テーマ別セッション2-2(木村直人 文部科学省 前初等中等教育局 …€¦ ·...
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学校と地域の連携・協働の推進
平成30年7月28日文部科学省
木村 直人文部科学省 初等中等教育局前参事官
知育【教科等】
徳育【道徳・特別活動等】
体育【部活動等】
日本の「学校」と、諸外国の「スクール」の在り方は大きく異なる。
→諸外国の教員の業務が主に授業に特化しているのとは異なり、日本の教員は、教科指導、生徒指導、部活動指導等を一体的に行うことが本務。
→日本の学校は地域社会の中核であり、地域コミュニティの活性化に重要。
日本
諸外国
スクール 教会・家庭等地域
(スポーツクラブ等)
※体育…部活動は、日・中・韓は学校を中心に行うが、米・英は学校と地域で、独・伊・北欧は地域を中心に行う。
「学校」の在り方の国際比較①
学 校
2
「社会に開かれた教育課程」の実現
① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
これからの教育課程の理念
次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(中教審答申)
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(H28.12.21)幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の
学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(中教審答申)(H28.12.21)
主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善
主体的な学び
深い学び
対話的な学び
新しい時代に必要となる資質・能力の育成と、学習評価の充実
新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し
何を学ぶか どのように学ぶか
よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む
「社会に開かれた教育課程」の実現
学習指導要領改訂の方向性(案)
何ができるようになるか
生きて働く知識・技能の習得など、新しい時代に求められる資質・能力を育成
知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善
小学校の外国語教育の教科化、高校の新科目「公共」の新設など
各教科等で育む資質・能力を明確化し、目標や内容を構造的に示す
学習内容の削減は行わない※
各学校における「カリキュラム・マネジメント」の実現
※高校教育については、些末な事実的知識の暗記が大学入学者選抜で問われることが課題になっており、そうした点を克服するため、重要用語の整理等を含めた高大接続改革等を進める。
未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成
生きて働く知識・技能の習得
学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養
学習指導要領改訂の考え方
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学校と地域の連携・協働の在り方
5
地域学校
地域学校協働活動
○放課後等の学習活動放課後、土曜日、休日における学習、スポーツ活動 等
○体験活動社会奉仕体験活動、自然体験活動、職場体験活動 等
地域学校協働活動推進員
【地域と学校をつなぐコーディネーターの役割】
・地域住民と学校との情報共有
・地域住民等への助言 等
校長教職員
学校運営協議会
委員:保護者、地域学校協働活動推進員、地域住民など
学校運営・その運営に必要な支援に関する協議 等(地教行法第47条の6)
○協働活動地域人材育成、郷土学習、協働防災訓練、学習・部活動等支援、花壇整備、登下校の見回り 等
PTA
地域住民
保護者
社会教育施設・団体
文化団体
スポーツ団体
企業・NPO
地域と学校が育てたい子供像、目指すべき教育のビションを保護者や地域と共有し、目標の実現に向けてて互いにパートナーとして連携・協働し、未来を担う子供たちの成長を支える取組
地域学校協働本部地域連携の中核を担う教職員
育てたい子供像、目指すべき教育のビジョンを共有
37.9
39.1
44.1
61.3
66.4
71.4
80.7
80.4
80.5
81.0
83.8
86.4
92.7
0 50 100
児童生徒の学力が向上した
いじめ・不登校・暴力など生徒指導の課題が解決した
保護者や地域からの苦情が減った
教職員の意識改革が進んだ
学校の組織力が向上した
校長・園長のリーダーシップが向上した
管理職の異動があっても継続的な学校運営がなされている
子どもの安心・安全な環境が確保された
地域と連携した取組が組織的に行えるようになった
学校関係者評価が効果的に行えるようになった
特色ある学校づくりが進んだ
地域が学校に協力的になった
学校と地域が情報を共有するようになった
学校と地域の連携・協働の取組がもたらす効果 ~校長の成果認識より~
学校運営協議会や熟議の実施を通して、地域でどのような子供たちを育てるのか、何を実現していくのかという「目標」や「ビジョンを」共有し、学校・家庭・地域が一体となって取り組むことで、子供たちの学力向上、生徒指導上の課題解決、教職員の意識改革・業務改善など、学校運営に関する様々な効果が表れている。
子供たちへの効果
学校(教職員)への効果
地域(住民)への効果
出典:「総合マネジメント力強化に向けたコミュニティ・スクールの在り方に関する調査研究報告書」(平成27年度文部科学省委託調査研究)
※コミュニティ・スクールの校長が回答※「とても当てはまる」「少し当てはまる」の合計
6
とてもそう思う
27.3%
ややそう思う
42.8%
どちらともいえない
24.1%
あまりそう思わない
5.0%
全くそう思わない
0.4%
無回答
0.4%
地域住民が学校を支援することにより、教員が授業や生徒指導などにより力を注ぐことができた
(「平成27年度地域学校協働活動の実施状況アンケート調査」文部科学省・国立教育政策研究所。上記は学校を対象とする調査結果。)
約70%
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学校と地域の連携・協働の効果(学校(教員)への効果)
学習支援
School-Community Partnershipsの事例 「子供たちの力を伸ばす」コミュニティ・スクールの取組
希望者を対象に、毎週水曜日の放課後に学校内で学習会を開催。子供たちは、地域のボランティアの方に、苦手なところやわからない問題等をマンツーマンで教えてもらっている。
○ 王司村塾に参加し、地域の方に教えていただくことで、勉強が楽しいと思えるようになった。
○ 地域の方と話をする中でいろいろなことが聞けるので知識が増えてうれしい。
児童の感想
教師の授業力の向上『国語B』の平均正答率が大幅に上昇
自己肯定感の高まり
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の導入
③ 学校と地域の連携・協働による取組が充実し、教育活動の可能性が大幅に広がった
② 来校者数が大幅に増加( 保護者・地域住民等)
全国学力・学習状況調査
① 保護者・地域住民等の学校運営への参画が可能に
若手教師の授業を学校運営協議会委員を加えた7~8名(ユニット)で授業を参観。この手法で教員と保護者・地域住民等が授業改善について真剣に語り合えるようになり、立場を超えた相互理解と、教員の授業力の向上、児童・生徒の学力向上に結びついている。
➢ 保護者・地域住民等の授業参観者数の増加
➢ 地域の特性や人的・物的資源を生かした効果的な授業展開が可能に
➢ 学校全体で(チームで)授業改善に対する気運の高まり
放課後の授業研究会では、学校運営協議会委員もユニットの一人として意見を述べている
学校・教職員の変化
学力の向上
子供の変化
○ 人前で発表する機会の増加○ 様々な立場の人と主体的・協働的に取り組む機会の増加
〇 達成感を味わう機会の増加
知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や,様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などにかかわる内容
毎回、多くの3~6年生が参加している
(山口県では、HH28.4.1までにすべての公立小中学校で導入済)
国語B
○ 落ち着いた環境の中での学習○ 家庭や放課後子供教室との連携による学習習慣の確立
1 319 24
39
92
146
184
264 295
0
100
200
300
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
コミュニティ・スクール導入校数
(山口県:小学校)校
61.3%
教師の意識改革が進んだ
① 学校運営協議会/地域の協議会での協議・連携
学校運営協議会メンバー:校長、教職員、コーディネーター、公民館、保
育園、PTA、自治会代表 等
地域の協議会メンバー:公民館、連合自治会、社会福祉協議会、民生児童委員、保育園、小学校、中学校、PTA、 コーディネーター等
<コーディネーターの役割>
・子供の学校生活と地域の現実生活を結びつけること
→ 子供の地域への参画 → 市民を育てること
・学校のカリキュラム・マネジメントに寄与すること
○ 学校と地域の連携・協働により、コーディネーターを中心に、地域ぐるみで子供を育む方向性を共有。活動を協働化し、カリキュラム・マネジメントにも寄与。
○ 「社会に開かれた教育課程」の実現に向け、地域の教育力も高まり、大人も子供も学び合う「学びの循環」へ
学校と地域の連携・協働 がカリキュラム・マネジメントに寄与した事例(島根県益田市立豊川小学校)
② 授業の実施
地域の特性や実情を踏まえて行う一部の授業について、地域住民と連携して実施。授業前に地域住民と指導案・ねらいを共有し、地域住民も授業に参画。指導案を踏まえて地域住民からも児童へ質問の投げかけ。
③ 振り返り
<カリキュラム・マネジメントの例>① 授業で子供たちが作物を栽培する単元において、教師だけでは難しい大豆の栽培から豆腐作りまでを、地域住民の協力を得て実施。
② 授業後、そのねらいを達成した次年度以降も豆腐作りの活動が継続されていたが、学校・コーディネーター・公民館の協議により、公民館活動に切り替えて継続。 コーディネーターが調整し、学校・地域の双方にとってより良い手法に転換することができ、児童の学びの充実にもつながった。
授業実施後、学校運営協議会の委員を中心に、地域住民も授業の研究協議に参加。
学校の教育目標や校内研究の取組、子供の状況を共有
地域の協議会が推薦した者を学校運営協議会の委員に任命
学校・教師の役割分担に関する議論
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✓ Student well-beingの実現やteacher work loadの解消のため、国の審議会において、学校教師が担う業務の明確化・適正化について議論
基本的には学校以外が担うべき業務学校の業務だが、
必ずしも教師が担う必要のない業務教師の業務だが、
負担軽減が可能な業務
①登下校に関する対応
②放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導された時の対応
③学校徴収金の徴収・管理
④地域ボランティアとの連絡調整
⑤調査・統計等への回答等(事務職員等)
⑥児童生徒の休み時間における対応(輪番、地域ボランティア等)
⑦校内清掃(輪番、地域ボランティア等)
⑧部活動(部活動指導員等)
⑨給食時の対応(学級担任と栄養教諭等との連携等)
⑩授業準備 (補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
⑪学習評価や成績処理 (補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
⑫学校行事の準備・運営(事務職員等との連携、一部外部委託等)
⑬進路指導(事務職員や外部人材との連携・協力等)
⑭支援が必要な児童生徒・家庭への対応 (専門スタッフとの連携・協力等)
◆これまで学校・教師が担ってきた代表的な業務の在り方に関する考え方 (H29年12月中央教育審議会中間まとめ)