パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 ·...

139
小売業 パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 厚生労働省 Ministry of Health, Labour and Welfare

Upload: others

Post on 20-Jun-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

小売業小売業

厚生労働省

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集

厚生労働省Ministry of Health, Labour and Welfare

Page 2: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集

~小 売 業~

目  次

Ⅰ.はじめに…………………………………………………………………………………………………… 2

Ⅱ.パートタイム労働者のタイプと均等・均衡待遇の基本的考え方…………………………………… 41.パートタイム労働者とは…………………………………………………………………………… 42.パートタイム労働者のタイプ……………………………………………………………………… 53.均等・均衡待遇の推進……………………………………………………………………………… 74.業務分担表の作成について………………………………………………………………………… 8

Ⅲ.パートタイム労働者の雇用管理に係る課題の把握方法……………………………………………… 91.パートタイム労働者均等・均衡待遇指標(パート指標)とは………………………………… 92.パート指標の使い方………………………………………………………………………………… 103.パート指標の診断結果の見方……………………………………………………………………… 12

Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント………………………………………………151.労働条件の明示・説明……………………………………………………………………………… 152.賃金…………………………………………………………………………………………………… 253.教育訓練等の能力開発……………………………………………………………………………… 294.人事評価・キャリアアップ………………………………………………………………………… 395.正社員転換推進措置………………………………………………………………………………… 496.福利厚生・安全衛生………………………………………………………………………………… 557.ワーク・ライフ・バランス………………………………………………………………………… 618.職場のコミュニケーション………………………………………………………………………… 679.その他………………………………………………………………………………………………… 71

Ⅴ.事例集………………………………………………………………………………………………………75

Ⅵ.参考資料………………………………………………………………………………………………… 135

1

Page 3: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

少子高齢化が進み、労働力人口が減少する中、パートタイム労働者数は年々増加し、雇用労働者全体の 4分の 1以上を占め、我が国の経済活動において重要な役割を果たしています。さらに、雇用形態が多様化する中で、補助的な仕事に限らず、役職に就くなどの基幹的な働き方をするパートタイム労働者も増加するなど、パートタイム労働者の働き方がより多様化する傾向が見られます。その一方で、パートタイム労働者の待遇がその働き・貢献に見合ったものになっていない場合もあり、働き・貢献に見合った公正な待遇を確保し、均等・均衡待遇の確保を一層推進していくことが重要な課題となっています。このため、厚生労働省では、従来よりパートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保に向けた様々な事業主への支援や情報提供を実施してきました。この度、業種によって、パートタイム労働者が担う役割や雇用管理の実態などが大きく異なることを踏まえ、業種ごとに雇用管理上どのような点に留意していくべきかを分かりやすく解説し、均等・均衡待遇の確保をはじめとした雇用管理改善の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとしました。本マニュアルはその「小売業」版となります。本マニュアル・好事例集の前半部分では、本事業において開発したパートタイム労働者の均等・均衡待遇がどの程度実現できているかを把握するための「パートタイム労働者均等・均衡待遇指標」を紹介するとともに、企業へのヒアリング調査を踏まえて、パートタイム労働者の雇用管理改善の具体的な取組方法をまとめています。また、後半部分では、ヒアリング調査を実施した企業の実例の中から、特に優れた取組を、好事例集として紹介しています。本マニュアル・好事例集を小売業におけるパートタイム労働者の均等・均衡の確保をはじめとした雇用管理改善に向けての取組の参考としていただき、パートタイム労働者がいきいきと能力を発揮できる環境整備の一助となれば幸いです。

平成 26 年 3 月厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課

 Ⅰ.はじめに

2

Page 4: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

Ⅰ.はじめに

【本マニュアルの使い方】◆本マニュアル・好事例集には、小売業の企業が、パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保をはじめとした雇用管理改善を推進し、パートタイム労働者の活躍促進を図るためのポイントをまとめています。

◆自事業所の雇用管理改善の取組が進んでいる点と取組が進んでいない点を把握し、取組が進んでいる点をさらに強化し、取組が進んでいない点を改善するための方法を検討するために活用してください。

STEP1:あなたの事業所のパートタイム労働者の均等・均衡待遇確保の実態を把握しましょう!・パートタイム労働者の均等・均衡待遇が自事業所でどの程度図られているかを「Ⅲ.パートタイム労働者の雇用管理に係る課題の把握方法」で説明している「パートタイム労働者均等・均衡待遇指標(パート指標)」により確認します。

・その結果から、あなたの事業所の雇用管理改善の取組が進んでいる点と取組が進んでいない点が分かります。

STEP2:指標の結果を参考に、「Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント」から特に気になるポイントを確認し、取り組むべき課題を把握しましょう!

・取組が進んでいる点については、強みをさらに向上させるため、本マニュアルを参考に、さらに改善すべき点があるかを把握しましょう。

・取組が進んでいない点については、どのような点が不足しているかという視点から、取り組むべき課題を把握しましょう。

◆マニュアル・好事例集の前半部分には、ヒアリング調査実施企業における特に参考になる優れた取組を抜粋して紹介しています。また、後半部分には優れた取組をしている企業ごとに、それぞれの取組全体をまとめ、好事例集として掲載していますので、参考にしてください。

3

Page 5: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

パートタイム労働者とは1

パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の対象となるパートタイム労働者は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の 1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。「パートタイマー」、「アルバイト」、「嘱託」、「契約社員」、「臨時社員」、「準社員」など、名称にかかわらず、上記に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。「通常の労働者」とは、同種の業務に従事する「正社員」、「正職員」など、いわゆる正規型の労働者がいれば、その労働者をいいます。同種の業務に従事するいわゆる正規型の労働者がいない場合、同種の業務に従事するフルタイムの基幹的な働き方をしている労働者がいれば、その労働者が通常の労働者となります。同種の業務に従事するいわゆる正規型の労働者もフルタイムの基幹的な働き方をしている労働者もいない場合は、事業所における 1週間の所定労働時間が最長の労働者が通常の労働者となります。

 Ⅱ.パートタイム労働者のタイプと均等・均衡待遇の基本的考え方

4

Page 6: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

Ⅱ.パートタイム労働者のタイプと均等・均衡待遇の基本的考え方

パートタイム労働者のタイプ2

パートタイム労働者はその就業の実態によって、適用されるパートタイム労働法上の規定が異なります。雇用しているパートタイム労働者について、通常の労働者と比較して「職務の内容が同じ」か、「人材活用の仕組みや運用などが同じ」かどうかを、以下のチャートにしたがって確認してください。

職務の内容とは、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいいます。職務の内容が同じかどうかについては、次の手順にしたがって判断します。

通常の労働者とパートタイム労働者の人材活用の仕組みや運用などが同じかどうかについては、次の手順に従って判断します。

 職務の内容が同じかどうか 

 「人材活用の仕組みや運用などが同じ」かどうか

例:「販売職」「事務職」

業務の比較例

接客、レジ、品出し、清掃

接客、レジ、品出し

パート

正社員

★中核的業務に○(何が中核的業務に当たるかは、同じ販売職でも個々の事業所ごとに異なります。)

与えられている権限の範囲、業務の成果について求め

られている役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求め

られる対応の程度、ノルマなどの成果への期待度などを

総合的に判断します。

著しくは異ならない 異なる

実質的に同じ 異なる

同じ 異なる

職務は同じ

職務は異なる「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、その職務を代表する中核

的なものを指し、与えられた職務に不可欠な業務、業務の成果が事業所の業績や評価に大きな影響を与える業務、労働者の職務全体に占める時間・頻度において割合が大きい業務という基準に従って総合的に判断します。

職務を比較

従事している業務のうち中核的業務で比較

責任の程度を比較

4 異なる

実質的に同じ 異なる

ともに有り 一方のみ有り

人材活用は同じ

人材活用は異なる

ともに無し

3 ともに有り 一方のみ有りともに無し

実質的に同じ

転勤の有無を比較

転勤の範囲を比較

職務内容・配置の変更の有無を比較

職務内容・配置の変更の範囲を比較

例:「販売職」「事務職」

業務の比較例

接客、レジ、品出し、清掃

接客、レジ、品出し

パート

正社員

★中核的業務に○(何が中核的業務に当たるかは、同じ販売職でも個々の事業所ごとに異なります。)

与えられている権限の範囲、業務の成果について求め

られている役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求め

られる対応の程度、ノルマなどの成果への期待度などを

総合的に判断します。

著しくは異ならない 異なる

実質的に同じ 異なる

同じ 異なる

職務は同じ

職務は異なる「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、その職務を代表する中核

的なものを指し、与えられた職務に不可欠な業務、業務の成果が事業所の業績や評価に大きな影響を与える業務、労働者の職務全体に占める時間・頻度において割合が大きい業務という基準に従って総合的に判断します。

職務を比較

従事している業務のうち中核的業務で比較

責任の程度を比較

4 異なる

実質的に同じ 異なる

ともに有り 一方のみ有り

人材活用は同じ

人材活用は異なる

ともに無し

3 ともに有り 一方のみ有りともに無し

実質的に同じ

転勤の有無を比較

転勤の範囲を比較

職務内容・配置の変更の有無を比較

職務内容・配置の変更の範囲を比較

5

Page 7: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

パートタイム労働者 通常の労働者 判断

職務内容の比較

紳士服売場の売場長 婦人服売場の売場長

同じ業務の内容をみると、扱う商品に違いはあるが、必要な知識の水準などに大きな違いはなく、在庫管理、部下の指導などの業務の内容、そして、業務に伴う責任の程度においても、パートタイム労働者と通常の労働者に違いはなく、職務の内容は同じと考えられる。

婦人服売場の販売員レジ、接客、品出し、商品陳列

婦人服売場の販売員シフト管理、売り場レイアウト作り、人材育成、クレーム処理、レジ、接客

異なる中核的業務を比較すると、パートタイム労働者は、品出し、商品陳列業務であり、通常の労働者は、シフト管理、売り場作り、クレーム処理であり、明らかに異なる業務であると判断され、両者では職務の内容が異なると考えられる。

レジ、接客業務を担当。売上目標などはなく、繁忙期や急な欠勤者が出た場合の対応は、個人の事情で断ることも可能。

レジ、接客業務のリーダーを担当。繁忙期や急な欠勤者が出た場合、原則として残業や出勤を断ることができない。売上目標などの業績目標があり、その達成度で評価される。

異なる共にレジ、接客業務を担当しており業務内容は同じだが、急な残業や出勤に応じなければならない、売り上げ目標の達成が求められるなど、通常の労働者の方が、業務に伴う責任の範囲が重くなっており、職務の内容が異なると考えられる。

人材活用の仕組みや運用の比較

副店長に登用され、店舗運営や部下の指導、計数管理等を担当。店舗間の異動もあるが、自宅から通える範囲での転勤にとどまる。

副店長に登用され、店舗運営や部下の指導、計数管理等を担当。店舗間の異動もあり、転居を伴うような全国転勤での異動もある。

異なる副店長として職務内容は同じであるが、通常の労働者は、全国転勤がある一方、パートタイム労働者の副店長には、自宅から通える範囲での異動しかないなど、転勤の範囲が異なり、人材活用の仕組みが異なると考えられる。

副店長に登用され、店舗運営や部下の指導、計数管理等を担当。店舗間の異動もあるが、自宅から通える範囲での転勤にとどまると規定されている。

副店長に登用され、店舗運営や部下の指導、計数管理等を担当。店舗間の異動もあり、転居を伴う異動もあると規定されているが、現に転居を伴う異動をした人はおらず、今後も同様の取扱いが続くことが見込まれる。

同じ副店長として職務内容は同じである。しかしながら、規則上は転勤の有無に差があるが、現実的には転居を伴う異動をした通常の労働者はおらず、今後も同様の取扱いが続くことが見込まれることから、転勤の範囲は実質的には同じと考えられ、人材活用の仕組みは同じと考えられる。

販売職店舗が 1 か所であるため、転勤はない。担当するアイテムの変更はない。

販売職店舗が 1 か所であるため、転勤はない。担当するアイテムが婦人服、紳士服、食品などの部門間で定期的に変更されたり、昇進により職務の内容が変更されることがある。

異なるパートタイム労働者も通常の労働者も、転勤がないという点では同じである。しかし、パートタイム労働者は担当するアイテムの変更がないのに対し、通常の労働者は、担当するアイテムが定期的に変更されたり、昇進に伴い職務の内容の変更がある等、経験する職務の範囲が広くなっており、人材活用の仕組みや運用などが異なると考えられる。

<参考> 「職務の内容」や「人材活用の仕組みや運用など」等の同一性の判断例

6

Page 8: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

Ⅱ.パートタイム労働者のタイプと均等・均衡待遇の基本的考え方

均等・均衡待遇の推進3

パートタイム労働法では、以上の「職務の内容」と「人材活用の仕組みや運用など」に加え、契約期間の 3つの要件を通常の労働者と比較することにより、パートタイム労働者を 4つのタイプに区分し、それぞれのタイプごとに、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇について、事業主が講ずべき措置が次のように規定されています。

【パートタイム労働者のタイプ】通常の労働者と比較して 賃金 教育訓練 福利厚生

職 務 の 内 容(業務の内容及び責任)

人材活用の仕組みや運用など(人事異動等の有無及び範囲)

契約期間

職務関連賃金・基本給・賞与・役付手当等

左以外の賃金・退職手当・家族手当・通勤手当等

職務遂行に必要な能力を付与するもの

左以外のもの(キャリアアップのための訓練等)

・給食施設・休憩室・更衣室

左以外のもの( 慶 弔 休 暇、社宅の貸与等)

タイプ① 通常の労働者と同視すべきパートタイム

労働者◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

同じ全雇用期間を通じて同じ

無期又は反復更新により無期と同じ

タイプ② 通常の労働者と職務の内容と人材活用の

仕組みや運用などが同じパートタイム労働者

□ - ○ △ ○ -

同じ 一定期間は同じ -タイプ③ 通常の労働者と職務の内容が同じパート

タイム労働者△ - ○ △ ○ -

同じ 異なる -タイプ④ 通常の労働者と職務の内容も異なるパー

トタイム労働者△ - △ △ ○ -

異なる - -【講ずる措置】◎:パートタイム労働者であることによる差別的取扱いの禁止       ○:実施義務・配慮義務       □:同一の方法で決定する努力義務       △:職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案する努力義務

7

Page 9: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

業務分担表の作成について4

パートタイム労働者と正社員の職務内容について、事業主からみると明確な違いがある場合でも、パートタイム労働者からみると同じように見えることがあります。このような場合には、パートタイム労働者はなぜ正社員と待遇が違うのかという疑問や不満を持つことになります。事業主としては、パートタイム労働者から個別に説明を求められるたびに説明しなくてはなりません。このような問題を解消するためにも、あらかじめ職務内容の実態を踏まえて、業務分担表を作成しておくことをお勧めします。業務分担表の形でパートタイム労働者が担当する業務と正社員が担当する業務を明確に整理することによって、パートタイム労働者の納得性も高まると考えられます。

業務分担表の例

パートタイム労働者 正社員

接客レジ品出しクレーム処理(初期対応)商品陳列清掃

接客レジ品出しクレーム処理売り場レイアウトの変更発注在庫管理

「職務分析・職務評価」に取り組むことで、パートタイム労働者と正社員との職務を整理することができます。また、パートタイム労働者と正社員の仕事の内容を比較することにより、パートタイム労働者の処遇が職務の大きさに見合ったものとなっているか確認することができます。その結果を踏まえて処遇を改善すること等により、パートタイム労働者の仕事や処遇に対する納得性を高めることが期待できます。

※職務分析とは  職務に関する情報を収集・整理し、職務の内容を明確にすること。※職務評価とは  社内の職務内容を比較し、その大きさを相対的に測定すること。

「職務分析・職務評価」の実施方法については、以下のアドレスをご参照ください。厚生労働省ホームページhttp://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1.html

8

Page 10: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅲ.パートタイム労働者の雇用管理に係る課題の把握方法

パートタイム労働者均等・均衡待遇指標(パート指標)とは1

パートタイム労働者に対して「雇用管理を適切に行うこと」、「通常の労働者との働き方の違いに応じた均等・均衡待遇を実現させること」は、パートタイム労働者のやる気や定着率を高めるための基盤となるものです。自事業所におけるこれら雇用管理に係る取組はどの程度進んでいるのか。もし取組が進んでいない場合には、どのように改善すれば良いのか。それを把握するためのツールとして、「パートタイム労働者均等・均衡待遇指標(以下、「パート指標」といいます。)」があります。パート指標では、パートタイム労働法はもとより、労働基準法や労働安全衛生法、育児・介護休業法等に基づき、パートタイム労働者の雇用管理において事業主が「必ず実施しなければならない取組(義務項目)」、「実施するよう努めなければならない取組(努力義務項目)」、「実施することが望まれる取組(法定を上回る取組)」を設問として設定しています。パート指標のこれらの設問に回答することで、パートタイム労働法等に対応できているか、自事業所におけるパートタイム労働者の雇用管理がどの程度進んでいるのか、どこに課題があるのか、について、他事業所との比較を含め、レーダーチャートなどで視覚的に分かりやすく把握することができます。また、パート指標では、パートタイム労働法の均等・均衡待遇の確保の考え方を踏まえ、パートタイム労働者の職務の内容、人材活用の仕組みや運用などにより、パートタイム労働者を4つのタイプに区分して診断できるようにしています。各事業所においては、まず、雇用しているパートタイム労働者がどのタイプに該当するかを判断して、診断を行ってください。事業所に複数のタイプのパートタイム労働者がいるような場合は、それぞれのタイプごとに診断してください。

なお、設問は「自事業所の基本的属性」に加え、以下の 8分野に分かれています。この 8分野は、本マニュアル「Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント」の 1~ 8 に対応しています。①労働条件の明示・説明②賃金③教育訓練等の能力開発④人事評価・キャリアアップ⑤正社員転換推進措置⑥福利厚生・安全衛生⑦ワーク ・ライフ ・バランス⑧職場のコミュニケーション等

 Ⅲ.パートタイム労働者の雇用管理に係る課題の把握方法

9

Page 11: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

パート指標の使い方2

パート指標は、「パート労働ポータルサイト(http://part-tanjikan.mhlw.go.jp/)」からダウンロードして使います。具体的には、下記の手順にしたがってください。①「パート労働ポータルサイト」にアクセスします。②「パート指標でチェックしよう!」のアイコンをクリックします。③「パート指標シート(エクセルシート)」をダウンロードし、パソコンに保存します。④「診断スタート」をクリックし、設問に回答します。なお、設問は「画面 0」~「画面 8」まで、全部で 9画面あります。⑤最後の設問まで回答をしたら、「診断結果シートを表示します」の画面で「OK」をクリックします。⑥「診断結果シート」を確認の上、・取組が進んでいる分野:強みをさらに向上させるため、マニュアルを参考に、さらに改

善すべき点がないか確認します。・取組が進んでいない分野:どのような点が不足しているかという観点から、マニュアル

を参考に、取り組むべき課題を把握します。・法定水準を満たさない場合:マニュアルを参考に、早急に是正・改善してください。

パート指標は、自事業所におけるパートタイム労働者の雇用管理がどのような実態にあるのか、どこに課題があるのかを把握することができる点に特徴があります。したがって、「単に設問に回答し、診断結果シートを出力する」だけではなく、「出力結果から、自事業所の雇用管理の進捗度合いを把握し、改善に役立たせる」ためのツールとして、パート指標を有効活用してください。

10

Page 12: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅲ.パートタイム労働者の雇用管理に係る課題の把握方法

<回答入力画面>0

3.教育訓練等の能力開発について

問3-1 貴事業所では、パートタイム労働者に対して、下記のような教育訓練等の能力開発を行っていますか。

(それぞれについて1つ選択)

行っている 行っていない

(1) 採用時の導入教育としてのOff-JT(※1)

(2) Off-JT(採用時の導入教育以外)(※1)

(3) 計画的なOJT(※2)

(4) 自己啓発支援(受講料などの金銭的援助、

  教育訓練機関、通信教育等に関する情報提供等)

※1

※2

問3-2 貴事業所では、パートタイム労働者に対して、下記のような能力を付与するための教育訓練等の

能力開発を行っていますか。(それぞれについて1つ選択)

(1) 主に現在担当している

  職務の遂行に必要な能力

(2) 主に将来担当する可能性

  のある職務や役職に就く

  ために必要な能力

画面6 画面7画面0 画面1 画面2 画面3 画面8

生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる(事業所内または事業所外

の)職業訓練のこと。

日常の業務に就きながら行われる教育訓練のことをいい、教育訓練に関する計画書を作成するなどして教育担当者、

対象者、期間、内容などを具体的に定めて、段階的・継続的に教育訓練を実施すること。

画面4 画面5

戻る

1. 2.

1. 2.

1. 2.

1. 2.

1. 2. 3. 4. 5.

1. 2. 3. 4. 5.

次へ

設問文を読み、エクセルファイル上で回答します

各画面の回答が終わったら、「次へ」ボタンをクリックします

正社員よりも多くの機会を付与し、行っている

正社員と比較して機会は少ないが、行っている

正社員には行っているが、パー トタイム労働者には行っていない

正社員と同等の機会を付与し、行っている

正社員にも、パー トタイム労働者にも、行っていない

11

Page 13: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

パート指標の診断結果の見方3

診断結果シートの画面には、「(1)法定を上回る取組の実施状況」、「(2)法違反の状況」が表示されます。

(1)法定を上回る取組の実施状況法定を上回る取組の実施状況は、レーダーチャートで表示されます。レーダーチャートでは、8分野ごとの「法定を上回る取組」の実施状況(※ 1)を得点率で表示しています。実線は自事業所の得点率、点線は自事業所が回答したパートタイム労働者のタイプと同じタイプのパートタイム労働者を雇用する事業所の得点率の平均値(※ 2)です。※ 1 …パートタイム労働法に基づく努力義務項目の取組状況を含みます。※ 2 …平成 25 年 11 月~ 12 月に実施した「パートタイム労働者の雇用管理に関するアンケート調査」に回答した全 3,920 事業所のうち、自事業所が回答したパートタイム労働者のタイプと同じタイプのパートタイム労働者を雇用する事業所の得点率の平均値のことを指します。

各設問の配点は「パート労働ポータルサイト」に詳しく掲載していますが(設問によって付与される点数が異なります)、各分野において「法定を上回る取組」をすべて実施している場合には 100%、全く実施していない場合には 0%となります。すなわち、得点率が高い分野は「取組が進んでいる分野」、得点率が低い分野は「取組が進んでいない分野」となります。自事業所の取組状況を調査事業所平均と比較することで、特に自事業所の取組が進んでいる分野はどこか、改善すべき分野はどこかを把握することもできます。なお、総得点率は、8分野それぞれの得点率を平均した数値です。

(2)法違反の状況法定水準を満たさない分野があった場合は、右上に「必ず実施しなければならない取組(義務項目)」(赤色)、「実施するよう努めなければならない取組(努力義務項目)」(オレンジ色)が表示されます。具体的にどの分野がこれに該当するかは、診断結果シート 1ページ目下の【法違反の状況】の表に示されます。また、診断結果シート 2ページ目には、該当する取組の根拠となる法律が表示されますので、内容を確認するとともに、マニュアルを参考に改善を図ってください。

なお、詳細については、「パート労働ポータルサイト(http://part-tanjikan.mhlw.go.jp/)」をご参照ください。

12

Page 14: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅲ.パートタイム労働者の雇用管理に係る課題の把握方法

<診断結果シート(1 ページ目)>

パートタイム労働者の雇用管理 診断結果シート

<タイプ4:通常の労働者と職務の内容も異なるパートタイム労働者>

【法定を上回る取組の実施状況】

貴事業所の総得点率

(※各軸の平均)

貴事業所 調査事業所平均(※)

(タイプ4) (タイプ4)

労働条件の明示・説明 75.0% 72.0%

賃金 25.0% 33.6% 教育訓練等の能力開発 42.9% 27.2% 人事評価・キャリアアップ 50.0% 27.8%

正社員転換推進措置 62.5% 25.8% 福利厚生・安全衛生 46.0% 40.0%

ワーク・ライフ・バランス 60.0% 45.3% 職場のコミュニケーション等 46.2% 41.4%

★総得点率 50.9% 39.1%

※調査事業所平均とは、平成25年11月~12月に実施した「パートタイム労働者の雇用管理に関する アンケート調査」に回答した全3,920事業所のうち、タイプ4の事業所の平均値を示しています。

【法違反の状況】努力義務の

水準に達しない

労働条件の明示・説明 2項目 0項目

賃金 0項目 1項目 教育訓練等の能力開発 0項目 0項目

人事評価・キャリアアップ(※) - -

正社員転換推進措置 0項目 0項目 福利厚生・安全衛生 0項目 0項目

ワーク・ライフ・バランス 0項目 0項目 職場のコミュニケーション等 0項目 0項目

※人事評価・キャリアアップは法定事項なし。 #### #### ####

<診断結果の詳細な見方については、パート労働ポータルサイト(http://part-tanjikan.mhlw.go.jp/)をご確認ください。>

50.9%

義務違反の可能性があります。 下記の【法違反の状況】をご確認 ください。

努力義務の水準に達していない 可能性があります。 下記の【法違反の状況】をご確認 ください。

義務違反

0

20

40

60

80

100労働条件の明示・説明

賃金

教育訓練等の能力開発

人事評価・キャリアアップ

正社員転換推進措置

福利厚生・安全衛生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション等

1

(1)レーダーチャート

自事業所の得点率と調査事業所平均の得点率を比較できます。

(2)法定水準を満たさない分野があった場合

法定水準を満たしていない場合は注意書きが表示されます。

13

Page 15: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

<診断結果シート(2 ページ目)>

 貴事業所では、パートタイム労働法等に違反している可能性があります。 速やかに是正してください。

<労働条件の明示・説明>

○パートタイム労働法第6条第1項

 貴事業所では、パートタイム労働法の努力義務の水準に達していない可能性があります。 実施するよう努めてください。

<賃金>

○パートタイム労働法第9条第1項 パートタイム労働者の賃金のうち、基本給、賞与、役付手当など職務の内容に密接に関連する賃金(職務関連賃金)の決定方法について、事業主は、通常の労働者との均衡を考慮し、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して賃金を決定することが努力義務とされています。

○労働基準法第15条第1項労働基準法では、パートタイム労働者も含めて、労働者との労働契約の締結に際して、労働条件を明示

することが事業主に義務付けられています。特に、「労働契約の期間」、「有期労働契約を更新する場合の基準」、「仕事をする場所と仕事の内容」、「始業・終業の時刻や所定労働時間を超える労働の有無、休憩・休日・休暇」、「賃金」、「退職(解雇の事由を含む。)」などについては、書面で明示することが義務付けられています。

 事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、速やかに「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」を文書の交付などにより明示しなければなりません。

2

「必ず実施しなければならない取組(義務項目)」、「実施するよう努めなければならない取組(努力義務項目)」の根拠となる法律が表示されます

労働基準法では、パートタイム労働者も含めて、労働者との労働契約の締結に際して、労働条件を明示することが事業主に義務付けられています。特に、「労働契約の期間」、「有期労働契約を更新する場合の基準」、「仕事をする場所と仕事の内容」、「始業・終業の時刻や所定労働時間を超える労働の有無、休憩・休日・休暇」、「賃金」、「退職(解雇の事由を含む。)」などについては、書面で明示することが義務付けられています。

事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、速やかに「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」を文書の交付などにより明示しなければなりません。

14

Page 16: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

以下では、次の用語を用いて法定事項及び法定以外の雇用管理上のポイントを解説しています。・「義務」・・・パートタイム労働法等の労働法において、必ず実施しなければならないと定め

られている規定(パートタイム労働法以外は(  )で法律名を明示)・「努力義務」・・・パートタイム労働法において、実施するよう努めなければならないと定め

られている規定・「指針」・・・パートタイム労働指針において定められている事項・「法定外の重要事項」・・・労働関係法令で定められている事項ではないものの、パートタイ

ム労働者の適切な雇用管理のために留意しておくべきポイント

また、それぞれの規定について、対象となるパートタイム労働者が限定されている場合は、次のように表現しています。(   )内のタイプとは、7頁に記載したパートタイム労働者の 4タイプのうちいずれに該当するかを示したものです。例)【対象者】通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(タイプ①)

労働条件の明示・説明1

(1)文書での労働条件の明示・説明< POINT>

義務(一部労働基準法を含む)

【対象者】すべてのパートタイム労働者(タイプ①②③④)・事業主は、労働者を雇い入れる際(労働契約更新時を含む。)には、労働条件

を明示することが義務となっており、特に、「労働契約の期間」などの一定の事項(17 頁参照)については、文書で明示しなければならない。また、パートタイム労働者を雇い入れる際(労働契約更新時を含む。)には、一般の労働者へ文書で明示しなければならない事項に加えて、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」の 3 つの事項を文書の交付などにより明示しなければならない。

・パートタイム労働者から説明を求められた場合には、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明しなければならない。

努力義務【対象者】すべてのパートタイム労働者(タイプ①②③④)・「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」以外のものについても、文

書の交付などにより明示するように努める。

小売業のPOINT

・小売業では、パートタイム労働者が店長やチーフ、リーダーなど指導的な役割を担うことも多くみられる。業務内容の明記、役割に応じた処遇への見直し、その処遇の明示が重要である。

・労働条件の決定は店舗に任せていることが多い。本社管理部門は仕組みを整備するだけでなく、店舗に対して、労働条件をパートタイム労働者に必ず文書で明示することに加え、口頭でも説明することが望ましいことを、周知徹底することが重要である。

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

15

Page 17: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

労働基準法では、パートタイム労働者も含めて、労働者との労働契約の締結に際して、労働条件を明示することが事業主に義務付けられています。特に、「労働契約の期間」、「期間の定めのある労働契約(以下、「有期労働契約」という。)を更新する場合の基準」、「仕事をする場所と仕事の内容」、「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休憩、休日、休暇」、「賃金」、「退職に関する事項」などについては、文書で明示することが義務付けられています(これに違反した場合は 30…万円以下の罰金に処せられます。)(労働基準法第 15 条、労働基準法施行規則第 5条)。上記に加えて、パートタイム労働法では、パートタイム労働者を雇い入れたときは、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」の 3つの事項を文書の交付など(ただし、パートタイム労働者が希望した場合は、電子メールや FAX…でも可)…により、速やかに、パートタイム労働者に明示することが義務付けられています(パートタイム労働法第 6条第 1項)。これに違反した場合、パートタイム労働者 1人につき契約ごとに 10…万円以下の過料の対象となります。昇給や賞与の支給を事業所の業績やパートタイム労働者の勤務成績、勤続年数などによって行っており、支給要件を満たさない場合には支給されない可能性があるときは、制度「有」とした上で、「業績により不支給の場合あり」や「勤続○年未満は不支給」など支給されない可能性があることを明記してください。「雇い入れたとき」とは、初めて雇い入れたときだけではなく、労働契約の更新時も含みます。上記 3つの事項以外については、文書の交付などにより明示することが努力義務とされています(パートタイム労働法第 6条第 2項)。さらに、労働基準法施行規則第 5条が改正され、平成 25 年 4 月 1 日からは、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準についても書面での明示が義務付けられたので、特に注意が必要です。労働契約法改正に伴って、平成 25 年 4 月 1 日からは、有期労働契約が繰り返し更新されて通算 5年を超えるときは、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約(「無期労働契約」)に転換できるようになったため、労働条件通知書等にも契約更新回数、契約年数等を明記することが望ましいといえます。小売業の場合、パートタイム労働者が店長やチーフ、リーダーなど指導的な役割を担う場合も少なくありません。このような場合には、特に同じ職務に就く正社員との均等・均衡待遇が強く求められます。シフトの作成や新規スタッフの指導等を含めて業務内容を明記するとともに、均等・均衡待遇の観点から、賞与・昇給・退職金・休職等の条件を見直し、役割に応じた処遇とすることが重要です。また、その処遇の内容をできるだけ詳細に明示することが望まれます。さらに、人事評価に応じて昇降給する場合にはその条件についても記載しましょう。

16

Page 18: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

パートタイム労働者雇入れ(契約更新含む。)に当たり明示すべき労働条件必ず文書にて明示しなければならない事項(労働基準法)

1.労働契約の期間に関する事項

2.期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

3.就業の場所、従事すべき業務に関する事項

4.始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

5.賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金、賞与その他これらに準ずる賃金を除く。)の決定・計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項

6.退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

定めをした場合に明示しなければならない事項(労働基準法)

7.退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

8.臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び労働基準法施行規則第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

9.労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

10.安全及び衛生に関する事項

11.職業訓練に関する事項

12.災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

13.表彰及び制裁に関する事項

14.休職に関する事項

必ず文書にて明示しなければならない事項(パートタイム労働法)

① 昇給の有無

② 退職手当の有無

③ 賞与の有無

文書により明示することが望ましい事項(パートタイム労働法)

④ 昇給(有無を除く昇給時期や昇給基準等)

⑤ 退職手当(有無を除く支払基準や支払方法等)、臨時に支払われる賃金、賞与(有無を除く支払基準や支払方法等)、1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、1か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当、1か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給・能率手当

⑥ 所定労働日以外の日の労働の有無

⑦ 所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度

⑧ 安全衛生

⑨ 教育訓練

⑩ 休職

17

Page 19: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

また、パートタイム労働者から求められたときは、事業主はそのパートタイム労働者の待遇を決定するにあたって考慮した事項を説明することが義務付けられています(パートタイム労働法第 13 条)。説明義務が課せられる具体的な内容は、パートタイム労働法において事業主が措置を講ずることとされている以下の事項(義務及び努力義務事項)です。パートタイム労働者は労働条件がわかりにくくなることも多いので、きちんと説明して、パートタイム労働者が納得して働けるようにすることが重要です。

説明義務が課される事項

労働条件の文書交付等、就業規則の作成手続、待遇の差別的取扱い禁止、賃金の決定方法、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、通常の労働者への転換を推進するための措置

多店舗展開している場合、採用や労働条件の決定などについて、どこまでを店舗の権限としているか、契約主体をどのようにしているか等は企業によって異なりますが、本社管理部門が基本的な労働条件の仕組みを整備し、運用は店舗に任せる場合が多いと考えられます。本社管理部門は、仕組みを整備することにとどまらず、きちんとパートタイム労働者に労働条件を文書で明示することに加え、口頭でも説明することが望ましいことを、各店舗に周知徹底することが求められます。なお、労働条件通知書で、1日又は 1週間の所定労働時間及び所定労働日数が通常の所定労働時間の概ね 4分の 3未満であり社会保険の適用対象でなかった場合であっても、その後の勤務時間の変更等により恒常的に上記要件を満たすこととなった場合には、その時点から、社会保険の適用対象となります。

18

Page 20: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

モデル労働条件通知書作成例

19

60

労働条件通知書

年 月 日 殿

事業場名称・所在地 使 用 者 職 氏 名

契約期間 期間の定めなし、期間の定めあり( 年 月 日~ 年 月 日) ※以下は、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合に記入 1 契約の更新の有無 [自動的に更新する・更新する場合があり得る・契約の更新はしない・その他( )]2 契約の更新は次により判断する。 ・契約期間満了時の業務量 ・勤務成績、態度 ・能力 ・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況

・その他( )

就業の場所

従事すべき 業務の内容

始業、終業の時刻、休憩時間、就業時転換((1)~(5)のうち該当す るもの一つに○を付けること。)、所定時間外労働の有無に関する事項

1 始業・終業の時刻等 (1) 始業( 時 分) 終業( 時 分) 【以下のような制度が労働者に適用される場合】 (2) 変形労働時間制等;( )単位の変形労働時間制・交替制として、次の勤務時間の

組み合わせによる。 始業( 時 分) 終業( 時 分) (適用日 ) 始業( 時 分) 終業( 時 分) (適用日 ) 始業( 時 分) 終業( 時 分) (適用日 ) (3) フレックスタイム制;始業及び終業の時刻は労働者の決定に委ねる。

(ただし、フレキシブルタイム(始業) 時 分から 時 分、 (終業) 時 分から 時 分、

コアタイム 時 分から 時 分) (4) 事業場外みなし労働時間制;始業( 時 分)終業( 時 分) (5) 裁量労働制;始業( 時 分) 終業( 時 分)を基本とし、労働者の決定に委ね

る。 ○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条、第 条~第 条 2 休憩時間( )分 3 所定時間外労働の有無

( 有 (1週 時間、1か月 時間、1年 時間),無 ) 4 休日労働( 有 (1か月 日、1年 日), 無 )

休 日 及び

勤 務 日

・定例日;毎週 曜日、国民の祝日、その他( ) ・非定例日;週・月当たり 日、その他( ) ・1年単位の変形労働時間制の場合-年間 日 (勤務日)

毎週( )、その他( ) ○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条

休 暇 1 年次有給休暇 6か月継続勤務した場合→ 日 継続勤務6か月以内の年次有給休暇 (有・無) → か月経過で 日 時間単位年休(有・無) 2 代替休暇(有・無) 3 その他の休暇 有給( ) 無給( ) ○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条

(次頁に続く)

10.労働条件通知書の作成例

Page 21: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

20

61

賃 金 1 基本賃金 イ 月給( 円)、ロ 日給( 円)

ハ 時間給( 円)、 ニ 出来高給(基本単価 円、保障給 円) ホ その他( 円) ヘ 就業規則に規定されている賃金等級等

2 諸手当の額又は計算方法 イ( 手当 円 /計算方法: ) ロ( 手当 円 /計算方法: ) ハ( 手当 円 /計算方法: ) ニ( 手当 円 /計算方法: ) 3 所定時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率 イ 所定時間外、法定超 月60時間以内( )% 月60時間超 ( )% 所定超 ( )% ロ 休日 法定休日( )%、法定外休日( )% ハ 深夜( )% 4 賃金締切日( )-毎月 日、( )-毎月 日 5 賃金支払日( )-毎月 日、( )-毎月 日 6 賃金の支払方法( )

7 労使協定に基づく賃金支払時の控除(無 ,有( )) 8 昇給( 有(時期、金額等 ) , 無 ) 9 賞与( 有(時期、金額等 ) , 無 ) 10 退職金( 有(時期、金額等 ) , 無 )

退職に関す る事項

1 定年制 ( 有 ( 歳) , 無 ) 2 継続雇用制度( 有( 歳まで) , 無 ) 3 自己都合退職の手続(退職する 日以上前に届け出ること) 4 解雇の事由及び手続 ○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条

そ の 他 ・社会保険の加入状況( 厚生年金 健康保険 厚生年金基金 その他( )) ・雇用保険の適用( 有 , 無 ) ・その他

・具体的に適用される就業規則名( ) ※以下は、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合についての説明です。 労働契約法第18条の規定により、有期労働契約(平成25年4月1日以降に開始するもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末日までに労働者から申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約に転換されます。

※ 以上のほかは、当社就業規則による。

※ 短時間労働者の場合、本通知書の交付は、労働基準法第 15 条に基づく労働条件の明示及び短時間労働者

の雇用管理の改善等に関する法律第6条に基づく文書の交付を兼ねるものです。

※ 登録型派遣労働者に対し、本通知書と就業条件明示書を同時に交付する場合、両者の記載事項のうち一致

事項について、一方を省略して差し支えありません。

※ 労働条件通知書については、労使間の紛争の未然防止のため、保存しておくことをお勧めします。

Page 22: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

62

【記載要領】

1.労働条件通知書は、当該労働者の労働条件の決定について権限をもつ者が作成し、本人に交付してください。

2.各欄において複数項目の一つを選択する場合には、該当項目に○をつけてください。

3.下線部、破線内及び二重線内の事項以外の事項は、書面の交付により明示することが労働基準法により義務付けられている

事項です。また、退職金に関する事項、臨時に支払われる賃金等に関する事項、労働者に負担させるべきものに関する事項、

安全及び衛生に関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項、表彰及び制裁に関する事

項、休職に関する事項については、当該事項を制度として設けている場合には口頭又は書面により明示する義務があります。

1.契約期間

労働基準法に定める範囲内とする。また、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合には、契約の更

新の有無及び更新する場合又はしない場合の判断の基準(複数可)を明示する。 (参考)労働契約法第 18 条第1項の規定により、期間の定めがある労働契約の契約期間が通算5年を超えるとき

は、労働者が申込みをすることにより、期間の定めのない労働契約に転換されるものである。この申込みの権利は

契約期間の満了日まで行使できる。

2.就業の場所

従事すべき業務の内容

雇入れ直後のものを記載することで足りるが、将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは

差し支えない。

3.始業、終業の時刻、

休憩時間、就業時転換、

所定時間外労働の有無

に関する事項

当該労働者に適用される具体的な条件を明示する。また、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制等

の適用がある場合には、次に留意して記載する。 ○変形労働時間制:適用する変形労働時間制の種類(1年単位、1か月単位等)を記載する。その際、交替制でな

い場合、「・交替制」を=で抹消する。 ○交替制:シフト毎の始業・終業の時刻を記載する。また、変形労働時間制でない場合、「( )単位の変形労

働時間制・」を=で抹消する。 ○フレックスタイム制:コアタイム又はフレキシブルタイムがある場合はその時間帯の開始及び終了の時刻を記載

する。コアタイム及びフレキシブルタイムがない場合、かっこ書きを=で抹消する。 ○事業場外みなし労働時間制:所定の始業及び終業の時刻を記載する。 ○裁量労働制:基本とする始業・終業時刻がない場合、「始業··········を基本とし、」の部分を=で抹消する。

4.休日及び勤務日 所定休日又は勤務日について曜日又は日を特定して記載する。

5.休暇

年次有給休暇は6か月間継続勤務し、その間の出勤率が8割以上であるときに与えるものであり、その付与日数

を記載する。時間単位年休は、労使協定を締結し、時間単位の年次有給休暇を付与するものであり、その制度の有

無を記載する。代替休暇は、労使協定を締結し、法定超えとなる所定時間外労働が1か月 60 時間を超える場合に、

法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払に代えて有給の休暇を与えるものであり、その制度の有無を記載す

る。(中小事業主を除く。) また、その他の休暇については、制度がある場合に有給、無給別に休暇の種類、日数(期間等)を記載する。

前記3、4及び5については、明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、「所定時間外労働の有無」以外の事項については、

勤務の種類ごとの始業及び終業の時刻、休日等に関する考え方を示した上、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すこ

とで足りるものである。

6.賃金

基本給等について具体的な額を明記する。ただし、就業規則に規定されている賃金等級等により賃金額を確定し

得る場合、当該等級等を明確に示すことで足りるものである。

○法定超えとなる所定時間外労働については2割5分、法定超えとなる所定時間外労働が1か月 60 時間を超える

場合については5割(中小事業主を除く。)、法定休日労働については3割5分、深夜労働については2割5分、

法定超えとなる所定時間外労働が深夜労働となる場合については5割、法定超えとなる所定時間外労働が1か月

60 時間を超え、かつ、深夜労働となる場合については7割5分(中小事業主を除く。)、法定休日労働が深夜労

働となる場合については6割を超える割増率とする。

○破線内の事項は、制度として設けている場合に記入することが望ましい。ただし、短時間労働者については、昇

給の有無、賞与の有無及び退職金の有無については必ず記入する。

○昇給、賞与が業績等に基づき支給されない可能性がある場合や、退職金が勤続年数に基づき支給されない可能性

がある場合は、制度としては「有」を明示しつつ、その旨を明示する。

7.退職に関する事項

退職の事由及び手続、解雇の事由等を具体的に記載する。この場合、明示すべき事項の内容が膨大なものとなる

場合においては、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りるものである。

(参考) なお、定年制を設ける場合は、60 歳を下回ってはならない。

また、65 歳未満の定年の定めをしている場合は、高年齢者の 65 歳までの安定した雇用を確保するため、次の①

から③のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じる必要がある。

①定年の引上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年の定めの廃止

8.その他

当該労働者についての社会保険の加入状況及び雇用保険の適用の有無のほか、労働者に負担させるべきものに関

する事項、安全及び衛生に関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項、表

彰及び制裁に関する事項、休職に関する事項等を制度として設けている場合に記入することが望ましい。

各事項について、就業規則を示し当該労働者に適用する部分を明確にした上で、就業規則を交付する方法によることとした場合、具体的に記

入することを要しない。

* この通知書はモデル様式であり、労働条件の定め方によっては、この様式どおりとする必要はありません。

○網掛けの箇所は、パートタイム労働法により、明示が義務付けられている事項です。

21

Page 23: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

雇用契約書を工夫し、要望にきめ細かく対応~D社(関東地方、各種商品卸売業、従業員数非公開)~

パートタイマーにとって働きやすい環境にするため、勤務時間は希望に合わせてきめ細かく対応して

いる。雇用契約書の「勤務する曜日と時間」の項は、パートタイマーの希望時間を聞いて記入するよう

にしている。また、合計時間の目安も記載されている。これらの時間を可能稼動時間と週最低保障時

間とし、勤務シフト表作成に反映させている。

雇用契約書(一部抜粋)月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日 日曜日

始業時間  :  :  :  :  :  :  :終業時間  :  :  :  :  :  :  :曜日別に上記欄に記入された時間を勤務可能な範囲とし、1週間の休憩時間を除いた実働時間の合計の目安は、下に示す時間とする。

                    合計の目安   :  時間

☞ 73 頁 社会保険加入の厳正な対応~D社~

(2)就業規則の作成< POINT>

義務(労働基準法)

・パートタイム労働者を含め、常時 10 人以上の労働者を使用している事業所では、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。就業規則の作成又は変更に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合等の意見を聴かなければならない。

努力義務・事業主は、パートタイム労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は

変更しようとするときは、当該事業所において雇用するパートタイム労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。

小売業のPOINT

・小売業の場合、企業規模が大きくても、1 事業所当たりの労働者数が 10 人を下回る場合も多くみられる。そのような事業所においても、就業規則を作成し、パートタイム労働者に周知することが望まれる。

パートタイム労働者を含め常時 10 人以上の労働者を使用する事業主は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法第 89 条)。就業規則は通常の労働者ばかりでなく、パートタイム労働者も含む全ての労働者について作成する必要があります。通常の労働者とパートタイム労働者とで適用が異なる事項がある場合には、パートタイム労働者用の就業規則を別立てで作成することが望ましいです。別立てで作成しない場合には、就業規則の中に特別規定を盛り込むことも可能です。なお、小売業の場合、企業規模が大きくても、1事業所当たりの労働者数が 10 人を下回る場合も多くみられます。10 人を下回る事業所においても就業規則を作成し、パートタイム労働者に周知することが望まれます。

22

Page 24: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

就業規則の記載事項

必ず規定すべき事項

1. 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、労働者を 2 組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項等(育児休業、介護休業等も含む。)

2. 賃金(臨時の賃金等を除く。)の決定・計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期、昇給に関する事項

3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

定めをする場合に規定すべき事項

1. 退職手当の定めをする場合には、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払の時期に関する事項

2. 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合には、これに関する事項

3. 労働者に食費、作業用品その他負担をさせる定めをする場合には、これに関する事項

4. 安全及び衛生に関する定めをする場合には、これに関する事項

5. 職業訓練に関する定めをする場合には、これに関する事項

6. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合には、これに関する事項

7. 表彰及び制裁の定めをする場合には、その種類及び程度に関する事項

8. 以上のほか、当該事業所の労働者のすべてに適用される定めをする場合には、これに関する事項

就業規則の作成又は変更に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合等の意見を聴かなければなりません(労働基準法第 90…条)。さらに、パートタイム労働者に係る事項について就業規則を作成又は変更する場合は、当該事業所において雇用するパートタイム労働者の過半数を代表すると認められるものの意見も聴くように努めなければなりません(パートタイム労働法第 7条)。この「過半数を代表すると認められるもの」は、パートタイム労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、そのような労働組合がない場合には、パートタイム労働者の過半数を代表する者が考えられます。なお、過半数代表者は、監督または管理の地位にある者でないこと、及び就業規則の作成・変更の際に事業主から意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手などの方法により選出された者であり、事業主の意向によって選出された者ではないことが必要であり(労働基準法施行規則第6条の 2第 1項)、さらに事業主は、労働者が過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないものとされています(労働基準法施行規則第 6条の 2第 3 項)。また、パートタイム労働者が、パートタイム労働法第 7条に定める過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにするものとされています(パートタイム労働指針第 3の 3の(1))。

(3)労働条件の周知方法< POINT>

義務(労働基準法) ・就業規則は、労働者に周知しなければならない。

法定外の重要事項

・就業規則の周知のため、勤務上の注意点、身だしなみや安全衛生管理、接客、人事評価制度や賃金体系等のルールのほか、福利厚生の案内や保険・税金等の制度の解説をまとめた案内(「入社時ガイドブック」等)を作成・配布するなどの工夫を行うことが望ましい。

・入社時に研修等を実施して、労働条件の内容等の周知を図ることが望ましい。

23

Page 25: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

就業規則は、①各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける、②書面で交付する、③磁気テープ、磁気ディスクなどに記録し、労働者が常時確認できるようにする、のいずれかの方法により、労働者に周知しなければなりません(労働基準法第 106 条第 1項、労働基準法施行規則第 52 条の 2)。契約更新時にも研修等を実施し、就業規則のほか、勤務をする上での注意点等についても再度確認することが望まれます。

就業規則の周知方法

1.常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける

2.書面で労働者に配布する

3.磁気ディスク(CD-R等)等に記録し、労働者が各事業所において記録内容を常に確認できるパソコン等を設置する(社内LANでの閲覧等)

就業規則の掲示、配布等だけでなく、よりわかりやすく解説したガイドブック等を作成、配布することが役立ちます。例えば、勤務をする上での注意点、身だしなみや安全衛生管理、接客、人事評価制度や賃金体系等のルールのほか、福利厚生の案内や保険・税金等の制度の解説を一冊にまとめた「入社時ガイドブック」等を、雇い入れ時に配布している企業が多くみられます。小売業では、接客、品出し等の業務に就くパートタイム労働者が多いことから、携行していつでも見られるように、ポケットに入るサイズで簡単にまとめるなどの工夫も考えられます。また、入社時研修等を行い、仕事の説明だけでなく、労働条件の説明を同時に行うことも考えられます。小売業の各店舗では、毎月あるいは日々一人ずつなど分散して入社する場合が多く、一人ひとりのために研修を行うことは大変かもしれません。しかしながら、このような機会を設けることで、パートタイム労働者の納得性の向上にもつながり、早期離職を防ぐ効果も期待されます。なお、契約更新時にも研修等を実施し、就業規則のほか、勤務をする上での注意点等についても再度確認することが望まれます。

「入社のしおり」を用いた入社時研修での労働条件の周知徹底~(株)ヤオコー(埼玉県、飲食料品小売業、従業員数17,467名、うちパートタイム労働者数14,915名)~

毎月各店舗を回り、新規採用のパートナー社員、ヘルパー社員(いずれもパートタイム労働者)に対し

て入社時研修を行っている。研修では、同社で働く上で必要なことがまとめられた「入社のしおり」を配

布し、経営理念の徹底、働く上でのルール、衛生管理、接客等の業務における注意を促すだけでなく、

勤怠管理、職務等級制度、給与体系、慶弔関係、保険・税金関係に関する説明を行い、労働条件の理解

を促している。

24

Page 26: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

賃金2

(1)職務の内容に密接に関連する賃金(基本給、賞与、役付手当等)の決定方法< POINT>

義務

【対象者1】通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(タイプ①)

・職務に関連する賃金(基本給、賞与、役付手当等。以下「職務関連賃金」という。)については、パートタイム労働者であることを理由として、その賃金の決定について、差別的取扱いをしてはならない。

努力義務

【対象者2】通常の労働者と職務の内容と人材活用の仕組みや運用などが同じパートタイム労働者(タイプ②)

・人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一である一定の期間は、その通常の労働者と同一の方法により職務関連賃金を決定するように努めるものとする。

【対象者3】上記【対象者1,2】以外のパートタイム労働者(タイプ③④)

・事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用するパートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験などを勘案して、職務関連賃金を決定するように努めるものとする。

小売業のPOINT

・職種、勤務時間、勤務する曜日等が異なるほか、同じ職種のなかでも、補助的業務についている場合もあれば、指導的な役割を担っている場合もある。これらの条件に加え、正社員の賃金水準を考慮し、職務等級制度の導入や勤務する時間帯・曜日による加算手当の支給等により、役割や勤務時間帯に応じた賃金が支給できるようにすることが重要である。

職務の内容に密接に関連する賃金(基本給、賞与、役付手当等。以下「職務関連賃金」という。)の決定方法については、4頁の「Ⅱパートタイム労働者のタイプと均等・均衡待遇の基本的考え方」で説明したとおり、パートタイム労働者の就業の実態により適用されるパートタイム労働法上の規定が異なります。「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」(タイプ①)は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されています(パートタイム労働法第 8条)。なお、通常の労働者と就業の実態が同じと判断されたパートタイム労働者の賃金の決定について、所定労働時間が短いことに基づく合理的な差異や、勤務成績を評価して生じる待遇の差異については許容されます。また、「通常の労働者と比較して、パートタイム労働者の職務の内容と少なくとも一定の期間の人材活用の仕組みや運用などが同じパートタイム労働者」(タイプ②)については、その一定の期間の職務関連賃金について、通常の労働者と同一の方法で決定することが努力義務とされています(パートタイム労働法第 9条第 2項)。さらに、「通常の労働者と職務の内容が同じパートタイム労働者」(タイプ③)や「通常の労働者と職務の内容も異なるパートタイム労働者」(タイプ④)については、事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用するパートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又

25

Page 27: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

は経験などを勘案して、その職務関連賃金を決定するように努めるものとされています(パートタイム労働法第 9条第1項)。なお、具体的にどの要素を勘案するかは事業主に委ねられています。しかしながら、事業主はパートタイム労働者から求めがあったときは、待遇の決定に当たって考慮した事項を説明しなければならない点に留意する必要があります。パートタイム労働者から説明を求められた際に合理的な説明ができるような決定方法をとるようにしましょう(パートタイム労働法第 13 条)。小売業では、例えばスーパーマーケットであれば、販売・レジ業務のほか、食品加工業務やバックヤード業務など多様な職種があったり、勤務時間帯、勤務する曜日、繁忙期などにより、職務の負担が異なったりします。また、同じ職種のなかでも、正社員と同じように指導的な役割を担っている場合もあれば、補助的業務に就いている場合もあります。このため、正社員の賃金水準を勘案して、役割や勤務時間帯に応じた賃金が支給できるよう、例えば、職務等級制度を導入したり、勤務する時間帯・曜日による加算手当等を支給したりすることにより、処遇していくことが重要です。また、人事異動等はなく職種が限定されているようなパートタイム労働者でも、店長やパートリーダーなどの指導者として活躍するケースが多くみられます。パートタイム労働者の貢献に応じた処遇とするためにも、特に職務関連賃金(基本給、賞与、役付手当等)について、個人の果たしている役割や責任、経験等に鑑み、より正社員との均等・均衡を意識した賃金の支給となるよう努める必要があります。

仕事給を柱とした月例給与とメリハリをつけた手当~B社(東京都、飲食料品小売業、従業員約 9,300 名、パート約 7,200 名)~

同社のパートナー(パートタイム労働者)には、「キャリアパートナー」、「リーダーパートナー」、「フレッシュ

パートナー」の3区分あり、それぞれの定義は以下のとおりである。

名 称 定 義

キャリアパートナー 部門担当者として、計画から販売までの一連の管理業務を安心して任せられる者

リーダーパートナー部門担当者不在時に、担当者のアドバイスの下、他のパートナーをとりまとめて業務を遂行

できる者

フレッシュパートナー 部門担当者のアシスト業務や複数部門の定型業務、限られた特定業務の管理を行える者

月例給与は、大きくは仕事給、地域給、諸手当に分かれている。

仕事給は、主に基本時間給(入社時時給)+特定職種給+資格給+役割給で構成されている。資格給は、

キャリアパートナー、リーダーパートナー、フレッシュパートナーの区分ごとに、習得した資格の数に応じ

て決定している。役割給は、キャリアパートナー、リーダーパートナーに対して支給されている。

特徴的な手当として、朝夜時間帯手当、日祭日勤務手当があげられる。小売業に多くみられる時間帯

や曜日に応じた手当であるが、朝夜時間帯手当は午前 5 時~午前 8 時、午後 6 時~午後 10 時の勤務で

+ 200 円、日祭日勤務手当は+125 円と高水準となっており、希望者が集まりやすくなっている。

賞与は、必須資格を習得した者に対して支給される。時給や労働時間をベースにした計算式に人事考

課の結果を加えて算出し、おおよその支給額は、リーダーパートナーで正社員の支給月数の約 60%、キャ

リアパートナーで約 80%と、正社員との均衡を意識した額となっている。

26

Page 28: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

正社員に準じた人事考課に基づく昇給制度の整備~(株)八木橋(埼玉県、各種商品小売業、従業員数約370名、うちパートタイム労働者数約160名)~

パート社員(パートタイム労働者)の考課の結果は、合計点から導き出された 5 段階評価を賃金テーブ

ルに当てはめ、毎年 4 月の賃金改訂(降給もあり)に反映される。従来は賃金表もなく、20 円刻みでほ

ぼ全員が横並びに、採用時時給プラス 100 円の範囲で昇給していたが、時給の幅を 200 円に拡大し 5

円刻みにした賃金表を新たに定め、考課結果と現時給の位置に応じて号数が変わる仕組みを整備した。

賃金表は3つのゾーンに区切され、ゾーンが上がるにつれ求められる能力が高くなるため、同じ能力の

まま仕事をしていると昇給が鈍化する。反対に、求められる能力より低い評価となれば、降給の可能性

もある。

なお、こうした昇給の考え方は、正社員と同じである。

(2)上記(1)以外の賃金(退職手当、通勤手当、家族手当等)の決定方法< POINT>

義務

【対象者1】通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(タイプ①)

・(1)で記載した職務関連賃金以外の賃金(退職金、通勤手当、家族手当等。以下、「職務非関連賃金」という。)についても、パートタイム労働者であることを理由として、その賃金の決定について、差別的取扱いをしてはならない。

指針【対象者2】上記【対象者1】以外のパートタイム労働者(タイプ②③④)

・職務非関連賃金についても、パートタイム労働者の就業の実態や通常の労働者との均衡などを考慮して定めるように努めるものとする。

「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」(タイプ①)については、職務非関連賃金についても、パートタイム労働者であることを理由として、その賃金の決定について、差別的取扱いをしてはならないこととされています(パートタイム労働法第 8条)。通勤手当や家族手当等のように、時間比例の支給とすることに合理性がないものについては、通常の労働者と同様の取扱いとする必要があります。また、パートタイム労働法第 8条が適用されないパートタイム労働者(タイプ②③④)については、職務非関連賃金について、パートタイム労働者の就業の実態や通常の労働者との均衡などを考慮して定めるように努めてください(パートタイム労働指針第 3の 1の(2))。通常の労働者に支払っている手当等がある場合には、各々の手当の性格やパートタイム労働者のモチベーション向上の観点などを踏まえた対応が望まれます。

勤続 5年以上に退職金を支給、継続勤務のインセンティブに~B社(東京都、飲食料品小売業、従業員約 9,300 名、パート約 7,200 名)~

勤続 5 年以上のパートナー社員(パートタイム労働者)には、退職金が支給される。退職時の時給や契

約時間を基にした計算式で算出され、長期勤続のリーダーパートナー(部門担当者不在時に、担当者のア

ドバイスの下、他のパートナーをとりまとめて業務を遂行できる者)やキャリアパートナー(部門担当者と

して、計画から販売までの一連の管理業務を安心して任せられる者)になるとかなり高水準となり、継続

勤務へのインセンティブとなっている。

27

Page 29: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 退職金制度について退職金制度は各社が独自に作る制度であり、もともと整備されていない企業もあります。しかし、退職金制度を整備することで処遇改善を図れば、人材確保が容易になったり、人材の定着率が高まるなどの効果が得られる可能性があります。ただし、中小企業では自社単独での退職金制度を運営することは困難な場合もあります。このような場合は、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する「中小企業退職金共済制度」や自治体が運営する共済制度などを利用すると良いでしょう。「中小企業退職金共済制度」は、新規に加入する事業主に対して、加入後 4か月目から 1年間、国が掛金月額の 1/2(従業員ごとに上限 5,000 円)を助成するなどのメリットもあります。

独立行政法人勤労者退職金共済機構「中小企業退職金共済制度」http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/

(3)処遇改善を行う事業主に対する支援厚生労働省では、パートタイム労働者などの非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、『キャリアアップ助成金』を支給しています。キャリアアップ助成金のうち、「処遇改善コース」では、すべての有期契約労働者等の基本給の賃金テーブルを改定し、2%以上増額させるなど、一定の要件を満たした事業主に助成を行っています。さらに、処遇改善に当たって、8頁の「職務評価」を活用した場合には、職務評価加算を受けることができます。

「キャリアアップ助成金」の「処遇改善コース」の概要

 すべての有期契約労働者、正規雇用の労働者以外の無期雇用労働者(短時間労働者、派遣労働者を含む)の基本給の賃金テーブルを改定し、2%以上増額させるなど一定の要件を満たした事業主に助成する。 ◆助成額:(カッコ内は大企業の額)      …1 人当たり 1万円(0.75 万円)< 1年度・1事業所 100 人まで>      ※さらに、「職務評価」を活用して賃金テーブルの改訂を行った場合には、      …1 事業所当たり 20 万円(15 万円)を加算 < 1年度・1事業所 1回まで> <厚生労働省ホームページ キャリアアップ助成金のご案内>http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

28

Page 30: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

教育訓練等の能力開発3

(1)教育訓練の体系化< POINT>

義務

【対象者1】 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(タイプ①)

・事業主は、すべての教育訓練の実施について、通常の労働者と差別的取扱いをしてはならない。

【対象者2】通常の労働者と職務の内容が同じパートタイム労働者(タイプ②③)

・事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、その通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容が同じパートタイム労働者が既にその職務に必要な能力を有している場合を除き、そのパートタイム労働者に対しても実施しなければならない。

努力義務

【対象者】上記【対象者1】以外のパートタイム労働者(タイプ②③④)

・事業主は、上記のほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用するパートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力及び経験などに応じ、そのパートタイム労働者に対して教育訓練を実施するように努める。

法定外の重要事項

・パートタイム労働者のスキルアップに対する意欲を引き出すため、段階的な研修や実習等の教育訓練を体系化し、スキルアップした成果を評価し処遇に反映させるなどの取組を行うことが求められる。

小売業のPOINT

・職業能力評価基準(※)等を参考にしながら、小売業に従事する者が身に付けるべきスキルを体系化して、段階的な OJT や Off -JTの実施、習熟度合いに応じたスキルレベルの認定などの工夫をしていくことが望まれる。

・教育研修を行うことで、サービスレベルの向上につながるのはもちろん、優秀な人材の定着率の向上、モラールアップを図ることができる。

※ 「職業能力評価基準」とは、仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を業種別、職種・職務別に整理したもので、厚生労働省が策定している公的な職業能力の評価基準です。採用や、人材育成、人事評価、さらには検定試験の「基準書」として、様々な場面で活用できるものとなっています。

教育訓練については、職務の遂行に必要な能力を身に付けさせるための訓練と、それ以外のキャリアアップのための訓練などに分けて、以下のような対応が求められています。

① 入社時の導入研修採用したパートタイム労働者が職場に慣れ、その後も長く働き続けていけるよう、入社時においては特にきめ細かなサポートが重要です。パートタイム労働者の入社時には、労働条件や就業規則の明示に加えて、実務的な職場のルールや安全衛生上の注意点、困ったことがあった時の相談先などを、明確にパートタイム労働者に伝えておくことが望まれます。必要事項をまとめたハンドブックを作成し、入社時に手渡しても良いでしょう。

29

Page 31: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

老舗の伝統と理念を伝える丁寧な入社時教育を個別に実施~(株)八木橋(埼玉県、各種商品小売業、従業員数約370 名、うちパートタイム労働者数約160 名)~

パート社員(パートタイム労働者)の採用は必要のつどであるため、同時期にはほとんど一人しか入社

しない。その一人のために、専門のトレーナーが半日かけてオリエンテーションを行っている。非効率の

ようであるが、「当社を愛してくれるお客様よりも早く当社のことを知ってもらい、同じ心を持ってお客様

に接して欲しいから」(同社担当者)との考えに基づくものである。

オリエンテーションでは、会社の歴史と経営理念についてのレジュメと、会社が紹介されているいくつ

かの新聞記事を配布している。記事には明治時代のお店の写真や創業者から伝わる想いが記載されてお

り、長く地域から愛されているお店であることがよく分かる。

② 職務の遂行に必要な能力を身に付けさせるための訓練通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(タイプ①)についてはもとより、通常の労働者と職務の内容が同じパートタイム労働者(タイプ②③)についても、その職務を遂行するに当たって必要な知識や技術を身に付けるために通常の労働者に実施している教育訓練については、パートタイム労働者が既にその必要な知識や技術を身に付けている場合を除き、通常の労働者と同様に実施することが義務付けられています(パートタイム労働法第 10 条第 1項)。例えば、店頭販売員として従事している通常の労働者にその職務遂行上必要な技術や知識に関する訓練を実施しているときは、同じ職務に従事しているパートタイム労働者に対しても実施しなければなりません。時間の制約があり、通常の労働者に対して実施している教育訓練に参加できないパートタイム労働者については、その教育訓練を受講すれば平均的に身に付けられる知識、技能などと同様の内容を習得できる教育訓練をパートタイム労働者が受講できるような形で別途提供する必要があります。また、入社時研修の充実やOJT担当者を決める等により、計画的な教育を行うことで、未経験者であってもスムーズに業務に対応することができるようになり、サービスレベル向上による顧客満足度の向上や優秀な人材の定着率の向上につながることが期待されます。これらの教育訓練は、それを受講することで、各社で導入されている職務等級制度又は職能資格(等級)制度で求められる知識や技能の習得に結びつきます。昇格や登用等の人事制度につながるように体系化するとより効果的です(詳細は、「4.人事評価・キャリアアップ」を参照)。

ステップアップ資格挑戦者に対する個別指導により、スキルアップとステップアップをサポート~(株)遠鉄ストア(静岡県、飲食料品小売業、従業員数約2,700名、うちパートタイム労働者数約2,100名)~

ステップアップ資格認定制度を実施しており、ジュニア(B、A)、ミドル(B、A)、シニア(B、A)

の 6 段階の資格を設け、それぞれの資格に必須となる能力、技能を青果、精肉等の部門ごとに定めている。

このステップアップ資格認定制度により上位資格に挑戦するパートナー社員(パートタイム労働者)に対し、

指導担当者が「OJT計画書」を作成し、習得すべき項目を設定する。指導担当者は計画書に基づいて教育・

指導を行い、半年後に各項目の習得状況を判定している。指導担当者が個別に指導及びフォローを行う

ことで、スキル習得のサポートと同時に、チャレンジへのモチベーション維持を図っている。

30

Page 32: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

③ キャリアアップのための訓練など職務に関連しない訓練通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(タイプ①)については、正社員との差別的取扱いが禁止されています(パートタイム労働法第 8条)。また、タイプ①以外のパートタイム労働者については、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力及び経験などに応じて実施することが努力義務とされています(パートタイム労働法第 10 条第 2項)。パートタイム労働者が働きがいをもって業務に従事し、能力を最大限発揮してもらうためには、業務遂行のために必要な知識や能力、技術を体系化し、それを身につけられる環境を整えることが重要です。そのためには、段階的な研修や実習等の教育訓練を体系化し、スキルアップした成果を評価し処遇に反映させるなどの取組を行うことで、意欲を引き出していくことが求められます。中央職業能力開発協会では様々な業種の職業能力評価基準を作成しており、小売業では、スーパーマーケット業、DIY業、百貨店業等の基準があります。このような職業能力評価基準などを参考にしながら、自社の業務に合わせて職業能力評価基準を作成し、業務に必要な能力等を明確にすることや、段階的なOJTや Off-JT の実施、習熟度合いに応じたスキルレベルの認定などの工夫をしていくことが望まれます。なお、「職業能力評価基準」に関する詳細については、下記のホームページをご覧ください。

<職業能力評価基準中央職業能力開発協会のホームページ>

 http://www.hyouka.javada.or.jp/user/dn_standards.html

31

Page 33: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

通信講座の受講・参考書籍の購入補助~(株)横浜ポンパドウル(神奈川県、飲食料品小売業、従業員数約1,060名、うちパートタイム労働者数約700名)~

製造部の社員には、パン製造に関するすべての工程を行う技術が求められる。また、販売部の社員に

は地域や客層、あるいは天候などの条件により売れ筋のパンを的確にオーダーする能力が求められる。

製造部の社員には、一定年数の経験を積み、上司に推薦されたものだけが受験できるベッカーマイス

ターチャレンジシステムがある。また、販売部の社員は、マーケティングから店舗運営方針、店内レイア

ウトから、商品構成、接客スタイルまで店づくりのすべてが任される。

これらに対し、パートは職域が限定されているため、正社員に必要なスキルを習得することができにく

い状況がある。そこで、正社員として必要なスキルを習得できるよう通信講座の受講・参考書籍の購入に

関しては、費用の半額を社員と同様、パートにも補助している。

通信講座受講・参考書籍購入補助の概要

人事課行

FAX:045-681-0419

TEL:045-662-7156

 ポンパドウルでは自己啓発の一環として、以下の3冊の推薦図書を会社を通して購入した場合に、代金の

半額を補助しています。

●推薦図書と自己負担額

 パン「こつ」の科学                        840円 (定価1680円)

 これだけは覚えたいベーカリー販売員の基礎の基礎  788円 (定価1575円)

 新しい製パン基礎知識               756円 (定価1512円)

※パートタイマー以上の役職の方で、1人1種類につき1回のみ補助を受けることができます。

 (同じ種類の本を2冊以上購入する場合、2冊目以降は会社の補助はありません)

●徴収方法: 自己負担額を、翌月の給与より天引き致します。

●申し込み方法

 下記の申込み書に必要事項を記入、上司の捺印後、毎月20日までに人事課へFAXして下さい。 

 本が納品され次第、店舗へ送付します。(出版社の在庫により若干変更します)

 ご不明な点がございましたら、人事課までお問合せ下さい。

人事課TEL:045-662-7156

切り取らずにこのままFAXしてください

*2冊目以降は自己負担です。

※人事課記入欄

発送日 入力

販売員

1

パンこつ

発注日

3

推薦図書発注依頼書

2

基礎知識

納品日 支給金 経理

上司印

発注日:平成   年   月   日                   店  製 ・ 販

パン「こつ」の科学

製パン基礎知識

製パン基礎知識

販売基礎の基礎

販売基礎の基礎

パン「こつ」の科学

製パン基礎知識

販売基礎の基礎

パン「こつ」の科学

書籍名 購入冊数*社員番号 氏  名

製パン通信講座受講のご案内

◆受講資格:パンを学ぼうとする方はすべて資格があります。

◆受講期間:平成25年10月開講~平成26年9月終了

◆テキスト配本:10月初めから毎月1回 全11冊 (1月休講)申込書に記入した住所に送付します。

◆受講料: 初級 - 36,000円 中級 - 41,000円

◆備考

・平成25年9月給与、平成26年3月給与より2回に分けて、半額ずつ控除します。

・ 全課程修了者(毎月課題を提出)には受講料の半額を会社より補填いたします。

(パートタイマーの役職以上の方のみ)

・受講希望者は申込書に必要事項を記入し、責任者押印の上、各店ごとに人事課へご提出ください。

※受講申込書は、7 月 20 日以降に各店へメールで送信します。

初級・中級別シートになっておりますのでご注意ください。

申込締切は 8 月 15 日です。厳守してください。

製パン通信講座 申込書 初級

所属  店

責任者氏名  印

どちらかに ふりがな

マル 氏名

8/15人事課必着でお願いします 人事課 FAX番号 045-681-0419

テ キ ス ト 送 付 先 の 住 所級 社員番号 郵便番号

初級 製 / 販 〒

初級 製 / 販 〒

初級 製 / 販 〒

初級 製 / 販 〒

初級 製 / 販 〒

初級 製 / 販 〒

初級 製 / 販 〒

初級 製 / 販 〒

32

Page 34: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

(2)計画的OJT< POINT>

法定外の重要事項

・労働者を成長させるための方向性を明確化し、段階を追って知識・技術を教え、仕事に対する姿勢や価値観を開発していくために、組織内の管理者並びに担当者の下で OJT を計画的に行うことが重要である。

・特にパートタイム労働法では、職務内容が通常の労働者と同じパートタイム労働者に対して、職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行うことが義務付けられていることから、それらに係る OJT は必ず行う必要がある。

小売業のPOINT

・チェーン展開をする企業が多い小売業では本部部門等が、全社共通の業務手順書を整備したり、研修を実施する者に対する研修会を行うなどして、正社員も含めた全従業員の OJT を計画的に実施することで、店舗のサービスを一定水準以上に保つことができる。

現場における仕事への従事を通じて行う教育訓練のことを「OJT(On…The…Job…Training)」と言いますが、これは労働者の能力開発の基礎となるものであり、パートタイム労働者に対する教育訓練の中でも重要な一要素となります。特にパートタイム労働法では、職務内容が通常の労働者と同じパートタイム労働者に対して、職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行うことが義務付けられていることから、それらに係るOJTは必ず行う必要があります。このOJTは、労働者を成長させるための方向性を明確化し、段階を追って知識・技術を教え、仕事に対する姿勢や価値観を開発していくために、組織内の管理者並びに担当者の下で計画的に行うことが重要です。また、OJTは仕事を通じて実施するものであるため、組織内の管理者並びに担当者が把握する個々の労働者の知識や技術の状況に応じて、きめ細かに実施することが可能です。小売業では、パートタイム労働者であっても、正社員と同様に、幅広い商品知識や接客技術等が求められることが少なくありません。また、接客においては、店舗や個人によって顧客への対応が異なることがないよう、対応方針を統一しておくことが望まれます。そこで、チェーン展開をする企業が多い小売業では、例えば、本部部門等が、全社共通の業務手順書を整備したり、研修を実施する者に対する研修会を行うなどして、正社員も含めた全従業員のOJTを計画的に実施することで、店舗のサービスを一定水準以上に保つことができます。業務手順書は、各人でのセルフチェックに利用することも可能なため自発的なスキルアップも可能となることはもちろん、店長や指導者の立場にある人であっても担当したことのない業務のやり方を学ぶためのツールとしても有効に活用できます。

33

Page 35: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

部門別OJT基準書の導入~(株)エコス(東京都、飲食料品小売業、従業員数4,604名、うちパートタイム労働者数3,714名)~

人事部と商品部、店舗が共働して、OJT基準書を作成した。部門別に、覚えるべき業務の一覧、作

業手順書(野菜のカットの仕方、魚のさばき方などを写真付で記載)のほか、売り場づくり、接客、マ

ネジメント等の多様な業務を項目出しした業務チェックリスト(業務ごとに、適切な行動を取っている

かをチェック)を作成し、チーフが新規採用者やメンバーのOJTの際に使うツールとして、各店舗に

配布している。今後は、ファイルの他にeラーニングを活用し、作業手順書の各手順を一工程ずつ画面

で見られるようにするなど、よりわかりやすいツールにしていく予定である。

この基準書に沿って教育や指導を行うことで、全店での作業の標準化、効率化を図ると同時に、パー

トナー(パートタイム労働者)のスキルアップを目指していく。

これまで、パートナーの教育では半日程度の集合研修を外部の研修施設を使って実施した後は、店舗

それぞれのやり方に応じたOJTに任せている側面もあったが、今後は集合研修ではなく、基準書を用

いたOJTに絞って現場で教育していく予定である。

青果部門作業手順書(例)

 手順

作業手順

①束ねら機の下にカウンタークロスを敷いて固定する。

写真

②キャベツの形を整え、テープを巻く準備をする。※●●を剥く。切口をきれいにする。

③葉の向きを考え、テープを引き出しキャベツに巻きつける

④写真の○の部分でテープとテープをつける。

⑥完成例⑤テープカッターでテープを切る。テープにゆるみがないように、しっかりと巻きつける。

審査回数チェック欄

手順

写真

審査回数チェック欄

一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目

一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目

34

Page 36: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

青果部門業務チェックリスト(例)

管理NO.: 業務名:納品荷下し~仕分け

店番: 店舗名: 社員番号: 氏名:

目項定判 №

判定

一回目

/ / / /

1 納品伝票を確認しながら正確に検品している。

2 納品された商品の箱に見えるように納品日を記入している。

3 納品した商品を必要な場所(要冷蔵・非冷蔵)ごとに振り分け

ている。

4 検品時に不良品が出た場合、適切な処理をしている。

(上司がいる場合には速やかに報告している)

5

審査日付 審査員名 審査印 業務評価

要練習 合格

コメント

二回目 三回目 四回目

※判定項目を確認し、していれば判定欄に「○」を記入する。

※判定欄の縦軸が全て「○」になった場合、この業務は「合格」とする。

35

Page 37: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

入社時研修から業務別・段階別の充実した教育訓練の実施~上新電機(株)(大阪府、機械器具小売業、従業員数約 5,500 名、うちパートタイム労働者数約 2,700 名)~

入社時研修はまず「基礎業務マニュアル」を使用して、1 日目には、会社概要や雇用契約についての説

明や同社の接客の基本として定める10 の行動基準「ハートフル 10」について説明し、2 日目には、レジ

業務の実習や個人情報保護等のコンプライアンス教育を行う。

次に、「スマイルパートナー(パートタイム労働者)育成速習マニュアル」を配布し、1 週間で身に付け

るべき基本的な事項を育成リーダー(原則は配属部門の主任(正社員))が指導し、1 週間経過時点で所

属長(原則店長)が評価する。「スマイルパートナー育成速習マニュアル」はレジ業務、バックヤード・売場、

モバイル営業、一般事務等業務ごとにあり、例えばレジ業務では、金銭授受の基本的な流れや商品の渡

し方など基本的なことから、在庫確認、商品の発注、工事の手配など、習得に時間を要する内容も記載

されている。1 週間で習得の程度を計り、その後はその時点での習熟度を元に、同じマニュアルを使って

繰り返し継続的に教育を行っていく。

習熟度が高まってくると、レジ業務、バックヤード・売場、モバイル営業、一般事務等業務ごとに定め

られた、より高度な内容がまとめられている業務別マニュアルに基づいた教育を行っている。

また、段階に応じた業務別の育成シートがあり、それらに基づいて教育を行っている。育成シートはス

テップ1からステップ 5 まで育成段階が分かれている。ステップ 1 は「ハートフル 10」ができているかや

身だしなみ等、同社で働く心構えが基準となっている。ステップ 2、ステップ 3 では業務ごとの習熟度や

達成度が求められるようになり、ステップ 4 では、新人スマイルパートナーの育成や土日祝日、夕方、正月、

盆等会社の勤務の要求に応じられるかなども含めて評価される。これは、リーダー育成の観点から入れて

いる項目である。ステップ 5 では、スマイルパートナーのリーダーとして、他のスマイルパートナーへの指示、

育成指導もできるかをみている。

(3)Off-JT・自己啓発支援< POINT>

法定外の重要事項

・労働者の能力開発のために外部の教育訓練機会も積極的に活用しながら、Off-JT を体系的に実施することが望ましい。そして Off-JT の機会については、通常の労働者のみならず、パートタイム労働者に対しても門戸を開放し、参加促進を図ることが望ましい。

・特にパートタイム労働法では、職務内容が通常の労働者と同じパートタイム労働者に対して、職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行うことが義務付けられていることから、それらに係る Off-JT は必ず行う必要がある。

・有期契約労働者等に一般職業訓練(Off-JT)等を行った場合、キャリアアップ助成金を活用できる。

小売業のPOINT

・商品知識や技術だけでなく接遇やマナーに関する Off-JT の機会を設けることや、資格取得支援についても、パートタイム労働者も対象に含んで実施することが望まれる。これらの取組は、サービスの質の向上や良質な人材の定着につながる。

直接的な仕事への従事を離れて行う教育訓練を「Off-JT(Off…The…Job…Training)」と言います。典型的には、集合形式で行われる座学の研修や実技研修等がこれに当たります。特にパートタイム労働法では、職務内容が通常の労働者と同じパートタイム労働者に対して、職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行うことが義務付けられています。

36

Page 38: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

Off-JTは、OJTだけでは十分に学ぶことができない技術や知識について労働者が体系的に学び、実務経験の整理と課題の把握をするために重要な位置づけとなる教育訓練です。そして、労働者自身の能力開発やキャリアアップに関するニーズに対応するものとしても、体系的にOff-JT の仕組みを設けることが望ましいと言えます。OJTとOff-JTはどちらかだけで機能するものではなく、互いに補完しあうものであるため、セットで教育訓練の体系のあり方を考える必要があります。厚生労働省や各都道府県、あるいは業界団体等が実施する外部の教育訓練の機会についても積極的に活用することが考えられるでしょう。このようなOff-JT の機会について、通常の労働者のみならず、パートタイム労働者に対しても門戸を開放し、参加促進を図ることが望ましいと言えます。小売業では、商品知識や技術だけでなく、接遇やマナーに関する教育訓練も重要となることから、そのようなOff-JT の機会を設けることも検討すべき事項です。また、それぞれのパートタイム労働者が資格を取得することを支援するべく、勤務時間を柔軟に設定したり、資格取得に係る費用を補助したりするなど、自己啓発支援を行うことも考えられます。これらのことは、当該事業者のサービスの質の向上や良質な人材の定着につながることから、経営的にも非常に重要な取組といえます。

能力開発支援~(株)髙島屋(大阪府、各種商品小売業、従業員数約11,000名、うちパートタイム労働者数約3,200名)~

希望者が受講できる実務研修や、能力及び知識の習得と動機づけを行う研修として、パートタイム労

働者の上位職位であるS級進級時及びシニアクルー任用時ガイダンス、販売職種スキルアップ研修などを

実施している。また、自己啓発メニューとして、正社員と同様に販売士やカラーコーディネーター、ソム

リエなど職務に役立つ約 80 の資格取得をサポートし、現職務に必要な資格取得に関する費用は、全額

会社が負担している。

正社員と同等のeラーニングの受講~上新電機(株)(大阪府、機械器具小売業、従業員数約5,500名、うちパートタイム労働者数約2,700名)~

主として正社員の教育研修を目的に、一般的な業務知識のほか、商品知識などを学ぶことができる社

内eラーニングの仕組みが構築されている。これらすべての講座の受講がスマイルパートナー(パートタイ

ム労働者)にも認められており、勤務時間中に店舗で受講できるほか、一部の講座はスマートホンや自宅

の PC でも利用できる。

なお、厚生労働省では、パートタイム労働者などの非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するために『キャリアアップ助成金』を支給しています。キャリアアップ助成金のうち、「人材育成コース」では、有期契約労働者等に一般職業訓練(Off-JT)等を行った事業主に助成を行っています。

37

Page 39: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

「キャリアアップ助成金」の「人材育成コース」の概要

 有期契約労働者等に一般職業訓練(Off-JT)又は有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOff-JT と OJTを組み合わせた 3~ 6か月の職業訓練)を行った事業主に助成する。 ◆助成額  …1 訓練コースにつき以下の額を支給(カッコ内は大企業の額)  ① Off-JT 分の支給額    賃金助成・・・1人 1時間当たり 800 円(500 円)    経費助成・・・1人当たり 30 万円(20 万円)を上限  ② OJT分の支給額    実施助成・・・1人 1時間当たり 700 円(700 円) <厚生労働省ホームページ キャリアアップ助成金のご案内>http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

また、雇用保険で給付する教育訓練給付は自己啓発支援等に活用可能なものであり、所定労働時間が週 20 時間以上の労働者は、雇用保険の被保険者としての加入期間等の条件を満たせば利用することができます。事業者は、パートタイム労働者に対しても教育訓練給付の利用について情報提供し、奨励することが望まれます。

教育訓練給付の概要

 労働者の能力開発の取組を支援する制度。一定の要件を満たす対象者が厚生労働大臣の指定する講座を修了した場合、本人が教育訓練施設に支払った講座費用の一部をハローワークから支給する。 ◆支給対象者の要件(次のいずれか)  ① 雇用保険の一般被保険者(在籍者)

対象教育訓練の受講開始日において雇用保険の一般被保険者である方のうち支給要件期間が受講開始日以前に 3年以上あること

  ② 雇用保険の一般被保険者であった方受講開始日において一般被保険者でない方のうち、被保険者であった期間が受講開始日以前に 3 年以上あり、かつ離職日の翌日から受講開始日まで1年以内であること※ただし、①、②とも初回申請に限り、被保険者期間は 1年以上であれば受講可能

 ◆支給内容

支給率 教育訓練経費の 20%

支給額(上限・下限) 教育訓練経費の 20%に相当する額が 10 万円を超える場合は、10 万円を上限とし、4千円を超えない場合は支給されない。

 <厚生労働省ホームページ 教育訓練給付制度>http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/kyouiku/

38

Page 40: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

人事評価・キャリアアップ4

(1)人事評価< POINT>

法定外の重要事項

・パートタイム労働者についても、一律の処遇ではなく、能力や働きぶりを把握し、評価を行った上で、それを適切に処遇に反映させることが望まれる。

・事業所内でスキルチェックシートを設けるなどして評価基準を明確化するとともに、評価の主体と手順、さらに評価結果の活用方法について整理した上で導入・運用することが重要である。

・評価結果について本人にフィードバックすることは人材育成につながる。

小売業のPOINT

・店長やチーフ等が個々のパートタイム労働者のスキルや働きぶりを把握し、適切に評価した上で、本人にフィードバックして共に振り返ることが重要である。

・フィードバックの際には、本人が新しい目標を持って仕事にチャレンジできるように、次の目標を共有し、キャリアアップにつなげられるようにすることが重要である。

パートタイム労働者についても、一律の処遇ではなく、能力や働きぶりを把握し、評価を行った上で、それを適切に処遇(賃金、職位、配置、正社員転換等)に反映させることが望まれます。パートタイム労働法第 9条においては、「賃金」の決定に関して、「事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金を決定するように努めるものとする。」と定められており、賃金の支給水準根拠を明確化するための1つの根拠として、能力や働きぶり等について評価する人事評価制度をパートタイム労働者に対しても導入することが望まれます。人事評価にあたっては、事業所内で職務遂行能力や勤務態度に関するスキルチェックシートを作成、求める水準を明確化するなどして評価基準を設けるとともに、評価の主体と手順、さらに評価結果の活用方法について整理した上で導入・運用することが重要です。評価結果については、賃金や賞与の決定、あるいは職務内容や職位を高めること、正社員転換について判断するための指標として活用することができます。さらに、評価結果について本人にフィードバックすることは人材育成につながることから、評価者と本人の面談による評価結果の還元などのフィードバックの仕組みをあらかじめ組み込んでおくことも重要です。このように人事評価制度を導入し、その評価結果を処遇へ反映する仕組みを設けることは、人材育成ならびに人材の確保・定着にあたって大変有用です。正社員転換制度についても、人事評価制度を活用することで、登用基準を明確化でき、納得性の高い正社員転換制度とすることが可能にもなります。現場管理者である店長や部門チーフ等の責任者が評価を担うことになります。個々のパートタイム労働者のスキルや働きぶりを把握し、適切に評価した上で、本人にフィードバックしてともに振り返ることが、その後の成長や仕事の振り分け方の再考にもつながります。パートタイム労働者の場合には、スキルや知識のほか、稼働時間数や休日・夜間等のシフトへ

39

Page 41: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

の協力度など、勤務態度や店舗運営への協力度を評価対象の要素とすることが考えられます。また、能力向上やキャリア開発の観点から、年間等で目標を個々に設定し、その達成について上司とともに振り返って評価し、今後の課題やキャリアの方向性について共通認識を持つことも重要な取組です。

正社員に準じた人事評価と本部人事担当者によるフィードバック・指導・動機づけ~(株)八木橋(埼玉県、各種商品小売業、従業員数約370名、うちパートタイム労働者数約160名)~

パート社員(パートタイム労働者)用の人事考課表として、事務職用と販売職用の 2 種類を新たに整備

した。それぞれに 4 分野・20 項目が設定され、項目ごとに点数をつけていき、全項目の合計点で最終評

価を決める。

一次考課は現場の係長、二次考課は現場の課長が行い、両者で協議決定する。これをもとに、契約更

新時には管理本部が一人ずつ面接を行い、フィードバックする。考課表には、現場の課長の立場からフィー

ドバック時に本人に伝えてほしいことを記入する欄も用意されており、単なる点数の通知にとどまらない

指導や動機づけに活用されている。

考課分類と項目

事務職 販売職

「意欲」、「接客・事務処理」、「知識の活用」、「報告」、

「マナー・その他」の 5 分類 20 項目

「意欲」、「接客・事務処理」、「知識の活用」、「報告」、

「マナー・その他」の 5 分類 20 項目

考課項目の例

事務職「接客・事務処理」 販売職「接客・事務処理」

お客様・社員・訪問客・電話に対して丁寧で、感じ

よい応対・説明・案内をしている。

常にお客様の動きに目を向け、呼ばれる前に声をか

け、積極的にアプローチしている。

最終評価の付け方

A 100 ~ 86 点 模範的な存在であり、同僚や後輩へ適切な指示・指導ができる。

a 85 ~ 71 点 各評価項目への意識が高く、大変印象が良い。

B 70 ~ 61 点 指示がなくとも自ら仕事に取り組んでおり、標準的である。

b 60 ~ 41 点 多少の指導が必要であり、やや努力が欲しい。

C 20 ~ 40 点 指導による改善は難しく、次回契約の更新はしない。

40

Page 42: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

公正性・透明性を高めるための人事評価の実施~(株)ココカラファインヘルスケア (神奈川県、その他の小売業、従業員数約 15,000 名、うちパートタイム労働者数 9,400 名)~

パートナー(パートタイム労働者)には、初級・中級・上級のグレードを設けて格付けに基づき賃金を

支給している。採用時の賃金と現在の賃金との差額が 0 ~ 30 円を初級、30 ~ 150 円を中級とし、会

社が特別に認めた中級以上の者を上級としている。また、パートナーの業務内容と発揮された行動を正

当に評価するため、人事評価を年 1 回実施し、その結果を処遇に反映させている。

人事評価は、具体的には、以下のような評価項目により、本人評価 → 店長考課(一次考課)→ 統括

店長考課(二次考課)の順に行う。結果は評価記号(S、A、B、C)で示され、この結果と初級・中級・

上級の区分により昇給額に差をつけている。さらに、人事考課結果のパートナーへのフィードバックを行い、

目標をもって仕事に取り組むよう促している。

考課区分 項目

絶対項目

1.出勤率 -

2.定性項目

①意識・姿勢②身だしなみ③接遇④行動

考課管理

1.初級(募集時給との差額が 30 円未満の者)

①レジ業務②接客③クレンリネス④品だし⑤商品管理⑥販促物管理

2.中級(募集時給との差額が 30 円以上 150 円未満の者)

①教育②発注③売場管理④クレーム初期対応

3.上級(会社が認めた中級以上の者)①金銭管理①鍵管理

41

Page 43: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

職業能力評価基準を参考にした評価制度~(株)フレスタ(広島県、飲食料品小売業、従業員数約 4,100 名、うちパートタイム労働者数約 3,500 名)~

中央職業能力開発協会が公開している職業能力評価基準(スーパーマーケット業)を参考として、スマ

イル社員(パートタイム労働者)について能力評価(同社では「職務能力評価」と呼んでいる。)の項目を

策定した。

策定に当たっては、当時各部門を担当していたトレーナーの協力を仰いだ。結果的には、職業能力評

価基準の内容の半分以上を自社に合うよう変更した。

能力評価項目は、スマイル社員が配置される 7 つの部門別に、上司の指示を受けて業務を行う「レベル

Ⅰ」、部下に対して指示・支援のできる「レベルⅡ」のレベル階層別に設定している。レベルⅠ、レベルⅡ

とも全部門共通となる「共通項目」と、部門ごとに求められる職務遂行を問う「選択項目」の 2 つのカテ

ゴリーから構成され、共通項目は 12 項目、選択項目は部門により異なるが平均 30 項目程度でまとめら

れている。レベルⅠの項目には基本的就業姿勢や各職務の遂行能力を問うものが多く、レベルⅡの項目に

はコンプライアンスやマネジメント能力を問うものが多い。

部門・階層により評価項目数は異なるが、最終的には全て 100 点満点に換算し、共通数値化している。

評価は、本人の自己評価の後、チーフの 1 次評価、店長の 2 次評価と順に行われる。1 次評価及び 2

次評価は、イントラネット上の社内専用システムで実施され、評価結果は全てデータ管理されている。

明確でわかりやすい評価方法~C社(北海道、飲食料品小売業、従業員数約 3,000 名、うちパートタイム労働者数約 2,500 名)~

等級基準に基づき、パートナー社員(パートタイム労働者)ごとに「個人評価シート」を作成し、人

事評価を行っている。評価内容は、「基本項目」と「職務・習熟度評価」から構成されており、全パートナー

に対して公開されている。

このうち、身だしなみ、基本的接客、安全衛生等の「基本項目」の評価は、各項目について○×で行う。

全て○の場合は 100%であるが、1 項目が×になると- 2%とカウントされる減点方式である。一方、「職

務・習熟度評価」は、現状携わっている職務の項目ごとに習熟度を評価する。その評価方法は、S ~ D

の 5 段階による。これらの評価基準は、次のとおり明確に定められている(同社の評価項目については、

46 頁参照)。

「基本項目」の評価方法

○ たまに注意されるが、ほとんどできている。

× よく注意されている。改善がない。

「職務・習熟度評価」の評価方法

S 全てにおいて全社に誇れるレベル

A 自らの職務を他者に教えられる。スピードは平均よりもかなり速い。職務の出来映えは大変良い。

B ほとんどの職務を手際よく一人でできる。スピード・出来映えは平均的かそれ以上。ミスは無い。

C部分的にフォローが必要。スピードは平均以下。職務の出来映えはあまりよくない。ミスはよく

ある。

D 全ての職務において指導をうける。スピードは遅い。一人ではほとんどできない。

42

Page 44: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

(2)昇格・登用等によるキャリアアップの仕組み< POINT>

法定外の重要事項

・パートタイム労働者に、スキルレベルや人事評価の結果に応じて等級や役職を付与し、それに応じた処遇が受けられるように、昇格やチーフ・リーダーなどの指導的な役割への登用等によるキャリアアップの仕組みを組み込むことが望ましい。

・キャリアアップの仕組みを設け、能力ある人材の意欲を高めて定着を進めることは、サービスの質を高め、採用や教育訓練のコストを節約することにもつながる。パートタイム労働者が、会社貢献、さらには資格取得をはじめとしたスキルアップへの意欲を一層強めることを後押しするようなキャリアアップの仕組みを検討し、導入することが望ましい。

パートタイム労働者が能力に応じて適正に評価され、意欲を持って働き続けることができるようにするためには、スキルレベルや人事評価の結果に応じて等級や役職を付与し、それに応じた処遇が受けられるように、昇格等によるキャリアアップの仕組みを組み込むことが望ましいです。特に、資格取得やスキルレベルの向上に伴って職務や責任の範囲が広がったり、職場でリーダーなどの役割を担ったりするような場合には、その仕事内容の変化が職位や処遇の面においても反映されることが望まれます。昇格・登用等によるキャリアアップの仕組みを設け、能力ある人材の意欲を高めて定着を進めることは、サービスの質を高め、採用や教育訓練のコストを節約することにもつながることから、長期的な観点から経営的効果を生み出しうる施策として検討することが重要です。パートタイム労働者の場合も、一見すると仕事内容は同じようにみえても、担当業務に係る経験やスキル、保有資格、稼働状況などによって、仕事の効率や会社への貢献度の状況等には違いが生じるものです。パートタイム労働者が、会社貢献、さらには資格取得をはじめとしたスキルアップへの意欲を一層強めることを後押しするような教育訓練とも連動した昇格・登用等によるキャリアアップの仕組みを検討し、導入することが望ましいといえます。キャリアアップの仕組みとしては、職務等級制度や職能資格(等級制度)における昇格のほか、チーフやリーダー等の管理・指導的な役割を担う責任者への登用、調理や生鮮など特殊なスキルを要する業務の担当者としての認定等が挙げられます。なお、パートタイム労働者の昇格等によるキャリアアップの仕組みを検討・導入する際には、人事評価制度や正社員転換制度との連動性も考慮することが望ましいといえます。

43

Page 45: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

正社員と一部重複した職責制度でパート社員のモチベーションを向上~(株)仁科百貨店(岡山県、飲食料品小売業、従業員数約 1,800 名、うちパートタイム労働者数約 1,500 名)~

パート社員(パートタイム労働者)の職責をP-1からP-4までの 4 つに区分した職責を設定している。

上位 2 職責(P-3、P-4)は、正社員職責の下位 2 職責と重複しており、重複した職責のパート社員

の時間給は、当該重複職責にある正社員の時間当たりの平均給与を設定しており、同一労働同一賃金を

実現している。

<正社員とパート社員の職責制度>正社員 パート社員

職責 6 部長職責 5 次長、教育店長職責 4 課長、店長職責 3 係長、バイヤー、SV、店長、副店長職責 2 主任、SV アシスタント、店舗チーフ P-4 店舗チーフ、管理業務を担当職責 1 本部担当、店舗担当、サブチーフ P-3 店舗担当、サブチーフ

※ SV:スーパーバイザー P-2 売り場内の単一又は複数の作業を完結P-1 補助業務を担当

人事考課は S,A,B,C,D の 5 段階の評語で評価され、評語はポイントへ換算し一定期間のポイントが累

積される。この累積ポイントは昇格基準要件のうち重要なもののひとつとなっている。その他昇格基準

として店長等の推薦や昇格試験、週 30 時間以上の契約時間とすること等がある。

人事考課の結果、獲得したポイントが非常に少ない場合は降格もあり得るが、その場合、通常の昇格

基準を緩和した降格者特例の昇格基準が別途用意されている

<昇格基準>

昇格区分累積

ポイント累積期間 推薦 昇格試験 週当契約時間 店舗間異動 出勤

P-1 → P-2 8 P~ 1 年 - - - - -

P-2 → P-3 16 P~ 2 年 店長・SV - 30 H以上 可土日祝出勤可

P-3 → P-4 16 P~ 2 年 店長・SV 役員面接 30 H以上 可土日祝出勤可

部門別OJT基準書に基づいた評価と処遇の実施~(株)エコス(東京都、飲食料品小売業、従業員数4,604 名、うちパートタイム労働者数 3,714 名)~

OJT基準書(34 頁参照)に基づく評価の実施(2014 年半ば)を前に、2013 年 5 ~ 7 月に先行して、

OJT基準書の手順書通りに作業ができているか、売場づくりや接客、勤務態度等がOJT基準書の求

めるレベルでできているかを各店舗でチーフが作業・項目ごとに審査を行い、「合格」か「要練習」かを

判定した。2014 年の本格稼働後は、審査結果を記載した作業手順書と業務チェックリストをパートナー

(パートタイム労働者)本人に渡し、判定結果の理由について、口頭で説明することを予定している。審

査は年 1 回行い、1 枚のシートに 4 回分の判定が記載できるため、パートナーの能力を経年で管理する

ことができるようになる。また、所属部門のパートナー全員の結果が一目で分かる一覧表もあり、所属

部門のレベルや強み、弱みを把握するためのツールとしても活用できる。

新制度導入後は、「合格」となった作業の合計数によって等級を決定し、等級に基づいた賃金制度に変

更していく予定である。現場での教育と評価、処遇が一体となった仕組みであり、誰にでも分かりやすく、

パートナーのモチベーションアップにも繋がる。

44

Page 46: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

スキルアップを目指した技術認定制度~(株)ヤオコー(埼玉県、飲食料品小売業、従業員数17,467名、うちパートタイム労働者数14,915名)~

販売している惣菜のほとんどは店内で調理されており、惣菜の調理を担当しているのが、技術認定の

資格を持つパートナー社員(パートタイム労働者)である。技術のスキルアップを目指し、惣菜、寿司、ベー

カリーの部門ごとにそれぞれ4つのカテゴリーについて試験が行われ、大きさや重さなどの基準を満たす

商品を作ることができるか判定を行っている。試験は概ね月 1 回実施され、毎回 10 名前後の希望者が

受験している。試験に合格すると名札の下にシールが貼られ、4つのカテゴリー全てに合格するとエキス

パートとして認定される。また、取得した技術認定の数に応じた「技術認定手当」が時給に加算される。

5つ星制度に基づく人事評価と昇給への反映~上新電機(株)(大阪府、機械器具小売業、従業員数約 5,500 名、うちパートタイム労働者数約 2,700 名)~

ステップ 1 からステップ 5 までの育成段階に応じた業務別の育成シートを作成しており、5 つ星制度と

呼ぶスマイルパートナー(パートタイム労働者)の等級制度と連動している。ランクアップの基準を満たす

と星が増えていき、このランクに応じて基本時給が決定する。

ランクアップ基準は、下位ランクの基準も含めて総合的に判断する仕組みとなっている。例えば、1 つ

星は、ステップ1の評価項目 23 を全てクリアすることで合格、2 つ星は、ステップ 1 の 23 項目とステッ

プ 2 から 4 の 55 項目中 28 項目クリアすることで合格するという仕組みである。

4 か月を 1タームとして、1 か月目は教育期間、2 か月目は習得期間、3 か月目は習得できたかどうかを

育成リーダーと共に評価し、査定、4 か月目に契約更新を行う手順となっている。評価は、一次評価が育

成リーダーや育成者である一般社員が行い、二次評価は店内のバランスを見ながら所属長(店長)が行う。

星無しからスタートして、基準を満たせば飛び級も可能である。スマイルパートナーとして長く勤める人も

多く、4 つ星や 5 つ星のパートナーも多い。

5 つ星制度の各ランク人数比(平成 25 年 12 月現在)

人数 割合

5 つ星 480 名 17.8%

4 つ星 470 名 17.4%

3 つ星 540 名 20.0%

2 つ星 500 名 18.5%

1 つ星 710 名 26.3%

合計 2,700 名 100.0%

45

Page 47: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

職務と習熟度に基づく等級制度~C社(北海道、飲食料品小売業 従業員数約 3,000 名、うちパートタイム労働者数約 2,500 名)~

パートナー社員(パートタイム労働者)は次のような点につき評価され、職務と習熟度に応じ P1 から

P4 まで 4 段階の等級に位置づけられる。評価内容は、部門別に異なる。

パートナー社員職務基準表(青果部門の例)

区分 職務内容

基本項目

身だしなみ 常に基準に合った身だしなみクリンリネス 担当部署の整理・整頓・清掃規則・ルールの遵守 会社・店舗・部門の決め事の遵守協調性(チームワーク) 店・部門内での協力契約の遵守 欠席・遅刻・早退お客様への対応 売場案内・問い合わせに対する応対基本的接客 笑顔、明るさ、さわやかな挨拶(従業員同士を含む)定物定位置 商品・備品の定位置管理安全・衛生 安全・衛生を意識した行動

職務・習熟度評価

P 1 等級(単純定型作業、入社 1 ~ 2 年目レベル)

詰込み・パック 包丁を使用しない商品化作業品出し 朝の品出し、中間補充葉物・その他商品化 軟弱野菜の蘇生・結束、その他商品化作業カットフルーツ カットフルーツ全般の商品化値付 指定されている場所への正しい値付鮮度維持 目利きによる商品の鮮度チェック

P 2 等級(複雑定型作業、単純判断業務)

籠盛り 見栄えと設定価格のバランスが取れた商品化包材発注 包材発注定番発注 定番発注検品・伝票管理 入荷商品と伝票チェック、内部伝票の起票登録・売価変更 ストコン(マスターレジ)での登録と売価変更操作値引き 値引き作業とロス金額の起票販促関係 pop 作成と正しい取り付け

P 3 等級(単純判断作業,複雑定型作業)

棚卸・在庫管理 棚卸の実施、在庫の管理予約発注 計画に基づく発注特売・中目発注 計画に基づく発注

P 4 等級( 複 雑 判 断 作 業( チ ー フ 代 行 作業)、管理業務)

リーダーP 3 等級までの評価B 以上、本人の立候補かつ所属長推薦

チーフ 1 名体制の店舗におけるチーフ不在時の代行作業(販売、指導、作業、報告、提案、管理)。ただし、責任はチーフが負う。

46

Page 48: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

(3)社内表彰制度等の取組< POINT>

小売業のPOINT

・昇給や昇格等だけではなく、業務改善提案・接客コンテストや「お客様の声」による表彰等、パートタイム労働者のやる気を引き出す仕組みを導入することが望ましい。

・小売業では、パートタイム労働者が店頭販売等、直接顧客との接点を持つ業務に就くことが多いため、パートタイム労働者のモチベーション向上が顧客満足度の向上に直結しやすい。

・パートタイム労働者は、生活者の目線を有していることが多く、パートタイム労働者のモチベーションアップは、顧客目線での品ぞろえ、サービス提供等の観点からも望ましい。

小売業では、パートタイム労働者が店頭販売を担うなど、直接顧客との接点を持つことが多いので、パートタイム労働者がお客様のニーズを把握したり、業務の改善や顧客満足度の向上に関するアイデアを豊富に有している場合があります。また、パートタイム労働者は、勤めている店舗での「顧客」としての立場から、品ぞろえやサービスへのアイデアを有していることがみられます。そうした生活者としての目線からの提案を店舗運営に反映させることは、経営上もメリットがあるといえます。パートタイム労働者のこうしたアイデアや日々の改善努力を引き出し、それを業務の改善につなげていくためには、アイデアを出したパートタイム労働者を適正に評価し、やりがいをもって働けるようにすることが重要です。例えば、業務改善提案や接客等のコンテスト・表彰制度等により、パートタイム労働者のモチベーション向上につなげることなどが考えられます。このほか、「お客様の声」などの顧客アンケートにより、優秀なパートタイム労働者を表彰する方法もあります。表彰だけでなく、人事評価の際に業務改善や接客に対する取組姿勢等を考慮して、賃金や賞与の決定、あるいは職務内容や職位の決定に加味することも考えられます。

47

Page 49: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

業務改善への取組を評価する事例発表会の実施とパートナー社員によるパートナー社員のための社内報の発行

~(株)ヤオコー(埼玉県、飲食料品小売業、従業員数17,467名、うちパートタイム労働者数14,915名)~

【業務改善への取組を評価する事例発表会の実施】

全店の中から 10 店舗前後が参加し、業務改善活動の成果を発表する「感動と笑顔の祭典」を毎月開催し、

これまでに約 90 回実施している。発案から発表までをパートナー社員(パートタイム労働者)が主体的

に取り組み、改善活動の成果を、幹部や店長、パートナーなど 300 人以上の参加者の前で発表している。

発表者全員に「チーム賞」「メンバー賞」などを与え、最も優れた発表者を「ベストメンバー賞」に選ん

でいる。2013 年 7 月の祭典では、「地域一番のお魚屋さん!」をテーマに、加工作業のスピードアップ

により、お客さまがいつ来ても買いたい商品が揃っている売場をつくるなどの取組をした店舗の発表者

が「ベストメンバー賞」に選出された。年間のベストメンバーの中から、その後の成果も見ながら半期

ごとに 5 名程度を選び、アメリカのスーパー視察旅行に招待している。

発表会には、経営陣や店長などの幹部層が必ず参加し、パートナー社員との交流の場としても機能し

ている。祭典の内容や結果はDVD化して全店に配布し、併せて社内掲示板での掲示や、パートナー社

員向けの社内報でも周知している。

【パートナー社員によるパートナー社員のための社内報の発行】

企画から取材、編集までパートナー社員が全てを担当するパートナー社員向けの社内報「Partn

er」を毎月発行し、全員に配布している。20 ページ前後の紙面は全面カラー刷りで、パートナー社員

の顔写真も豊富に掲載されている。掲載内容は、「感動と笑顔の祭典」の報告を中心に、他店舗や新店舗

の紹介、「計数のページ」(2013.10 月号では「荒利益ってなに?」)や「商いのこころ」(ヤオコーのこ

ころを持ったメンバーとして行動するための事例紹介)等の連載企画、下期経営方針についての社長メッ

セージ等、パートナー社員のモチベーションを高める取組のほか、経営に関する知識の共有、人事制度

等に関する情報提供など多岐に渡る。業務改善事例の共有及び情報発信のツールとして活用されている。

顧客の評価や意見箱を通じた従業員同士のコミュニケーションの活性化~上新電機(株)(大阪府、機械器具小売業、従業員数約5,500名、うちパートタイム労働者数約2,700名)~

平成 16 年から顧客の投票による「ベストスマイルコンテスト」を全店で開催している。スマイルパー

トナー(パートタイム労働者)が選ばれることも多い。

また、平成 24 年から取り組んでいる「お客さまの笑顔プロジェクト」の一環で、二つの意見箱を作っ

ている。1 つは「気付きカード」といい、顧客からの要望、業務の課題点を吸い上げ、社内全体で把握

するシステムである。もう一つは「サンクスカード」といい、現在 20 店舗ほどで展開している従業員同

士のコミュニケーションツールで、業務で困ったときに同僚に助けてもらった場合に感謝の気持ちを綴っ

たり、店長への要望を書くことができるものであり、風通しの良い職場作りに役立っている。

48

Page 50: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

正社員転換推進措置5

(1)正社員転換制度の構築< POINT>

義務

【対象者】すべてのパートタイム労働者(タイプ①②③④)

・事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用するすべてのパートタイム労働者について、次のいずれかの措置を講じなければならない。

(1)通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知する

(2)通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与える

(3)パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける

(4)その他通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずる

・通常の労働者への転換推進措置については、措置の内容をすべてのパートタイム労働者に周知することが求められる。

法定外の重要事項

・人事評価やキャリアアップの仕組みと連動させて正社員転換制度を構築することも考えられる。

小売業のPOINT

・時間的な制約があっても正社員になれるように短時間正社員制度を導入することが望まれる。

・多店舗展開している場合には、転勤範囲を限定した正社員制度の導入などにより、正社員に転換しやすい仕組みを構築することが望まれる。

パートタイム労働者の中には、通常の労働者として働くことを希望しながらやむをえずパートタイム労働者として働いている方々もいます。これは、一旦パートタイム労働者になるとなかなか通常の労働者となることが難しいということも影響しています。このため、パートタイム労働者から通常の労働者へ転換するチャンスを整えることが事業主に義務付けられています。

① パートタイム労働者から通常の労働者への転換を推進するための講ずべき措置の内容事業主は、パートタイム労働者から通常の労働者への転換を推進するため、次のいずれかの措置を講ずることが義務付けられています(パートタイム労働法第 12 条第 1項)。(1)通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知する(2)通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与える

(3)パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける(4)その他通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずる

転換推進の措置については、すべてのパートタイム労働者を対象としていることが必要です。なお、職種や雇用形態等により異なる制度を組み合わせて適用することでも構いませんが、組み合わせた結果として、すべてのパートタイム労働者にいずれかの措置を講じていることが求められます。これらの措置の実施に関しては、次のような考え方や留意事項に注意することが必要です。

49

Page 51: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

通常の労働者への転換措置の実施に当たっての考え方・留意事項このような場合は? 考え方

① 通常の労働者について新規学卒者の採用しか行わない

▲ 上記(1)の措置を講じたとしても、応募できる対象者が限定されているため、すべてのパートタイム労働者について措置を講じているとはいえない。別途上記

(1)以外の措置を講ずる必要がある

②上記(3)の措置を講ずる場合、転換の要件として勤続年数や資格などを課す

▲ 要件が事業所の実態に応じたものであれば問題はないが、必要以上に厳しい要件を課した転換の仕組みを設けている場合は、法律上の義務を履行しているとはいえない場合もある

③「正社員」と「フルタイムの基幹的な働き方をしている労働者」の両方が「通常の労働者」として存在する

パートタイム労働者から「正社員」への転換を推進するための措置を講ずることが義務になる

④パートタイム労働者から契約社員へ、さらに契約社員から正規型の労働者へ転換する複数の措置を設ける

複数の措置によって正規型の労働者へ転換する道が確保されており、法第 12 条の措置を講じたことになる

⑤ 「短時間正社員(※)」への転換推進措置を設ける▲

「短時間正社員」も正規型の労働者に該当するので、法第 12 条の措置を講じたことになる

※短時間正社員とは、他のフルタイムの正規型の労働者と比較し、その所定労働時間が短い正規型の労働者であって、①期間の定めのない労働契約を締結しているものであり、かつ、②時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同一事業所に雇用される同種のフルタイムの正規型の労働者と同等であるものです。このような働き方を就業規則等に制度化することを指して、「短時間正社員制度」と呼んでいます。

労働契約法改正に伴って、有期労働契約が繰り返し更新されて通算 5年を超えるときは、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約(「無期労働契約」)に転換できるという、いわゆる「無期転換ルール」が導入(平成 25 年 4 月 1 日施行)されています。この「無期転換ルール」とパートタイム労働法第 12 条との関係性については、パートタイム労働者が「無期転換ルール」で無期労働契約になっただけでは、「いわゆる正規型の労働者」への転換推進措置を求めるパートタイム労働法第 12 条を履行したことにはなりません。パートタイム労働者のキャリアアップと処遇の安定を図る観点から、各事業所の実情に応じて望ましい正社員転換推進措置のあり方を考慮する必要があります。また、正社員転換の要件として、勤続年数や人事評価の結果、試験制度等を加味する場合、その要件が合理的で納得性のあるものになるよう留意することが望まれます。パートタイム労働者にも人事評価結果に基づく、職務等級制度又は職能資格(等級)制度を実施し、一定の等級以上であることを正社員転換の要件としている例もあります。このように、普段からの人事評価やキャリアアップの仕組みと連動させることで、パートタイム労働者に納得感が生まれ、その意欲を高めることができるメリットがあります。正社員には通常フルタイムでの勤務ができることが前提とされています。さらに、事業所間の転勤が課せられているケースがあります。これらに対応できないパートタイム労働者は、たとえ正社員転換の希望があり、その意欲・能力が正社員としての要件を満たしていても、正社員に転換することはできなくなってしまいます。このような場合、所定労働時間が短い正社員である短時間正社員制度を導入したり、あるいは自宅から通える範囲の異動にとどまる勤務地限定制度を正社員に導入することで、パートタイム労働者から正社員への転換を促進することが可能となります。また、育児や介護のため深夜シフトができない者については、育児・介護休業法で、深夜業の制限の制度がある旨を説明することにより、正社員への転換をためらっているパートタイム労働者の転換を後押しできるだけでなく、従来の正社員のワーク・ライフ・バランス促進にもつながります。

50

Page 52: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

通勤圏内での異動に限定された月給制社員への転換~E社(東京都、その他の小売業、フルタイム社員 2,045 名、パートナー社員 2,110 名)~

E 社では、社内アンケート結果により、定年まで働きたい人と 5 年くらい働きたい人、パートタイムで

働きたい人とフルタイムで働きたい人など、働く人のニーズが多様であることが明らかになった。

このため、多様な働き方の選択が可能な雇用区分を整備した。併せて、ニーズが変化した場合には、

他の雇用区分に転換することのできる制度も整備している。

【幅広いニーズに対応した働き方の選択が可能な雇用区分】

次のような等級・雇用区分体系となっており、いずれの区分においても、個人のライフスタイルに合わ

せた労働時間の選択が可能になっている。

E 社の雇用区分(短期アルバイトを除く)等級 職務・呼称 雇用期間 労働時間 給与 勤務

専門 1 ~ 7 等級 マネジメント層

定め無し

週 32 ~ 40 時間月給制

全国一般 2 等級

チーフ候補販売リーダー

週 20 ~ 40 時間 通勤範囲内一般 1 等級 フロント(販売、品出し

等の売場業務)時給制

パートナー社員 フロント(販売、品出し、キャッシャー業務)

6 か月契約 ,最長4年 ~週 40 時間 事業所

(店舗)

【有期雇用から無期雇用への転換が可能】

契約更改が 2 回目以降の「パートナー社員」は、本人の希望と上司の推薦を受け、無期雇用認定評価(年

1 回)に合格した場合、無期雇用の「一般 1 等級」に転換することができる。また、「一般 1 等級」(時給

制)から「一般 2 等級」(月給制)のチーフ候補、販売リーダーへの昇格は、上司の認定評価、多面評価、

役員面接を経て行う。

上位等級への昇格を明確な制度とすることで、モチベーションアップを図っている。

双方向に転換可能な準社員・正社員転換制度~上新電機(株)(大阪府、機械器具小売業、従業員数約 5,500 名、うちパートタイム労働者数約 2,700 名)~

年 2 回、スマイルパートナー(パートタイム労働者)からキャリアプロモーターと呼ばれる準社員への

登用試験がある。キャリアプロモーターは月給制で、基本給は労働時間に応じて決められ、店舗間の異

動はあるが、転居を伴う転勤はない。労働時間は正社員の7 割程度の人が多い。福利厚生を含めた待遇は、

正社員と原則同じで、労働時間が短いことに起因する賃金が少ない程度の違いである。退職金と賞与も

あり、稼働時間に比例して額が決められる。

勤続年数等の要件はなく、4 つ星又は 5 つ星のスマイルパートナーに受験資格が与えられる。キャリア

プロモーター登用試験は、1 次選考が一般常識、コンプライアンス等を問う筆記試験、2 次選考は面接(総

務部実施)である。

さらに、1 年間キャリアプロモーターとして勤務すると、正社員登用試験(年 2 回)を受けることができる。

正社員への登用は、所属長からの推薦、小論文と面接である。

登用後のポジションはその人の評価や、店舗規模等によって異なる。

スマイルパートナーからキャリアプロモーターへの転換制度は、平成 11 年度より導入し、累計で 182

名が移行している。

キャリアプロモーターから正社員に移行した人数は、平成 13 年以降 102 名である。正社員から、キャ

リアプロモーターにキャリア移行することも可能であり、育児や家庭の事情に対応できるため、熟練者の

雇用継続にも効果がある。

51

Page 53: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

② 通常の労働者への転換推進措置の内容の周知パートタイム労働法第 12 条の通常の労働者への転換推進措置については、措置の内容をすべてのパートタイム労働者に周知することが求められます。この場合は、先に示した(3)の転換試験制度だけでなく、(1)、(2)のように、一定の機会が到来したときに措置を講ずることとなるものについても、そのような措置を講ずる予定があるということをあらかじめ雇用するすべてのパートタイム労働者に対し、周知することが必要です。さらに、実際に正社員を募集する際には、求人情報又は社内公募の情報を雇用するすべてのパートタイム労働者に周知する必要があり、募集期間終了までに希望者が知ることができることが必要です。措置の内容の周知の方法としては、就業規則や労働条件通知書への記載、事業所内の掲示板での掲示、資料の回覧、社内メールやイントラネットでの告知など、様々な方法が考えられます。正社員を募集・社内公募する際の周知の方法は、事業所内の掲示板での掲示、資料の回覧、社内メールやイントラネットでの告知、人事考課の面接等での希望聴取などが考えられます。ただし、面接での希望聴取など、口頭で意向確認が行われる場合は、制度化されて公正な運用(※)が確保されていることが必要です。※人事考課の面接担当者のマニュアル又は質問項目表などに記載しておくことなどが考えられます。

③ キャリアアップ助成金を活用した正社員転換の推進厚生労働省ではパートタイム労働者などの非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため『キャリアアップ助成金』を支給しています。キャリアアップ助成金のうち、「正規雇用等転換コース」では、パートタイム労働者を含む有期契約労働者等を正規雇用等に転換又は直接雇用(以下「転換等」という。)する制度を規定し、有期契約労働者等を正規雇用等に転換させるなど、一定の要件を満たした事業主に助成を行っています。

「キャリアアップ助成金」の「正規雇用等転換コース」の概要

 有期契約労働者や正規雇用の労働者以外の無期雇用労働者(短時間労働者、派遣労働者を含む)を正規雇用等に転換又は直接雇用する制度を規定し、有期契約労働者等を正規雇用等に転換させるなど、一定の要件を満たした事業主に助成する。 ◆助成額    (カッコ内は大規模事業主の額)  ① 有期→正規:1人当たり 50 万円(40 万円)  ② 有期→無期:1人当たり 20 万円(15 万円)  ③ 無期→正規:1人当たり 30 万円(25 万円)

< 1年度 1事業所当たり 10 人まで(①又は③を実施する場合、助成上限人数を 5人を限度として上乗せ>

※派遣労働者を正規雇用で直接雇用する場合、1人当たり 10 万円を加算(中小・大企業ともに同額)。

※対象者が母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合、1人当たり① 10 万円、② 5万円、③ 5万円を加算(加算額は中小・大企業ともに同額)。

 <厚生労働省ホームページ キャリアアップ助成金のご案内>  http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

52

Page 54: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

また、同助成金の「短時間正社員コース」では、短時間正社員制度を規定し、パートタイム労働者を含む有期契約労働者等を短時間正社員に転換するなど、一定の要件を満たした事業主に助成を行っています。

「キャリアアップ助成金」の「短時間正社員コース」の概要

 短時間正社員制度を規定し、雇用する労働者を短時間正社員に転換し、又は短時間正社員を新規で雇い入れるなど一定の要件を満たした事業主に助成する。 ◆助成額:(カッコ内は大企業の額)  ① 雇用する正規雇用労働者を短時間正社員に転換した場合    …1 人当たり 20 万円(15 万円)  ② 雇用する有期契約労働者等を短時間正社員に転換した場合    …1 人当たり 30 万円(25 万円)  ③ 短時間正社員を新規で雇い入れた場合    …1 人当たり 20 万円(15 万円)

<短時間労働者の週所定労働時間延長コースの人数と合計し、1年度 1事業所当たり10 人まで>※対象者が母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合、1人当たり 10 万円を加算(加算額は中小・大企業ともに同額)。

 <厚生労働省ホームページ キャリアアップ助成金のご案内>  http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

(2)正社員転換希望者への支援< POINT>

法定外の重要事項

・正社員転換推進措置の実施に当たっては、正社員転換に向けた教育訓練の機会を提供したり、正社員になるに当たって必要とされる資質やスキルを身に付けるための仕事の機会を与えたりすることなどが望まれる。

・正社員の働き方を柔軟化させることも、働き方に制約があるパートタイム労働者に正社員転換の選択肢を広げるものとして有効である。

パートタイム労働者の正社員転換推進措置の実施に当たっては、単にその門戸を開くだけではなく、正社員転換に向けてパートタイム労働者がスキルアップを図ることができるような教育訓練の機会を提供したり、正社員になるに当たって必要とされる資質やスキルを身に付けるための仕事の機会を与えたりすることなどが望まれます。また、正社員の働き方を柔軟化させることも、働き方に制約があるパートタイム労働者に正社員転換の選択肢を広げるものとして有効です。先に挙げた短時間正社員制度の導入や、短時間勤務制度やフレックスタイム制度等、正社員における多様な働き方を認める制度づくりとその運用が求められます。厚生労働省では、キャリアアップ助成金のうち、「人材育成コース」において、パートタイム労働者を含む有期契約労働者等に、一般職業訓練(Off-JT)又は有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOff-JTとOJTを組み合わせた3~6か月の職業訓練)を行った事業主に助成を行っています。正社員転換希望者への支援にあたっては、このような制度を活用することもできます。

53

Page 55: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

「キャリアアップ助成金」の「人材育成コース」の概要

 有期契約労働者等に、一般職業訓練(Off-JT)又は有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOJTを組み合わせた 3~ 6か月の職業訓練)を行った事業主に助成を行う。 ◆助成額   …1 訓練コースにつき以下の額を支給(カッコ内は大企業の額)  ① Off-JT 分の支給額    賃金助成・・・1人 1時間当たり 800 円(500 円)    経費助成・・・1人当たり 30 万円(20 万円)を上限  ② OJT分の支給額    実施助成・・・1人 1時間当たり 700 円(700 円) <厚生労働省ホームページ キャリアアップ助成金のご案内>http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

54

Page 56: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

福利厚生・安全衛生6

(1)福利厚生< POINT>

義務

【対象者1】通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(タイプ①)

・通常の労働者との差別的な取扱いは禁止されており、すべての福利厚生施設・措置について通常の労働者と同様に利用の機会を与えなければならない。

【対象者2】上記【対象者1】以外のパートタイム労働者(タイプ②③④)

・事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、その雇用するパートタイム労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない。

指針

【対象者2】上記【対象者1】以外のパートタイム労働者(タイプ②③④)

・事業主は、上記の福利厚生施設以外の福利厚生(医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用や慶弔休暇の付与等福利厚生の措置)についても、パートタイム労働者の就業実態や通常の労働者との均衡などを考慮した取扱いをするよう努めるものとする。

パートタイム労働法における「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」(タイプ①)に対しては、すべての待遇について通常の労働者との差別的取扱いが禁止されていますので、賃金や教育訓練等と同じく、すべての福利厚生施設・措置について通常の労働者と同様に利用の機会を与えなければなりません(パートタイム労働法第 8条)。タイプ①以外のパートタイム労働者については、福利厚生施設のうち給食施設、休憩室、更衣室について、通常の労働者が利用している場合は、パートタイム労働者にも利用の機会を与えるよう配慮することが義務付けられています(パートタイム労働法第 11 条)。ここで言う「配慮」とは、例えば、給食施設の定員の関係で、労働者全員が一度に利用できない場合に、施設の増築などまで求めるものではありませんが、個々の労働者の昼食時間帯をずらすなど、パートタイム労働者も利用できるように工夫するなど具体的な措置を求めるものです。さらに、「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」(タイプ①)以外のパートタイム労働者についても、パートタイム労働指針において、これらの福利厚生施設以外、例えば、医療、教養、文化、体育、レクレーション等の施設の利用や慶弔休暇の付与や社宅の貸与等の事業主が行うその他の福利厚生の措置についても、パートタイム労働者の就業の実態や通常の労働者との均衡などを考慮して取り扱うように努めることとされています(パートタイム労働指針第 3の 1の(3))。

55

Page 57: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

正社員に準じた福利厚生制度~(株)ヤオコー(埼玉県、飲食料品小売業、従業員数17,467名、うちパートタイム労働者数14,915名)~

パートナー社員、ヘルパー社員(いずれもパートタイム労働者)は共済会の会員となっており、福利厚

生施設の利用や貸付金制度、慶弔金の支給対象となっている。慶弔金については、共済会とは別に会社

からも支給され、金額は正社員と同額になっている。

年次有給休暇は、正社員と同じく法定を上回る日数が付与されており、さらに、時効消滅した直近の

年次有給休暇を 1 日単位で病気やけが、介護その他の目的で取得することができる「特別療養休暇」も

用意されている。

(2)安全衛生< POINT>

義務(労働安全衛生法)

【対象者1】一定の要件を満たすパートタイム労働者

・健康診断を実施しなければならない。 

【対象者2】すべてのパートタイム労働者(タイプ①②③④)

・雇入れ時、作業内容を変更した時、危険又は有害な業務に労働者を就かせる時は、安全衛生教育を実施しなければならない。

小売業のPOINT

・深夜業を含む特定業務、一定の有害業務等従事者に課せられる健康診断について、必ず実施する。

① 健康診断の実施事業主は、一般の労働者と同様に、一定の要件を満たすパートタイム労働者に対し、労働安全衛生法に基づき健康診断を実施しなければなりません(労働安全衛生法第 66 条第1項、同規則第 43 条、第 44 条)。健康診断を実施することが必要なパートタイム労働者は、次の 2つの要件をいずれも満たす者です。

健康診断を実施することが必要なパートタイム労働者

① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、契約期間が 1年以上(特定業務に従事する場合は 6か月以上)である者、契約更新により 1年以上使用されることが予定されている者、1年以上引き続き使用されている者を含む。)。

② 1週間の所定労働時間が、同じ事業所において同種の業務に従事する通常の労働者の 4分の 3以上である者(所定労働時間が通常の労働者の 4分の 3未満であっても、概ね 2分の 1以上であれば、一般健康診断を実施することが望ましいものとされています。)。

上記の要件を満たすパートタイム労働者に対しては、次の健康診断を実施しなければなりません。24 時間営業を行う店舗等では、次に示す「3. 深夜業を含む業務等の特定業務」に従事するパートタイム労働者がいる事業所もあります。その場合は、各労働者が従事する業務に応じて、法で定められた健康診断を必ず実施しなければなりません。なお、「3. 深夜業を含む業務」とは、業務の常態として深夜業を 1週に 1 回以上又は 1月に 4回以上行う業務をいいます。

56

Page 58: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

実施しなければならない健康診断

1.常時使用するパートタイム労働者に対する雇入れ時の健康診断

2.常時使用するパートタイム労働者に対する定期健康診断(1年以内ごとに 1回)

3.深夜業を含む業務等の特定業務に常時従事するパートタイム労働者に対する、その業務への配置換えの際に行う健康診断及び 6月以内ごとに 1回、定期的に行う健康診断

4.一定の有害業務に常時従事するパートタイム労働者に対する雇入れ又はその業務に配置換えの際及びその後定期的に行う特別の項目についての特殊健康診断

5.その他必要な健康診断

また、パートタイム労働者の健康保持の観点から、健康診断の実施が義務とされていないパートタイム労働者に対しても、健康診断を実施することが望まれます。厚生労働省では、パートタイム労働者などの非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、『キャリアアップ助成金』を支給しています。キャリアアップ助成金のうち、「健康管理コース」では、パートタイム労働者を含む有期契約労働者等に対して法定外の健康診断制度を導入する等、一定の要件を満たした事業主に助成を行っています。

「キャリアアップ助成金」の「健康管理コース」の概要

 有期契約労働者、正規雇用の労働者以外の無期雇用労働者(短時間労働者、派遣労働者を含む。)を対象とする「法定外の健康診断制度」を規定し、延べ 4人以上実施するなど一定の要件を満たした事業主に助成する。

 ◆助成額:(カッコ内は大企業の額)      …1 事業所当たり 40 万円(大企業は 30 万円)      < 1事業当たり 1回のみ> <厚生労働省ホームページ キャリアアップ助成金のご案内>http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

② 妊産婦等に関する母性保護等の規定以下のとおり、妊産婦等に関する母性保護等については、労働基準法・男女雇用機会均等法に規定されており、この規定はパートタイム労働者にも適用されます。

57

Page 59: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

母性保護等の措置に関する規定

【労働基準法】① 妊産婦等の坑内業務の就業制限(労働基準法第 64条の 2)妊産婦などから申出があれば、坑内で行われる業務に就かせてはなりません。また、人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務については、就かせてはなりません。

② 妊産婦等の危険有害業務の就業制限(労働基準法第 64条の 3)妊産婦などの妊娠、出産、哺育などに有害な一定の業務への就業には制限があります。

③ 産前産後休業と軽易な業務への転換(労働基準法第 65条)産前 6週間(多胎妊娠の場合は 14 週間)について女性が請求した場合及び産後 8週間については原則として就業が制限されています。また、妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務へ転換させなければなりません。

④ 妊産婦の変形労働時間制の適用制限(労働基準法第 66条第 1項)変形労働時間制が採られる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1日及び 1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできません。

⑤ 妊産婦の時間外・休日労働・深夜業の制限(労働基準法第 66条第 2項、第 3項)妊産婦が請求した場合には、これらが制限されます。

⑥ 育児時間(労働基準法第 67条)生後満 1年に達しない子を育てる女性は、1日 2 回各々少なくとも 30 分の育児時間を請求することができます。

【男女雇用機会均等法】① 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法第 9条)女性労働者が、婚姻、妊娠、出産した場合には退職する旨をあらかじめ定めること、婚姻を理由に女性労働者を解雇すること、妊娠したこと、出産したこと等厚生労働省令で定めてられている事由を理由に、女性労働者に対し不利益な取扱いをすることは、禁止されています。

② 保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保(男女雇用機会均等法第 12条)事業主は妊娠中・出産後の女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保しなければなりません。

③ 保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするための必要な措置の実施  (男女雇用機会均等法第 13条)事業主は、医師等による指導事項を守ることができるよう必要な措置を講じなければなりません。

③ 安全衛生教育の実施事業主には、労働安全衛生法に基づき、すべてのパートタイム労働者に対して、労働者の生命や身体を守るよう配慮すべき安全配慮義務が課せられています。具体的には、事業主は、労働者を雇い入れた時又は作業内容を変更した時は、従事する業務に応じて、以下に記載する労働者が従事する業務に関する安全衛生のための教育を行わなければならないこととされています。また、危険有害業務に従事させる時は、特別の教育を行わなければなりません(労働安全衛生法第 59 条、労働安全衛生規則第 35 条、第 36 条)。安全衛生教育の対象にはパートタイム労働者も含まれており、雇用形態や所定労働時間に関わらず、適切な安全衛生管理を行うことによってすべての労働者の安全衛生を確保することが必要です。

58

Page 60: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

雇入れ時・作業内容を変更した時に行わなければならない安全衛生教育

1.機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること

2.安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること

3.作業手順に関すること

4.作業開始時の点検に関すること

5.当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること

6.整理、整頓及び清潔保持に関すること

7.事故時等における応急措置及び退避に関すること

8.そのほか当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

※業種によっては1.~4.を省略することができます

入社時研修で業務災害の事例を紹介し災害防止を促す

~(株)遠鉄ストア(静岡県、飲食料品小売業、

従業員数約 2,700 名、うちパートタイム労働者数約 2,100 名)~

入社時研修のテキストで、過去の業務災害の件数や事例を紹介している。職種別や受傷内容別の件数

も明記され、どのようなケガが多いのか分かりやすくしている。また、どんな場所で、どのような作業中

にケガが発生しているのか具体的な事例も記載し、業務災害防止への意識づけを行っている。

④ 職場における腰痛予防対策指針平成 25 年 6 月に「職場における腰痛予防対策指針」が改定されました。職場での腰痛は、休業 4日以上の職業性疾病のうち 6割を占める労働災害となっています。改定された「職場における腰痛予防対策指針」では、重量物を取り扱う際の姿勢などについても記載されています。重量物を扱う事業所では、同指針を参照の上、職場における腰痛予防に向けて取り組むことが望まれます。

<ご参考>

「職場における腰痛予防対策指針」http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/youtsuushishin.html

⑤ 疾病予防職場の衛生管理やパートタイム労働者の疾病予防のためには、インフルエンザやノロウイルスといった感染症への対策も重要です。このような感染症が蔓延すると、社会への影響はもちろん、勤務シフトに影響を及ぼすおそれが生じます。小売業では、パートタイム労働者が顧客との接点を持つことが多いため、特に予防の観点が重要です。手洗い、うがいや予防接種の励行、作業場の消毒といった予防対策、実際に感染者が出た際に感染拡大を防ぐための対策を、マニュアル等を作成して明確に定めておきましょう。また、下記のウェブサイト等を参考に、最新の情報を確認しておくことも重要です。

59

Page 61: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

また、メンタル不調者に対応するための相談窓口を設置することも、安心して働ける環境づくりに役立ちます。

<ご参考>

「厚生労働省 インフルエンザ対策」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html

「厚生労働省 感染性胃腸炎(特にノロウイルス)について」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/norovirus/

「国立感染症研究所 感染症疫学センター (インフルエンザ)」

http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html

60

Page 62: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

ワーク・ライフ・バランス7

(1)年次有給休暇の付与< POINT>

義務(労働基準法)

【対象者】すべてのパートタイム労働者(タイプ①②③④)

・6 か月以上継続勤務し、決められた労働日数の 8 割以上出勤した場合には、年次有給休暇を与えなければならない。

法定外の重要事項

・年次有給休暇を取得しやすいような職場環境や制度を整備することが望まれる。

パートタイム労働者に対しても、6か月以上継続勤務し、決められた労働日数の 8割以上出勤した場合には、労働基準法の規定に基づき年次有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法第 39 条)。なお、「継続勤務」の要件に該当するかどうかについては、勤務の実態に即して判断すべきものであり、期間の定めのある労働契約を反復して、パートタイム労働者を使用する場合、それぞれの労働契約期間の終期と始期との間に短期間の間隔を置いたとしても、それだけで当然に継続勤務が中断することにはなりません。また、労使間で協定を結ぶことにより、年に 5日を限度として、時間単位で年次有給休暇を与えることができます。パートタイム労働者に適用される年次有給休暇の日数は、以下の通りです。

 週所定労働時間が 30時間以上の場合 ⇒通常の労働者と同じ日数を与える

 週所定労働時間が 30時間未満の場合① 所定労働日数が週5日以上(週以外の期間によって労働日数を定めている場合は年間217 日以上)の場合 ⇒通常の労働者と同じ日数を与える

② 所定労働日数が週4日以下(週以外の期間によって労働日数を定めている場合は年間216 日以下)の場合 ⇒ …62 頁の表のとおり 1週間又は 1年間の所定労働日数に応じて、付与する日数が定められています

年次有給休暇は付与するだけでなく、管理者から一人ひとりに事前に声をかけて、休暇を取得しやすい雰囲気づくりを心がけたり、年次有給休暇取得計画を立てたり、夏季休暇を導入することなどにより、取得しやすい環境を整えることが望まれます。

61

Page 63: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

年次有給休暇の付与日数

週所定労働時間

週所定労働日数

1 年間の所定労働日数(週以外の期間によって労働日数が定められている場合)

雇入れの日から起算した継続勤務期間の区分に応ずる年次有給休暇の日数

6 か月1 年

6 か月2 年

6 か月3 年

6 か月4 年

6 か月5 年

6 か月

6 年6 か月以上

30 時間以上10 日 11 日 12 日 14 日 16 日 18 日 20 日

30 時間未満

5 日以上 217 日以上

4 日 169 ~ 216 日 7 日 8 日 9 日 10 日 12 日 13 日 15 日

3 日 121 ~ 168 日 5 日 6 日 8 日 9 日 10 日 11 日

2 日 73 ~ 120 日 3 日 4 日 5 日 6 日 7 日

1 日 48 ~ 72 日 1 日 2 日 3 日

☞ 56 頁 正社員に準じた福利厚生制度~㈱ヤオコー~

(2)勤務シフト作成上の工夫< POINT>

小売業のPOINT

・小売業では、シフト勤務や繁忙期の特殊勤務など不規則な勤務となりやすい。事前にパートタイム労働者から勤務時間や年次有給休暇の取得希望日を聴取の上、シフトを作成することで、パートタイム労働者の都合に配慮することが求められる。

小売業の場合、営業時間が長く、土日も出勤の場合が多いため、不規則な勤務となりやすいという特徴があり、実務上は、月次・週次等のシフト表で対応している店舗が多くみられます。このような場合には、例えば労働条件通知書等に以下のような記載をして、労働条件に誤解を生じさせないような工夫をしたり、別途パートタイム労働者向けの就業規則を定め、「詳細は就業規則の定めによる」などと記載したりすることも考えられます。

労働条件の明示にあたっての工夫例従事する業務内容

調理場での食品加工、品出し業務(繁忙期は、接客、レジ業務にも従事)。

始業、終業時刻

【変形労働時間制・交替制等の場合】●(1 年、1 月等)単位の変形労働時間制・交替制(注)として、次の勤務時間の組み合わせによる。  始業(●時●分)~終業(●時●分)  始業(●時●分)~終業(●時●分)営業の都合上、上記以外の勤務時間でお願いすることもあります。 この場合は、前月●日までに勤務シフト表にてお知らせします。

休日

定例日;毎週●曜日、国民の祝日、その他(▲▲)

非定例日;週(・月)当たり●日(勤務シフト表による)

(1年単位の変形労働時間制の場合-年間●日)

(注)変形労働時間制でない場合は「変形労働時間制」を二重線で消す。交替制でない場合には「交替制」を二重線で消す

しかしながら、それだけでは、パートタイム労働者の都合に配慮した勤務時間の設定ができず、結果的にパートタイム労働者が短期で辞めてしまうことなどにつながりかねません。シフトの決定においては、1か月変形労働時間制等を採用し、前月までに各スタッフから勤務日や出勤できない日を聴取するとともに、年次有給休暇の取得希望日についても確認した上で、

62

Page 64: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

店長や主任等の管理者がシフト表を作成して、勤務時間を通知することが望まれます。シフトの決定に当たり、店舗の都合だけで決定してしまっては、パートタイム労働者が仕事を継続できないおそれもあります。ワーク・ライフ・バランスを尊重し、パートタイム労働者の都合に配慮することが、パートタイム労働者の定着率の向上のためにも重要です。

独自プログラムを活用し、個人の希望に配慮したシフト調整~上新電機(株)(大阪府、機械器具小売業、従業員数約5,500名、うちパートタイム労働者数約2,700名)~

家庭の都合などに配慮するため、事前に本人の希望を聴取して、同社が独自に開発したプログラムに基

づき、月次でシフトを組んでいる。プログラムとはいえ完全なシフトはできないため、プログラムで作成

されたシフトをもとに、店長や部門長が個別に調整をしている。

(3)休憩の確保< POINT>

義務(労働基準法)

・休憩時間は、労働者が自由に利用できる状態である必要があり、労働時間が6 時間を超える場合には少なくとも 45 分、8 時間を超える場合には少なくとも 1 時間の休憩時間を与える必要がある。

労働時間が 6時間を超える場合には少なくとも 45 分、8時間を超える場合には少なくとも 1時間の休憩を、労働時間の途中に与える必要があります。そして、休憩時間は、労働者が自由に利用できる状態でなければなりません(労働基準法第 34 条)。

(4)仕事と育児・介護の両立支援制度< POINT>

義務(育児・介護休業法)

【対象者】一定の要件を満たすパートタイム労働者

・申出があった場合、育児休業や介護休業をさせなければならない。

・申出があった場合、子の看護休暇や介護休暇を与えなければならない。

・育児のための短時間勤務制度や介護のための短時間勤務制度等の措置を講じなければならない。

・請求があった場合、所定外労働、時間外労働、深夜業をさせてはならない。

小売業のPOINT

・ボランティア休暇、学校行事のための休暇など、個人や家庭の都合に配慮した特別休暇を導入することも、パートタイム労働者のワーク・ライフ・バランスの促進に役立つ。

パートタイム労働者にも、育児・介護休業法の定めるところにより、次の措置を講じなければなりません。すべての措置は、男女ともに対象となります。

① 育児休業制度事業主は、一定の条件(次頁参照)を満たしたパートタイム労働者が申し出た場合、原則としてその子が 1歳に達するまで(父母ともに育児休業をする場合には、1歳 2 か月に達するまでの間で 1年間)の間で、労働者が申し出た期間について、育児休業をさせなければなりません(育児・

63

Page 65: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

介護休業法第 5条、第 6条)。なお、一定の場合、労働者が申し出た場合には、子が 1歳 6か月に達するまでの間、育児休業をさせなければなりません。

育児休業を取得できる期間を定めて雇用される労働者の範囲

●申出の時点で次の①~③のいずれにも該当する労働者

① 同一の事業主に引き続き 1年以上雇用されていること

② 子の 1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること

③ 子の 2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと

法を上回る両立支援の制度化と労働組合と連携した周知・普及活動~A社(広島県、各種商品小売業、従業員数約15,400名、うちパートタイム労働者数約13,000名)~

子が 3 歳に達する月の末日まで取得できる育児休業制度、子が小学校 3 年生の年度末まで利用できる

育児短時間勤務、1 年間取得できる介護休業制度等があり、特に育児休業取得者の約半数はパート社員

の取得実績。制度化は会社が行い、その周知と普及への取組は労働組合が担う。労働組合は、積極的な

制度の周知活動の他、育児休業者に情報誌の送付、育児休業者・育児短時間勤務利用者向けのフォーラ

ムを開催、フォーラムでは人事部担当者が相談対応するなどの連携により積極的な両立支援を展開して

いる。

その他、主に正社員の利用頻度が高いが、結婚・出産等により退職した社員を対象とした「再雇用制度」、

妊産婦健康保持のための「妊婦の短時間勤務制度」、「妊婦のつわり休暇」等も制度化している。これら

の取組により、ファミリーフレンドリー企業表彰も受賞している。

② 介護休業制度事業主は、一定の条件(下記参照)を満たしたパートタイム労働者が申し出た場合、要介護状態にある対象家族 1人につき、常時介護を必要とする状態ごとに 1回、通算 93 日までの介護休業をさせなければなりません(育児・介護休業法第 11 条、第 12 条)。

介護休業を取得できる期間を定めて雇用される労働者の範囲

●申出の時点で次の①~③のいずれにも該当する労働者

① 同一の事業主に引き続き 1年以上雇用されていること

② 介護休業開始予定日から 93 日を経過する日の翌日以降も引き続き雇用されることが見込まれること

③ 93 日経過日から 1年を経過する日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと

64

Page 66: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

③ 子の看護休暇事業主は、小学校就学前の子を養育するパートタイム労働者が申し出た場合、子が1人であれば、年 5日、2人以上であれば年 10 日まで、病気・けがをした子の看護又は子に予防接種や健康診断を受けさせるために、休暇を与えなければなりません(育児・介護休業法第16条の 2、第 16条の 3)。

④ 介護休暇事業主は、要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行うパートタイム労働者が申し出た場合、対象家族が 1人であれば、年 5日、2人以上であれば年 10 日まで、休暇を与えなければなりません(育児・介護休業法第 16 条の 5、第 16 条の 6)。

⑤ 育児のための短時間勤務制度事業主は、3歳未満の子を養育するパートタイム労働者については、希望すれば利用できる、1日原則 6時間の短時間勤務制度を講じなければなりません(育児・介護休業法第 23 条第 1項)。

⑥ 育児のための所定外労働の制限事業主は、3歳未満の子を養育するパートタイム労働者が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはなりません(育児・介護休業法第 16 条の 8)。

⑦ 介護のための短時間勤務制度等の措置事業主は、要介護状態の対象家族の介護を行うパートタイム労働者については、要介護状態にある対象家族 1人につき、介護休業をした日数と合わせて 93 日以上利用することができる以下のいずれかの措置を講じなければなりません(育児・介護休業法第 23 条第 3項)。

介護のための勤務時間短縮等の措置

① 短時間勤務制度

② フレックスタイム制

③ 始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げ

④ 介護費用の援助措置

⑧ 時間外労働・深夜業の制限事業主は、小学校就学前の子を養育し、又は要介護状態にある対象家族を介護するパートタイム労働者が請求した場合は、1か月 24 時間、1年 150 時間を超える時間外労働をさせてはならず、また深夜(午後 10 時から午前 5時)において労働させてはなりません(育児・介護休業法第 17 条、第 18 条、第 19 条、第 20 条)。

65

Page 67: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

⑨ 特別休暇の整備法定事項ではありませんが、パートタイム労働者個人や家庭の都合や希望に配慮するため、学校行事の際に休める休暇やボランティア休暇などの特別休暇を付与することは、ワーク・ライフ・バランスの促進の観点からも望まれます。

両立支援制度の均等化~(株)髙島屋(大阪府、各種商品小売業、従業員数約11,000名、うちパートタイム労働者数約3,200名)~

育児や介護に関する制度は、正社員と同等に整備されている。育児休業は子が3歳に達するまで、育

児勤務(いわゆる育児短時間勤務の措置)は子が小学校4学年に達するまで、介護休業は対象家族 1 名

につき通算 1 年までと、それぞれ法定を上回る手厚い内容となっている。その他、看護休暇は子に限ら

ず二親等以内の親族が対象と幅広く設定されていたり、ボランティア休暇(有給)やスクールイベント休

暇(有給)など、ワーク・ライフ・バランスを図りやすい制度が整備されている。スクールイベント休暇は、

幼稚園や保育園、小学校に通う子又は孫の学校行事に参加する場合に年間2日まで取得でき、年間で約

1,000 名、約 1,600 日の取得実績があるなど好評な制度となっている。

66

Page 68: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

職場のコミュニケーション8

(1)パートタイム労働者とのコミュニケーション向上の取組< POINT>

法定外の重要事項

・会社の情報を共有したり、経営者や管理職等との交流の場を設けること等により、パートタイム労働者の参加意欲を高めることが望ましい。

小売業のPOINT

・パートタイム労働者への情報還元だけでなく、顧客との接点の多いパートタイム労働者からの意見を吸い上げる仕組みを導入することで、業務改善やサービス向上につなげることが望ましい。

小売業では、パートタイム労働者が接客やレジなど店舗等での重要な業務を担っていることが多く、パートタイム労働者への積極的な情報提供や働きかけが特に重要と考えられます。例えば、業績に関する情報や売上目標の共有により、パートタイム労働者の一人ひとりの参加意識を高めることで、より積極的なコミットメントを促していくことが考えられます。さらに、直接顧客との接点を持つパートタイム労働者は、日頃の業務で顧客から要望を受けていることも多く、また、顧客目線での改善提案やサービス提供について、良いアイデアを持っていることが多いと考えられます。パートタイム労働者からアイデアを募り、店舗運営等に生かしていくために、経営層や管理職と直接対話する機会を持ったり、会議に正社員と同様に参加してもらうことなどが有益です。また、業務改善提案制度によりアイデアを募集すること等により、経営層や管理職とパートタイム労働者のコミュニケーションをとっていくことが、経営上重要ですし、パートタイム労働者のやりがいの向上にもつながります。 なお、業務改善提案方法は、ミーティングでの意見聴取のほか、提案・意見書募集、発表会の開催など様々な方法が考えられます。

満足度調査の実施による意見の吸い上げとフィードバック~(株)遠鉄ストア(静岡県、飲食料品小売業、従業員数約2,700名、うちパートタイム労働者数約2,100名)~

毎年 1 回、パートナー社員(パートタイム労働者)を含めた全社員に満足度調査のアンケートを実施し、

職場や制度、仕事内容についての悩みや改善要望を吸い上げている。その内容について、社長をはじめ

とする経営陣が検討を行い、改善への着手や次年度の経営計画に改善内容を盛り込む等、速やかにフィー

ドバックを行っている。

☞ 48 頁 業務改善への取組を評価する事例発表会の実施とパートナー社員によるパートナー社員のための社内報の発行~(株)ヤオコー~

67

Page 69: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

(2)苦情の自主的解決< POINT>

努力義務・事業主は、一定の事項(下記参照)について、パートタイム労働者からの苦

情の申出を受けたときは、苦情処理機関に苦情の処理をゆだねるなどして、自主的な解決を図るように努めること。

指針

・パートタイム労働法で定められた事項以外のパートタイム労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した待遇に係る事項についても、パートタイム労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図るように努める。

法定外の重要事項

・まずは事業者とパートタイム労働者が普段からコミュニケーションをとり、苦情になる前段階での問題解決を図る努力が必要である。また、社内に相談窓口を設けることも考えられる。

パートタイム労働法では、以下の「対象となる苦情」について、事業主がパートタイム労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内の苦情処理機関を活用するほか、人事担当者や短時間雇用管理者(※)が担当するなどして、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務となっています(パートタイム労働法第 19 条)。※…短時間雇用管理者とは、パートタイム労働者の雇用管理改善などを担当する者で、パートタイム労働法第 15条でパートタイム労働者を常時 10人以上雇用する事業所ごとに選任するよう努めることとされています。

対象となる苦情(義務事項及び差別禁止事項のみ)

労働条件の文書交付等、待遇の決定についての説明、待遇の差別的取扱い禁止、職務の遂行に必要な教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、通常の労働者への転換を推進するための措置

また、「対象となる苦情」以外の項目についても、当事者であるパートタイム労働者と事業主との間で自主的に解決されることが望ましいことから、パートタイム労働指針において、パートタイム労働法第 19 条に定める事項以外のパートタイム労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した待遇に係る事項の苦情についても事業所内で自主的な解決を図るように努めるものとされています(パートタイム労働指針第 3の 2の(3))。苦情の解決方法や仕組みについては、事業所内のパートタイム労働者に周知し、苦情が事業所内で自主的に解決できるように努めてください。なお、「対象となる苦情」の項目については、パートタイム労働法第 13 条で、パートタイム労働者から求められたとき、事業主がその待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明しなければならない事項にもなっています。パートタイム労働者からの求めに関わらず、待遇の決定に当たって考慮した事項を丁寧に説明することで、苦情にならないよう防止することも大切です。さらには、普段からパートタイム労働者と密にコミュニケーションをとり、不安や不満等を聞いて、大きな問題になる前に課題の解決に取り組む姿勢が望まれます。一部の事業所では、正社員だけでなくパートタイム労働者も利用できる相談窓口を独自に設置するなど、相談をしやすくするための工夫している事例もみられます。

68

Page 70: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

パートタイマーの意見を毎年聴取し、雇用管理に活かす~F社(北海道、飲食料品小売業、従業員数約60名、うちパートタイム労働者数30名)~

パートタイマーに対するアンケート調査を毎年1回実施(記名自由)しており、意見聴取、苦情処理等

として活用している。なお、主な調査内容は次のとおりである。

① 各種ハラスメントの有無

② 賃金等、処遇への不満の有無

③ 正社員への登用希望の有無

(3)紛争解決の援助< POINT>

法定の援助制度

自主的に解決できない場合は、紛争解決のための 2 つの制度があります。

 ① 都道府県労働局長による紛争解決の援助

 ② 「均衡待遇調停会議」による調停

苦情や紛争は事業所内で解決することが望ましいですが、事業所内で自主的に解決できないような場合は、パートタイム労働法で①都道府県労働局長による紛争解決の援助と②調停の 2つの解決の仕組みが設けられています(パートタイム労働法第 21 条、第 22 条)。これらの制度の対象となる苦情は、①及び②とも、以下のとおりです。

対象となる苦情(義務事項及び差別禁止事項のみ)

労働条件の文書交付等、待遇の決定についての説明、待遇の差別的取扱い禁止、職務の遂行に必要な教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、通常の労働者への転換を推進するための措置

① 都道府県労働局長による紛争解決の援助についてパートタイム労働法で義務として定められている事項に関する紛争について、紛争の当事者であるパートタイム労働者、事業主の双方又は一方から、紛争解決のための援助を求められた場合、都道府県労働局長が助言、指導又は勧告を行うことによって紛争の解決を援助する仕組みのことです。

② 調停についてパートタイム労働法で義務として定められている事項に関する紛争について、紛争の当事者であるパートタイム労働者、事業主の双方又は一方から申請があった場合で、都道府県労働局長がその紛争の解決に調停が必要と認めた場合、学識経験者などの専門家で構成される第三者機関である「均衡待遇調停会議」に調停を行わせる仕組みのことです。「均衡待遇調停会議」は、必要に応じ、当事者や参考人から意見を聴いた上で、調停案を作成し、当事者に対して受諾勧告を行うことができます。

69

Page 71: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

なお、パートタイム労働者が援助を申し出たこと、調停を申請したことを理由として解雇、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の打ち切りなど不利益取扱いをすることは禁止されています(パートタイム労働法第 21 条第 2項、第 22 条第 2項)。ここまで、法律に基づく紛争解決方法を示してきましたが、本来はその前に課題を解決できることが望ましいことは言うまでもありません。紛争になるまでに、いつでも意見を聴取できるように、相談窓口を設置したり、定期的に意見交換会を開催すること等により、パートタイム労働者の意見を聴取するためのスキームをつくることが望ましいと言えます。…

70

Page 72: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

その他9

(1)労働保険への加入< POINT>

義務(雇用保険法)

・パートタイム労働者でも一定の基準を満たせば、雇用保険の被保険者となる。

パートタイム労働者に関連する労働保険の適用要件等は以下のとおりです。

① 雇用保険 <適用要件>パートタイム労働者でも、以下の①及び②の適用基準のいずれにも該当する場合には雇用保険の被保険者になります。

① 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること

② 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること

 <適用区分>雇用保険の被保険者は、年齢により、65 歳未満は「一般被保険者」、65 歳以上は「高年齢継続被保険者」に分類されます。ただし、65 歳以上で「高年齢継続被保険者」になるのは、65 歳以前から引き続き同一の事業主に雇用されている方に限ります。65 歳以降に新たに雇用された方は被保険者とはなりません。

 <失業等給付の求職者給付の受給資格要件>雇用保険の失業等給付の求職者給付の支給を受けるためには、離職の日の以前の一定の期間に、次の「被保険者期間」が必要です。

「一般被保険者」に該当する方の場合

離職の日以前 2 年間に賃金支払基礎日数 11 日以上の月が 12 か月以上あること。ただし、倒産・解雇などによる離職の場合及び雇止めによる離職の場合は、離職の日以前 1 年間に賃金支払基礎日数 11 日以上の月が 6 か月以上でも可。

「高年齢継続被保険者」に該当する方の場合

離職の日以前 1 年間に賃金支払基礎日数 11 日以上の月が 6 か月以上あること。

その他、被保険者が一定の要件を満たせば、以下の雇用継続給付(※)の支給を受けることができます。※①高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金 ②育児休業給付金 ③介護護休業給付金

雇用保険の適用・給付の詳細については、管轄のハローワークにお問い合わせください。

71

Page 73: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

② 労災保険パートタイム労働者も労災保険による補償を受けることができます。業務災害に係る保険給付の種類としては、①療養補償給付、②休業補償給付、③障害補償給付、④遺族補償給付、⑤葬祭料、⑥傷病補償年金、⑦介護補償給付があります。また、通勤災害についても同様の給付があります。そのほか、事業主の行う定期健康診断において脳・心臓疾患に関連する項目で異常の所見が見られた場合に支給する二次健康診断等給付があります。労災保険の適用・給付の詳細については、管轄の労働基準監督署にお問い合わせください。

(2)社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入< POINT>

義務(社会保険関係

法令)

・パートタイム労働者でも一定の基準を満たせば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となる。

・パートタイム労働者への社会保険の適用拡大が平成 28 年 10 月より予定されている。

すべての法人事業所と、農林水産業など一定の業種を除く常時 5人以上の従業員を使用する個人事業所は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所となります。パートタイム労働者も適用事業所の従業員であり、パートタイム労働者も一定の要件を満たせば被保険者になります。パートタイム労働者に対する社会保険の適用は、原則次表のとおりです。

社会保険の適用要件

資格要件

所定労働時間 1 日又は 1 週間の所定労働時間および 1 月の所定労働日数が通常の就労者のおおむね 3/4以上である者(注 1)

1 日若しくは 1 週間の所定労働時間又は 1 月の所定労働日数が通常の就労者のおおむね 3/4 未満である者

年収原則として年収が 130 万円(180 万円(注 2))未満

原則として年収が 130万円(180 万円(注 2))以上

適用

医療保険健康保険等被用者保険の被保険者

(家族が健康保険等被用者保険に加入している場合)健康保険等被用者保険の被扶養者

(家族が健康保険等被用者保険に加入していない場合)国民健康保険の被保険者

国民健康保険の被保険者

年金厚生年金保険等被用者年金の被保険者(国民年金の第 2 号被保険者)

(配偶者が厚生年金保険等被用者年金の被保険者の場合)国民年金の第 3 号被保険者

(配偶者が厚生年金保険等被用者年金の被保険者でない場合)国民年金の第 1 号被保険者

国民年金の第 1 号被保険者

(注 1)被保険者が労働日数、労働時間、就労形態、職務内容などを総合的に勘案して、常用的使用関係が認められれば、社会保険が適用されます。

(注 2)認定対象者が 60 歳以上である場合(医療保険のみ)、又は、おおむね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合。

72

Page 74: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅳ.小売業におけるパートタイム労働者雇用管理のポイント

なお、平成 28 年 10 月から、①週 20 時間以上、②月額賃金 8.8 万円以上(年収 106 万円以上)、③勤務期間 1年以上、④学生以外、⑤従業員 501 人以上の企業、の条件を全て満たすパートタイム労働者は、健康保険・厚生年金保険が適用されることとなります(「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成 24 年法律第 62号))。

また、週所定労働時間 25 時間未満のパートタイム労働者等を、社会保険の適用基準を満たす週所定労働時間 30 時間以上に延長した企業で、一定の要件を満たした場合には、キャリアアップ助成金(短時間労働者の週所定労働時間延長コース)を受給することができます。

「キャリアアップ助成金」の「週所定労働時間延長コース」の概要

 週所定労働時間 25 時間未満の有期契約労働者等を週所定労働時間 30 時間以上に延長した事業主で、一定の要件を満たした場合に助成する。

 ◆助成額:(カッコ内は大企業の額)      …1 人当たり 10万円(7.5 万円)      <短時間正社員コースの人数と合計し、1年度 1事業所当たり 10 人まで> <厚生労働省ホームページ キャリアアップ助成金のご案内>http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

社会保険加入の厳正な対応~D社(関東地方、各種商品卸売業、従業員数非公開)~

社会保険の加入可否も雇用契約書に下記のように記載し、厳正に対応している。特に、結果として時

間外労働を含めて労働時間数で社会保険加入条件に該当した場合、そのときに遡って加入させている。

(雇用契約書から抜粋)「1か月の勤務日数 17 日以上かつ総労働時間が 130 時間以上の状況が 3か月連続した場合には、その状況が最初に発生した月に遡って社会保険に加入するものとする。」

73

Page 75: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

74

Page 76: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

 Ⅴ.事例集

1.(株)エコス ….....................................................................................................................76

2.(株)ココカラファインヘルスケア ….................................................................................81

3.上新電機(株) ….................................................................................................................84

4.(株)髙島屋 ….....................................................................................................................89

5.(株)仁科百貨店 …..............................................................................................................93

6.みやぎ生活協同組合 .........................................................................................................98

7.(株)パパベル …...............................................................................................................102

8.(株)フレスタ …...............................................................................................................105

9.(株)蓬莱 ….......................................................................................................................110

10.(株)ヤオコー …...............................................................................................................113

11.(株)八木橋 …...................................................................................................................118

12.A社 …...............................................................................................................................122

13.B社 …................................................................................................................................126

14.C社 …...............................................................................................................................130

75

Page 77: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例1(株)エコス全社共通ツールを活用した教育、評価、処遇の一体化により、パートタイム労働者のスキルアップを目指す

本社所在地 東京都 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 4,570 名男性 1,411 名

うちパートタイム労働者数 3,680 名男性 667 名

女性 3,159 名 女性 3,013 名

ポイント

• OJT基準書の導入による、作業の効率化とパートタイム労働者のスキルアップ。• 教育と評価、処遇が一体となった仕組みの構築。• 正社員転換制度の整備。• 店舗実績を反映した賞与の支給。

1  企業概要・人員構造�

同社は、昭和9年に青果店として創業し、数回のM&Aを経ながら規模を拡大し、現在では関東地方一都六県でスーパーマーケット 65 店舗を運営している。店舗の基本的な人員構成は、店長1名、副店長1名、チーフ6名(グロサリー、生鮮4部門、レジに各1名)、作業者 70 ~ 80 名となっている。店長、副店長は原則正社員だが、チーフについては全社で 20 名程度がパートタイム労働者から登用されている。正社員は、店長又は副店長、チーフとして、主に管理的業務(数値管理、採用、勤務シフトの作成)を担い、発注、接客等の現場業務も行う。パートタイム労働者であるパートナーとアルバイトは、採用された店舗で品出し、接客、レジなどの業務を行う。パートナーは所定労働時間によって3つに区分され、週20時間以上30時間未満の「パートナー2」が1,500名超と一番人数が多くなっている。

従業員数と雇用区分雇用区分 人数 定義

正社員814 名男  681 名女  133 名

無期契約、フルタイム(週 40 時間)、月給制、転居を伴う異動あり

契約社員76 名男  63 名女  13 名

1年契約、フルタイム、月給制パートナーの上位者と定年後再雇用者が混在仕事内容は、ほぼ正社員と同じ

パート

パートナー3329 名男  26 名女  303 名

3 か月契約、週 30 時間以上

パートナー21,547 名男  85 名女 1,462 名

3 か月契約、週 20 時間以上 30 時間未満

パートナー1652 名男  29 名女  623 名

3 か月契約、週 20 時間未満

アルバイト1,152 名男  527 名女  625 名

3 か月契約、週 30 時間未満学生が対象

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○

76

Page 78: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

2  取組の背景�

収益構造の改革を戦略の一つに掲げ、ローコストオペレーションを推進する中で、パートナーの比率を高めてきた。全体の8割を占めるパートナーのさらなる戦略化と有効活用を図るため、2003年にパートナー制度の改訂を行い、パートナーを「マネジメント等級」と「技術等級」の2つの側面から評価し、初級や中級、上級といった等級区分に合わせて契約時間や給与を設定した。等級の判定方法は、「マネジメント等級」についてはマネジメント職務要件に基づいた筆記試験を、「技術等級」については実技試験を本社人事部が一元的に実施していた。しかし、試験実施の負担や社内体制の変更等もあり、次第に制度の運用・維持が困難になっていった。現在では「技術等級」の新規認定は行っておらず、「マネジメント等級」は店長の裁量で決定している状況となっている。また、「技術等級」は部門別に設定した技術要件(鮮魚部門の例:アジの三枚下ろしができる等)を満たしているかどうかで評価するが、魚を上手にさばけるだけでなく、より幅広い業務を数多くこなせる人を評価していくことの方が、店舗オペレーション上有効であると考え、現状の「マネジメント等級」、「技術等級」の2本立てで評価する制度から、マネジメント、技術、接客等の要素を総合的に盛り込んだ部門別のOJT基準書に基づいた達成度によって評価、処遇する方針に 2014 年半ばより転換することとなった。

3  取組の内容�

 部門別OJT基準書の導入 人事部と商品部、店舗が共働して、OJT基準書を作成した。部門別に、覚えるべき業務の一覧、作業手順書(野菜のカットの仕方、魚のさばき方などを写真付で記載)のほか、売り場づくり、接客、マネジメント等の多様な業務を項目出しした業務チェックリスト(業務ごとに、適切な行動を取っているかをチェック)を作成し、チーフが新規採用者やメンバーのOJTの際に使うツールとして、各店舗に配布している。今後は、ファイルの他にeラーニングを活用し、作業手順書の各手順を一工程ずつ画面で見られるようにするなど、よりわかりやすいツールにしていく予定である。この基準書に沿って教育や指導を行うことで、全店での作業の標準化、効率化を図ると同時に、パートナーのスキルアップを目指していく。これまで、パートナーの教育では半日程度の集合研修を外部の研修施設を使って実施した後は、店舗それぞれのやり方に応じたOJTに任せている側面もあったが、今後は集合研修ではなく、基準書を用いたOJTに絞って現場で教育していく予定である。

77

Page 79: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

青果部門作業手順書(例)

管理NO.: 業務名:納品荷下し~仕分け

店番: 店舗名: 社員番号: 氏名:

№ 判定項目

判定

一回目 二回目 三回目 四回目

/ / / /

1 納品伝票を確認しながら正確に検品している。

2 納品された商品の箱に見えるように納品日を記入している。

3 納品した商品を必要な場所(要冷蔵・非冷蔵)ごとに振り分

けている。

4 検品時に不良品が出た場合、適切な処理をしている。

(上司がいる場合には速やかに報告している)

5

審査日付 審査員名 審査印 業務評価

要練習 合格

コメント

※判定項目を確認し、していれば判定欄に「○」を記入する。

※判定欄の縦軸が全て「○」になった場合、この業務は「合格」とする。

青果部門業務チェックリスト(例)

手順

作業手順

①束ねら機の下にカウンタークロスを敷いて固定する。

写真

②キャベツの形を整え、テープを巻く準備をする。※●●を剥く。切口をきれいにする。

③葉の向きを考え、テープを引き出しキャベツに巻きつける

④写真の○の部分でテープとテープをつける。

⑥完成例⑤テープカッターでテープを切る。テープにゆるみがないように、しっかりと巻きつける。

審査回数チェック欄

手順

写真

審査回数チェック欄

一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目

一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 二回目 三回目 四回目

78

Page 80: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

 OJT基準書に基づいた評価と処遇の実施 OJT 基準書に基づく評価の実施を前に、2013 年5~7月に先行して、OJT基準書の手順書どおりに作業ができているか、売場づくりや接客、勤務態度等がOJT基準書の求めるレベルでできているかを各店舗でチーフが作業・項目ごとに審査を行い、「合格」か「要練習」かを判定した。2014 年の本格稼働後は、審査結果を記載した作業手順書と業務チェックリストをパートナー本人に渡し、判定結果の理由について、口頭で説明することを予定している。審査は年1回行い、1枚のシートに4回分の判定が記載できるため、パートナーの能力を経年で管理することができるようになる。また、所属部門のパートナー全員の結果が一目で分かる一覧表もあり、所属部門のレベルや強み、弱みを把握するためのツールとしても活用できる。新制度導入後は、「合格」となった作業の合計数によって等級を決定し、等級に基づいた賃金制度に変更していく予定である。現場での教育と評価、処遇が一体となった仕組みであり、誰にでも分かりやすく、パートナーのモチベーションアップにも繋がる。

 正社員転換の制度化 正社員登用試験が年1回行われ、契約社員を経ずにパートナーから直接社員に転換することができる。登用試験に応募したパートナーの中から将来のチーフ候補となる人材を店長が推薦し、その後筆記試験、人事部面接が行われる。毎年 10 ~ 15 名が受験し、2013 年は5名が合格した。正社員登用を始めて5年が経過し、正社員転換者は 31 名となっている。

 店舗業績を反映した賞与の支給 週 30 時間以上勤務のパートナー3には、賞与が支給されている。基本支給月数をベースに、店長による個人評価、所属店舗の実績に応じて加算が行われる。店舗の実績を加味することで、チームワークの向上や店舗全体の目標達成に向けた意欲の醸成を目指している。

年間支給月数 所属店舗実績 個人評価

夏 0.2 か月冬 0.2 か月年 0.4 か月

半期売上 100%以上     + 0.1 か月半期粗利 100%以上     + 0.1 か月半期1人当り売上 100%以上 + 0.1 か月

A 115%B 100%C  70%

 表彰制度の導入 今後、売場でのパートナーの創意工夫を評価する仕組みとして、好事例を発表する場を設けて表彰を行う表彰制度を導入する予定である。好事例の共有化と併せ、パートナーのモチベーションアップに繋げていきたい。

79

Page 81: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

4  成果と課題�

過去5年間でパートナーから 31 名が正社員に転換、チーフにはパートナーから 20 名が登用されているなど、パートナーの戦力化とともに、スキルや貢献に応じた処遇を推進してきた。新しい評価・処遇制度の導入に向けて、OJT基準書については、2012 年 12 月から店舗に配布しているが、実際に基準書を活用したOJTが行われている事例はまだ少ない。店長、副店長、チーフの指導力を高め、OJTを円滑に運用してもらうためにも、今後は基準書の活用法などを含めた研修等を実施していく予定である。現状の課題として、パートナーの役職への登用の少なさがあげられる。今後、より効率的に店舗を運営していくためには、社員の仕事をパートナーにシフトしていく必要がある。OJT基準書による評価の実施によって、各パートナーのスキルレベルが明確になると、スキルの高いパートナーには役職を担ってもらい、社員の仕事を任せることができるようになる。パートナーのスキルアップと同時に、社員の仕事のレベルアップも図っていきたいと考えている。OJT基準書に基づいた評価と処遇については、2014 年から実施予定である。学び、育てる風土の醸成と公正な評価、処遇の実現により、パートナーのモチベーションを高め、組織の活性化に繋げていきたい。

80

Page 82: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

事例2(株)ココカラファインヘルスケアグレード別の評価が、パートタイマーの意欲・能力の向上に効く

本社所在地 神奈川県 事業内容 その他の小売業

従業員数 約 15,000 名男性 約 4,800 名

うちパートタイム労働者数 約 9,400 名男性 約 1,700 名

女性 約 10,200 名 女性 約 7,700 名

ポイント• 人事評価をきめ細かく実施することにより、期待する働き方を明確化して周知。• 働きやすい環境を整備し、高い定着率を実現。• 正社員転換ルールが明確に規定され、毎年数十人が転換。

1  企業概要・人員構造�

ココカラファインヘルスケアはドラッグストア事業と調剤事業を中心として関連事業も幅広く展開している。近年関連会社を統合し、1,300 以上の店舗と従業員総数約 15,000 人を擁す規模となっている。パートタイム労働者は、以下に挙げた表の中でパートナーと称される、期間1年以内の期間を定めて雇い入れられた者で、1日又は1週間の所定労働時間が正社員より短く、会社が認めた者と定められている。それぞれの雇用区分ごとに就業規則が整備されている。

雇用区分 人数 特徴

正社員 5,160 名 期間の定めなし。転勤あり。職務限定なし。

パートナー 9,400 名 期間1年以内。原則として転勤なし。職務限定。

嘱託社員等 440 名 雇用契約による。

合計 約 15,000 名

正社員は、職務を限定せずに異動をしながらキャリアを形成していくが、パートナーは基本的に店舗での販売活動を中心とした職務であり、各店舗で採用される。店舗の標準的な人員構成は、店長―(副店長)―社員2人―複数のパートナー 1 となっている。業種柄、生活に密着した商品を売る職場として人気があり、パートナーの定着率は高い。

2  取組の背景�

ドラッグストア事業と調剤事業という顧客と対面する業種柄、「顧客一人ひとりに満足を」という考えを重視している。そこで、店舗で顧客と直接対応するパートナーにも期待する働き方を明示し、能力育成・戦力化を図る必要性があり、人事評価の導入は当然の選択肢であった。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○ ○

1 店舗規模により人数が異なる

81

Page 83: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

3  取組の内容�

 公正性・透明性を高めるための人事評価の実施 パートナーには、初級・中級・上級のグレードを設けて格付けに基づき賃金を支給している。採用時の賃金と現在の賃金との差額が0~ 30 円を初級、30 ~ 150 円を中級とし、会社が特別に認めた中級以上の者を上級としている。また、パートナーの業務内容と発揮された行動を正当に評価するため、人事評価を年1回実施し、その結果を処遇に反映させている。人事評価は、具体的には、以下のような評価項目により、本人評価…→…店長考課(一次考課)

→…統括店長 2 考課(二次考課)の順に行う。結果は評価記号(S、A、B、C)で示され、この結果と初級・中級・上級の区分により昇給額に差をつけている。さらに、人事考課結果のパートナーへのフィードバックを行い、目標をもって仕事に取り組むよう促している。

考課区分 項目

絶対項目

1.出勤率 -

2.定性項目

①意識・姿勢

②身だしなみ

③接遇

④行動

考課管理

1.初級(募集時給との差額が 30 円未満の者)

①レジ業務

②接客

③クレンリネス

④品だし

⑤商品管理

⑥販促物管理

2.中級(募集時給との差額が 30 円以上 150 円未満の者)

①教育

②発注

③売場管理

④クレーム初期対応

3.上級(会社が認めた中級以上の者)⑤金銭管理

⑥鍵管理

 柔軟な賃金設定、資格による時給上乗せ パートナーの採用時の賃金は、地域の状況等を踏まえ店舗ごとに決定しているが、優秀なパートナーを採用するため、統括店長決裁で3%を上限に変更ができることにしている。さらにそれ以上の変更も、エリア長決裁があれば可能となっている。ただし、採用後の昇給額には上限を設けている(店舗募集時の時給から最大 200 円)。また、登録販売者資格、CA(社内資格であるチーフアドバイザー)の資格を持つ者には、基本給に時間当たり 20 円を加算している。

2 近隣エリアの複数店舗をまとめて統括する店長

82

Page 84: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

 正社員転換制度の導入・実施 正社員へのステップアップの仕組みは、パートナー就業規則に以下のように規定し、周知されている。  ①1日8時間、1週 40 時間で正社員と同等の勤務ができること  ②所属長の推薦があること  ③人事考課がA評価以上であること  ④採用面接試験に合格したことまた、資格保有者で、転換してほしいパートナーには、会社側から声をかけることもあり、毎年数十人が転換している。

 法令順守への確実な取組 労働条件の明示・説明はパートナー用の雇用契約書を用いている。就業規則が整備されていることから、A4サイズ1枚にポイントをまとめたもので、その他は就業規則によるとしている。定年は正社員と同じく 60 歳であり、60 歳以降は、本人が希望した場合に 65 歳まで延長する。年次有給休暇は、法令どおりであるが、半日単位の取得も3日を限度に認めており、全体の取得率は7割前後である。

 福利厚生ほか 教育訓練は、採用時に接遇研修を行っているほか、正社員とは研修内容が異なるものもあるがパートナーの職務内容、成果、能力、経験などに応じて必要な接遇研修等の教育訓練を実施している。退職金制度はないが、勤続 10 年以上で退職した場合などには表彰制度を設けている。その他、パートナーについても正社員と同様に社内割引販売がある。

4  成果と課題�

人事評価は手間がかかるが、フィードバックにより期待・要求する能力・業務レベルをパートナーに気づかせ、目標を持って仕事に取り組んでもらうために効果があると感じている。パートナーが自らを成長させ、その結果の集約が企業を強くすると認識している。また、正社員へ登用の途が公開・公平になっていることから、意欲と能力あるパートナーが、正社員転換試験に挑戦し、毎年約30 人合格して定着している。課題は、高齢化への対応である。働きやすい環境のため、定着率もよく、60 歳代のパートナーも少なからずおり、今後、高齢化が進む正社員と併せ、どう処遇の均衡をとるか、検討しなければならないと認識している。

83

Page 85: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例 3上新電機(株)人を大切にする企業風土の中で、活躍の場を提供、積極的に正社員転換を進める

本社所在地 大阪府 事業内容 機械器具小売業

従業員数 約 5,500 名男性 約 3,750 名

うちパートタイム労働者数 約 2,700 名男性 約 1,300 名

女性 約 1,750 名 女性 約 1,400 名

ポイント

• 4か月ごとの人事評価により昇格・昇給。• 育成シートによる課題の提示と分かりやすいランクアップ制度。• パートタイム労働者から積極的に準社員、正社員を登用。• パートタイム労働者にも賞与を支給。• 正社員と同等の e ラーニングを受講可能。

1  企業概要・人員構造�

同社は、関西エリアを拠点に、東海エリア、関東エリアで 222 店舗(うち直営 168 店舗)を展開する家電専門店である。メーカーとの信頼関係を大切に、個々の商品の特性や価値をきちんと伝えることができ、顧客のニーズに応える生活提案型の家電専門店という拘りをもって店舗運営を行っている。店舗の基本的な人員構成は、中型店舗では正社員が15~ 20名程度、パートタイム労働者である「スマイルパートナー」が 20 ~ 30 名程度である。白物家電、AV機器、パソコン関係、総合レジ、バックヤード等の部門毎に正社員の主任や一般社員を配置し、在庫管理、発注、管理業務、販売等を担う。スマイルパートナーは、各部門の販売コーナーで働く場合もあるが、総合レジやバックヤードに従事することが多い。スマイルパートナーは正社員の下という位置づけではなく、「仕事のパート分け」=役割分担をしているという意識で、「仕事のパート」を任せて、協力し合って仕事をしている。こうした意味合いと笑顔の接客を兼ねて「スマイルパートナー」と名付けている。原則、部門の主任以上は正社員が担当しているが、現在トライアルで、スマイルパートナーの中からリーダーを選び、正社員とのパイプ役を担当させている。リーダーは、スマイルパートナーの意見・希望の吸い上げ、社員のいない時間帯には正社員の代わりを務めるなどの役割を担っている。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○ ○

84

Page 86: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

従業員数と雇用区分区分 人数 定義

正社員約 2,800 名

男性 約 2,450 名女性  約 350 名

管理職を目指す「ゼネラリストコース」と特定業務に専念する「エキスパートコース」がある。転勤の範囲は、全国転勤、エリア内転勤、自宅通勤の 3 つから選択可能。

キャリアプロモーター約 70 名

男性   約 60 名女性   約 10 名

無期契約、パートタイム(週の所定労働時間が正社員の 7 割程度)、月給制、福利厚生は正社員に同じ、自宅通勤可能な範囲で異動あり。退職金・賞与あり。

スマイルパートナー約 2,700 名

男性 約 1,300 名女性 約 1,400 名

4 か月契約、時給制。週の所定労働時間は本人の希望によるが 30 ~40 時間が多い。月間労働時間 120 時間超で社会保険と労働組合に加入する。該当者は 1,900 名。店舗間異動なし。一時金を年 2 回支給。

2  取組の背景�

20 年ほど前から、徐々にパートタイム労働者が増え、正社員が受け持っていた仕事の一部をパートタイム労働者に担当させるようになっていった。しかし、当時のパートタイム労働者の給与は一律で、評価制度もなく、勤続年数によって時給が上がっていくだけだった。パートタイム労働者を戦力化していくためには、スキルに応じた処遇を考える必要があると考えるようになり、10 数年前に初めてパートタイム労働者の人事評価制度を作った。その後、モチベーションアップとスキルアップに繋げられるよう、少しずつ改定を重ねている。同時にマニュアルの整備、教育訓練制度の充実も図って、スキルアップができる環境を整えてきた。こうした流れの中で、スマイルパートナーという呼び方も従業員の公募で選定した。

3  取組の内容�

 入社時研修から業務別・段階別の充実した教育訓練の実施 入社時研修はまず「基礎業務マニュアル」を使用して、1日目には、会社概要や雇用契約についての説明や同社の接客の基本として定める 10 の行動基準「ハートフル 10」について説明し、2日目には、レジ業務の実習や個人情報保護等のコンプライアンス教育を行う。次に、「スマイルパートナー育成速習マニュアル」を配布し、1週間で身に付けるべき基本的な事項を育成リーダー(原則は配属部門の主任(正社員))が指導し、1週間経過時点で所属長(原則店長)が評価する。「スマイルパートナー育成速習マニュアル」はレジ業務、バックヤード・売場、モバイル営業、一般事務等業務ごとにあり、例えばレジ業務では、金銭授受の基本的な流れや商品の渡し方など基本的なことから、在庫確認、商品の発注、工事の手配など、習得に時間を要する内容も記載されている。1週間で習得の程度を計り、その後はその時点での習熟度を元に、同じマニュアルを使って繰り返し継続的に教育を行っていく。習熟度が高まってくると、レジ業務、バックヤード・売場、モバイル営業、一般事務等業務ごとに定められた、より高度な内容がまとめられている業務別マニュアルに基づいた教育を行っている。また、段階に応じた業務別の育成シートがあり、それらに基づいて教育を行っている。育成シー

85

Page 87: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

トはステップ1からステップ5まで育成段階が分かれている。ステップ1は「ハートフル 10」ができているかや身だしなみ等、同社で働く心構えが基準となっている。ステップ2、ステップ3では業務ごとの習熟度や達成度が求められるようになり、ステップ4では、新人スマイルパートナーの育成や土日祝日、夕方、正月、盆等会社の勤務の要求に応じられるかなども含めて評価される。これは、リーダー育成の観点から入れている項目である。ステップ5では、スマイルパートナーのリーダーとして、他のスマイルパートナーへの指示、育成指導もできるかをみている。

 5つ星制度に基づく人事評価と昇給への反映 業務別の育成シートは5つ星制度と呼ぶスマイルパートナーの等級制度と連動しており、ランクアップの基準を満たすと星が増えていき、このランクに応じて基本時給が決定する。ランクアップ基準は、下位ランクの基準も含めて総合的に判断する仕組みとなっている。例えば、1つ星は、ステップ1の評価項目 23 を全てクリアすることで合格、2つ星は、ステップ1の23項目とステップ2から4の55項目中28項目クリアすることで合格するという仕組みである。4か月を1タームとして、1か月目は教育期間、2か月目は習得期間、3か月目は習得できたかどうかを育成リーダーと共に評価し、査定、4か月目に契約更新を行う手順となっている。評価は、一次評価が育成リーダーや育成者である一般社員が行い、二次評価は店内のバランスを見ながら所属長(店長)が行う。星無しからスタートして、基準を満たせば飛び級も可能である。スマイルパートナーとして長く勤める人も多く、4つ星や5つ星のパートナーも多い。

5つ星制度の各ランク人数比(平成 25 年 12 月現在)人数 割合

5 つ星 480 名 17.8%

4 つ星 470 名 17.4%

3 つ星 540 名 20.0%

2 つ星 500 名 18.5%

1 つ星 710 名 26.3%

合計 2,700 名 100.0%

 社員と同等のeラーニング受講 主として正社員の教育研修を目的に、一般的な業務知識のほか、商品知識などを学ぶことができる社内eラーニングの仕組みが構築されている。これらすべての講座の受講がスマイルパートナーにも認められており、勤務時間中に店舗で受講できるほか、一部の講座はスマートフォンや自宅の PCでも利用できる。

86

Page 88: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

 双方向に転換可能な準社員・正社員転換制度 年2回、スマイルパートナーからキャリアプロモーターと呼ばれる準社員への登用試験がある。キャリアプロモーターは月給制で、基本給は労働時間に応じて決められ、店舗間の異動はあるが、転居を伴う転勤はない。労働時間は正社員の7割程度の人が多い。福利厚生を含めた待遇は、正社員と原則同じで、労働時間が短いことに起因する賃金が少ない程度の違いである。退職金と賞与もあり、稼働時間に比例して額が決められる。勤続年数等の要件はなく、4つ星又は5つ星のスマイルパートナーに受験資格が与えられる。キャリアプロモーター登用試験は、1次選考が一般常識、コンプライアンス等を問う筆記試験、2次選考は面接(総務部実施)である。さらに、1年間キャリアプロモーターとして勤務すると、正社員登用試験(年2回)を受けることができる。正社員への登用は、所属長からの推薦、小論文と面接である。登用後のポジションはその人の評価や、店舗規模等によって異なる。スマイルパートナーからキャリアプロモーターへの転換制度は、平成 11 年度より導入し、累計で 182 名が移行している。キャリアプロモーターから正社員に移行した人数は、平成 13年以降 102名である。正社員から、キャリアプロモーターにキャリア移行することも可能であり、育児や家庭の事情に対応できるため、熟練者の雇用継続にも効果がある。

 スマイルパートナーにも一時金(賞与)を支給 スマイルパートナーにも年2回、一時金(賞与)を支給している。星ランクごとに単価を設定しており、6か月の算定期間の労働時間(1,000 時間が上限)を乗じた額を支給する。

 独自プログラムを活用し、個人の希望に配慮したシフト調整 家庭の都合などに配慮するため、事前に本人の希望を聴取して、同社が独自に開発したプログラムに基づき、月次でシフトを組んでいる。プログラムとはいえ完全なシフトはできないため、プログラムで作成されたシフトをもとに、店長や部門長が個別に調整をしている。

 顧客の評価や意見箱を通じた従業員同士のコミュニケーションの活性化 平成 16 年から顧客の投票による「ベストスマイルコンテスト」を全店で開催している。スマイルパートナーが選ばれることも多い。また、平成 24 年から取り組んでいる「お客さまの笑顔プロジェクト」の一環で、二つの意見箱を作っている。一つは「気付きカード」といい、顧客からの要望、業務の課題点を吸い上げ、社内全体で把握するシステムである。もう一つは「サンクスカード」といい、現在 20 店舗ほどで展開している従業員同士のコミュニケーションツールで、業務で困ったときに同僚に助けてもらった場合に感謝の気持ちを綴ったり、店長への要望を書くことができるものであり、風通しの良い職場作りに役立っている。

87

Page 89: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

4  成果と課題�

充実した教育訓練とキャリアアップの仕組みにより、スマイルパートナーの定着率も良く、スマイルパートナーからキャリアプロモーターへ、キャリアプロモーターから正社員へという良い流れが出来上がっている。正社員は基本的にはスマイルパートナー、キャリアプロモーターの内部昇格で採用することで、会社の経営方針や社風を徹底し、働きやすい職場をみんなで作っていくという職場環境を実現できている。今までスマイルパートナーの育成は、担当部門毎に行い、各部門のスペシャリストを育成、その達成度で評価してきたが、現在、顧客サービス向上のため、幅広い業務をこなせるよう、マルチスキル化を図る方向で、育成方針や人事評価制度の見直しを行っているところである。しかし、人事評価制度の変更に伴い、評価が下がってしまう人がでてくる可能性があるため、何らかの救済措置も必要と考えている。

88

Page 90: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

事例 4(株)髙島屋能力・志向に応じた処遇と手厚い福利厚生で戦力化

本社所在地 大阪府 事業内容 各種商品小売業

従業員数 約 11,000 名男性 約 3,200 名

うちパートタイム労働者数 約 3,200 名男性 約 100 名

女性 約 7,800 名 女性 約 3,100 名

ポイント

• パートの中に上位級を設け、やる気を醸成。• 契約社員、正社員への転換制度によりモチベーションアップ。• 能力開発支援、福利厚生も正社員に準じて適用。• ワーク・ライフ・バランスを図りやすい両立支援制度。

1  企業概要・人員構造�

同社は、直営店 14店舗を全国に持つ百貨店で、従業員数は 10,000 名超、そのうち約 30%近くがパートタイム労働者となっている。正社員である「フルキャスト」は、職務を限定せずに、様々な職務を経験しながら、キャリアを形成していく。全国転勤もあるが、自宅から通勤可能な範囲で異動することが多い。一方、契約社員である「セールスキャスト」、「スタッフキャスト・サービスキャスト」やパート社員である「クルー」は、限定された店舗で販売や事務、サービスの業務を行い、マネジメントには携わらない。

従業員数と雇用区分雇用区分 人数 特徴

フルキャスト約 5,600 名

男 約 2,600 名女 約 3,000 名

職務限定無。全国転勤もありうるが、通勤可能範囲で異動することが多い。総合職のみ。

キャリアキャスト・シェアードキャスト

約 550 名男  約 460 名女   約 90 名

60 歳定年後再雇用の1年契約社員。キャリアキャストはフルタイム勤務。シェアードキャストはフルタイムの 8 割相当勤務。

シェアードクルー約 940 名

男   約 140 名女   約 800 名

60 歳定年後再雇用の 1 年契約短時間勤務社員。週 22.5 時間勤務。

セールスキャスト約 800 名

男   約 20 名女  約 780 名

販売専門の1年契約社員。フルタイム勤務。

スタッフキャスト・サービスキャスト

約 850 名男   約 20 名女  約 830 名

事務・サービス専門の 1 年契約社員。フルタイム勤務。

クルー約 2,330 名

男   約 10 名女 約 2,320 名

1 年契約短時間勤務社員。勤務時間は、1 日 8 時間、1週 30 時間を超えない範囲で個別に設定。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○ ○

89

Page 91: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

2  取組の背景�

徐々にクルー(パートタイム労働者)やスタッフキャスト・サービスキャスト(契約社員)の割合が高まり、とりわけ店頭での割合が高くなってきたことを踏まえ、この層にモチベーション高く働いてもらうために対策を検討した。全社員が一体となって同じ方向性を目指すことを目的に、賃金面や働き方、仕事の幅などについて多様なニーズに応えられる施策を導入した。従来であればクルーで入社すれば退職までクルーであったが、今はクルーでしか働けないが、あるタイミングでフルタイムで働きたいと考えた時に、転換の道が用意されており、モチベーションアップにつながっていると考えている。

3  取組の内容�

パートタイム労働者である「クルー」を対象に、以下のような取組を行っている。

 人事考課を反映した能力給の設定 時間給は、基礎時間給と能力給によって構成され、その他に一定の職種に支給される職種加算、過去に同社で職員としての勤務経験がある者に支給される職歴加算などがある。能力給は、職務遂行能力を測る人事考課の評定(SS、S、A、B、C、Dの6段階)をもとに、前年度能力給のゾーン(2~3段階)及びランク 1 を基準として昇降することで決定する。新規採用時の能力給は、最初のゾーンの1ランクに格付けされ金額は0円となり、2ランクは5円、3ランクは 10 円となっている。標準的な評定(B)の場合、1年に1ランク昇給し、3年後は4ランクに格付けされ、能力給は 15 円となる。5円ピッチでランクを設定することにより、評価結果をより給与に反映しやすいようにしている。なお、評価によってはランクが下がり減給になる場合もある。

 販売職種の中に選抜制の上位級を設定 「販売職種」のクルー及びセールスキャストにのみ上位級として「S級」を設定している。「S級」の者は、よりレベルの高い接客、販売に加えて、後輩の指導などの役割も担う。「S級」は、人事考課(直近2回がA1回、S1 回以上)、販売経験年数(2年以上)を満たし、面接試験に合格した者であり、現在 49 名が在籍している。また、S級の中で極めて優れた能力を保有する人材を「シニアクルー」に任用し、販売指揮や販売員の指導などの正社員の職務を補佐するような役割を任せている。「シニアクルー」は、S級での人事考課基準(2年連続 SS)を満たし、面接試験に合格した者であり、「シニアクルー」に任用されると、時給が 50 円加算される。平成 20 年以降2名を任用し、現在は1名が在籍している。

1 販売職のクルー:C、Bの 2ゾーン。Cゾーンはランク 1~ 6 の 6 段階、Bゾーンはランク 7~ 17 の 11 段階に分かれている。事務職のクルー、サービス職のクルー:C、B、Aの 3ゾーン。Cゾーンはランク 1~ 6の 6 段階、Bゾーンはランク 7~ 17 の 11 段階、Aゾーンはランク 18 ~ 49 の 32 段階に分かれている。

90

Page 92: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

 短時間勤務からフル勤務の雇用形態への優先採用制度 「クルー」の中で更なる能力発揮を目指す人に対して、契約社員である「キャスト」への優先採用制度がある。希望者には契約更新時に総務部門が希望ジャンルを確認しておき、契約社員の採用計画がある場合に、希望者がいる部門長に対して採用情報を開示し、部門長から本人に伝える。所定の条件(直近の人事考課がB(標準的な評価)以上)を満たしていれば、各店舗での面接を経て採用が決定する。なお、直近1回の評価がB(標準的な評価)以上であれば、勤続1年未満でも優先採用の資格を得ることができる。これまでに約 300 名が優先採用制度を利用している。また、契約社員である「キャスト」から正社員「フルキャスト」への優先採用の制度もあり、段階を経てではあるが、パートタイム労働者から正社員への転換への道が設けられている。

 能力開発支援 希望者が受講できる実務研修や、能力及び知識の習得と動機づけを行う研修として、S級進級時及びシニアクルー任用時ガイダンス、販売職種スキルアップ研修などを実施している。また、自己啓発メニューとして、正社員と同様に販売士やカラーコーディネーター、ソムリエなど職務に役立つ約80 の資格取得をサポートし、現職務に必要な資格取得に関する費用は、全額会社が負担している。

 正社員に準じた福利厚生 福利厚生制度については、一部慶弔金の金額や慶弔休暇の日数に差はあるものの、正社員と同様に利用できる。結婚休暇や忌引き休暇は有給で取得が可能となっている。また、社内での買物の際は割引制度を利用することができる。その他、勤続1年以上のパートが病気や事故で入院した際に入院医療給付金が支給される仕組みもあり、充実した福利厚生の内容となっている。

60 才までの有期雇用社員の雇用管理区分

スタッフ・サービス職種販売職種

S級

フル勤務

S級

短時間勤務 フル勤務 短時間勤務

有期雇用社員間

  優先採用制度

フルキャスト優先採用制度

フルキャスト優先採用制度

有期雇用社員間

  優先採用制度

91

Page 93: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 両立支援制度の均等化 育児や介護に関する制度は、正社員と同等に整備されている。育児休業は子が3歳に達するまで、育児勤務(いわゆる育児短時間勤務の措置)は子が小学校4学年に達するまで、介護休業は対象家族1名につき通算1年までと、それぞれ法定を上回る手厚い内容となっている。その他、看護休暇は子に限らず二親等以内の親族が対象と幅広く設定されていたり、ボランティア休暇(有給)やスクールイベント休暇(有給)など、ワーク・ライフ・バランスを図りやすい制度が整備されている。スクールイベント休暇は、幼稚園や保育園、小学校に通う子又は孫の学校行事に参加する場合に年間2日まで取得でき、年間で約 1,000 名、約 1,600 日の取得実績があるなど好評な制度となっている。

4  成果と課題�

パートタイム労働者である「クルー」から契約社員である「キャスト」への転換は、本人のモチベーションアップにつながっている。これまでに約 300 名が「クルー」から「キャスト」に転換している。また、クルー時代にS級に進級している者で、セールスキャストのS級に優先採用され、その後正社員である「フルキャスト」へ優先採用された者も1名いる。採用面では、人手が必要な夕方の時間帯にクルーが集まりにくい実態がある。競合他社もあり厳しい状況だが、他社に比べて福利厚生が充実しているため、その点を周知することで、募集に繋がるのではないかと考えている。今後は改正労働契約法との関係もあり、無期労働契約への転換方法について、単純に現状の雇用区分のまま無期化に移行するのか、地域や職種を限定した準社員的な区分を新たに設けるのかなど、全体的な雇用区分の整理について検討していく必要があると認識している。

92

Page 94: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

事例5(株)仁科百貨店正社員と一部重複した職責制度・人事考課の整備によりパート社員のモチベーションを向上、考課項目に沿ったOJTで効率的なスキルアップを支援

本社所在地 岡山県 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 約 1,800 名男性 約 450 名

うちパートタイム労働者数 約 1,500 名男性 約 200 名

女性 約 1,350 名 女性 約 1,300 名

ポイント

• 正社員の職責制度と一部重複した職責制度でパート社員のモチベーションを向上。• 定期的な人事考課による昇給・昇格の実施。• 考課項目に沿った OJT と多様な OFF-JT 実施によりスキルアップを支援。• 正社員基準の福利厚生。

1  企業概要・人員構造�

同社は 1900 年に創業した万屋「浜中屋」を起源とし、1949 年に(株)仁科百貨店を設立・法人化し現在に至る。コンセプトショップ「フードバスケット」といった食料品スーパーを主力形態とし、倉敷市を中心に岡山県南部地域に 31 店舗を展開している。パート社員(パートタイム労働者)は、全従業員の8割超を占め、店舗のレジ、販売等の業務に従事している。一方、正社員は本部業務のほか、店舗においては店長、青果、鮮魚等の売場チーフ又は担当者として、店舗規模により1~2名が配置されている。小規模店舗では、パート社員のみで売場が構成されるケースもある。なお、同社では、年齢に関係なく能力を発揮し働き続けることのできる企業風土の構築を目指し、地域の同業他社に先駆け、高年齢者雇用安定法改正前より60歳定年制を65歳定年制に改めた。また、65 歳を超えても働く能力と意欲があれば、実質的にエイジフリーで活躍できる機会が与えられている。このような取組により、(独)高齢・障害・求職者支援機構が行う「高年齢雇用開発コンテスト」において、平成 16 年度理事長表彰を受賞している。

2  取組の背景�

同社には以前から、意欲や能力を十分に発揮でき、働きや貢献に応じた処遇制度を整備することで、パート社員のやる気を後押しすることが重要との考えがあった。このため、改正パートタイム労働法の施行以前に、社内の経験豊富なスーパーバイザー 1(以下、「SV」という。)の協力を得て部門ごとに職務要件を整理し、それをベースに現在の人事制度を構築した。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○

1 本部バイヤーの立てた販売計画を店舗で実現できているかのチェック・店舗チーフへの指導、店舗の販売状況のチェック・本部バイヤーへの販売計画の修正アドバイス等を行う職位。

93

Page 95: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

3  取組の内容�

 正社員の職責制度と一部重複した職責制度 働きや貢献に応じた処遇制度の実現に向け、正社員の職責制度と一部重複したパート社員の職責制度を構築した。具体的には、パート社員の職責を P-1 から P-4 までの4つに区分し、上位2職責は、正社員の下位2職責と重複させている。正社員と重複した職責にあるパート社員の時間給は、同じ職責の正社員の時間当たり平均給与を基準に設定してあり、同一労働同一賃金を実現している。

正社員とパート社員の職責制度正社員 パート社員

職責 6 部長

職責 5 次長、教育店長

職責 4 課長、店長

職責 3 係長、バイヤー、SV、店長、副店長

職責 2 主任、SV アシスタント、店舗チーフ P-4 店舗チーフ、管理業務を担当

職責 1 本部担当、店舗担当、サブチーフ P-3 店舗担当、サブチーフ

P-2 売り場内の単一又は複数の作業を完結

P-1 補助業務を担当

 定期的な人事考課による昇給・昇格の実施 パート社員の人事考課は年2回、半期ごとに職責別・部門別の考課表に沿って実施している。評価項目は、上位2職責(P-3、P-4)では管理能力、下位2職責(P-2、P-1)では業務遂行能力が主であり、これに売上等の業績考課が加えられる。業務遂行能力は、パート社員が配置される青果、鮮魚、精肉(インストア)、精肉(アウトパック)、惣菜、加工・日配・生関、レジ、銘店、事務、ナイトマネージャーの 10 部門の別に設定してある。

94

Page 96: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

人事考課表のイメージ(青果・P-1 用)

S、A、B、C、Dの5段階の「評語」は、昇(降)給に反映されるほか、ポイント換算して累積され、重要な昇給・昇格基準となっている。ポイントの換算方法、評価分布については、次のとおりである。

評語の換算ポイントと分布調整率評語 換算ポイント 分布 備考

S 5 5%

P-1,P-2 は店舗内で分布調整する。P-3,P-4 は全社で分布調整する。

A 4 15%

B 3 60%

C 2 15%

D 1 5%

昇(降)給においては、年間の獲得ポイントによって、職責内の号俸が昇降する。特にS評価の場合は、年1回の昇給時期を待たず、半期で昇給させている。昇格は、標語の累積ポイントに加え、店長等の推薦、昇格試験、週 30 時間以上の契約時間とすること等を基準として決定されている。累積ポイントが非常に少ない場合は、降格もあり得る。ただし、その場合には、通常の昇格基準を緩和した降格者特例の昇格基準が、別途用意されている。

95

Page 97: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

昇格基準昇格区分 累積ポイント 累積期間 推薦 昇格試験 週当契約時間 店舗間異動 出勤

P-1 → P-2 8 P~ 1 年 - - - - -P-2 → P-3 16 P~ 2 年 店長・SV - 30 H以上 可 土日祝出勤可P-3 → P-4 16 P~ 2 年 店長・SV 役員面接 30 H以上 可 土日祝出勤可

 考課項目に沿ったOJTと多様なOFF-JT 実施によりスキルアップ支援 部門・職責ごとの人事考課表は、それ自体が職務遂行の可否を問うものである。このため、考課項目を3区分した「能力・技能育成シート」を作成し、1区分に1か月、計3か月をかけ、パート社員に対し考課項目に沿ったOJTを実施するカリキュラムとして活用している。指導・育成は店舗チーフが行うが、指導・育成が不得手なチーフの場合は、SVがフォローアップすることで補完している。また、社内研修として「ニシナの数字」を開催しているほか、通信教育の受講料及び各種検定試験にかかる受験料を一定の条件下で会社負担とする等、多面的にスキルアップを支援している。

能力・技能育成シートのイメージ

 一般求人に先だった正社員社内公募による正社員転換機会の付与 新しく社員を募集する際は、公の求人に先立って既存のパート社員からの応募者を募っている。通常の採用選考手順に沿った筆記試験や面接等を行うものの、一般の応募者よりも早い選考機会が与えられることとなる。

 正社員基準の福利厚生 慶弔休暇や育児・介護休業、私傷病休職等の制度には、正社員とパート社員とで利用要件に差がない。また、各自の事情に合わせて制度上の休職期間を柔軟に延長すること等についても、正社員・パート社員の区別なく最大限の便宜を図っている。慶弔見舞金も正社員と同じ基準が適用され、事案ごとの支給金額も同額となっている。

96

Page 98: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

4  成果と課題�

現行制度では昇格するために一定の期間が必要であるが、優秀なパート社員については、当該期間を経ずに早期昇格できる仕組みづくりを検討している。また、上位職責者が行う業務には管理業務と店舗業務が混在しているが、上位職責者は管理業務に、下位職責は店舗業務に、それぞれ専念できるよう、考課項目の見直しを行っているところである。さらに、65 歳定年以降も働く意欲と能力を有する人が、培ってきた高いスキルを活かして活躍できる職責を開発することも急がれる。年齢に関係なく長く働けることは社員のモチベーションに良い影響が出ており、そうした制度整備により高齢者の一層の活用が期待できる。チーフ不在時にその責務を代替する P-3 のパート社員が全体の2%程度と少ないことも、問題と認識している。その育成のための研修にも、引き続き注力していく予定である。

97

Page 99: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例6みやぎ生活協同組合全員正職員という考えの下での労働条件、雇用管理改善の取組

本社所在地 宮城県 事業内容 各種商品小売業

従業員数 約 6,650 名男性 約 1,650 名

うちパートタイム労働者数 約 5,750 名男性 約 950 名

女性 約 5,000 名 女性 約 4,800 名

ポイント

• 正規職員と同一の役割等級制の適用と等級に応じた時給設定。• 均衡を考慮した賞与、退職金、福利厚生。• スキルマップを活用したパートの評価。• 教育訓練の充実。

1  企業概要・人員構造�

同生協は、宮城県学校生協(1952 年設立)と宮城県民生協(1970 年設立)が合併して 1982 年に誕生した。現在、宮城県内に 46 店舗、10(共同購入部)センター、6(学校部)支所を有し、事業高は 1,000 億円を超える。メンバー数も 66 万名余と県内世帯数の 70.4%が加入しており、全国の生協で最も高い加入率を誇っている。職員のうちレギュラー職員(正職員)は、本部採用で、転勤がある。レギュラー職員は、店長、センター長、統括、部長等のマネジメント系職位のほか、バイヤー、スーパーバイザー、店舗運営統括、管理部門スタッフへのキャリアを展開することが期待されている。パート職員(パートタイム労働者)は、地域、職種が限定されており、店舗別に、販売員、キャッシャー、店内加工、共同購入センターの配送、生産工場やセットセンターの仕分け、本部の事務等の職務を約して採用されている。雇用期間の定めはない。パート職員は、週所定労働時間が 30 時間以上のAパート、20 時間以上 30 時間未満のBパート、20 時間未満のCパートの3つに分かれているが、職務の内容は同じである。時給には職種や地域による違いはなく、早朝、夜間等の時間帯に対して別途に手当が支給されている。10 年ほど前から毎年1回、パート職員からレギュラー職員に採用する内部公募を実施してきたが、2013 年度からはパート職員から勤務地限定型の正職員(エリア職員)への登用制度が開始され、店舗等の部門チーフとして配置されている。なお、標準的な店舗は、店長、副店長、各部門チーフと担当者等のレギュラー職員・エリア職員が 10 名前後と、各職種のパート職員約 100 名の体制である。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○ ○

98

Page 100: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

2  取組の背景�

同組合は「経済が拡大すれば、しあわせも拡大する」という考えを見直し、みんなで幸せを共有する「共助社会」の実現をめざしている。また、メンバー(組合員)の共通の願いやニーズを満たすための助け合い(相互扶助)の組織でもある。そうした考えから、従業員全員が正規職員という考えの下に、労働組合(全員が労働組合員)とも協議を重ね、性別、雇用形態に関わらず能力が発揮でき評価される組織、また家庭責任を負う職員が働き続けられる職場の整備を目指して、労働条件、雇用管理の改善に取り組んできた。また、生協の事業を進めるうえで、全職員の 75%を占める女性が大きな役割を果たしており、女性の能力発揮が特に重要と考えて、取組を行ってきた。

3  取組の内容�

 同一の役割等級制の適用と等級に応じた時給設定 今般、これまでの職能資格制度を廃止して、仕事を基準にしたレギュラー職員・エリア職員、パート職員共通の役割等級制に移行することになっている(2014 年4月から実施予定)。全職員がみやぎ生協の正規の職員であることを意識づけるために、パート職員の呼称も「パートナー職員」となる(制度変更前のため、以降も「パート職員」と記載する。)。新しい役割等級制では、レギュラー職員については役割に応じ、全体で 10 段階(一般Ⅰ~Ⅲ、中級管理Ⅰ~Ⅲ、上級管理Ⅰ~Ⅲ、経営管理)のグレードが定められている。エリア職員はこのうちの6段階(一般Ⅰ~Ⅲ、中級管理Ⅰ~Ⅲ)が適用される。今回から、これまでグレードのなかったパート職員にも、一般Ⅰ~Ⅲが適用されることになった。パート職員にはグレードに応じた時給が設定され、人事考課に基づく新たな昇給制度も導入される。今までは最大で 50 円までしか昇給できなかったところ、新制度では、最大で 120 円まで昇給が可能になっている。また、役割の考え方に従い人事考課も変更する。これまでの業績に偏重しがちだった人事考課から、「その役割にふさわしい行動をとっているか」、「結果を出すためにどのように行動したか」といったプロセスを重視したものとなる。役割基準の人事制度とプロセス重視の人事考課の導入により、一人ひとりの職員がそのステージで考えて発揮する力が、処遇、事業とのバランスをもたらし、みやぎ生協の次の成長につなげることを狙っている。

 均衡を考慮した賞与、退職金、福利厚生 賞与については、数年前から優先的に改善を図ってきた。経営状況が苦しい時でも、パート職員の賞与はできるだけ下げず、上げる時はパート職員の賞与を先に上げてきた。その結果、現在ではレギュラー職員の半分程度の月数が支給されている。退職金も、2006 年からパート職員に導入されている。退職金額の算定は、時給を基礎として行うので、役割等級の導入に際し退職金規程は変えていないものの、時給の昇給額が大きくなる結果、実質的には退職金額の増加が見込まれている。

99

Page 101: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

福利厚生は、すでにレギュラー職員・エリア職員とパート職員が同等になっている。勤務時間の差を考えると、パート職員の方が有利になっている部分もあり、モチベーションアップにつながっている。育児休暇、介護休暇、慶弔見舞金、永年勤続表彰、労災上積、契約スポーツ施設利用等が一通り整備されている中で、特徴的な制度として保育所延長保育の費用補助がある。これは、生協内の勤務により延長保育をせざるを得ない場合にかかった費用の半額(1か月1万円を上限)を補助するものである。

 スキルマップ(ガイドブック)を活用した評価 2001 年から各部門の現場の協力を得て、部門別のスキルマップ(ガイドブック)を作成してきた。パート職員に評価制度を導入するための前提として作成し始めたものである。スキルが上がれば時給が上がるという考えの下に、ガイドブックを活用して年2回面接を実施している。評価制度の見直しに当たり、ガイドブックにある 50 項目のうち、今年は 10 項目と情意(仕事の姿勢、職業人としての基礎能力)の2つの視点をシート化した。ウエイトは半々として 100 点満点で評価し、S、A、B、C、Dの5段階の絶対評価を行う。一方、レギュラー職員・エリア職員の評価は、コンピテンシー、成果、プロセスの3つの視点から行われており、パート職員とは少し異なっている。

 教育訓練の充実 新規採用のパート職員に対しては、採用直後から教育店舗で3か月の実務研修を行っている。店舗では「パートナー制度」を設け、OJT担当者とは別に、新人に積極的に関わってくれる「パートナー」を指名して職場定着を図っている。その後、試用期間(3か月)終了後に1日、パート職員を対象にした新採用者研修を実施している。これは、全パート職員を対象としており、必ず参加させている。内容、目的は、①パート職員同士の交流を深め、職場で元気に働いていただく、②みやぎ生協の目指すもの、生協や産直についての学習、③就業規則の説明等である。また、自己啓発支援としては、通信教育の受講を推奨しており、パート職員にもレギュラー職員・エリア職員と同様の支援を行っている。補助率は、教育コースによって異なる。

 内部公募によるレギュラー職員・エリア職員への採用 10 年ほど前から、6か月以上勤務しているパート職員等(嘱託やアルバイトも含む)からレギュラー職員への内部公募を実施している。2012 年度は 25 名の応募に対し7名、2013 年度は 30 人の応募に対し8名が採用された。また、2013 年度にエリア職員の雇用区分を設けたのと同時に、1年以上勤務しているパート職員等を対象として、エリア職員の内部公募も開始した。この1年間にすでに 17 名の応募から 11名のパート職員がエリア職員に採用され、次年度初めに向けても 10 数名の新たな公募を行っているところである。いずれの公募においても、募集内容は全職員に対し公示され、複数回の選考を経て採用が決められる。エリア職員の公募の場合、生協や服務等に関する知識、応募部署に業務上必要な知識、

100

Page 102: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

実技(応募部署が店舗の場合)の試験からなる一次選考、適性検査と部長面接による二次選考が行われている。

4  成果と課題�

新しい人事評価制度はすでに完成しているが、実際の導入は、2014 年の4月からの予定である。当面は、この新制度の運用と定着化に努めていく。新制度により、全員が正職員という考え方が定着するとともに、女性の管理監督者が増加することが期待される。その他の制度は、以前から実施しているが、パート職員のモチベーションアップ等の効果も出ているので、今後も均等・均衡処遇の観点から続けていく予定である。今後の課題としては、賃金水準の問題が大きい。宮城県の最低賃金が毎年 10 円前後上昇し、時給で優位性を訴求するのが困難になっている。採用難が続いているが、単なる時給改善では効果はあまり期待できないため、人材確保に向け、幅広く雇用管理改善に取り組んでいきたい。

101

Page 103: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例7(株)パパベル雇用形態を問わない教育訓練でスキルアップとキャリアアップ

本社所在地 徳島県 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 約 130 名男性 約 30 名

うちパートタイム労働者数 約 70 名男性 約5名

女性 約 100 名 女性 約 65 名

ポイント

• 接客大会でモチベーションアップ。• 雇用形態に拘わらず教育訓練を積極的に進めることでスキルアップ。• 月1回の個別面談で風通しの良い職場風土づくり。• 意欲と能力の高いパートを重要な役割へ積極登用。

1  企業概要・人員構造�

同社は、徳島県内に本店を含めて3店舗、香川県内に2店舗の計5店舗を展開し、パンの製造販売を行っている企業である。材料はもとより常に焼き立てのパンを提供することにもこだわり、焼き立てパンが提供できるよう各店舗とも販売のみならず製造も行っている。大きくは製造部門と販売部門に分かれるが、店舗ごとの人員構成は、正社員が製造分門に5~ 10名、販売部門に2~4名、パートタイム労働者が製造部門に1~ 12 名、販売部門に3~ 13 名で、製造部門は正社員の比率が高いが、販売部門はパートタイム労働者の比率が高くなっている。製造部門において、パンの製造工程は「仕込み」、「成形」、「焼成」、「仕上げ」に分かれる。正社員は全ての工程を経験し担当するが、パートタイム労働者はその中の一部のみしか担当しない。中でも「仕込み」等一部難しい工程は正社員のみが行う。販売部門においては、「接客」、「陳列」、「ポップ作成」、「レジ」などの定形業務をパートタイム労働者が行っている。製造部門、販売部門ともに正社員は現場業務の他、労務管理、計数管理等店舗運営を担っている。同社のパートタイム労働者の属性として、主婦が全体の6~7割と多く、個々人の希望を考慮しながら勤務時間及び勤務日を決定している。

2  取組の背景�

販売スタッフはパートタイム労働者が主力となっていること、スタッフ間で技術のバラツキがあることから、パートタイム労働者も含めた全スタッフのスキルの底上げとさらなるスキルアップを図る必要があった。また、スタッフのモチベーションを維持していくため風通しの良い職場風土づくりと、意欲や能力のあるパートタイム労働者がスキルアップやキャリアアップできる機会を与え、職場の活性化につなげたいと考えていた。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○

102

Page 104: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

3  取組の内容�

 正社員と変わらない教育訓練 創業時からの同社の方針として、スタッフ間のコミュニケーションを大切にするとともに人材育成を重視している。そこで、可能な限り正社員とパートの区別なく全てのスタッフに教育訓練の機会を与えるようにしている。販売部門であれば、正社員、パートタイム労働者の区別なく、入社して1か月間は、店舗の責任者が中心となって入社時の教育訓練を行う。これは育成計画表に基づいた計画的なOJTで、トレーやトングの扱いから始まり、約1週間後の商品の価格テスト合格を経てレジ業務に就き、その後独り立ちする。また、パンの製造に関する通信教育なども、パートタイム労働者を含め、希望者に受講の機会を与える。さらに、各店舗で行うミーティングや研修はパートタイム労働者にも可能な限り出席してもらっている。

 接客大会 モチベーションの維持と向上のため、毎年1回、正社員、パートタイム労働者の区別なく、全ての販売部門の従業員を対象とした接客大会を開催している。これは日頃の頑張りの成果を披露する機会となっている。まず、各店舗で予選を行い、2名の代表を選出する。その代表が本店に集まり、本選が行われる。予選では、客が来店したというシチュエーションを設定し、着眼点 10 項目についての評価を行う。課題は予め全員に伝えている。本選においては、社長及び専務2名の計3名が審査委員となり、他のスタッフがお客役となる。各店舗から選ばれた代表が、それぞれ1名 10 分の持ち時間で「接客」、「レジ」、「包装」等の技術を競い、得点の高かった者の中からMVP1名、店舗賞5名を選出し、賞状と金一封をその場で授与する。また、当日の様子はビデオ撮影を行うため、後で振り返ることができる。接客大会には新入社員を必ず参加させ、同社のレベルの高い接客技術に触れさせている。

 能力や意欲のあるパートタイム労働者の積極登用 パートタイム労働者にも可能な限り正社員と同様の教育訓練の機会を与えるようにしているが、同社に入社してくるパートタイム労働者には主婦が多いという特徴があり、能力が高くても配偶者の扶養の範囲内で働くことを希望し、正社員となることを希望しない者がほとんどである。しかし、何とかその能力を活かすことはできないかと考えていたところ、ディスプレイに関する感性と技術に優れたパートタイム労働者が入社した。そのパートタイム労働者に、県外で行われるものも含め本人の希望する研修等を受講させたところ、ますます技術に磨きがかかり、今では各店舗のディスプレイの指導を任せるまでに成長した。同社ではこれをモデルケースとして、教育研修や面談を通じて本人の能力を見極め、パートタイム労働者であっても重要なポジションに登用していきたいと考えている。

103

Page 105: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 定期個人面談 同社では、教育訓練や人材育成に力を入れているが、その大前提として、会社と同じベクトルで想いを共有しなければならないということから、ミーティングや個人面談を重視している。月に1回は店長が正社員もパートタイム労働者も含め全てのスタッフと個人面談を行っている。また、本人から希望がある場合や必要がある場合は不定期に行うこともある。面談の内容は、それぞれが設定した個人目標の達成状況や目標達成に向けての課題の確認、評価結果のフィードバック、その他意見を聴くなどである。個人目標は、簡単なことでも良いので、全スタッフに期ごとに提出してもらっている。個人面談を定期的に行いコミュニケーションを取ることによって、会社や店舗の方針を十分理解してもらうとともに、スタッフの不満を解消し、風通しの良い職場風土形成を心がけている。

4  成果と課題�

同社では、積極的な教育訓練が着実に現場に活かされている。また、接客大会を行うことで、日頃の教育訓練が身に付いているか自他ともに確認することができる。これは、パートタイム労働者だけではなく全スタッフのモチベーションアップにつながり、活気ある職場環境づくりに役立っている。月1回の個人面談は、評価や人材育成という側面だけではなく、スタッフ個々人の思いや環境の変化を店長が知ることができ、シフト管理においても有効である。何よりもパートを含め全スタッフが意見を言いやすい職場環境形成に役立っている。元々「パンが好き」な人で、同社と想いを共有してくれる人を採用しているが、上記のような教育訓練や職場風土づくりが功を奏しており、パートの平均勤続年数は6~7年と比較的長い。今後の課題として、パートタイム労働者のキャリアアップという点で、現在1名いるディスプレイ担当者のような、短時間勤務でも重要な業務を任せられるようなパートタイム労働者を増やしていきたいと考えている。

104

Page 106: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

事例8(株)フレスタ職業能力評価基準を参考にした能力評価・フィードバックによる能力開発を推進、有期実習型訓練を採用した正社員転換制度による転換者をフォロー

本社所在地 広島県 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 約 4,100 名男性 約 1,200 名

うちパートタイム労働者数 約 3,500 名男性 約 700 名

女性 約 2,900 名 女性 約 2,800 名

ポイント

• 職業能力評価基準を参考に能力評価項目を策定し、職務等級制度を構築。• OJT コミュニケーションシートを活用したフィードバックと育成支援。• 有期実習型訓練によるフォローで正社員転換制度を推進。• 各種研修や試験の充実、e ラーニングの活用。

1  企業概要・人員構造�

同社は明治 20 年(1887 年)に菓子・煙草小売店として創業、現在では食料品・日用雑貨品を扱ったスーパーマーケットを、広島県を中心に岡山県、山口県に 54 店舗展開している。創業の精神「正直な商売」を引き継ぎつつ、顧客満足にこだわり、「食」を中心に快適な「暮らし」の創造提案企業を目指すことを企業理念として掲げ、お客様への喜びを創りだし、自らの仕事に誇りの持てる「人財」を育てることを目的としている。全社員の8割強を占めるパート・アルバイト社員(パートタイム労働者)は、笑顔で働き、その笑顔をお客様へ提供できるようにと、「スマイル社員」と呼称している。スマイル社員は主に7つの部門(食肉・水産・青果・惣菜・レジ・ドライ・日配)に配置され、基本的に配置転換や転勤はない。スマイル社員は6か月の有期雇用契約で、配偶者の扶養範囲内での働き方から、趣味などと両立できる働き方、責任のある仕事に就いてできるだけ収入を得たい働き方まで、多様なタイプの働き方が用意されている。

スマイル社員の働き方

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○

一日に働くことのできる時間は何時間ですか?

4h未満

雇用保険適用外社会保険適用外

雇用・社会保険適用

雇用・社会保険適用雇用保険適用

4h 6h

配偶者の扶養範囲内(103万円以内)で働きたい

短期間で集中して働きたい

しっかり稼ぎたいが趣味や墓の社会活動とも両立

したい

できるだけ長時間働き経済的に自立したい

働く時間

働き方

保険適用

105

Page 107: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

2  取組の背景�

従来もスマイル社員の能力評価を実施していたが、制度として十分に機能しておらず、働きぶりと処遇が合っていない等、ベテランを中心にモチベーションの低下がうかがえた。特に、評価方法が全社的に統一されておらず、評価基準に客観性が欠如していることが大きな原因であると考えられた。また、評価や面談・フィードバックのスキームも存在していたが、契約更新時、賞与査定時、ISO等の社内ルール時にそれぞれ半期に1回ずつ、年間では計6回も面談を実施しており、非効率な面があった。スマイル社員の基幹労働化が重要となっている中で、働きに応じた処遇を提示しモチベーションの向上につなげるとともに、顧客満足を向上させるべく、制度改革に着手することとした。

3  取組の内容�

 職業能力評価基準を参考とした能力評価項目の策定 中央職業能力開発協会が公開している職業能力評価基準(スーパーマーケット業)を参考として、スマイル社員について能力評価(同社では「職務能力評価」と呼んでいる。)の項目を策定した。策定に当たっては、当時各部門を担当していたトレーナーの協力を仰いだ。結果的には、職業能力評価基準の内容の半分以上を自社に合うよう変更した。能力評価項目は、スマイル社員が配置される7つの部門別に、上司の指示を受けて業務を行う

「レベルⅠ」、部下に対して指示・支援のできる「レベルⅡ」のレベル階層別に設定している。レベルⅠ、レベルⅡとも全部門共通となる「共通項目」と、部門ごとに求められる職務遂行を問う「選択項目」の2つのカテゴリーから構成され、共通項目は 12 項目、選択項目は部門により異なるが平均 30 項目程度でまとめられている。レベルⅠの項目には基本的就業姿勢や各職務の遂行能力を問うものが多く、レベルⅡの項目にはコンプライアンスやマネジメント能力を問うものが多い。部門・階層により評価項目数は異なるが、最終的には全て 100 点満点に換算し、共通数値化している。

 能力評価項目と対応させた職務等級制度の構築 スマイル社員に初級職、中級職、上級職の3つの等級を設定し、能力評価基準のレベルⅠは初級職及び中級職に、レベルⅡは上級職と位置づけた。初級から中級への昇格要件は、レベルⅠの評価得点が中級職への昇格点数に達することである。一方、中級から上級への昇格には、レベルⅠの評価得点が上級職への昇格点数に達することに加え、必要な社内研修を受講していること、上級職を遂行するために必要な時間の勤務が可能であること、及び社内試験にパスし面接に合格することが求められる。2011 年より職務能力評価制度を導入しているが、導入当初はまずスマイル社員のスキルチェックとして活用・運用し、2013 年4月より評価結果を賃金に反映させる制度として運用を開始した。評価は、本人の自己評価の後、チーフの1次評価、店長の2次評価と順に行われる。1次評価及び2次評価は、イントラネット上の社内専用システムで実施され、評価結果は全てデータ管理されている。

106

Page 108: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

スマイル社員の等級と役割及びレベル階層等級 職位呼称 役割 レベル

上級 リーダー・スマイル 部門管理補佐・育成指導 Ⅱ

中級 パートナー・スマイル 自立した定型業務 Ⅰ

初級 フレンド・スマイル 定型業務(フォローが必要) Ⅰ

給与については、各等級内が 10 号俸に分けられており、号俸も評価得点に応じて決定される。半期に1度、年2回の評価結果は、半期ごとの契約更新に反映され、昇給・昇格が行われる。なお、新規に入社したスマイル社員は、入社から約2か月間を「スマイル研修職」の位置づけとし、その間の評価により2か月後に初級職か中級職として再契約することになる。

 OJTコミュニケーションシートを活用したフィードバックと育成支援 スマイル社員に対する職務能力評価結果のフィードバックには、OJTコミュニケーションシートが活用される。同シートには、各人の評価結果が今回分、過去分とも表示され、店長等とスマイル社員との面談に利用されている。また、シートにはスマイル社員が掲げた自己目標についての項目もあり、その達成度合いや問題点を双方で整理・確認しつつ、今後の目標達成プランを練っていく。OJTコミュニケーションシートを活用することで、評価に対するスマイル社員の納得性を向上するとともに、強み・弱みをお互い確認し実践的な育成支援プランを策定することができている。また、スマイル社員は昇給・昇格するための必要な取組を具体的に知ることができる。なお、従来は半期に3回あった面談は、フィードバック面談に集約され、スマイル社員や考課者の負担が軽減された。

 有期実習型訓練によるフォローで正社員転換制度を推進 スマイル社員の正社員転換は従来からあったが、転換時のフォロー不足によりスムーズな転換が行われにくいことが問題とされてきた。その解決を図るため、2010 年よりジョブカードを利用した「有期実習型訓練」を採用し、正社員転換制度を改定・運用している。具体的には、毎年 10 月に転換選考、翌4月に転換するスケジュールに合わせ、内定期間6か月間(10 月~3月)と転換後2か月間(4月~5月)の計8か月間に 441 時間の実習型訓練を行う。実習型訓練のうち、8割程度を店舗でのOJTとして、2割程度をOff-JT へ割り振っている。なお、①勤続2年以上、②レベルⅠの評価得点が転換点数に達している、③店長推薦がある、が転換候補者となる要件である。その後、面接・転換試験を経て、評価得点上位者より転換計画に沿った人数を転換している。正社員への転換者は、意欲や能力が高く、その後に活躍してる者も多い。

107

Page 109: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 各種研修や試験制度を充実させ、e-ラーニングも活用した検定によりスキルやモラルを向上 各種の研修や社内試験制度は、スマイル社員にも同等に適用されている。「コミュニケーション研修」や「タイムマネジメント研修」等の自己啓発を目的とする自由参加の研修に加え、コンプライアンス、セクハラ、SNS(ブログやツイッター等のソーシャル・ネットワーク・サービス)の扱い等、働き方やモラルに関する必須の研修・試験等も実施している。前者の自己啓発を目的とする「オープン研修」は、毎月1~2本のテーマで開催している。社員は誰でも参加でき、実際に参加者の約半数はスマイル社員で占められている。研修は3時間程度のものから7時間程度のものまで様々で、外部講師によるものも社内講師によるものもある。後者の必須の研修・試験については、自社の事業特性に合わせて社内でコンテンツを作成し、eラーニングも活用している。スマイル社員も各店舗のパソコンで受講・受験し、満点を取るまで受験することが求められる。このため、全スマイル社員には入社と同時にIDが付与されており、受験状況や学習データは本部で一括してデータ管理されている。職務等級ごとに必須、推奨している研修や試験は体系化され、スキルアップを支援し、上位等級を目指す意欲を後押しするものとなっている。なお、自由参加型の自己啓発研修等は賃金支給対象とならないが、職場で受講を指示された研修・試験の時間に対しては、賃金が支給されている。

研修・試験の体系図

共通 スマイル研修

オープン研修 研修 資格・試験 スマイル研修

自己啓発 必須 推奨 昇格必須昇格必須

正社員登用

推奨 スマイル社員の位置づけ スマイル社員職務等級

マネジメント基礎研修

食品表示研修マネジャー候補者研修(選定)

マネジャー昇格社内試験

S検マネジャー3級

チーフ昇格社内試験

S検マネジャー3級チーフ候補者研修

上級職昇格研修(マネジメント基礎)

チーフOJT研修食品衛生責任者

食品表示検定中級

食品表示検定初級

S検エキスパート3級

上級職昇格試験

新規スマイル導入研修

S検エキスパート対策研修

レジフォローアップ研修

カスタマーサービス研修(選定)

レジスキルアップ研修

水産スキルアップ研修

メンタルヘルス研修

ビジョナリー・ウーマン研修

伝える力研修

タイムマネジメント研修

プレゼンテーション研修

コミュニケーション研修

公休扱い

誰でも参加できるオープン研修自己啓発、キャリアアップに(一部担当者には必須)

ハラスメント・アクティブリスニング研修

S検バイヤー対策研修(限定)

S検マネジャー2級対策研修(限定)

S検マネジャー3級対策研修(限定)

公募

スマイルチーフ ベスト

上級

中級

初級

リーダースマイル

エキスパートスマイル

パートナーSスマイル

メイト・スマイル

フレンドSスマイル

フレンドLスマイル

パートナーLスマイル

コメント対象者全員が受ける必須研修 資格取得、キャリアアップを目指す人を対象にした研修

必須資格の事前取得、推奨資格の取得は、職務能力j評価で加点対象とする場合がある(スマイルチーフは正社員と同様人事考課)

資格取得は希望者、社内試験は対象者のみ通知

受験費補助あり、受験日は出勤扱い

合格者には受験日半額支援あり、受験日は公休扱い

対象者へ通知、公募(対象者優先)

出勤扱い 出勤扱い

対象者へ通知

補助

参加方法

108

Page 110: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

4  成果と課題 �

職務能力評価制度の導入により、客観的な指標で各人の力量が数値化できるようになった。スマイル社員の評価に対する納得性が高まり、努力や成果が処遇に反映されることで、モチベーションの向上に寄与している。ただし、一部の評価項目については、まだ考課者によるバラツキが見られるため、その改善が今後の課題となっている。評価項目については、現場の意見を聴取しながら、見直し・充実を継続的に図っていくこととしている。また、スマイル社員に対しては、制度が十分に浸透し理解されるよう、周知活動を行っていくことが重要である。今も「パートなのに」、「正社員なのだから」といった声が、ときどき聞こえてくる場面がある。公正・公平な評価基準の下、スマイル社員も正社員も雇用形態は違っても、それぞれが担う役割をより良く果たすべく、さらに意識改革を進めていくことが必要であると考えている。

109

Page 111: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例9(株)蓬莱ステップアップ制度の実施によりキャリアアップを支援

本社所在地 大阪府 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 約 1,171 名男性 516 名

うちパートタイム労働者数 438 名男性 141 名

女性 655 名 女性 297 名

ポイント

• ステップアップ制度の実施によりキャリアアップを支援。• 技能・能力向上のための計画的な教育訓練を実施。• モチベーション向上のための公正な人事評価を実施。• 社内報の発行や社内サークルの実施による風通しの良い組織風土の醸成。

1  企業概要・人員構造�

創業 69 年を迎える同社は、創業当時男性5名・女性 10 名でスタートした。知名度の高い主力商品を持つフードサービス会社として、食品の製造・販売、及びチャイニーズレストランの経営を行っている。ターミナル駅や空港、商業施設などを中心に約 60 店舗を展開している。主力商品の具材や生地などは工場で製造され、一日数回各店舗へ送られる。店舗では、最終製造工程(成形や加熱等)が行われる。社員の平均年齢は 30 代前半と若く、エネルギッシュな人材が活躍している。若者応援企業宣言企業 1 でもある。正社員のほかに、アルバイトとパート社員の雇用区分があり、パートタイム労働者に当たるのはアルバイトである。パート社員は準社員としての位置づけであり、フルタイム勤務である。店舗人員の構成は、店舗の規模等により異なるが、標準的な店舗は、店舗責任者である店長の他、正社員10 名程とパート社員及びアルバイトとなっている。アルバイトは、シフト制勤務であり、本人の希望をもとに店舗責任者(正社員・店長)が決定している。採用時の雇用契約は、6か月契約で、週 20 時間以内の条件で雇用している。その後の契約更新時に、本人の希望を考慮し、個別に労働条件を決定している。フルタイムで勤務することも可能であり、社会保険が適用されるアルバイトもいる。社会保険の適用が初めてとなるアルバイトもいるため、保険料の負担や保障の内容等も丁寧に説明し、認識の違いが生じないように努めている。また、諸手当に奨励金がある。奨励金は、店舗ごとの目標売上高の達成度に応じて、毎月優秀店舗の社員に支給される。アルバイトにも月ごとの出勤日数に応じて支給されており、表彰式で表彰状と奨励金が社長から授与される。この施策は、店舗の一体感の醸成と社員のモチベーション向上に寄与している。精勤手当は、月の勤務日数が一定以上の者に支給されている。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○

1 一定の労務管理の体制が整備されており、若者(35 歳未満)を採用・育成のためハローワークに求人を提出し、通常の求人情報よりも詳細な企業情報・採用情報を公表する中小・中堅企業を「若者応援企業」として、積極的にマッチングや PR等を行う事業のこと。若者応援企業は都道府県のホームページに公表される。

110

Page 112: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

2  取組の背景�

地域で根強い人気のある同社は、純粋に“同社の商品が好き”という人も多く、「従業員は家族である」という会社理念のもとに、人と人とのつながりを大切にしている。従来から、主力商品の製造は、熟練を要する仕事であったため、正社員比率が高い人員構成であったが、入社を希望する者の勤務時間や勤務地など、障壁となっている事情に対して、柔軟に対応してきた。また、時間帯による繁閑のある店舗運営には、アルバイトの存在は欠かせないこともあり、研修の充実やモチベーション向上のための取組を継続的に行ってきた。記名を条件に、誰でも社長に相談メールを送ることができる。相談に対して真摯に対応し、守秘義務が守られることが徹底されていることで、信頼関係が築かれ、風通しの良い組織風土の醸成につながっている。

3  取組の内容�

 ステップアップ制度の実施により、キャリアアップを支援 アルバイトからパート社員、パート社員から正社員にそれぞれステップアップする仕組みが用意されている。アルバイトには、上司の推薦があること等、パート社員の正社員登用制度に準じたステップアップ制度がある。以前は、ステップアップ制度応募の要件には、一定の勤続年数が必要であったが、現在は撤廃され、本人の意欲と能力に応じて、応募が可能となっている。応募時には、パート社員となる意欲や仕事に対する抱負等をまとめた「パート社員昇格用レポート」を人事課に提出する。直近では、5名前後がパート社員に転換している。また、パート社員の正社員登用制度は、年1回実施される。周知は、本人の採用時と正社員の年2回ある採用 2 のうち、秋期採用の募集時期に合わせて告知している。毎年、正社員転換をする社員を一定数輩出しており、直近の実績では、15 名前後の応募に対して、9名が正社員へ転換している。正社員登用制度への応募は、①上司(店長)の推薦があること、②エリアマエージャーの推薦があること、が条件として応募資格が与えられる。選考はまず、人事課との面談が行われ、正社員に転換するための心構えの確認と2次、3次試験を突破するためのアドバイスを行っている。並行して、「正社員昇格用レポート」3 を人事課に提出し、役員面接を経て、合否が決定される。

 技能・能力向上のための計画的な教育訓練の実施 アルバイトには、正社員に準じた技能向上や安全教育等の教育訓練が実施されている。アルバイトの教育訓練も、入社時研修、その後の定期研修等、個人のスキルや店舗間での品質や安全衛生への取組に差が生じないように、本社が主導して計画的に行っている。スピードと高い技術が求められる主力商品の最終製造工程は店舗で行い、商品を提供しているが、作業の様子はガラス越しに顧客から見える設計になっている。日々顧客に見られることで緊

2 正社員の春期新卒採用と秋期中途採用のこと。3 正社員になるための意気込みやより良い店舗づくりのための抱負等を記入する。

111

Page 113: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

張感と使命感が生まれ、安全・安心・信頼につながっている。また、接客スキルや技術の高さを競い合う社内キャンペーンを定期的に実施している。アルバイトには、接客スキルの優秀な者が多数おり、優秀者には表彰状と記念品が贈られ、モチベーションアップにつながっている。

 モチベーション向上のための公正な人事評価制度の実施 アルバイトの評価は、契約更新の際に「アルバイト社員用評価シート」により、店舗責任者が実施している。評価項目は、40 項目 4 に及ぶ。共通の評価項目(7項目)は、勤務態度や安全衛生を重視している。例えば、「食品衛生の三原則を正しく理解し、職場で確実に実践できているか」という評価項目では、異物混入を防ぐためのルール順守や積極的行動が求められているかに着眼し、最高評価の「秀」から最低評価の「不可」の5段階で評価される。評価シートの結果は、評価者より本人にフィードバックし、改善点について話し合う機会を設け、能力向上につなげている。また、評価の結果をもとに、本人の時給に反映させている。

 社内報の発行や社内サークル活動により風通しのよい組織風土の醸成 月1回、社内報を発行し、会社の方針やステップアップ制度の仕組み、社内キャンペーンの周知、社内行事の様子などを全社員に伝えている。社内報は各店舗に送られ、休憩時や勤務前後の社員同士のコミュニケーションにも活用されている。「仕事の他にも楽しみを持とう」という方針から、社内サークル活動への参加を奨励している。各サークルとも、正社員やパート社員、アルバイトの垣根を超えて、職場の仲間同士がつながりを深めている。

4  成果と課題�

「できたてあつあつの商品を提供する」というモットーは、工場、店舗、社員区分に関係なく、全社員で共有されている。アルバイトからパート社員へ、パート社員から正社員へと、ステップアップを支援する取組は、意欲と能力のある社員のやる気を引き出し、定着率を高め、会社の活性化につながっている。さらに、努力が評価される人事制度は、社員のモチベーションアップにつながり、会社にとっては安全で安心した商品を提供することにつながっている。課題としては、評価制度の精度を高めることである。評価は店長が行っているが、正社員である店長は異動があり、評価者が変わると、評価結果が変わってしまう難しさを感じている。今後は、評価者研修に重点的に取り組んでいく必要性があると認識している。

4 担当していない業務、まだ習得していない業務の評価は行わない。

112

Page 114: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

事例 10(株)ヤオコー権限移譲とやる気や主体性を引き出す仕組みで戦力化を図る

本社所在地 埼玉県 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 17,467 名男性 4,369 名

うちパートタイム労働者数 14,915 名男性 2,361 名

女性 13,098 名 女性 12,554 名

ポイント

• パートタイム労働者主体の業務改善事例発表会の実施、店舗での権限移譲。• 目標管理による評価の実施で、スキルアップと評価の納得性向上。• 社員に準じた賞与の支給、福利厚生の適用。• パートタイム労働者向け社内報の発行による情報の共有化。

1  企業概要・人員構造�

同社は、埼玉県を地盤とするスーパーマーケットで、首都圏に 131 店舗を展開している。「生活者の日常の消費生活をより豊かにすることによって、地域文化の向上・発展に寄与する」を経営理念に掲げ、地域の特性に合わせた売り場づくりを目指す「個店経営」を推進している。標準的な店舗の人員構成は、店長(1)、次長(1)、主任(11 部門に各1)、リーダー、サブリーダー、担当という構成になっており、主任以上は基本的に正社員の職務であるが、パートタイム労働者のうち週 20 時間以上勤務するパートナー社員の中からも 90 名程度が主任に任命されている。正社員は、店長、次長、主任として、主に管理的業務(数値管理、採用、勤怠管理)を担い、売場作りや接客等の現場業務も行う。パートナー社員と、週 20 時間未満勤務するヘルパー社員は主に「担当職」として品出し、接客、レジなどの現場業務を行うが、発注や値引きの決定なども行っている。主任に任命されたパートナー社員は、現場業務に加え、売場作りやシフト作成、ミーティングの開催等を担い、サブリーダーは主任の補佐として位置づけられている。パートタイム労働者は所定労働時間によって3つに区分され、週 20 時間以上のパートナー社員が 10,000 名超と一番人数が多くなっている。

従業員数と雇用区分雇用区分 人数 定義 賞与 退職金 持株会 共済会

正社員 2,408 名 フルタイム(1 日 7.75 時間) ○ ○ ○ ○

契約社員 144 名フルタイム定年後再雇用又はスペシャリストの中途採用が該当

○ × ○ ○

パートナー社員 10,471 名週 20 時間以上、1 日 4 時間以上、6 か月契約

○ × ○ ○

ヘルパー社員 637 名週 20 時間未満、1 日 4 時間未満、6 か月契約

○ × ○ ○

アルバイト社員 3,807 名6 か月以内契約学生アルバイト

× × × ×

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

113

Page 115: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

2  取組の背景�

地域の特性に合わせた商品選びや売場づくりを行う個店経営を推進するためには、パートタイム労働者を含めたメンバー全員が主体となって店づくりを行っていくことが、不可欠となっている。パートタイム労働者は地域情報に詳しく、消費者でもあり、お客様の立場もよく理解している。その人材を活かすことが地域のお客様のための店づくりに繋がることから、パート社員のモチベーションアップ、スキルアップのため、様々な取組を行っている。

3  取組の内容�

 スキルアップを目指した技術認定制度 販売している惣菜のほとんどは店内で調理されており、惣菜の調理を担当しているのが、技術認定の資格を持つパートナー社員である。技術のスキルアップを目指し、惣菜、寿司、ベーカリーの部門ごとにそれぞれ4つのカテゴリーについて試験が行われ、大きさや重さなどの基準を満たす商品を作ることができるか判定を行っている。1 試験は概ね月1回実施され、毎回 10 名前後の希望者が受験している。試験に合格すると名札の下にシールが貼られ、4つのカテゴリー全てに合格するとエキスパートとして認定される。また、取得した技術認定の数に応じた「技術認定手当」が時給に加算される。

 業務改善への取組を評価する事例発表会の実施 全店の中から 10店舗前後が参加し、業務改善活動の成果を発表する「感動と笑顔の祭典」を毎月開催し、これまでに約 90回実施している。発案から発表までをパートナー社員が主体的に取り組み、改善活動の成果を、幹部や店長、パートナーなど 300 人以上の参加者の前で発表している。発表者全員に「チーム賞」、「メンバー賞」などを与え、最も優れた発表者を「ベストメンバー賞」に選んでいる。2013 年7月の祭典では、「地域一番のお魚屋さん!」をテーマに、加工作業のスピードアップにより、お客さまがいつ来ても買いたい商品が揃っている売場をつくるなどの取組をした店舗の発表者が「ベストメンバー賞」に選出された。年間のベストメンバーの中から、その後の成果も見ながら半期ごとに5名程度を選び、アメリカのスーパー視察旅行に招待している。発表会には、経営陣や店長などの幹部層が必ず参加し、パートナー社員との交流の場としても機能している。祭典の内容や結果はDVD化して全店に配布し、併せて社内掲示板での掲示や、パートナー社員向けの社内報でも周知している。

 パートナー社員が運営するクッキングサポートの設置 全店舗に調理のデモンストレーションを行う「クッキングサポート」コーナーが設置され、専任で採用されたパートナー社員が運営を担当している。使用する食材からメニューまで、パートナー社員に任されている。例えば、小中学校の給食献立表を掲示して夕飯とかぶらないよう促したり、昼の番組で紹介された商品をすぐ置くなど、パートナー社員が発案して工夫をこらし、お客様の献立作りのサポートを行っている。

1 4つのカテゴリー:(例)惣菜部門「おはぎ」、「とんかつ」、「えび天」、「かつ重」

114

Page 116: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

 人事評価に基づく昇給、昇格を実施 パートナー社員の基本給は基本時給と地域時給で構成されている。基本時給は担当職、管理職の2区分に分かれ、担当職は更に初級、中級、上級の3小区分、管理職はリーダー、主任の2小区分に分かれ、小区分ごとに1~ 15、若しくは1~ 20 号俸となっている。初任時は初級5号俸に格付けされ、年2回の人事評価で号俸が上下する。人事評価は、企業理念、コミュニケーション、フレンドリーサービス(接客応対)等のカテゴリーを細分化した項目ごとに1~5点で採点を行い、1年間の累計点でS、A、B、C、Dを判定し、号俸の上下を行う。初級の 10 ~ 15 号俸に達し、店長の推薦があると中級の5号俸に昇格する。中級から上級への昇格も同様である。担当職から管理職への任命は、店長及び地区担当部長の推薦を経て発令されている。

 目標管理による評価の実施 人事評価は、育成計画表 2 と個人カルテ 3 を使用して、半期ごとに自分の目標を決め、日々実践して進捗や結果を主任と確認し、また新たな目標を決めるというサイクルで年2回実施している。前期を振り返り、今期何をできるようにするのか、主任と互いに確認して目標とする項目を決定する。次に、目標とした作業をOJTで指導を受けながら実践し、半年後にどのレベルまで達したのか、主任と確認しながら評価を付けていく。自ら掲げた目標の達成度を評価することで、スキルのレベルアップを図ると同時に、評価の納得性や透明性を高めている。

 社員に準じた賞与の支給 社員とできるだけ平等にという考えから、支給基準は正社員と異なってはいるが、パートナー社員、ヘルパー社員にも賞与を支給している。年2回の定期支給に加え、業績に応じて決算賞与が支給される。春と夏の賞与は、等級(初級~主任)ごとのポイントに、ポイント単価、評価対象期間の累計労働時間、評価係数をかけた額が支給される。評価は基本時給の昇給の判定と同じ評価結果を用いており、昇給判定時の評価はS~Dの5段階だが、賞与の判定はS、A、AB、B、BC、C、Dの7段階評価となる。賞与を支給して努力と成果に報いることで、やる気を引き出し、経営への参画意識を高めている。

 パートナー社員から正社員へのステップアップの仕組み 入社時は初級からスタートし、中級、上級へ昇格をしていく。店長及び地区担当部長の推薦が承認されると、担当職(初級、中級、上級)から管理職のリーダー、主任に格付けされる。また、本人の希望により、月給制の正社員・契約社員への転換試験に応募できる。パートナー社員から正社員への転換は、年2回、書類選考→上長推薦→筆記試験→面接→健康診断→審査という流れで行われる。2013 年上期には 11 名が正社員に転換した。

2 育成計画表:各部門の作業項目別に習熟度を確認し、目標を明確にするための自己啓発や教育のためのツール3 個人カルテ:育成計画表と連動し、半期ごとに日常業務や作業の習熟度などを反映する評価シート

115

Page 117: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

ステップアップの仕組み

 パートナー社員によるパートナー社員のための社内報の発行 企画から取材、編集までパートナー社員が全てを担当するパートナー社員向けの社内報

「Partner」を毎月発行し、全員に配布している。20 ページ前後の紙面は全面カラー刷りで、パートナー社員の顔写真も豊富に掲載されている。掲載内容は、「感動と笑顔の祭典」の報告を中心に、他店舗や新店舗の紹介、「計数のページ」(2013.10 月号では「荒利益ってなに?」)や「商いのこころ」(ヤオコーのこころを持ったメンバーとして行動するための事例紹介)等の連載企画、下期経営方針についての社長メッセージ等、パートナー社員のモチベーションを高める取組のほか、経営に関する知識の共有、人事制度等に関する情報提供など多岐に渡る。業務改善事例の共有及び情報発信のツールとして活用されている。

 正社員に準じた福利厚生制度 パートナー社員、ヘルパー社員は共済会の会員となっており、福利厚生施設の利用や貸付金制度、慶弔金の支給対象となっている。慶弔金については、共済会とは別に会社からも支給され、金額は正社員と同額になっている。年次有給休暇は、正社員と同じく法定を上回る日数が付与されており、さらに、時効消滅した直近の年次有給休暇を1日単位で病気やけが、介護その他の目的で取得することができる「特別療養休暇」も用意されている。

 「入社のしおり」を用いた入社時研修での労働条件の周知徹底 毎月各店舗を回り、新規採用のパートナー社員、ヘルパー社員に対して入社時研修を行っている。研修では、同社で働く上で必要なことがまとめられた「入社のしおり」を配布し、経営理念の徹底、働く上でのルール、衛生管理、接客等の業務における注意を促すだけでなく、勤怠管理、職務等級制度、給与体系、慶弔関係、保険・税金関係に関する説明を行い、労働条件の理解を促している。

① パートナー社員は担当社員として習熟を重ね、昇給・昇格します。 ②パートナー社員は本人の希望により、正社員・契約社員への転換試験に応募できます。 契

116

Page 118: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

4  成果と課題�

業務改善活動の成果を発表する場である「感動と笑顔の祭典」は、日々の創意工夫と発表への取組への努力を評価することが、パートナー社員のモチベーションアップにつながっている。また、毎月継続して実施することで、業務改善の意識が現場に定着し、仕事の質を高める効果も上げている。現状の課題として、入社3年までの離職率を改善したいと考えている。定着率向上のためには、現場のマネジメントが重要であると認識し、店長、次長、とりわけパートナー社員と接することの多い主任に対し、メンバーの人材育成に向けた教育を行うことに力を入れている。また、働き方のニーズが多様化する中、より細かな勤務時間の希望に対応できるようなシフトの仕組みづくりなども、定着率の伸張には有効ではないかと試行錯誤しているところである。パートナー社員に責任と権限を与え、スキルアップに繋がる教育の機会を設けながら主体的に働いてもらうことで、働く喜びを感じとってもらいたいと考えている。パートナー社員に本気で期待していることを伝えることで、パートナー社員の戦力化が進んでいく。パートナー社員の自主性を活かしていくという取組が、結果的に会社の競争力を高め、好業績を生み出していると考えている。

117

Page 119: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例 11(株)八木橋人事評価・昇給制度の整備、老舗の伝統と理念を伝える丁寧な入社時教育

本社所在地 埼玉県 事業内容 各種商品小売業

従業員数 約 370 名男性 約 100 名

うちパートタイム労働者数 約 160 名男性 約 20 名

女性 約 270 名 女性 約 140 名

ポイント• 人事評価制度の整備。• 人事評価制度に連動した昇給制度の整備。• 一人ずつ行う丁寧な入社時教育。

1  企業概要・人員構造�

同社は、明治 30 年に前身である呉服店を創業し、昨年創業 115 周年を迎えた老舗の百貨店である。店内はモダンな雰囲気と最先端のファッションが共存し、従業員の挨拶と笑顔が徹底されており、多くの来店客でにぎわっている。店内には旧中山道が通り、全国でも珍しい光景に街歩きファンの間でも注目を集めている。また、同社は、ファミリー・フレンドリー企業としても知られており、平成 13 年度に埼玉労働局長賞を受賞。平成 15 年には埼玉県知事から女性の両立支援、活用が評価され女性が働きやすい事業所として評価され受賞するなど、柔軟な働き方が選択できる取組を行っている。人員構成は、正社員、契約社員、メイト、シニア、パート社員A、パート社員Bである。正社員は、職務を限定せずに、キャリアを形成していくこととされている。店舗では、主に管理的業務(現場教育、数値管理、発注、勤務シフトの編成等)を担う。一方、パート社員は、品出し、レジ業務等を行う。

従業員数と雇用区分 1

雇用区分 人数 特徴

正社員177 名

男 75 名女 102 名

職務不限定。組合員。

メイト29 名

女 29 名化粧品販売員等で構成。専門的知識が必要。フルタイム勤務。1 年契約。組合員。

シニア7 名

男  6 名女  1 名

60 歳定年後の再雇用継続者。1 年契約。

パート社員 A116 名

男 20 名女 96 名

半年契約。時給制、賃金改訂あり、勤務年数に応じて賞与あり。社会保険加入。共済加入。週所定労働時間 30 時間以上。組合員(任意)。

パート社員 B41 名

男  4 名女 37 名

半年契約。時給制、賃金改訂あり、賞与なし。週所定労働時間 30 時間未満。組合員(任意)。扶養の範囲内で働く主婦層が中心。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○

1 雇用区分は主要なものだけをとりあげている。

118

Page 120: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

2  取組の背景�

かつては、パート社員は年1回一律の金額で昇給するだけであり、不公平感を指摘する声があった。正社員について、まず係長以上、次に一般の人事評価制度の見直しを行った延長として、平成25 年9月より、パートの人事評価制度及びそれに基づく昇給制度を導入した。導入に当たっては、労使の委員会で話し合いが行われた。また、販売第一線のパート社員はお客様からみて会社の顔であり、とくに地域の老舗企業としては、それにふさわしい行動が求められるため、採用後すみやかに、必要な教育を行うことが重視されてきた。

3  取組の内容�

 パート社員用の人事考課制度と考課に基づく昇給制度の整備 パート社員用の人事考課表として事務職用と販売職用の2種類を新たに整備した。それぞれに4分野・20 項目が設定され、項目ごとに点数をつけていき、全項目の合計点で最終評価を決める。一次考課は現場の係長、二次考課は現場の課長が行い、両者で協議決定する。これをもとに、契約更新時には管理本部が一人ずつ面接を行い、フィードバックする。考課表には、現場の課長の立場からフィードバック時に本人に伝えてほしいことを記入する欄も用意されており、単なる点数の通知にとどまらない指導や動機づけに活用されている。

考課分類と項目事務職 販売職

「意欲」、「接客・事務処理」、「知識の活用」、「報告」、「マナー・その他」の 5 分類 20 項目

「意欲」、「接客・事務処理」、「知識の活用」、「報告」、「マナー・その他」の 5 分類 20 項目

考課項目の例事務職「接客・事務処理」 販売職「接客・事務処理」

お客様・社員・訪問客・電話に対して丁寧で、感じよい応対・説明・案内をしている。

常にお客様の動きに目を向け、呼ばれる前に声をかけ、積極的にアプローチしている。

最終評価の付け方A 100 ~ 86 点 模範的な存在であり、同僚や後輩へ適切な指示・指導ができる。a 85 ~ 71 点 各評価項目への意識が高く、大変印象が良い。B 70 ~ 61 点 指示がなくとも自ら仕事に取り組んでおり、標準的である。b 60 ~ 41 点 多少の指導が必要であり、やや努力が欲しい。C 20 ~ 40 点 指導による改善は難しく、次回契約の更新はしない。

考課の結果は、合計点から導き出された5段階評価を賃金テーブルに当てはめ、毎年4月の賃金改訂(降給もあり)に反映される。従来は賃金表もなく、20円刻みでほぼ全員が横並びに、採用時時給プラス 100円の範囲で昇給していた。今般の改正により、時給の幅を 200円に拡大し5円刻みにした賃金表を新たに定め、考課結果と現時給の位置に応じて号数が変わる仕組みを整備した。

119

Page 121: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

賃金表は3つのゾーンに区分され、ゾーンが上がるにつれ求められる能力が高くなるため、同じ能力のまま仕事をしていると昇給が鈍化する。反対に、求められる能力より低い評価となれば、降給の可能性もある。なお、こうした昇給の考え方は、正社員と同じである。

 個別の入社時教育 パート社員の採用は必要のつどであるため、同時期にはほとんど一人しか入社しない。その一人のために、専門のトレーナーが半日かけてオリエンテーションを行っている。非効率のようであるが、「当社を愛してくれるお客様よりも早く当社のことを知ってもらい、同じ心を持ってお客様に接して欲しいから」(同社担当者)との考えに基づくものである。なお、このオリエンテーションは、同社の歴史と引き継がれている経営理念を学びに来る外部の市役所の新人、中堅職員の研修の受け入れの際にも、同様に行われている。そこには、「地域奉仕」の経営理念も色濃く反映されている。オリエンテーションでは、会社の歴史と経営理念についてのレジュメと、会社が紹介されているいくつかの新聞記事を配布している。記事には明治時代のお店の写真や創業者から伝わる想いが記載されており、長く地域から愛されているお店であることがよく分かる。 

 その他 パート社員Aには、勤務年数に応じ3~7万円程度の賞与を支給している。これには査定はなく、決められた額がそのまま支給されている。福利厚生面では、とくにパート社員就業規則に定められていないものについては、正社員に準じた取り扱いをすることが慣行となっている。例えば、最近に発生した竜巻被害の折には、パート社員に対しても正社員とまったく同等の見舞金を支払った。定期健康診断も、法定義務のない(勤務時間の短い)パート社員Bにも受けさせている。勤務年数に関係なく、現場の上司の推薦があれば正社員に転換できる制度もある。この制度の存在及び内容は社内に周知されており、最近では年に数名程度が転換している。

4  成果と課題�

パート社員の人事評価制度及びそれに基づく昇給制度はスタートしたばかりだが、社内に発表した際にはおおむね好評であった。今後は、この制度を定着させ、能力を評価されたパート社員のモチベーションが上がり、さらに貢献してくれることを期待している。一方で、現代社会において、働き方が多様化し、従業員の愛社精神やモチベーションが希薄化しているなか、「創業の精神をきちっと守りながら、時代に対応して進化していく」(同社担当者)ためには教育や福利厚生面は重要と考えており、今後も従来のやり方を維持していく考えである。…

120

Page 122: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

入社時オリエンテーションで使われている同社紹介記事

121

Page 123: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例 12A社職務等級・職務給による均等待遇の実現、労働組合と連携した実効性のあるワークライフバランス推進

本社所在地 広島県 事業内容 各種商品小売業

従業員数 約 15,400 名男性 約 3,700 名

うちパートタイム労働者数 約 13,000 名男性 約 2,300 名

女性 約 11,700 名 女性 約 10,700 名

ポイント

• 正社員水準の役職と等級を目指せる職務等級・職務給制度。• 労働組合と連携したワーク・ライフ・バランス推進。• 提案制度と事例発表の場を通じ意欲向上とやりがいを生み出す。• スキルアップを支援する社内研修制度とインセンティブ給の支給。

1  企業概要・人員構造�

同社は、大型総合ショッピングセンター及び小型食品スーパーを主力業態として、衣料品、食料品、住宅関連品等を取り扱い、中国地方、四国地方及び九州地方に約 100 店舗を有する。パートタイム労働者の大半は地域の主婦や学生で、多くは店舗の売場に配置されている。このうち、勤務時間が4~5時間程度の者を「アルバイト」、6時間~正社員の所定労働時間未満の者を「パートナー社員」と位置付けている。両者の比率はおおよそ半々である。アルバイトは、商品補充や陳列等の比較的単純な業務を、上位職からの指示・指導により行うのに対し、パートナー社員は業務上、一定の役割を担っている。通常は、まずアルバイトとして採用され、その後希望者がパートナー社員へと移行するが、職務経験等を考慮し最初からパートナー社員(初級)として採用されることもある。平均的な店舗の形態は、店長以下、衣料品・食料品・住宅関連の各部門に次長が配置され、それぞれの部門配下にある売場ごとに主任が配置されている。店長、次長は正社員で構成されるが、主任には正社員の主任職とパートナー社員の主任職(パートナー主任)が混在して配置されている。

店舗形態

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○ ○ ○

店長

衣料品次長 食料品次長 住宅関連次長

主任

A

B

C

D

E

F

主任 主任 主任 主任 主任

・・・ ・・・ ・・・

122

Page 124: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

2  取組の背景�

全社員の8割以上がアルバイト、パートナー社員で占められており、その能力開発と積極活用は企業にとって非常に重要である。加えて、パートナー社員には、結婚等で一旦仕事から離れ、家庭での主婦業や子育てに専念していた女性も多く、そうした経験が重要な財産であることから、有効な経営資源とする取組が必要であった。また、優秀な人材の採用や定着を図る上で、「やりがい」を持って働いてもらうため、モチベーション向上の工夫も必要とされていた。

3  取組の内容�

 正社員水準の待遇と役職を目指せる職務給と等級制度 2002 年、パートナー社員について、従来の年功制の強い人事制度から職務給制度を導入した。これは、勤続年数に関係なく、担当業務に応じて等級が決まり、等級に応じて契約時間給が決定する仕組みである。具体的には、パートナー社員を初級、中級、上級、主任の4等級に区分し、上級では販売計画立案ができること、主任では人的マネジメントができること等、等級に応じた職務基準を設定するとともに、等級ごとに契約時間給レンジを定めた。これにより職務の大きさに応じた賃金支給が可能となった。

パートナー社員の職務等級等級 職務等級基準(代表例) 割合主任 人的マネジメントができること 約 1 割弱上級 販売計画が立案できること 約 2 割強中級 まとまり仕事ができ助言・指導ができること 約 3 割強初級 ミスなく笑顔で業務が遂行できること 約 2 割強

パートナー社員は、各等級に求められる職務スキルを上司によりチェックされ、要件を満たしたと認められれば上位等級に昇格する。ただし、主任については、①社内資格である販売員(上級)の研修を受講し試験に合格すること、②同じく社内資格である主任者研修を受講し試験に合格すること、③店長推薦があることを要件として、実際に主任職に配置されることで昇格となる。販売員(上級)や主任者の研修・試験には、受講・受験に等級等の条件を設けておらず、販売員(上級)は試験に合格すれば手当支給対象とすることで、昇格意欲を後押ししている。パートナー主任には、正社員水準の賃金・賞与が支給され、売場主任の職を任せられる。正社員との違いは、労働時間が短いことと転勤がないことである。意欲・能力のあるパートナー社員は、正社員と同じ研修を受け、正社員並みのマネジメントスキルを身に付け、正社員と同様に売場主任に就くことができる。実際に、現在 220 名の「パートナー主任」が活躍している。

 労働組合と連携したワーク・ライフ・バランス推進 同社では、子が3歳に達する月の末日まで取得できる育児休業制度、子が小学校3学年度末まで取得できる育児短時間勤務制度、1年間取得できる介護休業制度、介護短時間勤務制度等、法

123

Page 125: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

を上回る両立支援策を制度化している。両立支援制度の実効性を上げるため、労働組合がその普及・促進を担当している。労働組合は、積極的な制度周知活動のほか、育児休業者に情報誌の送付や、育児休業者・育児短時間勤務利用者向けにフォーラムの開催等を行う。フォーラムでは会社の人事部担当者が相談対応する等の連携により、労使で積極的な両立支援を展開している。このように、制度を会社が策定し、労働組合がその実効性を上げていくという連携により、特に育児休業取得実績においては、その約半数がパートナー社員で占められている。これらの取組により、ファミリーフレンドリー企業表彰も受賞している。2007 年には、パートナー社員の半数近い約 2,600 人が労働組合に加入し、会社側は職場環境改善による定着率向上を目指し、労働組合側は待遇改善の強化を図れる体制となった。

 提案制度と事例発表の場を通じ意欲向上とやりがいを生み出す 「職場をよりよくしたい」という意欲的な社員の声を取り上げるため、提案制度が実施されている。毎月、改善提案を募り、上長の一次審査の後、提案委員会にかけられ、優秀な提案は金賞・銀賞等入賞対象とし、入賞した提案者には金一封が贈られる。パートナー社員からは、レジ袋のサイズを今よりも使いやすいものに改善する等、お客様目線に立った提案が多くなされてきた。有用な提案は、全店舗で実施されることになるため、意欲向上につながっている。また、品揃えの工夫、レシピ提案等、職場の仲間と取り組んだ事例発表の場が設けられている。各店舗から代表グループが選出され、ブロックごとの予選を通過したグループの中から優勝グループが決定される。発表者にとっては、仲間との一体感や、仕事をする上のやりがいを実感する機会となっている。

 スキルアップを支援する社内研修制度とインセンティブ給の支給 自己啓発や向上心を後押しするため、無料で、プレゼンテーションやビジネスマナー、エクセル操作等の社内講座を受講することができる。その他、衣料品部門においては、販売員の技能向上を図るため、「ベビーアドバイザー」等、販売商品ごと・カテゴリーごとの専門知識を持つ者を認定する「アドバイザー制度」がある。該当する社内研修を受講し社内試験に合格すると、当該商品のアドバイザーとなり、手当が支給される。同様に、生鮮部門(鮮魚・精肉・惣菜)においては、社内研修を受講し社内試験にパスすると、調理・加工の技能レベルに応じて初級から上級までの「技能ライセンス」が発行され、ライセンス手当が支給される。ライセンスに応じたインセンティブ給も用意されている。

 社内コンテストを開催し、社員の成長機会を創出 成長の場として、各種の社内コンテストも開催している。食品レジの速さや正確性等を競う

「チェッカーコンテスト」、鮮魚・精肉・惣菜部門の盛り付けや出来栄え等の商品化技術を競う「生鮮技能コンテスト」等が、定期的に開催されている。これらの入賞者には、商品券が支給される。

124

Page 126: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

4  成果と課題�

職務等級・職務給の制度は導入より 10 年が経過し、制度導入時に設けていた部門間の時間給差が、最低賃金上昇に対応する中でほとんどなくなる等、制度に疲弊も見えている。また、賞与については、パートナー主任は正社員に準じた支給であるのに対し、初級・中級・上級は一律の支給率となっている。上位等級を目指したスキル向上・職責拡大を図ることを後押しするため、上位級に昇格すれば賞与の支給率も大きくなる仕組みも検討している。一方、店舗の大型化に伴い、売場規模が大きくなり主任の職務難易度が上がっているため、正社員が主任になる例が増え、部門によってはパートナー主任の登用機会が少なくなっている。このため、主任の一つ下の職責を開発し、パートナー社員をそこに配置する等の工夫により、職場間是正を図っていく必要があると考えている。さらに、優秀な人材の確保・定着のため、正社員登用のできる人材育成の仕組みづくりを模索している。現場レベルでどのような育成をすれば正社員登用できる人材開発が可能か、より実践的なOJTのあり方について、店舗責任者と協議を進めているところである。また、アルバイト社員のモチベーション向上のために、将来的には、アルバイト社員へも評価制度導入を検討しており、現在5店舗で先行的に評価制度を実施し、制度導入への布石づくりをしている。

125

Page 127: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例 13B社作業の習得度合と連動した処遇により、スキルアップとやる気の醸成を図る

本社所在地 東京都 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 約 9,300 名男性 約 2,900 名

うちパートタイム労働者数 約 7,200 名男性 約 1,100 名

女性 約 6,400 名 女性 約 6,100 名

ポイント• 習得すべき作業項目を明確にし、作業の習得度を資格や処遇に反映。• スキルレベルと仕事の成果と連動したわかりやすい処遇の仕組み。• 手厚い手当や賞与、退職金の支給によりモチベーションアップ。

1  企業概要・人員構造�

同社は、明治の創業以来、首都圏に 130 を超える店舗を展開するスーパーマーケットチェーンとして成長してきた。「お客様第一」という創業精神の下、お客様に喜ばれる会社になるためには「働く人は会社の財産」と考え、人材育成に力を注いでいる。標準的な店舗の人員は、店長、副店長、チーフ(各部門に1名)のマネジメント層とメンバーで構成されている。チーフ以上は基本的に正社員の職務であるが、レジ部門のチーフについては、パートタイム労働者の中から任命されている者もいる。パートタイム労働者は、パートナー社員とアルバイトに大きく分かれ、アルバイトは大学生、高校生等の学生である。パートナー社員は、労働時間や契約期間によって、さらに2つに区分されている。

パートタイム労働者の雇用区分雇用区分 人数 呼称 定義

パートナー社員約 800 名 フレッシュパートナー1

1 日 8 時間以下、週 30 ~ 35 時間勤務、12 か月以内契約、社保加入

約 4,200 名 フレッシュパートナー2週 3 日以上、週 30 時間未満勤務、6 か月以内契約、社保未加入

アルバイト約 1,000 名 ナイスパートナー 大学生、専門学校生

約 300 名 ユースパートナー 高校生(注)この他のパートタイム労働者として定年再雇用者等がいる。

2  取組の背景�

かつてのパートタイム労働者の賃金制度は、勤続に応じて昇給する年功序列型のものであった。このため、パートタイム労働者のモチベーションを高め、より戦力化していくことを狙いとして、仕事と連動した賃金制度への転換を図ってきた。また、特にパートナー社員は組合員であることから、労働組合との協議を踏まえ、正社員との均衡を意識した取組を進めている。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○

126

Page 128: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

3  取組の内容�

 作業の習得度に基づく階層区分 職種別に求められている役割について基準値を定め、習得した役割に応じて階層区分を決定している。「キャリアパートナー」、「リーダーパートナー」、「フレッシュパートナー」の3区分があり、それぞれの定義は以下のとおりである 1。

パートナー社員の3区分名 称 定 義

キャリアパートナー 部門担当者として、計画から販売までの一連の管理業務を安心して任せられる者

リーダーパートナー部門担当者不在時に、担当者のアドバイスの下、他のパートナーをとりまとめ、業務を遂行できる者

フレッシュパートナー 部門担当者のアシスト業務や複数部門の定型業務、限られた特定業務の管理を行える者

職種別の基準値は、精肉部門、青果部門など部門ごとに「作業習得度確認表」に定められている。

 作業習得度確認表に基づいたトレーニングと処遇への反映 各部門別に習得すべき作業項目は、作業習得度確認表に定められている。パートナー社員は、半期で習得する作業項目をチーフと確認の上で設定し、トレーニング計画を立てる。計画に沿ってトレーニングを実施し、半期終了後、本人がセルフチェックで習得状況を判定する。その後、チーフがチェックをして相互で確認を行う。入社すると、まず陳列やパッケージ作業等の基本作業が「必須資格」項目として定められ、それら全項目の習得完了が求められる。「必須資格」を習得すると、後述のとおり賞与の支給対象となる。「必須資格」を全て習得すると、さらに次の段階の資格項目へと進んでいく。例えば精肉部門であれば、「豚肉手切作業」、「豚肉スライス作業」等の習得すべき作業項目(中項目)が決められており、中項目を数項目完了すると大項目の習得完了となり、本社に資格申請をすることができる。本社が確認して申請が認められ資格取得となると、資格給が支給されることになる。目標が明確で、日々のトレーニングの結果が処遇に反映されるため、やりがいや達成感を醸成する仕組みとなっている。

 仕事給を柱とした月例給与とメリハリをつけた手当 月例給与は、大きくは仕事給、地域給、諸手当に分かれている。仕事給は、主に基本時間給(入社時時給)+特定職種給+資格給+役割給で構成されている。資格給は、キャリアパートナー、リーダーパートナー、フレッシュパートナーの区分ごとに、習得した資格の数に応じて金額が決定される。役割給は、キャリアパートナー、リーダーパートナーに対して支給されている。特徴的な手当として、朝夜時間帯手当、日祭日勤務手当があげられる。小売業に多くみられる

1 キャリアパートナーとリーダーパートナーは、前頁表のフレッシュパートナー 1に含まれる。

127

Page 129: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

時間帯や曜日に応じた手当であるが、朝夜時間帯手当は午前5時~午前8時、午後6時~午後 10時の勤務で+ 200 円、日祭日勤務手当は+ 125 円と高水準となっており、希望者が集まりやすくなっている。

 正社員との均衡を意識した賞与、退職金の支給 賞与は、パートナー社員のうち「必須資格」を習得した者に対して支給される。時給や労働時間をベースにした計算式に人事考課の結果を加えて算出し、おおよその支給額は、リーダーパートナーで正社員の支給月数の約 60%、キャリアパートナーで約 80%と、正社員との均衡を意識した額となっている。退職金は、勤続5年以上のパートナー社員に支給される。退職時の時給や契約時間を基にした計算式で算出され、長期勤続のリーダーパートナーやキャリアパートナーになるとかなり高水準となり、継続勤務へのインセンティブとなっている。

 明確な基準による人事考課の実施 人事考課は年2回(4、10 月)実施されている。評価項目は次の3分野から構成され、A(1.05)、B(1)、C(0.95)の3段階で判定する。評価結果は賞与及び昇格(フレッシュパートナーからリーダーパートナー、リーダーパートナーからキャリアパートナー)の判定に用いられる。

人事考課項目成績考課 仕事の正確さ、早さを評価

執務態度考課 規律性、協調性、責任性、積極性等、日常業務遂行における執務態度を評価

数値考課レジ部門を除くリーダーパートナー、キャリアパートナーについてのみ担当部門の売上予算及び粗利予算の達成度を評価

 パートナー社員間のステップアップの仕組みを明確化 フレッシュパートナーからリーダーパートナー、リーダーパートナーからキャリアパートナーへの昇格については、所属長の推薦を受け、直近2回の人事考課がA以上、一定数の資格取得の要件に当てはまる者を対象として、昇格審査を行う。審査は年2回実施され、面接及び試験を経て昇格を決定する。昇格により、担当する業務範囲の変更や資格給、役割給等処遇の変更が発生する。

 充実した福利厚生制度 慶弔休暇及び育児・介護に関する休暇制度については、正社員と同等に整備されている。年次有給休暇については、時効により消滅する日数を1年につき5日、上限 60 日まで積み立てることができ、病気や介護、育児を事由とする休暇として利用することができるようになっている。また、長期勤続のパートナー社員に対して、節目ごとに褒賞が支給されている。7年勤続で 5,000円の商品券、15 年勤続で 50,000 円の旅行券支給等、定着率アップに繋がる仕組みとなっている。

128

Page 130: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

4  成果と課題�

資格を習得していくことで賞与支給や時給アップにつながるため、スキルの向上が図れるとともに、やりがいや達成感の醸成に繋がっている。早朝及び夕方、日祝日の時給が高いため、人手不足になりがちな時間帯も希望者が集まりやすくなっている。働き方によっては高い時給を得ることができるため、定着率を高める効果も出ていると考えている。課題としては、作業習得度確認表を細かい作業まで落とし込んで作成しているため、作業手順等が変わった場合のメンテナンスが追い付いていないことが挙げられる。また、作業習得度確認表について記入箇所が多いことや、チーフが部下の全パートナーの習得度合いのチェックを行うこと、半期ごとに本社が資格申請内容を確認する必要があること等、事務作業が煩雑になっており、簡素化できないか検討をしていきたいと考えている。

129

Page 131: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

事例 14C社等級・号俸制の整備による労働条件決定の合理化

本社所在地 北海道 事業内容 飲食料品小売業

従業員数 約 3,000 名男性 約 800 名

うちパートタイム労働者数 約 2,500 名男性 約 400 名

女性 約 2,200 名 女性 約 2,100 名

ポイント• 職務と習熟度に基づく等級制度と、等級別号俸をベースとした時給設定。• 通信教育受講料の 100%負担や慶弔見舞金制度の整備。

1  企業概要・人員構造他�

同社は、道内数十店舗を運営するスーパーマーケットである。正社員は本社採用で、将来の店長・バイヤー候補者として、入社後1年間に管理的業務(帳票、データを把握する数値的管理等)まで習得させる。これに対し、パートナー社員(パートタイム労働者)は店長裁量による店舗採用で、もっぱら店舗における販売、加工等の業務に従事している。パートナー社員には、扶養の範囲内で就労する主婦層と学生が多い。店舗は大型店と小型店に二分され、次のような人員配置となっている。

店舗区分別人員配置表総社員数 正社員数 パートナー社員数

大型店舗 130 名前後 20 名~ 25 名 110 名~ 115 名

小型店舗 60 名前後 3 名 57 名前後

パートナー社員は、後述のとおり P1 等級から P4 等級までに区分され、さらに所定労働時間によって呼称が区別されている。

労働条件の明 示・説 明 賃 金 教育訓練等

の能力開発人 事 評 価・キャリア アップ

正社員転換推 進 措 置

福 利 厚 生・安 全 衛 生

ワーク・ライフ・バランス

職場のコミュニケーション そ の 他

○ ○ ○ ○

130

Page 132: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

パートナー社員の雇用区分等 級 P 1 等級 P 2 等級 P 3 等級 P 4 等級

職務基準単純定型作業、

入社 1 ~ 2 年目レベル複雑定型作業、単純判断業務

単純判断作業、複雑定型作業

複雑判断作業(チーフ代行作業)、管理業務

基本給時給

時間帯加算時給

時間帯加算時給

時間帯加算時給

時間帯加算

手当 通勤手当 通勤手当 通勤手当通勤手当、

リーダー手当(月 5,000 円)

賞与 無 無 無 無

呼称M:ミドルS:ショート

M:ミドルL:ロングM:ミドル

リーダー

週所定労働時間M:20 ~ 28 時間S:20 時間未満

M:20 ~ 28 時間L:30 ~ 36 時間M:20 ~ 28 時間

L:30 ~ 36 時間

契約期間 6 か月 6 か月 6 か月 1 年

教育初級研修への選抜、導入研修・基礎研修

中級研修への選抜 上級研修への選抜 チーフ級研修への選抜

2  取組の背景�

現場第一線の重要な戦力として、パートナー社員の教育訓練には以前から力を入れてきた。しかし、その雇用管理については、明確な基準がないまま「自然発生的」な制度で対応していた。パートタイム労働法が改正されたことに伴い、特に第 13 条(待遇決定に当たって考慮した事項の説明義務)に対応して、より合理的な人事・賃金管理を行う必要性が強く意識されるようになった。

131

Page 133: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

3  取組の内容�

 職務と習熟度に基づく等級制度 パートナー社員は次のような項目で評価され、職務と習熟度に応じ P1 から P4 まで4段階の等級に格付けされる。評価内容は、部門別に異なる。

パートナー社員職務基準表(青果部門の例)区分 職務内容

基本項目

身だしなみ 常に基準に合った身だしなみ

クリンリネス 担当部署の整理・整頓・清掃

規則・ルールの遵守 会社・店舗・部門の決め事の遵守

協調性(チームワーク) 店・部門内での協力

契約の遵守 欠席・遅刻・早退

お客様への対応 売場案内・問い合わせに対する応対

基本的接客 笑顔、明るさ、さわやかな挨拶(従業員同士を含む)

定物定位置 商品・備品の定位置管理

安全・衛生 安全・衛生を意識した行動

職務・習熟度評価

P 1 等級(単純定型作業、入 社 1 ~ 2 年目レベル)

詰込み・パック 包丁を使用しない商品化作業

品出し 朝の品出し、中間補充

葉物・その他商品化 軟弱野菜の蘇生・結束、その他商品化作業

カットフルーツ カットフルーツ全般の商品化

値付 指定されている場所への正しい値付

鮮度維持 目利きによる商品の鮮度チェック

P 2 等級(複雑定型作業、単純判断業務)

籠盛り 見栄えと設定価格のバランスが取れた商品化

包材発注 包材発注

定番発注 定番発注

検品・伝票管理 入荷商品と伝票チェック、内部伝票の起票

登録・売価変更 ストコン(マスターレジ)での登録と売価変更操作

値引き 値引き作業とロス金額の起票

販促関係 pop 作成と正しい取り付け

P 3 等級(単純判断作業、複雑定型作業)

棚卸・在庫管理 棚卸の実施、在庫の管理

予約発注 計画に基づく発注

特売・中目発注 計画に基づく発注

P 4 等級(複雑判断作業(チーフ代行作業)、管理業務)

リーダーP 3 等級までの評価B 以上、本人の立候補かつ所属長推薦

チーフ 1 名体制の店舗におけるチーフ不在時の代行作業(販売、指導、作業、報告、提案、管理)。ただし、責任はチーフが負う。

132

Page 134: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅴ.事例集

 等級基準に基づく評価制度 この等級基準に基づき、パートナー社員ごとに「個人評価シート」を作成し、人事評価を行っている。評価内容は全パートナーに対して公開されている。このうち、「基本項目」の評価は、各項目について次のとおり○×で行う。全て○の場合は100%であるが、1項目が×になると-2%とカウントされる減点方式である。

「基本項目」の評価方法○ たまに注意されるが、ほとんどできている。

× よく注意されている。改善がない。

もう一方の「職務・習熟度評価」は、現状携わっている職務の項目ごとに習熟度を評価する。その評価方法は、次の5段階による。

「職務・習熟度評価」の評価方法S 全てにおいて全社に誇れるレベル。

A 自らの職務を他者に教えられる。スピードは平均よりもかなり速い。職務の出来栄えは大変良い。

B ほとんどの職務を手際よく一人でできる。スピード・出来栄えは平均的かそれ以上。ミスは無い。

C 部分的にフォローが必要。スピードは平均以下。職務の出来栄えはあまりよくない。ミスはよくある。

D 全ての職務において指導をうける。スピードは遅い。一人ではほとんどできない。

 等級別号俸をベースとした時給設定 P1 ~ P4 の等級別に賃金表があり、これに基づき時給を管理している。例えば青果部門についてみると、P1 等級は 35 号俸まで、P2 等級は 70 号俸まで、P3・P4 等級は 100 号俸までと、号俸は細かく分割されている。下位等級の高い号俸(時給)と上位等級の低い号俸(時給)は重なりをもたせた設計である。賃金表は5円単位であるが、複数の号俸で時給が同一になっているところがある。このため、小さな号数アップでは昇給しないケースもあるが、各人の等級内での位置づけは明確になっている。各人の具体的な時給は、勤務部門、等級、号俸による時給をベースに、基本項目評価結果(基本項目率)を乗じ、さらに店長裁量により貢献度加算、地域労働市場の状況等を加味した調整を行った上で決定する。したがって、賃金表は5円単位であっても、各人の時給は1円単位となっている。

時給の決定方法時給=賃金表による時給×基本項目率+貢献度加算±調整金額

なお、これ以外の賃金として、17 時以降勤務の場合は、時給金額に 10 円を加算している。また、P 4等級該当者に対しては「リーダー手当」として、月額 5,000 円を支給している。

133

Page 135: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 その他 パートナー社員が会社の推奨する通信教育を受講・修了した場合には、会社が受講料を 100%負担する制度がある。推奨講座としては、「販売士」、「カラーコーディネーター」及び「陳列技術、食品栄養内容、表示関係等スーパーマーケット業界に特化したスキルアップ講座」等がある。正社員との職務内容の違いから推奨講座は限定的ではあるが、会社負担内容は同じである。毎年14名~15名程度が、この制度を利用している。また、パートナー社員に対しても、正社員に準じた慶弔見舞金制度を適用する、年2回の契約更新時に個人面談を行う等、モチベーションアップ・定着率向上に配慮している。

4  成果と課題�

上記のような賃金決定方式を導入した結果、パートナー社員の賃金決定を、職務、習熟度、勤務態度、貢献度等に応じて合理的に実施できるようになった。また、キャリアアップの道筋が明確になり、更新時の年2回の面談の場での指導助言のツールにもなっている。しかしながら、最低賃金の上昇により賃金予算原資が逼迫しており、「調整金額」でプラス調整ができなくなってきていることへの対応に悩んでいる。また、人材確保が困難な時間帯等に応じたきめ細かい賃金体系の整備、非金銭的報酬も含めたモチベーション・定着率向上を図ることも課題である。

134

Page 136: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅵ.参考資料

パート労働ポータルサイト1

厚生労働省では、パートタイム労働法をはじめとした、パートタイム労働に関する情報を「パート労働ポータルサイト」で情報提供しています。本マニュアルで紹介した、パートタイム労働者均等・均衡待遇指標(パート指標)も、本サイトからご利用いただけます。その他、本サイトでは、パートタイム労働者の雇用管理改善に関する事例や、職務評価や短時間正社員制度の導入方法や導入事例等についても紹介しています。本サイトを、貴社でのパートタイム労働者の雇用管理の改善等にお役立てください。

URL:http://part-tanjikan.mhlw.go.jp/

関連資料一覧2

●「パートタイム労働法のあらまし」http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1g.html●「パートタイム労働法の概要」http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1g.html#ri-fu●「パートタイム労働法Q&A」http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1j.html●「キャリアアップ助成金」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/index.html

 Ⅵ.参考資料

135

Page 137: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

都道府県労働局雇用均等室所在地一覧3(平成 26 年 3 月 1 日現在)

都道府県 電話番号 FAX番号 郵便番号 所在地

北海道 011-709-2715 011-709-8786 060-8566 札幌市北区北8条西2丁目1番1号 札幌第1合同庁舎9階

青森 017-734-4211 017-777-7696 030-8558 青森市新町2丁目4番25号 青森合同庁舎

岩手 019-604-3010 019-604-1535 020-0045 盛岡市盛岡駅西通1丁目9番15号 盛岡第2合同庁舎

宮城 022-299-8844 022-299-8845 983-8585 仙台市宮城野区鉄砲町1番地 仙台第4合同庁舎

秋田 018-862-6684 018-862-4300 010-0951 秋田市山王7丁目1番4号 秋田第二合同庁舎2階

山形 023-624-8228 023-624-8246 990-8567 山形市香澄町3丁目2番1号 山交ビル3階

福島 024-536-4609 024-536-4658 960-8021 福島市霞町1番46号 福島合同庁舎

茨城 029-224-6288 029-224-6265 310-8511 水戸市宮町1丁目8-31

栃木 028-633-2795 028-637-5998 320-0845 宇都宮市明保野町1番4号 宇都宮第2地方合同庁舎

群馬 027-210-5009 027-210-5104 371-8567 前橋市大渡町1丁目10番7号 群馬県公社総合ビル

埼玉 048-600-6210 048-600-6230 330-6016 さいたま市中央区新都心11-2 ランド・アクシス・タワー16階

千葉 043-221-2307 043-221-2308 260-8612 千葉市中央区中央4丁目11番1号 千葉第2地方合同庁舎

東京 03-3512-1611 03-3512-1555 102-8305 千代田区九段南1-2-1 九段第3合同庁舎14階

神奈川 045-211-7380 045-211-7381 231-8434 横浜市中区北仲通5丁目57番地 横浜第2合同庁舎13階

新潟 025-288-3511 025-288-3518 950-8625 新潟市中央区美咲町 1丁目 2番 1号 新潟美咲合同庁舎 2号館 4階

富山 076-432-2740 076-432-3959 930-8509 富山市神通本町1-5-5

石川 076-265-4429 076-221-3087 920-0024 金沢市西念3丁目4番1号 金沢駅西合同庁舎

福井 0776-22-3947 0776-22-4920 910-8559 福井市春山1丁目1番54号 福井春山合同庁舎

山梨 055-225-2859 055-225-2787 400-8577 甲府市丸の内1丁目1番11号

長野 026-227-0125 026-227-0126 380-8572 長野市中御所1丁目22番1号

岐阜 058-245-1550 058-245-7055 500-8723 岐阜市金竜町5丁目13番地 岐阜合同庁舎

静岡 054-252-5310 054-252-8216 420-8639 静岡市葵区追手町9番50号 静岡地方合同庁舎5階

愛知 052-219-5509 052-220-0573 460-0008 名古屋市中区栄2丁目3番1号 名古屋広小路ビルヂング11階

三重 059-226-2318 059-228-2785 514-8524 津市島崎町327番2号 津第2地方合同庁舎

滋賀 077-523-1190 077-527-3277 520-0051 大津市梅林1丁目3番10号 滋賀ビル

京都 075-241-0504 075-241-0493 604-0846 京都市中京区両替町通御池上ル金吹町451

大阪 06-6941-8940 06-6946-6465 540-8527 大阪市中央区大手前4丁目1番67号 大阪合同庁舎第2号館

兵庫 078-367-0820 078-367-3854 650-0044 神戸市中央区東川崎町1丁目1番3号 神戸クリスタルタワー15階

奈良 0742-32-0210 0742-32-0214 630-8570 奈良市法蓮町387番地 奈良第3地方合同庁舎

和歌山 073-488-1170 073-475-0114 640-8581 和歌山市黒田2丁目3番3号 和歌山労働総合庁舎4階

鳥取 0857-29-1709 0857-29-4142 680-8522 鳥取市富安2丁目89番9号

島根 0852-31-1161 0852-31-1505 690-0841 松江市向島町134番10号 松江地方合同庁舎5階

岡山 086-224-7639 086-224-7693 700-8611 岡山市北区下石井1丁目4番1号 岡山第2合同庁舎

広島 082-221-9247 082-221-2356 730-8538 広島市中区上八丁堀6番30号 広島合同庁舎第2号館

山口 083-995-0390 083-995-0389 753-8510 山口市中河原町6番16号 山口地方合同庁舎2号館

徳島 088-652-2718 088-652-2751 770-0851 徳島市徳島町城内6番地6 徳島地方合同庁舎4階

香川 087-811-8924 087-811-8935 760-0019 高松市サンポート3番33号 高松サンポート合同庁舎2階

愛媛 089-935-5222 089-935-5223 790-8538 松山市若草町4番3号 松山若草合同庁舎

高知 088-885-6041 088-885-6042 780-8548 高知市南金田1番39号

福岡 092-411-4894 092-411-4895 812-0013 福岡市博多区博多駅東2丁目11番1号 福岡合同庁舎新館

佐賀 0952-32-7218 0952-32-7224 840-0801 佐賀市駅前中央3丁目3番20号 佐賀第2合同庁舎

長崎 095-801-0050 095-801-0051 850-0033 長崎市万才町7番1号 住友生命長崎ビル3階

熊本 096-352-3865 096-352-3876 860-8514 熊本市西区春日2-10-1 熊本地方合同庁舎9階

大分 097-532-4025 097-537-1240 870-0037 大分市東春日町17番20号 大分第2ソフィアプラザビル4階

宮崎 0985-38-8827 0985-38-8831 880-0805 宮崎市橘通東3丁目1番22号 宮崎合同庁舎2階

鹿児島 099-222-8446 099-222-8459 892-0847 鹿児島市西千石町1番1号 鹿児島西千石第一生命ビル

沖縄 098-868-4380 098-869-7914 900-0006 那覇市おもろまち2丁目1番1号 那覇第2地方合同庁舎1号館 3階

136

Page 138: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

 Ⅵ.参考資料

委員名簿4

平成 25 年度短時間労働者活躍推進制度普及事業 委員会委員名簿

統括委員会氏名

(敬称略・五十音順) 所属(平成26年2月末現在)

委員会座長 佐藤 博樹 東京大学大学院情報学環 教授

委 員

佐野 嘉秀 法政大学経営学部 教授

武石 恵美子 法政大学キャリアデザイン学部 教授

平田 未緒 株式会社働きかた研究所 代表取締役

諸星 裕美 オフィスモロホシ 社会保険労務士

マニュアル作成検討委員会(小売業)氏名

(敬称略・五十音順) 所属(平成26年2月末現在)

委員会座長 佐野 嘉秀 法政大学経営学部 教授

委 員

小林 由利 小林社会保険労務士事務所 社会保険労務士

中川 荘一郎 株式会社高島屋サービス 総務部 副部長

福井 淳彦 株式会社ココカラファイン 上席執行役員 人事・総務本部 人事企画部長

矢野 裕児 流通経済大学流通情報学部 教授

 本事業の実施に当たっては、日本スーパーマーケット協会に多大なご協力をいただきました。

事務局みずほ情報総研株式会社 社会政策コンサルティング部

137

Page 139: パートタイム労働者 雇用管理改善 マニュアル・好事例集 · の取組を推進するため、業種別の雇用管理改善に向けたマニュアル・好事例集を作成することとし

平成 25年度厚生労働省委託事業「短時間労働者活躍推進制度普及事業」

平成26年3月発行 企 画 ・ 制 作 みずほ情報総研株式会社 社会政策コンサルティング部 〒101-8843 東京都千代田区神田錦町 2-3 TEL03-5281-5276

 お問い合わせ先 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課 TEL03-5253-1111(内 7868)

※本マニュアル・事例集の無断転用、無断複製を禁じます。

138