成形・コンバーティング安定の...

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成形・コンバーティング安定の ための水分測定 ITS JAPAN アイ・ティー・エス・ジャパン株式会社 01. はじめに 02. 水分率測定 03. 微少水分計の種類 04. 水分率計の要件 05. 実際の測定例 06. 水分率測定比較表 1p 2p 3p 4p・5p 6p・7p 8p ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・

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Page 1: 成形・コンバーティング安定の ための水分測定成形・コンバーティングを安定させるためには様々な項目の管理 が必要である。例えば「ダイ内流路の管理」「溶融温度」「ダイ温度の

成形・コンバーティング安定のための水分測定

ITS JAPAN

アイ・ティー・エス・ジャパン株式会社

01. はじめに

02. 水分率測定

03. 微少水分計の種類

04. 水分率計の要件

05. 実際の測定例

06. 水分率測定比較表

1p

2p

3p

4p・5p

6p・7p

8p

・・・・・・・・・・・

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Page 2: 成形・コンバーティング安定の ための水分測定成形・コンバーティングを安定させるためには様々な項目の管理 が必要である。例えば「ダイ内流路の管理」「溶融温度」「ダイ温度の

 成形・コンバーティングを安定させるためには様々な項目の管理

が必要である。例えば「ダイ内流路の管理」「溶融温度」「ダイ温度の

管理」が挙げられる。射出成形であれば「保圧条件」「ホットランナ

などの管理」である。しかし、重要項目であるにもかかわらず過小評

価されがちなのが、”材料の水分による影響”である。

もとよりポリカーボネート(PC)・ポリエチレンテレフタレート

(PET)・ポリアミド(PA)・ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のい

わゆる吸湿性樹脂の成形や、マスターバッチなどの添加剤には材

料乾燥が不可欠である。つまり、同時に”水分率管理”も重要だとい

うことである。

 これらの樹脂は内部に毛細管構造を持つため、湿度にさらされ

ると水分が含浸する。吸湿性のある樹脂では水分の含浸が成形性

に大きく影響を与えることはもちろん、成形品の強度・外観に悪影

響を与える可能性がある。そのため除湿式の材料乾燥機などで数

十ppmのレベルで水分管理をすることが本来望ましい。

 当社ラボでの水分率測定と粘度測定実績では、水分率がキャピ

ラリーレオメーターで測定する粘度に大きく影響を与える素材が増

えている。

 水分率が増えると粘度が低下する樹脂の場合、材料の過乾燥は

成形品の悪化を意味する。これは過不足のない適切な”水分管理”

をしないと成形不良が起こり得るという意味である。さらに、成形品

の機械的強度・耐久性などの観点から、成形後の製品を裁断して残

留水分を測定したいという要請も多い。

 また、水分が含浸しにくい、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン

(PP)などの非吸湿性材料でも樹脂表面に付着した水分が成形工

程、成形品に悪影響を与える場合があることが指摘されている。

01. はじめに

1

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 では、どの工程で水分率を測定するのが効率的だろうか。

「アクアトラック」という水分率計のメーカーであるブラベンダー社

の本国、ドイツでは、

 ①材料の受け入れ時。

 ②乾燥前後。

 ③成形機のホッパー。

 ④成形後コンディショニングの完了した成形品。

上記のタイミングでの水分率管理を推奨している。

これにより水分の与える影響が包括的に管理でき、1年を通じた最

適な対策が立てやすいという。

 PETなどのリサイクルでも各材料の裁断時の水分率、ペレタイズ

前後の水分率を測定して傾向を管理している。乾燥前後の水分率

管理などは、成形の安定のためには必須と考えられるが、なかなか

徹底されているとは言えないのが実状である。

 1つの理由に、微少水分率計測はカールフィッシャー法が主流で

あったために、水分率を測定するのにカールフィッシャー測定器が

設置されている研究室まで材料を持ち込まなければいけないこと

があった。しかし、アクアトラックでは、軽量であることと、100V電源

(写真.1)を採用することで、水分率測定を現場で行えるようになっ

た(写真.2)。ドイツで水分率管理が進んでいる理由の一端は即時

測定可能性によると思う。現場で測定したデータを別途コンピュー

タで読み出し、解析することもできるので傾向分析の研究データと

しても使用できる。

02. 水分率測定

2

写真.2 女性でも持ち運びが可能な軽量設計写真.1 100V電源を採用。使用環境が広がります。

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 微少水分測定には主に「重量法」「カールフィッシャー法」「ア

クアトラック法」がある。

 「重量法」は材料を加熱し、その前後の重量を比較することに

よる水分率の測定を行う。加熱源がヒーター・赤外線のものが

ある。水分以外に発揮成分がある場合には測定誤差が大きくな

るので、ある程度用途が限定されるが、測定装置が比較的簡便

なこと、測定が容易なことが特徴である。取り除いた水分を吸着

剤、反応剤などと反応させて、水分だけが反応するようにすれ

ば水分以外の発揮成分の影響を無視できるので精度が増し、

微少水分測定に有利である。

 「カールフィッシャー法」では気化した水分またはペレットを

カールフィッシャー試薬に溶融させ水分率を測定する。カール

フィッシャー法は窒素を使用すること、および薬剤を使用するこ

とから設置場所の制限がある。また、反応槽の窒素置換精度が

測定精度に影響を与えるので測定者の技能の影響を受けやす

い。ただし、測定精度に関しては定評がある。

 「アクアトラック法」は新しい測定法で、真空下で水分を気化さ

せた後、水と選択的に反応する試薬とを反応させ、発生するガ

ス圧から水分率を計算する。管理が比較的容易な試薬を使用

すること、及び電源以外の設備が不要なことから現場で水分率

測定が可能である。また、測定再現性が高いことから測定コス

トの低減を図れる。精度はカールフィッシャー法と同等である。

 微少水分率測定ではこのほか、無水リン酸を使用する測定方

法、トマゼッティ揮発指標(TVI)法、アッカーマンによる蒸気圧

法、炭化カルシウムと反応させアセチレン量を圧力で測定する

炭化法などが提案されてきたが、装置の大きさ、精度、使いやす

さなどから淘汰されてきた。ISO15512/JISK7251”プラスチック

水分含有率の求め方”ではカールフィッシャー法と並んでマノ

メーター法が認定されている。アクアトラックはマノメーター法

の一種であり、ISO15512/JISK7251で使用できないとされる揮

発成分を多く含んだプラスチックでも冷却トラップなどの機構

的な補助で使用できるようにしている。

03. 微少水分計の種類

3

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 アクアトラック水分率計の測定手順を追うことにより水分率管理

の要件について考えてみたい。装置の反応槽は直径45mm、長さ

75mmの円筒形をしている(写真.3)。測定の精度および水分率の

代表性を高めるために、微少水分量であれば投入サンプル量を多

くできるように設計されている。結果として反応槽が大きいため、成

形後のフィルム・プリフォーム・ボトルなどを裁断しての水分率測定

も簡易である。ユーザーによる「梅雨の時期と乾燥した冬とでは成

形品の強度が異なり、調査すると保有水分率が異なる結果になる

ことが多い」という意見からも、成形後にその水分率を測定できる

反応槽の利点が伺える。

 アクアトラックではサンプルを投入する反応槽の蓋を開けられる

のは反応槽が約55℃に達してからである。これにより反応槽を開け

てサンプルを投入している間の周辺空気の水分による影響を出来

るだけ排除している。次にサンプルを反応槽に投入し、試薬をその

上にセットする。

 測定を開始すると自動で真空ポンプが作動し、規定の真空値ま

で真空引きを行う。規定値で自動的に止まるのでオペレーターによ

る誤差要因はない。また、カールフィッシャー法のように、反応槽内

の水分除去に窒素置換を使用した場合の、「窒素置換精度が測定

結果に影響を与える」ということもない。規定の真空値に達すると

加熱を開始し、設定温度でサンプル内から出てくる水分を測定す

る。ブラウン運動により活性化された水分子が、樹脂の毛細管の中

で活性となり、材料表面に出やすくなる。真空乾燥機と同様に真空

を引いているので、水分がより表面に出やすい。試薬は水と選択的

に反応する水素化カルシウムを使用する。水素化カルシウムは水と

反応すると水酸化カルシウム(消石灰)となり微量の水素ガスを発

生する(図.1)。

04. 水分率計の要件

4

写真.3大容量の円筒形なので成形品の測定も可能。

図.1化学反応式水分計内部構造図 CaH2+2H22ڀ&D2+2ك+2قH2

試薬水素化カルシウム

反応チャンバー

測定サンプル 真空ポンプ 温度 密度サンプル

重量

圧力センサー冷却トラップ

0,1234% H2O

水分率表示

ヒーター

75mm

45mm

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 アクアトラックでは、その水素ガス圧力から水分量を同定し、入力

されたサンプル重量に対する水分率として測定結果を表示する(写

真.4)。圧力センサーの測定レンジがあるので最大測定水分量の制

限がある(アクアトラック3Eでは水分量の上限は40mg)。

 装置内に較正プログラムを装備していることも、アクアトラックの

大きな特徴といえる。

 水分量が既知の較正用試薬を使用することにより、温度も含めた

装置の校正をユーザーが簡単に行えるようになっている。これは較

正用試薬を何度か測定することにより測定系の較正を行い、その較

正ファクターを素の測定値に掛けて補正する形をとっている。

 また、単純にアクアトラックの精度を確認するためなら、較正用

試薬の水分率を測定しての判断が可能である。これは較正ファク

ターが変化しないのでいつでも装置の信頼性を確認できる。

 アクアトラックはその肝となる装置の真空度を試験するためのプ

ログラムが内蔵されるなど、実際に使用し続けていくときに便利な

機能が標準搭載されている(写真.5)。

 「安心して使用し続ける」「簡単にできる」ということが水分率計

の大きな要件と思われる。

 さらに「成形・コンバーティングの安定」に多額のコストが掛けら

れていることも多々あるが、アクアトラックを使用することにより、

ローコストで管理することも可能になる。

 

04. 水分率計の要件

5

写真.5 オールインワン設計写真.4 測定結果:水分率表示

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05. 実際の測定例

◎PA12 / ポリアミド12

6

・サンプル

・乾燥温度

・乾燥時間

・測定温度

・乾燥機種

・水分測定器

PA12

80℃

1時間~4時間

130℃

CARD 6G(ファラグテック社)

アクアトラック3E(ブラベンダー社)

No. 状態

未乾燥

1時間

2時間

3時間

4時間

3449

973

536

378

216

<除湿乾燥1時間毎の水分率のグラフ>

サンプル 水分率(ppm)

3500

2500

1500

1000

500

0.0未乾燥 1時間 2時間 3時間 4時間

◎PBT/ポリブチレンテレフタレート・サンプル

・乾燥温度

・乾燥時間

・測定温度

・乾燥機種

・水分測定器

PBT樹脂

140℃

1時間~3時間

160℃

CARD 20S(ファラグテック社)

アクアトラック3E(ブラベンダー社)

No. 状態

未乾燥

1時間

2時間

3時間

2963

245

92

41

<除湿乾燥1時間毎の水分率のグラフ>

サンプル 水分率(ppm)

3500

30002963

245 92 41

2500

2000

1500

1000

500

0未乾燥 1時間 2時間 3時間

◎PA66/ポリアミド66・サンプル

・乾燥温度

・乾燥時間

・測定温度

・水分測定器

PA66

80℃

1時間~4時間

160℃

アクアトラック3E(ブラベンダー社)

No. 状態

未乾燥

1時間

2時間

3時間

4時間

3673

1824

1221

886

647

<除湿乾燥1時間毎の水分率のグラフ>

サンプル 水分率(ppm)

40003673

1824

973

3449

536378

216

1221886 647

3000

2000

1000

0.0未乾燥 1時間 2時間 3時間 4時間

◎PPS/ポリフェニレンサルファイド・サンプル

・乾燥温度

・乾燥時間

・測定温度

・水分測定器

PPS樹脂

150℃

1~4時間

200℃

アクアトラック3E(ブラベンダー社)

No. 状態

未乾燥

1時間

2時間

3時間

4時間

660

276

152

65

29

<除湿乾燥1時間毎の水分率のグラフ>

サンプル 水分率(ppm)

700660

276

152

6529

600

500

400

200

300

0.0

100

未乾燥 1時間 2時間 3時間 4時間

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05. 実際の測定例

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◎TPU/熱可塑性ポリウレタン・サンプル

・乾燥温度

・乾燥時間

・測定温度

・乾燥機種

・水分測定器

TPU樹脂

80℃

1時間~4時間

130℃

除湿乾燥機

アクアトラック3E(ブラベンダー社)

No. 状態

未乾燥

1時間

2時間

3時間

4時間

2000

500

198

163

116

<除湿乾燥1時間毎の水分率のグラフ>

サンプル 水分率(ppm)

20002000

500

198 163 116

1500

1000

500

250

0.0未乾燥 1時間 2時間 3時間 4時間

◎ポリエステル系樹脂・サンプル

・乾燥温度

・乾燥時間

・測定温度

・乾燥機種

・水分測定器

ポリエステル系

50℃

1時間~4時間

160℃

CARD 10S(ファラグテック社)

アクアトラック3E(ブラベンダー社)

No. 状態

未乾燥

1時間

2時間

3時間

4時間

2399

1564

1017

801

568

<除湿乾燥1時間毎の水分率のグラフ>

サンプル 水分率(ppm)

30002399

1564

1017801

568

2500

2000

1500

1000

500

0未乾燥 1時間 2時間 3時間 4時間

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06. 水分率測定値比較表(アクアトラックとカールフィッシャー式水分計での比較)

8

ABS (Cycolac)

ABS/PC

EVA

HDPE

LDPE

PBTP/PETP(Pocan)

Polyamide 6(Durethan)

Polyamide PA66

Polyamide PA6/bib TMP

Polyamide PA6 GF30

Polyamide PA6 MV141

Polyamide PA66(Zytel E 101)

Polycarbonate(Lexan)

Polycarbonate(Makrolon)

Polyester-Elastomer(TPE Hytrel G 4074)

Polyester(PE-Hoechst)

Polyester(Monte)

Co-Polyester

PETP (Rynite 530)

PETB/PC (Xenoy)

Polyester Blends(Valox)

Polyesterimide(Ultem)

Polyimide-Folie

PMMA(Lucryl)

PRO/PA(Noryl)

PP

PPS(Tedur)

POM(Delrin)

PVB-Butyralfolie

Thermoplastic.Polyurethane TPU

TPU/WX 0736

TPU/WX 8472

Talkum

130℃

160℃

130℃

130℃

105℃

160℃

160℃

160℃

160℃

160℃

160℃

190℃

160℃

160℃

160℃

130℃

130℃

130℃

190℃

160℃

160℃

160℃

130℃

160℃

160℃

160℃

190℃

130℃

130℃

160℃

130℃

160℃

160℃

0.018%

0.073%

0.085%

0.011%

0.027%

0.018%

0.446%

0.022%

0.031%

0.116%

0.087%

0.154%

0.023%

0.006%

0.041%

0.003%

0.004%

0.106%

0.012%

0.015%

0.012%

0.019%

0.729%

0.042%

0.027%

0.035%

0.008%

0.110%

0.422%

0.036%

0.041%

0.180%

0.195%

140℃

170℃

170℃

160℃

180℃

150℃

150℃

190℃

160℃

170℃

140℃

140℃

140℃

190℃

160℃

160℃

180℃

160℃

160℃

170℃

130℃

170℃

170℃

170℃

160℃

0.018%

0.011%

0.432%

0.022%

0.022%

0.113%

0.083%

0.150%

0.024%

0.0058%

0.039%

0.003%

0.005%

0.105%

0.011%

0.017%

0.009%

0.018%

0.040%

0.033%

0.037%

0.007%

0.105%

0.410%

0.038%

0.040%

0.170%

0.202%

サンプル名アクアトラック

測定温度 測定温度水分率測定値 水分率測定値

カールフィッシャー式水分計

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アイ・ティー・エス ジャパン株式会社〒274-0812 千葉県船橋市三咲7-22-7 TEL:047-449-2961 FAX:047-449-2926ITS JAPAN

アクアトラック 水分計 検 索