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914 Japanese Journal of Lung CancerVol 58, Supplement, Nov 5, 2018www.haigan.gr.jp 講演 8 オンコロジーエマージェンシー 高橋俊二 1,2 要旨 ━━ 悪性腫瘍の経過中で急速に全身状態の悪化を 来し緊急な治療を必要とする場合があり,oncology emergency といわれる. これらの病態を理解・診断し, 迅速に対応する事が臨床腫瘍医にとって重要な資質の一 つである. 1oncology emergency の病態を正しく理解する.機 序として,代謝障害(高カルシウム血症,腫瘍崩壊症候 群,低ナトリウム血症など),構造的障害(頭蓋内圧亢進, 脊髄圧迫,心嚢水貯留,上大静脈症候群など),治療に伴 う障害(血管新生阻害剤による出血,免疫関連有害事象 など)が挙げられる. 2oncology emergency を正しく迅速に診断し,放射 線科医,外科医等と協力しながら的確な治療を行う. はじめに オンコロジーエマージェンシーとは悪性腫瘍のために 緊急な対応が必要となる症状の総称であり,表 1 のよう な事態が列挙される. 1 内科的治療で対応できるものと 外科的・放射線的治療が必要なものとがあり,肺癌で比 較的よく見られ,内科的・薬剤治療で対処する事態につ いて紹介する. 1.代謝障害 1)高カルシウム血症 a)病態,症状:悪性腫瘍による高カルシウム血症の機 序としては,腫瘍から分泌される副甲状腺ホルモン関連 蛋白(parathyroid hormone-related proteinPTHrP)に よる humoral hypercalcemia of malignancy HHM,扁平 上皮癌で多い)と広範な骨転移に伴う local osteolytic hy- percalcemia に分類される.一般に HHM の方が治療抵 抗性である. b)治療: 1.細胞外液量の補充と利尿:高カルシウム血症は食 欲不振と利尿をきたし,脱水状態とそれによる腎機能不 全を伴い,これが更に高カルシウム血症を悪化するとい vicious cycle に入っていることが多い.従って,輸液 により細胞外液を補充し,尿へのカルシウム排泄を促進 することが重要である.尚,乳酸リンゲル液,高カロリー 輸液製剤の多くは大量のカルシウムを含んでいること, またサイアザイド系利尿薬はカルシウム排泄を抑制する ことに注意が必要である. 2.ビスホスホネート(BP):強力な破骨細胞抑制効果 を持ち,また副作用が少ない.現在は最も効力の高いゾ レドロン酸が使われている.ゾレドロン酸は 4 mg を生 理食塩水または 5%Glulcose 500 ml に溶解し,15 分で点 滴する.血清カルシウムは 2 日後から低下し始め, 610 日で最低となる.副作用としては,発熱・感冒様症状を 1020% に認めるが,特に処置が必要な場合は稀であ る. 3.カルシトニン:数時間で効果があるが 23 日で不 応性となる.急速にカルシウムを低下させる必要がある 緊急時には BP と併用される.エルシトニン 40 単位を 生食 50 ml で点滴静注または筋注で 1 2 回投与する. 4.ステロイド:血液腫瘍による高カルシウム血症で 有用で,通常プレドニゾロン 2050 mg/day の経口投 与または点滴静注を行う. 5.デノスマブ:BP 耐性の高カルシウム血症におい ての効果が報告されている.1 ヶ月以内の BP 投与にも かかわらず cCa12.5 mg/dl の患者に対して,デノスマ 公益財団法人がん研究会有明病院 1 総合腫瘍科, 2 化学療法部. 論文責任者:高橋俊二. (肺癌.2018;58:914-919! 2018 The Japan Lung Cancer Society

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  • 914 Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 58, Supplement, Nov 5, 2018―www.haigan.gr.jp

    講演 8

    オンコロジーエマージェンシー高橋俊二1,2

    要旨━━悪性腫瘍の経過中で急速に全身状態の悪化を来し緊急な治療を必要とする場合があり,oncologyemergencyといわれる.これらの病態を理解・診断し,迅速に対応する事が臨床腫瘍医にとって重要な資質の一つである.1)oncology emergencyの病態を正しく理解する.機

    序として,代謝障害(高カルシウム血症,腫瘍崩壊症候

    群,低ナトリウム血症など),構造的障害(頭蓋内圧亢進,脊髄圧迫,心嚢水貯留,上大静脈症候群など),治療に伴う障害(血管新生阻害剤による出血,免疫関連有害事象など)が挙げられる.2)oncology emergencyを正しく迅速に診断し,放射

    線科医,外科医等と協力しながら的確な治療を行う.

    はじめに

    オンコロジーエマージェンシーとは悪性腫瘍のために緊急な対応が必要となる症状の総称であり,表 1のような事態が列挙される.1 内科的治療で対応できるものと外科的・放射線的治療が必要なものとがあり,肺癌で比較的よく見られ,内科的・薬剤治療で対処する事態について紹介する.

    1.代謝障害

    1)高カルシウム血症a)病態,症状:悪性腫瘍による高カルシウム血症の機序としては,腫瘍から分泌される副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyroid hormone-related protein,PTHrP)による humoral hypercalcemia of malignancy(HHM,扁平上皮癌で多い)と広範な骨転移に伴う local osteolytic hy-percalcemiaに分類される.一般に HHMの方が治療抵抗性である.b)治療:1.細胞外液量の補充と利尿:高カルシウム血症は食欲不振と利尿をきたし,脱水状態とそれによる腎機能不全を伴い,これが更に高カルシウム血症を悪化するという vicious cycleに入っていることが多い.従って,輸液

    により細胞外液を補充し,尿へのカルシウム排泄を促進することが重要である.尚,乳酸リンゲル液,高カロリー輸液製剤の多くは大量のカルシウムを含んでいること,またサイアザイド系利尿薬はカルシウム排泄を抑制することに注意が必要である.2.ビスホスホネート(BP):強力な破骨細胞抑制効果を持ち,また副作用が少ない.現在は最も効力の高いゾレドロン酸が使われている.ゾレドロン酸は 4 mgを生理食塩水または 5%Glulcose 500 mlに溶解し,15分で点滴する.血清カルシウムは 2日後から低下し始め,6~10日で最低となる.副作用としては,発熱・感冒様症状を10~20%に認めるが,特に処置が必要な場合は稀である.3.カルシトニン:数時間で効果があるが 2,3日で不応性となる.急速にカルシウムを低下させる必要がある緊急時には BPと併用される.エルシトニンⓇ40単位を生食 50 mlで点滴静注または筋注で 1日 2回投与する.4.ステロイド:血液腫瘍による高カルシウム血症で有用で,通常プレドニゾロンⓇ20~50 mg/dayの経口投与または点滴静注を行う.5.デノスマブ:BP耐性の高カルシウム血症においての効果が報告されている.1ヶ月以内の BP投与にもかかわらず cCa>12.5 mg/dlの患者に対して,デノスマ

    公益財団法人がん研究会有明病院 1総合腫瘍科,2化学療法部. 論文責任者:高橋俊二.

    (肺癌.2018;58:914-919) � 2018 The Japan Lung Cancer Society

  • Oncology Emergency―Takahashi

    Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 58, Supplement, Nov 5, 2018―www.haigan.gr.jp 915

    表 1. Oncology Emergency

    1.Metabolic 代謝性・Hypercalcemia of malignancy(HCM)・Tumor lysis syndrome(TLS)・Hyponatremia

    2.Structural 構造性・神経系:Intracranial hypertension,Spinal cord compression 

    ・心血管系:Superior vena cava(SVC)syndrome,Pericardial effusion(cardiac tamponade)・呼吸器系:Airway obstruction,haemothrax・消化器系:Ileus,Perforation,Bleeding・泌尿器系:Hydronephrosis

    3.Side effects of antineoplastic agents・Bleeding with angiogenesis-inhibitor・Immune-related Adverse events(irAE)

    表 2. 腫瘍崩壊症候群の高リスク患者

    1.腫瘍の増殖速度が急速2.治療に対する感受性が高い3. 腫瘍量が大きい:bulky(>10 cm),LDH上昇(>正常上限の 2倍),末梢血腫瘍細胞増加(>25000/μl)

    4.腎不全の合併5.治療前より血清尿酸が高い6.脱水状態

    図 1. 高カルシウム血症に対するDenosumab(抗 RANKL 抗体).・1ヶ月以内のBPにもかかわらず cCa >12.5 mg/dl の患者・120 mg sc on D1, 8, 15, 29, then every 4w

    Hu, JNCI 2013

    ブ 120 mgを D1,8,15,29,その後 4週毎に投与した.Caは投与後 4日目前後に低下開始し,2週後には大部分で正常化しており,有効な事が示された(図 1).2

    2)腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome, TLS)a)病態,症状:腫瘍が急激に崩壊するため細胞内物質が血液中に大量に放出され,生命に関わる危険な状態をきたす.化学療法が多いが,放射線療法,ホルモン療法,分子標的療法,免疫療法でも起こり,分子標的・免疫療法では遅く発現することがある.高尿酸血症による腎不

    全,高カリウム血症による心不整脈,高リン血症,低カルシウム血症による筋痙攣,テタニー,心不整脈が問題になる.b)治療:治療開始前にリスクの高い患者(表 2)を認識し,予防することが重要である.1.可能であれば治療開始前 24~48時間から十分な輸液を開始し,十分な利尿をつける.アルカリ化は推奨されない.2.アロプリノール,フェブキソスタット:リスクのある間アロプリノール 300~900 mg/dayあるいはフェブキソスタット 600 mgを経口で投与する.比較試験での尿酸低下はアロプリノール 200~600 mg/day<フェブキソスタット 120 mg/day,アロプリノール 300 mg/day=フェブキソスタット 60 mg/dayと考えられる.3.治療開始後数日は毎日電解質,尿酸をチェックす

  • Oncology Emergency―Takahashi

    916 Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 58, Supplement, Nov 5, 2018―www.haigan.gr.jp

    図 2. Guideline for the management of Tumor lysis syndrome.

    Coiffier et al. J Clin Oncol 2008

    る.カリウム,カルシウム異常のある場合は心電図モニターを行うと共に輸液で補正する.4.腎不全出現時は早めに透析を行い電解質を補正する.5.ラスブリカーゼ:尿酸代謝酵素,アロプリノールに比較し急速かつ著明に尿酸値を低下させ,またキサンチンを増加させないので尿アルカリ化不要という利点がある.0.2 mg/kg/day for 3~7 days(day 0 or day 1-)を投与する.副作用として頭痛,発疹,アナフィラキシー(1%以下)が挙げられる.c)ガイドライン(図 2):疾患により high, intermedi-

    ate, low riskに分け,治療方針は low:モニタリング,in-termediate:輸液とアロプリノール,high:輸液とラスブリカーゼが行われる.3

    3)低ナトリウム血症a)病態,症状:ほとんどの場合異常な水の貯留が主因で,過量の水分の投与が加わる場合も多い.異常な水分貯留は抗利尿ホルモン(ADH)の異常な分泌による.おもに脳浮腫による精神神経症状がみられるが,重症度及び進行速度による.一般的に 115 mEq/l以下になると意識障害,痙攣の危険性が高まる.b)分類:ADH分泌異常の原因として,体液量増減の

    評価が重要である.1.循環血漿量低下による末梢循環の低下浮腫・胸腹水と塩分貯留を伴う低ナトリウム血症:肝機能低下,悪性胸腹水貯留,静脈閉塞,心不全など癌患者の病態に伴いしばしば見られる.脱水状態を伴う低ナトリウム血症:重症下痢,急性出

    血,胸腹水の排液,イレウスなどで起こる.尿からの Na喪失はシスプラチンによる塩分喪失性腎症,副腎不全,サイアザイドの使用,あるいはくも膜下出血・頭蓋内手術に伴う中枢性の塩分喪失などで起こる.2.循環血漿量低下を伴わない低ナトリウム血症(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群,SIADH):腎集合管における水再吸収が促進されるので,体液量が増加し希釈性低 Na血症が起こる.種々の腫瘍,頭蓋内疾患,肺疾患,薬剤に伴って起こる.腫瘍からの ADH分泌は肺小細胞癌が最も多いが種々の腫瘍で起こりうる.原因薬剤としてはビンカアルカロイド,サイクロフォスファミド,メルファラン等が多い.抗がん剤以外ではニコチン,カルバマゼピン,バルビツレート,モルヒネ,SSRIなどが知られている4 .SIADHの診断基準:1)低ナトリウム血症,低浸透圧血症 2)尿中ナトリウム排泄 20 mEq/l以上 3)尿浸透圧>血漿浸透圧 4)脱水症状なし 5)副腎,甲状腺,腎機能正常b)治療1.体液貯留を伴う低ナトリウム血症:水と塩分両方の制限2.体液減少を伴う低ナトリウム血症:塩分の補給3.SIADHi 無症状の場合:水制限,1日 1000 ml以下ii 症状のある患者:高 Na輸液(+フロセミド)軽症患者:0.9%食塩水+フロセミド,0.5 mEq/L/hr

    (10~12 mEq/L/24 hrs)以下重症患者:3%食塩水+フロセミド,初めの数時間は

  • Oncology Emergency―Takahashi

    Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 58, Supplement, Nov 5, 2018―www.haigan.gr.jp 917

    図 3. 上大静脈症候群のステント治療.

    Bustgens et al. Fortschr Röntgenstr 2017; 189: 423–430

    OS and RFS

    1.5~2 mEq/L/hr,24hrでは 12~15 mEq/L以下で補正,先ずは 125 mEq/Lを目標とする.早すぎると脱髄症(central pontine myelinolysis)を来

    すおそれがあり,リスク因子としてアルコール症,低栄養,低 K血症などが挙げられる.iii 慢性で水制限およびフロセミドでコントロールで

    きない場合:デメクロサイクリン(600~1200 mg/d)iv 異所性 ADH産生腫瘍にともなう SIADH:モザ

    バプタン(バソプレッシン V2受容体阻害剤)30 mg/dayで 7日間投与する.海外ではトルバプタンも用いられるが日本では低 Na血症には承認されていない.5

    2.構造的障害

    1)頭蓋内圧亢進a)病態,症状:腫瘍に伴う脳転移,脳出血,髄膜炎等による脳圧亢進;頭痛,嘔気,意識障害,脳神経障害.b)治療:頭蓋内圧亢進が疑われたらすぐに脳圧を低下させる治療を開始するべきである.1.過換気:最も迅速に効果が出るが数時間しか十分な効果がない.挿管,人工呼吸を開始し pCO2を 25~30mmHgに保つ.2.浸透圧利尿剤:グリセオールは使いやすく,高 Na

    血症のほかには大きな副作用はない.200 mlを 1日 2回から開始し, 最高 1000~1500 ml/dayまで投与可能.マンニトールは即効性が高いがリバウンドや電解質異常が起こりやすい.3.ステロイド:脳転移に伴い浮腫がある場合は特に有効である.デカドロン 8~12 mg/dayを 1週間程度投与し,漸減していくことが多い.

    2)脊髄圧迫a)原因疾患:肺癌,乳癌,前立腺癌が多く,各 20%前後をしめる.背部痛が初発症状として多い.他に歩行障害,感覚障害,自律神経障害など.b)診断:MRIが中心で,感受性 44~93%,特異性

    90~98%とされる.c)治療:放射線療法が中心になるが,必ず手術の適応について整形外科と検討する必要がある.1.放射線照射:回復例は不全麻痺例で 43%,完全麻痺例で 14%と報告されている.dose/fractionについて標準方法は確立していない.2.ステロイド:浮腫による悪化を防ぎ,照射と併用必要.デカドロン 100 mg vs 10 mg:回復 25% vs 8%(p=0.22),維持デカドロン vsなし:回復 81% vs 63%(p=0.046)との報告がある.3.手術:適応は照射既往・照射中の悪化,圧迫骨折など.除圧術+RTの方が RT単独より有効との比較試験がある.3)上大静脈症候群a)病態,症状:腫瘍の上大静脈圧迫による症候群で,頭部・頸部・上肢の浮腫・うっ血・静脈拡張,喉頭・咽頭浮腫をきたす.原因は肺癌が大半を占める.b)診断:造影 CTにて静脈血栓症の鑑別,腫瘍の診

    断をおこなう.c)治療1.保存的治療:ステロイド(デカドロン 4 mg/6hrs),フロセミドなどが使われるが,明らかなエビデンスはない.2.放射線照射:肺小細胞癌の 78%,非小細胞癌の63%で症状改善が見られる.

  • Oncology Emergency―Takahashi

    918 Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 58, Supplement, Nov 5, 2018―www.haigan.gr.jp

    図 4. 免疫関連有害事象 Ipilimumab+Nivolumab による脳炎.

    CANCER INSTITUTE HOSPITALDivision of Medical OncologyWilliams et al. JAMA Neurology 2016 CCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEERRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR IIIIINININIIIIIIIIIII STITUUUUUTTTTE HOSSSSSSSPPIPIPIPPIPPIPIPPIPPIPIPIPIPPIPIPIPIPIPIPIPPIPIIPPIIPIPPPIIIPIPIPIIPPIPPIPPIIIIITTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTAAAAAAAAAAAAAAAAAAAALLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiivvvvvvvvvvvvvvviiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiisssssiiiiiiiiooonon ooff MMff eeddicalcccaaaaicalaa OOnnccoollogygygyyygygyyyyyyyyyyyyygyogygygy

    3.化学療法:非ホジキンリンパ腫・肺小細胞癌の80%,肺非小細胞癌の 40%で症状消失する.4.ステント留置:75~100%で 48~72時間以内に改

    善,再発率 15%,合併症(感染,肺塞栓,出血,穿孔)3~7%と報告されている(図 3).6

    4)心嚢水貯留(心タンポナーデ)7

    a)病態,病因:剖検においては癌患者の 10~15%で心嚢水が認められる.大部分は肺癌,乳癌の転移.他はリンパ腫,白血病,胸壁照射,化学療法などに伴う.b)診断:呼吸困難,起坐呼吸,動悸,疲労,めまい;頻脈,気脈,頚部静脈怒張,脈圧低下など.心エコー,CTでほぼほぼ 100%診断可能.c)治療:タンポナーデ症状がある場合は心嚢穿刺,心

    膜開窓を行う.30日間のコントロール率は穿刺のみでは50%とされており,心嚢内注入によるコントロール率はテトラサイクリン 80~90%,ブレオマイシン 75%,チオテーパ 0%,シスプラチン 90%, OK-432 70%と報告されている.最近 Bevacizumabの有効性も報告されている.

    3.治療にともなう Oncology emergency

    1)血管新生阻害剤に伴う出血8

    種々の血管新生阻害剤の有効性が明らかになり種々のがん種で用いられているが,その副作用の一つとして出血が挙げられる.機序としては内皮細胞再生能力低下・アポトーシス誘導→血管脆弱化,細胞外基質の減少,血小板機能低下などが挙げられている.リスク因子としては扁平上皮肺がん,血痰,食道静脈瘤などが挙げられている.肺癌ではベバシズマブ治療に伴う肺出血がよく知られているが,空洞形成のみがリスク因子とされている.

    2)免疫関連有害事象PD-1,PD-L1等を阻害する免疫チェックポイント治療の有効性が明らかになっている.頻度は低いが劇症 I型糖尿病,副腎不全,心筋炎,脳炎(図 4)9 など Oncologyemergencyとして対応が必要な有害事象が生じている.臨床腫瘍学会がん免疫療法ガイドライン,ASCOガイドライン,10 各製薬会社の適正使用ガイド等を参考にして,各施設での治療方針を決定する必要がある.

    本論文内容に関連する著者の利益相反:高橋俊二〔講演料な

    ど〕エーザイ,ブリストルマイヤーズ,大鵬薬品,〔委受託研

    究(治験等)〕アストラゼネカ,MSD,クインタイルズ,大鵬

    薬品,中外製薬,SRD,シミック,ノバルティス,バイエル

    REFERENCES

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    2.Hu MI, Glezerman I, Leboulleux S, Insogna K, Gucalp R,Misiorowski W, et al. Denosumab for patients with per-sistent or relapsed hypercalcemia of malignancy despiterecent bisphosphonate treatment. J Natl Cancer Inst. 2013;105:1417-1420.

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  • Oncology Emergency―Takahashi

    Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 58, Supplement, Nov 5, 2018―www.haigan.gr.jp 919

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