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論 文
全周囲エッジヒストグラムを用いたセンサの位置・姿勢推定
王 彩華† 棚橋 英樹† 佐藤 雄隆† 平湯 秀和†
丹羽 義典† 山本 和彦††
Location and Pose Estimation for Active Vision Using Panoramic Edge Histograms
Caihua WANG†, Hideki TANAHASHI†, Yutaka SATO†, Hidekazu HIRAYU†,Yoshinori NIWA†, and Kazuhiko YAMAMOTO††
あらまし 本論文は,環境の全周囲情報を取得できるカメラシステム(全方位センサ)で得られた画像を用いてセンサの位置と姿勢をロバストに推定する新しい手法を提案する.本手法は,まず環境中のいくつかの参照点において,全方位センサで得られた画像から全周囲エッジヒストグラムをあらかじめ計算しておく.センサの位置・姿勢を推定する際,動的計画法 (DP)を 2 パス DPに拡張して現位置と参照点の全周囲エッジヒストグラムをマッチングし,各方位角におけるエッジのシフト量を求める.これらのシフト量は sin 曲線と同じ周期性をもち,センサの回転はエッジの全体的なシフト量に,その移動方向は sin 曲線の 0 位相に対応する.本研究では,これらのエッジシフト量から全体のシフト量とその周期の 0 位相を独立に当てはめることによって,センサの移動方向と回転角度を効率的に推定する.最後に,最も近い二つの参照点に対する移動方向からセンサの正確な位置を計算する.実環境での実験により提案手法の有効性を示す.
キーワード 全方位センサ,位置姿勢推定,全周囲エッジヒストグラム,DP マッチング
1. ま え が き
センサの位置と姿勢の推定はロボティクスやコン
ピュータビジョンにおける最も重要な課題の一つであ
る [1], [2].センサを中心とした 360◦ 視野角の情報を
同時に取得できるカメラシステム(全方位センサ)は,
自動監視システムや自律ロボットの位置・姿勢推定な
どに大変有効であり,注目が集まっている.これまで,
いくつかの全方位センサが提案されている [3]~[9].八
木ら [3]~[5]はカメラのレンズの前に球面や円錐また
は双曲面ミラーをマウントし,1台のカメラで 360◦ の
全方位画像を取得できる全方位カメラシステムを提案
した.この種のシステムは構成が簡単な反面,解像度
の低下や空間分解能の不均一といった問題がある.一
方,川西ら [6] は六角錐ミラーと六つのカメラで構成
する全方位カメラシステムを提案した.このシステム
は六角錐のミラーとカメラの配置によって高解像度の
†ソフトピアジャパン地域結集型共同研究推進室/科技団,大垣市HOIP Project, Softopia Japan and JST, 4–1–7 Kagano,
Ogaki-shi, 503–8569 Japan††岐阜大学工学部応用情報学科,岐阜市
Department of Information Science, Faculty of Engineering,
Gifu University, 1–1 Yanagido, Gifu-shi, 501–1193 Japan
単一視点の中心射影全方位画像を作り出すことが可能
である.Ahujaら [7]は更に上下二つの六角錐ミラー
型の全方位システム構成で高解像度の空間全体の画像
の取得を図った.一方,我々は実時間で 360◦ × 180◦
の視野角と均一性のある高解像度の環境のカラー画像
とステレオ情報を同時に取得できる全方向ステレオシ
ステム (SOS)を提案している [8], [9].
全方位画像を用いたロボット位置推定については
様々な手法が提案されている [3], [5], [10]~[19].これ
らの手法は View-based マッチング手法 [10]~[16] と
幾何特徴(またはランドマーク)に基づくマッチン
グ手法 [3], [5], [17]~[19] に分けられる.View-based
マッチング手法は,学習経路上の各位置の全方位画像
から抽出された特徴量をあらかじめ記憶し,センサの
位置を推定するとき,現位置で得られた特徴量と,あ
らかじめ記憶した学習画像の特徴量と比較することに
よって,学習経路にある最も近い位置を求める.Zheng
ら [10], [11]は連続パノラマ表現 (PV)と一般化パノラ
マ表現 (GPV)を用いて学習ルートを記憶し,位置推
定の際に,環状 DPを用いて現在位置と学習ルートの
パノラマ RGBヒストグラムをマッチングすることに
より,大まかな位置を推定してから垂直エッジを対応
1400 電子情報通信学会論文誌 D–II Vol. J86–D–II No. 10 pp. 1400–1410 2003 年 10 月
論文/全周囲エッジヒストグラムを用いたセンサの位置・姿勢推定
づけて位置推定を検証する手法を提案した.Winters
ら [12], [13] は時空間系列画像を固有空間で表し,画
像の固有特徴量と学習画像の固有特徴空間における軌
跡とのマッチングによって,位置推定を行った.西村
ら [14]は Non-monotonic連続 DPを用いて,全方位
画像から抽出した回転不変特徴量の時空間系列をマッ
チングすることによって,ロボットの位置推定を行っ
た.Aihara [15] と岩佐ら [16] は全方位画像の時空間
系列の自己相関画像から回転不変特徴を抽出し,それ
らの特徴量に対してK-L展開で固有空間を構築し,位
置推定する際,画像から固有特徴量を抽出し,固有空
間内で最も接近した学習画像を検索することによって
位置推定を行った.回転不変特徴を用いる手法はセン
サの回転によらず,位置を推定することが可能である
が,その反面,センサの向きを推定するには他の処理
が必要となる.また,これらの View-basedマッチン
グ手法は,現位置が学習した経路上に近いとき精度良
くセンサの位置を推定できるが,経路から離れた場合,
正確な位置推定は難しい.
一方,シーン中のエッジやコーナなどの幾何特徴を
用いてセンサの位置を推定する手法が提案されている.
Yagiら [17] は全方位画像を用いて環境マップとシー
ンの垂直エッジをマッチングし,ロボットの位置を推
定した.李ら [19]はパノラマ表現からステレオと色情
報を用いてランドマークを抽出し,ランドマークを用
いてロボットのナビゲーションを行った.また,時系
列の全方位画像のフレーム間でコーナ追跡 [13]や垂直
エッジマッチング [3], [18]または床のエッジ追跡 [5]で
得られた特徴点の対応付けからセンサの移動パラメー
タ(相対的な位置・姿勢)を推定する手法が提案され
ている.これらの手法は,数少ない特徴点やランド
マークを用いてセンサの位置を推定できるが,特徴点
やランドマークを安定に抽出し,マッチングする必要
がある.
本研究では,全方位センサにより得られた画像の全
周囲エッジヒストグラムを用いてセンサの現在位置と
姿勢(水平回転のみ)を精度良くロバストに推定する.
エッジヒストグラムは一種の統計特徴であるため,個々
のエッジ特徴に比べてより安定であることが期待でき
る.また,本研究では,環境中の疎な参照点の情報に
基づいて,センサの任意の位置・姿勢の推定を行う.
具体的には,まず,あらかじめいくつかの参照点に
おいて,全方位センサで取得した画像からエッジを検
出し,それらのエッジを円筒座標系に写像し,垂直方
向に投影することで全周囲エッジヒストグラムを生成
しておく.センサの位置・姿勢推定を行う際,現位置
で得られた全周囲エッジヒストグラムと各参照点の全
周囲エッジヒストグラムをマッチングし,各方位角で
のエッジシフト量を求める.これらのシフト量は,全
方位オプティカルフローのもつ特性 [20]~[23]と同じ
ように,sin 曲線の周期性をもつ.センサの回転によ
るエッジヒストグラムのシフト量はヒストグラム全体
のシフト量であり,移動方向は,sin 曲線の 0 位相に
対応する.このような連続かつ 2π の周期をもった全
周囲エッジヒストグラムのシフト量を求めるために,
環状 DPマッチング法 [10], [11]が提案されているが,
本研究では,DPを 2パス (two passes) DPに拡張し,
周期性を満たすエッジヒストグラムのマッチングを効
率的に求める.
次に,得られた各方位角のエッジシフト量に対して,
その全体のシフト量と sin 曲線の 0 位相を独立に当て
はめることによって,参照点に対するセンサの移動方
向と回転角度を低コストかつロバストに推定する.最
後に,最も近い二つの参照点に対する移動方向からセ
ンサの正確な位置を計算する.実環境中におけるセン
サの位置・姿勢推定の実験により,提案手法の有効性
及びロバスト性を示す.
2. 全周囲エッジヒストグラムとセンサの移動・回転
室内や市街地などの環境では,垂直方向のエッジが
多く存在し,その分布をシーンの特徴として使うこと
ができる.位置・姿勢の推定には個々のエッジを直接
特徴として用いることができるが,ノイズや視点の
違いによるエッジ抽出の安定性の問題や異なる視点の
エッジのマッチングが困難であるといった問題がある.
本研究では,全方位センサで得られた画像からエッジ
を抽出し,360◦ 円筒画像に射影する.更に,これら
のエッジを垂直方向に投影し,全周囲エッジヒストグ
ラムを生成する.この全周囲エッジヒストグラムを用
いてセンサの位置と姿勢を推定する.図 1 (a)に生成
されたエッジヒストグラムと図 1 (b)にそのパノラマ
エッジ画像の一例を示す.
センサの移動や回転運動は,全周囲エッジヒストグ
ラムのシフトを引き起こす.センサの回転によって生
じたヒストグラムのシフト量はすべての方位角にお
いて一定であるが,センサの平行移動で生じたヒスト
グラムのシフト量は移動方向とエッジの方位角に関係
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電子情報通信学会論文誌 2003/10 Vol. J86–D–II No. 10
(a) Edge histogram.
(b) Panoramic edge image.
図 1 エッジヒストグラムとパノラマ画像の一例Fig. 1 An example of edge histogram and panoramic
edge image.
する.図 2 に示すように,センサが参照点からある
方向 ω に向いて動いたとき,ω ± nπ,n = 0,1 の
方位角においてはヒストグラムのシフト量が小さく,
ω ± (2n+1)2
π, n = 0, 1 の方位角においてはそのヒスト
グラムのシフト量が大きくなる.
このような性質は全方位オプティカルフローを用い
たカメラ運動パラメータの推定 [20]~[23]によく用い
られている.この性質は,疎な参照点を用いる場合に
おいても,現在位置と参照点間の相対移動と回転によ
り生じた円筒画像のエッジのシフトに対して保たれて
いる.
センサが ω 方向に沿う移動距離を l とし,移動し
ながら角度 φ を回転したとする.この場合,ある方位
角 θ に位置するエッジピクセルの円筒画像におけるシ
フト量は次の式で決まる.
δθ =
arccos
(dθ cos(θ)−l cos(ω)√
d2θ + l2 − 2dθl cos(θ − ω)
)
−θ + φ, if dθ sin(θ) − l sin(ω) >= 0
2π−arccos
(dθ cos(θ)−l cos(ω)√
d2θ+l2−2dθl cos(θ−ω)
)
−θ + φ, otherwise(1)
ここで,dθ は方位角 θ に位置するエッジの 3次元の
奥行(センサ中心までの距離)である.実際には,多
くの場合同じ方位にあるエッジは異なる奥行をもって
いるため,式 (1)は理想的な場合(同じ方位のエッジ
は同一奥行をもつ場合)だけを表している.
センサの現位置の全周囲エッジヒストグラムと各参
図 2 センサの平行移動によるエッジヒストグラムのシフト
Fig. 2 Shifts of edge histogram caused by sensor
movement.
図 3 異なる空間のヒストグラムのシフトと sin 曲線(横軸と縦軸の単位は度)
Fig. 3 Shifts of edge histograms in cylindrical and
rectangular rooms, compared with the sin
curve (the unit for both axes is degree).
照点の全周囲エッジヒストグラムをマッチングし,各
方位角におけるヒストグラムのシフト量 δθ を求め,
式 (1)を用いて参照点に対する移動方向 ω と移動距離
l 及び回転角度 φ を推定することが考えられる.しか
し,そのためには各方位のエッジピクセルの奥行情報
が必要である.エッジの奥行を求めるにはステレオ画
像間でエッジマッチングを行う必要があり,それはコ
ンピュータビジョン分野における最も難しい課題の一
つである.
式 (1) はエッジの奥行に影響されるが,sin 曲線で
近似することができる(付録参照).また,式 (1) は
sin 曲線と同じように 2π の周期をもち,更に,式 (1)
からエッジヒストグラムの全体シフト量 φ を除けば,
その符号は π 周期ごとに反転することがわかる.図 3
はセンサが半径 2mの円柱形状の部屋と 4m× 4m の
正方形状の部屋で 30 cm動いた場合のエッジヒストグ
ラムのシフト量をそれぞれ式 (1)から計算した曲線で
示す.図 3 からセンサの移動によって生じたエッジヒ
ストグラムのシフト量が sin 曲線の周期性をもってい
ることがわかる.そこで本研究では,式 (1)が π の周
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論文/全周囲エッジヒストグラムを用いたセンサの位置・姿勢推定
期でエッジヒストグラムの全体シフト量を中心に上下
反転する特徴を利用して,全周囲エッジヒストグラム
のシフト量からセンサの移動方向 ω と回転角度 φ を
簡単かつロバストに推定する.なお,複数の参照点か
ら移動方向が求めることができれば,センサの正確な
位置推定も可能である.これらについては 3.と 4.で
その詳細について述べる.
3. DPを用いたエッジヒストグラムのマッチング
前章で述べたように,各参照点に対するセンサの移
動方向と回転角度を求めるには,現位置の全周囲エッ
ジヒストグラムと参照点の全方位ヒストグラムをマッ
チングし,それぞれの方位角におけるヒストグラムの
シフト量を求めればよい.本章では,動的計画法 (DP)
を用いて,二つの全周囲エッジヒストグラムを効率的
にマッチングする手法について述べる.
3. 1 問題の定義
参照点と現位置の全周囲エッジヒストグラムをそ
れぞれ Hr = {hr(i), i = 0 · · · , N − 1} と Hc =
{hc(j), j = 0, · · · , N − 1} とする.N は 360 の倍数
であり,エッジヒストグラムを生成するときの方位角
の分解能で決まる.本研究では,N = 720 とした.つ
まり,エッジヒストグラムの方位角分解能は 0.5◦ であ
る.参照点の全周囲エッジヒストグラム Hr の一つの
ピン hr(i) は,センサの移動と回転によって現在の位
置のヒストグラム Hc においてシフト量 si が生じた
とき,hr(i) と hc(i + si) は似ていると仮定すること
ができる.hr(i) と hc(i + si) との差の 2 乗を hr(i)
と hc(i + si) の間のマッチングコストとすれば,次の
マッチングコストマトリックス C(s, i) が得られる.
C(s, i) = (hr(i) − hc(i + s))2 (2)
ただし i, s = 0, · · · , N − 1
ここで,全周囲エッジヒストグラムが 2π の周期をも
つため,i+ s >= N の場合,hc(i+ s) ≡ hc(i+ s−N)
とする.
{(hr(i), hc(i+si)), i = 0, · · · , N −1} が正しいマッチングである場合,それらのマッチングペアはマト
リックス C(s, i) の中でコストが低くかつ式 (1) の形
をした曲線をなす.図 4 はセンサの二つの位置におけ
る全周囲エッジヒストグラムのマッチングコストマト
リックス C(s, i) を示す(表示上,マトリックス中の
マッチングコストの低いパスをセンタリングし上下を
図 4 エッジヒストグラムのマッチングコストFig. 4 Matrix of matching costs of edge histograms.
カットした).C(s, i) の中の sin 曲線に似たコストの
低い曲線は各方位角におけるエッジヒストグラムのシ
フトに対応する.
C(s, i) の中の sin 曲線に似たコストの低い曲線を
探索することで,Hr と Hc の間のヒストグラムのシ
フト量を求めることができる.厳密にいえば,C(s, i)
から式 (1)を満たしかつコストの和を最小となる曲線
経路(パス)を探索する必要があるが,式 (1)中の dθ
(エッジの奥行)が未知であり,また,効率的な探索
手法がないため,計算コストが高くなる.そこで本研
究では,動的計画法 (DP)を用いて,C(s, i) から周期
2π をもちかつ連続した最小コストのパスを求め,そ
のパスからロバストに回転角度 φ と移動方向 ω を推
定する手法を考案する.更に,そのパスを sin 曲線で
近似したときの振幅も推定する.
C(s, i) から周期 2π をもちかつ連続した最小コスト
のパスを探索することは,次の条件付き最小化問題に
帰着することができる.
N−1∑i=0
(hr(i) − hc(i + si))2
=
N∑i=0
C(si, i) −→ min (3)
ただし− g <= si+1 − si <= g, i = 0, · · · , N − 1
ここで,si は求めたいヒストグラムのシフト量である.
hr(i)と hc(j)の周期が N であるため,C(s, i)のイン
デックス s と i に関しては,s±N → s と i±N → i
で計算される.拘束条件 −g <= si+1 − si <= g はマッ
チングの連続性を保障する条件である.g は得られる
sin 曲線のこう配の許容範囲であり,本研究では g = 1
とした.つまり,sin の振幅を 45◦ までに制限した.
参照点と現在位置は大きく離れている場合,この条件
を満たさない場合があるが,一般的な場合,ある程度
の数の参照点があれば,上の条件を満たす複数個の参
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電子情報通信学会論文誌 2003/10 Vol. J86–D–II No. 10
照点が存在する.
パスが特定の行 k から始まる(つまり,s0 = k)と
仮定した場合,式 (3)の最小化は次のように動的計画
法で求めることができる.
S(s, i) =min{S(s − 1, i − 1), S(s, i − 1),
S(s + 1, i − 1)} + C(s, i) (4)
S(s,−1) =
{0 if s = k
∞ otherwise(5)
Cmin(k)= min{S(k − 1, N − 1), S(k, N − 1),
S(k + 1,N − 1)} (6)
上の計算は i = 0, · · · , N −1 の順で行い,S(s, i) を
計算するとき,min{S(s− 1, i− 1), S(s, i− 1), S(s +
1, i − 1)} の中のどれが最小になったかを記憶しておき,Cmin(k) まで来たパスを逆にたどれば,最小コス
トのパスが得られる.
k = 0, · · · , N −1 に対して,上のように Cmin(k)を
計算し,その中で最小値 Cmin = Cmin(k) を求める.
Cmin(k) が対応しているパスを Hr と Hc の間の最適
マッチングとする.
3. 2 効率的な探索手法
前節の計算方法は,2π の周期をもちかつ連続性の
ある全周囲エッジヒストグラムのマッチングパスを探
索することができるが,パスの始まる行をすべての
k = 0, · · · , N − 1 に仮定して探索を行う必要があるた
め,計算コストが大きい.式 (3)の最小化の条件から,
パスが閉じている条件 −1 <= s0−sN−1 <= 1 を除けば,
普通の DPマッチングで最小コストパスを効率的に探
索することができる.本研究では,i = 0 → i = N −1
の順とその逆順で DPマッチングを行い,二つの探索
手順で得られたマッチングパスから式 (3)の条件を満
たしかつコストが最小になるパスを探索する手法を提
案する.
まず,式 (7)と (8)のように普通の DPマッチング
で,i = 0 → i = N − 1 順のヒストグラムのマッチン
グパスを計算する.
Ss(s, i) =min{Ss(s − 1, i − 1), Ss(s, i − 1),
Ss(s + 1, i − 1)} + C(s, i) (7)
Is(s, i) = Is(s, i − 1) (8)
ただし,Ss(s,−1) = 0,Is(s,−1) = s.s は
min{Ss(s − 1, i − 1), Ss(s, i − 1), Ss(s + 1, i − 1)}に対応する s の値である.Is(s, i) は現パスのスター
ト行を記憶する.
同様に,i = N − 1 → i = 0 順のヒストグラムの
マッチングパスは次の式で計算される.
Sr(s, i) =min{Sr(s − 1, i + 1), Sr(s, i + 1),
Sr(s + 1, i + 1)} + C(s, i) (9)
Is(s, i) = Is(s, i + 1) (10)
ただし,Ss(s, N) = 0,Is(s,N) = s.s は
min{Sr(s − 1, i + 1), Sr(s, i + 1), Sr(s + 1, i + 1)}に対応する s の値である.
上の 2通りの DPマッチングパスから次のように式
(3)の条件を満たす最小コストマッチングパスを求め
ることができる.
Ss(s, i) + Sr(s, i) − C(s, i) −→ min (11)
ただし − 1 <= Is(s, i) − Ir(s, i) <= 1
Ss(s, i) と Sr(s, i) が式 (11)を最小化した場合,前
節で述べたように Ss(s, i) と Sr(s, i) から,それぞれ
Ss(s, 0) と Sr(s, N − 1) までのマッチングパスをたど
れば最小コストのマッチングパスが得られる.
前節で述べた全探索手法は,N 回の DP マッチン
グが必要となる.これに対し,本手法では 2回の DP
マッチングと 1回の最小値探索のみで,2π の周期をも
ちかつ連続性のあるエッジヒストグラムのマッチング
パスを効率良く探索することができる.しかしこの方
法では,現位置と参照点の距離が大きい場合,Ss(s, i)
と Sr(s, i) の中に式 (11) の条件を満たすパスが必ず
しも存在しないことがある.次章で述べるように,セ
ンサの位置と姿勢を推定する際,センサに最も近いと
考えられる二つの参照点を選び,それに対するセンサ
の相対的な移動方向と回転角度を用いてセンサの位置
と姿勢を推定している.式 (11) の条件を満たすパス
が存在しない場合,その参照点を選択対象から除外し,
残った参照点から最も近い二つを選択すればよい.実
験では,3.7 m × 3.7 m のパーティションで区切られ
た閉空間において,本章で述べた効率的なマッチング
手法は 1m以上離れた 2点の全周囲エッジヒストグラ
ムを正しくマッチングできることがわかっている.ま
た,それより広い空間ではエッジの奥行がエッジヒス
トグラムのシフト量に与える影響が小さくなるため,
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論文/全周囲エッジヒストグラムを用いたセンサの位置・姿勢推定
参照点までの距離がある程度大きくても本手法は有効
であると考えられる.つまり,空間の広さに応じて参
照点を必要な密度で設置することで,本章で提案した
効率的なマッチング手法が有効となる.
4. センサの位置と姿勢の推定
2.で述べたように,センサの現位置と参照点の全周
囲エッジヒストグラムのシフト量から参照点に対する
センサの移動方向と回転角度を推定することができる.
2点以上の参照点に対する移動方向がわかれば,セン
サの正確な位置を推定することができる.
4. 1 センサの回転の推定
DP マッチングで得られた最小コストパス si, (i =
0, · · · , N − 1) はセンサの現位置と参照点のそれぞれ
の全周囲エッジヒストグラム Hc と Hr の間のシフト
量を表す.式 (1)で示したように,これらのシフト量
はセンサの回転角度 φ で生じたヒストグラム全体のシ
フト量と移動方向 ω における平行移動で生じた各方
位角でのシフト量からなる.式 (1)からわかるように,
ヒストグラムのシフト量は回転角度 φ に相当するシ
フト量 sφ を中心に π 周期で上下反転することがわか
る.したがって,sφ は次の式で推定することができる.
sφ = min
{k
∣∣∣∣∣N−1∑i=0
b(si, k) >=N
2
}(12)
b(si, k) =
{1 if si <= k
0 otherwise(13)
つまり,sφ がエッジヒストグラムのシフト量 si(i =
0, · · · , N − 1) を上下 2等分に分けることになる.
4. 2 センサ移動方向の推定
式 (1)からわかるように,全周囲エッジヒストグラ
ムマッチングで得られたエッジヒストグラムのシフト
量から全体シフト量 φ を除けば,センサの移動による
エッジヒストグラムのシフト量 s′i が得られる.s′i を
sin 曲線で近似することができるが,図 3 に示したよ
うに,これらのシフト量はエッジの奥行に影響される.
ここで,我々は s′i が sin 曲線の周期性を保っている
ことを利用して,センサの移動方向 ω をロバストに
推定する手法を提案する.
s′i はエッジの奥行の影響で sin 曲線からずれるが,
(ω,ω + π) の区間では正の値を,(ω + π,ω + 2π) の
区間では負の値をもっていると仮定することができる.
したがって,s′i の符号を用いて sin 曲線をロバストに
当てはめることができる.ここで,sφ によって si を
−1,0,1 の三つの値に変換し,−1 と 1 の値に対応
する si の中心がそれぞれなるべく sin 曲線の負と正
のピークに対応するように ω を決める.これは次の
最大化問題になる.
N−1∑i=0
f(si, sφ) sin(
2πi
N+ ω)−→ max (14)
f(si, sφ) =
−1 if si < sφ − 1
1 if si > sφ + 1
0 otherwise
(15)
ここで,sφ と sφ ± 1 を 0 にすることによって,si を
−1,0,1 に変換するときのノイズの影響を軽減する
ことができる.
式 (14) の左辺の微分を 0 とすれば,次の方程式が
得られる.
N−1∑i=0
f(si, sφ)(cos
2πi
Ncos ω
− sin2πi
Nsin ω
)= 0 (16)
上の式から次のように ω を直接求めることができる.
ω = arctan
∑N−1
i=0f(si, sφ) cos(2πi/N)∑N−1
i=0f(si, sφ) sin(2πi/N)
(17)
式 (17)は式 (14)の最大化のみならず,最小化も含ん
でいる.tan ω の周期が π であるから,ω または ω+π
のどちらかが式 (14)を最大化することがわかる.
なお,式 (1)を sin 曲線で近似したときの振幅 a は
次の式で推定することができる.a は参照点からの移
動距離に比例する.
a =
∑N−1
i=0sin(2πi/N)(si − sφ)∑N−1
i=0sin2(2πi/N)
(18)
4. 3 センサ位置の推定
前節の手法により,参照点に対するセンサの回転角
度や移動方向と移動距離に比例するマッチングパスの
振幅 a を推定することができる.しかし,a にはエッ
ジの奥行の影響も含んでおり,また,参照点からのセ
ンサの移動距離の相対値しか表していない.したがっ
て,一つの参照点だけではセンサの正確な位置を推定
するのは難しい.そのため,センサの現位置に最も近
い二つの参照点を用いて,図 5 のように二つの参照点
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電子情報通信学会論文誌 2003/10 Vol. J86–D–II No. 10
に対する移動方向 ω1 と ω2 の交点を求め,センサの
正確の位置を推定する.
前節で得られた現位置と参照点間のエッジヒストグ
ラムの最適マッチングパスの振幅 a は現位置と参照
点間の距離に比例しているため,最も近い参照点の選
択基準として使うことができる.一方,センサの現位
置と参照点が近ければ近いほどその全周囲エッジヒス
トグラムが似ているため,3.で述べた DPマッチング
で得られた最適マッチングのコストを用いて最も近い
参照点を決めることも考えられる.多くの場合,最適
マッチングのコストとパスの振幅 a は同じ大小関係を
保つが,エッジの奥行や視点によって生じた隠れの影
響が強いとき,それらの大小関係が逆になる場合もあ
る.高い類似度のエッジヒストグラムマッチングを用
いれば,より安定的にセンサの参照点に対する回転角
度と移動方向を推定できることから,本研究では最適
マッチングのコストを用いて最も近い参照点を決める.
求めたいセンサの現位置を Pc(x, y) とし,現位
置から最も近い二つの参照点を P1 = (x1, y1) と
P2 = (x2, y2) とする.P1 と P2 からの移動方向 ω1
と ω2 のベクトルをそれぞれ v1 と v2,現位置との
エッジヒストグラム最適マッチングパスの振幅をそれ
ぞれ a1 と a2 とする.一般的に,次の二つの連立方程
式からセンサの現位置 (x, y) を求めることができる.
(x − xi) cos(ωi) + (y − yi) sin(ωi) = 0 (19)
ただし i = 1, 2
しかし,Pc,P1 と P2 がほぼ同一直線上にある場合,
つまり,� (−−−→P1P2, v1) 及び � (
−−−→P2P1, v2) が小さいとき,
上記の方法では移動方向の推定誤差がセンサの位置推
定に大きな誤差を及ぼす.本研究では, � (−−−→P1P2, v1)
及び � (−−−→P2P1, v2) が 30◦ より小さいとき,次のよう
に a1 と a2 を用いてセンサの位置を推定する.
x =(a1 cos(ω1) + a2 cos(ω2))d
g1a1 + g2a2(20)
図 5 センサの正確な位置推定Fig. 5 Estimation of actual location of sensor.
y =(a1 sin(ω1) + a2 sin(ω2))d
g1a1 + g2a2(21)
ここで,d は P1 と P2 間の距離で,g1 と g2 は次の
ように計算される.
gi =
{−1 if
−−→PiPj · vi < 0
1 otherwise(22)
ここでは,i, j = 1, 2 かつ j = i.· は二つのベクトルの内積演算である.
5. 実 験 結 果
本提案手法の有効性を示すため,実環境において全
方向ステレオシステム (SOS)を用いて実験を行った.
SOSは正二十面体の面上にマウントされた 20個のス
テレオユニットから構成され,実時間で 360◦ × 180◦
の視野角の均一性のある高解像度カラー画像とステレ
オ情報を同時に取得することができる [8], [9].本研究
では本提案手法を検証するために SOSの全方向画像
から生成した 360◦ × ±45◦ の視野角の全方位画像を
用いた.図 6 (a) は SOS で取得した実験環境の全方
向画像から生成した全天周画像を示す.図 6 (b)は本
研究で用いた全方位画像を示す.参照点の相対的な位
置関係の決定や推定した位置・姿勢の評価のために,
SOSの真の位置・姿勢を正確に求める必要がある.そ
こで,床にあるエッジのパターンを利用した.
全周囲エッジヒストグラムを生成するには,まず,
(a) Panoramic image of the experimental environment.
(b) Field of view used in the experiment.
図 6 実験環境の全方位画像Fig. 6 Panoramic images of the experiment environ-
ment.
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論文/全周囲エッジヒストグラムを用いたセンサの位置・姿勢推定
図 7 参照点間の位置姿勢関係Fig. 7 Relative location and pose between reference
points.
SOSの各ステレオユニットのセンタカメラの画像に対
して,LoG (Laplasian of Gaussian)フィルタを適用
し,ゼロクロス点をエッジとして検出する.LoGはノ
イズに影響されやすいため,ノイズや照明の影響で偽
のエッジが多く存在する.そこで,Sobel フィルタを
用いて各エッジ画素におけるエッジこう配(強度)を
計算し,画像中の最大エッジこう配を求め,強度が最
大エッジこう配値の 5%未満のエッジ画素を削除する.
得られたエッジ画像を更に円筒画像に写像し,縦方向
投影で全周囲エッジヒストグラムを生成する.
実験は約 3.7 m × 3.7 m の空間で行った.まず,空
間の中心の 1点とその左上,右上,左下と右下の 4点
計 5点を参照点として選び,それぞれの参照点で全周
囲エッジヒストグラムを取得する.次に,中心の参照
点における SOS の座標系を基準座標系として,提案
手法で周囲の 4参照点に対し,まず中心の参照点に対
する SOS の移動方向と回転角度を推定し,それに基
づいて SOS で得られた床のエッジ画像のテンプレー
トマッチングで中心の参照点に対する周囲の 4参照点
における SOS の相対位置と回転角度を求める.図 7
に求めた参照点の間の相対位置姿勢を示す.図 7 中の
十字マークは各参照点における SOS の位置と向きを
示す.黒と灰色のエッジは左上と中心の参照点におけ
る床のエッジをそれらの参照点間の相対位置姿勢パラ
メータに基づいて基準座標系に統合した結果を示す.
SOSの位置推定を行うため,まず SOSを空間内で
動かし,各フレームに対して全周囲エッジヒストグラ
ムを求める.次に,本提案手法で各参照点のエッジヒ
ストグラムとマッチングし,マッチングコストが最も
(a) Current location.
(b) Closest reference point.
図 8 全周囲エッジ画像とそのヒストグラムFig. 8 Panoramic edge images and their edge
histograms.
小さい二つの参照点を現位置に最も近い二つの参照点
とみなす.最後に,4.で述べた手法で SOSと二つの
参照点間の相対回転角度と移動方向を求め,SOS の
正確な位置を推定する.最も近い二つの参照点に対す
る回転角度を基準座標系に対する回転角度に変換し,
変換後の二つの回転角度の平均値を SOS の姿勢とす
る.図 8 に SOSのある現位置とそれに最も近い参照
点の全周囲エッジ画像とそのエッジヒストグラムを示
す.図 9 と図 10 にそれぞれ現位置とそれに最も近い
参照点と 2番目に近い参照点の全周囲エッジヒストグ
ラムのマッチング結果及び移動方向と回転角度の推定
結果を示す.図 9 及び図 10 の画像の各画素の濃淡値
は 3.1で定義した C(s, i) の値を示す.ただし,表示
のためセンタリング及び上下のカットを行った.白色
の曲線は DPマッチングで得られた最小コストマッチ
ングパスを示す.赤色の曲線と緑色の直線はそれぞれ
移動方向と回転角度の当てはめ結果を示す.図 11 に
二つの参照点を用いて推定した SOSの位置と姿勢を
示す.赤色のエッジは基準(中心)参照点における床
のエッジを示し,青色のエッジは現位置の SOS の位
置と姿勢に基づき基準座標系に変換した床のエッジを
示す.
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電子情報通信学会論文誌 2003/10 Vol. J86–D–II No. 10
図 9 エッジヒストグラムマッチングと回転・移動推定結果(現位置と最も近い参照点)
Fig. 9 Results of edge histogram matching and es-
timation of rotation and movement direction
(current location and closest reference point).
図 10 エッジヒストグラムマッチングと回転・移動推定結果(現位置と 2 番目に近い参照点)
Fig. 10 Results of edge histogram matching and es-
timation of rotation and movement direction
(current location and secondary closest ref-
erence point).
図 11 SOS の位置・姿勢の推定結果Fig. 11 Results of location and pose estimation of
SOS.
本研究では,3.2で述べた効率的なマッチング手法
を用いているため,3.1に説明した全探索手法に比べ
れば計算コストがはるかに小さい.例えば,実験のよ
うに分解能 0.5◦ の全周囲エッジヒストグラムを用いて
いる場合,全探索の手法では,探索範囲を 180(±45◦)
に制限することができるが,720回の DP探索を行う
必要がある.それに対して,提案した 2パスDPでは,
探索範囲は 720(±180◦) であるが,2回の DPと 1回
の最小値探索しか行わず,計算量は全探索に比べて約
1/60 程度となる.
本手法で推定した SOSの位置・姿勢を評価するた
め,床のエッジのテンプレートマッチングによって得
図 12 推定結果(赤色)と “真” の値(青色)の比較Fig. 12 Comparison of estimated locations and poses
of SOS (red lines) and “true” values (blue
lines).
図 13 位置・姿勢推定誤差の分布(横軸はフレーム番号)Fig. 13 Distribution of errors of location and pose
estimations (horizontal axis: frame number).
られた位置・姿勢を SOS の “真” の位置・姿勢とし
て扱う.図 12 は本手法で推定した SOS の位置・姿
勢(赤色の十字)と “真”の値(青色の十字)を示す.
十字における長い線の方向は SOS の姿勢(向き)を
示す.45 フレームにおける位置推定の誤差の平均は
2.43 cmで,標準分散は 0.70であった.回転角度推定
の誤差の絶対値の平均値は 0.39◦ で,その標準分散は
0.15 であった.図 13 に 45フレームにおける位置と
姿勢推定の誤差の分布を示す.
6. む す び
全周囲エッジヒストグラムを用いて全方位センサの
位置・姿勢(水平回転)を精度良くロバストに推定す
る手法を提案した.本手法は,いくつかの参照点とセ
ンサの現位置で得られた全周囲エッジヒストグラムに
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論文/全周囲エッジヒストグラムを用いたセンサの位置・姿勢推定
対して,2パス DPマッチング手法で参照点と現位置
のエッジヒストグラムのマッチングコストマトリック
スから “閉じた”最小コストマッチングパスを探索し,
このマッチングパスからセンサの回転角度及び参照点
からの移動方向をロバストに推定した.最も近い二つ
の参照点に対するセンサの移動方向を用いてセンサの
正確な位置を求めた.実環境における全方向ステレオ
システム (SOS) で得られた全方位画像を用いてセン
サの位置・姿勢を推定を行い,その実験結果によって
本提案手法の有効性及びロバスト性を示した.
今回の実験では,水平面に対する傾きが大きく変化
しない条件で,全方位画像からセンサの位置・姿勢を
求めたが,傾きが大きく変化する場合は,画像以外の
姿勢センサ等との組合せが必要となる.しかしながら,
SOSは全天周視野角をほぼ均一に高解像度で同時にカ
バーする性質をもっているため,どんな姿勢であって
もシーンから同じ情報が得られる.今後,SOSの全天
周特性を生かしたセンサの任意の位置・姿勢の推定を
行う予定である.
謝辞 本研究を進めるにあたり御指導を頂きました
名古屋工業大学佐藤淳助教授に感謝致します.
文 献
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付 録
センサの回転がなく,ω 方向に距離 l を移動した場
合を考える.シーンにある 3次元エッジ点 Pの水平面
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電子情報通信学会論文誌 2003/10 Vol. J86–D–II No. 10
における 2 次元座標は (dθ cos(θ), dθ sin(θ)) となる.
dθ は Pのセンサからの奥行である.センサ移動後の
Pの座標は (dθ cos(θ)− l cos(ω), dθ sin(θ)− l sin(ω))
になるため,移動後の Pの方位角 θ′ は次の式から得
られる.
cos(θ′) =dθ cos(θ) − l cos(ω)√
d2θ + l2 − 2dθl cos(θ − ω)
(A·1)
sin(θ′) =dθ sin(θ) − l sin(ω)√
d2θ + l2 − 2dθl cos(θ − ω)
(A·2)
上の式から式 (1)が導出される.一方,センサの移動
によって生じた 3 次元点 P の方位角の変化量 δθ の
sin値は次のようになる.
sin(δθ) = sin(θ′ − θ)
= sin(θ′) cos(θ) − cos(θ′) sin(θ)
=dθ sin(θ) − l sin(ω)
d′θ
cos(θ)
−dθ cos(θ) − l cos(ω)
d′θ
sin(θ)
=l
d′θ
sin(θ − ω) (A·3)
ただし,d′θ =
√d2
θ + l2 − 2dθl cos(θ − ω).
一般的に,δθ が小さいため,sin(δθ) を δθ で近似
できる.上の式から,δθ はセンサの移動距離に正比例
し,sin 曲線の特性をもつことがわかる.
センサが回転しながら水平移動した場合,回転角度
φ はエッジヒストグラムのシフト量の全体のオフセッ
トとなり,上に述べた sin 曲線の周期性は変わらない.(平成 14 年 9 月 9 日受付,15 年 2 月 15 日再受付)
王 彩華
1983 中国人民大学情報工卒.1986 同大修士課程了.同大コンピュータセンター助手.1988 講師.1996 静岡大電子科学研究科博士課程了.同年科技団特別研究員として電総研で研究に従事.現在(財)ソフトピアジャパン地域結集型共同研究推進室
(HOIP) 主任専門研究員.工博.画像マッチング,ステレオ画像処理,3 次元モデリングの研究に従事.情報処理学会会員.
棚橋 英樹 (正員)
1985岐阜大・電子工卒.同年岐阜県(工業技術センター)入庁.1998岐阜大学工学研究科博士課程了.現在(財)ソフトピアジャパン地域結集型共同研究推進室 (HOIP)主任専門研究員.工博.コンピュータビジョン,特に画像からの 3 次元形状再構成とそ
の応用研究に従事.人工知能学会会員.
佐藤 雄隆
1996東京農工大・工・電子情報卒.1998
同大大学院博士前期課程了.2001 北大・工・システム情報工学博士後期課程了.現在(財)ソフトピアジャパン地域結集型共同研究推進室 (HOIP)主任専門研究員.工博.精密工学会,映像情報メディア学会各
会員.
平湯 秀和 (正員)
1993岐阜大・電子情報卒.同年三菱重工業(株)入社.1996 岐阜県入庁.2002 岐阜大学工学研究科博士課程了.現在(財)ソフトピアジャパン地域結集型共同研究推進室 (HOIP)主任専門研究員.工博.バーチャルリアリティ,コンピュータビジョン,
特に距離画像からの 3 次元形状再構成に関する研究に従事.日本 VR 学会会員.
丹羽 義典 (正員)
1974 名大・工卒.同年岩崎通信機(株)入社.1978岐阜県(金属試験場)入庁.現在(財)ソフトピアジャパン地域結集型共同研究推進室長.主に画像認識,CAD/CAM
関連の研究に従事.情報処理学会,映像情報メディア学会,IEEE 各会員.
山本 和彦 (正員)
1971 東京電機大学大学院修士課程了.同年電子技術総合研究所入所.手書き文字認識の研究に従事.1979~1980 米国メリーランド大学コンピュータビジョン研究所で並列分散形処理による画像理解の研究.1986~1994 電子技術総合研究所知能情報
部画像研究室室長.現在岐阜大学工学部応用情報学科教授.人工知能,パターン認識,特に図形の柔軟な対応付けの研究に従事.工博.電気学会,情報処理学会,IEEE 各会員.IAPR
フェロー.
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