シミュレーションから学ぶ病態生理学 ~知識と技術の統合の視点...

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19 回病態生理学会 ミニシンポジウム 『看護と病態生理』 53 シミュレーションから学ぶ病態生理学 ~知識と技術の統合の視点から~ 東京医科大学病院卒後臨床研修センター 助教 阿部幸恵 1.実践力は知識と技術の統合 2009 年度から看護基礎教育の改正カリキュラムが開始される。この改訂カリキュラムの 主要なねらいは、安全で質の高い看護を提供できる看護師の育成であろう。近年、医療の 発達は目覚しく、臨床で求められる専門性は高まるばかりである。また、国民の医療への 関心も高く、安全で良質な医療を求めている。 そのような状況の中、医療の現場においては、医師、看護師を中心として医療に携わる 全ての職種が、チームとして患者に最善の医療を提供していかなければならない。チーム 医療の要は一人ひとりがその職種としての確かな知識と技術からなる実践力を身につけて いることにある。しかし、現在、基礎教育修了時点での実践力は、臨床で求められるもの との乖離が大きく、基礎教育における実践力育成のあり方が問われている。改正カリキュ ラムでは、その点を踏まえて基礎教育時点からの、実践力の強化と卒業後も自ら主体的に 時代に応じた知識や技術を学び続ける素地の育成をねらっている。臨床での実践力とは、 専門的な知識と技術を統合し、患者の個別性に合わせて提供できる力といえよう。また、 その土台となる、確かな看護観も培っておかなければいけない。 2.アセスメントの土台となる病態生理学 看護の基礎教育課程には、基礎分野、専門基礎分野、専門分野などの分野が設けられ、 習得しなければいけない専門的知識は多岐にわたる。中でも、病態生理に関する科目は、 患者の健康問題を的確にとらえて、適切な観察とアセスメントを行うために重要な科目と なる。なぜならば、患者の病態生理を的確にとらえることは、予測を持った観察や適切な ケアの提供につながるからである。したがって、病態生理学の知識は、患者の状態をアセ スメントして看護を計画していく際の看護師の思考の土台と言っても過言ではない。 病態生理学は、多くの基礎教育過程において1年次といった早期の座学で学習を終える。 そして、その後に看護技術の学びを座学と演習から学ぶ。現行のカリキュラムでは病態生 理の知識と看護技術を統合していく学習の場は、最後の臨地実習となるであろう。しかし、 実際の患者に対応する臨地実習では、患者を前にして病態生理の知識をどのように技術に 応用していくかを考えさせる時間的余裕をとることができずに、指導者や教員が技術を提 供してしまう場面もある。さらに、医療安全や倫理的な観点から考えると、ライセンスの 取得前の学生が実施できる技術にも制限がある。つまり、臨地実習での知識と技術の統合 には限界があるといえる。

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第 19 回病態生理学会 ミニシンポジウム 『看護と病態生理』

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シミュレーションから学ぶ病態生理学

~知識と技術の統合の視点から~

東京医科大学病院卒後臨床研修センター 助教 阿部幸恵 1.実践力は知識と技術の統合

2009 年度から看護基礎教育の改正カリキュラムが開始される。この改訂カリキュラムの

主要なねらいは、安全で質の高い看護を提供できる看護師の育成であろう。近年、医療の

発達は目覚しく、臨床で求められる専門性は高まるばかりである。また、国民の医療への

関心も高く、安全で良質な医療を求めている。 そのような状況の中、医療の現場においては、医師、看護師を中心として医療に携わる

全ての職種が、チームとして患者に最善の医療を提供していかなければならない。チーム

医療の要は一人ひとりがその職種としての確かな知識と技術からなる実践力を身につけて

いることにある。しかし、現在、基礎教育修了時点での実践力は、臨床で求められるもの

との乖離が大きく、基礎教育における実践力育成のあり方が問われている。改正カリキュ

ラムでは、その点を踏まえて基礎教育時点からの、実践力の強化と卒業後も自ら主体的に

時代に応じた知識や技術を学び続ける素地の育成をねらっている。臨床での実践力とは、

専門的な知識と技術を統合し、患者の個別性に合わせて提供できる力といえよう。また、

その土台となる、確かな看護観も培っておかなければいけない。 2.アセスメントの土台となる病態生理学 看護の基礎教育課程には、基礎分野、専門基礎分野、専門分野などの分野が設けられ、

習得しなければいけない専門的知識は多岐にわたる。中でも、病態生理に関する科目は、

患者の健康問題を的確にとらえて、適切な観察とアセスメントを行うために重要な科目と

なる。なぜならば、患者の病態生理を的確にとらえることは、予測を持った観察や適切な

ケアの提供につながるからである。したがって、病態生理学の知識は、患者の状態をアセ

スメントして看護を計画していく際の看護師の思考の土台と言っても過言ではない。 病態生理学は、多くの基礎教育過程において1年次といった早期の座学で学習を終える。

そして、その後に看護技術の学びを座学と演習から学ぶ。現行のカリキュラムでは病態生

理の知識と看護技術を統合していく学習の場は、最後の臨地実習となるであろう。しかし、

実際の患者に対応する臨地実習では、患者を前にして病態生理の知識をどのように技術に

応用していくかを考えさせる時間的余裕をとることができずに、指導者や教員が技術を提

供してしまう場面もある。さらに、医療安全や倫理的な観点から考えると、ライセンスの

取得前の学生が実施できる技術にも制限がある。つまり、臨地実習での知識と技術の統合

には限界があるといえる。

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3.病態生理学の知識と技術をシミュレーションで統合 E・Daleは、視聴覚メディアの内容を具象から抽象まで 11段階に分け、「経験の円錐」(cone

of experience)と名づけた(図1)。一番抽 象度の高い言語的象徴では専門的知識をテキ ストや講義から学び、具体的な環境や教材で の経験をとおして技術を学ぶことが効果的で あり、この連続する段階を適宜移動し、具象 と抽象を関連付けながら学ぶことが、知識と 技術の統合には必要なのである。この具象と 抽象を行き来しながらの学びが臨地実習では 充分行えないとするのならば、何等かの模擬 的な体験学習の場を設ける必要があろう。その一つの方法として、シミュレーションによ

る教育があがるのである。シミュレーションは教育、研究、娯楽の目的で古くから様々な

分野で用いられてきた。中でもパイロットや宇宙飛行士の訓練がシミュレーション教育へ の応用の代表といえる。最近では、医療倫理 の面や医療安全の意識の高まりなどから、医 療の教育にもシミュレーションによる教育・ 訓練が注目され始めている。クリニカル・シ ミュレーション・ラボ(スキルス・ラボ)とい われる現場さながらに手技を学ぶ実習室を設 置する病院や大学も増えている。そして、学 習に使用されるシミュレータや模型も高度化 し進歩している。的確な看護を提供する上で、 重要視されているフィジカルアセスメントの 教育を例にあげると写真1から 3 に示すよう なモデルがある。患者の状態をより正確に再 現し、観察の技術とアセスメントの力を養う シミュレーション教育に広く使われている。 看護基礎教育課程における改正カリキュラム によると、モデルや人形を使っての演習を促 し、臨床実践に近い形で知識・技術を統合す る「統合分野」を設けている。これは、まさ に知識と技術をシミュレーションによる教育 で統合し、実践力の強化を目指すことの表れ であろう。 4.シミュレーションによる教育の利点

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シミュレーションによる教育の利点は、以下のような点があがる。 1.患者に負担をかけない。 2.患者も学生も危険に曝されない。 3.失敗が許される。(やり直しがきく) 4.説明・確認の時間が充分にとれる。 5.いつでも学習可能。 6.症例や状況を設定できる。 7.記録が可能。(振り返りができる) 8.評価に使える。 9.指導者の指導力育成にも利用可能

シミュレーションによる教育の一番の利点は、学生が安心して学習に臨め、実際の患者

に害がないという点であろう。また、実際の患者に実施する前に充分なシミュレーション

がなされていれば、手技的な技術の向上のみでなく、変化の激しい臨床で自らの感情を調

整する力も養うことができるであろう。安定した感情と熟達した手技は患者の信頼と安心

につながっていくといえる。 5.シミュレーションで病態生理を学ぶ実践例 筆者は大学病院の看護師を対象に、不整脈の出現する患者をシミュレートしてその病態

生理を学び、観察の技術と統合していく学習会を企画・実践した。シミュレーションによ

る教育は、図2に示す概要である。心臓の刺激伝導系に はじまる不整脈の基本的な知識を座学で学び、それに引 き続いて術後の患者に不整脈が多発したという状況を再 現して、看護師が観察にあたる。観察した内容から病態 をアセスメントし、医師に報告するというシミュレーシ ョンの一連の流れである。一度のシミュレーションでは、なかなか病態生理を 踏まえたアセスメントはできない。観察することも優先 順位を踏まえられない。しかし、録画で振り返る、座学 の資料を見直す、模範ビデオを視聴するなどしながら、 患者に出現した不整脈の原因や誘因を病態生理に沿って 考えられるようになっていった。つまり、不整脈の知識 が観察の技術と統合していくことになるのである。いき て使える知識へと既習の知識が変化することを体験する ことで、学習者のさらなる学習へのモチベーションにも つながったと推察する。 6.病態生理学とシミュレーションによる教育 患者の病態生理は常に看護の土台となる。提供する看護技術が確かな病態生理学に裏打

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ちされたものでなければ、個別性のある適切な看護とはいえない。しかし、現状では、病

態生理学の知識と技術の間には乖離が生じてきている。そして、それは、基礎教育修了時

点と臨床が求める実践力の乖離とも通じることであろう。知識と技術の統合は、座学だけ

では難しい。体験型学習を通じて、指導者が統合を意識したかかわりを行わなければなら

ない。「この技術は、患者のどのような病態を根拠に行うのか、どんな方法で行うのか、そ

の病態生理的根拠はなにか。」「患者の病態にあった清潔ケアはどうすればよいのか。」など

と、体を動かしつつ患者の病態をアセスメントし、提供するべき看護行為を決定していく

体験学習の場が必要なのである。病態や生理などについては座学で、技術は実習で学ぶと

いった教育では、知識と技術の統合された実践力は培いにくい。病態生理の教育方法の一

つにシミュレーションを取り入れて、積極的に知識と技術を統合していくことが実践力強

化につながるであろう。 参考文献 佐藤徹,安井清隆,天野隆弘.医学教育カリキュラム 新しい潮流第 6 回スキルス. 医学図書館.52(3):211-213,2005. 日本医学教育学会監修,日本医学教育学会教育開発委員会編.医学教育マニュアル 5

シミュレーションの応用.篠原出版新社,1984.

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看護基礎教育における病態生理学

科学的根拠に基づいた実践に向けて、指導要領の改正から考える 坂本祐子 杏林大学保健学部看護学科

はじめに

平成 21 年度から、看護基礎教育の指導要領が改正された。科学的根拠に基づく看護実践

(Evidence-Based Nursing:EBN)に向け、日々更新される科学的根拠を「使う(探す)」ため

の能力の向上を重視した内容である。その一つとして、専門基礎分野に「病態生理学」が

追加された。EBN の基盤となる病態生理学的推論力の向上がねらいである。

病態生理学的推論力を働かせ、科学的根拠を「使う(探す)」ことで、アウトカムの質が改善す

る臨床看護の場面を紹介する。学生の病態生理学の活用状況を臨地実習場面から紹介する。

EBN に向け、改正された指導要領から、看護基礎教育における病態生理学の教育上の課題

を考える

1. 改正の概要

改正概要を表 1(太字)に示す 1)。さらに、EBN に必要な能力向上の点から重要と考える

内容を下線で強調した。強調部分は、1)健康や障害状態によって異なる生活者の健康上の

課題に対応する力2)継続学習をする力であるの2点に要約できる。対象の健康上の課題は、

個別性が大きい。健康や障害

の状態、さらには生活様式等

が影響する。医学診断が同じ

でも、健康上の課題は異なる。

個々の課題に対応するには、

科学的な根拠が必要となる。

また、科学的根拠は日々更新

されている。更新に対応して

いくには、継続学習力も必要

となる。具体的には、臨地実

習を通して、講義で学んだ根

拠に疑問を持つ力。疑問の解

決のため効率性の高い方法

で(入手可能な)最善の根拠

を入手する力などが必要と

考える。

表1 指導要領の改正の概要(1) 看護基礎教育で育成する能力

1)人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として、幅広く理解する能力

2)人間の健康と生活を、自然・社会・文化的環境とのダイナミックスな相互作用などの観点から理解する能力

3)人々の多様な価値観を認識し専門職業人としての共感的態度及び倫理に基づいた看護実践をできるとともに、

最新知識・技術を自ら学び続ける能力

4)人々の健康上の課題に対応(変更、旧:問題を解決)するため、科学的根拠に基づいた看護を実践できる能力

5)健康の保持増進、疾病の予防と治療、リハビリテーション、終末期(変更、旧:ターミナルケア)など、健康や障害 の状態に応じた看護を実践的するための基礎的能力

6)保健・医療・福祉制度と他職種の役割を理解し、チーム医療を実践するともに、人々が社会資源を活用できるよう、調整するための基礎的能力

文献1)厚生労働省「看護基礎教関する検討会」報告書,2007看護師等養成所の運営に関する指導要領 別表3の看護師教育の基本的考え方より

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第 19 回病態生理学会 ミニシンポジウム 『看護と病態生理』

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この「疑問を持つ」「効率性を高め

る」ための基盤として必要になるの

が、病態生理学的推論力だと考えて

いる。専門分野の看護学の基礎とし

て、表 2 に示すように、障害理解の

点から臨床での活用が期待される病

態生理学が追加された。

2. EBN により変わる臨床看護の質

科学的根拠を「使う(探す)」こと

は、質の高い看護の一要因である。

EBN には、「創る」「伝える」「使う(探

す)」の 3 側面がある 2)とされる。最も基盤となるのが「使う(探す)」だと考えている。し

かし、臨床看護では、「使う(探す)」ことも十分でない。

ここでは、1980~2007 年(2004 年 10 月までは、ガイドライン 3)作成背景 p92~120 を参照)の

日本語及び英語で紹介された論文の系統的文献検索の結果より、癌で終末期(余命 1~2 ヶ

月以内と予測される 3))にある患者の輸液療法における臨床の現状と課題を紹介する。

癌で終末期にある患者への輸液施行割合と量は、国内外を通し一般病棟と緩和ケア病棟で

異なる。緩和ケア病棟の方が、施行割合、量ともに少ない。調査法よるバイアスを考慮しても、

その差は大きい。施行の決定因子には、患者の身体的状態だけでなく、患者・家族、医師

の輸液に対する認識などがある。これらの結果から、患者を含むチームメンバーの輸液への認識

は、施行の決定に強く影響すると考えられる。さらに、輸液に関するメンバーの認識は一様で

ない。医師は輸液を推奨する、患者は輸液を希望しない、看護師と家族がその中間の認識

を示す場合が多く、これらの認識の調整は難しいことが報告されている。看護は、その調

整役割を担う機会が多いこともわかった。

ところで、癌で終末期にある患者は、悪液質状態の場合が多い。悪液質は、悪性腫瘍の

進行に伴って、栄養摂取の低下では十分に説明されない、るいそう、体脂肪や筋肉量の減

少が起こる状態 3)と定義された。以前は、癌増殖によるエネルギー消費亢進に、トキシンが分泌され

食欲低下が加わることで生じる栄養摂取の低下が原因という仮説が有力だった。しかし、

この仮説は、安静時エネルギー消費量(REE)の測定を基盤とした複数の研究結果が蓄積されてき

た現在でも十分に肯定されていない。加えて、IL6 などの炎症性サイトカイン、血管内皮増殖因子

(VEGF)の分泌により、血管透過性が亢進して体液やアルブミンの漏出が起こり、浮腫や胸・腹

水が生じることが病態生理学的に明らかにされた。

癌で終末期にある患者に栄養補給目的で輸液を施行することは、必ずしも患者の利益(生

命予後の延長、栄養状態の改善)にならないことを裏付ける科学的根拠は存在している。

しかし、調査結果が示したことは、更新された科学的根拠が十分に「使われていない」と

いう事実である。継続学習力の重要性を改めて実感する。もちろん、メンバーにより異なる輸

教育内容単位

数 留意点

専門基礎分野

人体の構造と機能

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人体を系統立てて学習し、健康・疾病・障害に関する観察力、判断力を強化するため、解剖生理学、生化学、栄養学、薬理学、病態生理学、微生物学などを臨床で活用可能なものとして学ぶ内容とする

演習を強化した内容とする

疾病の成り立ちと回復の促進

表2 指導要領の改正の概要(2) 病態生理学の位置づけ

文献1)厚生労働省「看護基礎教関する検討会」報告書,2007看護師等養成所の運営に関する指導要領 別表3の看護師教育内容、留意点より

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液に対する認識の調整は科学的根拠のみで説明できると考えているわけではない。しかし、

調整に科学的根拠の提示は有用だ。EBN には「つたえる」という側面もある。

EBN により、看護のアウトカムの質は向上する。

3. 臨地実習における病態生理学の活用

次に学生が、対象の健康上の課題を

理解するための病態生理学的知識を

活用状況を説明する。

図 1 は、悪液質の病態生理学の知識

を用いて、学生の多くが立案する標準

的な初期看護計画の例を提示した。計

画に生かされる病態生理学的知識が

少ないことに注目したい。バイタルサイン

測定は、計画としては記載されている

が、作成した図を用いて(例えば、代

謝異常)は説明できていない場合がほ

とんどだ。知識を活用した計画とは判断できない。活用していると判断できた内容は、白

抜き字で示した「食欲不振」「るいそう」の 2点である。

教育上の課題だと考えるのは、計画に生かされている病態生理学知識が少ないことより、

それに「疑問を持たない」学生が多いことである。

EBN の基礎能力として、臨地実習で育成したい力の一つが、既習の科学的根拠に「疑問を

持つ力」である。「食欲不振」以外にも悪液質に向かう矢印が表現されている(図 1)。しか

し、この場合、学生が着目しているのは「食欲不振」だけである。「食事摂取量が増えれば、

悪液質は改善するか?」と疑問を持って欲しい。患者は「好きな物も食べたくない」とい

う身体状況であることも予測できる。これが、臨床で必要となる病態生理学的推論力だと

考えている。臨床で食欲不振の患者を看護する機会は多い。しかし、食欲不振のその理由

は様々だ。生活様式まで考慮すれば、数限りない。臨床看護は、全人的な視点で対象の健

康上の課題を明らかにするが求められる一方、課題の解決には即応性も求められる。複雑

な課題だからこそ、共通性の高い側面から対応できるようする必要があると考える。

悪液質から伸びる矢印の先にある症状も「るいそう」だけではない(図 1)。「体重だけを、

回復の指標として良いのか」「低蛋白や貧血の観察内容は何か」などの「疑問」を持って欲

しい。「疑問」が持てないのでは、もっと「調べてみよう」という学習動機はおきない。こ

れでは、実習を通して「最善の根拠を効率よく入手する力」をつけることが難くなってし

まうからだ。

臨地実習指導で、重視しているのは、EBN の PICO 形式(Patient:患者,Intervention:介

入,Comparison:比較 ,0utcome:結果 2)に沿って「疑問を持ってもらう」ことだ。具体的には、

悪液質の定義である「栄養摂取の低下では十分に説明できない・・・・」を確認し、計画との

矛盾を明確化して「食事摂取量が増えれば・・・・」介入結果に対する「疑問」を学生に投げ

<観察>

バイタルサインの測定体重測定食欲・食事量

<目標>

食事量が増える

<計画>

食事摂取を促す好きな物を・・・・

図1臨地実習における病態生理の活用

免疫系の異常エネルギ-消費

増大IL6,VEGFなど分泌

がん

代謝異常・中枢神経作用

食欲不振蛋白質

融解・漏出

がん悪液質

脂肪融解

るいそう低蛋白血漿 貧血

病態の学習例(図) 初期計画例

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かける。さらに、学習してきたことを認め「根拠を探した」という気持ちを支える。その

上で、活用されていない知識とその理由を確認して、その内容や活用方法を一緒に考える。

そして、「もっと必要な(患者にとって最善の結果となる)根拠を探そう」という動機を高

めるようにしている。さらに、実習経験内容や量に応じて「以前の受け持ちの患者さんは?」

と介入方法の比較から「疑問」を投げかけるようにしている。

4. 病態生理学の教育上の課題

基礎看護教育における病態生理学の教育上の課題を要領の改正視点(表 2)からまとめる。

病理学から病態生理学への改正は、形態変化(病態解剖学)よりも、機能変化(病態生理学)

に重おきおいて内容精選をすることがねらいだと考える。先に紹介したように、臨地実習

での観察や判断の根拠として、病態生理学の知識を十分活用できていない。症状の機序や

症状と検査、治療と関連づけて学べる病態生理学的な内容の抽出が課題と考える。

また、教育方法として演習が推奨されている。具体的には「低蛋白血漿の観察に必要な

検査データは?」という疑問を持たせること。その解決に必要な根拠を効率よく探すために、

病態生理学的知識を活用する訓練をして、病理学的推論力を向上することだ。事例学習な

どが望ましいと考える。学生自身が考える臨地実習で病態生理学的知識を活用できない理

由として多い内容に「計画の立案を急がないと援助できなくなってしまう」「受け持ち患

者さんには、症状がない」がある。演習であれば、重要な内容を繰り返し、比較しながら、

学習できる。単純でも複数の事例があると良い。最期に、病態生理学用語が難解であるこ

とも知識を活用できない要因として大きいことを付け加える。演習を強化すると言っても、

正確な知識を伝える講義はその前提として重要だ。

おわりに EBN の基盤となる知識に病態生理学がある。病理学的推論力を働かせ臨床で活用できる知

識にするために、教育内容精選や方法を工夫することが課題となる。 参考文献 1)厚生労働省:看護基礎教育の充実に関する検討会報告書(平成 19 年 4 月 16 日), http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/s0420-13.hnl

2)日野原重明:基本から学ぶ EBN,医学書院,2001

3)日本緩和医療学会:終末期患者に対する輸液治療のガイドライン 第 1 版,2007

4)前田環:特集臨床につなげる専門基礎科目,病気理論を学ぶこと 病理学をどう位置づけ,

いかに教えるか,看護教育 49(3),196-207,2008

5)林正健二:特集カリキュラム改正に対応した教育方法 1,専門分野:専門基礎領域とどうむすびつ

ける内容とするか,看護教育 50(3),222-226,2000

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フィジカルアセスメントに基づく看護学と病態生理学

眞鍋 知子

防衛医科大学校衛生学公衆衛生学講座

―すべての病気は、その過程のどの時期をとっても、程度の差こそあれ、その性質は回復

過程であって、必ずしも苦痛を伴うものではないのである。 つまり病気とは、外因によって侵されたり内因によって衰えたりする過程を癒そうとす

る自然のはたらきであり、それは何週間も数か月も・・・気づかれずに始まっていて、こ

のように進んできた以前からの過程の、その時々の結果として現われたのが病気という現

象なのである―Notes on Nursing:What is it and What it is not F. Nightingale この 1 節は看護理論家であるフローレンス・ナイチンゲールの「看護覚書(Notes on Nursing)」という本の中の一節である。1860 年に書かれた、この「看護覚書」という本は、

英国女性のために書かれたものであり、人の健康について直接責任をおっている女性たち

に考えるヒントを与えるという目的でかかれたものであった。看護の考え方の法則を述べ

て看護師が自分で看護を学べるようにしたものではなく、看護することを教えるための手

引書でもなかったのである。女性は子供や病人など、誰かの健康上の責任を負うことが一

生のうち何度もあり、女性はだれでもが看護にかかわる者であるということであった。日々

の健康上の知識や看護の知識は、疾病予防、あるいは疾病からの回復状態に心身を整える

ため重視されるべきものとして、当時の専門家のみが身につけうる医学知識とは、はっき

り区別されるものであったと書かれている。この「看護覚書」の中で、上記のように疾病

についての記述がある。さらに、多くの疾病に対しては特定の医薬や療法が用いられてい

るが、それらの正確な価値は決して確かめられていない。一方看護に目を転じれば、疾病

の成り行きを決定するうえにおいて、注意深い看護が極めて重要であるということは、い

たるところで経験されているのである。 平成 13 年「看護学教育の在り方検討会」、平成 14 年「大学における看護実践能力の育成

の充実にむけて」に関する検討がなされ報告書が示された。その報告書における看護学の

学士課程の教育内容のコアを構成する重要な要素として、「看護実践を支える技術学習項

目」が文部科学省から示されている。人間を対象として活動する基盤である「看護ケア基

盤形成の方法」として、看護の展開方法、療養生活支援の方法、人間尊重・擁護の方法、

援助的人間関係形成の方法、健康に関する学習支援の方法、健康管理支援の方法、チーム

ワークの基本マネージメント、成長発達各期の支援方法の 8 項目が示さた。この基盤の上

に実践力を育成する基本的な技術である「看護基本技術」として、環境調整、食事、排泄、

活動・休息、清潔・衣生活、呼吸・循環の調整、健康管理、与薬、救命救急処置、症状・

生体機能管理、感染予防、安全管理、安楽確保の各援助を習得することが示された。

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第 19 回病態生理学会 ミニシンポジウム 『看護と病態生理』

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このようなことから、看護基礎教育において求められていることは、看護実践能力と専門 知識に基づいた問題解決能力の育成に重点を置くよう求められているのである。 また看護基礎教育カリキュラムで病院や地域の施設で実施する臨地実習は、看護師が行

う実践の中に学生が身を置き、看護師の立場でケアを行うものである。つまり、知る・わ

かる段階から使う・実践できる段階に到達させるために必要不可欠なものなのである。さ

らに、看護実践に不可欠な援助的人間関係の形成能力や専門職者としての役割や責務を果

たす能力をはぐくむのである。このようなことから、実際に臨床における看護実践ができ

る看護師を育成することが、看護師養成機関である大学や専門学校の使命である。 以下に述べるのは、内科病棟で臨地実習を実施していた看護学生の事例である。学生は、

70 歳代の ARDS の患者を受け持っており、呼吸機能が低下しており十分に肺換気ができな

い状態であった。昨今、手術を受けた患者やベッド上で長期臥床を余儀なくされている患

者、高齢者など呼吸機能に問題のでる可能性のある患者に対して、腹臥位療法を適用する

ということがなされている。この方法は、必ずしもメリットばかりではなく、やり方によ

っては危険なこともある。しかし、学生は看護系の雑誌で成功事例を読むとそのまま受け

取ってしまい、腹臥位療法のメカニズムを理解しないまま実践しようとする場合がある。 どんな疾患に適用すべきかということも大切であるが、そもそも腹臥位という状況は、臓

器がどのようになり、換気がどのように行われるかということを理解できていないと、実

際に看護実践に使うには危険なのである。このようなことから、基礎科目として習得する

病態生理学の知識が必要になってくる。

仰臥位では、機械的人工換気により、コンプライアンスの大きくなり、胸側の肺胞へは

換気はもたらされ、圧迫された背側肺への換気は低下する。(図1)そのため、肺内シャン

ト血流が増加して低酸素血症を生じ、下側肺障害が発生することが考えられる。仰臥位で

は、重力が腹部から背部にかけてかかり、臓器によって肺が圧迫される。(図2)そのため、

背側では換気が血流よりも多くなり、背側では血流のほうが換気よりも多くなり、痰も背

側にたまってしまいやすい。一方、腹臥位の場合はどうか。背側が拡張するので横隔膜の

運動が改善し、肺全体の換気が改善する。(図3)腹臥位にすることにより、重力は背側か

ら腹側にかかり、血管床の豊富な背側を拡張でき換気が改善する。(図4)つまり、ほぼ換

気と血流の関係はひとしくなる。しかし、心血管は圧迫されることが問題である。

仰臥位(supine)

換気>血流

換気<血流

機械的陽圧換気

横隔膜運動

図1 肺の側面図(仰臥位)

仰臥位(supine)

心臓

重力

換気>血流

換気<血流背

図2 臓器横断面(仰臥位)

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さまざまな研究結果から、腹臥位は 6 時間以上が推奨されているが、脊椎骨折と骨盤の創

外固定の場合は禁忌であり、腸骨や頬骨などの褥創起こす。急性呼吸不全患者の酸素化を

改善させるが、長期化例や器質的変化が生じてからは無効といわれている。さらに人工呼

吸器関連の肺炎の発生率を低下させる事、人工呼吸器による肺障害の発生を遷延化させる

可能性も報告されている。このように、解剖、生理、病態を関連付けた知識を身につけて

こそ、効果的な看護実践につながる。 この事例をもとに腹臥位療法を実施する上で、さらに4つ教授すべき点がある。まず、

腹臥位にすることにより患者の顔が見えないということである。患者実践における人間関

係の必要を教える事が、看護基礎教育に携わる者に求められる。援助を提供する側である

看護師と援助受ける側である患者の接点は何かを考える必要がある。患者との援助関係を

左右する要因に、患者の性格・特性、問題に対する認知、感情反応という精神的側面があ

る。また、患者の置かれている社会的状況が異り、家族や仕事や経済状況などが健康状態

や療養生活に対する認識や考え方に影響を与える。疾患や障害など健康問題の存在や生活

上の具体的な問題が、両者の接点となりお互いに引き合う力となる。患者の訴えに耳を傾

け、接点の面積を拡大する事が関係の深化であり、患者を理解できる部分が多くなり、共

有できるところが増え、より良い援助につなげるという理解を促す必要がある。次に、個々

の人間は物事を感じる度合いに個人差があり、患者の耐性にも個人差がある。疼痛に焦点

を絞って考えてみた場合、患者は生理的側面・精神心理的側面・社会的側面から痛みを訴

えることを学生が理解する必要がある。生理的側面としては、まず有害刺激として痛みの

源泉、つまり元を知らせ警告であり防御反応であり、痛みが生じている原因とそのメカニ

ズムを理解することが大切である。また患者の精神的・身体的苦痛そのものの共有はでき

ないが、その度合いや症状に関する思いを共有する事により、患者の苦痛を緩和する一助

となる援助をする方法を考えるのである。社会的側面は、患者自身の周囲の人々との人間

関係をスムーズに図ることが痛みの軽減にもつながることを理解できるようにする必要が

ある。第3に圧迫による末梢神経障害に関することである。同一体位を長時間にわたって

保持すること、神経や筋を圧迫することにつながる。腹臥位で圧迫される部位を支配する

神経と障害の状況を病態生理学の知識をフィードバックさせて、知識の定着図る。また部

位の圧迫による褥創の好発部位について、解剖学・生理学の知識をフィードバックして予

横隔膜運動

機械的陽圧換気

腹臥位(prone)

換気≒血流

換気≒血流

図3 肺の側面図(腹臥位)

腹臥位(prone)

心臓

重力

換気≒血流

換気≒血流

換気≒血流

換気≒血流

図4 臓器横断面(腹臥位)

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測させるのである。最後に同一体位による弊害である血液の循環障害、筋の萎縮および機

能低下、患者の精神的安楽の妨げについて教授する必要がある。皮膚血流は 2 時間以内で

あれば可逆性といわれており、2 時間を過ぎると非可逆となり、圧迫壊死による影響に回復

は期待できないといわれている。さらに、循環血液量は同一体位を取ることにより各部位

の血流の流れが固定し、血液循環の悪い部位に静脈血栓や褥創、末梢部の浮腫が生じ、皮

膚損傷をきたしやすい。したがって、看護技術として 1 時間 30 分~2 時間以内に確実に体

位を変換することが重要であると教える。また、疾患に関連した疼痛や呼吸困難を恐れて

身体を動かさない場合には、筋の収縮と弛緩が行われず筋繊維の大きさや数が減少して筋

が縮小し、機能の低下をきたす。そこで、対象のマネジメントを行った上でわずかでも筋

の運動をする事が重要である。身体的苦痛は精神的安楽への影響が多大である。一般的に

看護では毛細血管圧が 2 時間で 0 に近づき、1 時間半から 2 時間で体位を変えて限局した部

分の徐圧を図るということが必要である。一方では、仰臥位で 15~20 分で疲労感や疼痛な

どの自覚症状が出現したという報告もある。自分の力や思いで体を自由に動かせない患者

には、患者の状態やニーズに合わせ生活習慣も考慮し、心身共に満ち足りた状況を確保で

きる援助が必要である。このように、看護実践とは、病態生理の知識をいかに看護実践に

パズルのように組み合わせ、様々な形に統合させる上で、重要な土台となるのである。 平成 9 年の医療法改正により『看護職者が医療の担い手』と明示され、看護職者が医療

専門職の責務を明確に問われる立場になった。これを受け日本看護協会が平成 12 年から看

護職にも専門医と同じような認定看護師と専門看護師の研修を開始した。認定看護師とは、

保健師・助産師・看護師のいずれかの免許を有し実務経験 5 年以上(通算 3 年以上は特定

の看護分野)の者が指定の教育機関で 6 ヶ月の教育課程を修了後、資格認定審査に合格し

た者が臨床における看護実践・教育的指導・相談の3つの役割を担う。現在、救急看護、

感染看護、がん疼痛看護・集中ケア・訪問看護など 19 分野が認定されている。専門看護師

(CNS)は、より困難で複雑な健康問題を抱えた人や家族、地域等に対し、より質の高い

看護を提供するために知識や技術を備えた特定の専門分野に卓越した看護実践能力を有す

る看護師である。看護系大学の修士課程の専門の教育課程を修め、認定試験に合格した者

が実践・相談・教育・調整・研究・倫理調整の役割を担う。がん看護・地域看護・慢性疾

患看護・急性重症患者看護・感染症看護など 10 分野が特定されている。さらにナースプラ

クティショナー(NP)とは、米国における RN(registerd nurse 正看護師)の上に位置

付けられ、患者を診察・診断し、処方を含めたオーダーをすることができる看護師の認定

資格である。日本でも、修士課程に NP の養成コースの大学院で修士課程を修了したものが、

医師にのみ認められている治療及び診療録・診断書・処方箋の書類の作成を一定の条件を

満たした場合においてのみ実施可能にするという検討要請が厚生労働省に出されている。

このように多岐にわたる活動が求められる看護職には、よりシステマティックに人間の体

を理解し、病態生理を看護実践に生かすべく知識の獲得が重要なのである。