フィリピン人epa介護福祉士候補者受入事例 · 中級から学ぶ日本語(研究社)...

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1 フィリピン EPA介護福祉士候補者受入事例 社会福祉法人 芳香会 2018年10月4日(木) フィリピン人介護福祉士候補者受入機関向け就労前説明会 光洋スクエア 社会福祉法人 芳香会 青嵐荘ケア・アシスタンス 外国人受入担当 事務員 川島 裕介

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フィリピン人EPA介護福祉士候補者受入事例

社会福祉法人 芳香会

2018年10月4日(木)

フィリピン人介護福祉士候補者受入機関向け就労前説明会

光洋スクエア

社会福祉法人 芳香会

青嵐荘ケア・アシスタンス

外国人受入担当 事務員 川島 裕介

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所在地 茨城県古河市上大野698

開設 1970年12月

理事長 宇留野 光子

職員数 約500名

施設 高齢 入所 3施設

障害 入所 4施設

児童 保育園 2施設 計9施設

その他在宅事業 多数を運営

社会福祉法人芳香会 について

社会福祉法人 芳香会

候補者配属先施設について名称 介護老人保健施設 青嵐荘ケア・アシスタンス

所在地 茨城県古河市上大野703-1

開設 1991年6月

定員 70名

職員数 常勤換算数50.1名

うち、介護職員が37.3名

(3名がEPA介護福祉士&候補者)

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受入れの目的

国際貢献から共生共存へ・・・

福祉施設では外国人と共に働くという考えがあまりありませんでした。当法人でもEPA介護福祉士候補者の受入当初は、国際貢献を第一目標とし、将来の人材確保のノウハウ作りの為に実施していました。

その後、近年の国際状況の変化や日本人労働者の減少等により、職場に限らずに外国人の方と共生をするということが当たり前となってきています。

EPA介護福祉士候補者をはじめとする外国人労働者の受入に

よって、従来の持っている日本人としての価値観と異なる新たな価値観を職員自身に学んでもらい、また、外国人労働者にも「日本を理解し、日本と日本人を好きになって貰いたい」と考えています。

社会福祉法人 芳香会

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EPA介護福祉士候補者の受入履歴

社会福祉法人 芳香会

EPA候補者 配属先 合否 その後

2010年 フィリピン・女性・2名特養

(高齢者施設)

1名 合格1名不合格

2名とも母国に帰国

2012年 フィリピン・女性・2名 障害者施設2名不合格

2名とも母国に帰国

2014年 フィリピン・女性・2名ケア・アシスタンス

(高齢者施設)

2名合格

現在も勤務中

2015年 ベトナム・女性・2名特養

(高齢者施設)

国家試験受験

2016年 フィリピン・男性・2名 障害者施設

2017年 フィリピン・女性・1名ケア・アシスタンス

(高齢者施設)

・・

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フィリピン人の特性

社会福祉法人 芳香会

国際厚生事業団の「人材マネジメント手引き」より

‣多くは敬虔なカトリック教徒

‣明るく開放的なコミュニケーション(フィリピーノホスピタリティ)

‣対人・社会関係での柔軟性の高さ

‣公私の境界線のあいまいさ

‣円滑な人間関係を重視する

‣上下関係を重視する

➡個人差が大きい

マイナス面あり

➡甘え上手(怠ける)

あいまいな返事

言われないとやらない

お金にシビア etc.

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2014年12月

引越し・施設勤務の開始・・・ポイント①

施設内研修・生活研修・・・ポイント②

2015年 1月

現場業務の開始

週に1回の日本語授業開始

・・・ポイント③

2015年12月早番・遅番勤務の開始

2016年 5月夜勤の開始 ➡ 業務面では習得完了

社会福祉法人 芳香会

2014年候補者 受入時の流れ

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ポイント① 受入の準備

居住する場所の準備

➡アパートを法人名義で賃貸している。家賃は、本人に住宅手当

として支給と同時に控除し、施設から支払をしている。

※求人票で記載していたとしても、改めて説明した方が良い

場所の選定

➡スーパーやコンビニ、銀行・郵便局へのアクセスがしやすい

場所=生活がしやすい場所を考える。

※生活が上手くいかなければモチベーションに大きく影響する。

職員側の理解

➡EPAという制度への理解やフィリピン人の特性を知らせる。

※背景への理解が浸透するまでに時間がかかる。社会福祉法人 芳香会

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ポイント② 生活への支援

その地域で生活するためのルールの学習

➡横浜市とゴミの捨て方やバスの乗り方等が異なる。

※入職後、足りない家具等の購入や入職時の研修とあわせて

2-3週間かけて学習していく。

相談役をつくる

➡仕事面での育成役のほかに、プライベートで困ったことを相談

できる相手を見つける。

※精神的なサポートとなる。

先輩EPAと接する時間を増やすこともホームシック対策となる。

事細かに指示・説明をする

➡文化や習慣の違いを乗り越えるために、根拠や理由を伝える。

※わかりやすい日本語を使い、順序立てて説明する。

本人の納得感を得る。 社会福祉法人 芳香会

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受入当初のスケジュール

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ポイント③ 国家試験に向けた学習

これまでのEPA介護福祉士候補者の受入経験から、

課題となるのは次の3点

社会福祉法人 芳香会

その1.日本語能力の基礎の重要性

その2.自主学習の習慣づけ

その3.国家試験までのモチベーションの維持

☆重要☆

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社会福祉法人 芳香会

課題その1.日本語能力の基礎の重要性<日本語の教え方>職員には、受験対策に必要な日本語を指導する能力はない。=会話なら問題なくこなせるが、問題を解くことが出来ない。

=日本語を「聴く・話すこと」と「文を読解すること」は違う能力

=国家試験の文章を読み解くためには、日本語能力の基礎が重要

➡やはり日本語教育の専門家による指導が効果的。※EPA受入にあたって、日本語教育の専門家を紹介いただいたことをきっかけに、現在では日本語学校の講師を非常勤職員として3名雇用中。

EPA候補者に週1回の授業を実施している。

∴ 「日常会話の向上は職員等とのコミュニケーション」「受験対策には専門家の指導」と両立して行っていく。

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社会福祉法人 芳香会

課題その1.日本語能力の基礎の重要性

<国家試験対策を始める時期を計画する>

前述より、国家試験の問題を解くには日本語能力の基礎が重要。また、長期間 国家試験の勉強のみに集中すると「中だるみ」する。

➡国家試験対策に入る前に、日本語能力試験2級を目指す。

2014年12月 A:JLPT N3 合格2015年 7月 B:JLPT N3 合格2015年12月 2名とも:JLPT N2 不合格2016年 7月 2名とも:JLPT N2 不合格2016年 12月 A:JLPT N2 合格

B:JLPT N2 不合格 ※あと一歩

➡2名とも JLPT N2のレベルに達したとみなし、

2017年 1月から国家試験対策へ移行。

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社会福祉法人 芳香会

課題その2.自主学習の習慣づけ

<日本語講師による授業>

入職翌月より、日本語教育の専門講師による授業を週に1回、2時間で2年間 実施。

「目的」

日本語によるコミュニケーション能力の向上モチベーション・緊張感の維持文法・読解・聴解の教育

+候補者へ宿題を出してもらう事によって、自宅や自習時間での自主学習を習慣づける

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社会福祉法人 芳香会

課題その2.自主学習の習慣づけ

<自主学習時間の確保>

2014年12月(入職月)から、

勤務時間内に1時間の自主学習時間を確保➡自主学習の習慣づけを狙う

2016年12月から、

勤務時間内の自主学習時間を2時間に増加➡国家試験の課目学習を行う

2017年 6月から、

勤務時間内の自主学習時間を4時間に増加➡残り約半年で国家試験へのラストスパート

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社会福祉法人 芳香会

課題その2.自主学習の習慣づけ

<苦手科目の共通認識>

国家試験の過去問題・模擬問題を繰り返し学習し、成績をグラフ化➡苦手科目・得意科目を共通認識お互いの得意な科目を教えあう体制作り

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29.01 29.05 29.06 29.07 29.07-2 29.08 29.09 29.10. 29.11. 29.12. 29.12.-2 国家試験

国家試験 模擬問題・過去問題 点数履歴

伸び悩み時期

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社会福祉法人 芳香会

課題その2.自主学習の習慣づけ

<国家試験対策講師の授業>

2017年8-9月に成績が伸び悩む・・・

国家試験対策の非常勤講師による授業を月に2回実施。

※日本語教師の資格をもつ、看護・介護を学ぶ筑波大学 大学院生

非常に幸運な出会いでした。

<切っ掛け>筑波大学院での研究の一環として、特別養護老人ホームのEPA候補者へアンケート調査。➡会話の流れの中で「日本語教師の経験」と「看護・介護の知識」があると伺う。➡EPA候補者へ国家試験対策の指導をしてほしいと依頼。

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社会福祉法人 芳香会

課題その2.自主学習の習慣づけ

参考①JLPT分野の使用テキスト中級から学ぶ日本語(研究社)

漢字日本語マスターN2(三修社)

新日本語の中級(スリーエーネットワーク)

日本語総まとめ(アスク出版)

その他講師オリジナル問題 etc.

参考②国家試験分野の使用テキスト模擬問題集(中央法規)

過去問解説集(中央法規)

介護福祉士国試ナビ(中央法規)

介護福祉士完全予想模試(成美堂出版)

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社会福祉法人 芳香会

課題その3.国家試験までのモチベーションの維持

<職場でのコミュニケーション>

日本語での会話能力向上は、日本語でのコミュニケーションが必要。=職場での人間関係が重要。

委員会体制をとり、介護職員1名をEPA候補生のサポート担当。

+生活のサポートを同性の相談員・ケアマネが行っている。

プライベートの充実がモチベーションの維持へ

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社会福祉法人 芳香会

課題その3.国家試験までのモチベーションの維持

<積極的な施設内行事や地域の行事への参加>

職員として・地域の一員としての意識を得る。

➡ホームシックの防止

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社会福祉法人 芳香会

課題その3.国家試験までのモチベーションの維持

<候補者の家族との交流>exp.日本に家族が居る場合、施設を見学してもらう。exp.母国を訪れた際に、一緒に食事会を行う。

➡家族とのコミュニケーションと介護の仕事への理解

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<施設の労働力として>当初は「国際貢献」の一環として受入を行っていたが、外国人だからといって、日本人職員と能力にほとんど遜色はない。➡介護人材の不足する現状に十分期待できる。<日本人職員の意識変化>➡候補生達の語学の堪能さ・日本語で国家試験受験に挑む姿から、「日本人も頑張らなくてはいけない」と前向きな意見が多い。

<日本語の教え方>職員には、受験対策に必要な日本語を指導する能力は少ない。➡日本語教育の専門家による指導が効果的。※日本語教育・国家試験対策の非常勤講師4名を雇用中。

➡日本語自体の能力向上は、日常のコミュニケーションが重要。<受入体制の変化>➡日本人職員側から外国人職員が「何に困っているか」、「何が分かりにくいか」を事前に考えるようになった。

➡省略言葉等が減り、わかりやすい日本語を使うようになった。

受入をして感じたこと・変わったこと

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