ダイヤモンド工具を用いた高硬度材のバニシング加工...1.背景・目的...

1
バニシングツール バニシング加工面 切削加工面 長岡技術科学大学 機械系 田中秀岳,柳 和久 ダイヤモンド工具を用いた高硬度材のバニシング加工 -微小塑性加工による高速鏡面加工1. 1. 背景・目的 背景・目的 2. 2. バニシングと バニシングと 31.バニシング加工実験 バニシング ツール ツール ホルダー 工作物 表面粗さの向上 耐摩耗性の向上 疲労強度の向上 加工時間の短縮 工程の短縮 スラッジが発生しない 潤滑剤の低減 金属切削加工後の表面 に工具を押し当てて平滑 な仕上がり面を得る塑性 加工法の一種 品質の向上 コストダウン 環境 バニシングツール スギノマシン; スギノマシン; ダイヤモンドバニシングツール ダイヤモンドバニシングツール Cat Cat s EYE s EYE R1.5 3.5 9 φ 2.6 ばね 内蔵ばね定数 86 N/mm 最大内蔵ばね与圧 206N 最大ばねたわみ 4mm 32. 高速度カメラを用いたその場観察 結果 バニシング加工の加工メカニズムについて調査し,形状変化予測および 加工条件算出の効率化を行い,バニシング加工の応用範囲を拡大する バニシング加工 研削加工では得られない優れた特長を持つ 様々な用途への応用が期待されている 加工条件 工作物 SUJBulk HRC30 直径20mm 長さ150mm TAKAMAZCNC精密旋盤 TOPTURNⅡ-S Photron高速度カメラ FASTCAM-MAX HiROX同軸落射10倍ズームレンズ CX10C 対物レンズ OL350 下処理加工(切削) 超硬チップ 回転数 1200min -1 バニシングツール ダイヤモンド 回転数 100min -1 送り 0.18mm/rev 送り 0.025mm/rev ツール 移動方向 旋削面 バニシング加工面 切削加工後の表面仕上げ加工において,研削に替わる高速,低コストかつ 環境負荷の低い加工方法が求められている 前加工(mm/rev) Ra (μm) Rz (μm) 0.16 0.989 4.090 0.18 1.222 4.397 0.20 1.405 5.292 0.22 1.646 6.339 前加工(mm/rev) Ra (μm) Rz (μm) 0.18 0.873 4.778 0.20 1.120 5.417 0.22 1.484 6.573 SUJ2生材 HRC30 SUJ2焼入材 HRC62 0 0.06 0.12 0.18 0.24 0.3 0.36 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 Feed (mm/rev) Ra (μm) 前加工0.18mm/rev 前加工0.20mm/rev 前加工0.22mm/rev 0 0.06 0.12 0.18 0.24 0.3 0.36 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 Feed (mm/rev) Ra (μm) 前加工0.16mm/rev 前加工0.18mm/rev 前加工0.20mm/rev 前加工0.22mm/rev 加工条件 工作物 SUJ生材,焼入材 直径20mm 長さ150mm TAKAMAZCNC精密旋盤 TOPTURNⅡ-S 前加工(切削) 超硬チップ 回転数 1200min -1 バニシングツール ダイヤモンド 回転数 2400min -1 送り 0.18mm/rev 送り 0.025mm/rev ツール 移動方向 0 20 40 60 80 100 % µm 0 1 2 3 4 5 Vmc Vvc 43.4 % Vmp = 7.07e-007 ml/m2 Vvv = 7.05e-007 ml/m2 Vm = Vv = 7.07×10 -7 m 3 /m 2 実体部 μm バニシング加工により変化する寸法量を推定するため,切削加工面の実体部と空隙部 の体積に注目 (体積が実体部 = 空隙部となる高さを調査) 体積の比較 : ISOで提案されている体積・容積パラメータの算出アルゴリズムを使用 33. 形状変化量推定 切削加工後の断面形状(上図の楕円部 分)を測定し,体積・容積パラメータを算出 する. 体積が実体部(vm)= 空隙部(Vv)となる高 さを右図より求めると,約3.3mmとなる. 実際に切削部分の最大高さとバニシング 平滑面との高さを比較すると,ほぼ 3.3mmと一致する. ・バニシング加工は従来の研削加工と比較して,およそ1/20以下の時間 で高硬度材を鏡面加工できる. ・顕微鏡高速度カメラを用いてバニシング加工の様子を撮影した.撮影画 像を考察し,切削山部を押しつぶして谷部に埋めるサイクルを 連続的に 行うことで平滑面を生成している様子を確認した. ・バニシング加工による加工面を測定して輪郭曲線より体積・容積パラ メータを求める事で行う寸法変化の推定方法を提案し,実際に測定と 検証を行い妥当性を確認した. 4. まとめ 空隙部(Vv) (Vm) -2 0 2 4 0 1 2 3 4 5 6 7 8 Distance (mm) Height (μm)

Upload: others

Post on 10-Jun-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: ダイヤモンド工具を用いた高硬度材のバニシング加工...1.背景・目的 2.バニシングとは 3-1.バニシング加工実験 バニシング ツール ツール

バニシングツール

バニシング加工面切削加工面

長岡技術科学大学 機械系 田中秀岳,柳 和久

ダイヤモンド工具を用いた高硬度材のバニシング加工-微小塑性加工による高速鏡面加工-

1.1.背景・目的背景・目的

2.2.バニシングとバニシングとはは

3-1.バニシング加工実験

バニシングツール

ツール

ホルダー

工作物

・ 表面粗さの向上・ 耐摩耗性の向上・ 疲労強度の向上

・ 加工時間の短縮・ 工程の短縮

・ スラッジが発生しない・ 潤滑剤の低減

金属切削加工後の表面に工具を押し当てて平滑な仕上がり面を得る塑性加工法の一種

品質の向上

コストダウン

環境

バニシングツール スギノマシン;スギノマシン; ダイヤモンドバニシングツールダイヤモンドバニシングツール CatCat’’s EYEs EYE

R1.5

□3.5 9φ 2.

6

ばね

内蔵ばね定数 86 N/mm大内蔵ばね与圧 206N大ばねたわみ 4mm

3-2. 高速度カメラを用いたその場観察

結果

バニシング加工の加工メカニズムについて調査し,形状変化予測および加工条件算出の効率化を行い,バニシング加工の応用範囲を拡大する

バニシング加工 : 研削加工では得られない優れた特長を持つ

様々な用途への応用が期待されている

加工条件

工作物 SUJ2 Bulk HRC30 直径20mm 長さ150mm

TAKAMAZ; CNC精密旋盤 TOP-TURNⅡ-SPhotron; 高速度カメラ FASTCAM-MAX

HiROX; 同軸落射10倍ズームレンズ CX-10C 対物レンズ OL-350

下処理加工(切削) 超硬チップ 回転数 1200min-1

バニシングツール ダイヤモンド 回転数 100min-1送り 0.18mm/rev

送り 0.025mm/rev

ツール移動方向

旋削面バニシング加工面

切削加工後の表面仕上げ加工において,研削に替わる高速,低コストかつ環境負荷の低い加工方法が求められている

前加工(mm/rev) Ra (μm) Rz (μm)0.16 0.989 4.0900.18 1.222 4.3970.20 1.405 5.2920.22 1.646 6.339

前加工(mm/rev) Ra (μm) Rz (μm)0.18 0.873 4.7780.20 1.120 5.4170.22 1.484 6.573

SUJ2生材 HRC30 SUJ2焼入材 HRC62

0

0.06

0.12

0.18

0.24

0.3

0.36

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12Feed (mm/rev)

Ra(μ

m)

前加工0.18mm/rev前加工0.20mm/rev前加工0.22mm/rev

0

0.06

0.12

0.18

0.24

0.3

0.36

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12Feed (mm/rev)

Ra(μ

m)

前加工0.16mm/rev

前加工0.18mm/rev

前加工0.20mm/rev

前加工0.22mm/rev

加工条件

工作物 SUJ2 生材,焼入材 直径20mm 長さ150mmTAKAMAZ; CNC精密旋盤 TOP-TURNⅡ-S

前加工(切削) 超硬チップ 回転数 1200min-1

バニシングツール ダイヤモンド 回転数 2400min-1

送り 0.18mm/rev

送り 0.025mm/rev

ツール移動方向

約3.3μm

0 20 40 60 80 100 %

µm

0

1

2

3

4

5

Vmp

Vmc

Vvc

Vvv

43.4 %43.4 %

Vmp = 7.07e-007 ml/m2 Vvv = 7.05e-007 ml/m2Vm = Vv = 7.07×10-7 m3/m2

実体部Vm

μm

バニシング加工により変化する寸法量を推定するため,切削加工面の実体部と空隙部の体積に注目 (体積が実体部 = 空隙部となる高さを調査)体積の比較 : ISOで提案されている体積・容積パラメータの算出アルゴリズムを使用

3-3. 形状変化量推定

切削加工後の断面形状(上図の楕円部分)を測定し,体積・容積パラメータを算出する.体積が実体部(vm)= 空隙部(Vv)となる高さを右図より求めると,約3.3mmとなる.

実際に切削部分の 大高さとバニシング平滑面との高さを比較すると,ほぼ3.3mmと一致する.

・バニシング加工は従来の研削加工と比較して,およそ1/20以下の時間で高硬度材を鏡面加工できる.

・顕微鏡高速度カメラを用いてバニシング加工の様子を撮影した.撮影画像を考察し,切削山部を押しつぶして谷部に埋めるサイクルを 連続的に行うことで平滑面を生成している様子を確認した.

・バニシング加工による加工面を測定して輪郭曲線より体積・容積パラメータを求める事で行う寸法変化の推定方法を提案し,実際に測定と検証を行い妥当性を確認した.

4. まとめ

空隙部(Vv)

(Vm)

-2

0

2

4

0 1 2 3 4 5 6 7 8Distance (mm)

Hei

ght (μm

)