入法もこれからの実験では使用が考慮されている。 参考文献 1. チャン、A.W.S. (1999):『クローニング』1、25-46 2. チャン、A.W.S.、ルーチェンズ、C.M.、ドミンコ、T.、ラマルホサントス、J.、シマリー、C.R.、

ヒューイットソン、L.、シャッテン、G. (2000):『モレキュラー・ヒューマン・リプロダクション』

6、26-33 3. チャン、A.W.S.、チョン、K.Y.、マリノヴィッチ、C.、シマリー、C.、シャッテン、G. (2001):『サ

イエンス』291、309-312

49

ほ乳類卵母細胞における核置換 ジョセフ・フルカ・ジュニア 1-3、パスカリノ・ロイ 4、ヘレナ・フルカ 5 1動物繁殖学研究所、プラハ 10、チェコ;2 ISCARE IVF、プラハ 9、チェコ;3細胞治療組織修復セン

ター、プラハ 5、チェコ;4テラモ大学、イタリア;5チャールズ大学科学学部、プラハ 2、チェコ ヒト卵母細胞における核置換は倫理的に容認でき、ある種の疾病の予防や細胞質異常の修正など

のための道具として使用できる可能性がある。現在、卵母細胞間の卵娘核(GV)の移植が詳し

く研究されている。マウスの結果から卵娘核は効率的に卵母細胞間での交換が可能であり、その

後第 2 中期まで高率に成熟する。興味深いことに、非常に薄い細胞質の縁に囲まれた単離 GV は

長期培養後ですら無傷のままであり、効率よく冷凍することも可能である。ある条件で、GV の

非同調細胞質への移植も可能であり、そのあとの成熟にごくわずかの影響しかあらわれない。2細胞期の割球の胚核(G2)を GV と交換すると、第 2 中期様段階まで成熟が進む。一方、体細胞

核の除核未熟卵母細胞への移植で成熟した卵母細胞が得られることはまれである。われわれは上

記の結果と他の有望な応用について述べる。 JF ジュニアの研究所は GACR 524/96/K162 および MSMT 00A 065 より資金援助を受けている。

50

鳥類における核移植開発へのチャレンジ ヘレン・サング 1 1 ロスリン研究所、遺伝子発現・発生科、ロスリン、ミッドロジアン EH25 9PS、スコットランド、

イギリス 鳥類の核移植法を開発するという目標は大いなるチャレンジである。そのプロセスには開発が必

要な 3 つの異なるプロセスが含まれると考えられる。すなわち、1)レシピエント卵の除核、2)適切なドナー細胞の準備、3)発生を促がす核移植法である。ニワトリを使った実験はほ乳類の核移

植に関する膨大な文献を参考にすることができるだろう。両生類の古典的実験も有益であろう。

なぜならニワトリの胚の初期発生は多くの点でほ乳類の胚よりも両生類の胚の発生に類似して

いるからである。鳥類の胚は大型の卵黄から発生し、最初の数回の細胞分裂は非常に速い。新た

に抱卵されてから 20 時間以内に、最初の分割から胚盤葉期に達する。つまり、細胞周期は約 30分である。鳥類の卵母細胞、あるいは接合子は大きく、したがって操作が容易ではなく、排卵直

後に雌鳥を殺して採取するしか方法がない。核ドナーとしての細胞の選択は核移植される前に遺

伝的修飾が可能な細胞を使用することに焦点があてられるであろう。ニワトリにおける核移植に

成功すれば、遺伝的修飾の有効なルートとして多くの応用が期待できる。

51

閉会セッション 閉会のことば 永井卓 1 1農業生物資源研究所発生生物学研究チーム、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2

52

ポポススタターー発発表表

53

ポスター発表 1 16-01 ウシ乳腺上皮細胞株(BMEC)を使用した核移植胚の発生能 赤木悟史 1、高橋清也 1、大越勝久 2、竹之内敬人 2、志水学 3、下司雅也 3、足立憲隆 1、淵本

大一郎 2、居在家義昭 2、麻生久 4 1畜産草地研究所家畜育種繁殖部、〒305-0901、茨城県稲敷郡茎崎町池の台 2;2農業生物資源研究所発

生生物学部、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;3 農業技術研究機構東北農業研究センター、

〒020-0198、盛岡市;4東北大学大学院農学研究科動物生殖学教室、〒981-8555、仙台市 以前の報告(1)で、永久乳腺上皮細胞株の核は、再構成胚の発生を初期分裂期までは維持するが、

胚盤胞期までは維持しないことを示した。われわれはホルスタイン未経産牛の乳腺胞に由来する

乳腺上皮細胞株(BMEC)を樹立した。BMEC 細胞は少なくとも 50 継代は分化、繁殖能を有する

(提出データ)。本研究で、われわれは BMEC 細胞を核移植(NT)に用いた場合の胚の発生能を

調べた。 NT のドナーとして、異なる細胞密度、すなわち 1.0x105 細胞/cm2(高密度群)と 0.8x104 細胞/

cm2(低密度群)で播種し、4-5 日間培養した BMEC 細胞(15 継代)を使用した。これらの細胞

は播種後、高密度群、低密度群でそれぞれ 2 日後、4 日後に培養飽和に達した。卵母細胞は 10%ウシ胎児血清添加 TCM199 中にて 20 時間生体外成熟させた後、除核した。BMEC 細胞は除核さ

れた卵母細胞の卵黄周囲空隙に移植した。電気刺激ののち、ドナー細胞と融合した卵母細胞はサ

イトカラシン D(2.5μg/ml)+シクロヘキシミド(10μg/ml)で 1 時間処理し、さらにシクロヘキ

シミドのみで 4 時間処理した。NT 胚は 7 日目まで in vitro で培養した。実験 1 で、われわれは卵

母細胞融合の効果的電気刺激法について調べた。卵母細胞-細胞複合体を以下のような 5 種類の異

なる電気刺激に暴露した。1)10μ秒の 25V/150μm の DC パルスを 1 回、2) 10μ秒の 20V/150μmの DC パルスを 2 回、3) 20μ秒の 25V/150μm の DC パルスを 2 回、4) 30μ秒の 25V/150μm の

DC パルスを 2 回、5) 20μ秒の 30V/150μm の DC パルスを 2 回。実験 2 では、20μ秒の 30V/150μm の DC パルスを 2 回の電気刺激を与えた高密度群と、10μ秒の 20V/150μm の DC パルスを 2回与えた低密度群の発生能を調べた。 細胞周期 G0/G1 期にあるドナー細胞の割合は、高密度群では 83.6%、低密度群では 60.0%であっ

た。実験 1 では、高密度群では 20μ秒の 30V/150μm の DC パルス 2 回の電気刺激を、低密度群

では 10μ秒の 25V/150μm の DC パルス 2 回の電気刺激を与えた場合に融合率は最高となった。

高密度群の融合率(37.5%)は、低密度群の融合率(71.4%)よりも有意に低かった(P<0.005)。実験 2 では、NT 胚の胚盤胞期への発生率は高密度群(17.1%;融合卵に対し)と低密度群(25.8%)

のあいだに有意な差は見られなかった。 本研究の結果は卵母細胞-細胞融合の効率はドナーBMEC細胞のNT前の培養条件によって影響を

受けることを示している。 参考文献 1. ザクハルトチェンコ V.、アルベリオ R.、ストイコヴィッチ M.、プレレ K.、シェルンタナ

ー W.、ストイコヴィッチ P.、ヴェニゲルキント H.、ワンケ R.、ドゥヒラー M.、シュテ

インボーン R.、ムラー M.、ブレム G.、ウルフ E.(1999):『モレキュラー・リプロダクショ

ン・アンド・ディベロップメント』54、264-272

54

16-02 電気パルスで活性化されたブタ卵母細胞の in vitro での発生:成熟培養期の効果 インジョン・ビン 1,2、リメイ・チェ 1、平尾雄二 1、竹之内直樹 1、桑山正成 2、永井卓 3 1 東北農研センター畜産草地部門、〒020-0198、岩手県盛岡市;2 加藤レディスクリニック研究開発部

門、〒160-0023、東京都新宿区;3農業生物資源研究所発生工学研究チーム、〒305-8602、茨城県つく

ば市観音台 2-1-2 活性化されたブタ卵母細胞の in vitro での発生は、活性化前の卵母細胞の成熟度に大きな影響を受

けた 1, 2。本研究は卵母細胞の成熟齢が電気パルスによる刺激後にその活性化および発生にどのよ

うな影響をおよぼすかを評価するためにデザインされた。ブタ卵母細胞を緻密卵丘細胞複合体

(COC)とともに、FCS、ピルビン酸ナトリウム、ホルモン(PMSG、hCG およびエストラジオ

ール 17b)を添加した改良 TCM199 の液滴中で培養した。培養液はパラフィンオイルでカバーし、

飽和湿度の 5%CO2 大気中で 38.5℃に保った。実験 1 では、36、42、48 時間成熟培養させたのち、

減数分裂のステージ、すなわち、卵核胞崩壊(GVBD)および中期Ⅱ(MⅡ)にあるかどうかを

調べるために卵母細胞を固定した。実験 2 では、36、42、48 時間成熟培養させたのち、第一極体

(PB)をもつ卵母細胞をMgSO4、CaCl2および PVAを含む 0.3 Mのマンニトール溶液中に入れて、

100 msec の DC パルス(1500 V/cm)を 1 回与えた。活性化された卵母細胞は 0.4%BSA と 5.0 mg/mlサイトカラシン B を添加したmNCSU37 中で 4 時間インキュベートし、そのあと 0.4%BSA を添

加したmNCSU37 中で 8 時間培養した。活性化された卵母細胞の核の状態を固定のあと評価した。

実験 3 では、活性化された卵母細胞を 0.4%BSA を添加したmNCSU37 の液滴(1 卵母細胞/ml)の中で、5%CO2 の加湿した空気中、38.5℃で培養した。培養 48 時間後、分裂した胚を新しいm

NCSU37 の液滴に移し、5 日間培養して胚盤胞まで発生させた。データは ANOVA とフィッシャ

ーの PLSD 検定を用い、有意水準を P<0.05 として有意性を検定した。実験 1 では、36、42、48時間培養後、GVBD を経て MⅡに成熟した卵母細胞の割合に差はみられなかった(それぞれ、

GVBD:95.7、100、100%、MⅡ:79.6、81.6、83.6%)。実験 2 では、42、48 時間培養後、活性化

された卵母細胞と 2 個の前核と 1 個の PB(2N1PB)をもつ卵母細胞の割合に差はみられなかっ

た。しかし、それらの割合は、36 時間培養した卵母細胞の割合よりも有意に高かった(それぞれ、

活性化率:94、96%対 63%;2N1PB 率:63、64%対 19%;P<0.05)。実験 3 では、卵母細胞を 42時間と 48 時間培養したとき、分裂した卵母細胞の割合は 36 時間培養のものよりも有意に高かっ

た(それぞれ、81、81%対 56%、P<0.05)。卵母細胞を 48 時間培養したとき、胚盤胞形成率は 36時間培養の卵母細胞よりも有意に高かった(10%対 1%、P<0.05)。これらの結果は、成熟培養の

時間は、電気パルスで活性化されサイトカラシン B で処理されたブタ卵母細胞のその後の発生に

影響を与えることを示している。核の成熟にかかわりなく、培養期間の短い卵母細胞の細胞質が

未熟であると、活性化後の発生能が低下する可能性がある。 参考文献 1. ヤマウチ、N.、ササダ、H.、スガワラ、S.、長井、T.(1996):『レプロダクション・アンド・フ

ァーティリティ・ディベロップメント』8、1153-6 2. 菊地、K.、長井、T.、ディン、J.、ヤマウチ、N.、野口、J.、居在家、Y.(1999):『ジャーナル・オ

ブ・リプロダクション・アンド・ファーティリティ』116、143-156

55

16-03 In vitro で成熟させた時間と 6-ジメチルアミノプリンのブタ卵母細胞活性化に対する影響 淵之上康平 1、若井拓哉 1、佐伯和美 1、川原学 1、木村幸一 1、佐々田比呂志 1、佐藤英明 1 1東北大学大学院農学研究科動物生殖学教室、〒981-8555、仙台市 卵母細胞の in vitro での成熟テクニックがいくつかの動物種で開発されたことにより、in vitro 成

熟卵母細胞を使った動物のクローニング効率が向上してきたが、再構成された胚を移植する前に

まだいくつかのステップを改良する必要がある。本研究は、ブタ卵母細胞を in vitro で成熟させた

時間と 6-ジメチルアミノプリン(6-DMAP)処理の活性化におよぼす影響を調べるために行った。

卵巣から採取されたブタ卵母細胞を、NCSU23 中で in vitro 培養し、実験に使用した。培養 36 時

間後、44 時間後に電気刺激を与えられた卵母細胞(それぞれ、158/223(71%)、192/251(76%)

が成熟していた)は、それぞれ 18%と 28%が 2 細胞期にまで発生し、3%と 3%が胚盤胞に発生し

た。培養 36 時間、44 時間後に行った操作(中期の除核、卵丘細胞に由来する核の注入)により、

それぞれ 16%、30%が分裂した胚に発生した。電気刺激された卵母細胞に対する 6-DMAP 処理は

その後の 2 細胞期への発生になんの効果ももたらさなかった。これらの結果は、in vitro で成熟さ

せる時間が、in vitro 成熟卵母細胞由来の再構成胚のその後の発生に影響を与える可能性があるこ

とを示唆している。

56

16-04 培養液中のアスコルビン酸がウシ胚の in vitro での発生および冷凍保存後の生存力に及ぼす影響 張山綾子 1、堂地修 1、家田荘子 1、今井敬 2、小山久一 1 1酪農学園大学酪農学科、〒069-8501、北海道江別市;2農業生物資源研究所発生生物部、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2 われわれは以前の研究で、胚盤胞の発生率はアスコルビン酸(AsA)により上昇すると報告した

(『セリオジェノロジー』(2001)55、335)。本研究では培養液の AsA 濃度がウシ胚の in vitro で

の発生および冷凍保存後の生存率に及ぼす影響を調べた。卵丘卵母細胞複合体(COC)を畜殺場

で採取したウシ卵巣から吸引し、5%ウシ血清(CS)と 0.02 mg/ml の FSH を含む TCM199 中で、

5%CO2 の大気中 38.5℃で 20-21 時間 in vitro で成熟させた。その後、10 mM のヒポタウリンと 4単位/ml のヘパリンを含む BO 溶液(ブラケットとオリファント、1975、『バイオロジカル・リ

プロダクション』12、260-274)中で COC を解凍した冷凍精子(5×106 精子/ml)で受精させた。

生殖細胞共培養 18 時間後、接合子と推定されるものを CR1aa(ローゼンクランスら、1991、『セ

リオジェノロジー』35、226)+AsA を0、0.1、0.15、あるいは 0.2 mg/l を添加した 5%CS 中で、

38.5℃、5%CO2、5%O2、90%N2 の大気中で 8 日間培養した。胚発生は、in vitro で受精後 2、7、8日目にそれぞれ、卵割率、胚盤胞率を調べて評価した。胚盤胞は 20%CS、1.5 M エチレングリコ

ール、0.1 M ショ糖を含む PBS を用いてストローのなかで凍結させた。ストローは 15 秒間 30℃の湯につけて解凍した。解凍した胚を TCM199+5%CS および 0.1 mMβメルカプトエタノール中

で 72 時間培養し、解凍後、胚の生存率をハッチング能に基づき評価した。実験は 6 回繰り返し

た。データはカイ二乗検定を用いて分析した。処置間で、卵割率に差はみられなかった(71.1-76.7%)。胚盤胞率は、AsA 濃度 0.15mg/l(42.7%)および 0.2 mg/l(43.0%)で、コントロールに

比べ有意に高かった(31.1%)(P<0.05)。処置間で、胚盤胞の凍結後のハッチング率に違いはみ

られなかった(6.3-9.7%)。これらの結果から IVM-IVF ウシ胚の in vitro 培養液に AsA を添加する

ことは、胚盤胞への発生能に影響を与えるが、凍結保存後の生存率には影響を与えなかったこと

が示唆される。われわれの結果は AsA の最適添加濃度は 0.2 mg/l であることを示している。

57

16-05 性成熟前および成獣ブタから回収した卵母細胞の in vitro での成熟能と発生能 池田幸司 1、高橋芳幸 1 1北海道大学大学院獣医学研究科診断治療学講座、〒060-0818、札幌市 性成熟前の動物から採取した卵母細胞は、成獣から採取したものより発生能が低いことが実証さ

れている。発生能の違いを調べるために、われわれは、性成熟前および成獣のブタから採取した

卵母細胞の、減数分裂進行、p34cdc2 キナーゼ活性、細胞質の直径、発生能を調べた。卵母細胞-卵丘-顆粒膜細胞複合体は畜殺場で得た卵巣の 4~8 mm の卵胞から回収した。回収時、性成熟前

および成獣のブタから回収された卵母細胞の大部分(>80%)は GV-Ⅰ期で停止しており、それらの

卵母細胞を 28 時間と 44 時間卵胞液およびゴナドトロピンを含む培養液中で培養したあとの、そ

の後の成熟活動および成熟率には差はなかった。p34cdc2キナーゼの活性は、回収直後の性成熟前

と成獣の卵母細胞間で違いがなかったが、40 時間の成熟培養後には性成熟前の未経産ブタから採

取した卵母細胞のほうが、成獣ブタのものよりも高い傾向がみられた。成獣ブタから回収された

卵母細胞の直径は、40 時間の成熟培養前が 117.5μm、培養後が 118μmであったが、それらは

性成熟前の未経産ブタ(それぞれ 115.2 と 116.7μm)よりも有意に大きかった(P<0.05)。成獣

ブタ卵母細胞由来の単為発生胚と核移植胚の胚盤胞への in vitro での発生率とその細胞数は、性成

熟前の未経産ブタに勝っていた。結論として、成獣ブタから採取した卵母細胞に比較して、性成

熟前未経産ブタから採取した卵母細胞の直径は小さく、生体外発生能も低いということができる。

卵母細胞の発生能の違いは成熟動態や p34cdc2キナーゼ活性とは独立した現象であろう。

58

16-06 死んだ動物の組織の細胞培養と外来遺伝子の動物細胞への導入 カタヤマケイ 1、藤原昇 1 1九州大学大学院生物資源環境科学府動物資源研究部門、〒812-8581、福岡市 本実験は死んだ動物の組織の細胞培養を成功させるための方法と外来遺伝子(グリーン蛍光蛋白

質:GFP)の動物細胞への導入法を開発するためにデザインされた。 実験 1:野生動物あるいは家畜から得た組織を細胞培養するよりよい方法を開発するために 4 種

類の培養液(Opti-MEM、IMDM、DMEM、DMEM/F12)を調べた。ウシとブタの 6 種類の組織(皮

膚、子宮、卵巣、歯肉、耳、筋肉)を地元の畜殺場で入手し、一般的な細胞培養を行う処理をし

た 1。細胞が飽和状態になるまで培養液は 3 日ごとに交換した。 ウシおよびブタの卵巣は 4 種類の培地において、他の組織よりも細胞増殖速度が速かったが、ウ

シの細胞に関しては培養液間の違いはみられなかった。これらの結果に基づき、われわれは

Opti-MEM をウシとブタの組織に使用した。なぜなら Opti-MEM はあらゆる種類の組織で他より

優れていると考えられたからである。実験 2:ある種の雑種細胞を創出するための効果的な細胞

融合を開発するために、エレクトロポレーション法をウシとブタの組織に用いた。最初に、マー

カー遺伝子として GFP(6μg/700μl PBS)を培養動物細胞(4×105 細胞)とともに用いて、電圧(v:300-2400 V)とキャパシタンス(マイクロファラデー:μF)の最適値を調べた。エレクトロポレ

ーション後、処理済の細胞の生存力を蛍光顕微鏡で観察するためにアクリジンオレンジ(AO)

とエチジウムブロミド(EB)で細胞を染色した。結果として、培養細胞の生存率向上には 300 vあたりが最適であると考えられた。一方、μF は小さければ小さいほど、細胞の生存能力は向上

した。以前の報告 2 で培養細胞の生存能力が約 50%である場合、生きた細胞に外来遺伝子を導入

するのに最適であると考えられることを実証した。これらの結果は GFP を培養細胞に導入するこ

とにより細胞の生存能力にはなんの影響もあらわれないことを示唆している。 参考文献 1. ハガー、B.、ビッケンバッハ、J.R.、フレックマン、P.、 (1999) :『ジャーナル・オブ・インヴェ

スティゲイティブ・ダーマトロジー』112、971-976 2. ヘイザー、W.C. (1994):『アナリティカル・バイオケミストリー』217、185-196

59

16-07 ブタ卵母細胞中における精子侵入から前核形成にいたるまでの脂肪滴の推移 菊地和弘 1,3、ハンス・エクウォール 2、ペイサン・ティエンサイ 1、カワイヤスヒロ 1,4、ヘリ

ベルト・ロドリゲスマルティネス 1 1スウェーデン農業科学大学獣医学部産婦人科、SE-750 07 ウプサラ、スウェーデン;2同大学獣医学部

解剖組織学科;3農業生物資源研究所 分化機構研究チーム、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;4岡山大学農学部動物資源科学科、〒700-8530、岡山市 ほ乳類の卵母細胞あるいは胚の脂肪滴の内容物は種によって異なり、ウシおよびブタの卵母細胞

および胚は大量の脂肪滴を含む。脂肪滴はエネルギー源として卵母細胞の成熟、精子侵入および

胚への発生に重要な役割を果たし、さらに凍結が可能かどうかにも関係すると考えられている[長島ら、1995]。しかしながら、それらの機能のうちよくわかっているのはごくわずかである。本研

究では、ブタにおける受精中の形態学的変化を in vivo および in vitro で調べた。In vivo と in vitroで成熟させた卵母細胞、精子侵入卵母細胞、前核卵母細胞を採取した。In vivo の試料は正常な月

経周期の未経産の大型白色ブタから採取した。In vivo で成熟させた卵母細胞は排卵直前に、受精

卵母細胞は交尾後の未経産ブタから採取した。受精卵母細胞は終期Ⅱにあったため、精子-卵母

細胞結合の 3 時間後と考えられた。In vivo 前核卵母細胞も精液注入後に回収され、それらはよく

発達した前核をもっていたことから接合子結合後 6-15 時間であったと考えられた。In vitro 成熟

卵母細胞は成熟培養[キクチら、1999]を 48 時間行ってから回収された。In vitro での受精は改良

Medium199 で 2 時間プレインキュベートしたのち、改良 Pig-FM[スズキら、2000]中で、射精され

た精子を使って行った。体外受精卵母細胞と前核卵母細胞は、精子とともにインキュベートし、

それぞれ 3 時間後、10 時間後に回収された。すべての卵母細胞はカコジル酸塩緩衝液に 2.5%の

グルタルアルデヒドを含む溶液で固定し、透過電子顕微鏡(TEM)観察のために処理した。TEMによる超薄切片の分析の結果、in vivo、in vitro のどちらで成熟した卵母細胞においても、大型で

明瞭な高電子密度の脂肪滴が、ときにミトコンドリア凝集物を伴って観察された。In vivo、in vitroどちらの卵母細胞でも、精子侵入直後は脂肪滴の高電子密度性は失われた。前核卵母細胞では高

電子密度性が回復しており、その回復度は in vivo 卵母細胞では完全であったが、in vitro 卵母細胞

では部分的であった。しかし、脂肪滴の量および大きさは減少したようであった。結果から、in vivoと in vitro におけるブタ卵母細胞の活性化中、細胞質脂肪滴の形態および量には変異がみられるこ

とが示された。 参考文献 1. 長島、H.、カシワザキ、N.、アッシュマン、R.J.、グルーペン、C.G.、ノットル、M.B.(1995):『ネ

イチャー』374、416 2. 菊地、K.、カシワザキ、N.、野口、J.、シマダ、A.、高橋、R.、ヒラバヤシ、M.、シノ、M.、ウ

エダ、M.、金子、H.(1999):『バイオロジカル・リプロダクション』60、336-340 3. スズキ、K.、エリクソン、B.、シミズ、H.、長井、T.、ロドリゲスマルチネス、H.(2000):『イン

ターナショナル・ジャーナル・オブ・アンドロロジー』23、13-21

60

16-08 ブタ核移植胚の核リモデリングおよび発生に対する卵母細胞活性化の時期の影響 黒目麻由子 1、若生直浩 1、落合崇 1、栗原隆 2、藤村達也 3、高萩陽一 3、村上博 3、 長嶋比呂志 1 1明治大学、川崎市;2大阪大学医学部大学院バイオメディカル教育センター、吹田市;3日本ハム中央

研究所、つくば市 本研究の目的は核移植に関連する卵母細胞活性化の時期がブタ再構築胚の核リモデリングおよ

び発生に与える影響を調べることであった。改良 NCSU23 中で成熟させた卵母細胞をレシピエン

ト細胞質として使用した。核ドナーとして、IVM 卵母細胞から卵丘細胞を採取した。ドナー細胞

の核をレシピエント卵母細胞へ、圧作動マイクロマニピュレーターを用いた細胞質内注入により

移植した。再構築された胚は 7.5μg/ml のサイトカラシン B で 3-4 時間インキュベートし、その

後 NCSU23+0.4%BSA 中で in vitro での培養をおこなった。核移植は以下の 3 種類の方法でおこ

なわれた。[Ⅰ]活性化前 NT:卵母細胞を核移植 2-2.5 時間後に電気的に活性化した。[Ⅱ]直後

NT:ドナー核を活性化直後(30 分以内)にレシピエント卵母細胞に移植した。[Ⅲ]活性化後

NT:ドナー核を AⅡ/TⅡ期(AⅡ/TⅡ周辺期)に活性化した卵母細胞に注入した。移植された核

は 3 つのどのグループにおいても、核注入の 1 時間後に未熟染色体凝縮(PCC)を呈した。再構

築された胚を核移植の 3 時間後に調べたところ、活性化前 NT グループの大部分の胚(18/23、78%)

には中期様あるいは乱れた染色体がみられた 1。対照的に、活性化後 NT グループの胚は早期偽核

(26/42、62%)が見られる傾向があった 1。直後 NT グループの再建された胚の核の状態は、凝

縮染色体から早期偽核までさまざまであった。活性化後 8 時間の再建された胚の観察から、活性

化前 NT グループの胚の 70%(28/40)は複数の偽核を持っていることがわかった。複数核をもつ

胚の割合は他のグループでは有意に低かった(13%、18%、P<0.05)。3 グループの再構築された

胚の胚盤胞形成率は 5%(5/107)から 8%(7/90)の間であった。これらの割合はコントロールの

単為発生卵母細胞よりも有意に低かった(46%、48/105)。以上のデータは、核移植に関連する卵

母細胞活性化の時期は、ドナー核のリモデリングパターンに影響を与えるが、再構築胚の胚盤胞

期への in vitro での発生には影響を与えないことを示している。 参考文献 1. 若山、T.、ペリー、A.C.、ズコッティ、M.、ジョンソン、K.R.、柳町、R.(1998):『ネイチャー』

394、369-374

61

16-09 体細胞レシピエント細胞質として in vivo、in vitro で成熟させた卵母細胞を使って作製したブタ再

建胚発生 ガブサン・リー1、サンフアン・ヒュン 1、ヘス・キム 1、テーヨン・キム 1、ソヒョン・ リー1、ビョンチュル・オー1、ジョンイム・パク 1、ジョンムク・リム 2、ウンソン・リー3、

スンクン・カン 1、ビョンチュン・リー1、ウースク・ファン 1 1ソウル国立大学獣医学部、ソウル 151-742、韓国;2ソウル国立大学農業生物工学部、スウォン 441-744、韓国;3カンウォン国立大学獣医学部、チュンチョン 200-701、韓国 体細胞核移植において、ドナー核レシピエントの細胞質因子は再プログラミングおよび再建胚の

その後の発生にとって重要である。本研究はレシピエント細胞質として in vivo で成熟させたブタ

卵母細胞を使うことにより、胎児線維芽細胞を使って再建された卵母細胞の移植前発生を促進で

きるかどうかを調べるために行われた。In vivo で成熟させた卵母細胞は、PGF2α、PMSG、およ

び hCG を投与した性成熟前の未経産ブタの卵管を洗浄して採取した。コントロール卵母細胞とし

て 44 時間培養して成熟させた卵母細胞が使われた。どちらのグループでも正常な形態のものだ

けが選択された。それらの卵母細胞を除核し、血清非存在下の胎児線維芽細胞を使って標準的方

法で再建した。再建された胚は改良したノースカロライナ州立大学 23 培養液に入れ、5%CO2、

7%O2、88%N2 の加湿した空気中で、39℃、168 時間培養した。最初の卵割、桑実胚緊密化および

胚盤胞形成を、それぞれ培養 48 時間、144 時間、168 時間後に評価し、培養終了時にヘキスト 33342染色で胚盤胞中の総割球数を計数した。すべてのデータは SAS プログラムの PROC-GLM で解析

した。表 1 に示すように、総数 335 個の卵母細胞(うち 198 個は in vitro、137 個は in vivo)が実

験に使われ、有意な(P<0.05)モデル効果が 2 細胞期(最初の卵割)、桑実胚、胚盤胞期への発生

時にみられた。IVM 卵母細胞では、in vivo で成熟させた卵母細胞に比較して最初の卵割が起こる

率が有意に高かった。しかし、桑実胚および胚盤胞期に発生が進む率は、IVM 細胞質由来の再建

された卵母細胞よりも in vivo で成熟させた細胞質由来の再建卵母細胞のほうが高かった。割球の

数は、両グループで有意な差はなかった。 表 1. In vitroで成熟させた卵母細胞と in vivo で成熟させた卵母細胞を使ったブタ NT 胚の in vitro

での発生

数(%) 成熟卵母細胞 培養 卵割

桑実胚 胚盤胞 平均割球数

In vitro 198 141 (71.2) a 47 (23.7) a 31 (15.6) a 25.4 In vivo 137 88 (64.2) b 28 (31.8) b 22 (25.0) b 28.1

a-b 同じ列で異なる上付き文字のついた値は、有意な差があったことを示す(P<0.05)。 これらの結果から、体細胞レシピエント細胞質の起源はブタ再建卵母細胞の発生に重要であり、

in vivo で成熟させた卵母細胞を除核卵母細胞として使用することにより移植前の胚の発生を促進

することができることが示された。

62

16-10 バキュロウイルス・昆虫細胞発現システムにおいて発現される組換えブタ透明帯糖蛋白質の精子

結合活性 中野實 1、米沢直人 1、勝又敏行 2 1 千葉大学理学部化学科、〒263-8522、千葉県千葉市;2 東京医科歯科大学教養部、〒272-0827、千葉

県市川市 ほ乳類の卵母細胞を包んでいる透明帯は ZPA、ZPB、ZPC と呼ばれる 3 種類の糖蛋白質コンポー

ネントにより構成されている。受精の初期段階において、精子はこれらのコンポーネントのひと

つの炭水化物鎖に種特異的形式で結合する。われわれは、ブタ精子が ZPB の N 末端領域の 3 分

枝型および 4 分枝型の中性複合タイプ鎖に結合し 1、一方ウシ精子は、5 個のマンノース残基をも

つ高マンノースタイプ鎖に結合する 2 ことを示した。ウシでは、精子リガンド鎖の位置は調べら

れていない。今回われわれは 3 種類の遺伝子組み替えブタ透明帯糖蛋白質の精子結合活性を調べ

た。われわれは組換え蛋白質をバキュロウイルス・昆虫細胞発現システムで発現させ、その精子

結合活性を精子-アガロースビーズ結合測定法により調べた。その結果、ブタ精子は組換えブタ

コンポーネントのどれとも結合せず、ウシ精子は組換えブタ ZPB と結合することが示された。

ZPB の精子結合活性は ZPC の共発現により増強された。組換え蛋白質はコンカナバリン A によ

り認識され、これはそれらがウシ精子リガンドの高マンノースタイプ鎖をもつことを示唆してい

る。したがって、透明帯糖蛋白質の炭水化物部分が種特異的精子結合に重要な役割を果たすこと

が示された。 参考文献 1. 中野、M.、米沢、N. (2000):『セルズ・ティッシュズ・オーガンズ』168、65-75 2. アマリ、S.、米沢、N.、ミツイ、S.、勝又、T.、ハマノ、S.、クワヤマ、M.、ハシモト、Y.、スズ

キ、A.、タケダ、Y.、中野、M.(2000):『モレキュラー・リプロダクション・アンド・ディベロ

ップメント』59、221-226

63

16-11 細胞内および細胞外 2 価陽イオンのブタ卵母細胞の単為発生的活性化におよぼす影響 岡田幸之助 1、原山洋 1、三宅正史 1 1神戸大学大学院自然科学研究科生命科学科、〒657-8501、神戸市灘区六甲台町 1-1 以前の報告で、ブタ卵母細胞は塩化カルシウムの注入により単為発生的に活性化されること、そ

してこの活性化には卵母細胞活性化のさまざまな事象、たとえば、表層顆粒のエキソサイトーシ

ス、減数分裂再開、前核形成などが付随することを報告した 1。マウスの卵母細胞は培養液への

暴露 2または2価陽イオンを含むキャリアー培養液の注入 3により単為発生的に活性化されるが、

他の 2 価陽イオンがブタ卵母細胞における単為発生的活性化の誘導に及ぼす影響については不明

のままである。本研究は、他の 2 価陽イオン(ストロンチウム Sr2+、バリウム Ba2+)を使った処

理の in vitro で成熟させたブタ卵母細胞の単為発生的活性化への影響を調べるためにおこなわれ

た。 卵母・卵丘・顆粒膜細胞複合体(OCGC)を卵巣から採取し、OCGC を成熟させるための培養を

5%CO2 を含む加湿された 38.5℃の環境で、45-48 時間おこなった。成熟培養ののち、卵母細胞を

ヒアルロニダーゼ処理およびピペット操作により卵丘細胞から分離し、それを以下の実験に用い

た。卵母細胞のうちのいくつかは 10 mM の BaCl2、SrCl2、または CaCl2 を添加した無カルシウム

TL-Hepes 培養液に 2 時間暴露し、さらに 4 時間 TL 培養液中で培養した。その他の卵母細胞には、

10 mM の BaCl2、SrCl2、または CaCl2 を添加したキャリアー培養液(20 mM HEPES、pH 7.4)8.2-14.1 pl(ブタ卵母細胞体積の 0.9-1.6%)を注入し、これらの卵母細胞を TL 培養液中で 6 時間培養した。

すべての処理された卵母細胞は固定、染色し、前核形成率を調べた。 細胞外 Ba2+、Sr2+、Ca2+へのブタ卵母細胞の暴露はいずれも卵母細胞活性化の効果を示さなかっ

た。一方、Ba2+、Sr2+、Ca2+細胞内注入処理された卵母細胞の約半数に、効果的に前核形成が誘導

された。これらの結果から、これらの 2 価陽イオンの細胞内注入はブタ卵母細胞における活性化

プロセスを進行させることを示している。さらに、ブタ卵母細胞のこれらの 2 価陽イオンに対す

る透過性あるいは反応性が、マウス卵母細胞のそれらとは異なることも示唆している。 参考文献 1. マチャティ、Z.、フナハシ、H.、メイエス、M.A.、デイ、B.N.、プラサー、R.S.(1996):『バイ

オロジカル・リプロダクション』54、316-322 2. ホイットンガム、D.G.、シラキューサ、G.、(1978):『イクスペリメンタル・セル・リサーチ』113、

311-317 3. フルトン、B.P.、ホイットンガム、D.G. (1978):『ネイチャー』273、149-151

64

16-12 ウシ卵丘細胞を使った核移植によって作製されたガラス化した胚盤胞から誕生する生きた産子 斎藤則夫 1、金山佳奈子 1、的場理子 1、橋矢田豊 2、小林修司 3 1家畜改良センター(NLBC)、〒961-8511、福島県西郷;2 NLBC、奥羽牧場、〒039-2567、青森県七戸; 3 NLBC、新冠牧場、〒056-0141、北海道静内 1998 年以後、ウシの体細胞クローニング成功の報告が増えているが、再建された胚の凍結生存力

についてはほとんどわかっていない。従来のような凍結法は、透明帯の崩壊、およびガラス化に

比較して培養時間が長くかかることから、再建された胚にはあまり効果的ではないと考えられて

いる。本研究の目的は、核移植によって作られたガラス化した胚盤胞の in vivo での発生を調べる

ことである。核移植には、畜殺場で入手した卵母細胞と卵子ピックアップによって採取した卵丘

細胞をそれぞれレシピエントとドナー細胞とした。5%ウシ血清(CS)を添加した TCM199 中で

20 時間成熟培養したのち、第一極体がみられる卵母細胞を除核した。卵丘細胞は 10%胎児ウシ血

清を添加したダルベッコの MEM で 3 ないし 4 継代培養した。電気的融合(25 V のパルスを 50μ秒間、1 回)と活性化処理(5μM カルシウムイオノフォアに 5 分間暴露し、そのあと 5%CSとシクロヘキシミド 10μg/ml を添加した TCM-199 中で 5 時間インキュベート)ののち、再建さ

れた卵母細胞を 5%CS 添加 CR1 培養液中で 7-8 日間 in vitro で培養(IVC)し、胚盤胞をガラス化

した。胚盤胞のガラス化は以前に発表された方法でおこなった(N.サイトウら、1988)。ガラス

化溶液(GESX 溶液)には、20%グリセロール(GL)+20%エチレングリセロール(EG)+0.3 Mショ糖(Suc)+0.3 M キシロース(Xyl)+3%ポリエチレングリコール(PEG)が含まれている。

胚盤胞は 3 つのステップで平衡化された。すなわち、(1)10%GL+0.1 M Suc+0.1 M Xyl+1%PEGで 5 分間、(2) 10%GL+10%EG+0.2 M Suc+0.2 M Xyl+2%PEG で 5 分間、(3)GESX 溶液である。

平衡化された胚は 0.25 ml のストローに入れ、GESX へ移行させて 1 分後に液体窒素につけた。移

植の日、ガラス化された胚盤胞を温め、0.5 M および 0.25 M のショ糖で 5 分間ずつ希釈した。1頭につき 1 個か 2 個のガラス化された(IVC-VIT グループ)、あるいはガラス化されていない(IVCグループ)再建胚盤胞を、乳汁分泌をしていないホルスタイン雌ウシに非侵襲的に移植した。

IVC-VIT、IVC グループの最終発情 40 日後の妊娠率は、それぞれ 30.8%(8/26)、35.7%(10/28)で

あり、有意差はなかった。妊娠した雌ウシのうち、IVC-VIT で 2 頭、IVC で 5 頭が妊娠中間時点

(80-181 日)で流産した。IVC-VIT の 1 頭、IVC の 2 頭が妊娠期間を終了し、各グループの 1 頭

ずつが 2001 年 8 月現在まだ生存している。IVC グループのもう 1 頭のウシは帝王切開による分

娩の 8 時間後に死亡した。IVC-VIT の 5 頭、IVC の 3 頭が現在妊娠中である。これらの結果から、

われわれのガラス化法は、体細胞クローニングによって得た再建胚盤胞の冷凍保存に効果的であ

り、冷凍保存後に生きた産子が得られることを示している。 参考文献 1. 斎藤、N.、K.イマイ(1998):『クライオバイオロジー・アンド・クライオテクニック』43、34-39

65

16-13 体細胞クローンウシの胎盤の組織病理学的観察 佐藤真澄 1、窪田力 2、田中省吾 1、鬼塚剛 3 1動物衛生研究所九州支所、〒891-0105、鹿児島県鹿児島市中山 2702;2鹿児島県肉用牛改良研究所、

鹿児島県;3鹿児島中央家畜保険衛生所、鹿児島県 1998 年以来、日本で体細胞からの核移植により多くのクローン子ウシが誕生してきた。多くの場

合、クローン子ウシは出生時体重が重く、妊娠期間が長く、流産と死産率が高かった。鹿児島県

肉用牛改良研究所では、26 頭の体細胞クローン子ウシが分娩時まで育った 1。それらのうち流産・

死産、あるいは新生児死亡によって得られた 13 頭の検体を組織病理学的に調べた。4 頭はウイル

ス感染により死亡し、そのウイルスが流産や死産の原因物質であった。他は出生時の過体重と臍

帯血管の重篤な出血に起因する異常分娩による死亡であった。ほとんどのケースで妊娠期間の延

長が見られた。肥大した臍帯血管 2 も多くのケースで見られた。本研究でわれわれは、妊娠期間

の延長の原因を調べるためにクローン子ウシの胎盤と下垂体を組織病理学的に調べた。材料と方

法:核移植の方法は以前の論文に説明されている 1。4 頭の流産・死産(A/S)および 8 頭の生き

た(新生児死亡ウシ 2 頭を含む)子ウシの胎盤切片を、帝王切開の際には外科的に、あるいは経

膣分娩の直後に採取した。A/S または新生児死亡の 7 頭のクローン子ウシの下垂体を死体解剖に

より採取した。器官はホルマリン固定、パラフィン包埋し、顕微鏡観察をおこなった。下垂体で

は、抗副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)抗血清を分娩誘発物質である ACTH の免疫組織化学的検

出のために使用した。そして ACTH 陽性細胞の数を光学顕微鏡でカウントした。胎盤切片は透過

電子顕微鏡で観察した。人工受精(AI)によって作製された 3 頭の子ウシをコントロールとして

犠牲にした。結果:すべてのクローン子ウシの胎盤切片において、緊密な上皮絨毛膜付着と異常

な構造(上皮絨毛の不規則な陥入と絨毛細胞の増殖を特徴とする)が満期産後の子ウシで観察さ

れたが、AI 子ウシでは観察されなかった。超微細構造的に見て、不規則な長さと幅の微絨毛が栄

養膜細胞と子宮上皮(u.e.)細胞の間に目立って観察された。微絨毛結合の部分でときおり密着結合

が認められた。ほとんど細胞質オルガネラが含まれていない無傷の u.e.細胞がクローン子ウシで

は栄養膜に結合していたが、AI 子ウシでは栄養膜からの分離の前に u.e.細胞は退化していた。下

垂体前葉において、AI 子ウシの ACTH 陽性細胞の数はクローン子ウシに比較して 2 倍多かった。

結論:胎盤切片における緊密な上皮絨毛付着と下垂体前葉における ACTH 陽性細胞数の減少が本

研究で観察された。そのような病変が体細胞クローン子ウシの妊娠期間延長の原因になっていた

可能性がある。 参考文献 1. 窪田、C.、ヤマクチ、H.、トドロキ、J.、ミゾシタ、K.、タバラ、N.、バーバー、M.、ヤン、X. (2000):

『PNAS』97、990-995 2. ヒル、J.R.、ルーセル、J.B.、エドワーズ、J.F.、フーパー、N.L.、ミラー、M.W.、トンプソン、

J.A.、ルーニー、C.R.、ウェススシン、M.E.、ロブル、J.M.、スティス、S.L. (1999):『セリオジェ

ノロジー』51、1457-1465

66

16-14 初期卵胞由来ウシ卵母細胞のコラーゲンゲル培養―無血清培地におけるヒポキサンチンの効果 千本正一郎 1、宮野隆 2 1神戸大学大学院自然科学研究科、2神戸大学農学部、〒657-8501、兵庫県神戸市灘区六甲台町 1-1 卵母細胞の in vitro での発育は、胚移植に用いる卵母細胞の量産を可能にすることから、バイオテ

クノロジーの分野で重要な意味をもつ。マウス卵母細胞成長のための培養システムは発表されて

いるが、この方法を他の種に適用して成功した例は少ない。本研究では、初期卵胞由来の発育中

のウシ卵母細胞のため 3 種の培地を比較し、ヒポキサンチンの卵母細胞発育に対する影響を調べ

た 1。実験1では、初期卵胞(0.5-0.7mm)を採取し、卵母細胞-卵丘-顆粒層複合体(OCGs)および卵母-卵丘複合体(OCs)を卵胞より切除した。卵胞(F)、OCGs、OCs をコラーゲンゲル 2

に包埋して、10%ウシ胎児血清、NaHCO3 2.2 mg/ml、カナマイシン 0.08 mg/ml、ピルビン酸ナト

リウム 0.1 mg/ml を含有する TCM199 中で 16 日間培養した。さらに、この培地に 4 mM ヒポキサ

ンチン(Hyp)を添加した。培養後、ゲルと卵胞を先端の細いピンセットで切開し、卵母細胞を

採取した。Hyp 無添加培地で培養された F、OCGs および OCs では、正常な形態をもつ卵母細胞

は、各々21%(17/80)、9%(8/88)、4%(4/92)であり、Hyp 添加培地では、この割合が、全てのグルー

プで上昇した(F: 37%(19/57)、OCGs: 29%(15/51)、OCs :10%(5/52))。実験 2 では、初期卵胞をコ

ラーゲンゲルに包埋し、血清培地および無血清培地で培養した。無血清培地には、ウシ胎児血清

の代わりに 3mg/ml の BSA(ウシ血清アルブミン)を加えた。正常な形態の卵母細胞は、Hyp 無

添加の血清添加培地および無血清培地で、各々17%(6/35)、54%(19/35)であった。Hyp 添加により、

正常な形態の卵母細胞の割合が、各々24%(16/67)、91%(61/67)に上昇した。全てのグループ

において、培養後の卵母細胞の直径(103-118μm)は、培養前(約 95μm)と比較して有意に大き

くなった。Hyp 添加無血清培地から取り出したとき、形態的に正常な卵母細胞のうちの 87%(53/61)が卵核胞期にあった。続いて 24 時間の成熟培養をしたところ、97%(34/35)の卵母細胞で卵核胞崩

壊が進行中であり、26%(9/35)が第二分裂中期に達していた。これらの結果から、初期卵胞由来の

ウシ卵母細胞は、無血清ヒポキサンチン添加培地卵胞培養システムによって効率よく成長し、成

熟分裂能を獲得することがわかった。 参考文献 1. ハラダ、M.、 宮野、T.、マツムラ、K.、オオサキ、S.、三宅、 M.、加藤、 S. (1997):『セリオ

ジェノロジー』48、743-755 2. トーランス、C.、 テルファー、E.、ゴスデン、R.G. (1989):『ジャーナル・オブ・リプロダクシ

ョン・アンド・ファーティリティー』87、367-374

67

16-15 ウシ細胞およびマウス細胞における血清非存在状態に対するミトコンドリアの反応 武田久美子 1、赤木悟史 1、高橋清也 1、大西彰 2、花田博文 1、カール A.ピンカート 3 1畜産草地研究所家畜育種繁殖部、〒305-0901、茨城県稲敷郡茎崎町池の台 2;2農業生物資源研究所分

化機構研究チーム、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;3 ロチェスター大学老化発生生物学セ

ンター病理学検査科、ニューヨーク州 14642-8645、米国 核移植法においては、核だけでなく、通常ドナー細胞のミトコンドリアもレシピエント卵母細胞

に移植されるため、ミトコンドリアのヘテロプラスミーが報告されている。しかし、さまざまな

プロトコールにより、レシピエント細胞のミトコンドリアだけのホモプラスミーになったり、ク

ローン動物において程度の異なるヘテロプラスミーがみられるという結果が出ている。最近、少

量の顆粒層細胞ミトコンドリアをマウス卵母細胞にマイクロインジェクションしておくと、卵母

細胞のアポトーシスを阻止できることがわかった。すなわち、核移植胚の生存率はミトコンドリ

アの生存能力を反映している可能性もある。核移植実験では、電気刺激を与える前に、ドナー細

胞を血清非存在状態におく。そこで、培養条件とミトコンドリアの活性の関係を調べてみた。線

維芽細胞株を、マウス骨格筋 1、ウシ耳上皮細胞 2、ウシ卵丘細胞 3、ウシ骨格筋 4 から増殖させ

た。各細胞株を 10%FCS 添加 DMEM で培養し、ミトコンドリア機能を増殖中(A)、培養飽和状態

(B)および 6~16 日間の血清非存在状態(DMEM+0.5%FCS)においた後(C)に評価した。細胞をミト

トラッカーレッド CMXRos(分子プローブ)200 nM で 20 分染色し、PBS で 2 回洗浄した後、マル

チウェル対応蛍光プレートリーダー(PE バイオシステム)を用いて、ex=590/20、em=645/40 で測

定した。蛍光強度は増殖中の条件を標準とした(A=100)。相対蛍光強度は、細胞株 1 が B=61、C=76(16 日間培養)であり、細胞株 2 が B=37、C=41(16 日間培養)、細胞株 3 が B=9、C=11(9 日間

培養)、細胞株 4 が B=49、C=36(6 日間培養)であった。細胞あたりのミトコンドリア活性は、増

殖中が最も高く、飽和状態で有意に低くなり(P<0.01)、血清非存在下の処理後も低いままであっ

た(P>0.10)。血清の非存在によって、実験に用いたこれらの細胞株のミトコンドリア活性は下が

らないものの、ミトコンドリアの生存能力は培養条件によって劇的に変わることがわかった。し

たがって、特定の培養条件のパラメータが、クローン動物においてさまざまな発生率でみられる

ヘテロプラスミーを説明する要素の一つと考えられる。

68

16-16 体細胞核移植および in vitro での受精によって作製されたウシ単個胚におけるテロメラーゼ、テ

ロメラーゼ逆転写酵素 mRNA 発現の量的分析 馬越純子 1、窪田力 2、轟木淳一 2、吉田光敏 1 1鹿児島大学農学部家畜生産学研究室、〒890-0065、鹿児島県;2鹿児島県肉用牛改良研究所、〒899-8212、鹿児島県 テロメラーゼ(Telo)およびテロメラーゼの触媒サブユニットとして知られるテロメラーゼ逆転写

酵素(Telo-RT)は、生殖細胞系幹細胞およびがん細胞で発現し、テロメアの短縮を阻止する。近年、

線維芽細胞核移植によるクローン子ウシのテロメアの長さが復元されたといういくつかの研究

報告があった。つまり、テロメラーゼ構成要素の再活性化は、細胞の無制限の増殖と永久的生存

への重要なステップとなるかもしれない。しかし、ウシ卵子の各テロメラーゼ構成遺伝子の発現

について詳しい定量はなされていない。本研究では、in vivo での成熟(IVM)中、in vitro での受精

(IVF)後および体細胞核移植(NT)後に、ウシ卵子の Telo mRNA および Telo-RT mRNA の発現を定

量した。まず、未成熟卵母細胞を屠殺した雌ウシの卵巣から採取した。ウシ卵子の IVM、IVF お

よび NT の手順は、以前の論文(窪田ら、1998、2000)に書かれている方法におおむね則ったもの

である。IVM 中(6 時間後)あるいは、IVF および NT 後(3-24 時間後)に、全ての RNA を 1 個の卵

母細胞あるいは 1 個の胚から分離した。定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を、SYBR®グリーン

RT-PCR キット、この反応のプライマー、ABI PRISM® 7700 シークエンス検知システムを用いて

行った。細胞内対照として、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子発現を同時

に測定した。Telo mRNA および Telo-RT mRNA は、IVM、IVF、NT の全てのステージで検知で

きた。IVM 中、Telo-RT 遺伝子発現が卵母細胞で増大した。また、IVF、NT 後、Telo mRNA およ

び Telo-RT mRNA 発現が、第一卵割期前後で急激に高まった。

69

16-17 体細胞核移植をおこなったウシの出産後生存能力はドナーとして G0 期細胞を用いた方が G1 期

細胞を用いた場合よりも高くなる デビッド・ウェルズ 1、アンドリア・ミラー1、ジャン・オリバー1、フロー・タッカー1、ジ

ャックィ・フォーサイス 1、マーティン・バーグ 1、ケイティ・コックレム 1、ビョルン・オ

ーバック 1、ロビン・タービット 1 1 Ag リサーチ・リミテッド、ルアクラ・リサーチ・センター、PB3123、ハミルトン、ニュージーラン

ド 体細胞核移植後に分化したドナー細胞が再プログラミングされて胚および生存可能なクローン

産子を作出できる能力を有するかどうかに細胞周期のステージがどの程度の重要性をもつかに

ついてはいまだに解明されていない。当初、血清非存在状態の休止期(G0 期)細胞を使うことが、

培養細胞から最初のクローン哺乳動物誕生の成功をもたらした主要なファクターであるとされ

てきた 1。これに疑問を投げかけたのは、ウシ 2およびマウス 3 において、血清存在培養からラン

ダムに取り出されたドナー細胞も、核移植後に全能性があったというデータであった。しかしな

がら、これらの研究では、細胞周期のどの段階からクローン産子ができたのかは明らかにされて

いない。本研究では、G0 期体細胞を核移植した後の発生能と、G1 期体細胞による核移植後の発

生能の直接比較をおこなった。 In vitro で成熟させたウシ MⅡ期卵母細胞を除核し、3-4 世代継代培養した雄成獣の皮膚線維芽細

胞核を用いて再構築した。2 種類のドナー細胞周期で処理を行い違いを調べた。G0 期細胞は、

0.5%FCS を含む培地で 5 日間培養して無血清状態にした後、得たものである 1。G1 期細胞は、ま

ず有糸分裂期の単個細胞をマイクロピペットで選び取り、10%FCS を含む培地中で卵割させた。

次に、この接合した 2 個の細胞を物理的に分割し、有糸分裂後 1-3 時間以内にその単個細胞を細

胞質体に融合させた。このタイミングは S 期の前であり、コントロールの細胞で BrdU(5-ブロモ

デオキシウリジン)取り込みがなかったことにより確認された。さらに、選択された G1 期細胞群

は実際に細胞周期中にあった。これは、有糸分裂後 12 時間目に BrdU で標識されたことから S 期

へ進んだことが証明されたことにより示された。続く電気刺激による細胞融合では、イオノマイ

シンと 6-ジメチルアミノプリンの組み合わせによる人工的活性化を行う前に、両方の細胞周期処

理細胞から得たドナー核を、卵母細胞の細胞質に 3-6 時間暴露させた。再構築した胚を in vitro で

培養し、7 日目に適した状態の胚盤胞を 1 個づつレシピエント雌ウシに移植し、in vivo での発生

を定期的にモニターした。 G0 期細胞に比較して、直径の小さい G1 期のドナー細胞は融合率が低かった(それぞれ 72.9%、

58.1%)。細胞周期が G0 であったか G1 であったかは、その後の胚の胚盤胞Ⅰ-Ⅲ期への発生には

影響をあたえなかった(それぞれ、48.9%、50.0%)。胚移植後、クローン胚の生存率は、残りの妊

娠期間中 G0 期ドナー細胞由来胚のほうが高い傾向にあった(図 1)。この差は、分娩後のクローン

子ウシの生存率において特に顕著であった。G1 期細胞を用いた場合、28%の移植胚(7/25)から、

満期産でクローン子ウシが誕生した。しかし、そのうち 4 頭は出産時あるいは出産後 2 時間以内

に死亡し、さらに 2 頭が 3 週間未満で死亡したため、最終生存率は 4%となった。それとは対照

的に、G0 期ドナー細胞の場合は、39%(7/18)が満期産に達し、1 頭が分娩中に、もう 1 頭が生後 4週間目に死亡した。その結果、胚の最終的生存率は 28%となった。 結論として、G0 期と G1 期の体細胞間による直接比較によれば、胚盤胞への発生および 35 日胚

生存率について差はないが、G1 期細胞ではより長期の再プログラミング異常があり、妊娠後期

および分娩後になってそれが初めて現れることが示唆される。

70

(%)

発生のステージ

図 1. G0 期および G1 期の雄成獣皮膚線維芽細胞由来クローン胚の生存率 参考文献 1. キャンベル、K. H. S.、マクウィール、J.、リッチー、W.A.、ウィルムート、I. (1996):『ネイチャ

ー』380、64-36 2. シベリ、J.B.ら (1998) :『サイエンス』280、1256-1258 3. 若山、T.、柳町、R. (1999):『ネイチャー・ジェネティックス』22、127-128

71

16-18 卵胞液中のヒアルロニダーゼ分析 シャオピン・ウェン 1、マーティン・ラック 2、チョンスァン・ウ 1、ターチン・リン 1、スン

チョン・クオ 1 1クオ総合病院産科婦人科、台南、台湾;2ノッティンガム大学生物科学部動物生理学科、イギリス 卵丘細胞の膨隆、血管形成、炎症反応などの排卵プロセスに積極的に関与するヒアルロン酸(HA)を理解したいという願いから、ヒアルロニダーゼ(Hase)に対する関心が高まってきた。簡便な実

験法がないため、Hase の謎の解明はいまだに進んでいない。本研究の目的は、Hase の定量分析

法を確立することにある。この分析は、スターンとスターンによって開発された ELISA【酵素結

合免疫吸着検査法】様測定法を基にしている。まず、ヒアルロン酸をビオチニル化し、続いてこ

の bHA をコバリンクプレートに固定する。次に、ヒアルロニダーゼで HA を分解する。最後に、

残留アビジン結合 bHA に発色試薬を結合させ、ELISA プレートリーダーで 492nm のフィルター

を用いて色素濃度を測定する。多くの変数が交錯する反応を介して、新たに開発した緩衝溶液を

用いて目的の反応を得た。したがって、この実験法は Hase の分析に使えるかもしれない。この

迅速で感度の高い分析法は、Hase を理解できるするためのより簡便なアプローチとなるだろう。

しかし、Reissig の比色分析法のようなヒアルロニダーゼ活性の初期分析法は、Hase には多くの

サブタイプがあるため、その地位を譲ることはない。 参考文献 1. フロスト、G.I.、スターン、R. (1997):『アナリティカル・バイオケミストリー』251、263-269 2. サルスト、A.、カマイオ、A.、ディ・ジャコモ、M.、フロップ、C.、ハスカル、V.C. (1999):『ヒ

ューマン・リプロダクション』改訂版 5、293-301

72

16-19 NCSU-37 または M-199 中で成熟させたブタ卵母細胞の in vivo、in vitro での単為発生 ヤマグチリョウ 1、和田朝子 1、岡恵美奈 1、紫野正雄 1、柏崎直巳 1 1麻布大学獣医学部動物応用科学科動物繁殖学研究室、〒229-8501、神奈川県相模原市 本研究の目的は、NCSU-371 および M-199(Gibco 製)を用いて in vitro で成熟させたブタ卵母細胞の

単為発生を比較することである。ブタ卵丘-卵母細胞複合体を畜殺場で入手した卵巣から採取し、

10%のブタ卵胞液(pFF)およびホルモン(10 iu eCG/ml +10 iu hCG/ml )を加えた改良 NCSU-37 培養

液中で 20 時間成熟させた後、ホルモン無添加の培養液中で 28 時間成熟させるか、あるいは

0.1mg/ml のピルビン酸ナトリウム、pFF およびホルモンを前述の NCSU-37 と同じ量添加した

M-199 培地中で成熟させた。第一極体が出現した卵母細胞を 1500 v/cm の 2DC パルスで 60μ秒

刺激した。電気刺激した卵母細胞を続いてサイトカラシンB(5.0 μg/ml:Sigma製)を含むNCSU-37中で 4 時間培養して、二倍体卵母細胞を得た。この処理後、卵母細胞を 1mg BSA/ml(フラクショ

ン V、Sigma 製)を加えた改良 NCSU-37 中で 144 時間培養した。培養は、38.5℃、CO2 5%の加湿

した環境で行った。サイトカラシン B で処理した卵母細胞のいくつかを、同調させたレシピエン

ト雌の卵管に外科的に移植した。電気刺激から 10 時間後に、1%アセトオルセイン染色によって

前核形成を指標に核活性を測定した。In vitro での発生は、培養後の処理卵母細胞の胚盤胞形成率

によって調べた。電気刺激後 28 日目に、単為発生胎児をレシピエントの子宮角より外科的に回

収した。表 1 に示す通り、2 種の成熟用培養液間で、成熟率および核活性化率に有意差はなかっ

た。しかし、NCSU-37 中で成熟させた卵母細胞は、M-199 中で成熟させたものより胚盤胞形成率

が有意に高かった(P<0.05)。NCSU-37 または M-199 中で成熟させた卵母細胞各 200 個を移植した

レシピエント 1 頭づつから、10 個と 18 個の単為発生胎児が回収された。ブタ単為発生胎児の半

数が、肢芽形成期に達していたが、胎児の中には、外見的に器官形成異常、口蓋裂、および胎盤

未成育がわかるものがあった。 表 1 NCSU-37 および M-199 を用いて in vitro で成熟させたブタ卵母細胞の単為発生

IVM 培地 成熟(%) 核活性化(%) 胚盤胞形成(%) NCSU-37 61.3 ± 1.8 67.8 ± 3.0 11.4 ± 1.2*

M-199 65.5 ± 2.2 65.9 ± 5.6 7.7 ± 1.1* * 有意差(P<0.05) 本研究の結果から、ブタにおいて、in vitro で成熟した卵母細胞が in vitro で胚盤胞期まで発生し、

in vivo で 28 日胎児まで成長しうることがわかった。母系単為発生ブタ胚・胎児を作製するこの

システムは、ほ乳類におけるゲノム・インプリンティングの研究に役立つものと思われる。 参考文献 1. ペッタース、R.M.、ウェルズ、K.D. (1993):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・フ

ァーティリティー』増刊 48、61-73

73

16-20 円形精子細胞核を注入したウサギ卵母細胞の受精と正常度 細井美彦 1,2、スズキチクサ 1、加藤博巳 2、松本和也 1,2、佐伯和弘 1,2、入谷明 1,2 1近畿大学生物理工学部遺伝子工学科;2近畿大学先端技術研究所、〒649-6493、和歌山県 成熟卵母細胞への精子核直接注入法(ICSI)は、様々な精子の成分の、受精および胚発生における

役割を調べる上で役に立つ可能性がある。無損傷の精子を卵母細胞に注入すると、正常な受精と

発生が起こることが多くの種で確認されている。ICSI を絶滅危惧種に適用することを考える際、

多くの例で未成熟精子を繁殖に利用することも期待される。未成熟精子が正常に受精できるか否

かを調べるため、ウサギ円形精子細胞をウサギ卵母細胞に注入(ROSNI)して、MPF 活性を測定し

た。 ICSI または ROSNI 後の卵母細胞培養には、10%FBS を添加した HTF 培養液を用いた。雌のニュ

ージーランド・ホワイト(NZW)ウサギ(4-6 ヶ月齢)に、75 IU の PMSG を注射し、続いて 72 時間

後に hCG を 75 IU 注射して過剰排卵を誘発した。hCG 注射の 14~15 時間後に、卵母細胞を卵管

から採取した。卵母細胞は 0.2%ヒアルロニダーゼを含む HTF 培養液に入れて処理をした後、卵

丘細胞から単離した。コントロールとして NZW 雄ウサギ(6 ヶ月齢)の精巣上体尾由来の精子を用

いた。同じ精巣の断片から未成熟精子細胞を、赤血球溶解緩衝液の中で回収した。これら無損傷

精子あるいは、単離精子細胞核を卵母細胞に注入した。ROSNI 後の卵母細胞活性化には、カルシ

ウム・イオノフォア A 23187 を 10μM 用いた。注入後、卵母細胞を CO2 5%、空気 95%、37℃の

環境下、HTF 中で培養した。MPF 分析のため、卵母細胞各 10 個を ICSI の 1、3、6、9、12 時間

後に溶解し、-80°C で保存した。MPF 活性は、MESACUP cdc2 キナーゼ分析キット(MBL【医学

生物学研究所】製、日本)を用いて測定した。 最初の実験では、ICSI と ROSNI は別個に行なわれた。ROSNI の後、受精した卵母細胞は、注入

5 時間後には前核期(13%)まで、24 時間後には卵割期(23%)まで発生が進んだ。この割合は ICSIの場合(おのおの 83%と 34%)よりも低かった。MPF 活性は ICSI の 1 時間後に減少し、3 時間後に

は検知されなかったが、ROSNI の場合、MPF 活性は注入 9 時間後でも MⅡ期卵母細胞のレベル

の 30%以上に維持された。 次の実験でわれわれは、卵母細胞活性化により ROSNI の卵割率が上昇するか否かを調べた。2 個

の前核をもつ卵の割合は注入 5時間後に 36%に達し、24時間後に卵母細胞の 39%が卵割期に進み、

中には胚盤胞期に達したものもあった。 これらの結果から、MPF の減少はウサギの正常受精にとって重要であり、さらに卵母細胞の活性

化を行えば、ROSNI 後の卵母細胞発生に有効であることが示された。

74

16-21 異種移植によるウシ胎児卵巣内の卵胞発生および卵母細胞成熟 ホソエミサ 1、野口純子 2、菊地和弘 2、金子浩之 2、徳永智之 1 1 農業生物資源研究所 発生機構研究チーム;2 同研究所 分化機構研究チーム、〒305-8602、茨城県

つくば市観音台 2-1-2 ほ乳類の胎児および新生児の卵巣、そして成体の卵巣皮質には、何千もの始原卵胞が存在する。

これらの卵胞由来の卵母細胞は次世代への資源として期待されてきた。しかし、この卵母細胞に、

成熟、受精、胚発生に至る全能性を獲得させるのは困難である。胎児や子ウシの卵巣に由来する

卵母細胞は、ウシ成獣卵巣由来のものより in vitro 培養における発生能が劣っている 1。ヒツジ、

ヒトなどの卵巣移植片を異種移植した免疫不全マウスにおいて、卵胞の発生が誘導されたことが

最近報告で示された 2。しかし、これら卵胞由来の卵母細胞の受精能については解明されていな

い。本研究では、ウシ胎児卵巣由来の原始卵胞と 2 次卵胞を、ヌードマウスに異種移植後、in vitroで成熟させることで、完全な成熟能をもつ卵母細胞が得られるかどうかを調べた。 地元の畜殺場で、ウシ胎児(頭殿長:46cm と 70cm)からドナー卵巣を採取し、20℃の生理食塩

水に入れて研究室まで輸送した。ドナー組織への拒絶反応を避けるため、レシピエント動物とし

て、雌の無胸腺(nu/nu)マウスを用いた。マウスは移植前に両側卵巣切除を行った。ドナー卵巣皮

質(1mm3)5 片を、慎重にマウスの腎臓被膜下に挿入した。46cm の胎児から採取した卵巣組織を 7頭のマウスに移植し、70cm の胎児から採取した組織を 4 頭に移植した。異種移植後 10 から 15週に、膣スメアが角化上皮細胞の存在を示した 2 頭のマウスから 46cm 胎児由来の移植片を回収

し、組織学的検査のため、ただちにブアン溶液で固定した。膣上皮角化が起こっていた他の 7 頭

のマウス(46cm 胎児由来移植片を持つマウス 5 頭中 3 頭、70cm 胎児由来移植片をもつマウス 4 頭

中 4 頭)には、PMSG 10 IU を注射して移植片の卵胞発生を刺激し、この処理の 72 時間後移植片

を回収した。移植片の卵母細胞を卵胞から機械的に単離し、10%ウシ胎児血清を添加したTCM 199中で 20 時間培養した。一部の卵母細胞は成熟培養後ただちに固定し、染色して核のステージを

判定した。残りの卵母細胞には精子を注入し、14 時間後に固定した。 移植前には 46 cm 胎児の卵巣組織には始原卵胞しかなかったが、組織学的観察より、移植を経て

回収された 46 cm 胎児由来移植片には卵胞の形成が認められた。46 cm 胎児の卵巣から、卵丘-卵母細胞複合体(COC)3 個および卵丘細胞を含まない卵母細胞7個を単離し、70 cm 胎児の卵巣から

COC 20 個、卵丘細胞を含まない卵母細胞 18 個を単離した。マウスに移植した 46 cm 胎児の移植

片から採取した COC 1 個を培養したところ、MⅡ期まで成熟した。しかし、同じ移植片から採取

した卵丘細胞を含まない卵母細胞 7 個を培養したところ、2 個が卵核胞期で停止し、残りは退化

した。さらに 46cm 胎児の卵巣組織を移植した 2 頭のマウスから回収した COC 2 個を培養し、精

子注入したところ、2 個とも退化した。一方、70 cm 胎児の卵巣組織を移植した 4 頭のマウスか

ら回収したCOC 20個を培養し、精子注入したところ、20個のうち 6個(30.0%)が卵核胞期に進み、

3 個(15.0%)が卵核胞崩壊に至り、7 個(35.0%)が MⅡ期に進み、4 個(20.0%)が退化した。受精した

証拠は、精液を注入したどの卵母細胞にも認められなかった。 本結果から、異種移植は、ウシ胎児卵巣由来の始原卵胞の成長を効果的に促し、卵胞内の卵母細

胞に成熟能を与えることが示唆された。

75

参考文献 1. ベターリッジ、K.J.、スミス、C.、スタビングス、R.B.、シュ、K.P.、キング、W.A. (1989):『ジ

ャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファーティリティー』増刊 38、87-98 2. ワイスマン、A.、ゴットリー、L.、コルガン、T.、ユリシコバ、A.、グリーンブラット、E.M.、

キャスパー、R.F. (1999):『バイオロジカル・リプロダクション』60、1462-1467

76

ポスター発表 2 17-01 雌鳥由来体細胞を用いたニワトリのキメラ作成 有富静 1、藤原昇 1 1九州大学大学院生物資源環境科学府動物資源科学部門、〒812-8581、福岡県 以前の研究で、われわれは胚葉細胞の移植によるキメラニワトリ作成に成功した 1。本実験では、

雌ニワトリ成鳥の体細胞と胚葉細胞を電気融合して得られた培養細胞を移植して、体細胞および

生殖細胞系キメラを作成する手法の開発を試みた。ドナーとして白色レグホンの雌から得た培養

体細胞を、レシピエントとしてロードアイランドレッドの非孵卵受精卵(第 X 期胎芽)を用いた。

培養細胞とロードアイランドレッドの胚葉細胞を二層ポリマーシステムのエレクトロポレーシ

ョンによって融合した 2。その後直ちに細胞塊および残渣を培養液で洗浄した。非孵卵ロードア

イランドレッド受精卵(第 X 期)を 4℃で 24-48 時間置いた後、レシピエントとして用いた。卵の

胚盤葉の真上にあたる丸い方の端に窓を開け、3-5μl の融合細胞浮遊液の入ったキャピラリーを

レシピエント卵の胚盤下腔に注入した。注入後、窓を接着テープでふさぎ、卵を 37℃、相対湿度

50%のインキュベーターに入れ、19 日間 1 時間ごとに 90 度回転させた。インキュベート開始後

20 日目に、37℃、相対湿度 85%の孵卵器に移し、ハッチングまでおいた。21 日胚(死亡ヒナ)から、

DNA 抽出のために組織(脳、心臓、肝臓、性腺、皮膚、筋肉、腸)を切除し、PCR 法によりドナー

細胞由来の DNA が存在するかどうかを調べた。エレクトロポレーション処理をした胚のうち、1個だけがドナー由来の羽毛色素沈着を示した。PCR 分析により、ドナー染色体由来の DNA が、

皮膚および筋肉から検出された。これらの所見により、エレクトロポレーション融合の培養細胞

移植によって体細胞キメラが作製できることが示唆された。 参考文献 1. アリトミ、S.、藤原、N. (2000):『アジアン・ジャーナル・オブ・アンドロロジー』2 (4)、271-275 2. ホイ、S.W.、ストイチェバ、N.、ジャオ、Y.L. (1996):『バイオフィジカル・ジャーナル』71、

1123-1130

77

17-02 細胞質内注入(ICI)によるウシ核移植における活性化処理の胚盤胞発生に対する影響 浅田正嗣 1、イクミサチコ 1、福井豊 1 1帯広畜産大学家畜育種繁殖学研究室、〒080-855、帯広市 すでにマウスおよびブタにおいては、体細胞由来のドナー核を除核卵母細胞にピエゾマイクロマ

ニピュレーターを使用して直接注入することにより正常な胎児を得ることに成功している。活性

化処理として化学薬品や電気パルスが用いられてきた。ウシ体細胞クローニングでは、核注入卵

母細胞の活性化には、電気刺激の一般的な方法が主に用いられてきた。しかし、電気刺激は、高

価な機器を必要とする。本研究では、ICI 後の簡便な活性化法として用いられた化学処理による

核注入卵母細胞発生率への影響を調べた。実験 1:ドナー核を再プログラミングするためには、

細胞質に一定時間暴露しなければならない。したがって、ウシ卵丘細胞核を ICI したウシ卵母細

胞を 7%エタノールにより活性化し、活性化後の時間(0、1、3、6 時間)ごとにその効果を調べ

た。実験 2:カルシウム振動パターンは、化学的活性化法によって異なることがわかっている。

ドナー核を注入した卵母細胞をエタノールで処理する方法は、化学的活性化法の中で最も簡単な

方法であろう。そこで、7%エタノールまたは 5μM カルシウムイオノフォア A23187 を使った場

合の、ドナー核注入卵母細胞の発生能に対する効果を調べた。胎盤胞率は活性化後の時間(0.1.3.6.時間後)による影響を受けなかった。本結果より、エタノールとカルシウムイオノフォアによる化

学的活性化の効果には、有意な差がないということが示された。ドナー核の活性化後の時間ごと

に調べた胚盤胞率は、0、1 時間のグループが高い傾向があり、エタノール処理は ICI 後の活性化

法として効果的であると結論される。 参考文献 1. 若山、T.、ペリー、A.C.F.、ズコッティ、M.、ジョンソン、K.R.、柳町、R. (1998):『ネイチャー』

394、369-374

78

17-03 体細胞クローンの胎児および胎盤の病変と臨床所見 パスカル・シャバット=パルメ 1,2、クリストフ・リシャール 2、イヴァン・ハイマン 2、ファ

ラ・ケスリ 2、ミッシェル・ギロモ 2、ナタリー・コルドニエ 3、ル・ブリス・ダニエル 4、ジ

ャンポール・ルナール 2 1国立農業研究所発生生物学・生物工学部門、ドメイニ・ド・ヴィルベール、78352 ジュイ・オン・ジ

ョサ cedex、フランス;2パリ-グリニョン国立農業経済研究所動物科学部門遺伝育種繁殖学研究室、ク

ロード・ベルナール通り 16、75231 パリ cedex 05、フランス;3アルフォール国立獣医学校病理解剖学

研究所繁殖生物学グループ、ジェネラル・ド・ゴール大通り 7、94704 メゾン-ザルフォール cedex、フ

ランス;4 UNCEIA テクニカルサービス、94 703 メゾン-ザルフォール cedex、フランス 体細胞核を用いた核移植法により健康な動物も生まれうるが、この方法の成功率は胎子期および

新生子期の死亡により一般に低い(2-10%)。われわれの研究所では、妊娠後期の死亡が約 50%であ

り、子ウシ新生児の 20%前後が死亡している。 異常胎子 5 頭の胎盤および器官の肉眼的病理所見および組織学的所見によると、体重に比した腎

臓および肝臓の重量が、正常なコントロールのウシの肝臓より大きかった。脂肪変性および肝臓

の造血中心機構の減少が認められる個体もあった。すべての病的妊娠に重篤な水症がみられたに

もかかわらず、胎盤に浮腫はあったが炎症組織はほとんどみられなかった。 生存する 11 頭のクローン子ウシには胸腺形成不全で死亡した 1 頭とは対照的に、異常白血球像

は認められなかった 1。最近、死後解剖によって、胸腺発育不全が 2 頭の新生子ウシで発見され、

組織学的分析結果を待っている。出生時の血液学的分析によると、クローン個体ではコントロー

ル個体に比較して平均血球量が有意に多く(p<0.05)、これはクローン子ウシが正常子ウシに比べ

て血液学的に成熟していない可能性を示唆している。 これらのデータから、遺伝子インプリンティングの乱れに関係しない病変がクローン個体に存在

しうることが示唆される。これら個体について、現在ホルモン分析が行われている途中であり、

ポスターでその結果を発表する予定である。 参考文献 1. ルナール、J.P.、シャスタン、S.、シェスネ、P.、リシャール、C.、マルシャル、J.、コルドニエ、

N.、シャバット、P.、ビニョン、X.(1999):『ザ・ランセット』353、1489-1491

79

17-04 電気的に活性化した IVM ブタ卵母細胞の単為発生に及ぼす 6-ジメチルアミノプリン、サイトカ

ラシン B、シクロヘキシミドの影響 クリストファーG.グルーペン 1、ステファン M.マキルファトリック 1、サイモン・マドックス2、マーク B.ノットル 1 1 ブレサジェン社繁殖生物工学部門、アデレード、サウスオーストラリア州、オーストラリア;2アデ

レード大学動物科学部門、アデレード、サウスオーストラリア州、オーストラリア 人工的に活性化された卵母細胞の発生能を改善するいくつかの処理が報告されている 1,2。本研究

の目的は、6-ジメチルアミノプリン(6-DMAP)、サイトカラシン B(CB)およびシクロヘキシミド

(CHX)が、電気的に活性化し、in vitro で成熟(IVM)させたブタ卵母細胞の単為発生に及ぼす効果

を明らかにすることにあった。IVM の後、卵母細胞を卵膜剥離して、極体のある細胞を電気的に

活性化した。パルスをかけた卵母細胞を培養液中で 3 時間インキュベートした。培地には以下の

ものを加えた。1)添加物なし(未処理対照群);2) 2 mM 6-DMAP;3) 7.5 μg/ml CB;4)10 μg/ml CHX;5) 2 mM 6-DMAP および 7.5 μg/ml CB。これらの処理をした卵母細胞を in vitro で培養(IVC)した。16 時間 IVC をおこなった後、各グループからの数個の卵母細胞をオルセイン染色し、核

の構造を調べた。残りの卵母細胞を用いて、48 時間、6 日間および 7 日間の IVC 後、単為発生

卵割および胚盤胞期への発生を調べた。7 日間 IVC 後に形成された胚盤胞を各々ラベルし、栄養

外胚葉細胞数および内細胞塊細胞数を調べた。電気パルスのみを与えた卵母細胞は高い減数分裂

再開率(98%)と前核形成率(97%)を示した。その後の 6-DMAP、CB、CHX、6-DMAP + CB をそれ

ぞれ添加したインキュベーションによる減数分裂再開率および前核形成率への影響はなかった。

6-DMAP、CB をそれぞれ単独使用あるいは併用した場合、極体 1 個をもつ卵母細胞の割合が、未

処理および CHX 処理の卵母細胞に比べて高くなった(92-98%対 67%;P<0.05)。2 細胞期への卵割

率には、処理間で有意な差はみられなかった。6-DMAP・CB 混合液に暴露した卵母細胞の 6 日間、

7 日間の IVC 後の胚盤胞形成率は、他のグループに比較して高かった(各々39%対 10-25%および

47%対 17-32%;P<0.05)。6-DMAP のみとインキュベートした卵母細胞は、6 日間の IVC の後、未

処理(25%対 11%;P<0.05)、CB 単独処理(25%対 13%;P<0.05 )、CHX 単独処理( 25%対 10%;P<0.05)の卵母細胞と比べて、高い胚盤胞形成率を示した。CB 単独処理の卵母細胞の 7 日間 IVC 後の胚

盤胞形成率も、6-DMAP 単独処理のものと比べて低かった(17%対 32%;P<0.05)。6-DMAP 単独の

インキュベーションから形成された胚盤胞は、6-DMAP・CB 混合処理と比べて、栄養外胚葉細胞

数および総細胞数が多かった(各々、48.8±4.6 対 38.1±3.0 および 55.5±5.2 対 43.2±3.4;P<0.05) 。内細胞塊細胞数およびその総細胞数に対する割合については、処理による有意差はな

かった。実験結果から、6-DMAP 単独あるいは CB との併用による処理により、電気的に活性化

されたブタ卵母細胞の発生率が高まることが明らかになった。この効果は 2 倍体単為発生率向上

と相関があった。また、胚盤胞細胞数データから CB への暴露は単為発生に有害であることがう

かがえる。 参考文献 1. チャ、S.K.、キム、N.-H.、リー、S.M.、バイク、C.S.、リー、H.T.、チュン、K.S.(1997):『リプロ

ダクション、ファーティリティー・アンド・ディベロップメント』9、441-446 2. リウ、L.、ジュ、J.-C.、ヤン、X.(1998):『モレキュラー・リプロダクション・アンド・ディベロッ

プメント』49、298-307

80

17-05 ウシ未成熟卵母細胞は in vitro で減数分裂停止中に発生能を獲得する 橋本周 1、南直治郎 2、高倉良 1、今井裕 2 1雪印乳業(株)受精卵移植研究所、〒059-1365、北海道苫小牧市植苗 119;2京都大学大学院農学研究科

生殖生理学研究室、〒606-8502、京都市 ウシ未成熟卵母細胞の発生能を向上させるために、これまで様々な試みがなされてきた。特に、

卵母細胞を in vitro で成熟させる前に胞胚期に停止させる方法については、卵母細胞には減数分裂

停止期間に高い発生能を獲得する時間が必要であるため、くわしく研究されてきた。この考えは、

哺乳類の卵母細胞は、減数分裂成熟を再開させるために Gn-RH【ゴナドトロピン放出ホルモン】

の増大が起こるまで、複糸期にとどまるという事実に基づいている。一方、卵胞から吸引採取し

た卵母細胞では、自発的に減数分裂成熟が再開する。さらに、大きな卵胞から取り出された卵母

細胞は、小さい卵胞から取り出された卵母細胞より発生能が高かった。この結果から、卵母細胞

の発生能は卵胞の成長とともに徐々に獲得されることが示唆される。 本研究では、卵母細胞の発生能に対する、ウシ血清アルブミン(BSA)およびウシ胎児血清(FBS)の培地への添加の影響、ならびにブチロラクトンⅠ(BLⅠ)100μM による減数分裂停止期間中の酸

素分圧(5%対 20%)の影響を調べた。胚盤胞期まで発生の進んだ卵母細胞の割合は、FBS 添加培養

液中で BLⅠ処理-酸素 5%の条件下で停止させた細胞(37%)のほうが、他の処理によって停止さ

せた場合(5-24%)や停止させない卵母細胞(23%)よりも高かった(P<0.05)。次に、BLⅠ処理卵母細

胞の核成熟の時間経過を調べた。その結果から、BLⅠ処理卵母細胞は、減数分裂成熟を再開し、

MⅡ期に達するのが非停止細胞より平均 5.5 時間早いことがわかった。この結果から、15.5 時間

と 21 時間成熟させた GV-停止卵母細胞の胚盤胞期への発生能を、21 時間と 26.5 時間成熟させた

未処理卵母細胞の発生能と比較した。15.5 時間と 21 時間成熟させた BLⅠ処理卵母細胞の胚盤胞

期への発生率は、21 時間と 26.5 時間成熟させた未処理の卵母細胞の発生率より高かった(P<0.05)。 本研究の結果、ウシ未成熟卵母細胞を in vitro で BLⅠ処理によって停止させると、減数分裂停止

期間に胚盤胞期への発生能を獲得することが明らかになった。

81

17-06 雌ウシ同一個体より採取したレシピエント卵母細胞およびドナー細胞を用いた核移植 金山佳奈子 1、小林修司 2、的場理子 1、橋谷田豊 3、米内美晴 1、斉藤則夫 1 1家畜改良センター(NLBC)、〒961-8511、福島県西郷村;2 NLBC、新冠牧場、〒056-0141、北海道静

内町;3 NLBC、奥羽牧場、〒039-2567、青森県七戸町 1998 年以降、体細胞核移植によって多くのクローン動物が作製されてきた。しかしいずれの場合

もレシピエント卵母細胞およびドナー細胞は同一個体から得られたものではなかった。したがっ

て、再構築卵母細胞は異なるミトコンドリア DNA をもつ異なる細胞質ソースから成ることにな

る。この細胞質内ミトコンドリア DNA の違いが、ドナー核は同一でも、異なる個体から取り出

した卵母細胞を用いてクローン動物を作製したとき、その能力に影響する可能性がある。本研究

の目的は、厳密な意味でのコピーとしてクローン牛を作製するうえで、同一雌ウシ個体からのレ

シピエント卵母細胞およびドナー細胞ソースとして用いた場合の影響について調べることであ

った。42 個の卵丘-卵母細胞複合体をホルスタインから採卵器を用いて取り出し、5%子ウシ血清

(CS)添加 TCM199 培地で 20 時間 in vitro で成熟培養した。31 個の成熟卵母細胞を卵丘細胞よりか

き取り、除核した。同一のウシより回収した卵丘細胞を 10%のウシ胎児血清を添加したダルベッ

コの MEM 培養液で 3-4 世代培養した。除核に成功した 29 個の卵母細胞の囲卵腔に培養卵丘細

胞 1 個を入れ、これをチメルマン細胞融合液中で、25V のシングルパルスを 50μ秒間与えて電気

融合した。電気的刺激の後、再構築された卵母細胞を 5μM カルシウムイオノフォアに 5 分間暴

露してさらに活性化し、TCM199+5%CS+10μg/ml シクロヘキシミド中で 5 時間インキュベート

した。この融合細胞 20 個を 5%CS 添加 CR1aa 培養液中で培養した。そのうち 18 個が卵割し、12個が 7 日目または 8 日目(0 日目=核移植日)に胚盤胞期に達した。核移植卵母細胞の融合率、卵割

率および胚盤胞発生率は、各々69.0%(20/29)、90%(18/20)、60%(12/20)であった。形態学的に正常

な胚盤胞を 8 日目に 9 頭のホルスタインに移植した。発情期から 40 日後と 80 日後に超音波検査

法で妊娠鑑定した。発情期 40 日後および 80 日後の受胎率は 33.3%(3/9)で、うち 2 頭は受胎後 144日目と 176 日目に流産した。1 頭が帝王切開で体重 70 kg の子ウシを出産したが、生後 15 時間で

死亡した。この結果より、ウシ同一個体由来のレシピエント卵母細胞およびドナー細胞を核移植

に用いてクローン子ウシの出産にいたることが証明された。しかし、ウシに見られる過大児症候

群の原因は特定できなかった。 参考文献 1. 後藤、Y.、金山、K.、今井、K.、新納,M.、辻野、T.、中野、T.、松田、S.、中根、M.、小島 T.(1999):

『日本畜産学会報』70、243-245

82

17-07 In vitro で成熟させたブタ卵母細胞における活性化誘導のための化学的刺激の評価 川原学 1、淵之上康平 1、若井拓哉 1、木村晃一 1、佐々田比呂志 1、佐藤英明 1 1東北大学大学院農業研究科動物生殖科学研究室、〒981-8555、仙台市 クローン胚の作製プロセスにおいては、再構築した胚の活性化がその後の発生に重要である。本

研究は、in vitro で成熟させたブタ卵母細胞活性化における数種の化学的刺激の効果を、前核形成

率、卵割率および得られた胚盤胞の細胞数を調べることにより明らかにするために行われた。卵

巣から採取したブタ卵母細胞を NCSU23 中で in vitro 培養し、実験に用いた。実験 1 では、イオ

ノマイシンまたは電気刺激処理によって成熟卵母細胞に前核形成が誘導され、その前核形成率は

各々22/32(68.8%)、18/28(64.3%)であったが、シクロへキシミド処理の卵母細胞には前核形成がみ

られなかった。実験 2 では 2 種類または 3 種類の処理(イオノマイシン処理後に電気刺激やシク

ロヘキシミド処理を行う)による効果を調べた。卵割率は各々78.9%、81.8%、胞胚形成率は 31.1%、

53.0%であった。それに対して、イオノマイシン単独処理の場合および電気刺激のみの場合の卵

割率は各々45.3%、62.9%、胚盤胞形成率は 20.8%、13.9%であった。組み合わせ処理したグルー

プの胚盤胞期に達した平均細胞数は、単独処理のグループより多かった。すなわち、我々の得た

結果により、イオノマイシンと電気刺激およびシクロヘキシミドの組み合わせ処理はブタ再構築

胚の活性化に有効な手法である可能性が示された。

83

17-08 緑色蛍光蛋白遺伝子を導入した胎児線維芽細胞を用いて再構築したブタ胚の発生 デヨン・キム 1、ソヒュン・リー1、ビョンチュル・オー1、ヒェスー・キム 1、ガプサン・リ

ー1、サンファン・ヒュン 1、ジョンイム・パク 1、ユンソン・リー2、ジョンモク・リム 3、ス

ンケン・カン 1、ビョンチュン・リー1、ウースク・ファン 1 1国立ソウル大学獣医学部、ソウル、151-742、韓国;2国立カンゴン大学獣医学部、チュンチョン、200-701、韓国;3国立ソウル大学農業生物工学部、スウォン、441-744、韓国 体細胞核移植法を用いたトランスジェニックブタの作製は、バイオテクノロジーおよび医学の分

野で大変重要である 1。本研究の目的は、外来遺伝子を含む体細胞のトランスフェクションが、

再構築した胚の胚盤胞期への発生に影響を与えるか否かを調べることであった。緑色蛍光蛋白

(GFP)遺伝子を外来遺伝子に用い、これをトランスフェクションしない胎児線維芽細胞をドナー

細胞の正のコントロールとして用いた。ブタ胎児線維芽細胞の単層をわれわれの用いている標準

法で作製し、リポフェクトアミンプラス TM(ライフ・テクノロジー、米国)を用いて、pEGFP-N1 TM(クローンテック、米国)をトランスフェクションした。培養液中で 44-46 時間成熟させた卵

母細胞をレシピエント卵母細胞とした。GFP 導入および非導入胎児線維芽細胞で卵母細胞を電気

融合して再構築し、Ca2+および Mg2+添加 0.26 M マンニトール溶液中で、30 μ秒の 1.8 kV/cm 単

回直流パルスを用いて活性化した。発生を評価するため、再構築した卵母細胞を NCSU-23 培養

液中で 144 時間培養した。外来遺伝子導入卵母細胞および非導入卵母細胞間で、その卵割率、胚

盤胞形成率、胚盤胞期細胞数に有意な差はなかった(P>0.05)(表 1)。 表 1. ブタ核移植胚の発生 胎児線維芽細胞のタイプ 再構築した数 卵割の数(%) 胚盤胞数(%) 胚盤胞期細胞数

GFP 導入 218 122 (56.0) 23 (18.9) 44.3 ± 15.1 (n=4)GFP 非導入 229 103 (45.0) 21 (20.4) 46.3 ± 6.4 (n=4)

これらの結果より、GFP 導入胎児線維芽細胞を用いて再構築したブタ卵母細胞において、胚発生

への有意な抑制は見られず、ブタの遺伝子導入に GFP 遺伝子を外来遺伝子のマーカーとして安全

に使うことができることが示された。現在、再構築胚を代理母の子宮角に移植して、その胎児発

生を調べる一連の実験行っているところである。 参考文献 1. ベットホイザー,J.、フォースバーグ,E.、オイゲンスタイン,M.、チルツ,L.、アイラーツェ

ン,K.、エノス,J.、フォーサイス,T.、ゴルエク,P.、ユルゲラ,G.、コッパング,R.、レスマ

イスター,T.、マロン,K.、メル,G.、ミシカ,P.、ペイス,M.、フィスター-ゲンスコウ,M.、ストレルチェンコ,N.、ベルカー,G.、ワット,S.、トンプソン,S.、ビショップ,M. (2000):『ネ

イチャー・バイオテクノロジー』18、1055-1059

84

17-09 G1/S 期ドナー細胞および活性化したレシピエント細胞質から再構築されたウシ核移植胚の発生

改善 黒坂哲 1、長尾恭光 1、南直治郎 1、山田雅保 1、今井裕 1 1京都大学大学院農学研究科動物遺伝増殖学研究室、〒606-8502、京都市 われわれは以前に、非同調成獣体細胞を用いたウシ核移植胚において、融合と活性化を同時に行

って準備したレシピエント細胞質体と、融合の 2 時間前に活性化してして準備したレシピエント

細胞質体の in vitro での発生能は同等であることを発表した 1, 2。本研究では、これら 2 種のレシ

ピエント細胞質体およびG0期またはG1/S期に同調させた成獣体細胞を用いた再構築胚の in vitroでの発生能を調べた。ドナー細胞は血清非存在下で G0 期に、あるいはアフィジコリン処理によ

って G1/S 期に同調させた。以下の 2 種類の活性化/融合プロトコールを用いた。1)活性化してい

ない細胞質体を成熟後 24 時間たってから細胞と融合し、その後シクロヘキシミド(CH、10μg/ml)で 6 時間処理した(F24 プロトコール)。2)レシピエント細胞質を成熟 22 時間後にエタノール(7%)で活性化(7 分)した後、2 時間 CH で処理し、成熟 24 時間後にドナー細胞と融合して、さらに 4-5時間 CH 処理した(A22F24 プロトコール)。F24 プロトコールの場合、G0 期および G1/S 期のドナ

ー細胞で再構築した核移植胚の胚盤胞期への発生率は、各々32.7%、37.7%であった。A22F24 プ

ロトコールの場合、G0 期および G1/S 期のドナー細胞を用いて再構築した胚の発生率は、各々

29.2%、50.9%であった。以上の結果は、アフィジコリンによるドナー細胞の G1/S 期への同調は、

核移植後に高い発生能をもつ 2 倍体ドナー細胞を得るのに有効であり、この G1/S 期の細胞は、

融合 2 時間前に活性化すると、レシピエント細胞質体のドナーとして特に優れることを示してい

る。 参考文献 1. 黒坂、S.、大橋、A.、長尾、Y.、南、N.、山田、M.、今井、H. (2000):『バイオロジー・オブ・リ

プロダクション』62(増刊号 1)、127 2. 黒坂、S.、長尾、Y.、南,N.、山田、M.、今井、H. (2001):『セリオジェノロジー』55、239

85

17-10 マウス遺伝子発現再プログラミングにおける DNA 複製第 1 期の調節的役割 セルゲイ・メドヴェデフ 1、徳永智之 1、リチャード M.シュルツ 2、永井卓 1、ナタリア・ボ

サック 1、居在家義昭 1 1農業生物資源研究所発生機構研究チーム、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;2ペンシルバニ

ア大学生物学部、フィラデルフィア、ペンシルバニア州 19104-6018、米国 DNA 複製の第 1 段階は、染色体再構成促進による接合体転写活性化に重要な役割を果たすことが

マウスで示唆されている 1。本研究では、DNA 複製の第 1 段階初期が転写複合体を配列させる機

会を提供することから、マウス接合体転写を開始させる非常に重要な段階であることを報告する。

父親由来のニワトリβ-アクチンプロモーター駆動緑色蛍光蛋白遺伝子(cβA-GFP)―その発現は

移植前マウス胚で容易に検出できる―を用いて、S 期中の異なる時点において DNA 複製を阻害

した場合の接合体の転写開始に対する効果を調べた。S 期中期直前に、1 細胞期胚を DNA ポリメ

ラーゼ阻害剤であるアフィジコリンで処理した場合、トランスジーンの発現は阻害されないこと

が観察された。蛍光シグナルが、卵割停止胚において 100 時間にわたり一定の速さで増加したか

らである。しかしアフィジコリンを S 期開始の前に加えた場合は、レポータートランスジーンの

発現は検知されなかった。独立した 4 種のトランスジェニック細胞株でも、同様の結果が得られ

た。さらに、ブチレート処理によりヒストンの過アセチル化を誘導すると、S 期中期で停止させ

た胚において、導入遺伝子発現を誘発したが、S 期初期で停止させた胚においては、転写開始に

対する効果が見られなかった。これらの結果より、DNA 複製あるいはヒストンのアセチル化の結

果起こるクロマチン構造の変化が、胚における転写開始に力学的に関連しており、クローニング

の際に起こる核の再プログラミングプロセスにも関わっている可能性があることが示唆される。 参考文献 1. ウォルフ、A.P. (1994):『カレント・オピニオン・イン・ジェネティックス・アンド・ディベロッ

プメント』4、245-254

86

17-11 腹腔内視鏡卵胞吸引により採取した in vivo 成熟卵母細胞を用いたヤギ体細胞核移植 大越勝弘 1、高橋清也 2、小山眞一郎 1、赤木悟史 2、足立憲隆 2、古沢軌 1、藤本純一郎 3、徳

永智之 1 1農業生物資源研究所分化機構研究チーム、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;2畜産草地研究

所家畜育種繁殖部、〒305-0901、茨城県稲敷郡茎崎町池の台 2;3 国立小児病院、〒154-8509、東京都

世田谷区太子堂 3-35-31 最近の研究で、われわれは in vitro での成熟(IVM)あるいは培養(IVC)のシステム 1 によって

作製した体細胞核移植(SCNT)ヤギ卵子の発生能を調べ、SCNT ヤギ産子を得た。しかし、胚盤胞

期まで成長した SCNT ヤギ卵子数は少なかった。この主因として、卵母細胞成熟が不完全だった

ことが考えられる。In vivo で成熟させた卵母細胞をレシピエントとして用いれば、SCNT ヤギ卵

子の発生能が改善すると思われたため、本研究では、腹腔内視鏡卵胞吸引によって in vivo 成熟卵

子を採取する方法を確立した。その上で、in vivo で成熟した卵母細胞をレシピエントとして SCNTヤギ卵子を作製し、その発生を調べた。 実験には日本在来種のシバヤギを用いた。発情の同期化を誘導するため、プロゲステロン 1 g を

含ませたスポンジを各ヤギの膣に 14 日間挿入した。これら個体に、ヒツジ FSH(Ovagen、ICP.社、

各個体に合計 14 mg)を 4 日間に 8 回注射した。第 1 回 FSH は、スポンジ挿入 9 日目の朝に投与

した。13 日目の朝には 50 μg の GnRH(Conceral、武田薬品)を各個体に注射した。GnRH 注射

から 29 時間後、腹腔内視鏡卵胞吸引を行った。卵丘細胞を取り除いた後、その中から第 1 極体

のある卵母細胞を選び、核移植のため除核した。シバヤギの雄成体から単離した下垂体前葉細胞

に、GFP 遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子およびヤギ成長ホルモン mRNA に対するハンマ

ーヘッドリボザイム遺伝子をトランスフェクションした。除核した卵母細胞の囲卵腔に、このド

ナー細胞 1 個を挿入し、10 μ秒間、20 V の電気パルス1回をかけて融合した。SCNT ヤギ卵子

を化学組成の明確な培養液(IVD-101、機能性ペプチド研究所(株))中で、38.5℃、5%CO2、5%O2、

90%N2 の環境下、9 日間培養した。 腹腔内視鏡卵胞吸引法によって、12 頭のメスより 150 個の卵母細胞を採取した。卵丘の除去後、

そのうちの 61%が第 1 極体を放出していた。In vivo で成熟させた卵母細胞から生産された SCNTヤギ卵子の胚盤胞期胚率(20%)は、IVM 卵母細胞由来のもの(3%)より有意に高かった(P<0.05)(未発表データ)。現在 SCNT 胚盤胞移植後、数頭のレシピエント雌が受胎している。 本研究は、文部科学省開放的融合研究推進制度の助成金を受けて行われた。 参考文献 1. 大越、K.、高橋、S.、赤木、S.、ワタナベ、S.、山口、M.、藤本、J.、居在家、Y.、徳永、T. (2000) :

『第 14 回 I.C.A.R(インターショナル・コミッティー・オブ・アニマル・レコーディング:家畜の

能力に関する国際委員会)』

87

17-12 ウシクローン胚の ICM に由来する細胞株単離の試み ジョンイム・パク 1、キョンヒー・ジャン 2、スンクィン・カン 1、ウースク・ファン 1 1 ソウル国立大学獣医学部家畜繁殖学科;2 ソウル国立大学農業生物工学部、ソウル市カワナク区シリ

ムドン、151-742 韓国 本研究は、体細胞によって再構築されたウシクローン胚の ICM(内細胞塊)に由来する胚細胞株を

単離する目的で行なわれた。核移植(NT)のドナーとして用いた細胞株は、ウシ耳皮膚から単離し、

10%子ウシ胎児血清(FCS)を加えた DMEM 中で培養した 1。8 世代未満の培養後、0.5%FCS を添加

した DMEM 中で 3-7 日間培養し、ドナー細胞周期を静止期で停止させた。レシピエント細胞質

体の準備のため、屠殺したブタから採取した卵母細胞を 10%FBS 添加 TCM-199 中で 18-20 時間

成熟させ、除核した。各除核卵母細胞の囲卵腔にドナー細胞 1 個を注入した。融合および活性化

の後、再構築された胚を mSOF 培養液中で 7-10 日間培養した。ウシ胎児線維芽細胞(BFF)、ウシ

耳線維芽細胞(BEF)、ウシ卵管細胞(BOC)およびマウス胚線維芽細胞(MEF)をフィーダー細胞株と

して用いた。NT および体外受精(IVF)によって、膨張しハッチングした胚盤胞を 4-ウェル培養皿

に入れ、15%FCS および 10 万ユニットの白血病阻害因子(LIF)を添加した DMEM 中、様々なフィ

ーダー層上で培養した。4-6 日間培養後、フィーダー層に接着した胚盤胞の ICM を取り出し、引

き続き 6-10 日間培養した。4 日目までは、4 タイプのフィーダー層への接着効率は、NT による胚

盤胞の方が IVF 胚盤胞よりも高かった(各々49/133 対 85/293)。MEF は、NT 胚盤胞においても、

IVF 胚盤胞においても、他のタイプのフィーダー細胞より接着効率が高かった。5 つのコロニー

(NT のもの 3 つ、IVF のもの 2 つ)を MEF フィーダー層に接着した胚盤胞 45 個(NT 20 個、IVF 25個)から単離した。これらのコロニーを分散させ、さらに数週間増殖させ、染色して、細胞周期特

異的胚抗原(SSEA)-1 およびアルカリフォスファターゼ(AP)活性を調べた。NT による胚盤胞由来

の細胞株 2 種において、SSEA-1 抗体が認められたが、AP 活性はどちらの細胞株でも認められな

かった。この結果は、未分化胚細胞株を最終的分化を終えた成体体細胞核から樹立できる可能性

を示している。 参考文献 1. シン、S.J.、リー、B.C.、パク、J.I.、リム、J.M.、ファン、W.S. (2001):『セリオジェノロジー』

55、1697-1704

88

17-13 動物組織凍結保存に有効な凍害保護剤 猿渡敬志 1、藤原昇 1 1九州大学大学院生物資源環境科学府動物資源科学講座、〒812-8581、福岡県 過去数十年、世界中で多くの動物種が絶滅の危機に瀕してきた。核移植、キメラの作製、動物の

クローニングなど、これら絶滅危惧種を復活させるための多くの技術が開発されてきた。現在、

この種の技術の効率を高めるための基礎研究が求められている。たとえば、冷凍保存、組織培養、

細胞融合および核移植などによる、死亡した動物の組織の利用に関するものなどがある。これら

を基礎とし、この実験では、死亡した動物(ウシとブタ)より数種類の組織を、3 種の凍害保護剤―

―ジメチルスルホキシド(0.15-3.5 M)、ジメチルホルムアミド(0.25-3.5 M)、メチルアセトアミド

(0.15-2.0 M)――を用いて凍結保存後、細胞培養で再利用する試みを行った。地元の畜殺場でウシ

の耳、歯肉、筋肉、卵巣、皮膚、子宮の組織を採取し、70%アルコールに浸した綿で 1 度払拭し

たのち、5%の抗生抗菌剤入り PBS 中で 3 回洗浄した。この組織を小さな塊(約 1 cm3)に切り分

け、濃度の異なる前述の凍害保護剤を含む 200 μl の凍結培養液(PB1)が入った 4.5 ml の凍結保存

用チューブに入れた。チューブを 5 分間氷上におき、その後 4 ml の凍結液を氷に加え、続いて超

低温冷凍庫中にて 2 週間-80℃で冷凍した。冷凍保存の後、組織を 37℃の水浴中で解凍し、PBSで 3 回洗浄して凍害保護剤を除去した。解凍した組織を 4℃で 24 時間 0.25%トリプシン処理をし

た後、10% FCS D-MEM/Ham-F12 中で 1,500 rpm 、5 分間の遠心洗浄を 2 回行った。採集した細

胞をコラーゲンでコートした 96 ウェルマイクロプレートで 3 日間、細胞生存能が確認できるま

で培養した。細胞生存率はアクリジンオレンジおよび臭化エチジウム溶液による細胞染色法を用

い、蛍光顕微鏡下で調べた 。その結果、各組織について、最も有効な凍害保護剤がわかった。

耳、子宮および皮膚の組織には 3.0 M DMSO が、歯肉組織には 0.5 M MA が、卵巣組織は 0.5 M DMSO がもっとも効果的な保護剤であった。これらの結果より、 動物の組織にはその動物に適

した凍害保護剤が必要であり、異なる動物種のそれぞれの器官に対し最適な濃度があるという可

能性が示唆された。

1

参考文献 1. ギル、C.W.、フィッシャー、C.L.、ロブレコビッチ、H. (1979):『メディカル・インストルメンテ

ーション』13(1)、64-65

89

17-14 トランスジェニック細胞を用いて再構築したウシ胚における遺伝子発現 澤井健 1、森安悟 1、平山博樹 1、陰山聡一 1、南橋昭 1、岡部勝 2、伊川正人 2、尾上貞雄 1 1 北海道立畜産試験場畜産工学部、〒081-0038、北海道上川郡新得町;2 大阪大学遺伝情報実験施設、

〒565-0871、大阪府吹田市山田丘町 レシピエント卵母細胞との融合後のドナー核における再プログラミングと遺伝子発現は、再構築

胚の発生にとって重要な要素であると考えられる。最近の研究 1 で、われわれは増強緑色蛍光蛋

白(EGFP)導入細胞を用いて再構築したウシ胚発生能が、非トランスジェニック細胞を融合した場

合と同等であることを明らかにし、さらに EGFP がほとんど全ての胚盤胞期胚で認められたこと

を報告した。本研究は、EGFP 導入細胞を用いて再構築したウシ胚における遺伝子発現の開始を

調べることが目的である。pCXNeo-EGFP プラスミド[ネオマイシン耐性遺伝子含有 pCX-EGFP]2

から単離した、EGFP 遺伝子とネオマイシン耐性遺伝子を含む線形 DNA フラグメントを導入に用

いた。この遺伝子を、リポソーム法により 100 日胚由来ウシ胎児線維芽細胞にトランスフェクシ

ョンした。2 週間かけて、形質転換細胞を G418 含有培養液中から選択した。これら EGFP 発現が

見られたドナー細胞を、除核卵母細胞に注入した。細胞融合後、再構築胚を活性化するため 10 μg/ml のシクロヘキシミドで処理し、0.1%BSA 添加 mTALP 培地に移し変えた。培養 16 時間目か

ら、胚を 3%子ウシ血清添加 mTALP の小滴(50 μl)中で単独(1 胚/滴)培養した。胚の発生ステージ

および EGFP 発現を 12 時間おきに D(day)1 から D7 まで(D0:核移植日)測定した。蛍光顕微鏡によ

る直接観察により、胚における EGFP 発現を、細胞の蛍光強度に従って 3 段階(+:弱;++:中;+++:強)で評価した。再構築胚のうち 4 細胞期≦(D2)、8 細胞期≦(D3)、16 細胞期≦(D4)まで発生の進

んだ割合は、それぞれ 69%、49%、43%であった。各ステージで EGFP が発現した胚の割合は 52%、

86%、100%であった。再構築胚の 31%(57/185)が胚盤胞期へ進み、その 57 個全てにおいて、EGFP発現(++レベル以上)が認められた。これら胚盤胞期に進んだ胚において、+レベルの EGFP 発現が

1 細胞期から 32 細胞期まで、++レベルの EGFP 発現が 4 細胞期から胚盤胞期まで認められた。そ

の最大の発現率(+レベル:53%、++レベル:53%)は、8 細胞期(P<0.05)で得られた。+++レ

ベルの発現開始期は 8 細胞期から胚盤胞期にかけてであり、各集団で差は認められなかった

(6-27%)。最終段階で胚盤胞期に達した胚(BC 胚)の EGFP 発現(+レベル以上)は、胚盤胞期に達し

なかった胚(停止胚)と比較して、8 細胞期において BC 胚が 74%であったのに対して停止胚では

39%と、有意に高かった(P<0.05)。この結果より、体細胞によるウシ再構築胚の遺伝子発現は発生

初期から始まり、発現は 8 細胞期から強まると考えられる。 参考文献 1. 澤井、K.、森安、M.、平山、H.、陰山、S.、南橋、A.、岡部、M.、伊川、M.、尾上、S. (2001):『ジ

ャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ディベロップメント』増刊号 2. 伊川、M.、コミナミ、K.、ヨシムラ、Y.、田中、K.、西宗、Y.、岡部、M. (1995):『ディベロップ

メント・グロース・アンド・ディフェレンシエーション』37、455-459

90

17-15 ブタ卵子細胞周期調節因子の正常な動態に必要な核の条件に関する研究:減数分裂期における

MPF および MAP キナーゼ活性 杉浦幸二 1、内藤邦彦 1、成岡春奈 1、東條英昭 1 1 東京大学農学生命科学研究科応用動物科学専攻応用遺伝学教室、〒113-8657、東京都文京区弥生1-1-1 クローン胚は核が体細胞核と交換されているにもかかわらず、正常に卵割するようである。そこ

で、われわれは、ブタ卵子の細胞周期調節因子である MPF と MAP キナーゼが正常な動態を示す

ための核の条件について研究した。ブタ卵胞卵母細胞を除核して実験に用い 1、その MPF および

MAP キナーゼの活性を、それぞれヒストン H1 2 および MBP キナーゼの活性 3として分析した。

成熟過程のブタ卵母細胞の主な MAP キナーゼである ERK1/2 のリン酸化したものをウェスタ

ン・ブロッティング分析によって検知した。卵母細胞成熟開始時に MPF の活性化を除核したブ

タ卵母細胞中で検知したところ、そのレベルはコントロールである裸化卵母細胞と同等であった。

MAP キナーゼのリン酸化と活性化は核と紡錘体が欠如しているにもかかわらず成熟過程で誘導

され、維持された。この結果は、核に含まれる物質は卵母細胞成熟開始時点における細胞周期調

節因子の正常な動態に必要ないことを示している。また、成熟開始は G2 期から M 期への移行期

であるので、これらの結果は初期胚発生において、核のみならず G2/M 期の移行も必要がない可

能性を示している。対照的に、除核卵母細胞において、第二減数分裂期の再活性化は観察されな

かった。さらに、除核卵母細胞に、単離したばかりの卵母細胞由来卵核胞を注入すると、MPF の

再活性化が誘導された。この結果から、成熟分裂特有の動態である M1 期から M2 期への移行に、

卵核胞が必要であることが示唆される。 参考文献 1. スン、F.Z.、ムーア、R.M. (1991):『ディベロップメント』111、171-180 2. 内藤、K.、豊田、Y. (1991):『ジャーナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファーティリティ

ー』93、467-473 3. 杉浦、K.、内藤、K.、岩森、N.、鍵井、H.、後藤、S.、大橋、S.、山内、K.、東條、H. (2001):『モ

レキュラー・リプロダクション・アンド・ディベロップメント』59、215-220

91

17-16 ブタにおける単為生殖 2 倍体の発生に対するアミノ酸の効果 ングウィエン・ヴァン・スアン 1、三宅征史 1 1神戸大学大学院自然科学研究科生命科学専攻、〒657-8501、兵庫県神戸市灘区六甲台町 1-1 本研究の目的は、ブタの単為発生 2 倍体の胚盤胞期までの in vitro での発生に対するアミノ酸の影

響を研究することであった。卵母細胞、卵丘、顆粒状細胞複合体(OCGC)を 48 時間 in vitro で培養

した。成熟卵母細胞を単回パルス電気刺激(El-St; 100 μ秒、1,500 V/cm)し、5.0 μg/ml サイトカ

ラシン B で 4 時間処理した。培地は、0.5 mg/ml ヒアルロン酸を添加した Whitten's 培地を基本に

した(mWM )。実験1では、ウシ血清アルブミン(BSA)の代わりにポリビニルアルコール(PVA)0.01、0.05.0.1.0.5、1.0、5.0 mg/ml を加えた場合の、2 倍体の胚盤胞期までの発生に対する影響を調

べた。実験 2 では、2 倍体を 0.5 mg/ml PVA 添加 mWM (WMPVA)中で 0 時間、48 時間、72 時間

培養した後、さらに Eagle's Basal Medium グルタミン無添加必須アミノ酸(E-AA)存在下および

Minimum Essential Medium 非必須アミノ酸(NE- AA )の存在下で El-St 後 168 時間培養した。実験

3 では、2 倍体を E-AA または NE-AA 添加の WMPVA ではじめの 48 時間、続いて E-AA+

NE-AA(AA) 添加の WMPVA で El-St 後 168 時間まで培養した。実験4では、2 倍体を基本 E-AA、

極性 E-AA、または非極性 E-AA の存在下の WMPVA 中ではじめの 48 時間、続いて AA 添加の

WMPVA 中で El-St 後 168 時間まで培養した。全ての実験グループを 4 mg/ml BSA添加の mWM 中で培養したグループ(コントロール)と比較した。 実験 1 では、2 倍体は、0.01~5 mg/ml の PVA を添加した培地中で、胚盤胞期まで発生できた(15~53%)。0.5 mg/ml 以上の PVA を加えると、BSA と同等の胚盤胞期胚発生率が得られた(49~53%対 63%)。しかし、El-St 後 168 時間の拡張胚盤胞率に関しては、PVA 添加(11-20%)培地の全ての

胚が、BSA 添加(39%、P<0.05 )培地のものより低かった。実験 2 では、胚盤胞期および拡張胚盤

胞期まで発生した 2 倍体の割合は、48 時間後、72 時間後に AA を添加したグループとコントロ

ール(胚盤胞 57-61%、拡張胚盤胞 35-39%)より、0 時間後に AA を添加したグループで低くなった

(胚盤胞 22%、拡張胚盤胞 7%)。実験 3 および実験 4 の結果から、El-St 後のはじめの 48 時間は、

E-AA の存在、特に非極性 E-AA の存在が 2 倍体の 1 回目の分裂を阻害あるいは遅延させ、その

ほとんどが 4 細胞期で発生を停止することがわかった。 これらの結果より、ブタ単為発生 2 倍体は、PVA を含む無蛋白・無アミノ酸培地中で、胚盤胞期

まで発生できることが明らかになった。しかし、無タンパク培地中に PVA のみを含むものでは胚

盤胞拡張を促すことができなかった。4 細胞期以降(El-St の 48 時間後)の AA 添加は、胚盤胞拡張

を刺激し、胚盤胞期の細胞数を増大させた。El-St 後の始めの 48 時間に非極性 E-AA が存在する

と、ブタ単為発生 2 倍体の初期発生において、4 細胞ブロックを引き起こす。 参考文献 1. クレバヤシ、K.、三宅、M.、カタヤマ、M.、宮野、T.、加藤、S. (1996):『セリオジェノロジー』

46、1027-1036 2. ペタース、R.M.、ウェルズ、K.D. (1993):『ジャ―ナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファ

ーティリティー』48、61-73 3. マッキーナン、S.H.、クレイトン、M.K.、ベイビスター、B.D. (1995):『モレキュラー・リプロダ

クション・アンド・ディベロップメント』42、188-199 4. レーン、M.、ガードナー、D.K. (1997):『ジャ―ナル・オブ・リプロダクション・アンド・ファ

ーティリティー』109、153-164 5. スティーブス、T.E.、ガードナー、D.K. (1999):『バイオロジカル・リプロダクション』61、731-740

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17-17 核移植によって作製した黒毛和種ウシの分娩状況およびテロメア長 浦河真美 1、宇留野勝好 1、イデタアツシ 1、千代豊 2、星宏良 2、澤田登起彦 3、青柳敬人 1 1 全農 ET センター、〒080-1407、北海道河東郡上士幌町;2機能性ペプチド研究所、〒990-0823、山形

県山形市下条町;3東京女子医科大学腎臓病総合医療センター外科、〒162-0054、東京都新宿区河田町 クローン子ウシの分娩状況およびテロメア長に関する報告はほとんどなく、これらの関係の完全

な理解はできていない。本研究では、核移植によって生きて誕生した子ウシについて、その分娩

状況、組織学的検査と血液生化学的検査との関連、テロメラーゼ活性およびテロメア長を調べた。

NT グループは、ドナー細胞としてウシ胎児線維芽細胞および胚性幹細胞様細胞を用いた核移植

によって誕生した生きた子ウシ(死産を除く)からなり(n=10)、コントロールグループは、人工授精

および胚移植によって誕生した子ウシからなる(n=5)。分娩は自然分娩(NT グループ 4 頭、コント

ロールグループ 5 頭)または PGF2αによる誘発分娩(NT グループ 6 頭)であった。分娩状態として、

妊娠期間、分娩時体重、起立と吸乳の能力を調べた。主要臓器の組織学的検査と血液生化学的検

査 42 項目の関係を調べた。肺細胞から抽出した全蛋白質のテロメラーゼ活性を、

TeloChaser(TOYOBO、TLK-101)を用いて測定した。テロメア長は、心臓および肺または耳の皮下

細胞を用いて制限酵素断片により測定した。NT グループの分娩時体重は 33.1±6.8 kg(自然分娩)および 36.6±4.9 kg(誘発分娩)であった。妊娠期間は、289.0±3.6 日(自然分娩)および 297.7±10.1日(誘発分娩)であった。コントロールグループの子ウシ分娩時体重は 29.6±5.7 kg(自然分娩)、妊

娠期間は 287.0±5.4 日(自然分娩)であった。NT グループの誘発分娩群はコントロールグループと

の比較で、妊娠期間および子ウシ分娩時体重に有意な差があった (P<0.05、スチューデント-t 検定)。起立および吸乳は、NT グループおよびコントロールグループの全ての子ウシで確認された。

NT グループ誘発分娩群では、心筋の一部の組織学的変性壊死像と血中クレアチンホスホキナー

ゼ値に相関があった。コントロールブループを 100%とした時の、NT グループの相対的テロメラ

ーゼ活性は 23%から 190%とばらつきがあった。NT グループの平均テロメア長は 18-20 Kb であ

り、コントロールグループの子ウシの平均テロメア長(14-20Kb)と比較して短縮したのか伸長した

のかは、判定できなかった。これらの結果より、NT グループの自然分娩子ウシ群とコントロー

ルグループ間には、分娩状況、テロメア長とも差はないことがわかった。

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17-18 クローン牛の特徴 山田豊 1、坂口実 1、角川博哉 1、岸昌生 2、高倉良 2 1 農業技術研究機構北海道農業研究センター畜産草地部、〒062-8555、北海道札幌市;2 雪印乳業(株)受精卵移植研究所、〒059-1365、北海道苫小牧市 本研究の目的は、分割球(32 から 64 細胞期)由来クローン牛の正常性および相似性を明らかにする

ことであった。3 種類の胚由来の黒毛和種クローン子ウシ 6 頭(雌単子、雌双子および雄三つ子)を用いた。従来どおりの管理下で発育状況を調べた。分娩時および 18 ヶ月齢時の体重は、雌双

子が 37.5±5.0 kg、373.5±53.0 kg、雌単子が 32.0 kg、389.0 kg、雄三つ子が 23.0±2.7 kg、346.3±11.2 kg であった。去勢した三つ子のウシにおいて産肉成績を調べた。19 ヶ月齢から 26 ヶ月齢

にかけて肥育した。肥育の開始時と終了時の平均体重は、それぞれ 349.3±9.1 kg、535.3±17.0 kgであった。体重の変化、体高、体長、胸囲、管囲は、3 頭のウシとも非常に近い値だった。すべ

てのウシの枝肉のグレードは同じと評価され、その枝肉量は 304.3±9.0 kg であった。ロース芯面

積、皮下脂肪厚、脂肪交雑等級(BMSNo.)、肉の色沢等級(BCSNo.)、脂肪の品質等級などの枝肉形

質は同様であった。繁殖成績を若い雌ウシ 3 頭について調べた。単子雌は正常な発情行動を示し、

27 ヶ月齢で出産した。双子の未経産雌ウシは、30 ヶ月齢までまったく発情しなかった。この 2頭は PG および GnRH 投与後に人工受精により受胎させた。2 頭はそれぞれ、40 ヶ月齢および 42ヶ月齢で出産した。そのうち 1 頭は死産で、その胎子は体長が通常より長かった(体重:33.5 kg、体長:105 cm)。これらの結果より、クローン牛は発育成績および産肉成績において正常性および

類似性を示すことがわかったが、雌の繁殖成績の特徴を明らかにするには、さらなる研究が必要

である。

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17-19 培養ニワトリ胚盤葉細胞の胚盤葉キメラ生殖細胞系再構成能について 松原悠子 1、廣田あずさ 2、傍島英雄 3、大西彰 1、鏡味裕 4、田上貴寛 5、春海隆 1、 櫻井通陽 6、佐野晶子 1、内藤充 1 1農業生物資源研究所、〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2;2埼玉県立畜産センター、〒360-0100、埼玉県大里郡江南町須賀広 784;3岐阜県畜産研究所養鶏研究部、〒501-3924、岐阜県関市迫間 2672-1;4 信州大学、〒399-4598、長野県上伊那郡南箕輪村 8340;5 畜産草地研究所、〒305-0901、茨城県稲敷

郡茎崎町池の台 2;6動物衛生研究所、〒305-0856、茨城県つくば市観音台 3-1-5 トランスジェニック動物の利用は発生生物学およびバイオメディカル製品開発の研究において

大きな関心を集めている。これまで、トランスジェニック鳥作出法の開発のために多大な努力が

はらわれてきた。唯一成功したトランスジェニック鳥作出法は、ニワトリ接合子の胚盤に DNAをマイクロインジェクションする方法である。この方法によるトランスジェニック鳥の生産率は

低く、生殖系列細胞トランスジェニック鳥が得られるのは、注入した接合体の約 0.4%でしかない。

現在までに作出されたトランスジェニック鳥はすべてモザイクで、その子孫の 1%から 5%にしか

トランスフェクション遺伝子構造を伝達できない結果となっている 1。したがって、現在のとこ

ろトランスジェニック鳥の有効な作製法はないということになる。放卵直後のニワトリ胚盤葉細

胞には、レシピエント胚に注入したとき、体細胞および生殖系列細胞を再構築してキメラを作る

能力があることが知られている 2。鳥類生殖系列キメラはトランスジェニック鳥生産の最も有用

な道具である。本研究では、ニワトリ胚盤葉細胞を外来遺伝子を取り込んだ細胞のみを選択する

ために培養し、それらの細胞をレシピエント胚に注入した。ニワトリ胚盤葉細胞の明域中心部(ステージⅩ)は始原生殖細胞またはその前駆細胞を含んでいると思われる 3。明域中心部由来細胞を、

フィーダー層無しの培地中で 3 日間培養し、7 倍に増殖させた。この培養細胞は培養中 2 日から

5 日間アルカリホスファターゼ活性を示した。また、この培養ニワトリ胚盤葉細胞は抗 SSEA-I抗体とか EMA-I 抗体陽性細胞を含有していた。2 日間または 5 日間培養した横斑プリマスロック

種ドナー細胞を白色レグホン種レシピエントへ移植し、羽毛色素から判定したキメラニワトリ 3個体を得た。そのうち雄ニワトリの 1 個体が生殖系列キメラとわかった。 参考文献 1. ラブ、J.、グリビン、C.、マザー、C.、サン、H.(1994):『バイオテクノロジー』12、60-63 2. ペティート、J.N. 、クラーク、M.E,、ベリンダー・ギビンス、A.M.、エッシェス、R.J.(1990):

『ディベロップメント』108、185-189 3. 鏡味、H.、田上、T.、松原、Y.、春海、T.、ハナダ、H.、マルヤマ、K.、櫻井、M.、クワナ、T.、

内藤、M.(1997):『モレキュラー・リプロダクション・アンド・ディベロップメント』48、501-510

95

講講演演者者おおよよびび議議長長リリスストト

96

講演者および議長リスト キース H.S.キャンベル ノッティンガム大学、生物科学部、動物生理学

科、サットン・ボニントン、ローボロー、レス

ターシャー州 LE12 5RD,イギリス Tel: +44-115 951 6301, Fax: +44-115 951 6302 E-mail: [email protected] アンソニーW.S.チャン オレゴン衛生科学大学、オレゴン地区霊長類研

究センター、OR 97006、米国 Tel: +1-503-614-3714, Fax: +1-503-614-3725 E-mail: [email protected] アンドラス・ディニーズ カルパット u. 48、ブタペスト、H-1133、 ハンガリー Tel: +36-1-320-6646 E-mail: [email protected] ジョセフ・フルカ・ジュニア 動物繁殖学研究所、繁殖生物学部、私書箱 1、プ

ラテルストビ 815、CZ-104 01 プラハ 10-ユーリ

ネベス、チェコ共和国 Tel: +420(2)67710659, Fax: +420(2)67710779 E-mail: [email protected] チェーザレ・ガリ 動物繁殖技術協会(株)、繁殖工学研究所、 ヴィア・ポルチェラスコ 7f、26100 クレモナ、

イタリア Tel: +39-0372-437242, Fax: +39-0372-436133 E-mail: [email protected] クリストファーG.グルーペン ブラサジェン社、繁殖生物工学部門、私書箱 259、ランドル・マル、アデレード、SA5000、 オーストラリア Tel: +618-8303-4523, Fax: +618-8303-4099 E-mail: [email protected] ヨンマン・ハン 韓国生物科学・生物工学研究所、動物発生生物

工学研究室、ユソン、テジョン 305-600、韓国 Tel: +82-42-860-4429, Fax: +82-42-860-46 E-mail: [email protected] 橋爪一善 農業生物資源研究所、発生分化研究グループ、

〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2 Tel: +81-298-38-8633, Fax: +81-298-38-8633 または -8606 E-mail: [email protected]

平尾雄二 農業技術研究機構、東北農業研究センター、 畜産草地部、〒020-0198、岩手県盛岡市下厨川 Tel & Fax: +81-19-643-3542 E-mail: [email protected] 星宏良 機能性ペプチド研究所、〒990-0823、山形県 Tel: +81-23-646-2525, Fax: +81-23-646-2526 E-mail: [email protected] ポール・ヒッテル 王立獣医農業大学、解剖生理学部、1870 フレデ

リクスバーグ C、デンマーク Tel: +45-3528-2541, Fax: +45-3528-2547 E-mail: [email protected] 今井裕 京都大学大学院農学研究科、動物生殖生理学研

究室、〒606-8502、京都市北白川 Tel: +81-75-753-6058, Fax: +81-75-753-6329 E-mail: [email protected] 入谷明 近畿大学、先端技術研究所、〒649-6493、和歌山

県 Tel: +81-736-77-3888, Fax: +81-736-77-4754 E-mail: [email protected] 金川弘司 北海道獣医学協会、〒063-0804、北海道札幌市西

区二十四軒 4-5-9-3 Tel: +81-11-642-4826, Fax: +81-11-642-4642 E-mail: [email protected] 葛西孫三郎 高知大学、農学部、生物資源科学科、〒783-8502、高知県南国市 Tel: +81-88-864-5194, Fax: +81-88-864-5219 E-mail: [email protected] 菊地和弘 農業生物資源研究所、分化機構研究チーム、 〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2 Tel: +81-298-38-7447, Fax: +81-298-38-7408 E-mail: [email protected]

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98

河野友宏 東京農業大学、バイオサイエンス学科、 〒115-8502、東京都世田谷区 Tel & Fax: +81-3-5477-2543 E-mail: [email protected] 久保正法 動物衛生研究所、疫学研究部、病性鑑定室、 〒305-0856、茨城県つくば市観音台 3-1-5 Tel & Fax: +81-298-38-7774 E-mail: [email protected] 松崎正敏 九州沖縄農業研究センター、畜産飼料作研究部、 〒861-1192、熊本県菊池郡西合志町 Tel: +81-96-249-1002, Fax: +81-96-242-7747 E-mail: [email protected] メイサム・ミタリポーヴァ ブラサジェン社、私書箱 48027、アセンズ、 ジョージア州 30604、米国 Tel: +1-706-613-9878, Fax: +1-706-613-9879 E-mail: [email protected] 宮野隆 神戸大学、農学部、 〒657-8501、兵庫県神戸市灘区六甲台町 1-1 Tel: +81-78-803-5805, Fax: +81-78-803-5807 E-mail: [email protected] または [email protected] ジャン・モトリック チェコ・アカデミー・オブ・サイエンス、 動物生理遺伝学研究所、リベホフ、 チェコ共和国 Tel: +420-2-69-71-47, Fax: +420-206 697186 E-mail: [email protected] 永井卓 農業生物資源研究所、発生生物学研究チーム、 〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2 Tel & Fax: +81-298-38-8635 E-mail: [email protected] 長嶋比呂志 明治大学、生殖工学研究室、 〒214-8571、川崎市多摩区東三田 1-1-1 Tel & Fax: +81-44-934-7824 E-mail: [email protected]

中辻憲夫 京都大学、再生医科学研究所、 発生分化研究分野、〒606-8507、京都市 Tel: +81-75-751-3808 または-3821 Fax: +81-75-751-3890 E-mail: [email protected] 内藤充 農業生物資源研究所、発生生物学研究チーム、 〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2 Tel: +81-298-38-8622, Fax: +81-298-38-8606 E-mail: [email protected] ハイナー・ニーマン 畜産動物行動学研究所(FAL)、生物工学科、 マリエンゼー、ノイツタット 31535、ドイツ Tel: +49-5034-871-148, Fax: +49-5034-871-101 E-mail: [email protected] 野瀬俊明 三菱化学生命科学研究所、 〒194-8511、東京都町田市南大谷 11 Tel: +81-42-724-6246, Fax: +81-42-724-6314 E-mail: [email protected] 大西彰 農業生物資源研究所、発生生物学研究チーム、 〒305-8602、茨城県つくば市観音台 2-1-2 Tel & Fax: +81-298-38-8635 E-mail: [email protected] ジャンポール・ルナール 国立農業研究所、発生生物学部門、78352、 ジュイ・オン・ジョサ、フランス Tel: +33-1-34-65-25-94, Fax: +33-1-34-65-26-77 E-mail: [email protected] ヘレン・サング ロスリン研究所、遺伝子発現・発生科 ロスリン、ミッドロジアン、EH25 9PS、 イギリス Tel: +44-(0)131-527-4234/4200, Fax: +44-(0)131 440 0434 E-mail: [email protected] 佐藤英明 東北大学大学院農学研究科、動物生殖学教室、 〒981-8555、仙台市青葉区堤通雨宮町 1-1 Tel: +81-22-717-8685, Fax: +81-22-717-8879 E-mail: [email protected]

ファンジェン・スン 中国科学アカデミー、発生生物学研究所、 北京 100080、中国 Tel & Fax: +86-10-62645835 E-mail: [email protected] 高橋清也 畜産草地研究所、家畜育種繁殖部、 〒305-0901、茨城県稲敷郡茎崎町池の台 2 Tel: +81-298-38-7382, Fax: +81-298-38-7383 E-mail: [email protected] 豊田裕 〒321-4539 栃木県二ノ宮町長沼 1066-1 Tel & Fax: +81-285-74-3172 E-mail: [email protected] 角田幸雄 近畿大学、農学部、家畜繁殖学研究室、 〒631-8505、奈良市中町 3327-204 Tel: +81-742-43-1511(ex.3112) Fax: +81-742-43-1155 E-mail: [email protected] グザビエ・ヴィニョン INRA(国立農業研究所)発生生物学・生物工学部

門、 78350、ジュイ・オン・ジョサ、フランス Tel: +33 (1) 34 65 25 59, Fax: +33 (1) 34 65 26 77 E-mail: [email protected] 若山照彦 アドバンスト・セル・テクノロジー、1 イノベイ

ション通り、 ウスター、マサチューセッツ州 01605、米国 Tel: +1 (508) 756-1212, Fax: +1 (508) 756-4468 E-mail: [email protected] ウェイホア・ワン IVF 研究所、生殖医学不妊部門、ロードアイラン

ド婦人小児病院、ブラウン大学医学部、プロヴ

ィデンス、ロードアイランド州;ニューイング

ランド医科センター、タフツ大学医学部、ボス

トン、マサチューセッツ州、米国 Tel: +1-401-274-1122 内線 7170 Fax: +1-401-453-7598 E-mail: [email protected] イアン・ウィルムート ロスリン研究所、遺伝子発現・発生科、ロスリ

ン、EH9 25PS、スコットランド、イギリス Tel: +44-131-527-4219, Fax: +44-131-440-0434 E-mail: [email protected]

吉岡耕治 動物衛生研究所、生産病研究部、臨床繁殖研究

室、〒305-0856、茨城県つくば市観音台 Tel: +81-298-38-7786, Fax: +81-298-38-7880 E-mail: [email protected] ローレイン・ヤング ノッティンガム大学、人間発達学部、クイーン

ズ医療センター、ノッティンガム、NG72UH、 イギリス E-mail: [email protected]

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ポスター発表者 (連絡先となる著者を含む) 赤木悟史 E-mail: [email protected] 有富静 E-mail: [email protected] 浅田正嗣 E-mail: [email protected] インジョン・ビン E-mail: [email protected] 堂地修 E-mail: [email protected] 淵之上康平 E-mail: [email protected] 福井豊 E-mail: [email protected] クリストファーG.グルーペン E-mail: [email protected] 張山綾子 E-mail: [email protected] 橋本周 E-mail: [email protected] 細江実佐 E-mail: [email protected] 細井美彦 E-mail: [email protected] ウースク・ファン E-mail: [email protected] 池田幸司 E-mail: [email protected] 金山佳奈子 E-mail: [email protected] 柏崎直巳 E-mail: [email protected] カタヤマケイ E-mail: [email protected] 川原学 E-mail: [email protected]

菊地和弘 E-mail: [email protected] テーヨン・キム E-mail: [email protected] 黒目麻由子 E-mail: [email protected] 黒坂哲 E-mail: [email protected] ガプサン・リー E-mail: [email protected] 松原悠子 E-mail: [email protected] セルゲイ・メドヴェデフ E-mail: [email protected] 長嶋比呂志 E-mail: [email protected] 内藤邦彦 E-mail: [email protected] 中野實 E-mail: [email protected] ビョルン・オーバック E-mail: [email protected] 大越勝広 E-mail: [email protected] 岡田幸之助 E-mail: [email protected] パスカル・シャバットパルメ E-mail: [email protected] ジョンイム・パク E-mail: [email protected] 斉藤則夫 E-mail: [email protected] 猿渡敬志 E-mail: [email protected] 佐々田比呂志 E-mail: [email protected] 佐藤真澄 E-mail: [email protected]

100

澤井健 E-mail: [email protected] 千本正一郎 E-mail: [email protected] 杉浦幸二 E-mail: [email protected] 武田久美子 E-mail: [email protected] ングィエン・ヴァン・シュアン E-mail: [email protected] 馬越純子 E-mail: [email protected] 浦河真美 E-mail: [email protected] 山口亮 E-mail: [email protected] シャオピン・ウェン E-mail: [email protected] デビッド・ウェルズ E-mail: [email protected] 山田豊 E-mail: [email protected] 吉田光敏 E-mail: [email protected]

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2001 年 10 月 編集

永井卓(NIAS) 菊地和弘(NIAS) 淵本大一郎(NIAS) 吉岡耕治(NIAH)

発行

国立農業生物資源研究所(NIAS) 〒305-8602 茨城県つくば市観音台 2-1-2

国立畜産草地研究所(NILGS) 〒305-0901 茨城県稲敷郡茎崎町池の台 2

ISBN4-931511-06-6