システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効...

12
実践論文 サービソロジー 論文誌 312019 1 システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効性検証 - 価値共創フレームワークと基本活用プロセスの開発と適用 - 富田 欣和 1* 1 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 * Corresponding Author: [email protected] Abstract Providing value to customers is important when designing services. It can be argued not only from the productivity viewpoint but also from the efficiency viewpoint. However, it was difficult to design a service to realize these two at the same time. Therefore, in this research, we developed the value co - creation framework and the basic process to improve efficiency and value - added for improving service productivity by applying the Systems Engineering methodology. In creating this framework, we integrated two heterogeneous methodologies. One is systems engineering as a top-down approach, and the other is participatory system analysis as a bottom-up approach. The framework consists of three layers: its purpose, methodology, and methodWe applied the developed framework and the basic process to a new service design at company A, an IT trading company and conducted validation. The result showed that 89% of the evaluators answered that the created service was effective. Keywords Co-creation Value, Service productivity, Systems engineering, Participatory system analysis, Framework 1 はじめに 日本の成長戦略にとって,新しい事業領域の創出と 成長は不可欠である.特に,GDP7割を占めるサー ビス産業の活性化は重点的に取り組むべき課題である (日本経済再生本部 2016).今日のように事業環境の不 確実性が高まっているサービス産業においては,産業 活性化には「自前主義」を脱したオープンイノベーシ ョンの推進が不可欠である(Chesbrough 2006).つま り,様々なステークホルダーと共に価値共創をするこ との重要性が高まっていると言える(Lusch 2008)価値創出についてはサービスドミナントロジックの 浸透による価値共創概念の浸透(Lusch 2008)と共に, デザイン思考や対話を活用した共創手法の発展によ り,多くのステークホルダーと価値を共創するため知 識の体系化が進んでいると言える(Kelley et al. 2013)しかし,サービスを生産性という視点から見たと き,付加価値の向上だけではなく効率という観点から も議論することが,顧客への価値提供を考える上でも 重要になる(前川ら 2013)そこで,生産性の問題を付加価値創出と効率の2に分けて考えると,付加価値創出において,企業はサ ービスを作り上げるための要素技術や知見は持ってい るが,それらを統合して受益者にとって価値のあるサ ービスとしてソリューション構築をすることが出来て いない(経済産業省 2017).その解決策として,サービ スの設計を外部プロフェッショナルに依頼することも 可能ではある.しかし,サービスは設計プロセス自体 が価値創出のノウハウとなるため,ノウハウの流出に より自社が将来的に生み出す付加価値を損なうリスク を勘案すると,安易なアウトソーシングは行えない (竹野 2014)また,効率の観点から考えると,サービスイノベー ションのための最適設計ループを駆動していく必要性 ( 本村ら 2008) と共に,サービス設計そのものについ て,サービス設計者とサービス受益者によるコミュニ ティ参加型のアプローチが求められている( 村松ら 2011)しかし,一般的な最適設計ループはサービス 設計者とサービス受益者を別個の存在として捉えてお り,サービス設計の専門家ではないサービス受益者が サービス設計に関与することは容易ではない.また, サービスは周辺環境の影響を大きく受け,求められる サービス内容や適切な提供タイミングなどが動的に変 化する.そして,その状況を理解し改善するための情 報共有と合意形成に,多くのコストが割かれることに なる. つまり,企業が価値共創を指向した時に,そのため の要素技術を保有しており,また共創のための手法も 習得し,ステークホルダーも協力的であるにもかかわ らず,全体としてのサービス生産性が向上しないこと となる. そこで筆者らは,システムズエンジニアリング方法 論を適用し,サービス設計プロセスにおいて受益者と の協働による価値創出を行うため,参加型システム分 析を活用した価値共創フレームワークを開発した.こ れにより,サービス設計者は設計の効率性とユーザー

Upload: others

Post on 23-May-2020

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

実践論文 サービソロジー 論文誌 3巻1号 2019

1

システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効性検証

- 価値共創フレームワークと基本活用プロセスの開発と適用 -

富田 欣和1*

1 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 * Corresponding Author: [email protected] Abstract Providing value to customers is important when designing services. It can be argued not only from the productivity viewpoint but also from the efficiency viewpoint. However, it was difficult to design a service to realize these two at the same time. Therefore, in this research, we developed the value co - creation framework and the basic process to improve efficiency and value - added for improving service productivity by applying the Systems Engineering methodology. In creating this framework, we integrated two heterogeneous methodologies. One is systems engineering as a top-down approach, and the other is participatory system analysis as a bottom-up approach. The framework consists of three layers: its purpose, methodology, and method.We applied the developed framework and the basic process to a new service design at company A, an IT trading company and conducted validation. The result showed that 89% of the evaluators answered that the created service was effective. Keywords Co-creation Value, Service productivity, Systems engineering, Participatory system analysis, Framework 1 はじめに

日本の成長戦略にとって,新しい事業領域の創出と

成長は不可欠である.特に,GDPの7割を占めるサー

ビス産業の活性化は重点的に取り組むべき課題である

(日本経済再生本部 2016).今日のように事業環境の不

確実性が高まっているサービス産業においては,産業

活性化には「自前主義」を脱したオープンイノベーシ

ョンの推進が不可欠である(Chesbrough 2006).つま

り,様々なステークホルダーと共に価値共創をするこ

との重要性が高まっていると言える(Lusch 2008). 価値創出についてはサービスドミナントロジックの

浸透による価値共創概念の浸透(Lusch 2008)と共に,

デザイン思考や対話を活用した共創手法の発展によ

り,多くのステークホルダーと価値を共創するため知

識の体系化が進んでいると言える(Kelley et al. 2013). しかし,サービスを生産性という視点から見たと

き,付加価値の向上だけではなく効率という観点から

も議論することが,顧客への価値提供を考える上でも

重要になる(前川ら 2013). そこで,生産性の問題を付加価値創出と効率の2つ

に分けて考えると,付加価値創出において,企業はサ

ービスを作り上げるための要素技術や知見は持ってい

るが,それらを統合して受益者にとって価値のあるサ

ービスとしてソリューション構築をすることが出来て

いない(経済産業省 2017).その解決策として,サービ

スの設計を外部プロフェッショナルに依頼することも

可能ではある.しかし,サービスは設計プロセス自体

が価値創出のノウハウとなるため,ノウハウの流出に

より自社が将来的に生み出す付加価値を損なうリスク

を勘案すると,安易なアウトソーシングは行えない

(竹野 2014). また,効率の観点から考えると,サービスイノベー

ションのための 適設計ループを駆動していく必要性

(本村ら 2008)と共に,サービス設計そのものについ

て,サービス設計者とサービス受益者によるコミュニ

ティ参加型のアプローチが求められている(村松ら 2011). しかし,一般的な 適設計ループはサービス

設計者とサービス受益者を別個の存在として捉えてお

り,サービス設計の専門家ではないサービス受益者が

サービス設計に関与することは容易ではない.また,

サービスは周辺環境の影響を大きく受け,求められる

サービス内容や適切な提供タイミングなどが動的に変

化する.そして,その状況を理解し改善するための情

報共有と合意形成に,多くのコストが割かれることに

なる. つまり,企業が価値共創を指向した時に,そのため

の要素技術を保有しており,また共創のための手法も

習得し,ステークホルダーも協力的であるにもかかわ

らず,全体としてのサービス生産性が向上しないこと

となる. そこで筆者らは,システムズエンジニアリング方法

論を適用し,サービス設計プロセスにおいて受益者と

の協働による価値創出を行うため,参加型システム分

析を活用した価値共創フレームワークを開発した.こ

れにより,サービス設計者は設計の効率性とユーザー

Page 2: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

2

への価値提供を両立させながら,多様なステークホル

ダーとの価値共創を行うことが可能となった. そして,構築したフレームワークをIT商社A社にお

ける新サービス設計に適用した事例をもとに,価値共

創フレームワークと基本活用プロセスを利用して設計

されたサービスの有効性について検証を実施し,サー

ビス設計現場での有用性を明らかにした.

2 価値共創フレームワーク構築の方向性 価値共創に向けたデザイン思考等の参加型システム

分析とシステムズエンジニアリングの組み合わせにつ

いては,システムズエンジニアリングの国際団体であ

る INCOSE ( International Council on Systems Engineering)などでも報告がされている.しかし,そ

れらはディスカッションペーパーとしての報告(Leifer 2016)や,適用範囲をサービス設計の一部のプロセス

に限定したものであり (Tomita 2017) (Watanabe 2017),サービス設計プロセス全体における価値共創

のフレームワーク化には到っていない. また,企業での実践報例も報告されているが(富士

通総研 2018),それらはシステムズエンジニアリン

グについての記述や理解がISO標準等とは異なってお

り,サービス設計が専門の設計者以外のステークホル

ダーにとって方法論の理解が困難となる.そのため,

システムズエンジニアリング方法論を用いる重要な目

的である,多様なステークホルダーへのアカウンタビ

リティとトレーサビリティを担保することが出来な

い. 本論文ではシステムズエンジニアリングの標準的な

考え方とやり方に参加型システム分析を組み合わせる

ことにより,再現性の高いサービス設計のための価値

共創フレームワークと基本活用プロセスを開発した.

2.1 価値共創フレームワークに求められる機能 本項では価値共創フレームワークの構築に向けたコ

ンセプトデザインを行うため,価値共創を行うステー

クホルダーの識別と課題の整理を行った.その後にフ

レームワークに求められる基本機能の抽出を行った.

(1)対象に関与するステークホルダーの識別 はじめに,第1章で示した価値共創に関する現状に

ついての文献を分析し,ステークホルダーの識別を行

った.通常,ステークホルダーは個別サービス毎の設

計で変化するため,フレームワーク化のためには抽象

化したレベルでステークホルダーの識別をする必要が

ある.本研究ではステークホルダーを「サービス設計

者」と「サービス受益者」と識別した.

(2)ステークホルダーの関心事や課題の整理 次に,ステクホルダーの関心事から課題の抽出と整

理を行う.本研究ではサービス設計者とサービス受益

者の2種類のステークホルダーについて,第1章で示し

た文献から課題を抽出し,親和図法により下記の通り

整理した. ・ サービス設計者の意図とサービス受益者の価値

は両立させる必要がある.

・ サービスは提供する際の受益者の環境変化など

で動的なものであるため,常に改善を行うこと

が必要である.

(3)フレームワークに求められる基本機能 上記(1)及び(2)から,要求分析手法(IEEE

2005)を用いて必要な機能を抽出した.抽出した高抽

象度での要求機能は下記となる. 1. サービス設計者が意図通りのサービスを設計する

ことをサポートする機能. 2. サービス受益者が望む価値を享受することをサポ

ートする機能. 3. サービス設計者がサービス受益者と協働で常にサ

ービスの改善が行えるようにサポートする機能.

2.2 価値共創フレームワークの設計の方向性 前項2.1で抽出された機能を実現するには,サービ

ス設計者の意図を実現するトップダウン・アプローチ

とサービス受益者の意図を実現するボトムアップ・ア

プローチの両方の設計方法論が必要である. サービス設計者は,複数のステークホルダーの関心

事や複雑な環境の相互作用を考慮しながら,目的思考

的にサービスを検討する必要がある.つまりサービス

の骨格は,目的から活動要素がブレークダウンされる

トップダウン・アプローチによる設計が必要となる.

しかし,受益者が望む価値を実現するには,受益者自

らがサービスの設計と検証に関与できるボトムアッ

プ・アプローチの活用も必要となる.さらに,サービ

スの現状からのフィードバックを得て,常にサービス

を改善していくためには,サービスの改善ポイントや

改善による影響等を把握し,サービス設計プロセスの

トレーサビリティ確保をする必要があるため,それら

を容易にするトップダウン・アプローチによる設計が

重要となる. これらの観点から,本研究における価値共創フレー

ムワークの開発の方向性としては,トップダウン・ア

プローチをベースにフレームワークを構築し,ボトム

アップ・アプローチを活用してサービス設計プロセス

を検討していくこととした.

2.3 トップダウン・アプローチとしてのシステムズ

エンジニアリングの概要

システムズエンジニアリングとは何か INCOSEの発行するINCOSE SE Handbookの定義によ

ると,システムズエンジニアリングとは大規模複雑な

システム設計に関するベストプラクティスの集合体で

あり,Quality・Cost・Deliveryを考慮しながらプロジ

ェクトを成功に導くための体系である.複雑な問題に

ついて考え解決策を構築するための方法論と,その方

法論を具体的に実行するための手法により構成されて

おり,現在では様々な分野の多様性を 大限に生かす

ための方法論として ISO等で体系化されている

(Shortell et al. 2015).これらの特徴により,多様なステ

ークホルダーとの価値共創フレームワーク構築に適用

可能であると考える.

Page 3: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

3

システムズエンジニアリングのサービス設計への適用

による効果 Checklandは, 2つの側面から社会システムについ

て議論した. ひとつは,自動車,コンピュータプロ

グラム,法律,数学などの一般的に“システム”とし

て容易に認識される人工システムの側面である. もうひとつは,社会の人々によって活動が行われる人間

活動システムの側面である(Checkland et al. 1990). 人間活動システムの側面では,社会システムを「人

間の活動」と「その相互関係」として記述することが

できる.そのため本研究では,サービス設計者とサー

ビス受益者をシステムの要素とし,それらの複雑な相

互関係を考慮したサービス設計のために有効なトップ

ダウン・アプローチとしてシステムズエンジニアリン

グ方法論を採用した.システムズエンジニアリング方

法論の適用分野は工学に限定されず,システムとして

の特性を持った問題であれば適用することができるた

め,組織など人間が介在する社会システムの設計にも

有効であると考えられている(INCOSE 2014). この方

法論を用いることにより,分野を横断したシステムの

統合を可能とし,設計対象に関する経験の浅い人でも

ソリューションを設計することができるという効果が

期待できる(Shortell 2015). サービス設計は設計対象を包括的に検討する必要が

ある. そこで,本研究ではシステムズエンジニアリ

ング方法論でシステム全体を捉えるために用いられ

る,システムライフサイクルプロセスを適用する.ま

た,具体的なサービス実装を考慮した設計を行うため

の詳細設計プロセスを適用した(Arnold 2002)( Roedler et al. 2008).

2.4 ボトムアップ・アプローチとしての参加型シス

テム分析の概要

参加型システム分析とは何か サービス生産性を高めるために活用したもう一つの

アプローチは参加型システム分析である.これはステ

ークホルダーだけでなく,外部の専門家との間で行わ

れる問題解決のためのボトムアップ・アプローチであ

る. 多様な立場であるステークホルダーが協働して

現状を共有し,問題解決のためのシステム概念図を創

造するプロセスを特徴とする(Bosch et al. 2013). 参加型システム分析は下記の4段階から構成されて

いる (Smith et al. 2007). (1) 達成目標の設定 (2) 将来シナリオの決定及び有効度検証 (3) 選択された決定の実施計画 (4) 計画実施のモニター 上記の特徴を持つ手法としては,PCM手法(山中ら

2000)やデザイン思考(Brown 2009),future Center(Dvir 2006)等数多く存在する.

参加型システム分析のサービス設計への適用による効

果 特定の目的を持って設計及び管理されるあらゆるサ

ービスは,人工的なシステムとして設計される.そし

て,システムとして設計されたサービスの要素であ

る,サービス受益者とサービスに関連する人々は,そ

れぞれ相互作用することになる. 社会システムでは,システムと相互作用する人は直

接のユーザーやオペレータに限定されず,他の多くの

ステークホルダーも含まれる. 各ステークホルダー

は,自身の経験,教育,理解,価値観に基づいてシス

テムとその目的に対する独自のメンタルモデルを持っ

ている(Nguyen et al. 2011).したがって,それらの複数

の価値観を統合することが求められるサービスシステ

ムを,多くの利害関係者が関与する参加型システム分

析の手法群を利用して設計することは有益であると言

える.

2.5 価値共創フレームワークの設計 トップダウン・アプローチであるシステムズエンジ

ニアリング方法論をベースに,ボトムアップ・アプロ

ーチである参加型システム分析を具体的な要求の洗い

出しに活用することで,価値共創によるサービス設計

のフレームワークを構築する.本研究では2つのアプ

ローチを統合的に構造化するため,IEEE42010で標準

化されている“抽象フレームワークのためのアーキテ

クチャー記述の方法”を用いた(IEEE 2011). フレームワーク構築のために重要な事は,目的に合

わせてどの様に対象を捉えるのか,という視点の抽出

である.ISO42010によると,フレームワークとは限

定された目的について,それを実現する為に必要十分

な視点とその関係性であり,設計対象に関与するステ

ークホルダーの関心事や課題について,目的に応じた

過不足のない視点の集合で示したものである(IEEE 2005).価値共創フレームワークの構築においてはサ

ービス設計への汎用性を考慮し,イノベーティブな価

値創出のための考え方を高抽象度視点で定義した ,「目的」「方法論」「手法」の3つの視点をベースと

して用いた(慶應2014).3つの視点の定義は以下の通

りである. <目的> 設計者が設計により実現しようとする事 <方法論>目的実現に必要な思考やツールなどを含

む系統的なプロセス <手法> 実行に必要な手法または手法の組み合せ 次に,3つの視点を価値共創フレームワークに適用

していくために,図1のように視点内の要素の抽出と

要素間の関係性を定義し,価値共創フレームワークの

構築を行った.異なる2つのアプローチを統合するた

めには,それぞれのアプローチの関係性を定義してイ

ンターフェースを設計する必要がある. 関 係 性 の 定 義 に は , 視 点 間 を “ Enable ” と

“Utilize”という関係性で定義をすることで視点に階

層性を持たせ,目的に対して実現のための視点の構造

化に適したフレームワーク構築を行うための方法論で

あるEnabler Frameworkの概念を適用した (Shirasaka

Page 4: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

4

2009).Enabler Frameworkは,下部の要素が上部の実

現 を 可 能 ( Enable )と し , 上 部 は 下 部 を 利 用

(Utilize)するという関係性で構造化を行う.Enabler Frameworkの活用により,トップダウン・アプローチ

とボトムアップ・アプローチの利点を活かし,各レイ

ヤーに求められる要素の関係性を定義することで,図

1の通り価値共創フレームワークを設計した.レイヤ

ー化された視点は,更にサブレイヤー化及び各レイヤ

ー内で分割することが可能である.

図1 価値共創フレームワーク

各レイヤーの概要は以下の通りである.

<目的レイヤー> フレームワーク構築の目的は,価値共創によるサー

ビス生産性の向上である.生産性は産出(Output)/投

入(Input)で示すことが出来る.特にサービス生産性の

視点からは,産出(Output)/投入(Input)を付加価値額

/労働量として示すのが適当である.これらは価値の

創出と効率性という点から議論すべきことであり(前川ら 2013),Enabler Frameworkによる検討からも,サ

ービス生産性の向上という目的の実現の為に必要

(Enable)な要素を「価値創出」と「効率向上」として

ブレークダウンすることが適当である.本研究では図

1のように,目的レイヤーを「価値共創によるサービ

ス生産性向上」という主目的レイヤーと,「価値創

出」「効率向上」という副目的レイヤーに分けること

とした.副目的を設定することで,サービスの設計と

検証を効率的かつ効果的に実施可能とした. <方法論レイヤー>

目的の達成に向けた方法論の選択を行うのが方法論

レイヤーである.前項2.2,2.3及び2.4での検討から,

トップダウン・アプローチとしてシステムズエンジニ

アリング方法論,ボトムアップ・アプローチとして参

加型システム分析を選択した. マネジメント論的にはトップダウン・アプローチと

ボトムアップ・アプローチはコンフリクトが発生する

(野中 1990).しかし,本研究における「トップダウ

ン・アプローチ」と「ボトムアップ・アプローチ」

は,マネジメント手法ではなく設計手法である.トッ

プ(目的)から全体を設計するか,ボトム(現場)の

要請から全体を設計するか,という違いであるため,

トップダウンでの設計の要求にボトムからの要請を取

り入れることが可能である.そのため,マネジメント

論的には起こりうるコンフリクトの発生を設計プロセ

スにおいては回避出来ると考える. <活動レイヤー>

トップダウン・アプローチであるシステムズエンジ

ニアリング方法論の活動は,「設計」「管理」「解

析・評価」「統合」の4つである(IEEE 2005).これら

をサービス設計活動に適用するにあたり,各活動の定

義を下記の通りとした. 設計:サービス要件から要求分析,アーキテクチャ

ー設計を実施し,下位要求を導出する活動 管理:設計するサービスについてのQCDを満たす

ために,各種活動の計画・実施・評価を行

う活動 評価・解析:サービス設計活動における解析及び検

証(verification)・妥当性確認(validation)等の

活動 統合:検証の終わったサブサービスシステムを統合

する活動 一般的にサービス設計の際に も議論になるのは活

動レイヤーと実行ツールの選択である.しかし,本来

であれば目的が明確化されて,それを実現しうる方法

論が選択されれば,目的と方法論の実現に対して適切

な活動と実行ツールを論理的に選択することが可能と なる.そのため,本研究では個別の実行ツールについ

て詳細検討は行わない.

3 価値共創フレームワークを用いたサービス設計

3.1 基本活用プロセスの検討 構築した価値共創フレームワークは,あくまでも価

値共創プロセスの全体像と構成要素間の関係性を記述

したものである.実際のサービス設計活動のためには

サービス設計者がフレームワークを利用しやすいよう

に,基本活用プロセスを検討する必要がある.そのた

め,レイヤー毎に実際の設計において検討すべき事項

を抽出し,それをもとにサービス設計の基本活用プロ

セスを検討した.

検討すべき事項 <目的レイヤー>

価値創出の目的は価値共創によるサービス生産性向

上であるが,サービス設計者の関心事から目的を細分

化するためには,自ずと「なぜ?」「何を?」「どの

ように?」を議論することとなる.つまり,「なぜサ

ービスを設計するのか?」という目的,「何のサービ

スを設計するのか?(価値は何か?)」「どのように

サービスを設計するのか?(設計方法はどうするの

か?)」のサブ目的の明確化が必要となる.これらを

整理すると下記の通りである.

Page 5: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

5

目的の検討:ステークホルダーの関心事から目的を

検討 価値の検討:提供することと提供しないことの検討 方法の検討:効率向上に資するアプローチの検討

<方法論レイヤー> 目的実現のための方法論としてトップダウン・アプ

ローチとボトムアップ・アプローチが有効であるため

には,アプローチを実行する人材の能力が重要とな

る.トップダウン・アプローチを実施するためには,

トップから設計出来る能力がある人が必要である.ボ

トムアップ・アプローチを実施するためには,サービ

ス提供の現場の経験者かサービスの受益者が必要であ

る.また,トップダウン・アプローチの中でどのよう

にボトムアップ・アプローチを活用していくのか,共

創のポイントについての検討も必要になる.これらを

整理すると下記の通りである. 能力の検討:設計に求められる能力と設計メンバー

の能力の検討 共創ポイントの検討:共創が効果的なポイントにつ

いての検討 <活動レイヤー>

サービス設計活動の際に考慮すべき事項は下記の通

りである. 設計活動の検討:共創方法の検討 管理活動の検討:管理における設計者と受益者の役

割の検討 評価・解析活動の検討:検証及び妥当性確認計画の

検討 統合の検討:目的に対する設計の整合性及び網羅性

の検討

基本設計プロセス グルーピング手法を用いて前項の検討結果を整理す

ることにより,価値共創フレームワークを用いたサー

ビス設計の基本活用プロセスを以下の通り整理した. (1) デザイン範囲の決定 (2) 共創メンバーの選出 (3) 要求分析 (4) アーキテクチャー設計 各プロセスの概要として,その目的と手法につい

て以下に述べる. (1)デザイン範囲の決定 <目的> サービス設計者が自らの意図を持って設計する範囲

を明確にすると共に,サービスに影響を与えるが,設

計者がコントロール出来ない範囲について特定する. <手法> システムズエンジニアリング方法論では時間軸,空

間軸,意味軸の視点から設計対象を俯瞰し,構成要素

間の関係性を明確化する(Adolphs .et.al 2015) .それぞ

れの代表的な手法として,時間軸探索にはシステムラ

イフサイクル分析,空間軸探索にはコンテキスト分

析,意味軸探索には因果ループ図等がある. 因果ループ図は,意中の対象をステークホルダー分

析の結果から明らかになった変数の因果関係の連鎖と

いう視点から見ることで,対象の課題抽出や解決策を

創出することを目的とした手法である.当初はシステ

ム思考における定量分析のツールとして開発された

が,現在では社会科学における質的分析にも広く利用

されている(Senge 1990).因果ループ図を作成する際

に,設計対象のステークホルダーから関心事

(concern)を抽出する.抽出されたconcernをもとに

因果ループ図を作成することにより,ステークホルダ

ーや課題について全体像が把握しやすくなる. 次に,ISO15288システムライフサイクルプロセス

を活用してデザインする対象のライフサイクルを検討

し,デザイン範囲の全体像を定義する.後述の要求分

析の手法である,IEEE1220及びISO42010等で記述さ

れているコンテキスト分析や抽象モデルのためのアー

キテクチャー記述など,デザイン範囲の境界を明確化

する手法を用いる.コンテキスト分析や抽象モデルの

ためのアーキテクチャー記述は,設計対象を取り巻く

影響を分析することで,次項の共創メンバーを選出す

る際にも適切なメンバー選定を支援する. (2)共創メンバーの選出 <目的>

参加型システム分析の方法論を適用して,対象シス

テムの設計及び評価,改善に主体的に関与する共創メ

ンバーの選出を行う. <手法> 前項(1)で用いた因果ループ図作成の際のステー

クホルダー分析を活用し,サービスに関与するステー

クホルダーを明らかにする.これにより,合意形成や

情報共有,ソリューション構築など,設計の目的に応

じた共創メンバーを選出することが可能となる.共創

メンバーによるサービス設計の代表的な手法として

は,デザイン思考(Plattner 2010),イノベーション対話

ツール(慶應 2014), システム×デザイン思考(前野ら 2014),Learning laboratories(Nguyen et al 2011)などがあ

り,様々な対話型アプローチを用いることが可能であ

る. (3)要求分析 <目的>

どのように設計すべきか(How)を明確にするため

に,「何を,どれほどよく,どういった状態で」与え

られた目的を達成するかを決める.これにより何を設

計するのか(What)を明らかにする. <手法> システムズエンジニアリング方法論の標準のひとつ

であるANSI / EIA-632によると,要求とは「何が」与

えられた目標を達成し,「どれだけうまくいくか」と

「どのような条件で達成されるか」を示す(ANSI/EIA 1999).そして,要求分析とはステークホルダーの要

求する品質を満たすために,エンジニアリングの見地

Page 6: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

6

から設計可能な仕様に変換するプロセスである. このプロセスは,ユーザー要求の定義,設計対象シ

ステムの境界の明確化,設計プロセスの結果として明

確化されたシステムの定義,及び技術仕様の定義から

構成される. これらのプロセスに従い,要求分析の

手法は境界線の明確化と成果物の明確化の2つに分類

する事が出来る.境界線の明確化のためには,関係要

求の洗い出し,対象範囲の明確化,使用方法の明確化

を行う.成果物の明確化のためには,機能の明確化,

検証性識別等を行う.デザイン範囲の詳細決定でも利

用するコンテキスト分析やユースケース分析を行い,

対象範囲の明確化と成果物の明確化を行う.コンテキ

スト分析は,対象とするシステムが外部環境に与える

影響と外部環境から受信する影響を分析して識別する

方法である.この分析は,すべてのフェーズ及びサブ

フェーズで実行される(IEEE 2005).ユースケース分析

は,設計対象と外部要因との相互関係を特定すること

によって,システムが必要とする権限と機能の範囲を

明確にする方法である(IEEE 2005). 外部要因には人

や物が含まれる. (4)アーキテクチャー設計 <目的> 対象システムに要求されている機能・性能を,シス

テムを構成する要素に配分して構成要素の仕様を明確

にするとともに,構成要素間のインタフェースを明確

化する. <手法> アーキテクチャー設計とは,システムに必要な機能

と性能を,システムを構成する物理的要素に適切に配

分することであり,要素間の物理的要素やインタフェ

ースの仕様も明確にすることである(Shortell 2015).プ

ロセスとしては機能設計と物理設計を行う.機能設計

とは,システムの要求機能を分割し,その機能を構成

する下位機能の集合に置きかえる作業をいう.また物

理設計とは,分割された下位機能をシステムを構成す

る要素に割り付ける作業をいう.機能設計に汎用的に

使 わ れ る 手 法 と し て は 機 能 フ ロ ー 図 法

(FFBD:Functional Flow Block Diagram)があり,機能

の流れと階層化の視点から細分化を行う (IEEE 2005)(Roedler et al. 2008). 物理設計では細分化された

機能をシステムを構成する物理的要素に割り付ける.

3.2 A社新規サービス開発への適用事例 開発した価値共創フレームワークと基本活用プロセ

スをA社の新規サービス開発に適用して,サービスの

有効度について検証を行った.

A社の状況 A社はコンピュータや通信機器を取り扱う東証一部

上場の商社である.年商は約7000億円で従業員数も約

6000人を超える大企業である. 中小企業向けを中心とした営業力を強みとしたB to

Bビジネスで業績を伸ばしてきたが,昨今の経済環境

の変化や代替品・代替サービスの台頭により,営業力

だけでは自社の売上げが大きく変動することに懸念を

抱いていた.そこで,成長のために新しいサービスの

構築を模索することとなった.新サービスの構築に際

して,A社内で議論された前提条件は下記の通りであ

った. 顧客基盤である中堅・中小企業向けサービスで

あること 顧客の課題解決に直結していること 顧客企業の業績向上が自社の業績向上にリンク

すること 自社のリソースを活用して実現出来ること 中堅・中小企業は日本企業の99.7%を占めてい

る.日本経済が持続的に成長するためには,中堅・中

小企業の事業展開が絶対必要であり (中小企業庁 2011),そのための新規事業の開発は,日本企業にと

って重要な活動のひとつあることが明らかである

(VEC 2014).しかし,経営資源が不足している中堅・

中小企業に向けた新規事業開発サービスは少ない. このようにA社内で環境分析を行った結果,既存顧客

に向けた新規サービスとして,A社の培ってきた中小

企業経営に対する知見を活かし,中小企業の新規事業

開発を支援するための教育プログラムを設計し,提供

することとなった.

サービス設計プロセス 下記にサービス設計プロセスを記述する.プロセス

は順序立てられて記述されているが,実際のプロセス

においては途中にイタレーション(試行錯誤)を実施

しながら設計プロセスを進めていった. (1)デザイン範囲の決定

はじめに,中堅・中小企業に対する新規事業開発サ

ービスとしての新規事業開発教育プログラムを設計す

るために,デザイン範囲の境界を定義した. 新規事業開発に関連する多数の要素の相互関係は非

常に複雑である. INCOSEのシステムの定義によれ

ば,複数のステークホルダーと要素が絡み合う新規事

業開発はシステムとみなすことができる. そして,

システムとしてのソリューションを設計するために

は,対象システムの境界を定義する必要がある. A社では顧客が抱えている新規事業創出に関する課

題の定性情報は蓄積されているが,構造化された状況

では無かった.そこで,課題の全体像を明らかにする

ための構造化手法として因果ループ図を採用した. 因果ループ図の作成に必要なconcern(関心事や懸念

事項)を抽出するために,2014年4月にA社の顧客であ

る中堅・中小企業幹部37名に向けて,新規事業開発の

ためのワークショップを開催した.ワークショップと

は講義等一方的な知識伝達のスタイルとは違い,参加

者が自ら参加・体験して共同で何かを学びあったり創

り出したりする学びと創造 のスタイル(中野2001)であ

る.本研究では,システム×デザイン思考に基づくワ

ークショップ設計方法論(前野ら 2014)により設計され

たワークショップを参加型システム分析の具体的方法

として用いて,サービス設計を実施した.そして,ワ

ークショップ実施後に参加者の一部とA社スタッフに

Page 7: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

7

インタビューとアンケート調査を実施した.A社スタ

ッフは調査結果からconcernを抽出し,因果ループ図

を描写した.因果ループ図を作成することより,各要

素が因果の視点からどのように相互に関連しているか

を分析し,視覚化することが可能となる (Sterman 2000).

ワークショップ参加者は因果ループ図の結果を用い

て,因果ループ図のレバレッジポイントを特定した.

レバレッジポイントとは,システムを変化させるため

にサービス設計者が介入できる変数のことである.レ

バレッジポイントはサービス設計者側のリソースや能

力により変化する.つまり,保有するリソースや能力

の違いにより,ある会社にとっては介入できるポイン

トではあるが,ある会社には介入できないポイントと

なることもあり得るのである. A社のリソースや能力を勘案し,図2のようにレバ

レッジポイントを特定した.中小企業の新規事業開発

を支援するための教育プログラムの も重要かつ介入

可能なレバレッジポイントは“Education”である.ま

た,“Community”は,新規事業開発を推進していく

ための動機付けや継続的な活動のために重要であるこ

とが分かった. そこで,この2つの変数をサービス設計のレバレッ

ジポイントとして特定した.

図2 因果ループ図とレバレッジポイント

(2)共創メンバーの選出

はじめに,デザイン範囲定義と因果ループ図の成果

物からステークホルダーを抽出し,それらをサービス

設計者とサービス受益者へと分類した.次に,参加型

システム分析の参加者として価値共創を行う共創メン

バーを選出した.さらにサービス設計者をコアメンバ

ーとサポートメンバーに分類した.このような分類を

行った理由は,各ステークホルダーは価値共創への関

心があるが,それぞれの関心領域や意欲,保有してい

る能力の違いを考慮したためである.サービス設計者

はA社スタッフ10名である.この10名を本プロセスを

中心的に検討するコアメンバー3名と,検討を支援す

るサポートメンバー7名に分類した. 共創メンバーはサービス受益者と成り得る中堅・中

小企業のCEOまたはマネジメント層延べ約50名に対

し,途中に数度のプロトタイプを実施しながら設計プ

ロセスを進めていった. (3)要求分析

中小企業の新規事業開発を支援するための教育プロ

グラムへの要求を分析した. (3-1)対象物の現状把握

はじめに,A社が実施してきた顧客向けセミナー等

延べ数千人分のインタビューとアンケート調査結果に

ついて,定性及び定量の2つの視点からA社スタッフ

による現状分析を行った.このプロセスでA社の顧客

企業の大きな課題として,「事業環境に関する危 機

感の欠如」「新規事業開発のためのリソースの欠如」

「社内人材のビジネス知識の欠如」3つを特定した. (3-2)サービスのライフサイクルを明確化する

意図的に設計されたすべてのシステムは,ライフサ

イクルを定義することが出来る.システムとして設計

される教育プログラムにも,ライフサイクルを定義す

ることが出来る.ISO15288で定義されているGeneric Life cycleはConcept-Development-Production-Utilization/Support-Retirementの5つのステージに分けら

れている.実際の設計ではこれらのステージを目的に

従って調整して活用する(Roedler et al. 2008).本章で

設計する教育サービスにおいて重要な価値提供のポイ

ントは新規事業開発の活動であるため,Generic Life cycleにおけるUtilization/Supportを詳細化し,サービス

の提供に焦点を当てたものとした. 前述のデザイン範囲の決定で実施したワークショッ

プの結果とインタビューに基づいて,サービスのライ

フサイクルを定義した.実践教育の効果的な学習プロ

セスは(1)習得した知識をそのまま使う,(2)習

得した知識を状況に応じて変化させ使う,(3)状況

に応じて必要な手法を使う,という流れである(山口 2008).

この学習プロセスをもとに,ライフサイクルを次の

ように定義した. も抽象度の高い視点で定義された

ライフサイクルは,3つのフェーズを有する.各フェ

ーズはさらに3つのサブフェーズに分かれる.サブフ

ェーズへの分割はA社教育部門の知見をもとに,A社

スタッフが行った.その結果は下記の通りである. <3つのフェーズと9つのサブフェーズ>

Learningフェーズ ・ Learning-1(L-1) ・ Learning-2(L-2) ・ Learning-3(L-3) Active Learningフェーズ ・ Active Learning-1(AL-1) ・ Active Learning-2(AL-2) ・ Active Learning-3(AL-3) Self-Practiceフェーズ ・ Self-Practice -1(SP-1) ・ Self-Practice -2(SP-2) ・ Self-Practice -3(SP-3)

Page 8: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

8

詳細なライフサイクルの分析と設計には,コンテキ

スト分析とユースケース分析が必要である.システム

ズエンジニアリング方法論の実際的な活用では,段階

的詳細化やイタレーションと呼ばれる思考の行き来に

より設計プロセスが進むこととなる.上記の3つのフ

ェーズと9つのサブフェーズを図示したのが図3であ

る.

図3 設計するサービスのLife Cycle

(3-3)コンテキスト分析とユースケース分析によ

るステークホルダーの要求の定義 9つのサブフェーズについて,コンテキスト分析と

ユースケース分析を実施した.このプロセスにより,

設計するサービスの境界をさらに明確にした. <コンテキスト分析>

システムはそれ単体だけを考えて設計することは出

来ない.なぜなら,それは常に外部環境との相互作用

を持っているからである.したがって,そのような相

互作用を考慮し,システムが環境に影響を与え,また

環境から受ける影響に対処するようにサービスを設計

する必要がある.システムとしてのサービスが持つコ

ンテキストを考慮することなく,サービスが意図通り

に機能することはない.図4はLearningフェーズの

「関心者が集まる」サブフェーズにおいて,コンテキ

スト分析を実施した結果を示している.

図4 コンテキスト分析

分析により,中小企業の新規事業開発を支援するた

めの教育プログラムのライフサイクルにおける各フェ

ーズにおいて,影響をする対象を特定しその内容を明

らかにした.コンテキスト分析の結果を使用して,シ

ステム境界内にどの対象を含めるか,どの対象を除外

するか,を決定した.これらの作業により,サービス

として設計する境界の定義を行った. <ユースケース分析>

外的要因の視点からシステムを見て,目的とする環

境における設計するサービスの振る舞いを客観的に観

察し,サブフェーズ毎にユースケース図を検討した.

その結果の一部を図5の通り示す.

図5 サブフェーズL-1のユースケース図

(3-4)教育プログラム設計の為の要求機能の抽出

要求分析の 終プロセスとして,図6の通りプログ

ラム設計のための要求機能を抽出した.

図6 要求機能の抽出

これは,提供されるサービスに必要な機能を明確に

し,設計仕様を特定するための準備プロセスである.

要求機能はコンテキスト分析とユースケース分析から

抽出される. 中小企業の新規事業開発を支援するための教育プロ

グラムに必要なパフォーマンスも,これらの分析で特

定される.その結果として,各機能に必要な性能が割

り当てられることとなる.コンテキスト分析とユース

Page 9: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

9

ケース分析の結果は,サービスを取り巻く環境変化が

発生した等,必要に応じて改訂することができる. (4)アーキテクチャー設計

中小企業の新規事業開発を支援するための教育プロ

グラムの設計,物理的要素の特定,要素間のインタフ

ェースの設計に必要な機能を抽出し,物理的要素に割

り当てるアーキテクチャー設計を行った. (4-1)サービス設計のための機能設計

機能設計プロセスとは,システムに必要な機能を下

位層の機能に分解しフロー図で表現することである.

抽象的な記述となっている要求機能を,詳細な設計機

能に変換する.高抽象度視点では図7のように機能フ

ロー図を描き,このプロセスを実行した. このとき,各機能を1ずつのブロックに分解して記

述することで,機能間の関係性の理解は容易なものと

なる.上記のプロセスは,ライフサイクルの各段階で

実施し, 終的に要求を満たす機能フロー図として全

体を明確化する.このプロセスにより,新規事業開発

サービスに求められる機能を明確にし,その機能を実

現するための手段を定義することを可能とする.

図7 図6で抽出された機能の機能フロー図(一部)

(4-2)機能の具体的活動への割り当て

機能を実現する具体的な方法を設計するプロセスと

して,具体的な手段を特定する必要がある.はじめ

に,機能を実現するために必要な手段が特定され,機

能実現の方法を物理的要素として記述する.これを物

理設計という.物理的要素には,人,組織,その他設

計物が含まれる.その後,抽出された各機能は特定さ

れた物理要素に割り当てられる.物理設計においては

設計者の過去の経験や蓄積された知識が活用されるた

め,A社スタッフの意見をもとに物理設計を進めてい

った.教育プログラムへのすべての要求は,要求を実

現するための具体的な手段を定義することによって設

計に組み込まれる.教育プログラムの実現手段として

「活動」を1つの物理的要素として捉え,抽出された

機能及び設計された機能フローを実現する為の「活

動」として下記の5つを設定した.

・ 説明会(Pre-Session) ・ ワークショップ(Workshop) ・ コミュニティ形成(Community Building) ・ 事業化支援(Support) ・ 参加者間での共創(Co-creation)

(4-3)サービスの概念設計 アーキテクチャー設計に基づいて,教育プログラム

の概念設計を実施した.前述(3-2)の通り,この

サービスのライフサイクルは抽象度の高い3つのフェ

ーズと9つのサブフェーズで構成されている. これらのフェーズにアーキテクチャー設計の結果と

して(4-2)の具体的なアクティビティを統合し

た.その結果が下記の図8である.

図8 全体設計結果の概念図

4 手法適用結果の有効性検証

4.1 検証の目的 本研究の目的は,サービス生産性の向上のため,シ

ステムズエンジニアリング方法論により設計された価

値共創フレームワークと基本活用プロセスを用いたサ

ービス設計結果の有効性を確認することにある.その

ため,フレームワークの基本活用プロセスを用いて設

計されたサービスについて定性調査と定量調査を実施

した.

4.2 検証方法

検証対象 サービス設計者とサービス受益者を対象とし,検証

を行った.対象者は経営品質協議会アセスメントコー

スの受講経験者及び講師経験者を中心とした,新規事

業開発実務の経験者を選定した.

検証方法 本研究は価値共創フレームワークのサービス開発現

場での活用に主眼を置き,可能な限り企業活動の実状

と実態に即した形での検証を目指した.そのため,予

備的な検証として,企業内で実際にフレームワークを

利活用する立場の参加者による参加型システム分析に

より,フレームワークの基本活用プロセスの設計と共

に運用時の検証を行った.検証は図8で示されるサー

ビスの説明及びワークショップの実施後,アンケート

及びインタビュー調査を実施する手順とした. 田村の分類(田村2006)によると,本研究の分析単位

の観察数(少ない)とデータの性質(定性及び定量)

を鑑みた際に,比較的定性研究に近い中間的な位置づ

けの研究であり,今後多くの観察数や定量データが取

最適な集め方を策定する

策定された集め方を理解する

集めたい人の特徴を特定する

集めたい人の特徴を理解させる

集めたい人の居場所を考えさせる

集めたい人の接触方法を考えさせる

集めたい人に関心を持ってもらえる情報を規定 する

集めたい人に情報を発信する手段を考える

策定された集め方に基づき計画を⽴てる

研修との違いを明確にする

集めたい人に情報を伝えさせる

1-1

1-2-1

1-2-2

1-2-3

1-2-4

1-3 1-4

1-5-3-1

1-5-3-2

1-5-3-3

1-5-3-4

Page 10: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

10

得された際の新たな仮説構築や検証手法の検討を行う

ため,これらの検証方法を選択した.

参加型システム分析による検証 多くのステークホルダーが関与する社会システムの

デザインにおいて,実際の問題解決プロセスは直線的

に進むことはない.そのプロセスは多様なステークホ

ルダーによる課題の発見やアイデアの創出,合意形成

から検証までが同時に進み,更にそれは継続的に繰り

返される循環型のプロセスとなる.このようなプロセ

スを推進するボトムアップ・アプローチで用いられる

参加型システム分析は,対象システムの分析だけでな

く,システムの設計にも利用されている. 設計に利

用する場合,参加型システム分析のプロセスは繰り返

し実行さる.それは,常にフィードバックを得ること

を繰り返す進化の過程であり,実施者が意図して分析

を終えない限り改善し続けることになる. 特に社会

システムは進化的である必要がある (Bosch et al. 2011). 進化するシステムは常に評価され,検証され

る. 設計が完了した際やフェーズが変化した際だけ

に評価され検証されるのではなく,設計途中に評価と

検証が繰り返される. つまり,参加型システム分析で検討されたサービス

は,サービス設計プロセスを通じてステークホルダー

からプロセスと適用結果について評価と検証がなされ

ているのである.本研究では,設計プロセスに参加し

たサービス設計者A社スタッフ10名と,サービス受益

対象であるCEO及びマネジメント層50名が参加した要

求抽出のための参加型システム分析を実施した.その

プロセスを通じて,参加したステークホルダーの評価

はサービスの設計に反映されているため,参加したス

テークホルダーにより設計結果への合意がなされてい

れば,一定以上の評価が得られたと考えられる.

アンケート及びインタビューによる検証 検証対象に対して設計されたサービス全体の説明を

行った後,サービスとして新規事業創出ワークショッ

プを体験してもらい,アンケート及びインタビューを

実施した.サービスの説明をする際には説明者の技量

による理解度の違いが生まれやすい.そのため,当日

のプレゼンテーションと使用した説明資料は,技量に

よる影響を少なくするためのワークショップデザイン

やファシリテーション,資料作成方法を記載した文部

科学省「イノベーション対話ツールガイドブック」に

則り作成した(慶應2014). また,検証で実施したワークショップは図8の

Learningフェーズの「ワークショップ」活動で求めら

れる,新規事業開発の「考え方を知る」「やり方を体

験する」「糸口を見つける」ことを目的としたコンテ

ンツを設計し,実施した.ワークショップの設計及び

ファシリテーションも文部科学省「イノベーション対

話ツールガイドブック」に則り実施した. サービス体験後に実施したアンケート及びインタビ

ュー調査の概要は下記の通りである. (1)定量的検証

新規事業を評価するCEOやマネジメント職の立場に

ある50名に対してアンケート調査を行った. 調査方法:サービス説明及びワークショップ参加後の

無記名アンケート調査 調査対象:中堅・中小企業のCEOまたはマネジメント

職50名(回答数36名) 調査日時:2015年5月11日 調査項目:フレームワークを利用して設計されたサー

ビスの有効度についての4段階評価 調査実施:A社 (2)定性的検証 設計されたサービスを定性評価するために,定量的

検証の参加者から選抜された10名とA社スタッフ5名(設計に関与したコアメンバー3名と支援メンバー2名)に対してインタビュー調査を行った.インタビュ

ー調査の概要は以下の通りである. 調査方法:サービス説明及びワークショップ参加後の

1対1でのインタビュー調査 調査対象:中堅・中小企業のCEOまたはマネジメント

層10名及びA社スタッフ5名 調査日時:2015年6月5日〜7月3日 調査項目:フレームワークを利用して設計されたサー

ビスの有効度

調査実施:A社及び著者

4.3 検証結果 (1)定量的検証

表1の通り「提供されたサービスは新規事業創出に

有効だと思うか?」という問いに対し,表2の通り,

「とても有効だと思う=45%」「有効だと思う=44%」

と89%が有効と判断した結果となった.

表1 有効度のアンケート結果

とても有効

だと思う 有効だと

思う どちらでも

ない 有効だと

思わない

有効度 45% 44% 11% 0% (2)定性的検証

インタビュー結果を集約すると以下の通りである. <CEO及びマネジメント職> ・ 新しいビジネス開発プロセスが明確に述べられ

ており,説得力がある. ・ 中小企業の経営幹部は孤独を感じることが多い

ので,このようなコミュニティ型のサポートは

非常に重要. ・ コンセプトとしては納得したが,実際に商品化

まで進めてみないと評価は下せない. ・ アイデアから商業化へは一貫した支援が必要で

あるが,十分に納得のいく道筋を示してくれて

いる. ・ 他の中小企業と協力して新しいビジネスを開発

するプログラムは革新的で面白い.

Page 11: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

11

・ このプロセスを進めて商品化に進んでいきた

い. <A社スタッフ> ・ このプログラムは,私たちがクライアントに提

供してきた内容を反映し,クライアントに必要

なすべてのサポートをカバーしている. ・ 企業の発展のライフサイクルを考慮することに

よって,ビジネスをサポートするために必要な

すべての要素を特定できていると思われる.こ

れらを認識出来るということは非常に印象的で

ある. ・ 抽出された機能の中には,私たちA社スタッフ

がCEOではないため,理解出来ないものが含ま

れている. ・ 多くのステークホルダーの知識と認識が十分に

集約されている. 5 考察

設計されたサービスの有効度は「とても有効だと思

う45%」「有効だと思う44%」という結果となってお

り,インタビュー結果を踏まえて検証結果を分析する

と,トップダウン・アプローチであるシステムズエン

ジニアリング方法論をベースに,ボトムアップ・アプ

ローチである参加型システム分析を活用した価値共創

フレームワークと基本活用プロセスによるサービス設

計結果の有効度を確認することができた. 結果について留意すべき点は,本研究で明らかにし

たのは価値共創フレームワークと基本活用プロセスの

コンセプトデザイン段階で実施したサービスの有効度

の検証であり,実際の新規事業の創出結果については

長期的な調査が必要であるという点である. 6 結論と今後の展開

6.1 結論 本研究では,システムズエンジニアリング方法論を

ベースにした参加型システム分析を用いた,価値共創

フレームワークと基本活用プロセスを設計した.そし

て,構築したフレームワークとプロセスをIT商社であ

るA社における新サービス設計に適用し,フレームワ

ークの基本活用プロセスについて,設計されたサービ

スの有効度について検証を実施した.検証方法は,参

加型システム分析としてサービス設計者でもあるA社

スタッフによる評価,及び新規事業開発のためのワー

クショップ参加者によるアンケート調査を用いた.そ

の結果,本研究で得られた知見は以下の通りである. ・ サービス受益者の89%は設計されたサービスを

有効であると評価した. ・ サービス設計者は設計の効率性とユーザーへの

付加価値提供を両立させながら,サービス生産

性を考慮した多様なステークホルダーとの価値

共創を実現できると評価した.

6.2 今後の展開 価値共創フレームワークにより設計されたサービス

は,今回実施した検証の範囲内では有効であることは

確認出来た.また,インタビュー結果を分析すると,

新規事業開発プロセスの中の暗黙的なプロセスが明示

的になるなど,サービス設計において新たな価値を創

出することが出来た.今後,本フレームワークをより

汎用性を高く展開するためには,さらなる詳細な設計

とより高度な統計的検証が必要であると考える.本研

究は価値共創フレームワークと基本活用プロセスによ

るサービス設計結果の有効性の検証であったが,次の

段階としては,(1)価値共創フレームワークの要素及

びその関係性の検証,(2)基本活用プロセスの各プロ

セスの要素及びその関係性の検証を行い,手法そのも

の有効性を検証したい.また,価値共創フレームワー

クと基本活用プロセスの汎用性を高めるため,複数の

対象領域での検証も必要である.本研究をきっかけと

して更なる研究を進めたい. 7 謝辞

The 3rd international conference on Serviceologyにて議

論して頂いた関係者ならびに事例を提供して頂いたA社関係者のみなさまの御厚情に深く感謝申し上げる. 8 参考文献 Adolphs, P., Bedenbender, H., Dirzus, D., Ehlich, M., Epple, U., Hankel,

M., ... & Koziolek, H. (2015), Reference architecture model industrie 4.0 (rami4. 0), ZVEI and VDI, Status Report.

Arnold, S. (2002), ISO 15288 Systems engineering—System life cycle processes. International Standards Organisation.

ANSI, E. (1999), EIA-632-1998 (R2003) -processes for engineering a system. Electronic Industries Alliance.

Bosch, O. J. H., & Nguyen, N. C. (2011), Establishing the Global Learning Laboratories NET for managing complex problems (Working Paper),. Brisbane, Australia, School of Integrative Systems, The University of Queensland.

Bosch, O., Nguyen, N., & Sun, D. (2013), Addressing the Critical Need for 'New Ways of Thinking' in Managing Complex Issues in a Socially Responsible Way. Business Systems Review (ISSN 2280-3866),, 2(2),, 48-70.

Brown, T., (2009), Change by Design: How Design Thinking Transforms Organizations and Inspire Innovation. New York Harper.

Checkland, P., & Scholes, J. (1990), Soft Systems Methodology in Action. John Wiley & Sons

Chesbrough, H. W. (2006), Open innovation: The new imperative for creating and profiting from technology. Harvard Business Press.

Dvir, R., Schwartzberg, Y., Avni, H., Webb, C., & Lettice, F. (2006), The future center as an urban innovation engine. Journal of knowledge management, 10(5), 110-123.

International Council on Systems Engineering (INCOSE) (2014), A world in motion: systems engineering vision 2025. In International Council on Systems Engineering.

Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE) (2005), IEEE Standard for Application and Management of the Systems Engineering Process, IEEE 1220-2005.

Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE) (2011), IEEE Standard for Systems and software engineering - Architecture description, ISO/IEC/IEEE 42010.

Kelley, T., & Kelley, D. (2013), Creative confidence: Unleashing the creative potential within us all. Currency.

Leifer, L. (2016), Dancing with Ambiguity: Embracing the Tension between Divergent and Convergent thinking in Systems Engineering. 26th Annual INCOSE International Symposium Keynote Speech

Page 12: システムズエンジニアリング方法論によるサービス設計と有効 ...ja.serviceology.org/publish/JpnJoS_vol3_no1_1.pdf · 2020-03-05 · しかし,サービスを生産性という視点から見たと

12

Lusch, R. F., Vargo, S. L., & Wessels, G. (2008), Toward a conceptual foundation for service science: Contributions from service-dominant logic. IBM systems journal, 47(1), 5-14.

Nguyen, N. C., Bosch, O. J., & Maani, K. E. (2011), Creating ‘learning laboratories’ for sustainable development in biospheres: a systems thinking approach. Systems Research and Behavioral Science, 28(1), 51-62.

Senge, P. (1990), The fifth discipline. The Art & Practice of Learning Organization. Doupleday Currence.

Plattner, H. (2010), An introduction to design thinking process guide. The Institute of Design at Stanford: Stanford.

Roedler, G., Jones, C. (2008), Software and Systems Engineering-System Lifecycle Processes-ISO 15288.

Shirasaka, S. (2009), A Standard Approach To Find Out Multiple View Points To Describe An Architecture Of Social Systems‐Designing Better Payment Architecture To Solve Claim‐Payment Failures Of Japan's Insurance Companies‐ . INCOSE International Symposium 19(1), 490-500.

Shortell, T. M. (Ed.) (2015), INCOSE Systems Engineering Handbook: A Guide for System Life Cycle Processes and Activities. John Wiley & Sons.

Smith, C., Felderhof, L., & Bosch, O. J. H. (2007), Adaptive management: making it happen through participatory systems analysis. Systems Research and Behavioral Science: The Official Journal of the International Federation for Systems Research, 24(6), 567-587.

Sterman, J. D. (2000), Business dynamics: systems thinking and modeling for a complex world. McGraw Hill Higher Education.

Tomita, Y., Watanabe, K., Shirasaka, S., & Maeno, T. (2017, July), Applying design thinking in systems engineering process as an extended version of DIKW model. In INCOSE International Symposium, 17(1), 858-870.

Watanabe, K., Tomita, Y., Ishibashi, K., Ioki, M., & Shirasaka, S. (2017, July),. Framework for Problem Definition–A Joint Method of Design Thinking and Systems Thinking. In INCOSE International Symposium 27(1), 57-71.

一般財団法人ベンチャーエンターフプライズセンター (VEC) (2014), 「平成 25 年度創業・起業支援事業(起業家精神と成長ベンチャ

ーに関する国際調査),『起業家精神に関する調 査』報告書」.

http://www.vec.or.jp/wordpress/wp-content/files/25GEM.pdf, accessed on 6.9, 2019.

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科.

(2014), 文部科学省「イノベーション対話ツールの開発」につい

て . http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/1347910.htm, accessed on 6.9,2019.

経済産業省九州経済産業局 (2017), サービス産業の生産性向上につ

いて. http://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/shinsangyou/service/service_seisansei_2pdf, accessed on 5.31,2017.

竹野忠弘 (2014), 日本型ものづくり・内製化事業原価改善の再考.

日本経営学会,第88回年次大会.

田村正紀 (2006), リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術.白

桃書房.

中野民夫 (2001), ワークショップ.岩波新書.

日本経済再生本部 (2016), 日本再興戦略 2016―第 4 次産業革命に向

けて―. 野中郁次郎 (1990), 知識創造の経営: 日本企業のエピステモロジー.

日本経済新聞出版社.

富士通総研 (2018), システムズエンジニアリングとデザイン思考に

よる地域活性化, https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2018/2018-9-1.html, accessed on 3.31,2019.

前野隆司 (2014), システム× デザイン思考で世界を変える:慶應SDM 「イノベーションのつくり方」, 日経BP社.

前川亜由美, 風間春香 (2013), わが国サービス産業の現状と問題点 (特集 わが国のサービス産業), みずほ総研論集, 2013(1), 1-15.

村松潤一,藤岡芳郎 (2011), 価値共創型企業システムの概念化へ向

けた一考察, 広島大学マネジメント研究, ディスカッションペー

パー, 11-21. 本村陽一, 西田佳史, 持丸正明, 赤松幹之, 内藤耕, 橋田浩一 (2008), サ

ービスイノベーションのための大規模データの観測・モデリン

グ・サービス設計・適用のループ (< 特集> サービスイノベーシ

ョンと AI その 2), 人工知能学会誌, 23(6), 736-742. 山口理沙 (2008), 芸の学習プロセスとしての守破離--「道」 に見る

ホールネス.ホリスティック教育研究, (11), 14-23. 山中英生, 澤田俊明, 上月康則, 鎌田磨人, 石田健一, 山口行一, 田中祐

一 (2000), PCM 参加型計画手法による棚田保全戦略の分析. 環境

システム研究論文集, 28, 255-266.