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ガーナ 西アフリカの期待の国・ガーナの 投資機会と課題 次代の投資先として世界から注目され ているアフリカの星、ガーナについて、 その魅力と課題を概観する 201761号館 プレゼンテイター:清水敬之 JICA専門家(投資促進アドバイザープロフィール 1 清水敬之 製造業勤務39年の後、2004年3月に独立し、コンサルタント業を開始。中小 企業診断士、内部統制評価者等資格を有する。 企業での国内外での活動の経験を活かして中小企業の経営改善、人材育 成、マーケティング・販売、地域開発、創業など幅広くコンサルタント活動を実 施している。 海外では、JICA専門家として、ラオス、東ティモール、バングラデシュなどの 政府機関の投資環境の整備や投資促進活動の支援、助言活動を実施してき た。 2016年2月より、JICAアフリカ地域投資促進支援業務のガーナ投資促進ア ドバイザーとしてガーナ投資促進センター(GIPC)で技術協力に従事し、GIPC 職員とともに投資関連法・制度、投資環境についての情報収集や投資促進に 向けた技術移転を行った。活動の中では、職員の能力向上支援のため、コー トジボワールおよびマレーシアの投資環境視察・調査を実施・指導した。また 「ガーナ投資ガイド」は本専門家派遣での活動の成果である。

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Page 1: プロフィール - JICA · 投資機会と課題 次代の投資先として世界から注目され ているアフリカの星、ガーナについて、 その魅力と課題を概観する

ガーナ西アフリカの期待の国・ガーナの

投資機会と課題

次代の投資先として世界から注目されているアフリカの星、ガーナについて、その魅力と課題を概観する

2017年6月1日号館プレゼンテイター:清水敬之

JICA専門家(投資促進アドバイザー)

プロフィール

1

清水敬之

製造業勤務39年の後、2004年3月に独立し、コンサルタント業を開始。中小企業診断士、内部統制評価者等資格を有する。企業での国内外での活動の経験を活かして中小企業の経営改善、人材育

成、マーケティング・販売、地域開発、創業など幅広くコンサルタント活動を実施している。海外では、JICA専門家として、ラオス、東ティモール、バングラデシュなどの

政府機関の投資環境の整備や投資促進活動の支援、助言活動を実施してきた。2016年2月より、JICAアフリカ地域投資促進支援業務のガーナ投資促進ア

ドバイザーとしてガーナ投資促進センター(GIPC)で技術協力に従事し、GIPC職員とともに投資関連法・制度、投資環境についての情報収集や投資促進に向けた技術移転を行った。活動の中では、職員の能力向上支援のため、コートジボワールおよびマレーシアの投資環境視察・調査を実施・指導した。また「ガーナ投資ガイド」は本専門家派遣での活動の成果である。

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はじめに

• 次の投資先としてアフリカが注目を浴びている

• その中でもガーナは注目を集めている国である

• なぜ、今、ガーナなのか?

• ガーナの投資先としての魅力は何で、課題は何なのか?

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目次

1.ガーナの基本情報

2.ガーナの魅力

3.投資環境の課題

4.参考資料

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1.ガーナの基本情報

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ガーナの基本情報

国・地域名 Republic of Ghana

面積 238,535平方キロ(日本の面積の約3分の2)

人口2,741万人(国連:2015年)年平均人口増加率:2.5%(2000‐2010年)

首都アクラ人口:227万人(統計局推定値:2015年)

公用語 英語

宗教 キリスト教(82%)、イスラム教(9%)、その他

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ガーナは、アフリカ大陸の大西洋沿岸に位置し、海岸線は全長540キロ。

東のトーゴ、西のコートジボワール、北のブルキナファソと国境を接する西アフリカへのゲートウェイとして西アフリカ、更にヨーロッパ、アメリカ大陸へのアクセスが容易な位置にある。

出典:JICAプロジェクトチーム6

2010 2011 2012 2013 2014 2015

GDP推移

名目GDP(百万米ドル)

32,174 39,565 41,939 47,806 37,418 37,156

1人当たり名目GDP(米ドル)

1,323 1,587 1,642 1,827 1,397 1,356

実質GDP成長率(%)

7.9 14.0 9.3 7.3 4.0 3.9

資料: GLOBAL NOTE 出典: 国連(2017年)

・ガーナは過去20年間に急成長し、2002年から2011年まで約6.8%の年平均成長率を維持した。・その後、経済成長は2011年をピークに鈍化した。

・成長鈍化の問題は、主に外貨建て債務に頼っていた財政不均衡、公共部門賃金の支払い、エネルギー補助金、選挙関連支出であった。・国際通貨基金(IMF)のプログラムに基づく財政再建の実施により、2015年には赤字額が一桁に戻り、今後さらに均衡状態を取り戻してゆくものと予想される。

GDP推移および成長率

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29.8    25.3     22.9     22.4     21.5     20.3    19.1    

25.6     28.0     27.8     26.6     25.3    

51.1    49.1     49.1     49.8     51.9     54.4    

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

2010 2011 2012 2013 2014 2015

構成

比(%)

年度

農業 製造業 サービス

年間GDPを構成する主な経済部門は農業、製造業、サービスである。GDPの構成比という観点からは、2015年の年間GDPでサービス部門が

高(54.4%)、次いで製造業部門(25.3%)、農業部門(20.3%)である。

出所:Ghana Statistical Service (2016). Gross Domestic Products.

GDPの経済部門構成

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2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 主要品目

輸出額 7,960 12,785 13,552 13,752 13,217 10,321 11,283金、石油、カカオ豆・製品、木材

輸入額 10,922 15,838 17,763 17,600 14,600 13,465 13,352機械類、石油、食料品

差引(貿易収支)

‐2,962 ‐3,052 ‐4,211 ‐3,848 ‐1,383 ‐3,144 ‐2,068

単位:百万米ドル

資料: GLOBAL NOTE 出典: UNCTAD(2017年4月25日更新)

ガーナ経済は農業・鉱業等に依存する一次産品依存型の経済であり、主要輸出品も鉱産物やカカオ豆が上位を占めており、国際市況及び天候の影響を受けやすい。

貿易収支

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2.ガーナの魅力

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・経済規模は、ECOWAS諸国中ではナイジェリアに次いで第2位で

あり、安定的に経済成長を続けており、所得上昇により消費市場が拡大している。

・ 一人当たりGDPが毎年成長を続けている

・ 実質GDP・民間 終消費支出成長率

2000 2005 2010 2015

実質GDP成長率(%) 4.21 6.20 7.90 3.88

一人当たり名目GDP(US$) 424 804 1,323 1,356

2000 2005 2010 2015

実質GDP・民間 終消費支出成長率(%)

‐11.41 7.41 5.60 ‐2.51

(注) 2010年から2015年の間は単純平均で年率4.8%の成長であった。

ガーナの魅力(1)

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・労働力は豊富で、単純工であれば雇用は比較的容易である。但し、雇用タイプ、地域により、平均賃金に大きな差があることに留意する必要がある。

雇用タイプ平均報酬

GH¢ /日 US$/日不熟練労働者(例:農地の監督、農作物農地の労働者、遠洋漁船の乗組員など)

7.00*  低賃金

1.84

単純熟練労働者(例:穀物製粉業者、パン屋、布の織工、ミシン操作者)

7.00*  低賃金

1.84

高度熟練労働者(例:事務職員、手組み製版工、機械製版工、印刷工)

101.29 26.59

建設労働者(例:建築電気工、配管工、レンガ積み職人など) 144.40 37.90

高水準管理職(例:政府行政官) 212.00 55.64

出所:ILO(2015)を編集。www.ghana.gov.gh注 : 2015年12月の為替レート:US$ 1 = GH¢ 3.81

ガーナの魅力(2)

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日本人にとって、働きやすい社会環境の国である・ 英語が公用語であり、英語が通じる

・ ガーナ人は、概して人柄が穏やかである

• 治安が比較的良く、テロ発生もなく、安定している(テロへの警戒は強化されているが、日常の不安感はない。)

• 政治的にも比較的安定していて、選挙結果による政権交代がスムーズに行われている

(本年1月に新政権に移行。新政権は特に経済の浮揚に力を

入れており、産業界に経済成長の期待感が出始めている)

・ 携帯電話の普及、スーパーでの食品のバラエティなど、主要都

市での生活は比較的便利である。

ガーナの魅力(3)

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ガーナの魅力(4)西アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸へのアクセスが容易

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3.投資環境の課題

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課題 現状 改善見込みなど

道路 アクラ市内の主要道路や幹線道路は、道幅・路面状況も良いが、少し郊外に出ると旧舗装道路のメンテナ

ンスが行われていないため、穴だらけで、でこぼこ道になっている。そのため、工場や農場からの物資・商品の物流のネックになっている。

西アフリカにおける物流インフラ整備のため、JICA の協力のもと、西アフリカ成長リング

回廊のマスタープラン策定が行われている。主幹線道路、

既存道路の改修も計画され徐々に実施されている。

工業用地 ガーナの土地登記制度は整備の途上であり、権利関係が明確になっていない場合もある。土地所有は借地契約のみで、所有権を得ることはできない。

ガーナ政府では、インフラを整備した工業用地の確保を目指し、フリーゾーンの設置を進めている。

フリーゾーン内での土地確保のほか、GIPCのLand Bankの

情報の活用などの選択肢がある。

なお、ガーナの土地・農地に関しては、JICAが詳細な調査

を行っており、近く報告書が完成,公開の予定である。

投資環境の課題(1)インフラ

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参考:フリーゾーン

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• フリーゾーンは、製品の70%以上を輸出することを条件に、資機材の免税輸入や10年間の法人税免税などの税制優遇や、その他の非税制優遇を受けることができる制度。

• フリーゾーンは単一工場が認可を受けることもできるが、政府が土地の取得とインフラ整備を進めるゾーンがある。初のゾーンはアクラ近郊のテマにある輸出加工区。

• 政府が開発を進めるゾーンは右記の通り。

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課題 現状 改善見込みなど

電力 2016 年末時点では、ほぼ需給のバランスが取れている。今後の経済成長を考慮すれば、発電能力のさらなる増加が必要。

再生エネルギーの投資促進奨励など。さらに、PPPスキームで

の発電所建設など、電力増産が必要。

投資環境の課題(2)電力

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ガーナ ヨハネスブルク ラゴス

使用料金(USD/kWh)

0.27 0.07 0.15

基本料金(USD) 2.77 17 ー

注:いずれも一般用電力料金で、ガーナは180kWh以上、ヨハネスブルクは600kWh以下、ラゴスは高電圧の場合。US$1=GH¢3.81。出所:ガーナ:GIPCウェブサイト、ヨハネスブルク、ラゴス:JETRO

参考:電力料金

課題 現状 改善見込みなど

投資法、税制 法・制度間の整合性など、運用面に曖昧さがある。

GIPCが投資家の疑問点などの相談に対応している。

手続き 諸申請手続きのスピードが欠けている。

• 会社設立と納税者番号取得は一箇所で対応するなど、合理化を進めているプロセスもある。

• GIPCは、会社設立や労働許可手続きなどをGIPCに集約させたOne Stop Serviceの具体策を検討している。

省庁間連携 部分的には行われているが、十分でない。

投資環境の課題(3)法制度、手続き

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• 税収不足で、短期的には外貨不足である。

• 輸入代金、配当の対外送金については、外貨確保のため銀行との事前連絡が必要である。

投資環境の課題(4)

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• 一般労働者は集めやすいが、管理者層及び技術者が不足している。

• また、事業パートナーとなりうる経営能力のある投資家・企業が少ない。

(現地企業には、資金以外の協力(政府との交渉など)が期待できる。)

これらの課題解決のため、政府は教育に力を入れている。

投資環境の課題(5)人材の課題

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以上、投資環境の課題をお話ししましたが、

それぞれの課題に対して政府は対策を進めており、日本も支援活動を続けています。

本年1月から政権が交代しましたが、新政権は特に経済に注力しております。

多くの課題があるとは言え、英語を日常に使用している労働力、豊かな資源、政治・治安の安定、国内消費市場の成長など、今後に期待できます。

終わりに

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4.参考資料

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1.市場はどこか?お客様はだれか?ガーナ国内需要、西アフリカ、ヨーロッパ、アメリカなど

2.何を狙うのか?

プロジェクトの受注か、商品の販売先か、原材料・資源の調達か、製品の生産か

*ガーナは従来、資源、農産物の輸出国であったが、

単なる資源輸出から、資源を利用した加工・製造品輸出を経済の長期目標とする方針にシフトしている

*西アフリカや欧米市場への輸出拠点としての活用

*ガーナの強みを生かす商品

*ガーナ(アフリカ)市場に合う商品

進出の留意点

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手続きフロー 関係省庁 発給される証明書など

①事業の法人登録 登記官局(RGD) 1.法人設立証明書2.事業開始証明書

② 会社登録 ガーナ投資促進センター(GIPC)

GIPC登記証明書

③ 納税者登録 ガーナ歳入庁(GRA)

1.納税者番号(TIN)2.TIN証明書3.VAT証明書(該当する場

合)

④部門別所管官庁への登録

(右記の他にもガーナ官公庁など、事業により担当部門に登録する必要がある)

鉱物委員会 試掘ライセンス

石油委員会 鉱区ライセンス

ガーナフリーゾーン理事会

GFZBライセンス

⑤環境規制への適合(製造業・一般建設業)

環境保護庁(EPA) 環境証明書

(注) ガーナ投資ガイド P.34

会社設立手続き

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