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石川洋一 (JAMSTEC地球情報研究センター) RECCA淡路課題 インクリメンタル4DVAR手法を利用した 海洋ダウンスケーリングモデルについて

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Page 1: インクリメンタル4DVAR手法を利用した 海洋ダウンスケーリングモデルについて · アカイカHSIマップ. daily HSI分布図 (2006年1/1-2/28) は標本船の操業位置

石川洋一 (JAMSTEC地球情報研究センター)

RECCA淡路課題

インクリメンタル4DVAR手法を利用した 海洋ダウンスケーリングモデルについて

Page 2: インクリメンタル4DVAR手法を利用した 海洋ダウンスケーリングモデルについて · アカイカHSIマップ. daily HSI分布図 (2006年1/1-2/28) は標本船の操業位置

地球温暖化による気候変動等に伴う生物激変に適応した漁業の実現には、海洋物理場から生態系にわたる海洋環境の診断・予測や漁場分布変化と水産資源量変動の適切な把握が必要です。本研究では、ダウンスケーリング及び大気・海洋・生態系データ同化システムを開発するともに、気候変動に適応した漁海況情報に基づく新しい漁業モデルの確立に資するため、青森県が漁獲高日本一を誇るアカイカを対象に開発システムにより得られたデータを利活用し、中長期変動影響下におけるピンポイント短期漁場探索技術の開発及び中期水産資源変動推定手法の開発を行います。

地球温暖化による気候変動に伴う水産資源及び海況変動の適応策立案に必要となるダウンスケーリング及び大気・海洋・生態系データ同化システムの開発を行います。また、開発したシステムを活用し、アカイカを対象とした漁場探索技術及び水産資源変動推定の手法開発を行います。

気候変動に伴う水産資源・海況変動予測技術の革新と実利用化 淡路 敏之 (海洋研究開発機構)

共同研究参画機関: 青森県産業技術センター、水産総合研究センター、京都大学、北海道大学 協力連携機関: (株)環境シミュレーション研究所

実施体制

対象地域 青森県北太平洋沖合域

DIAS・革新データ等を利用して食料の安定供給のための水産資源の確保、効率的かつ環境負荷の小さい「持続可能な漁業」の推進に貢献

青森県北太平洋沖合の漁業

研究テーマ1: ピンポイント短期漁場探索 研究テーマ2: 中期水産資源変動推定手法

気候変動に適応した漁海況情報に基づく新しい漁業モデルを確立

アカイカに適用

•高分解能海洋ダウンスケーリングシミュレーション 技術の開発 -漁場探索・分布の推定に必要となる渦を解像、 予報時間の規模は数日程度 •現状の漁場探索法である好適生息域推定モデル (HSIモデル)の拡充・高度化 •気候変動影響下における対象魚種の漁場探索及 び分布変化の推定 -技術開発の成果と予測データを利活用 •シミュレーション結果の可視化手法及び利用者が 使いやすい配信技術の開発 -地域での実利用に向けた取り組み

ピンポイント短期漁場探索技術の開発

•統合データ同化システムの開発 -水産資源変動予測の不確実性の低減を図る ため、多種多様なデータを融合 -対象は大気・海洋・低次生態系 •資源変動モデル(多変量統計モデル)の開発 -同化システムで得られた海洋環境場情報をもとに中期水産資源変動を推定 •対象魚種の水産資源変動のシミュレーション -技術開発成果を利活用 •長期気候変動影響下での水産資源変動を推定 -予測データに資源変動モデルを適用

中期水産資源変動推定手法の確立

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アカイカHSIマップ

daily HSI分布図 (2006年1/1-2/28)

○は標本船の操業位置

2006年1/1-10

2006年2/1-10

高気圧性渦の南下に伴う標本船の操業位置の移動がよく再現されている。

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漁船への情報配信システム

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鉛直分布・時系列表示

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漁船での利用

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ピンポイント短期漁場探索 データ同化手法を応用した新しいダウンスケーリング手法の開発

リモートセンシングデータ、データ同化プロダクトを利用した漁場探索モデルの開発

ユーザーフレンドリーな可視化システムの開発

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はじめに 渦許容海洋大循環モデルをもちいた4DVARデータ同化システム (Ishikawa et al., 2009)

西岸境界流、中規模渦などの再現に成功しており、初期条件を制御変数として約1ヶ月の同化ウィンドウで解析値を作成している。

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はじめに 渦許容海洋大循環モデル(分解能1/6x1/8) 計算機資源の制約 観測データの制約

分解能は必ずしも十分ではない 中規模渦の詳細な変動:渦の切離、変形等 対馬海峡、津軽海峡等の狭い海峡とそこを流れる強流帯

より高分解能のプロダクトが欲しい ダウンスケーリングが有効!

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はじめに ダウンスケーリングアプローチはデータ同化プロダクトから高分解能データセットを作成する強力な手法 現実的な初期・境界条件で駆動された高分解能モデル

しかし、一般にはダウンスケーリングの結果が観測データと近い保証はない 物理プロセス、パラメタリゼーション、地形の違い等の原因により、ダウンスケーリングによってバイアスが生じる可能性がある

本研究では現実的な高分解能データセットを得るために、データ同化とネスティングモデルを統合したダウンスケーリングシステムを構築する

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海洋大循環モデル

σ-z hybrid vertical coordinate

Takano-Onishi scheme (Ishizaki and Motoi, 1999) Equation of Motion

Equation of Tracer Mixed layer sheme based on turbulence closure(Noh, 2005) Isopycnal diffusion and eddy parameterization

(Gent and McWillams, 1990; Griffies, 1998) 3rd-Order advection scheme (Hasumi, 2000)

OGCM & data assimilation system is based on Ishikawa et al., 2009.

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Configuration of system

1/6x1/8 deg. Parent model

1/18x1/24 deg child model

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観測データ

•海面水温:OSTIA (Operational Sea Surface Temperature and Sea Ice Analysis) by NCOF, 1/20deg.

•海面高度: Ssalto/Ducacus grided absolute dynamic topography by AVISO, 1/3 deg.

•海洋内部データ: GTSPP (global temperature-salinity profile program) XBT and CTD data by NOAA/NODC.

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Variational adjoint method Cost function : constraint for observational data and intial guess of control variables

Control variables : initial conditions of model variables

Gradient descent method :Popular scheme (Fujii and Kamachi, 2003), which can utilize non-diagonal part of the error covariance matrix for initial guess.

ネスティングモデルと組み合わせて ダウンスケーリングシステムを構築する

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Assimilation & downscaling

Low resolution Parent model:

High resolution child model

Classical framework

High resolution data assimilation in future High resolution model

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Assimilation & downscaling

Low resolution Parent model:

High resolution child model

new approach in this study

高分解能モデルと観測データの差を最小化する最適化問題を解く 推定するのは低解像度モデルの初期条件

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Incremental approach Make new formulation using increment:

parent model:

Child model: Outer Loop:

Inner Loop:

Approximate:

Bias (Constant in Inner Loop):

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計算手順 1. forecast Parent & Child model

2. calculate bias

3. optimized initial condition

4. forecast Parent & Child model

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実験設定 同化ウィンドウ: 28day 観測データは1日平均で同化

2011年1月5日からスタート インクリメンタル4DVARと単純なダウンスケーリングを比較

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Snapshot of SST Apr. 1st, 2011 Classical Downscaling New incremental 4DVAR

Observation data

Reduce warm biases appears in classical Downscaling

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RMSD with observation of SST Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Time series of RMSD of SST

Seasonal change of RMSD is due to the change of mixed layer depth. Summer: thin mixed layer & heat flux is effective Winter: thick mixed layer & advection is effective

Classical Downscaling

New incremental 4DVAR

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Vertical profile of RMSD

Classical Downscaling

New incremental 4DVAR

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SST and surface velocity Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Temperature at 100m depth Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Velocity at 100m Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Tsushima strait (child model) Classical Downscaling New incremental 4DVAR

Page 28: インクリメンタル4DVAR手法を利用した 海洋ダウンスケーリングモデルについて · アカイカHSIマップ. daily HSI分布図 (2006年1/1-2/28) は標本船の操業位置

Tsushima strait (parent model) Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Tsugaru strait (child model) Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Tsugaru strait (parent model) Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Along 41N

Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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Along 40.5N

Classical Downscaling New incremental 4DVAR

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まとめ 現実的な高分解能データセットを作成するために、インクリメンタル4DVARを応用したデータ同化/ダウンスケーリングシステムを構築した。

このシステムの有効性は対馬暖流、津軽暖流等狭い海峡と関連した強流域で顕著に示された。

これらの海域では地形の分解能や強非線形性が重要となっていると考えられる。